説明

水性顔料分散液およびそれを用いたインク組成物

【課題】微粒子顔料の分散安定性と耐熱性に優れた水性顔料分散液を提供する。またピエゾ方式だけでなく高温でのインクの保存安定性が要求されるサーマル方式においても長期に渡り安定なインクの吐出を実現でき、さらに、光学濃度が高くて光沢感のあるインク組成物を提供する。
【解決手段】(A)ジオキサジン系顔料、(B)ジオキサジン系顔料にスルホン酸基が導入された顔料誘導体、(C)水、(D)水溶性有機溶媒を含有する水性顔料分散液であって、該水性顔料分散液を含有するインク組成物を水で希釈して(A)ジオキサジン系顔料と(B)顔料誘導体を合わせた濃度を10ppmとしたときの、吸収スペクトルのピークのうち、波長550〜600nmにおける最大のピークの吸光度と、波長500〜550nmにおける最大のピークの吸光度との比が0.99以上である水性顔料分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散安定性と耐熱性に優れる水性顔料分散液およびそれを用いたインク組成物に関する。特にピエゾ方式のインクジェットプリンターやサーマル方式のインクジェットプリンターに使用されるインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンター用インクや筆記具用インクに利用される着色剤として、染料のかわりに堅牢性に優れる顔料の利用が検討されている。インクジェットインクの吐出方式には、電圧をかけることで圧電素子を変形させインクを押し出すピエゾ方式と加熱による発泡の際に生じる圧力によりインクをとばすサーマル方式とがある。一般にインクジェット用インクでは溶媒として水が使用されるが、顔料は染料と異なり水に不溶なため、顔料を使用するインクジェット用インクでは顔料が微粒子の状態で水中に安定に分散していることが重要である。特に、サーマル方式では、インクが吐出時に瞬間的に400〜500℃の高温にさらされるため、高温での耐熱性と顔料の分散安定性が要求される。
【0003】
水中で顔料微粒子を安定に分散する方法としては、高分子分散剤を用いる方法が知られている(特許文献1参照)。しかし、この方法では、高分子分散剤を顔料粒子表面に吸着させる必要がある。このため、比較的極性が大きいカーボンブラックなどの無機顔料の分散安定化には有効であるが、粒子表面の極性が小さい有機顔料の分散安定化にはそれほど有効な方法でない。
【0004】
また、有機顔料スルホン化誘導体を用いることにより有機顔料を水中に安定に分散させる方法が提案されている(特許文献2〜6参照)。これらの方法では、有機顔料スルホン酸誘導体が有機顔料表面に強く吸着し、スルホン酸誘導体の静電反発力により顔料の凝集が抑制される。しかし、ピエゾ、サーマルいずれの吐出方式においても、インクジェットノズルからの良好な吐出安定性、耐目詰まり性、インクの保存安定性などを得るためには、限外濾過膜、半透膜、逆浸透膜などを用いる煩雑な精製工程が必要である。
【0005】
また、顔料スルホン化誘導体の合成条件を最適化することで銅フタロシアニン顔料を水中に微粒子の状態で安定に分散させる方法が提案されている(特許文献7参照)。この方法では、顔料スルホン化誘導体のスルホン酸基の導入数を変えることで、水性顔料分散液の吸収スペクトルを変化させており、吸収スペクトルのピークの吸光度比を一定値以上にすることで、ピエゾ方式およびサーマル方式において吐出安定性が良好なインク組成物を提供している。通常、銅フタロシアニン顔料からなるインク組成物はシアンインクとして使用される。減法混色の3原色であるシアン、マゼンダ、イエローのカラー顔料インクを備えた3色インクセットは色再現範囲を広げるには限界があり、銀塩写真や製版印刷などに匹敵する高画質の印刷物を提供し得るレベルには至っていない。
【0006】
一方、ピエゾ方式のインクジェット用インクとして、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックにレッド及びブルーを加え6色インクセットとするため、ジオキサジン系顔料をインクジェット用インクに用いた技術がある(特許文献8参照)。ここでは、ブルーインクの着色剤としてジオキサジン系顔料PV23を用い、分散剤としてスチレン−アクリル酸共重合体を用いることで顔料粒子を水中に分散安定化している。またインク中の顔料濃度を2重量%まで低減させることで、印刷物の色再現範囲を広げるともに印刷物の光沢度を向上させている。しかし、このインクを用いた場合、顔料濃度が低いため印刷物の光学濃度を高めるのが困難である。
【特許文献1】特開平5−179183号公報(第4頁)
【特許文献2】特開2002−121419号公報(第2頁)
【特許文献3】特開2002−121460号公報(第3頁)
【特許文献4】特開2002−285067号公報(第2頁)
【特許文献5】特開2002−309122号公報(第2頁)
【特許文献6】特開2002−241638号公報(第1頁)
【特許文献7】特開2006−176759号公報(第2頁)
【特許文献8】国際公開第02/100959号パンフレット(第3頁、第17〜19頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、微粒子化した有機顔料の分散安定性および耐熱性が両立した水性顔料分散液を提供することを目的とし、さらにピエゾ方式だけでなく高温でのインクの安定性が要求されるサーマル方式においても長期間にわたり安定なインクの吐出を実現でき、さらに、光学濃度が高くて光沢のある印刷物を得ることができるインク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、(A)ジオキサジン系顔料、(B)ジオキサジン系顔料にスルホン酸基が導入された顔料誘導体、(C)水、(D)水溶性有機溶媒を含有する水性顔料分散液であって、該水性顔料分散液を含有するインク組成物を水で希釈して(A)ジオキサジン系顔料と(B)顔料誘導体を合わせた濃度を10ppmとしたときの吸収スペクトルのピークのうち、波長550〜600nmにおける最大のピークの吸光度と、波長500〜550nmにおける最大のピークの吸光度との比が0.99以上である水性顔料分散液であり、前記水性顔料分散液を含有するインク組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ジオキサジン系顔料の微粒子状態での分散安定性が優れ、さらに高温での耐熱性に優れる水性顔料分散液を供給することができる。また本発明の水性顔料分散液を用いて製造されるインク組成物は耐熱性に優れるため、ピエゾ方式だけでなく、高温でのインクの安定性が要求されるサーマル方式においても安定な吐出を実現できる。さらに、インク中に含まれる顔料濃度を増大させても、印刷した状態において光学濃度が高く、また微細化された状態で顔料粒子が存在するため光沢がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は(A)ジオキサジン系顔料、(B)ジオキサジン系顔料にスルホン酸基が導入された顔料誘導体、(C)水、(D)水溶性有機溶媒を含有する水性顔料分散液であって、該水性顔料分散液を含有するインク組成物を水で希釈して(A)ジオキサジン系顔料と(B)顔料誘導体を合わせた濃度を10ppmとしたときの、吸収スペクトルのピークのうち、波長550〜600nmにおける最大のピークの吸光度と、波長500〜550nmにおける最大のピークの吸光度との比が0.99以上であることが必要である。
【0011】
本発明では、波長550〜600nmにおける最大のピークの吸光度と、波長500〜550nmにおける最大のピークの吸光度との比は次のようにして求める。波長550〜600nmにおける最大のピークを決定し、そのピーク値(吸光度)を読みとる。これを吸光度[1]とする。次に、波長500〜550nmにおける最大のピークを決定し、そのピーク値(吸光度)を読みとる。これを吸光度[2]とする。吸光度[1]/吸光度[2]より吸光度比を算出する。本発明における波長550〜600nmにおける最大のピークの吸光度と、波長500〜550nmにおける最大のピークの吸光度との比は(以下、吸光度比)は0.99以上であり、好ましくは1.00以上である。吸光度比が0.99より小さいと顔料分散液の分散安定性が低下し、吸光度比が1.00より小さいと顔料分散液の耐熱性が低下する場合がある。
【0012】
ジオキサジン系顔料誘導体のスルホン化度合いによって上記の吸光度比が変化し、ひいては水性顔料分散液の分散安定性が大きく変化する。水性顔料分散液の分散安定性を向上させるためには、添加するジオキサジン系顔料誘導体のスルホン化の度合いを最適化し、波長550〜600nmにおける最大のピークの吸光度と、波長500〜550nmにおける最大のピークの吸光度との比を0.99以上にする必要がある。
【0013】
吸光度比は、顔料分散液に含有される(B)顔料誘導体を合成する時の反応条件(反応温度、反応液濃度、反応時間など)によって制御することが可能である。例えば、濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、またはこれらの混合液などの濃度や混合比などを適切に調節し、反応温度0〜150℃、反応時間1〜24時間の範囲において適宜反応条件を変更することにより、吸光度比を0.99以上とすることができる。
【0014】
本発明における吸収スペクトルのピーク吸光度の比は例えば次のような試料を作製し、測定する。顔料分散液を(A)ジオキサジン系顔料と(B)顔料誘導体の各々の含有量を合わせた濃度が顔料分散液総量に対し、10ppmとなるようイオン交換水で希釈する。次いで、紫外可視分光光度計(例えば(株)島津製作所製MultiSpec−1500など)を用いて、得られた溶液の吸収スペクトルの測定を行う。測定によって得られた吸収スペクトルを用い、上記に示した算出方法に基づき、吸光度比を算出する。
【0015】
本発明で用いる(A)ジオキサジン系顔料は、顔料の主成分が一般式(1)で表されるジオキサジン骨格を有する化合物である。
【0016】
【化1】

【0017】
一般式(1)のR、Rは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン、アミノ基、アミド基、アルキル基、アリール基もしくはヘテロ環基から選択され、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。また、R、R、R、Rは、同一であっても異なっていてもよく、アルキル基、アルコキシ基、アミド基、カルバゾール基もしくはベンズイミダゾル基から選択され、さらにカルバゾール基およびベンズイミダゾル基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニルの置換基を有していてもよい。RとRは縮合して環を形成してもよく、RとRは縮合して環を形成してもよい。
【0018】
本発明で用いる(A)ジオキサジン系顔料の具体的な例としては、青色顔料PB80、紫色顔料PV23、PV37などが挙げられる。顔料の着色力が高く、色調にも優れることから、特にPV23の使用が好ましい。
【0019】
本発明における(B)ジオキサジン系顔料にスルホン酸基が導入された顔料誘導体とは、(b−1)用いる(A)ジオキサジン系顔料と同じ顔料にスルホン酸基が導入された顔料誘導体、(b−2)用いる(A)ジオキサジン系顔料が有する化学構造の一部と同一の化学構造を有する顔料にスルホン酸基が導入された顔料誘導体の2種類を指し、それぞれ(b−1)と(b−2)を単独でも、あるいは混合して用いても良い。例えば、(A)の有機顔料にジオキサジン系顔料PV23を用いる場合、(b−1)としてPV23にスルホン酸基が導入された顔料誘導体、もしくは(b−2)として、PV23と一部の化学構造が同一である顔料PV37にスルホン酸基が導入された顔料誘導体をそれぞれ単独か、あるいは(b−1)と(b−2)を組み合わせて用いられる。これらの顔料と顔料誘導体は分子間力により強く結合し、微粒子表面を負帯電させる。顔料と顔料誘導体との結合力をより大きくするためには、顔料とその顔料自体にスルホン酸基が導入された顔料誘導体を組み合わせることがさらに好ましい。なお、以下につづく説明において、(B)については、2種類をまとめて「スルホン酸基が導入された顔料誘導体」という。
【0020】
本発明で用いる(B)スルホン酸基が導入された顔料誘導体は、1分子中に1〜4個のスルホン酸基が導入された化合物の混合物である。スルホン酸基が導入された顔料誘導体の1分子あたりの平均スルホン酸基導入数は、好ましくは1.1個以上、より好ましくは1.4個以上である。平均スルホン酸基導入数が1.1個より少ないと、顔料粒子間の静電反発力が弱くなり分散状態が不安定化する場合がある。また、平均スルホン酸基導入数が1.4個より少ないと、水性顔料分散液の耐熱性が低下する場合がある。また、平均スルホン酸基導入数が4個より多いと、スルホン酸基が導入された顔料誘導体の水への溶解性が高すぎて分散不安定化する場合がある。
【0021】
本発明で用いる(B)スルホン酸基が導入された顔料誘導体の吸収スペクトルは、スルホン酸基が導入された顔料誘導体をイオン交換水と混合して、最大吸光度が3(通常の紫外可視分光光度計の検知限界)を越えない濃度の混合液を作製し、この混合液の状態で測定する。本発明で用いるスルホン酸基が導入された顔料誘導体は、その混合液の波長400〜800nmにおける吸収スペクトルの最大吸収波長が575nm以上であることが好ましい。吸収スペクトルの最大吸収波長が575nmより短波長側にある場合、顔料の凝集がおこりやすくなる。
【0022】
また、スルホン酸基が導入された顔料誘導体の吸収スペクトルの最大吸収波長は、(B)顔料誘導体を合成する時の反応条件(反応温度、反応液濃度、反応時間など)によって制御することが可能である。例えば、濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、またはこれらの混合液などの濃度や混合比などを適切に調節し、反応温度0〜150℃、反応時間1〜24時間の範囲において適宜反応条件を変更することにより、吸収スペクトルの最大吸収波長を575nm以上とすることができる。
【0023】
本発明における顔料誘導体の吸収スペクトルの最大吸収波長の測定方法は例えば次のような方法により行う。顔料誘導体をイオン交換水に投入し、次いでボールミル、ビーズミル、超音波を印加するなどの方法により、顔料誘導体とイオン交換水の混合液を作製する。最も好ましい方法としては超音波を適当な時間印加することによって顔料誘導体とイオン交換水の混合液を作製する。次いで、紫外可視分光光度計(例えば(株)島津製作所製MultiSpec−1500)を用いて混合液の吸収スペクトルの測定を行う。波長400〜800nmの範囲において、最大の吸光度を示す吸収スペクトルのピークの波長を最大吸収波長とする。
【0024】
本発明で用いる(B)スルホン酸基が導入された顔料誘導体は、例えば次のような方法により合成される。前記の有機顔料を濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、またはこれらの混合液などに投入してスルホン化反応を行う。得られた反応液を水で希釈し、場合により金属アルカリ水溶液またはアミンまたはその水溶液で中和する。このようにして得られた懸濁液をろ過した後に水系の洗浄液で洗浄し、乾燥する。
【0025】
このときの中和剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノールなどの有機アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリ類などが挙げられる。
【0026】
本発明の水性顔料分散液中には、顔料インクの紙への定着性を向上させるために高分子を含有してもよい。高分子としては、水に溶解する水溶性高分子および/または水に溶解しない水分散性高分子を含有することができ、高分子の具体的な例としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリフェノールなどが挙げられる。紙への定着性に優れることからポリウレタンを使用することが好ましく、ポリウレタンの中でも特にカルボン酸で変性したポリウレタンを用いることが、顔料インクのサーマル吐出特性が良好となるため好ましい。
【0027】
通常、ポリウレタンはイソシアネート基を含有する化合物と、水酸基などの活性水素を含有する化合物との付加反応により生成される。カルボン酸で変性したポリウレタンを得るためには、例えば、活性水素を含有する化合物としてカルボキシル基を含有するジオールを用いることが好ましい。
【0028】
本発明で用いるポリウレタンの酸価は、好ましくは50〜130KOH・mg/gである。ポリウレタンの酸価が50より小さいと、ポリウレタンを含有する水性顔料分散液の耐熱性が不良となる場合がある。一方、ポリウレタンの酸価も130より大きいとポリウレタンを含有するインク組成物から得られる印画の耐水性が不良となる場合がある。ポリウレタンの酸価は、例えば、ポリウレタンの構成成分として用いられるカルボキシル基と水酸基を含有する化合物のポリウレタン中の含有量を変えることによって制御可能である。
【0029】
ポリウレタンの酸価は、ポリウレタン1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数を意味する。本発明ではポリウレタンの酸価の測定は次のように行う。塩酸水溶液などをポリウレタンに滴下し、ポリウレタンを析出させた後、上澄みをろ過し、イオン交換水によりポリウレタンの水洗を十分に行う。その後、100℃以上の温度で数時間乾燥させることで、ポリウレタンから中和剤、塩酸、水などを完全に取り除いた後、ポリウレタンをエタノールに10重量%以下の濃度で溶解させる。ポリウレタンが完全にエタノールに溶解しない場合には、メチルエチルケトンなどの水溶性有機溶媒を添加して溶解させる。このようにしてポリウレタンの酸価測定用のサンプル作製を行う。JIS規格K0070(1992年)に基づき、このポリウレタン溶液にフェノールフタレイン溶液を数滴加えた後、0.1モル/Lの水酸化カリウム溶液を用いて滴定を行い、ポリウレタンの酸価を算出する。
【0030】
本発明で用いるポリウレタンは、重量平均分子量が好ましくは10000〜180000、より好ましくは13000〜150000の範囲にある。ポリウレタンの重量平均分子量が10000より小さいと、ポリウレタンを含有するインク組成物から得られる印画の紙に対する定着性が低下する場合がある。一方、ポリウレタンの重量平均分子量が180000より大きいと、ポリウレタンを含有するインク組成物の粘度が好ましくないほど上昇しサーマル吐出特性が不良となる場合がある。ポリウレタンの分子量は、例えば、ポリウレタンの合成条件(反応温度、反応時間など)によって制御可能である。本発明において、ポリウレタンの分子量の測定は、例えばゲルパーミエーション・クロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算で求めることができる。
【0031】
本発明の水性顔料分散液は、水中で多数の一次粒子の集合体である顔料の粗大粒子(通常1〜50μm)に剪断応力を印加し、顔料の粗大粒子を一次粒子または少数の一次粒子の集合体の粒子に微細化して分散することによって作製することができる。水中で粗大粒子に剪断応力を印加するための分散機としては、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、3本ロールミル、アトライターなどを用いる方法が好ましく採用される。粗大粒子を一次粒子または少数の一次粒子の集合体まで微細化するためには、分散メディアにより剪断応力を印加するのが好ましい。分散メディアの例としては、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズなどが挙げられ、効率よく微細化するためには、特にジルコニアビーズを使用することが好ましい。
【0032】
本発明の水性顔料分散液の吸光度比は、顔料の粗大粒子を微細化する際の分散条件の影響も受ける。顔料の粗大粒子に適切な大きさの剪断応力を与えないと、顔料分散液の分散安定性が低下し、吸光度比が0.99より小さくなる場合がある。すなわち、通常ジオキサジン系顔料は、銅フタロシアニン系顔料やキナクリドン系顔料などと比較して、非常に大きな比表面積を有するという特徴がある(平均一次粒子径:50nmのとき、比表面積:100m/g以上)。このため、顔料の粗大粒子を微細化し分散する際の剪断応力が大きすぎると、顔料の比表面積が急激に増大し、顔料誘導体の吸着が充分でない顔料粒子が生じる場合がある。顔料誘導体の吸着が充分でない顔料粒子は静電反発力が弱くなり、この粒子を起点として、顔料粒子間の凝集が進行するおそれがある。
【0033】
分散条件としては、ジルコニアビーズのビーズ径、分散機の周速などを適切に制御することで剪断応力を適当な大きさに調整でき、かつ、顔料の粗大粒子を効率よく微細化することができる。分散で用いるジルコニアビーズのビーズ径は、好ましくは0.3〜0.01mmφ、より好ましくは0.2〜0.02mmφの範囲にある。ビーズ径が0.3mmφより大きいと、顔料に印加される剪断応力が大きすぎるために、顔料分散液の分散安定性が低下する場合があり、ジルコニアビーズの直径が0.2mmφより大きいと顔料分散液の耐熱性が低下する場合がある。一方、ジルコニアビーズの直径が0.01mmφより小さいと、顔料分散液中からジルコニアビーズを除去することが困難となり、ジルコニアビーズが0.02mmφより小さいと、顔料に印加される剪断応力が小さすぎるために、顔料分散液中に粗大粒子が残る場合がある。
【0034】
本発明のようにジオキサジン系顔料を用いる場合の顔料分散においては、分散機の周速は、好ましくは6〜13m/sの範囲にある。分散機の周速が13m/sより大きいと顔料に印加される剪断応力が大きすぎるためにジオキサジン系顔料分散液の分散安定性が低下する場合があり、一方、分散機の周速が6m/sより小さいと顔料に印加される剪断応力が小さすぎるために、ジオキサジン系顔料分散液中に粗大粒子が残る場合がある。
【0035】
本発明の水性顔料分散液の吸光度比は、水性顔料分散液の表面張力の影響も受ける。そのため、上記に示したような方法により顔料の粗大粒子に適切な大きさの剪断応力を与えるとともに、顔料分散液の表面張力を適切に制御することが望まれる。
【0036】
本発明において、水性顔料分散液の25℃での表面張力は好ましくは60mN/m以下、より好ましくは50mN/m以下である。表面張力が60mN/mより大きいと顔料および顔料誘導体の水への濡れ性が悪いために粗大粒子が残りやすい。また、表面張力が50mN/mより大きいと、ジルコニアビーズの剪断応力を顔料の粗大粒子に均一に伝達するのが難しくなり、顔料粒径の均一な顔料分散液を得ることが困難となる場合がある。一方、水性顔料分散液の25℃での表面張力は25mN/m以上であることが好ましい。水性顔料分散液の表面張力が小さすぎると、インク組成物の表面張力も小さくなるために、インクの紙への浸透性が高くなり滲みの原因となる場合がある。
【0037】
本発明の水性顔料分散液の表面張力を調整する方法としては、水溶性有機溶媒、界面活性剤、高分子分散剤を添加する方法などが挙げられるが、顔料分散液中の顔料の保存安定性および顔料分散液の耐熱性を考慮すると水溶性有機溶媒を添加することが好ましい。
【0038】
本発明で用いる(D)水溶性有機溶媒は、その比誘電率が5以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であることが望まれる。用いる水溶性有機溶媒の非誘電率が小さすぎると、水性顔料分散液の比誘電率も小さくなるために、顔料粒子間の静電反発力が弱くなり、分散安定性が低下する。
【0039】
上記の範囲を満たす水溶性有機溶媒の例としては、エーテル類、アルコール類、エーテルアルコール類、エステル類、ケトン類、酸類、アミン類、酸アミド類などの種々のものを使用することができ、例えばジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどを使用することができる。
【0040】
本発明の水性顔料分散液において、水性顔料分散液全量に対する(A)ジオキサジン系顔料と(B)スルホン酸基が導入された顔料誘導体とを合わせた着色成分の含有量は、7〜20重量%、好ましくは8〜16重量%である。着色成分の含有量が小さすぎると分散液の製造効率が低くコストがかさむ。一方含有量が大きすぎると分散状態を安定化することが非常に困難となる。
【0041】
本発明において、(A)ジオキサジン系顔料と(B)スルホン酸基が導入された顔料誘導体との混合比は、重量比でジオキサジン系顔料:スルホン酸基が導入された顔料誘導体=50〜99:50〜1、好ましくは60〜97:40〜3、より好ましくは70〜95:30〜5で混合される。顔料誘導体の量が少なすぎれば顔料分散安定化効果が発揮されず、逆に顔料誘導体の量が多すぎれば、色調が好ましくないほど変化する場合がある。
【0042】
本発明においてポリウレタンを使用する場合には、(A)ジオキサジン系顔料と(B)スルホン酸基が導入された顔料誘導体とを合わせた着色成分とポリウレタンは、重量比で着色成分:ポリウレタン=30〜90:70〜10、好ましくは40〜80:60〜20で混合される。ポリウレタンの量が少なすぎれば、それによる接着力を向上させる効果が期待できない。逆に、ポリウレタンの量が多すぎればインク組成物から得られる印画の着色力が低下する。顔料とポリウレタンを混合するタイミングは、顔料の粗大粒子を微細化して分散する前、分散する途中、分散した後のいずれでもよい。
【0043】
本発明の水性顔料分散液において、(A)ジオキサジン系顔料と(B)スルホン酸基が導入された顔料誘導体を合わせた着色成分の濃度が4重量%のときの硫酸イオン濃度は、50ppm以下、好ましくは20ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。硫酸イオン濃度が50ppmより高いと顔料分散液の分散状態が不安定化し、硫酸イオン濃度が20ppmより高いと顔料分散液の耐熱性が悪くなる場合がある。また硫酸イオン濃度の下限は、好ましくは0.1ppmである。例えば、透析により硫酸イオン濃度を0.1ppmより小さくしようとすると、透析を繰り返す回数が非常に増大し、透析膜の目詰まりが起きる可能性が大きくなる。
【0044】
本発明の水性顔料分散液は、着色成分濃度に比例して硫酸イオン濃度が増大する。そのため水性顔料分散液の着色成分が4重量%より少ない場合は、換算して硫酸イオン濃度を算出することができる。例えば、水性顔料分散液の着色成分濃度が1重量%の場合は、測定により得られた値を4倍することで、4重量%における硫酸イオン濃度を算出することができる。水性顔料分散液の着色成分が4重量%より多い場合は、水性顔料分散液をイオン交換水で希釈することで着色成分の濃度を4重量%とし、硫酸イオン濃度を測定する。
【0045】
なお、水性顔料分散液中の硫酸イオン濃度を低下させるためには、原料となる(A)ジオキサジン系顔料、(B)スルホン酸基が導入された顔料誘導体、(C)水、(D)水溶性有機溶媒のそれぞれに含まれる硫酸イオン濃度が低いことが好ましい。
【0046】
本発明で用いる(C)水としては、例えばイオン交換水や蒸留水などの硫酸イオンを含有しないものを使用することができる。
【0047】
本発明で用いる(A)ジオキサジン系顔料は、例えばイオン交換水や蒸留水などで洗浄することで十分に硫酸イオンを洗浄したものを用いることが好ましい。通常有機顔料は水との親和性が低いために、公知の水洗ろ過などの方法で容易に硫酸イオンを除去することが可能である。
【0048】
本発明で用いる(B)スルホン酸基が導入された顔料誘導体中には、通常スルホン化反応後に反応液から硫酸イオンが大量に残留する。顔料誘導体中から硫酸イオンを除去するためには、透析あるいはイオン交換を行う手法が挙げられる。特に透析は顔料誘導体と水と硫酸イオンからなるスラリーから、透析膜を通して水と硫酸イオンを取り除き、取り除いた量と同量のイオン交換水を添加することでスラリーの粘度を増加させることなく効果的に硫酸イオンを除去することが可能である。効率よく硫酸イオンを除去するためには、透析有効面積が大きい中空糸膜を用いることが好ましい。中空糸膜の材質としては、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどを使用することができる。
【0049】
本発明の水性顔料分散液のpHは、好ましくは1.5〜7.5の領域にある。顔料分子中に導入されたスルホン酸基が多いほど顔料誘導体は水に溶解しやすい。水性顔料分散液のpHが7.5より大きいと、2個以上のスルホン酸基が導入された誘導体が顔料粒子表面から水へ溶出し、顔料分散液の分散状態が不安定化する場合がある。一方、pHが1.5より小さいと水性顔料分散液を希釈して製造するインク組成物を適正なpH範囲におさめることが困難となる。本発明の水性顔料分散液のpHは、例えば、アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノールなどの有機アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリ類などにより適切な範囲に調整できる。
【0050】
本発明の水性顔料分散液の分散安定性は、顔料分散液のCasson降伏値を測定することにより評価することができる。Casson降伏値が小さいほど、粒子分散液中での粒子の凝集が少ない。本発明においては、顔料分散液のCasson降伏値は好ましくは1×10−2Pa以下、より好ましくは1×10−3Paである。この範囲にあると、顔料の分散性は安定であるといえる。顔料の分散性は、(B)スルホン酸基が導入された顔料誘導体スルホン酸基の導入数を適当な範囲に制御することなどによって制御可能である。
【0051】
本発明の水性顔料分散液の粘度は1〜50mPa・s、好ましくは3〜10mPa・sの範囲にあることが望まれる。この範囲にあるとインク吐出に適当な粘度のインク組成物を作製することが容易となる。水性顔料分散液の粘度を前記の範囲に収めるには、前記のように有機顔料のスルホン酸基の導入数を適切に制御することにより顔料の分散状態を安定化することが求められる
本発明の水性顔料分散液中の顔料は、その算術平均径が好ましくは1〜150nm、より好ましくは5〜100nmの範囲にあることが望まれる。顔料の算術平均径が150nmより大きいと、インクジェットノズルで目詰まりを引き起こす可能性が高くなる。また、顔料の算術平均径が100nmより大きいと印刷物の光沢度が低下する場合がある。一方、算術平均径が小さすぎると、粒子の比表面積が大きくなりすぎ、インク組成物中の顔料が凝集しやすくなる傾向がある。Casson降伏値が1×10−2Pa以下である水性顔料分散液は、微細化して分散した顔料の分散状態が安定であるため、希釈、加熱などの処理を行った場合でも、長期間保存した場合でも顔料の分散粒径が凝集などにより変化することなく保持される。
【0052】
次に、本発明の水性顔料分散液を用いたインク組成物について説明する。上記のように、得られた水性顔料分散液を水で希釈し、以下に示すような添加物を加えることによってインク組成物が得られる。本発明では、(A)ジオキサジン系顔料と(B)スルホン酸基が導入された顔料誘導体と合わせた着色成分がインク組成物全体量に対し、1〜16重量%、好ましくは2〜8重量%含有されていることが好ましい。インク組成物中に着色成分が少なすぎると印刷物の着色力が小さくなり良好な描画ができなくなる。一方、着色成分が多すぎると印刷物の着色力は大きくなるものの光沢が低下する。
【0053】
本発明のインク組成物には、インク組成物のインクジェットノズル部分での乾燥の防止や、基材への塗れ性や浸透性を改善する目的で、水溶性の有機溶媒を含有させることができる。このような目的で使用される有機溶媒の例としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、γ−ブチロラクトンやN−メチル−2−ピロリドン、ジメチエルスルホキシドなどのほか、アセチレングリコール類、アセチレンアルコール類、アルキレングリコール類などが挙げられる。これらの水溶性有機溶媒の量は、インクの全溶媒中に対し、通常50重量%以下に抑えられる。50重量%を越えて水溶性有機溶媒を含有させた場合、顔料の分散状態が不安定化するおそれがある。
【0054】
本発明のインク組成物には、カビや細菌の混入を防止する目的で防腐剤を添加することができる。ジンクピリジンチオン−1−オキサイド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1−ベンズイソチアゾリン−3−オンのアミン塩などを好適に用いることができる。これらは通常、インク組成物中に0.05〜1重量%含有される。これらの添加量が少なければカビや細菌の混入防止効果が発揮されず、添加量が多すぎれば顔料の分散状態の不安定化を引き起こす可能性が生じる。
【0055】
本発明のインク組成物のpHは、好ましくは6〜9の範囲にある。この範囲にあれば人体に接触しても安全上問題が少ない。インク組成物のpHはアンモニア、有機アミン、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの無機アルカリやリン酸などの緩衝液を用いて適宜調整することができる。
【0056】
本発明のインク組成物には、表面張力の調整や基材への浸透性の改善のためにアニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性の界面活性剤を添加することができ、泡の発生を防止するために消泡剤を添加することもできる。
【0057】
本発明のインク組成物をインクジェットプリンター用に用いる場合には、インク組成物の粘度が10mPa・s以下、好ましくは5mPa・s以下であることが望ましい。粘度が大きいと適当なサイズのインク滴を発生させてそれをとばすことが困難になる。
【0058】
本発明のインク組成物から得られる印刷物の光学濃度は、例えば光学濃度計により測定することができる。印刷物の光学濃度は、2以上、好ましくは2.2以上であることが望まれる。光学濃度が小さすぎると印刷物の着色力が小さくなり良好な印刷物を得ることが困難となる。
【0059】
本発明のインク組成物から得られる印刷物の紙への定着性は、例えば次のような方法により評価することができる。インク組成物から得られた印刷物のセロハンテープ剥離試験を行い、剥離後のセロハンテープを光沢紙上に貼り付け、その光学濃度を光学濃度計により測定する。印刷物の剥離試験を行った後のセロハンテープの光学濃度は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下である。印刷物の剥離を行っていないセロハンテープを光沢紙に貼り付けた場合の光学濃度は通常0.1程度となるために、剥離試験を行った後のセロハンテープの光学濃度の下限は0.1と推定される。
【0060】
本発明のインク組成物から得られる印刷物の光沢度は、例えば光沢計により測定することができる。測定角度45°における光沢度は、50以上、好ましくは60以上であることが望まれる。光沢度が小さすぎると表面がなめらかで光沢のある印刷物を得ることが困難となる。
【0061】
本発明のインク組成物は耐熱性に優れるため、ピエゾ方式のインクジェットプリンターだけでなく、サーマル方式のインクジェットプリンターにおいても長期間にわたり安定したインクの吐出が実現できる。このインク組成物を用いて基材に描画した画像は対オゾン性に優れ退色しにくい。また、微細化された状態で顔料粒子が存在するため、表面がなめらかで光沢のある印刷物を得ることが可能である。本発明のインク組成物はインクジェットプリンターなどのカラー印刷を行う分野で、インクジェット用インク組成物として利用できる。
【0062】
本発明の水系顔料分散液はインクジェットプリンター用の顔料インクへ適用できるほか、液晶ディスプレイ用カラーフィルターの画素膜形成などにも応用が可能である。
【実施例】
【0063】
以下、実施態様を用いて本発明を詳しく説明するが、本発明の効力は用いた実施態様によってなんら制限されるものではない。実施例中の顔料誘導体、顔料分散液およびインク組成物の評価は以下の方法で行った。
【0064】
<測定方法>
A.顔料分散液の吸光度比
顔料分散液を(A)ジオキサジン系顔料と(B)顔料誘導体からなる着色成分の濃度が10ppmになるようイオン交換水で希釈し、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製MultiSpec−1500)を用いて、得られた溶液の吸収スペクトルの測定を室温にて行った。波長400〜800nmの範囲に発現した吸収スペクトルのピークのうち、波長550〜600nmにおいて最大のピークを有するピークを決定し、その吸光度を読みとり、これを吸光度[1]とした。次に、波長400〜800nmの範囲に発現した吸収スペクトルのピークのうち、波長500〜550nmにおいて最大のピークを有するピークを決定し、その吸光度を読みとり、これを吸光度[2]とした。得られた値より、吸光度[1]/吸光度[2](吸光度比)を算出した。
【0065】
B.顔料誘導体の吸収スペクトル
顔料誘導体をイオン交換水に投入して超音波を印加することにより混合液を作製し、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製MultiSpec−1500)を用いて吸収スペクトルの測定を行った。測定の結果、400〜800nmにおいて吸光度の値が最も大きいピークが位置する波長を最大吸収波長とした。
【0066】
C.顔料誘導体の平均スルホン酸基導入数
m−ニトロベンジルアルコールをマトリックスとして用い、高速原子衝撃イオン化法質量分析装置(日本電子(株)製JMS−SX102A)を使用して顔料誘導体の負イオン測定を行った。測定はイオン化により生成したイオンの質量(m)と電荷(z)の比(m/z)で10〜2000の範囲で行い、得られたm/zの強度から顔料誘導体のスルホン酸基導入数を求めた。また、スペクトルの強度比から1分子あたりの平均スルホン酸基導入数を算出した。
【0067】
D.顔料分散液の表面張力
表面張力測定器(A−06、(株)山本鍍金試験器製)を用いて、白金リングとしてA−06−P01を用いて、25℃での顔料分散液の表面張力を輪環法により測定した。25℃に温度調整した顔料分散液をシャーレに浸し、シャーレを表面張力測定器のステージに設置した。次に、ステージをゆっくりと引き上げることで顔料分散液の液面と白金リングとを接触させた。白金リングをゆっくりと垂直に引き上げ、白金リングを顔料分散液の液面から引き離すのに必要な力を測定し、表面張力を求めた。
【0068】
E.顔料分散液の粘度
円錐平板型粘度計(東機産業(株)製RE100L)を用いて、25℃での顔料分散液の粘度を測定した。
【0069】
F.顔料分散液の降伏値
円錐平板型粘度計(東機産業(株)製RE100L)を用い、異なるずり速度での粘度を3点測定し、Cassonの式を用いることにより降伏値を求めた。得られた降伏値より顔料分散液の分散安定性を評価した。
【0070】
G.顔料分散液の耐熱性
顔料分散液を65℃で30日間の加熱処理を行い、加熱処理前後の粘度を比較することで顔料分散液の耐熱性の指標とした。
【0071】
H.顔料分散液中の顔料の分散状態における粒径測定
顔料分散液を(A)ジオキサジン系顔料と(B)顔料誘導体をあわせた着色成分濃度が0.1重量%となるようイオン交換水で希釈し、動的光散乱式粒径分布測定装置((株)堀場製作所製LB−500)を用いて、25℃における体積基準の顔料粒子の算術平均径を求めた。
【0072】
I.インク組成物を用いた印刷時のインクかすれ評価
インク組成物をサーマル方式インクジェットプリンター(キヤノン(株)製“ピクサス”(商品名)550i)のインクカートリッジに詰めて3台並べてインクジェットノズルから5時間連続普通紙(キヤノン(株)製“ホワイトリサイクルペーパー”(商品名)EW−500)に印字を行い、次の評価を行った。5時間後に3台とも全てにインクかすれがなかった場合を◎、5時間後に1台以上インクかすれがあるが、インクジェットノズルのクリーニングによりかすれが改善された場合を○、5時間後に1台以上インクかすれがあり、クリーニングしてもかすれが改善されなかった場合を×とした。
【0073】
インク組成物をピエゾ方式インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製“カラリオ”(商品名)PX−G920)のインクカートリッジに詰めて3台並べてインクジェットノズルから5時間連続普通紙(キヤノン(株)製、“ホワイトリサイクルペーパー”(商品名)EW−500)に印字を行い、次の評価を行った。5時間後に3台とも全てにインクかすれがなかった場合を◎、5時間後に1台以上インクかすれがあるが、インクジェットノズルのクリーニングによりかすれが改善された場合を○、5時間後に1台以上インクかすれがあり、クリーニングしてもかすれが改善されなかった場合を×とした。
【0074】
J.印刷物に塗布、印刷したときのインク組成物から得られる印画の光学濃度評価
インク組成物をサーマル方式インクジェットプリンター(キヤノン(株)製“ピクサス”(商品名)550i)のインクカートリッジにつめて、記録媒体(キヤノン(株)製“スーパーフォトペーパー”(商品名)SP−101)に印字し、5cm×5cmのベタ画像を得た。
【0075】
インク組成物をピエゾ方式インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製“カラリオ” (商品名)PX−G920)のインクカートリッジに詰めて、記録媒体(セイコーエプソン(株)製、(商品名)フォト光沢紙顔料専用)に印字し、5cm×5cmのベタ画像を得た。得られたベタ画像部分の光学濃度を、光学濃度計(GRETAG社製、SPECTROEYE)を用い、光源D50、視野角2度で測定した。
【0076】
K.印刷物に塗布、印刷したときのインク組成物から得られる印画の紙への定着性評価
光沢紙に得られたベタ画像を室温で24時間放置後、幅15mmのセロハンテープ(ニチバン(株)製LP−15(商品名))を長さ30mmにわたって画像上に貼り付けた。1分後にセロハンテープの片隅を指で握り、ベタ画像に対して垂直にセロハンテープを1秒間かけて剥離した。印刷物の剥離試験を行った後のセロハンテープを光沢紙に貼り付け、その光学濃度を光学濃度計(GRETAG社製、SPECTROEYE)を用い、光源D50、視野角2度で測定した。なお、幅15mmのセロハンテープを光沢紙に貼り付け、光学濃度計(GRETAG社製、SPECTROEYE)を用い、光源D50、視野角2度で測定した場合には、光学濃度は0.1であった。
【0077】
L.印刷物に塗布、印刷したときのインク組成物から得られる印画の光沢度評価
得られたベタ画像部分の光沢度を、光沢度計((株)村上色彩技術研究所製、GM−3D)を用い、測定角度45度で測定した。
【0078】
実施例1
PV23(クラリアント社製“Hostaperm”(商品名)RL−NF)60gを氷冷下で攪拌しながら発煙硫酸(28重量%SO)780g中に投入した。反応中の溶液の温度は0〜5℃であった。3時間攪拌した後、反応液を氷1500g上に加えた。30分間放置後、生じた懸濁液を濾過し、得られた生成物を300mlの純水で洗浄した。純水2000ml中へ前記生成物を投入し、アンモニア水溶液で中和(pHが7以上になるまでアンモニア水溶液を添加)し、濾過を行った。得られたウェット結晶を純水で洗浄した後、80℃で乾燥した。乾燥して得られたものを純水による洗浄、濾過、乾燥という操作を10回繰り返して、65gのPV23スルホン酸基含有誘導体VS−Aを得た。上記に示した方法により、VS−Aの吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長は576nmであった。
【0079】
次に、VS−Aとイオン交換水を混合し、硫酸イオンを含むスラリーを作製した。作製したスラリーはPMMA透析モジュール(東レ(株)製“フィルトライザー”(商品名)B3−20A)を用いて透析を行い、PV23誘導体透析物VS−Adを得た。
【0080】
80gのPV23、20gのVS−Ad、150gのトリエチレングリコールモノブチルエーテル、750gのイオン交換水を混合しホモディスパーで攪拌してスラリーを作製した。スラリーをジルコニアビーズが充填された循環式ビーズミル分散機(寿工業(株)製“ウルトラアペックスミル”(商品名)UAM−015)とチューブでつなぎ、分散処理を行うことで水性顔料分散液1(PV23とVS−Adを合わせた着色成分濃度:10重量%)を得た。分散処理条件は、ジルコニアビーズ径:0.03mmφ、ジルコニアビーズの投入量:400g、循環式ビーズミル分散機の周速を10m/s、予備分散後のスラリーに、循環式ビーズミル分散機を用いて剪断応力を印加した時間を2時間とした。
【0081】
上記に示した方法により、水性顔料分散液1の吸収スペクトルを測定し、得られたチャートを図1に示す。吸収スペクトルのピーク吸光度の比は1.009であった。
【0082】
実施例2
反応温度を40℃としたこと以外は実施例1と同様の方法でスルホン化反応を行い、66gのPV23スルホン化誘導体VS−Bを得た。上記に示した方法により、VS−Bの吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長は586nmであった。次に、実施例1と同様の方法で透析を行い、誘導体透析物VS−Bdを得た。PV23とVS−Bdを用いて実施例1と同様にして、分散処理を行い水性顔料分散液2(PV23とVS−Adを合わせた着色成分濃度:10重量%)を得た。上記に示した方法により、水性顔料分散液2の吸収スペクトルを測定したところ吸収スペクトルのピーク吸光度の比は1.004であった。
【0083】
実施例3
390gの発煙硫酸(28重量%SO)と390gの濃硫酸(98重量%HSO)を混合した溶液中に、60gのPV23を投入したこと以外は実施例1と同様の方法でスルホン化反応を行い、68gのPV23スルホン化誘導体VS−Cを得た。VS−Cの吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長は585nmであった。次に、実施例1と同様の方法で透析を行い、誘導体透析物VS−Cdを得た。PV23とVS−Cdを用いて実施例1と同様にして分散処理を行い水性顔料分散液3(PV23とVS−Cdを合わせた着色成分濃度:10重量%)を得た。上記に示した方法により、水性顔料分散液3の吸収スペクトルを測定したところ吸収スペクトルのピーク吸光度の比は0.994であった。
【0084】
比較例1
260gの発煙硫酸(28重量%SO)と520gの濃硫酸(98重量%HSO)を混合した溶液中に、60gのPV23を投入したこと以外は実施例1と同様の方法でスルホン化反応を行い、68gのPV23スルホン化誘導体VS−Dを得た。VS−Dの吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長は574nmであった。次に、実施例1と同様の方法で透析を行い、誘導体透析物VS−Ddを得た。PV23とVS−Ddを用いて実施例1と同様にして分散処理を行い水性顔料分散液4(PV23とVS−Ddを合わせた着色成分濃度:10重量%)を得た。上記に示した方法により、水性顔料分散液4の吸収スペクトルを測定し、得られたチャートを図2に示す。吸収スペクトルのピーク吸光度の比は0.978であった。
【0085】
実施例4
80gのPV23、20gのVS−Ad、150gのトリエチレングリコールモノブチルエーテル、750gのイオン交換水を混合し、循環式ビーズミル分散機の周速を5m/sに変更した以外は、実施例1と同様にして水性顔料分散液5(PV23とVS−Adを合わせた着色成分濃度:10重量%)を作製した。上記に示した方法により、水性顔料分散液5の吸収スペクトルを測定したところ吸収スペクトルのピーク吸光度の比は1.003であった。
【0086】
実施例5
80gのPV23、20gのVS−Ad、150gのトリエチレングリコールモノブチルエーテル、750gのイオン交換水を混合し、循環式ビーズミル分散機の周速を5m/s、ジルコニアビーズ径を0.3mmφに変更した以外は、実施例1と同様にして水性顔料分散液6(PV23とVS−Adを合わせた着色成分濃度:10重量%)を作製した。上記に示した方法により、水性顔料分散液6の吸収スペクトルを測定したところ吸収スペクトルのピーク吸光度の比は0.992であった。
【0087】
実施例1〜5、比較例1で得られた水性顔料分散液の各種の評価結果を表1、2に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
参考例1
以下の要領でポリウレタンを合成した。温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を設置した4つ口フラスコに、116gのカルボン酸変性ポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業(株)製“プラクセル”205BA(商品名))を120gのメチルエチルケトンとともに投入した。プラクセル205BAは、ジメチロールブタン酸をラクトン変性したカルボン酸変性ポリカプロラクトンジオールである。プラクセル205BAとメチルエチルケトンを30分間撹拌後、64gのイソホロンジイソシアネートを4つ口フラスコに投入し、室温で1時間窒素雰囲気下で撹拌後、70℃に昇温し70℃で4時間反応を行った。反応後、室温まで冷却し、濃度が60重量%であるウレタンプレポリマー溶液を得た。19.3gのトリエタノールアミンと350gのイオン交換水を四つ口フラスコ中に投入し、250gのウレタンプレポリマー溶液とともに室温で30分間撹拌した。窒素雰囲気下で80℃に昇温後、80℃で2時間鎖延長反応を行った。反応後、ロータリーエバポレーターとアスピレーターを用いてメチルエチルケトンと一部の水を除去した後、回収量が548gになるようにイオン交換水を添加し、ポリウレタン濃度35重量%のポリウレタン分散液を得た。得られたポリウレタンの酸価は81KOH・mg/g、重量平均分子量は28000であった。
【0091】
ポリウレタンの酸価は、JISのK0070(1992年)に基づいて、中和滴定法によりポリウレタンの酸価の測定を室温で行った。ポリウレタンの水性分散液にイオン交換水を加え、ポリウレタン濃度5重量%に調製した。ポリウレタン濃度5重量%の水性分散液をビーカー中で撹拌しながら、0.1モル/L塩酸水溶液をポリウレタンが完全に析出するまで添加した。上澄みをろ過後、イオン交換水によるポリウレタンの水洗を行った。ポリウレタンの水洗ろ過を10回行った後、100℃で2時間乾燥させることで、ポリウレタンから中和剤と塩酸と水を完全に取り除いた。ポリウレタンをエタノールとともに3角フラスコに加えて、ポリウレタン濃度4重量%に調製した後、フェノールフタレイン溶液を数滴加え、試料が完全に溶けるまで十分に振り混ぜた。ポリウレタンが完全にエタノールに溶解しない場合には、ポリウレタンが完全に溶解するまでメチルエチルケトンを添加した。次に0.1モル/Lエタノール性水酸化カリウム溶液をビュレットに投入し、室温にてポリウレタン溶液の滴定を行った。指示薬のうすい紅色が30秒間続いたときを終点とした。酸価は次の式より算出した。
A=B×5.611/S
A:酸価
B:滴定に用いた0.1モル/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)
S:ポリウレタンの重量(g) 。
【0092】
またポリウレタンの平均分子量は、ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(water社製water410)を使用した。まず、標準試料として重量平均分子量/数平均分子量が1.1以下で、重量平均分子量が1300、9700、21000、66000、370000であるポリスチレンをテトラヒドロフランに0.2重量%になるように溶解させた。ポリスチレンの分子量の測定は有機溶媒系GPC用充填カラム(昭和電工(株)製KF−804L)を使用し、カラム温度40℃、流速0.8mL/minで行った。得られたポリスチレンの保持時間とピーク強度から保持時間と分子量の検量線を作製した。つぎに、ポリウレタン濃度が0.2重量%になるようテトラヒドロフランに溶解させ、上記と同様の測定条件により、ポリウレタンの保持時間とピーク強度を測定し、ポリスチレンで作製した検量線を用いてポリウレタンの重量平均分子量を算出した。
【0093】
実施例6
実施例1で得られた水性顔料分散液1(PV23とVS−Adを合わせた着色成分濃度:10重量%)85gと参考例1で得られたポリウレタン分散液(ポリウレタン濃度:35重量%)12.1gをイオン交換水2.9gと混合し、ポリウレタンを含有する水性顔料分散液7(PV23とVS−Adを合わせた着色成分濃度:8.5重量%、ポリウレタン濃度:4.25重量%)を得た。上記に示した方法により、水性顔料分散液7の吸収スペクトルを測定したところ吸収スペクトルのピーク吸光度の比は1.013であった。水性顔料分散液7の各種の評価結果を表1、2に示す。
【0094】
実施例7
実施例1で得られた40gの水性顔料分散液1にイオン交換水48g、グリセリン9.6g、1,2−ヘキサンジオール1.44g、エチレングリコール0.8g、トリエタノールアミン0.16gを加えインク組成物(PV23とVS−Adを合わせた着色成分濃度:4重量%)を作製し、吐出安定性、光学濃度、紙への定着性および光沢度の評価を行った。結果を表3に示す。
【0095】
実施例8〜11、比較例2
実施例2〜5、比較例1で得られた各水性顔料分散液を用いて、実施例7と同様の方法でインク組成物を作製し、各種の評価を行った。結果を表3に示す。
【0096】
実施例12
実施例6で得られた47.1gの水性顔料分散液7にイオン交換水40.9g、グリセリン9.6g、1,2−ヘキサンジオール1.44g、エチレングリコール0.8g、トリエタノールアミン0.16gを加えインク組成物(PV23とVS−Adを合わせた着色成分濃度:4重量%、ポリウレタン濃度:2重量%)を作製し、各種の評価を行った。結果を表3に示す。
【0097】
比較例3
インクカートリッジ(セイコーエプソン(株)製、(商品名)ICBL33)中からブルーインク組成物を抜き取り、イオン交換水で1000倍に希釈した。希釈したブルーインク組成物の吸収スペクトルを上記に示した方法により測定したところ、吸収スペクトルのピーク吸光度の比は0.978であった。ICBL33をピエゾ方式インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製“カラリオ” (商品名)PX−G920)に設置して、上記に示した方法によりブルーインク組成物の各種の評価を行った。結果を表2に示す。次に、ICBL33中から抜き取ったインク組成物をサーマル方式インクジェットプリンター(キヤノン(株)製“ピクサス”(商品名)550i)のインクカートリッジ(キヤノン(株)製、(商品名)BCI−3eC)に詰めて、上記に示した方法によりインクの吐出を試みたが、インクは吐出しなかった。550iのノズノのクリーニングを5回繰り返した後、インクの吐出を再度試みたがインクは吐出しなかった。
【0098】
比較例4
インクカートリッジ(キヤノン(株)製、(商品名)PFI−101B)中からブルーインク組成物を抜き取り、イオン交換水で1000倍に希釈した。上記に示した方法により希釈したブルーインク組成物の吸収スペクトルを測定したところ、吸収スペクトルのピーク吸光度の比は0.947であった。PFI−101B中から抜き取ったインク組成物をピエゾ方式インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製“カラリオ” (商品名)PX−G920)のインクカートリッジ(セイコーエプソン(株)製、(商品名)ICBL33)に詰めて、上記に示した方法によりブルーインク組成物の評価を行った。次に、PFI−101B中から抜き取ったインク組成物をサーマル方式インクジェットプリンター(キヤノン(株)製“ピクサス”(商品名)550i)のインクカートリッジ(キヤノン(株)製、(商品名)BCI−3eC)に詰めて、上記に示した方法によりインク組成物の評価を行った。結果を表3に示す。
【0099】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】実施例1で得られた水性顔料分散液1の波長400〜800nmの範囲における吸収スペクトルを示したチャート図
【図2】比較例1で得られた水性顔料分散液4の波長400〜800nmの範囲における吸収スペクトルを示したチャート図
【符号の説明】
【0101】
1 波長550〜600nmにおける最大のピークの吸光度
2 波長500〜550nmにおける最大のピークの吸光度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ジオキサジン系顔料、(B)ジオキサジン系顔料にスルホン酸基が導入された顔料誘導体、(C)水、(D)水溶性有機溶媒を含有する水性顔料分散液であって、該水性顔料分散液を含有するインク組成物を水で希釈して(A)ジオキサジン系顔料と(B)顔料誘導体を合わせた濃度を10ppmとしたときの吸収スペクトルのピークのうち、波長550〜600nmにおける最大のピークの吸光度と、波長500〜550nmにおける最大のピークの吸光度との比が0.99以上である水性顔料分散液。
【請求項2】
ジオキサジン系顔料にスルホン酸基が導入された顔料誘導体と水の混合液の400〜800nmにおける吸収スペクトルの最大吸収波長が575nm以上となる(B)顔料誘導体を用いる請求項1記載の水性顔料分散液。
【請求項3】
ポリウレタンを含有する請求項1記載の水性顔料分散液。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の水性顔料分散液を含有するインク組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−81705(P2008−81705A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266720(P2006−266720)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】