説明

水性顔料調製物

【課題】高い剪断安定性または凝集安定性を有し、高い色強度、正確な色調、色堅牢性、耐ブリード性および低い粘度を有する優れた貯蔵安定性の水性顔料調製物の提供。
【解決手段】(A)少なくとも1種類の有機および/または無機顔料、(B)式(I)の少なくとも1種類のポリマー分散剤


[式中、RおよびRは炭化水素基または水素原子、Rは炭化水素基、nは3より小さくない整数、xは1〜150の整数、Mはカチオンである。]よりなる水性顔料調製物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性顔料調製物、その製造方法、あらゆる種類の巨大分子物質、例えば繊維材料、紙パルプ着色、被覆剤、塗料、インクの着色へのそれの用途および二次元シート状構造物、例えば紙、厚紙、プラスチック、テキスタイルおよび皮革の印刷へのそれの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料調製物は長い年月にわたってノボラックを使用して製造されてきた。ヨーロッパ特許第0,065,751号明細書(B)には、該顔料調製物が顔料を高濃度で含有しそして剪断安定性および貯蔵安定性があることに特徴がある、顔料調製物のためにノボラックを使用することが開示されている。最近、ノボラックは第二成分、例えばアルキルフェノール類およびアルキルフェノールエトキシレート類を含むので望ましくない。即ちその用途がEC Directive 2003/53によって制限されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それ故に本発明の課題は、以下の要件を満足するノボラック不含の水性顔料調製物を提供することである:即ち、顔料調製物は高い剪断安定性または凝集安定性を有するべきである。調製物中の顔料濃度は非常に高くあるべきであり、一般に20重量%より少なくあるべきでない。顔料調製物は高い色強度を有し、色相および色の純粋さに関して正確に規定された色調、光に対しての高い色堅牢性、高い耐ブリード性および低い粘度を有するべきである。少なくとも2年の貯蔵安定性が望まれる。即ち、分散された顔料は凝集せずかつ時間の経過とともに沈降するべきでない。更に顔料分散物は高い純度を有しているべきである。
【0004】
生態毒物学的に欠点のない顔料分散物は、実質的に水をベースとしそして有機溶剤として沸点が250℃以上でありそしてそれ故に揮発性有機成分と見なされないものだけを含有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者はこの課題が驚くべきことに、モノマレエートとα−オレフィンとのカルボキシレートをベースとする分散剤を使用することによって、上述の品質要件を満足させる水性顔料調製物が製造できることを見出した。以下の水性顔料分散物は剪断安定性があり、絶乾燥安定性があり、貯蔵安定性があり、泡立つとしても使用時にあまり泡立たずそして優れた流動性を有している。
【0006】
従って本発明は、
(A)少なくとも1種類の有機および/または無機顔料、
(B)式(I)の少なくとも1種類のポリマー分散剤
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、RおよびRの一つは水素原子であるという条件のもとで、
は炭素原子数8〜30の脂肪族の直鎖状または枝分かれした炭化水素基または水素原子であり、
は炭素原子数8〜30の脂肪族の直鎖状または枝分かれした炭化水素基または水素原子であり、
は炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、
nは3より小さくない整数であり、
xは1〜150の整数でありそして
Mはカチオンである。]
よりなる水性顔料調製物に関する。
【0009】
は好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシル基である。
【0010】
nは好ましくは4〜1000、特に好ましくは5〜500、中でも6〜100の整数である。
【0011】
Mは好ましくはナトリウム、カリウム、アンモニウム、エタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウムまたはトリメチルアンモニウムである。
【0012】
成分(A)および(B)の他に本発明の組成物は別の成分を含有していてもよい。それ故に本発明の組成物は有利な実施態様においては
(C)場合によっては、アルキルフェノールポリエチレングリコールエーテル類、スチレン−置換されたフェノールポリエチレングリコールエーテル類、アルキルポリエチレングリコールエーテル類、脂肪酸ポリエチレングリコールエーテル類、脂肪酸ポリグリコシド類、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドでブロック反応したC〜C22−アルコールのアルキルポリアルキルグリコールエーテル、エチレンオキサイドと反応しそして塩化メチル、塩化ブチルまたは塩化ベンジルでエーテル化され、末端基がマスクされた、C〜C22−アルコールのアルキルエトキシレート類、エチレン/プロピレングリコール−ブロックポリマーおよびソルビタンエステル−ポリエチレングリコールエーテルの群から選択される1種類以上の非イオン性界面活性剤;
(D)場合によっては、脂肪酸のナトリウム、カリウムおよびアンモニウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、オレフィンスルホン酸ナトリウム、ポリナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム;アルキル硫酸ナトリウム、カリウムおよびアンモニウム;アルキルポリエチレングリコールエーテル硫酸ナトリウム、カリウムおよびアンモニウム;アルキルフェノールポリエチレングリコールエーテル硫酸ナトリウム、カリウムおよびアンモニウム;モノ−およびジアルキルスルホコハク酸およびモノアルキルポリオキシエチルスルホコハク酸のナトリウム、カリウムおよびアンモニウム塩;およびアルキルポリエチレングリコールエーテルリン酸モノ−、ジ−およびトリエステル、およびそれらの混合物;およびアルキルフェノールポリエチレングリコールエーテルリン酸モノ−、ジ−およびトリエステルおよびそれらの混合物およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩;アルキルポリエチレングリコールエーテルカルボン酸およびそれのナトリウム、カリウムおよびアンモニウム塩;スチレン置換されたフェノールエトキシレート類の硫酸モノエステルおよびリン酸エステル;スチレン置換されたフェノールポリエチレングリコールエーテルカルボン酸およびそれのナトリウム、カリウムおよびアンモニウム塩;脂肪酸イセチオン酸ナトリウム;脂肪酸メチルタウリド−ナトリウム塩および脂肪酸サルコシド−ナトリウム塩よりなる群から選択される1種類以上のアニオン性界面活性剤、
(E)場合によっては、200〜2000g/モルの平均分子量を有する1種類以上のポリエチレングリコールエーテル類、
(F)場合によっては、200〜2000g/モルの平均分子量および炭素原子数1〜6のアルキル基を有する1種類以上のポリエチレングリコール−モノアルキルエーテル類、
(G)場合によっては、1種類以上の有機溶剤または1種類以上のヒドロトロープ物質、
(H)場合によっては、水性顔料調製物用の他の慣用添加物、
(J)場合によっては、保存剤;および
(K)水
を含有している。
【0013】
成分(A)〜(K)は好ましくは以下の量で存在している:
(A)3〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、特に好ましくは30〜50重量%の少なくとも1種類の有機および/または無機顔料。
(B)0.1〜30重量%、好ましくは1〜15重量%の少なくとも1種類の式(I)の化合物。
(C)0〜30重量%、好ましくは1〜15重量%の非イオン性界面活性剤。
(D)0〜30重量%、好ましくは1〜15重量%のアニオン性界面活性剤。
(E)0〜50重量%、好ましくは1〜20重量%の、200〜2000g/モルの平均分子量を有するポリエチレングリコールエーテル。
(F)0〜50重量%、好ましくは1〜20重量%の、200〜2000g/モルの平均分子量および炭素原子数1〜6のアルキル基を有するポリエチレングリコール−モノアルキルエーテル
(G)0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%の有機溶剤またはヒドロトロープ物質。
(H)0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%の、水性顔料調製物用の他の慣用 添加物。
(J)0〜2重量%、好ましくは0.02〜0.05重量%の保存剤。
(K)5〜90重量%、好ましくは10〜70重量%の水。
【0014】
これらの重量%はそれぞれ顔料調製物の総重量を規準としている。
【0015】
成分(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)および(J)の1種類以上が存在する場合、互いに無関係にそれらの最小濃度は顔料調製物の総重量を規準として少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%であるのが有利である。
【0016】
本発明の顔料調製物の成分(A)は微細な有機または無機顔料または種々の有機および/または無機顔料の混合物である。この顔料は乾燥粉末の状態だけでなく水で湿ったプレスケーキ状物でも使用できる。
【0017】
有用な有機顔料にはモノアゾ、ジアゾ、レーキドアゾ、β−ナフトール、ナフトールAS、ベンズイミダゾロン、ジアゾ縮合、アゾ金属錯塩顔料および多環式顔料、例えばフタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、チオインジゴ、アンタントロン、アントラキノン、フラバントロン、インダントロン、イソビオラントロン、ピラントロン、ジオキサジン、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリンおよびジケトポロロピロール顔料またはカーボンブラックがある。
【0018】
上記の有機顔料の内、青色標準により評価される光に対しての色強度が5より高く、特に好ましくは6より高いものが特に適している。更に、調製物を製造するために使用される顔料は、顔料粒子の好ましくは95%、更に好ましくは99%が≦500nmのサイズである非常に細かい細分状態にあるべきである。
【0019】
特に有利な有機顔料の選択例には、カーボンブラック顔料、例えばランプブラックまたはファーネスブラック;モノアゾおよびジアゾ顔料、特にピグメントイエロー1、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー16、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー81、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー87、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー111、ピグメントイエロー126、ピグメントイエロー127、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー174、ピグメントイエロー176、ピグメントイエロー191、ピグメントイエロー213、ピグメントイエロー214、ピグメントレッド38、ピグメントレッド144、ピグメントレッド214、ピグメントレッド242、ピグメントレッド262、ピグメントレッド266、ピグメントレッド269、ピグメントレッド274、ピグメントオレンジ13、ピグメントオレンジ34またはピグメントブラウン41の色指数顔料;β−ナフトールおよびナフトールSA顔料、特にピグメントレッド2、ピグメントレッド3、ピグメントレッド4、ピグメントレッド5、ピグメントレッド9、ピグメントレッド12、ピグメントレッド14、ピグメントレッド53:1、ピグメントレッド112、ピグメントレッド146、ピグメントレッド147、ピグメントレッド170、ピグメントレッド184、ピグメントレッド187、ピグメントレッド188、ピグメントレッド210、ピグメントレッド247、ピグメントレッド253、ピグメントレッド256、ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ38またはピグメントブラウン1の色指数顔料;レーキドアゾおよび金属錯塩顔料、特にピグメントレッド48:2、ピグメントレッド48:3、ピグメントレッド48:4、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド257、ピグメントオレンジ68またはピグメントオレンジ70の色指数顔料;ベンズイミダゾリン顔料、特にピグメントイエロー120、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー175、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー181、ピグメントイエロー194、ピグメントレッド175、ピグメントレッド176、ピグメントレッド185、ピグメントレッド208、ピグメントバイオレット32、ピグメントオレンジ36、ピグメントオレンジ62、ピグメントオレンジ72またはピグメントブラウン25の色指数顔料;イソインドリノンおよびイソインドリン顔料、特にピグメントイエロー139またはピグメントイエロー173の色指数顔料;フタロシアニン顔料、特にピグメントブルー15、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー15:6、ピグメントブルー16、ピグメントグリーン7またはピグメントグリーン36の色指数顔料;アンタントロン、アントラキノン、キナクリドン、ジオキサジン、インダントロン、ペリレン、ペリノンおよびチオインジゴ顔料、特にピグメントイエロー196、ピグメントレッド122、ピグメントレッド149、ピグメントレッド168、ピグメントレッド177、ピグメントレッド179、ピグメントレッド181、ピグメントレッド207、ピグメントレッド209、ピグメントレッド263、ピグメントブルー60、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23またはピグメントオレンジ43;トリアリールカルボニウム顔料、特にピグメントレッド169、ピグメントブルー56またはピグメントブルー61の色指数顔料;ジケトピローロピロール顔料、特にピグメントレッド254の色指数顔料がある。
【0020】
有用な無機顔料には例えば二酸化チタン類、硫化亜鉛類、酸化鉄類、酸化クロム類、ウルトラマリン、ニッケル−アンチモン−チタン酸化物類、クロム−アンチモン−チタン酸化物類、コバルト酸化物類、コバルトの酸化物とアルミニウム酸化物の混合物、バナジウム酸ビスマス類およびそれらのブレンド顔料がある。
【0021】
顔料分散物の代わりに、例えば微細な鉱石、鉱物、貧溶解性または不溶解性塩類、ワックスまたはプラスチックの粒子、染料、植物保護剤および農薬調製剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤および重合安定化剤を含む固体の分散物を製造することも可能である。
【0022】
成分(B)は一般に本発明の顔料調製物を製造するための水性溶液として使用される。成分(B)は、遊離基重合開始剤の存在下にα−オレフィンと無水マレイン酸を塊状重合することによって得られる。得られるα−オレフィン−無水マレイン酸コポリマーを、次いでポリエチレングリコールモノアルキルエーテルと反応させてモノエステルを生成しそして水中で適当な塩基で中和する。ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルは好ましくは1〜150のエチレングリコール単位および炭素原子数1〜6のアルキル基を有している。ヨーロッパ特許第0,181,037号明細書に成分(B)の製法が記載されている。
【0023】
成分(G)は水溶性の有機またはヒドロトロプ物質である。場合によっては溶剤としても役立つこの種の化合物には例えばホルムアミド、尿素、テトラメチル尿素、ε−カプロラクタム、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチルグリコール、グリセロール、N−メチルピロリドン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、チオジグリコール、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウムまたはブチルモノグリコール硫酸ナトリウムがある。
【0024】
有用な添加物(成分H)は更にカチオン性、アニオン性、両性または非イオン性界面活性剤および顔料湿潤剤、およびまた沈降防止剤、光保護剤、酸化防止剤、脱気剤/消泡剤、泡立低減剤、フィラー、粉砕助剤、粘度安定化剤および流動性改善剤も含有している。有用な粘度調整剤には例えばポリビニルアルコールおよびセルロース誘導体が含まれる。水溶性の天然または合成樹脂およびポリマーも同様に接合強度および耐摩耗性を向上させるために造膜剤または結合剤として含有していてもよい。有用なpH調整剤には有機または無機塩基および酸がある。有利な有機系塩基にはアミン類、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、アミノメチルプロパノールまたはジメチルアミノメチルプロパノールがある。有利な無機塩基には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムまたはアンモニアがある。
【0025】
顔料調製物を製造するために成分(K)として使用される水は好ましくは蒸留されているかまたは脱塩された水の状態で使用するのが好ましい。水道水および/または天然源の水も同様に使用することができる。
【0026】
本発明の顔料調製物はあらゆる割合で水と混合することができる。その際に複数の異なる調製物を水と混合してもよい。慣用の顔料調製物に比べてこのものは優れた剪断安定性を有している。この顔料調製物は良好な貯蔵安定性を有しそして凝集および沈降傾向が非常に小さい。顔料調製物は色相を規定する色強度が高く、光に対して堅牢性が高く、耐ブリード性が高くそして良好な流動性を有する低い粘度を有しそして殆どニュートン流動性を示す。
【0027】
本発明は、粉末状、顆粒状または水性プレスケーキ状の成分(A)を水(K)および成分(B)および場合によっては(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)および(J)の存在下に慣用の方法で分散させ、次いで場合によっては水(K)と混合しそし得られる顔料水性分散物を水で所望の濃度に調整することを特徴とする、顔料調製物の製造方法を提供する。好ましくは成分(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)、(J)および(K)を混合しそして均一化し、次いで成分(A)を最初に充填した混合物中に攪拌混入し、その際に顔料を初めにペースト状にそして予備分散させる。この分散物を次いで、使用した顔料の粒子状態次第で、冷却しながらまたは冷却せずに摩砕装置または分散装置を用いて細分散させる。これら装置には攪拌機、ディソルバー(鋸歯状攪拌機)、ロータ−スターターミル、ボールミル、攪拌媒体式ミル、例えばサンドミルおよびビーズミル、高速攪拌機、ニーダー、ロールミルまたは高性能ビーズミルがある。この顔料を例えば0〜100℃、特に10〜70℃、中でも20〜60℃の範囲内の温度で細分散させるかまたは摩砕して所望の粒度分布とする。細分散の操作に続いて、顔料調製物を更に水、この脱塩水または蒸留水で希釈してもよい。
【0028】
本発明の顔料調製物はあらゆる種類の巨大分子物質、例えば天然繊維および合成繊維、好ましくはセルロース繊維を着色および染色するのに、特に繊維材料の染色および繊維材料の印刷にとって有用である。
【0029】
更に本発明の顔料調製物は、塗料およびエマルジョン着色物、エマルジョン塗料、例えば繊維材料のための印刷インキ、フレキソインキ、化粧印刷またはグラビア印刷のためのインキを含めた溶剤系印刷インキ、壁紙用顔料、水希釈性塗料、木材保護剤の着色または製造に、ビスコース、ワニス、ソーセージケーシング、種子、肥料、ガラス製ビンの着色におよび屋根板のマスカラー化に、床用下塗り剤、木材着色剤、有色鉛筆芯、筆ペン、ワックス、パラフィン、グラフック用インク、ボールペン用ペースト( ballpoint pen pastes)、チョーク、洗剤および洗浄剤組成物、靴用手入れ剤、ラテックス製品、研磨材の着色におよび合成樹脂または高分子物質の彩色にとって有用である。高分子有機物質には例えばセルロースエーテル類および―エステル類、例えばエチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートまたはセルロースブチラート、天然樹脂または合成樹脂、例えば付加重合樹脂または縮合樹脂、例えばアミノ樹脂類、特に尿素−およびメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリカルボネート類、ポリオレフィン、例えばポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアミド、ポリウレタンまたはポリエステル、ゴム、カゼイン、ラテックス、シリコーン、シリコーン樹脂のそれぞれまたはそれらの混合物がある。
【0030】
本発明の顔料調製物は更に慣用のあらゆるインクジェットプリンター、特にバブルジェット法またはピエゾ法をベースとするそれで使用される印刷インキの製造にも有用である。これらの印刷インキは印刷用紙および天然のまたは合成の繊維材料にも使用することができる。更に本発明の顔料調製物は塗工されたまたは非塗工の色々な種類の基材物質に印刷するのに、例えばボール紙、厚紙、木材および木質材料、金属材料、半導体材料、セラミック材料、皮革、食料品、化粧品、肌および髪に印刷するのに使用することができる。基材物質は二次元の平面的に、または空間的に拡がった、即ち三次元的に構成されていてもよいし、全面的にまたは部分的にだけ印刷または被覆することができる。
【0031】
更に本発明の顔料調製物は、電子写真用トナーおよび現像剤において、例えば一成分または二成分粉末トナー(また、一成分または二成分現像剤)において、磁性トナー、液体トナー、ラテックストナー、重合トナーおよび特殊トナーにおいて着色剤としても有用である。この関係において代表的なトナー用バインダーは、重合樹脂、重付加樹脂、重縮合樹脂、例えばスチレン、スチレン−アクリレート、スチレン−ブタジエン、アクリレート、ポリエステル、フェノール−エポキシ樹脂、ポリスルホン類、ポリウレタン類のそれぞれの樹脂またはそれらの組合せ、および他の成分、例えば電荷制御剤、ワックスまたは流動助剤を含有していてもまたはこれらの補助剤で変性されていてもよいポリエチレンおよびポリプロピレンがある。
【0032】
本発明の顔料調製物は粉末および粉末塗料において、特に例えば金属、木材、合成樹脂、ガラス、セラミック、コンクリート、繊維材料、紙またはゴムで造られた製品の表面を被覆するのに使用される静電気的にまたは動電気的にスプレー可能な粉末塗料において着色剤としても有用である。これに使用される粉末塗料用樹脂は代表的にはエポキシ樹脂、カルボキシル基含有のおよび水酸基含有のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびアクリル樹脂であり、慣用の硬化剤と一緒に使用される。樹脂の組合せも使用できる。例えばエポキシ樹脂はしばしばカルボキシル基含有のおよび水酸基含有のポリエステル樹脂と組合せて使用される。代表的な(樹脂系に依存する)硬化剤成分の例には酸無水物、イミダゾール類であり、またジシアンジアミドおよびそれの誘導体、マスクされたイソシアネート、ビスアシルウレタン類、フェノール樹脂、メラミン樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート類、オキサゾリン類およびジカルボキシル酸もある。
【0033】
本発明の顔料調製物はインク、好ましくはインクジェット用インク、例えば水性または非水性ベースのもの、微細エマルジョンインク、紫外線硬化性インクおよびホットメルト法によって操作されるインクにおいても着色剤として有用である。
[実施例]
顔料調製物の製造:
粉末、顆粒またはプレスケーキ状のいずれかの顔料を脱イオン水中で分散剤および他の補助剤と一緒にペースト化し、次いでディソルバー(例えばVMA-Getzmann GmbH、type AE3-M1)または他の適当な装置を用いて均一化および予備分散させる。
次いでビーズミル(例えばVMA-Getzmann GmbH、type AE3-M1)または他の適当な分散装置を用いて細分散を行い、その際にd=1mmのサイズの珪化石英ビーズまたはジルコニウム系混合酸化物ビーズを用いて粉砕を冷却下に、所望の色強度および色調を得るまで実施する。その後にこの分散物を脱イオン水で所望の最終顔料濃度に調整し、粉砕媒体を分離除去しそして顔料調製物を分離する。
【0034】
以下の実施例に記載の顔料調製物を上記の方法によって製造し、その際に以下の成分を、顔料調製物がそれぞれ100部生じる様に記載の量で使用する。以下の実施例において部は重量部である。
【実施例1】
【0035】
35部のC.I.ピグメントブルー15:1 ((R)Hostaperm Blau A2R:成分A)、
10部の式(1)の分散剤(R= C12/C14−アルキル、R=メチル、x=7〜8、M=Na+ (成分B)、
2部のアルキルポリアルキレングリコールエーテル(成分C)、
9.5部のポリエチレングリコール(分子量200g/モル:成分E)
1部の消泡剤(成分H)、
0.2部の保存剤(成分J)、
42.3部の完全脱塩水(成分K)。
【0036】
成分(B)、(C)、(E)、(H)および(J)を破砕用容器に充填しそして混合する。次いで粉末状成分(A)を添加しそしてディソルバーを用いて予備分散させる。この予備分散物をd=1mmのジルコニウム系混合酸化物ビースを用いてビーズミル中で冷却下に細分散させる。破砕媒体を次いで分離除去しそして顔料調製物を分離する。この顔料調製物を1週間60℃で貯蔵しそして視覚的に検査する。この顔料調製物の粘度を、ブルックフィールド・デジタル粘度計DV−II型を使用しスピンドル4で100回転/分で測定する。
【0037】
この顔料調製物は60℃で1週間貯蔵後に液体であり、均一でありそして泡を有していない。この顔料調製物の粘度は68mPa.sである。
【実施例2】
【0038】
30部のC.I.ピグメントレッド122 ((R)Hostaperm Rot E-WD:成分A)、
5部の式(1)の分散剤(R= C12/C14−アルキル、R=メチル、x=7〜8、M=Na+ (成分B)、
2部のアルキルポリアルキレングリコールエーテル(成分C)、
9.5部のポリエチレングリコール(分子量200g/モル:成分E)
1部の消泡剤(成分H)、
0.2部の保存剤(成分J)、
52.3部の完全脱塩水(成分K)。
【0039】
実施例1のところに記載した様に顔料調製物を製造しそして試験する。この顔料調製物は60℃で1週間貯蔵後に液体であり、均一でありそして泡を有していない。この顔料調製物の粘度は180mPa.sである。
【実施例3】
【0040】
30部のC.I.ピグメントブラック7 (Degussa AGのSpezial Schwarz 4:成分A)、
5部の式(1)の分散剤(R= C12/C14−アルキル、R=メチル、x=7〜8、M=Na+ (成分B)、
2部のアルキルポリアルキレングリコールエーテル(成分C)、
9.5部のポリエチレングリコール(分子量200g/モル:成分E)
1部の消泡剤(成分H)、
0.2部の保存剤(成分J)、
52.3部の完全脱塩水(成分K)。
【0041】
実施例1のところに記載した様に顔料調製物を製造しそして試験する。この顔料調製物は60℃で1週間貯蔵後に液体であり、均一でありそして泡を有していない。この顔料調製物の粘度は26mPa.sである。
【実施例4】
【0042】
40部のC.I.ピグメントレッド146 ((R)Permanent Carmin FBB 02:成分A)、
5部の式(1)の分散剤(R= C12/C14−アルキル、R=メチル、x=7〜8、M=Na+ (成分B)、
2部のアルキルポリアルキレングリコールエーテル(成分C)、
9.5部のポリエチレングリコール(分子量200g/モル:成分E)
1部の消泡剤(成分H)、
0.2部の保存剤(成分J)、
42.3部の完全脱塩水(成分K)。
【0043】
実施例1のところに記載した様に顔料調製物を製造しそして試験する。この顔料調製物は60℃で1週間貯蔵後に液体であり、均一でありそして泡を有していない。この顔料調製物の粘度は300mPa.sである。
【実施例5】
【0044】
30部のC.I.ピグメントバイオレット23 ((R)Hostaperm Violet BL:成分A)、
5部の式(1)の分散剤(R= C12/C14−アルキル、R=メチル、x=7〜8、M=Na+ (成分B)、
2部のアルキルポリアルキレングリコールエーテル(成分C)、
9.5部のポリエチレングリコール(分子量200g/モル:成分E)
1部の消泡剤(成分H)、
0.2部の保存剤(成分J)、
52.3部の完全脱塩水(成分K)。
【0045】
実施例1のところに記載した様に顔料調製物を製造しそして試験する。この顔料調製物は60℃で1週間貯蔵後に液体であり、均一でありそして泡を有していない。この顔料調製物の粘度は55mPa.sである。
【実施例6】
【0046】
20部のC.I.ピグメントバイオレット19 ((R)Hostaperm Rot E5B 02:成分A)、
5部の式(1)の分散剤(R= C12/C14−アルキル、R=メチル、x=7〜8、M=Na+ (成分B)、
2部のアルキルポリアルキレングリコールエーテル(成分C)、
9.5部のポリエチレングリコール(分子量200g/モル:成分E)
1部の消泡剤(成分H)、
0.2部の保存剤(成分J)、
62.3部の完全脱塩水(成分K)。
【0047】
実施例1のところに記載した様に顔料調製物を製造しそして試験する。この顔料調製物は60℃で1週間貯蔵後に液体であり、均一でありそして泡を有していない。この顔料調製物の粘度は53mPa.sである。
【実施例7】
【0048】
40部のC.I.ピグメントレッド184 ((R)Permanent Rubin F6B:成分A)、
8部の式(1)の分散剤(R= C12/C14−アルキル、R=メチル、x=7〜8、M=Na+ (成分B)、
2部のアルキルポリアルキレングリコールエーテル(成分C)、
9.5部のポリエチレングリコール(分子量200g/モル:成分E)
1部の消泡剤(成分H)、
0.2部の保存剤(成分J)、
29.3部の完全脱塩水(成分K)。
【0049】
実施例1のところに記載した様に顔料調製物を製造しそして試験する。この顔料調製物は60℃で1週間貯蔵後に液体であり、均一でありそして泡を有していない。この顔料調製物の粘度は189mPa.sである。
【実施例8】
【0050】
60部のC.I.ピグメントレッド102 (Bayer AGの(R)Bayferrox130:成分A)、
9部の式(1)の分散剤(R= C12/C14−アルキル、R=メチル、x=7〜8、M=Na+ (成分B)、
1部のアルキルポリアルキレングリコールエーテル(成分C)、
0.2部の保存剤(成分H)、
1部の消泡剤(成分J)、
28.8部の完全脱塩水(成分K)。
【0051】
実施例1のところに記載した様に顔料調製物を製造しそして試験する。この顔料調製物は60℃で1週間貯蔵後に液体であり、均一でありそして泡を有していない。この顔料調製物の粘度は70mPa.sである。
【実施例9】
【0052】
60部のC.I.ピグメントレッド102 (Bayer AGの(R)Bayferrox130:成分A)、
9部の式(1)の分散剤(R= C18/C22−アルキル、R=メチル、x=25、M=Na+ (成分B)、
1部のアルキルポリアルキレングリコールエーテル(成分C)、
1部の消泡剤(成分H)、
0.2部の保存剤(成分J)、
28.8部の完全脱塩水(成分K)。
【0053】
実施例1のところに記載した様に顔料調製物を製造しそして試験する。この顔料調製物は60℃で1週間貯蔵後に液体であり、均一でありそして泡を有していない。この顔料調製物の粘度は76mPa.sである。
【実施例10】
【0054】
60部のC.I.ピグメントイエロー42 (Bayer AGの(R)Bayferrox 3920:成分A)、
9部の式(1)の分散剤(R= C18/C22−アルキル、R=メチル、x=約45、M=Na+ (成分B)、
1部のアルキルポリアルキレングリコールエーテル(成分C)、
1部の消泡剤(成分H)、
0.2部の保存剤(成分J)、
28.8部の完全脱塩水(成分K)。
【0055】
実施例1のところに記載した様に顔料調製物を製造しそして試験する。この顔料調製物は60℃で1週間貯蔵後に液体であり、均一でありそして泡を有していない。この顔料調製物の粘度は147mPa.sである。
【実施例11】
【0056】
60部のC.I.ピグメントブラック11 (Bayer AGの(R)Bayferrox 316:成分A)、
9部の式(1)の分散剤(R= C18/C22−アルキル、R=メチル、x=約25、M=Na+ (成分B)、
1部のアルキルポリアルキレングリコールエーテル(成分C)、
1部の消泡剤(成分H)、
0.2部の保存剤(成分J)、
28.8部の完全脱塩水(成分K)。
【0057】
実施例1のところに記載した様に顔料調製物を製造しそして試験する。この顔料調製物は60℃で1週間貯蔵後に液体であり、均一でありそして泡を有していない。この顔料調製物の粘度は253mPa.sである。
【実施例12】
【0058】
35 部のC.I.ピグメントレッド34 ((R)Permanent Orange RL 70:成分A)、
5部の式(1)の分散剤(R= C12/C14−アルキル、R=メチル、x=7〜8、M=Na+ (成分B)、
2部のアルキルポリアルキレングリコールエーテル(成分C)、
9.5部のポリエチレングリコール(分子量200g/モル:成分E)
1部の消泡剤(成分H)、
0.2部の保存剤(成分J)、
47.3部の完全脱塩水(成分K)。
【0059】
実施例1のところに記載した様に顔料調製物を製造しそして試験する。この顔料調製物は60℃で1週間貯蔵後に液体であり、均一でありそして泡を有していない。この顔料調製物の粘度は275mPa.sである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1種類の有機および/または無機顔料、
(B)式(I)の少なくとも1種類のポリマー分散剤
【化1】

[式中、RおよびRの一つは水素原子であるという条件のもとで、
は炭素原子数8〜30の脂肪族の直鎖状または枝分かれした炭化水素基または水素原子であり、
は炭素原子数8〜30の脂肪族の直鎖状または枝分かれした炭化水素基または水素原子であり、
は炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、
nは3より小さくない整数であり、
xは1〜150の整数でありそして
Mはカチオンである。]
よりなる水性顔料調製物。
【請求項2】
またはRがアルキルである、請求項1に記載の顔料調製物。
【請求項3】
nが4〜1000の整数である、請求項1または2に記載の顔料調製物。
【請求項4】
Mがナトリウム、カリウム、アンモニウム、エタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウムまたはトリメチルアンモニウムである、請求項1〜3のいずれか一つに記載の顔料調製物。
【請求項5】
少なくとも1種類の有機および/または無機顔料を3〜80重量%含有する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の顔料調製物。
【請求項6】
少なくとも1種類の式(I)の化合物を0.1〜30重量%含有する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の顔料調製物。
【請求項7】
非イオン性界面活性剤を30重量%まで含有する、請求項1〜6のいずれか一つに記載の顔料調製物。
【請求項8】
アニオン性界面活性剤を30重量%まで含有する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の顔料調製物。
【請求項9】
200〜2000g/モルの平均分子量を有するポリエチレングリコールエーテルを0〜50重量%含有する、請求項1〜8のいずれか一つに記載の顔料調製物。
【請求項10】
200〜2000g/モルの平均分子量および炭素原子数1〜6のアルキル基を有するポリエチレングリコールモノアルキルエーテルを0〜50重量%含有する、請求項1〜9のいずれか一つに記載の顔料調製物。
【請求項11】
有機溶剤またはヒドロトロープ物質を0〜30重量%含有する、請求項1〜10のいずれか一つに記載の顔料調製物。
【請求項12】
水性顔料調製物用の他の慣用添加物を0〜10重量%含有する、請求項1〜11のいずれか一つに記載の顔料調製物。
【請求項13】
0〜2重量%の保存剤を含有する、請求項1〜12のいずれか一つに記載の顔料調製物。
【請求項14】
粉末状、顆粒状または水性プレスケーキ状の少なくとも1種類の有機および/または無機顔料を水並びに式(I)の少なくとも1種類の化合物の存在下に慣用の方法で分散させ、次いで場合によっては水と混合しそして得られる顔料水性分散物を水で所望の濃度に調整することを特徴とする、顔料調製物の製造方法。
【請求項15】
巨大分子物質の染色でのおよび二次元シート様構造物の印刷での請求項1に記載の顔料調製物の使用。

【公開番号】特開2006−321998(P2006−321998A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123084(P2006−123084)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(597109656)クラリアント・プロドゥクテ・(ドイチュラント)・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (115)
【Fターム(参考)】