説明

水性顔料分散体ならびに水性記録液

【課題】分散レベル、分散安定性に共に優れた赤色またはマゼンタ色の水性顔料分散体を提供する。
【解決手段】 少なくともキナクリドン系顔料およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物を含有することを特徴とする水性顔料分散体。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、赤色ないしマゼンタ色の水性顔料分散体と該顔料分散体を用いた水性記録液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、サインペン、水性マーカー等の筆記具や、インクジェットプリンターのインクには、色材として染料が用いられてきた。染料を用いた記録液は着色力や鮮明性で優れているが、耐光性や耐水性等に問題を有していた。
【0003】一方、水性系記録液は、油性系記録液のような、火災の危険性や変異原性などの毒性が皆無かより極めて低減できる上で、極めて優れた特徴を有している。
【0004】耐光性および耐水性の問題を解決するため、近年、上述した用途分野において色材の染料から顔料への転換が活発に検討されている。当該分野、特にインクジェット用インクの分野において顔料を色材として使用するには、固−液二相系である顔料分散体における非常に高いレベルの分散性および分散安定性が必要とされている。かかる高度の分散性および分散安定性を達成するための手段として、特開平9−151342号公報に顔料をアニオン性基含有有機高分子化合物で被覆したマイクロカプセル化顔料分散体が開示されており、その実施例中にはキナクリドン系顔料とジメチルアミノメチル化キナクリドンを用いたマゼンタ色水性分散体が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公報に記載のマゼンタ色水性顔料分散体も、分散レベルおよび分散安定性の面で十分満足できるものではなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、少なくともキナクリドン系顔料およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物を含有することを特徴とするマゼンタ色水性顔料分散体、とりわけ少なくともキナクリドン系顔料、キナクリドンスルホン酸系化合物およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物、ならびにアニオン性基含有有機高分子化合物を含有することを特徴とする水性顔料分散体が、かかる諸要求を満足させることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
【発明の実施の形態】
【0008】本発明の水性顔料分散体は、少なくともキナクリドン系顔料およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物を含有することを特徴とする。
【0009】本発明に用いられるキナクリドン系顔料としては、公知慣用のものがいずれも使用できる。具体的には、例えばC.I.ピグメント レッド122等のジメチルキナクリドン系顔料、C.I.ピグメント レッド202、同 レッド209等のジクロロキナクリドン系顔料、C.I.ピグメント バイオレット19等の無置換キナクリドン、およびこれらの顔料から選ばれる少なくとも2以上の顔料の混合物もしくは固溶体等を挙げることができる。顔料は粉末状、顆粒状あるいは塊状の乾燥顔料でも良く、ウェットケーキやスラリーでも良い。
【0010】フタルイミドメチル化キナクリドン系化合物としては、公知慣用のものがやはりいずれも使用できる。これは、公知の方法に従い、例えば無置換キナクリドン、ジメチルキナクリドン、ジクロロキナクリドン等とフタルイミドおよびホルムアルデヒド(パラホルム)を濃硫酸中で反応させることにより、合成することができる。
【0011】1分子あたりのフタルイミドメチル基の平均置換数としては0.5〜2個程度が好ましく、特に0.7〜1.5個程度が好ましい。置換数が少なすぎる場合には併用する効果が発現されにくく、多すぎる場合には滲み等、記録液としての特性の低下をもたらす場合がある。
【0012】本発明の水性顔料分散体は、キナクリドン系顔料とフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物との両方を含有すれば良いが、通常は、キナクリドン系顔料が主成分となる。
【0013】フタルイミドメチルキナクリドン系化合物の使用量としては、キナクリドン系顔料100重量部に対し、フタルイミドメチル化キナクリドン系化合物の使用量が3重量部以上、中でも6〜30重量部の範囲にあることが好ましく、特に10〜25重量部の範囲にあることが好ましい。使用量が少なすぎる場合には併用する効果が発現されにくく、多すぎる場合には色相の変化、彩度の低下、記録時の滲み等の悪影響が現れる場合がある。
【0014】本発明の水性顔料分散体は、キナクリドン系顔料と、フタルイミドメチル化キナクリドン系化合物のみが含まれていてもよいが、前記したのと異なるその他のキナクリドン系化合物を含んでいてもよい。この場合の好適なキナクリドン系化合物としては、キナクリドンスルホン酸系化合物がある。
【0015】キナクリドンスルホン酸系化合物としては、公知慣用のものがやはりいずれも使用できる。これは、例えば無置換キナクリドン、ジメチルキナクリドン、ジクロロキナクリドン等を公知の方法により濃硫酸等と反応させることで合成できるキナクリドンスルホン酸類、およびそのナトリウム、アルミニウム、カルシウム等の金属塩類、ならびにそのアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、ジドデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム等のアンモニウム塩類が挙げられ、なかでも併用効果の大きさとマイグレーション、ブリード等のマイナス効果を勘案すると、キナクリドンスルホン酸のアルミニウムやカルシウム等の金属塩が好ましく、特に同アルミニウム塩が好ましい。
【0016】1分子あたりのスルホン基の平均置換数としては0.5〜2個程度が好ましく、特に0.7〜1.5個程度が好ましい。置換数が少なすぎる場合には併用する効果が発現されにくく、多すぎる場合には滲み等、記録液としての特性の低下をもたらす場合がある。
【0017】キナクリドンスルホン酸系化合物の使用量としては、キナクリドン系顔料100重量部に対し、キナクリドンスルホン酸系化合物の使用量が3重量部以上、中でも6〜30重量部の範囲にあることが好ましく、特に10〜25重量部の範囲にあることが好ましい。使用量が少なすぎる場合にはやはり併用する効果が発現されにくく、多すぎる場合には色相の変化、彩度の低下、記録時の滲み等の悪影響が現れる場合がある。
【0018】キナクリドンスルホン酸系化合物とフタルイミドメチルキナクリドン系化合物との両方を用いる場合の使用量としては、キナクリドン系顔料100重量部に対し、キナクリドンスルホン酸系化合物およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物の使用量がそれぞれ3重量部以上、かつキナクリドンスルホン酸系化合物およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物の使用量の和が6〜30重量部の範囲にあることが好ましく、特に使用量の和が10〜25重量部の範囲にあることが好ましい。使用量が少なすぎる場合には併用する効果が発現されにくく、多すぎる場合には色相の変化、彩度の低下、記録時の滲み等の悪影響が現れる場合がある。
【0019】本発明の水性顔料分散体は、例えば上記したキナクリドン系顔料他を、分散剤や自己分散性高分子化合物、あるいは塩基等、所望の添加剤とともに、既に公知の各種分散装置を用いて、水性媒体中で分散することにより製造することができるが、とりわけアニオン性基含有有機高分子化合物とともに分散させた場合に、より分散レベルおよび分散安定性に優れた水性顔料分散体を得ることができる。
【0020】水性分散体中に含まれる、少なくともキナクリドン系顔料は、アニオン性基含有有機高分子化合物と単に併存しているのより、このアニオン性基含有有機高分子化合物によって被覆されている方が、中でも、さらにフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物も前記同様に被覆されているのが前記技術的効果の点でも好ましい。最適なのは、キナクリドン系顔料、フタルイミドメチル化キナクリドン系化合物およびキナクリドンスルホン酸系化合物のいずれもが、アニオン性基含有有機高分子化合物によって被覆されている場合である。
【0021】本発明の水性顔料分散体で使用するアニオン性基含有有機高分子化合物は、アニオン性基を有していれば特に限定されるものではなく、例えばカルボキシル基、スルホン基、ホスホ基、チオカルボキシル基等を含有するアニオン性基含有モノマーとこれらアニオン性基含有モノマーと共重合し得るその他のモノマーを共重合させて得られるアニオン性基含有有機高分子化合物が上げられるが、原料モノマーの入手のしやすさ、価格等を考慮すると、カルボキシル基またはスルホン基を含有するアニオン性基含有有機高分子化合物が好ましく、電気的中性状態とアニオン状態の共存範囲を広く制御できる点でカルボキシル基を含有するアニオン性基含有有機高分子化合物が特に好ましい。
【0022】本発明の水性顔料分散体で使用するアニオン性基含有有機高分子化合物としては、例えば、架橋部分を有していてもよい、アニオン性基を有する有機高分子化合物がある。
【0023】代表的には、架橋部分を有するアニオン性基を有するアクリル酸エステル系重合体、架橋部分を有さないアニオン性基を有するアクリル酸エステル系重合体架橋部分を有するアニオン性基を有するメタアクリル酸エステル系重合体、架橋部分を有さないアニオン性基を有するメタアクリル酸エステル系重合体がある。本発明においては、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの両方を包含して(メタ)アクリル酸エステルと呼ぶものとする。また(メタ)アクリル酸エステル系重合体とは、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として重合した重合体を意味する。
【0024】最適なアニオン性基含有有機高分子化合物は、アニオン性基がカルボキシル基およびカルボキシラート基の両方を含有するアニオン性基含有有機高分子化合物である。
【0025】カルボキシル基を含有するモノマーの例としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、4−ビニル安息香酸等の不飽和カルボン酸類;コハク酸ビニル、マレイン酸アリル、テレフタル酸ビニル、トリメリット酸アリル等の多塩基酸不飽和エステル類が挙げられる。またスルホン酸基を含有するモノマーの例としてはアクリル酸2−スルホエチル、メタクリル酸4−スルホフェニル等の不飽和カルボン酸スルホ置換アルキルまたはアリールエステル類;スルホコハク酸ビニル等のスルホカルボン酸不飽和エステル類;スチレン−4−スルホン酸等のスルホスチレン類を挙げることができる。
【0026】アニオン性基含有モノマーと共重合し得るその他のモノマーの例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2,3−エポキシプロピル、アクリル酸2,3−エポキシブチル、アクリル酸2,3−エポキシシクロヘキシル、アクリル酸ビニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2,3−エポキシプロピル、メタクリル酸2,3−エポキシブチル、メタクリル酸2,3−エポキシシクロヘキシル、メタクリル酸ビニル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸エチル、イタコン酸ベンジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−アミノエチル、アクリル酸2−アミノプロピル、アクリル酸3−アミノプロピル、アクリル酸2−(メチルアミノ)エチル、アクリル酸2−(メチルアミノ)プロピル、アクリル酸2−(エチルアミノ)エチル、アクリル酸2−(エチルアミノ)プロピル、アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピル、等の不飽和脂肪酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ジメチルアクリルアミド、N−ジエチルアクリルアミド、N−ジプロピルアクリルアミド、N−(2−アミノエチル)アクリルアミド、N−(2−アミノプロピル)アクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)アクリルアミド、N−[2−(メチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[2−(メチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[3−(メチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[2−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ジメチルメタクリルアミド、N−ジエチルメタクリルアミド、N−ジプロピルメタクリルアミド、N−(2−アミノエチル)メタクリルアミド、N−(2−アミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド、N−[2−(メチルアミノ)エチル]メタクリルアミド、N−[2−(メチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−[3−(メチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]メタクリルアミド、N−[2−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、マレアミド、N,N−ジメチルマレアミド、フマラミド、N,N−ジメチルフマラミド、等の不飽和脂肪酸アミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、等の不飽和ニトリル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブタン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、オクタデカン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸アリル、プロピオン酸アリル、ヘキサン酸アリル、デカン酸アリル、等のカルボン酸不飽和エステル類;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、等の不飽和エーテル類;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−クロロスチレン、等スチレン類;エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサン、4−ビニルシクロヘキセン、等の不飽和炭化水素類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、3−クロロプロピレン、等の不飽和ハロゲン化炭化水素類;4−ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、等のビニル置換複素環化合物類;上記例示モノマー中のカルボキシル基、水酸基、アミノ基等活性水素を有する置換基を含有するモノマーとエチレンオキシド、プロピレンオキシド、シキロヘキセンオキシド等、エポキシド類との反応生成物;上記例示モノマー中の水酸基、アミノ基等を有する置換基を含有するモノマーと酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、デカン酸、ドデカン酸等カルボン酸類との反応生成物等を挙げることができる。
【0027】かかるアニオン性基含有有機高分子化合物は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の従来より公知の種々の反応方法によって合成することができる。
【0028】本発明に用いられるアニオン性基含有有機高分子化合物の重量平均分子量は2,000〜100,000の範囲にあることがが好ましく、5,000〜50,000の範囲にあることが特に好ましい。重量平均分子量が小さすぎると水性顔料分散体自体の分散安定性が低下し、大きすぎると分散体の粘度が高くなるだけでなく、分散性が低下する傾向が認められる。また重量平均分子量が小さすぎたり大きすぎる場合には、例えばインクジェットプリンタ用インクに適用した場合に、印字特性に関して悪影響を及ぼし、長期間安定した印字を行わせることが困難になる。
【0029】また本発明に用いられるアニオン性基含有有機高分子化合物の酸価およびガラス転移点はそれぞれ30〜220mgKOH/gおよび−20〜60℃の範囲にあることが好ましい。酸価が低すぎる場合には水性顔料分散体の分散性や分散安定性が低下し、またインクジェットプリンタ用インクに適用した場合の印字安定性が悪くなる。酸価が高すぎる場合には、インクジェットプリンタ用インクに適用した場合に画像の耐水性が低下する。ガラス転移点が高すぎる場合には安定した印字が得にくく、低すぎる場合には耐摩擦性、耐棒積み性等の画像保存性が低下する傾向がある。
【0030】本発明の水性顔料分散体中におけるアニオン性基含有有機高分子化合物は、アニオン性基の少なくとも一部が塩基性物質によってイオン化された形態をとっていることが分散性、分散安定性の発現のうえで好ましい。アニオン性基のうちイオン化された基の最適割合は、用いるアニオン性基含有有機高分子化合物の組成、分子量、酸価等により変化するため一意的に限定されるものではないが、所望の分散性、分散安定性が発現される範囲であればよく、通常30〜100%、特に70〜100%の範囲に設定されることが好ましい。このイオン化された基の割合はアニオン性基と塩基性物質のモル比を意味しているのではなく、解離平衡を考慮に入れたものである。例えばアニオン性基がカルボキシル基の場合、化学量論的に等量の強塩基性物質を用いても解離平衡によりイオン化された基の割合は100%未満であって、カルボキシラート基とカルボキシル基の混在状態である。
【0031】このように、アニオン性基含有有機高分子化合物の、アニオン性基の少なくとも一部をイオン化するために用いる塩基性物質としては、公知慣用のものが挙げられが、例えばアンモニア、第一級、第二級もしくは第三級の有機アミン(塩基性含窒素複素環化合物を含む)、水酸化アルカリ金属からなる群から選ばれる化合物が好適には挙げられる。これらの例示した好適な塩基性物質でアニオン性基の少なくとも一部をイオン化することにより、カルボキシラート基の対イオンは、アンモニウムイオン(塩基性含窒素複素環化合物のプロトン化カチオンを含む)、アルカリ金属イオンからなる群から選ばれるカチオンとなる。
【0032】本発明においては、以下、少なくともキナクリドン系顔料およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物を含有するものを、単に顔料という。従って、以下、キナクリドン系顔料、キナクリドンスルホン酸系化合物およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物を含有するものも、この顔料の定義に含まれる。
【0033】本発明の水性顔料分散体における顔料とアニオン性基含有有機高分子化合物の比率は顔料100重量部に対しアニオン性基含有有機高分子化合物25〜200重量部程度が好ましい。アニオン性基含有有機高分子化合物の比率が低すぎる場合には水性記録液として用いた場合の耐摩擦性が低下し、逆に高すぎる場合には水系記録液を調整した場合に粘度が高くなる傾向が認められる。
【0034】本発明の水性顔料分散体は、少なくとも顔料、アニオン性基含有有機高分子化合物、塩基性物質および水からなる混合物を分散する工程を含むプロセスによって製造することができる。
【0035】本発明の水性顔料分散体の製造プロセスに組み込み得る分散工程以外の工程の例としては、予備分散工程、溶解工程、希釈工程、蒸留工程、遠心分離工程、酸析工程、濾過工程、再分散工程、pH調整工程、充填工程等が挙げられる。
【0036】予備分散工程の例には、溶液状態または溶融状態の樹脂と顔料を混合、分散し、スラリー状、ペースト状もしくはマスターバッチまたはチップと呼ばれる固体状態にする工程等がある。溶解工程の例には、固体状のアニオン性基含有有機高分子化合物を有機溶剤、好ましくは水溶性有機溶剤中、または塩基性物質を含む水性媒体中に溶解させる工程、もしくはアニオン性基含有有機高分子化合物の水溶性有機溶剤溶液を塩基性物質を含む水性媒体中に溶解させる工程等がある。
【0037】本発明では、顔料、アニオン性基含有有機高分子化合物、塩基性物質および水からなる混合物を分散する工程を必須として含ませる。この混合物には水溶性有機溶剤を含めるのが好ましい。より具体的には、少なくとも顔料、アニオン性基含有有機高分子化合物、塩基性物質、水溶性有機溶剤および水からなる混合物を分散する工程を含ませることが好ましい。
【0038】本発明の水性分散体としては、分散到達レベル、分散所要時間および分散安定性の全ての面で、より優れた特性を発揮させるに当たっては、顔料がアニオン性基含有有機高分子化合物によって被覆された、カプセル化顔料が水性分散体中に分散することが好ましい。この様な状態を形成するため、顔料がアニオン性基含有有機高分子化合物を含有する液媒体中に分散している状態において、前記の後工程として、溶解状態にあるアニオン性基含有有機高分子化合物を顔料表面に被覆させる工程を組み込むことが好ましい。
【0039】溶解状態にあるアニオン性基含有有機高分子化合物を顔料表面に被覆させる工程としては、アルカリ性水性溶液に溶解しているアニオン性基含有有機高分子化合物を、溶液を酸性化することにより析出させる工程が好ましい。
【0040】蒸留工程の例には、分散工程において有機溶剤を使用した場合にこれを除去する工程、所望の固形分濃度にするため余剰の水を除去する工程等がある。遠心分離工程の例には、水性記録液としての使用適性に悪影響を及ぼす分散体中の粗大粒子を除去する工程等がある。
【0041】酸析工程の例には、分散工程で得られた水性分散体に塩酸、硫酸、酢酸等の酸を加えて酸性化し、アニオン性基含有有機高分子化合物を顔料粒子表面に析出させる工程等がある。この工程により顔料とアニオン性基含有有機高分子化合物との相互作用を高めるできる。濾過工程の例には、遠心分離工程と同様に分散体中の粗大粒子をカートリッジフィルターやメンブランフィルターにより除去する工程、前述した酸析工程後に固形分をフィルタープレス、ヌッチェ式濾過装置、加圧濾過装置等により濾過する工程等がある。再分散工程の例には、酸析工程、濾過工程によって得られた固形分に塩基性物質および必要により水や添加物を加えて再び分散体とする工程がある。それによりアニオン性基含有有機高分子化合物中のイオン化したアニオン性基の対イオンを分散工程で用いたものから変更することができる。
【0042】分散工程においては水溶性有機溶剤を併用することができ、それにより分散工程における液粘度を低下させることができる場合がある。水溶性有機溶剤の例としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール、等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、等のアミド類が挙げられる。これらの水溶性有機溶剤はアニオン性基含有有機高分子化合物溶液として用いられても良く、別途独立に分散混合物中に加えられても良い。
【0043】分散工程において用いることのできる分散装置として、既に公知の種々の方式による装置が使用でき、特に限定されるものではないが、例えば、スチール、ステンレス、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、ガラス等でできた直径0.1〜10mm程度の球状分散媒体の運動エネルギーを利用する方式、機械的攪拌による剪断力を利用する方式、高速で供給された被分散物流束の圧力変化、流路変化あるいは衝突に伴って発生する力を利用する方式、等の分散方式を採ることができる。
【0044】上記した通り、本発明において、アニオン性含有有機高分子化合物としては、架橋部分を有するアニオン性含有有機高分子化合物を用いることができる。但し、後述する水性記録液の用途においては、高度な分散安定性が要求される場合が多く、予め架橋を完了させておいて、搬送時、保管時、実使用時(記録時)には架橋反応が起こらないようにしておくのが好ましい。
【0045】本発明においてアニオン性基含有有機高分子化合物が架橋性基を含有する場合、例えば、アクリル酸2,3−エポキシプロピル、アクリル酸2,3−エポキシブチル、アクリル酸2,3−エポキシシクロヘキシル、メタクリル酸2,3−エポキシプロピル、メタクリル酸2,3−エポキシブチル、メタクリル酸2,3−エポキシシクロヘキシル等のエポキシ基を有する不飽和脂肪酸類の少なくとも1以上からなるモノマーを含んだ共重合体である場合には、水性分散体製造プロセスにおいて、分散工程以降の任意の段階で開環反応させ、架橋させることができる。開環反応温度は80〜140℃程度が好ましい。反応温度は低すぎる場合には反応速度が遅く、反応完結に長時間を要するため、顔料粒子同士が融着して凝集体を形成しやすくなる。反応温度が高すぎる場合には、顔料粒子同士の融着や顔料粒子自体の成長が起こり、いずれにしても好ましくない。反応温度が分散体の沸点より高くなる場合には加圧反応装置を用いる必要がある。
【0046】本発明の記録液は、少なくともキナクリドン系顔料およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物を含有する水性顔料分散体に、例えば水溶性有機溶剤、水等を混合して調製される。必要に応じて、界面活性剤、水溶性樹脂、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤等を添加することもできる。
【0047】記録液の調整に用いることのできる水溶性有機溶剤の例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エタノール等のアルコール類;1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,2’−オキシビスエタノール、2,2’−エチレンジオキシビス(エタノール)、チオジエタノール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール等の多価アルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、2,2’−オキシビス(2−メトキシエタン)、2,2’−オキシビス(2−エトキシエタン)、2,2’−エチレンジオキシビス(2−メトキシエタン)、2,2’−エチレンジオキシビス(2−メトキシエタン)等のエーテル類が挙げられる。記録液中の水溶性有機溶剤の含有割合は、50重量%以下が好ましく、5〜40重量%の範囲が特に好ましい。
【0048】本発明の記録液に添加しても良い界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性イオン性、非イオン性のいずれの活性剤でも良い。
【0049】アニオン性界面活性剤の例としては、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、半硬化牛脂脂肪酸ナトリウム、等の脂肪酸塩類;ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸トリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、オクタデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類;ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のベンゼンスルホン酸塩類;ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等のナフタレンスルホン酸塩類;スルホコハク酸ジドデシルナトリウム、スルホコハク酸ジオクタデシルナトリウム等のスルホコハク酸エステル塩類;ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸トリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレン硫酸エステル塩類;ドデシルリン酸カリウム、オクタデシルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩類等が挙げられる。
【0050】カチオン性界面活性剤の例としては、酢酸オクタデシルアンモニウム、ヤシ油アミン酢酸塩等のアルキルアミン塩類;塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、塩化ドデシルベンジルジメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩類が挙げられる。
【0051】両性イオン性活性剤の例としては、ドデシルベタイン、オクタデシルベタイン等のアルキルベタイン類;ドデシルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド類等が挙げられる。
【0052】非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル、ポリオキシエチレン(9−オクタデセニル)エーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンフェニルエーテル類;ポリ酸化エチレン、コ−ポリ酸化エチレン酸化プロピレン等のオキシラン重合体類;ソルビタンドデカン酸エステル、ソルビタンヘキサデカン酸エステル、ソルビタンオクタデカン酸エステル、ソルビタン(9−オクタデセン酸)エステル、ソルビタン(9−オクタデセン酸)トリエステル、ポリオキシエチレンソルビタンドデカン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンヘキサデカン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオクタデカン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオクタデカン酸トリエステル、ポリオキシエチレンソルビタン(9−オクタデセン酸)エステル、ポリオキシエチレンソルビタン(9−オクタデセン酸)トリエステル等のソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビトール(9−オクタデセン酸)テトラエステル等のソルビトール脂肪酸エステル類;グリセリンオクタデカン酸エステル、グリセリン(9−オクタデセン酸)エステル等のグリセリン脂肪酸エステル類が挙げられる。これらの非イオン性活性剤の中でもHLBが14以上のものが特に好ましい。
【0053】本発明の水性記録液に添加されても良い水溶性樹脂の例としては、にかわ、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、アラビアゴム、フィッシュグリュー、アルギン酸、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリ酸化エチレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0054】水溶性樹脂は、定着性や粘度調節、速乾性を挙げる目的で、必要に応じて使用されるものであり、記録液に使用する場合の記録液中の水溶性樹脂の含有割合は、0〜30重量%が好ましく、0〜20重量%が特に好ましい。
【0055】本発明の水性記録液は、サインペン、マーカー等の文具類や各種プリンタ、プロッタ類のインクとして好適に使用することができ、とりわけ、その優れた分散性、分散安定性を生かしてインクジェット用インクとして好適に使用することができる。
【0056】本発明は以下の通りの具体的な実施形態を包含する。
1. 少なくともキナクリドン系顔料およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物を含有することを特徴とする水性顔料分散体。
【0057】2. 少なくともキナクリドン系顔料、キナクリドンスルホン酸系化合物およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物を含有することを特徴とする水性顔料分散体。
【0058】3. 少なくともキナクリドン系顔料、キナクリドンスルホン酸系化合物およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物、ならびにアニオン性基含有有機高分子化合物を含有することを特徴とする水性顔料分散体。
【0059】4. キナクリドン系顔料100重量部に対してキナクリドンスルホン酸系化合物およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物の使用量がそれぞれ3重量部以上であって、かつキナクリドンスルホン酸系化合物およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物の使用量の和が6〜30重量部である上記2〜3記載の水性顔料分散体。
【0060】5. 顔料がアニオン性基含有有機高分子化合物によって被覆されている上記3〜4記載の水性顔料分散体。
【0061】6. アニオン性基がカルボキシル基およびカルボキシラート基である上記2〜5記載の水性顔料分散体。
【0062】7. カルボキシラート基の対イオンが、アンモニウムイオンおよびアルカリ金属イオンからなる群から選ばれるカチオンである上記6記載の水性顔料分散体。
【0063】8. アニオン性基含有有機高分子化合物の重量平均分子量が5,000〜50,000である上記3〜7記載の水性顔料分散体。
【0064】9. アニオン性基含有有機高分子化合物の酸価が30〜220mgKOH/gおよびガラス転移点が−20〜60℃である上記3〜8記載の水性顔料分散体。
【0065】10. 顔料とアニオン性基含有有機高分子化合物の比率が、顔料100重量部に対してアニオン性基含有有機高分子化合物が25重量部〜200重量部である上記3〜9記載の水性顔料分散体。
【0066】 上記1〜10記載の水性顔料分散体を含有することを特徴とする水性記録液。
【0067】
【実施例】以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、「重量部」および「重量%」を表わす。
【0068】<合成例1>(アニオン性基含有有機高分子化合物A−1の合成)
攪拌装置、滴下装置、温度センサー、および上部に窒素導入装置を有する環流装置を取り付けた反応容器を有する自動重合反応装置(重合試験機DSL−2AS型、轟産業(株)製)の反応容器にメチルエチルケトン500部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら75℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸n−ブチル315.0部、アクリル酸n−ブチル25.0部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル75.0部、アクリル酸85.0部および「パーブチル O」(有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製)40.0部の混合液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で15時間反応を継続させて、酸価132、ガラス転移温度(計算値)29℃、重量平均分子量21,000のアニオン性基含有有機高分子化合物溶液を得た。反応終了後、メチルエチルケトンの一部を減圧留去し、樹脂溶液の不揮発分を50%に調整した。
【0069】以下の合成例においても溶剤の減圧留去または添加により樹脂溶液の不揮発分を50%に調整した。
【0070】<合成例2>(アニオン性基含有有機高分子化合物A−2の合成)
モノマー組成をメタクリル酸n−ブチル202.6部、アクリル酸ブチル22.8部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル75.0部、メタクリル酸100.0部、スチレン99.6部に変えたこと以外は合成例1と同様にして酸価130、ガラス転移温度(計算値)54℃、重量平均分子量22,500のアニオン性基含有有機高分子化合物溶液を得た。
【0071】<合成例3>(アニオン性基含有有機高分子化合物A−3の合成)
メチルエチルケトン500部を600部に、モノマー組成をメタクリル酸n−ブチル101.2部、アクリル酸ブチル114.4部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル75.0部、メタクリル酸84.4部、スチレン100.0部、メタクリル酸2,3−エポキシプロピル25.0部に変えたこと以外は合成例1と同様にして酸価110、ガラス転移温度(計算値)30℃、重量平均分子量26,300のアニオン性基含有有機高分子化合物溶液を得た。
【0072】<実施例1>冷却用ジャケットを備えた混合槽に、顔料としてファストゲンスーパーマゼンタRTS(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)842部、3,10−ジクロロキナクリドンスルホン酸アルミニウム塩(平均スルホン基数1.3:B−1)105部、フタルイミドメチル化−3,10−ジクロロキナクリドン(平均フタルイミドメチル基数1.4C−1)53部と、合成例2で得たアニオン性基含有有機高分子化合物A−2の溶液1,000部、20%水酸化ナトリウム水溶液200部、および水2,800部、を仕込み、攪拌、混合した。混合液を直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置(SCミル SC100/32型、三井鉱山(株)製)に通し、循環方式(分散装置より出た分散液を混合槽に戻す方式)により2時間分散した。分散装置の回転数は2,700回転/分とし、冷却用ジャケットには冷水を通して分散液温度が40℃以下に保たれるようにした。
【0073】分散終了後、混合槽より分散原液を抜き採り、次いで水10,000部で混合槽および分散装置流路を洗浄し、分散原液と合わせて希釈分散液を得た。
【0074】ガラス製蒸留装置に希釈分散液を入れ、メチルエチルケトンの全量と水の一部を留去した。室温まで放冷後、ディスパ(TKホモディスパ20型、特殊機化工業(株)製)にて分散し、さらに遠心分離器(50A−IV型、(株)佐久間製作所)にて粗大粒子を除去したのち、不揮発分を調整して不揮発分20%の水性顔料分散体を得た。
【0075】<実施例2>実施例1と同様にして希釈分散液を得た。希釈分散液に攪拌しながら10%塩酸を滴下してpH3.5に調整したのち、固形分をヌッチェ式濾過装置で濾過、水洗した。ケーキを容器に採り、20%水酸化カリウム水溶液300部を加えた後、ディスパ(TKホモディスパ20型、特殊機化工業(株)製)にて分散し、さらに水を加えて不揮発分を調整して、不揮発分20%の水性顔料分散体を得た。
【0076】<実施例3>顔料としてファストゲンスーパーマゼンタRTS(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)842部、3,10−ジクロロキナクリドンスルホン酸アルミニウム塩(平均スルホン基数1.3:B−1)53部、およびフタルイミドメチル化−3,10−ジクロロキナクリドン(平均フタルイミドメチル基数1.4:C−1)105部を用いたこと以外は実施例2と同様にして水性顔料分散体を得た。
【0077】<実施例4>顔料としてファストゲンスーパーマゼンタRTS(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)894部、3,10−ジクロロキナクリドンスルホン酸アルミニウム塩(平均スルホン基数1.3:B−1)53部、およびフタルイミドメチル化−3,10−ジクロロキナクリドン(平均フタルイミドメチル基数1.4:C−1)53部を用いたこと以外は実施例2と同様にしてマゼンタ色水性顔料分散体を得た。
【0078】<実施例5>顔料としてファストゲンスーパーマゼンタRTS(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)844部、3,10−ジクロロキナクリドンスルホン酸アルミニウム塩(平均スルホン基数1.3:B−1)78部、およびフタルイミドメチル化−3,10−ジクロロキナクリドン(平均フタルイミドメチル基数1.4:C−1)78部を用いたこと以外は実施例2と同様にしてマゼンタ色水性顔料分散体を得た。
【0079】<実施例6>顔料としてファストゲンスーパーマゼンタRTS(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)790部、3,10−ジクロロキナクリドンスルホン酸アルミニウム塩(平均スルホン基数1.3:B−1)105部、およびフタルイミドメチル化−3,10−ジクロロキナクリドン(平均フタルイミドメチル基数1.4:C−1)105部を用いたこと以外は実施例2と同様にしてマゼンタ色水性顔料分散体を得た。
【0080】<比較例1>顔料としてファーストゲンスーパーマゼンタRTS(C.I.ピグメントレッド122、大日本インキ化学工業(株)製)947部,ジメチルアミノメチル化−2,9−ジメチルキナクリドン53部を用いたこと以外は実施例2と同様にしてマゼンタ色水性顔料分散体を得た。
【0081】<比較例2>顔料としてファストゲンスーパーマゼンタRTS(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)895部、および3,10−ジクロロキナクリドンスルホン酸アルミニウム塩(平均スルホン基数1.3:B−1)105部を用いたこと以外は実施例2と同様にしてマゼンタ色水性顔料分散体を得た。
【0082】<実施例7>アニオン性基含有有機高分子化合物として、合成例1で得たアニオン性基含有有機高分子化合物A−1の溶液1,000部を用い、また20%水酸化ナトリウム水溶液200部をトリエチルアミン110部に変えたこと以外は実施例2と同様にして不揮発分20%の水性顔料分散体を得た。
【0083】<実施例8>顔料としてファストゲンスーパーマゼンタRTS(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)811部、3,10−ジクロロキナクリドンスルホン酸アルミニウム塩(平均スルホン基数0.8:B−2)126部、フタルイミドメチル化−3,10−ジクロロキナクリドン(平均フタルイミドメチル基数0.7:C−2)63部用いたこと以外は実施例2と同様にしてマゼンタ色水性顔料分散体を得た。
【0084】<実施例9>顔料としてファストゲンスーパーマゼンタRTS(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)851部、キナクリドンスルホン酸アルミニウム塩(平均スルホン基数1.1:B−3)96部、フタルイミドメチル化−3,10−ジクロロキナクリドン(平均フタルイミドメチル基数1.0:C−3)53部用いたこと以外は実施例2と同様にしてマゼンタ色水性顔料分散体を得た。
【0085】<実施例10>顔料としてファストゲンスーパーマゼンタHS(C.I.ピグメント レッド202、大日本インキ化学工業(株)製)830部、キナクリドンスルホン酸カルシウム塩(平均スルホン基数1.1:B−4)105部、フタルイミドメチル化−3,10−ジクロロキナクリドン(平均フタルイミドメチル基数1.0:C−3)65部用いたこと以外は実施例2と同様にしてマゼンタ色水性顔料分散体を得た。
【0086】<実施例11>顔料としてファストゲンスーパーマゼンタHS(C.I.ピグメント レッド202、大日本インキ化学工業(株)製)830部、キナクリドンスルホン酸アルミニウム塩(平均スルホン基数1.1:B−3)105部、フタルイミドメチル化キナクリドン(平均フタルイミドメチル基数1.0:C−4)65部用いたこと以外は実施例2と同様にしてマゼンタ色水性顔料分散体を得た。
【0087】<実施例12>顔料としてファストゲンスーパーマゼンタRY(C.I.ピグメント レッド122とC.I.ピグメント バイオレット19との固溶体、大日本インキ化学工業(株)製)842部、3,10−ジクロロキナクリドンスルホン酸アルミニウム塩(平均スルホン基数0.8:B−2)105部、フタルイミドメチル化−3,10−ジクロロキナクリドン(平均フタルイミドメチル基数0.7:B−2)53部用いたこと以外は実施例2と同様にしてマゼンタ色水性顔料分散体を得た。
【0088】<実施例13>冷却用ジャケットを備えた混合槽に、顔料としてファストゲンスーパーマゼンタRTS(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)842部、3,10−ジクロロキナクリドンスルホン酸アルミニウム塩(平均スルホン基数1.3:B−1)105部、フタルイミドメチル化−3,10−ジクロロキナクリドン(平均フタルイミドメチル基数1.4:C−1)53部と、合成例3で得たアニオン性基含有有機高分子化合物A−3溶液1,000部、20%水酸化カリウム溶液300部、および水2,800部、を仕込み、攪拌、混合した。混合液を直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置(ドライスミル SF−12型、ドライスベルケ社製)に通し、循環方式により6時間分散した。分散装置の回転数は900回転/分とし、冷却用ジャケットには冷水を通して分散液温度が30℃以下に保たれるようにした。
【0089】分散終了後、混合槽より分散原液を抜き採り、次いで水10,000部で混合槽および分散装置流路を洗浄し、分散原液と合わせて希釈分散液を得た。
【0090】加圧反応装置に希釈分散液を入れ、密閉したのち攪拌しながら120℃で2時間加熱し、架橋反応を行わせた。放冷後、反応液をガラス製蒸留装置に入れ、メチルエチルケトンの全量と水の一部を留去した。
【0091】室温まで放冷後、分散液に攪拌しながら10%塩酸を滴下してpH3.5に調整したのち、固形分をヌッチェ式濾過装置で濾過、水洗した。
【0092】ケーキを容器に採り、20%水酸化カリウム水溶液300部を加えてディスパ(TKホモディスパ20型、特殊機化工業(株)製)にて分散し、さらに遠心分離器(50A−IV型、(株)佐久間製作所)にて粗大粒子を除去したのち、不揮発分を調整して不揮発分20%のマゼンタ色水性顔料分散体を得た。
【0093】<実施例14>冷却用ジャケットを備えた混合槽に、顔料としてファストゲンスーパーマゼンタRTS(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)842部、3,10−ジクロロキナクリドンスルホン酸アルミニウム塩(平均スルホン基数1.3:B−1)105部、フタルイミドメチル化−3,10−ジクロロキナクリドン(平均フタルイミドメチル基数1.4C−1)53部と、エマルゲン147(ポリオキシエチレンドデシルエーテル、花王(株)製)500部、20%水酸化ナトリウム水溶液200部、および水3,300部、を仕込み、攪拌、混合した。混合液を直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置(SCミル SC100/32型、三井鉱山(株)製)に通し、循環方式(分散装置より出た分散液を混合槽に戻す方式)により2時間分散した。分散装置の回転数は2,700回転/分とし、冷却用ジャケットには冷水を通して分散液温度が40℃以下に保たれるようにした。
【0094】分散終了後、混合槽より分散原液を抜き採り、次いで水10,000部で混合槽および分散装置流路を洗浄し、分散原液と合わせて希釈分散液を得た。
【0095】ガラス製減圧蒸留装置に希釈分散液を入れ、10kPaの減圧下、メチルエチルケトンの全量と水の一部を留去した。室温まで放冷後、ディスパ(TKホモディスパ20型、特殊機化工業(株)製)にて分散し、さらに遠心分離器(50A−IV型、(株)佐久間製作所)にて粗大粒子を除去したのち、不揮発分を調整して不揮発分20%の水性顔料分散体を得た。
【0096】<実施例15>顔料としてファストゲンスーパーマゼンタRTS(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)895部、およびフタルイミドメチル化−3,10−ジクロロキナクリドン(平均フタルイミドメチル基数1.4:C−1)105部を用いたこと以外は実施例2と同様にしてマゼンタ色水性顔料分散体を得た。
【0097】<実施例16>(ピエゾ方式インクジェットプリンタ用水性記録液の適性評価)特開平7−228808号公報記載の実施例1を参考にしてピエゾ方式インクジェットプリンタ用インクを調整した。インク組成を以下に示す。
【0098】
水性顔料分散体 25部トリエチレンク゛リコールモノフ゛チルエーテル 10部シ゛エチレンク゛リコール 15部サーフィノール465(エアフ゜ロタ゛クツ社製) 0.8部水 49.2部
【0099】このようにして調製したインクについて、調整直後および50℃の恒温槽中で30日間貯蔵後に平均粒径と粘度を測定した。平均粒径はレーザードップラ式粒度分析計マイクロトラック(UPA150型、リーズ&ノースロップ社製)で測定したメディアン径をもって平均粒径とした。粘度はR型粘度計(R−500型、東機産業(株)製)を用い、20℃で測定した。また、貯蔵後のインクを用い、ピエゾ方式のインクジェットプリンタ(MJ−8000C型、セイコーエプソン(株)製)にて50枚の連続印字を行い、印字性能を評価した。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】表1

【0101】
【表2】表1(つづき)


【0102】
<注> 顔料誘導体 QSA:キナクリドンスルホン酸系化合物 PMQ:フタルイミドメチル化キナクリドン系化合物 DMAMQ:ジメチルアミノメチル化キナクリドン 樹脂 147:エマルゲン147 印字性 ○:50枚以上印字可能 △:10枚以上50枚未満でかすれ等が発生 ×:10枚未満でかすれ等が発生
【0103】尚、ジメチルアミノメチル化−2,9−ジメチルキナクリドン(DMAMQ)105部(表中の含有率換算;10.5%)を用いたこと以外は比較例1と同様にしてマゼンタ色水性顔料分散体を得たが、この分散体は、調製直後と50℃×30日後の、粒径・粘度の各特性及び印字性は、どれも、この比較例1の結果と実質的に同じだった。
【0104】<実施例17>(サーマル方式インクジェットプリンタ用水性記録液の適性評価)
特開平6−122846公報記載の実施例2を参考にしてサーマル方式インクジェットプリンタ用インクを調整した。インク組成を以下に示す。
【0105】
水性顔料分散体 25部グリセリン 8部エチレングリコール 5部エタノール 5部エマルゲン120(花王(株)製) 0.05部水 57部
【0106】このようにして調製したインクについて、調整直後および50℃の恒温槽中で30日間貯蔵後に平均粒径と粘度を測定した。平均粒径はレーザードップラ式粒度分析計マイクロトラック(UPA150型、リーズ&ノースロップ社製)で測定したメディアン径をもって平均粒径とした。粘度はR型粘度計(R−500型、東機産業(株)製)を用い、20℃で測定した。また、サーマル方式のインクジェットプリンタ(BJC−600J型、キヤノン(株)製)にて100枚の連続印字を行い、印字性能を評価した。結果を表2に示す。
【0107】
【表3】表2

【0108】
【表4】表2(つづき)


【0109】
<注> 顔料誘導体 QSA:キナクリドンスルホン酸系化合物 PMQ:フタルイミドメチル化キナクリドン系化合物 DMAMQ:ジメチルアミノメチル化キナクリドン 印字性 ○:50枚以上印字可能 △:10枚以上50枚未満でかすれ等が発生 ×:10枚未満でかすれ等が発生
【0110】尚、ジメチルアミノメチル化−2,9−ジメチルキナクリドン(DMAMQ)105部(表中の含有率換算;10.5%)を用いたこと以外は比較例1と同様にしてマゼンタ色水性顔料分散体を得たが、この分散体は、調製直後と50℃×30日後の、粒径・粘度の各特性及び印字性は、どれも、この比較例1の結果と実質的に同じだった。
【0111】上記実施例によれば、本発明の記録液は、従来の、キナクリドン顔料とジメチルアミノメチル化キナクリドン系化合物からなる水性顔料分散体を用いた記録液に比べて、より高温での長期間放置後における粒径の増大や高粘度化が起こりにくいことがわかる。しかもキナクリドン顔料とフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物とキナクリドンスルホン酸系化合物からなる水性顔料分散体を用いた本発明の記録液は、前二者のみからなる同水性分散体を用いた本発明の記録液よりも、さらに、高温での長期間放置後における粒径の増大や高粘度化が起こりにくく、印字性も向上することがわかる。
【0112】また、ピエゾ方式の記録液組成では、サーマル方式の液組成の場合と比べて、分散剤を従来の界面活性剤からアニオン性基含有有機高分子化合物に置換した場合の、より高温での長期間放置後における粘度低減化と印字性向上が、より顕著であることがわかる。
【0113】
【発明の効果】本発明の赤色ないしマゼンタ色の水性顔料分散体は分散性および分散安定性に優れており、インクジェットプリンタ用インク等の記録液に使用した場合に貯蔵安定性や演色性、透明性に優れた記録液を与え、鮮明な画像を形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくともキナクリドン系顔料およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物を含有することを特徴とする水性顔料分散体。
【請求項2】 少なくともキナクリドン系顔料、キナクリドンスルホン酸系化合物およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物を含有することを特徴とする水性顔料分散体。
【請求項3】 少なくともキナクリドン系顔料、キナクリドンスルホン酸系化合物およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物、ならびにアニオン性基含有有機高分子化合物を含有することを特徴とする水性顔料分散体。
【請求項4】 キナクリドン系顔料100重量部に対してキナクリドンスルホン酸系化合物およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物の使用量がそれぞれ3重量部以上であって、かつキナクリドンスルホン酸系化合物およびフタルイミドメチル化キナクリドン系化合物の使用量の和が6〜30重量部である請求項2〜3記載の水性顔料分散体。
【請求項5】 顔料がアニオン性基含有有機高分子化合物によって被覆されている請求項3〜4記載の水性顔料分散体。
【請求項6】 アニオン性基がカルボキシル基およびカルボキシラート基である請求項2〜5記載の水性顔料分散体。
【請求項7】 カルボキシラート基の対イオンが、アンモニウムイオンおよびアルカリ金属イオンからなる群から選ばれるカチオンである請求項6記載の水性顔料分散体。
【請求項8】 アニオン性基含有有機高分子化合物の重量平均分子量が5,000〜50,000である請求項3〜7記載の水性顔料分散体。
【請求項9】 アニオン性基含有有機高分子化合物の酸価が30〜220mgKOH/gおよびガラス転移点が−20〜60℃である請求項3〜8記載の水性顔料分散体。
【請求項10】 顔料とアニオン性基含有有機高分子化合物の比率が、顔料100重量部に対してアニオン性基含有有機高分子化合物が25重量部〜200重量部である請求項3〜9記載の水性顔料分散体。
【請求項11】 請求項1〜10記載の水性顔料分散体を含有することを特徴とする水性記録液。

【公開番号】特開2000−191974(P2000−191974A)
【公開日】平成12年7月11日(2000.7.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−373119
【出願日】平成10年12月28日(1998.12.28)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】