説明

水抽出を使用した大豆タンパク質製品(「S803」)の調製

大豆タンパク質原料を低pHの水で抽出し、得られた大豆タンパク質水溶液に限外濾過および任意選択の透析濾過(diafiltration)を施して、大豆タンパク質製品を提供するために乾燥してもよい、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)大豆タンパク質溶液を生成することにより、完全に可溶性であり、低いpH値および中性のpH値で透明で熱安定性の溶液をもたらすことができる大豆タンパク質製品を製造する。大豆タンパク質製品は、タンパク質を沈殿させることなく、特に、ソフトドリンクおよびスポーツドリンクのタンパク質強化(protein fortification)に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は、2009年2月11日出願の米国仮特許出願第61/202,260号および2009年9月8日出願の同第61/272,288号から米国特許法(35USC)第119条(e)に基づいて優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、大豆タンパク質製品の調製に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
その開示が参照により本明細書に組み込まれる2008年10月21日出願の米国仮特許出願第61/107,112号(7865-373)、2008年12月2日出願の同第61/193,457号(7865-374)、2009年1月26日出願の同第61/202,070号(7865-376)、2009年3月12日出願の同第61/202,553号(7865-383)、2009年7月7日出願の同第61/213,717号(7865-389)、2009年9月3日出願の同第61/272,241号(7865-400)および2009年10月21日出願の米国特許出願第12/603,087号において、完全に可溶性であり、低pH値で透明で熱安定性の溶液をもたらすことができる大豆タンパク質製品、好ましくは大豆タンパク質単離物の調製が記載されている。この大豆タンパク質製品は、タンパク質を沈殿させることなく、特に、ソフトドリンクおよびスポーツドリンク、ならびに他の酸性水系のタンパク質強化(protein fortification)に使用することができる。大豆タンパク質製品は、大豆タンパク質源を自然のpHの塩化カルシウム水溶液で抽出し、場合により、得られた大豆タンパク質水溶液を希釈し、大豆タンパク質水溶液のpHを約1.5〜約4.4、好ましくは約2.0〜約4.0のpHに調整して、乾燥の前に場合により濃縮および/または透析濾過(diafiltered)してもよい酸性化した透明な大豆タンパク質溶液を生成することにより製造される。
【発明の概要】
【0004】
本発明の概要
驚くべきことに、類似の特性の大豆タンパク質製品を、塩化カルシウムを使用する必要がない、水による大豆タンパク質源の抽出を伴う手順により形成できることが今や分かった。
【0005】
本発明の一態様において、大豆タンパク質原料を低pHの水で抽出し、得られた大豆タンパク質水溶液に限外濾過および任意選択の透析濾過(diafiltration)を施して、乾燥してもよい、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)大豆タンパク質溶液を生成して、大豆タンパク質製品を提供する。
【0006】
少なくとも約60wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する、本明細書において提供する大豆タンパク質製品は、透明で熱安定性のその水溶液をもたらすように酸性pH値で可溶性である。大豆タンパク質製品は、タンパク質を沈殿させることなく、特に、ソフトドリンクおよびスポーツドリンク、ならびに他の水系のタンパク質強化(protein fortification)に使用することができる。大豆タンパク質製品は、好ましくは、少なくとも約90wt%、好ましくは少なくとも約100wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する単離物である。
【0007】
本発明の一態様において、乾燥重量基準(d.b.)で少なくとも約60wt%の大豆タンパク質含量を有する大豆タンパク質製品の製造方法であって、
(a)大豆タンパク質源を低pHの水で抽出して、該タンパク質源からの大豆タンパク質の可溶化を引き起こし、大豆タンパク質水溶液を形成するステップと、
(b)残留する大豆タンパク質源から大豆タンパク質水溶液を分離するステップと、
(c)選択的膜技法を使用して大豆タンパク質水溶液を濃縮するステップと、
(d)場合により濃縮大豆タンパク質溶液を透析濾過する(diafiltering)ステップと、
(e)場合により濃縮大豆タンパク質溶液を乾燥するステップと
を含む方法を提供する。
【0008】
大豆タンパク質製品は、少なくとも約90wt%、好ましくは少なくとも約100wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する単離物であることが好ましい。
【0009】
本発明は主に大豆タンパク質単離物の製造に言及するが、大豆タンパク質単離物と同様の特性を有する純度の低い大豆タンパク質製品を提供することができると考えられる(It is contemplated)。そのような純度の低い製品は、少なくとも約60重量%(N×6.25)d.b.のタンパク質濃度を有し得る。
【0010】
本発明の新規の大豆タンパク質製品は、粉末状飲料を水に溶解することにより水性ソフトドリンクまたはスポーツドリンクを形成するために、粉末状飲料とブレンドすることができる。そのようなブレンドは、粉末状飲料とすることができる。
【0011】
本明細書において提供する大豆タンパク質製品は、酸性pH値で高い透明度を有し、これらのpH値で熱安定性であるその水溶液として提供することができる。
【0012】
本発明の別の態様において、低pHで熱安定性である、本発明で提供される大豆製品の水溶液を提供する。該水溶液は、大豆タンパク質製品が完全に可溶および透明である透明な飲料または大豆タンパク質製品が不透明度を増大させない不透明な飲料でもよい飲料とすることができる。大豆タンパク質製品の水溶液は、pH7で優れた溶解度および透明度も有する。
【0013】
本発明の方法に従って製造する大豆タンパク質製品は、大豆タンパク質単離物の特徴的な豆臭を有しておらず、酸性媒体のタンパク質強化(protein fortification)に適しているだけではなく、加工食品および飲料のタンパク質強化(protein fortification)、油の乳化を含むがこれらに限定されないタンパク質単離物の広範な従来の用途において、焼いた食品の組織形成剤(body former)およびガスを閉じ込める製品の発泡剤として(as a)使用し得る。さらに、大豆タンパク質製品は、肉類似食品に有用なタンパク質繊維に形成することができ、つなぎとして卵白が使用される食品において卵白代替物または増量剤(extender)として使用し得る。大豆タンパク質製品は、栄養補助食品(nutritional supplement)においても使用し得る。大豆タンパク質製品の他の用途は、ペットフード、動物用飼料ならびに産業および化粧品用途ならびにパーソナルケア製品におけるものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の概略説明
大豆タンパク質製品を提供するプロセスの最初のステップは、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の可溶化を伴う。大豆タンパク質源は、大豆、あるいは大豆ミール(soy meal)、大豆フレーク、大豆粗粒および大豆粉を含むがこれらに限定されない任意の大豆製品または大豆の加工に由来する副産物とすることができる。大豆タンパク質源は、脂肪を除いていない形態、部分的に脱脂した形態または完全に脱脂した形態で使用し得る。大豆タンパク質源がかなりの(appreciable)脂肪を含有する場合、一般に、このプロセスの間に油除去ステップが必要となる。大豆タンパク質源から回収された大豆タンパク質は、大豆中に自然に存在するタンパク質であるか、またはタンパク質性物質(proteinaceous material)は、遺伝子操作により改変されたタンパク質であってもよいが、自然タンパク質の特徴的な疎水性および極性特性を有する。
【0015】
本明細書において、大豆タンパク質原料からのタンパク質の可溶化は、低pHの水を使用して実施する。抽出は、約1.5〜約3.6、好ましくは約2.6〜約3.6のpHなどの、タンパク質製品がその中に組み込まれる製品(例えば、飲料)のpHと調和するpHで実施することができる。一般に、水を大豆タンパク質源に添加し、次いで、任意の好都合な食品グレードの酸、通常は塩酸またはリン酸の添加によりpHを調整する。大豆タンパク質製品が非食品用途用である場合、非食品グレードの化学物質を使用することができる。
【0016】
バッチプロセスにおいて、タンパク質の可溶化は、約1℃〜約100℃、好ましくは約15°〜約35℃の温度で、好ましくは通常約1〜約60分間の可溶化時間を減少させるための撹拌を伴って実施される。実質的に実現可能な量のタンパク質を大豆タンパク質源から抽出するように可溶化を実施して、全体的に高い製品収率を実現することが好ましい。
【0017】
連続プロセスにおいて、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の抽出は、大豆タンパク質源からの大豆タンパク質の連続抽出の実施と調和する任意の様式で実施する。一実施形態において、大豆タンパク質源を水と連続的に混合し、本明細書に記載のパラメーターに従って所望の抽出を実施するのに十分な滞留時間、ある長さを有するパイプまたは導管を通して、ある流量で混合物を移動させる。そのような連続的な手順において、可溶化ステップは、好ましくは実質的に実現可能な量のタンパク質を大豆タンパク質源から抽出するように可溶化を実施するために、最大で約10分間で急速に実施する。連続的な手順での可溶化は、約1℃と約100℃の間、好ましくは約15℃と約35℃の間の温度で実施する。
【0018】
可溶化ステップの間の水中の大豆タンパク質源の濃度は、幅広く変えることができる。一般的な濃度値は、約5〜約15%w/vである。
【0019】
タンパク質抽出ステップは、大豆タンパク質源中に存在し得る脂肪を可溶化するという追加の効果を有することができ、その結果、水性相中に脂肪が存在することとなる。
【0020】
抽出ステップから得られるタンパク質溶液は、一般に約5〜約50g/L、好ましくは約10〜約50g/Lのタンパク質濃度を有する。
【0021】
酸化防止剤は、抽出ステップの間に存在することができる。酸化防止剤は、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸などの任意の好都合な酸化防止剤とすることができる。利用する酸化防止剤の量は、該溶液の約0.01〜約1wt%、好ましくは約0.05wt%まで変えることができる。酸化防止剤は、タンパク質溶液中のフェノール類の酸化を抑制する働きをする。
【0022】
次いで、抽出ステップから得られる水性相は、例えば、デカンタ型遠心分離機の利用の後にディスク型遠心分離および/または濾過により残留する大豆タンパク質原料を除去するなどの任意の好都合な様式で、残留する大豆タンパク質源から分離し得る。分離した残留大豆タンパク質源は、廃棄するために乾燥することができる。あるいは、分離した残留大豆タンパク質源を、例えば、従来の等電沈殿手順(isoelectric precipitation procedure)またはそのような残留タンパク質を回収するための任意の他の好都合な手順により処理して、一部の残留タンパク質を回収することができる。
【0023】
次いで、本発明の譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,844,086号および同第6,005,076号に記載のように大豆タンパク質源がかなりの脂肪を含有する場合、分離したタンパク質水溶液に対して上記特許に記載の脱脂ステップを実施することができる。あるいは、分離したタンパク質水溶液の脱脂は、任意の他の好都合な手順により実現し得る。
【0024】
大豆タンパク質水溶液は、粉末状活性炭または粒状活性炭などの吸着剤で処理して、色および/または臭気化合物を除去し得る。そのような吸着処理は、任意の好都合な条件下、一般に分離したタンパク質水溶液の周囲温度で実施し得る。粉末状活性炭については、約0.025%〜約5%w/v、好ましくは約0.05%〜約2%w/vの量を利用する。吸着剤は、任意の好都合な手段により、例えば、濾過により該大豆タンパク質溶液から除去し得る。
【0025】
透明な酸性化大豆タンパク質水溶液に熱処理を施して、抽出ステップの間の大豆タンパク質源物質からの抽出の結果として大豆タンパク質水溶液中に存在するトリプシン阻害剤などの熱不安定性の抗栄養因子(anti−nutritional factors)を不活性化することができる。そのような加熱ステップは、微生物負荷(microbial load)を低減するという追加の利益ももたらす。一般に、該タンパク質溶液は、約70°〜約120℃、好ましくは約85°〜約95℃の温度まで、約10秒間〜約60分間、好ましくは約30秒間〜約5分間加熱する。次いで、熱処理した大豆タンパク質溶液は、以下に記載のようにさらに処理するために、約2°〜約60℃、好ましくは約20°〜約35℃の温度まで冷却し得る。
【0026】
純度が十分であれば、得られた大豆タンパク質水溶液を直接乾燥して、大豆タンパク質製品を製造することができる。不純物含量を低下させるために、乾燥前に大豆タンパク質水溶液を処理することができる。
【0027】
大豆タンパク質水溶液を濃縮して、そのイオン強度を実質的に一定に維持しながらそのタンパク質濃度を増大させることができる。そのような濃縮は、一般に、約50〜約400g/L、好ましくは約100〜約250g/Lのタンパク質濃度を有する濃縮大豆タンパク質溶液を得るために実施する。
【0028】
濃縮ステップは、例えば、異なる膜材料および構造を考慮して、約3000〜約1000000ダルトン、好ましくは約5000〜約100000ダルトンなどの好適な分画分子量(molecular weight cut−off)を有し、連続操作については、タンパク質水溶液が膜を通過するときに所望の濃縮度が可能になるように寸法を決める、中空繊維膜または螺旋状膜(spiral−wound membrane)などの膜を使用する、限外濾過または透析濾過(diafiltration)などの任意の好都合な選択的膜技法を利用することにより、バッチまたは連続操作と調和する任意の好都合な様式で実施することができる。
【0029】
よく知られているように、限外濾過および同様の選択的膜技法は、低分子量種が膜を通過することを可能にすると同時に、高分子量種が膜を通過することを阻止する。原料から抽出される低分子量種としては、炭水化物、色素、低分子量タンパク質、およびそれ自体が低分子量タンパク質であるトリプシン阻害剤などの抗栄養因子(anti−nutritional factors)なども挙げられる。膜の分画分子量(molecular weight cut−off)は、通常、異なる膜材料および構造を考慮して、かなりの割合のタンパク質を溶液中に確実に保持すると同時に、汚染物質を通過させるように選択する。
【0030】
大豆タンパク質溶液に水を使用して、完全な濃縮の前または後に、透析濾過(diafiltration)ステップを施すことができる。水は、その自然のpHまたは透析濾過する(diafiltered)タンパク質溶液のpHと等しいpHまたは中間の任意のpH値とすることができる。そのような透析濾過(diafiltration)は、約2〜約40倍量(volumes)の透析濾過(diafiltration)溶液、好ましくは約5〜約25倍量(volumes)の透析濾過(diafiltration)溶液を使用して実施し得る。透析濾過(diafiltration)操作において、透過液(permeate)の膜通過により、さらなる量の汚染物質を大豆タンパク質水溶液から除去する。透析濾過(diafiltration)操作は、さらなるかなりの量の汚染物質もしくは可視色が透過液(permeate)中に存在しなくなるまで、または、乾燥すると、所望のタンパク質含量を有する製品、好ましくは、乾燥重量基準で90wt%(N×6.25)を超えるタンパク質含量を有する単離物を生成するように保持液(retentate)を十分に精製するまで実施し得る。そのような透析濾過(diafiltration)は、濃縮ステップと同じ膜を使用して実施し得る。しかし、所望であれば、透析濾過(diafiltration)ステップは、異なる分画分子量(molecular weight cut−off)を有する別の膜、例えば、異なる膜材料および構造を考慮して、約3000〜約1000000ダルトン、好ましくは約5000〜約100000ダルトンの範囲の分画分子量(molecular weight cut−off)を有する膜などを使用して実施し得る。
【0031】
本明細書において、濃縮ステップおよび透析濾過(diafiltration)ステップは、濃縮し、透析濾過した(diafiltered)保持液(retentate)を乾燥することによってその後、回収される大豆タンパク質製品が約90wt%未満のタンパク質(N×6.25)d.b.、例えば、少なくとも約60wt%タンパク質(N×6.25)d.bなどを含有するような様式で実施し得る。大豆タンパク質水溶液を部分濃縮および/または部分透析濾過(diafiltering)することにより、汚染物質を部分的にのみ除去することが可能である。次いで、このタンパク質溶液を乾燥して、より低レベルの純度を有する大豆タンパク質製品を得ることができる。大豆タンパク質製品は、依然として、酸性条件下で透明なタンパク質溶液を生成することができる。
【0032】
酸化防止剤は、透析濾過(diafiltration)ステップの少なくとも一部の間に透析濾過(diafiltration)媒体中に存在させることができる。酸化防止剤は、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸などの任意の好都合な酸化防止剤とすることができる。透析濾過(diafiltration)媒体において利用する酸化防止剤の量は、利用する物質次第であり、約0.01〜約1wt%、好ましくは約0.05wt%まで変えることができる。酸化防止剤は、濃縮大豆タンパク質溶液中に存在する任意のフェノール類の酸化を抑制する働きをする。
【0033】
濃縮ステップおよび任意選択の透析濾過(diafiltration)ステップは、任意の好都合な温度、一般に約2°〜約60℃、好ましくは約20°〜約35℃で、所望の程度の濃縮および透析濾過(diafiltration)を実現するための時間にわたって実施し得る。使用する温度および他の条件は、ある程度、膜処理を実施するために使用する膜装置および溶液の所望のタンパク質濃度および汚染物質を除去して透過液(permeate)とする効率の影響を受ける。
【0034】
大豆中には、2種の主要なトリプシン阻害剤、すなわち、約21000ダルトンの分子量を有する熱不安定性の分子であるKunitz阻害剤、および約8000ダルトンの分子量を有するより熱安定性の分子、Bowman−Birk阻害剤が存在する。最終的な大豆タンパク質製品のトリプシン阻害活性のレベルは、様々なプロセス変数の操作により調節することができる。
【0035】
上述したように、酸性化大豆タンパク質水溶液の熱処理は、熱不安定性のトリプシン阻害剤を不活性化するのに使用し得る。そのような熱処理は、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)大豆タンパク質溶液にも適用することができる。
【0036】
さらに、濃縮および/または透析濾過(diafiltration)ステップは、透過液(permeate)中のトリプシン阻害剤を他の汚染物質と共に除去するのに好都合な様式で操作し得る。トリプシン阻害剤の除去は、大きい孔径、例えば約30000〜約1000000ダルトンの膜を使用すること、膜を高温、例えば約30°〜約60℃で操作すること、および多量(greater volumes)の透析濾過(diafiltration)媒体、例えば約20〜約40倍量(volumes)を利用することにより促進される。
【0037】
希釈したタンパク質溶液を低いpH、例えば約1.5〜約3で酸性化および膜処理することにより、該溶液を高いpH、例えば約3〜約3.6で処理する場合と比較して、トリプシン阻害活性を低減することができる。タンパク質溶液をpH範囲の下端で濃縮および透析濾過する(diafiltered)場合、乾燥前に保持液(retentate)のpHを上昇させることが望ましい可能性がある。濃縮および透析濾過した(diafiltered)タンパク質溶液のpHは、水酸化ナトリウムなどの任意の好都合な食品グレードのアルカリの添加により、所望の値、例えば約pH3まで上昇させることができる。
【0038】
さらに、トリプシン阻害活性の低減は、大豆材料を、各阻害剤のジスルフィド結合を破壊または再配置する還元剤に曝すことにより実現し得る。好適な還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、システインおよびN−アセチルシステインが挙げられる。
【0039】
そのような還元剤の添加は、プロセス全体の様々な段階で実施し得る。還元剤は、抽出ステップにおいて大豆タンパク質原料と共に添加してもよく、残留する大豆タンパク質原料の除去後の清澄な大豆タンパク質水溶液に添加してもよく、透析濾過(diafiltration)の前または後に濃縮したタンパク質溶液に添加してもよく、または乾燥した大豆タンパク質製品とドライブレンドしてもよい。還元剤の添加は、上記の熱処理ステップおよび膜処理ステップと組み合わせてもよい。
【0040】
濃縮タンパク質溶液において活性トリプシン阻害剤を保持することが望ましいならば、このことは、熱処理ステップの強度を削減または低減すること、還元剤を利用しないこと、pH範囲の上端、例えば約3〜約3.6で濃縮および透析濾過(diafiltration)ステップを操作すること、小さい孔径を有する濃縮および透析濾過(diafiltration)膜を利用すること、膜を低温で操作すること、ならびに少量の(fewer volumes)透析濾過(diafiltration)媒体を利用することにより実現することができる。
【0041】
必要ならば、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)タンパク質溶液に、米国特許第5,844,086号および同第6,005,076号に記載のさらなる脱脂操作を実施することができる。あるいは、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)タンパク質溶液の脱脂は、任意の他の好都合な手順により実現し得る。
【0042】
濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)透明なタンパク質水溶液は、粉末状活性炭または粒状活性炭などの吸着剤で処理して、色および/または臭気化合物を除去することができる。そのような吸着処理は、任意の好都合な条件下、一般に濃縮するタンパク質溶液の周囲温度で実施し得る。粉末状活性炭については、約0.025%〜約5%w/v、好ましくは約0.05%〜約2%w/vの量を利用する。吸着剤は、大豆タンパク質溶液から任意の好都合な手段により、例えば、濾過により除去し得る。
【0043】
濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)大豆タンパク質水溶液は、噴霧乾燥または凍結乾燥などの任意の好都合な技法により乾燥することができる。低温殺菌ステップは、乾燥前の大豆タンパク質溶液に対して実施し得る。そのような低温殺菌は、任意の所望の低温殺菌条件下で実施し得る。一般に、濃縮し、場合により透析濾過した(diafiltered)大豆タンパク質溶液は、約55°〜約70℃、好ましくは約60°〜約65℃の温度まで、約30秒間〜約60分間、好ましくは約10分間〜約15分間、加熱する。次いで、低温殺菌した濃縮大豆タンパク質溶液は、乾燥するために、好ましくは約15°〜約35℃の温度まで冷却し得る。
【0044】
乾燥大豆タンパク質製品は、少なくとも約60wt%、好ましくは約90wt%タンパク質を超える、より好ましくは少なくとも約100wt%、(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する。
【0045】
本明細書において製造する大豆タンパク質製品は酸性の水性環境に可溶であり、それにより、該製品は、炭酸を含む飲料および炭酸を含まない飲料のいずれへも、そこにタンパク質強化(protein fortification)をもたらすために組み込むのに適している。そのような飲料は、約2.5〜約5の範囲の幅広い酸性pH値を有する。本明細書において提供する大豆タンパク質製品は、そのような飲料にタンパク質強化(protein fortification)をもたらすために、任意の好都合な量、例えば、一杯当たり少なくとも約5gの大豆タンパク質をそのような飲料に添加し得る。添加した大豆タンパク質製品は、飲料中で溶解し、加熱処理後でさえ飲料の透明度を損なわない。大豆タンパク質製品は、水への溶解による飲料の液戻し(reconstitution)の前に、乾燥飲料とブレンドし得る。飲料中に存在する成分が、飲料中に溶解したままとなる本発明の組成物の能力に悪影響を及ぼす可能性がある場合、本発明の組成物を許容するために、飲料の通常の配合を変更する必要性が生じる可能性がある。さらに、大豆タンパク質製品は、非常に可溶性であり、pH7で優れた透明度の溶液を生成する。
【実施例】
【0046】

例1:
この例は、脱脂し最小限に加熱処理した大豆粉の、低pHの水または生理食塩水による抽出性の評価である。
【0047】
抽出系のpHを希HClで3に調整し、脱脂し最小限に加熱処理した大豆粉(10g)を、水、0.15NaClまたは0.15MのCaCl(100ml)で抽出した。粉および溶媒を合わせ、pHを調整し、次いで、電磁撹拌子および撹拌プレートを使用して試料を室温で30分間撹拌した。10200gで10分間の遠心分離により抽出物を使用済みミール(spent meal)から分離し、次いで、孔径0.45μmのシリンジフィルターを用いた濾過によりさらに清澄化した。LECO FP528窒素測定器(nitrogen determinator)を使用して濾液のタンパク質含量を測定し、次いで、試料を等しい体積の水で希釈し、沈殿物の存在を観察した。
【0048】
抽出性の結果を、以下の表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1の結果から分かるように、抽出性は、全ての溶媒についてかなり高く、塩化カルシウム溶液により最も多くのタンパク質が可溶化された。水のみによる抽出により、0.15Mの塩化ナトリウム溶液を使用する、より多くのタンパク質が可溶化された。
【0051】
清澄化した抽出物を水で希釈した場合、塩化ナトリウム抽出物は多量に沈殿したが、水および塩化カルシウム抽出物は本質的に透明なままであった。
【0052】
例2:
この例は、種々のpH値の水による大豆粉の抽出性およびpH3まで酸性化した場合に得られる抽出物の透明度の試験である。
【0053】
脱脂し最小限に加熱処理した大豆粉(10g)を、電磁撹拌子/撹拌プレートを使用し一定の速度で操作して、室温で30分間、逆浸透精製水(100ml)で抽出した。抽出のための30分のタイミングは、撹拌を開始したときにスタートさせた。抽出(水プラス粉)のpHを、(かなり急速に生じた)該粉の完全な湿潤の直後に6MのHClまたは6MのNaOHで3、5、7、9または11に調整し、30分の抽出の間ずっとモニターし、補正した。30分後、試料を10200gで10分間遠心分離して、使用済みミールから抽出物を分離した。次いで、孔径0.45μmのシリンジフィルターを用いた濾過により抽出物をさらに清澄化した。LECO FP528窒素測定器を使用して、濾過した抽出物のタンパク質含量を評価した。濾過した抽出物のpHおよび透明度(A600)も測定した。濾過した抽出物の試料を一倍量の(one part)逆浸透精製水で希釈し、希釈した試料のpHおよび透明度を評価した。次いで、必要に応じて、そのままの濃度の(full strength)試料および希釈した試料を、6MのHClまたは6MのNaOHでpH3に調整し、透明度を再評価した。
【0054】
水による大豆粉の抽出性に対する抽出pHの効果を、以下の表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表2の結果から分かるように、アルカリ性pHの水を使用すると、かなりの抽出性が得られた。低いものではあったが、pH3で得られた抽出性は妥当な値であった。
【0057】
そのままの濃度の(full strength)抽出物試料の透明度に対する酸性化の効果を、以下の表3に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
表3の結果から分かるように、pH3で抽出した試料が、pH調整後に透明なままであった唯一の試料であった。
【0060】
希釈した抽出物試料の透明度に対する酸性化の効果を、以下の表4に示す。
【0061】
【表4】

【0062】
表4の結果から分かるように、pH3で抽出し、次いで希釈した試料が、評価した試料の中で最も透明であった。
【0063】
例3:
この例は、大豆粉の低pH水抽出物が濃縮および透析濾過した(diafiltered)ときに透明なままであるかどうか、さらには乾燥後に再水和して(re−hydrate)透明になるかどうかを確認するために実施した。
【0064】
80gの脱脂し最小限に加熱処理した大豆粉を、周囲温度で800mlの逆浸透精製水に添加し、30分間撹拌して、タンパク質水溶液を得た。該粉が水に分散した直後に、希HClの添加により該系のpHを3に調整した。30分の抽出の間に定期的にpHをモニターし、3に補正した。残留する大豆粉を除去し、得られたタンパク質溶液を遠心分離および濾過により清澄化して、1.86重量%のタンパク質含量を有する濾過タンパク質溶液475mlを生成した。
【0065】
濾過タンパク質溶液の体積を、10000ダルトンの分画分子量(molecular weight cut−off)を有するポリエーテルスルホン(PES)膜での濃縮により42mlまで減少させた。濃縮タンパク質溶液の40mlのアリコートを、80mlの逆浸透精製水で透析濾過した(diafiltered)。得られた透析濾過し(diafiltered)、濃縮したタンパク質溶液は、15.42重量%のタンパク質含量を有しており、最初の濾過タンパク質溶液の69.2wt%の収率を示した。次いで、透析濾過し(diafiltered)、濃縮したタンパク質溶液を乾燥して、90.89%(N×6.25)w.b.のタンパク質含量を有することが判明した生成物を得た。この生成物は、S803と名付けた。
【0066】
S803の3.2wt%タンパク質水溶液を調製し、HunterLab Color Quest XE測定器を使用し透過モードで操作して色および透明度を評価した。
【0067】
色および透明度の値を、以下の表5に示す。
【0068】
【表5】

【0069】
表5から分かるように、S803溶液の色は非常に明るく、ヘイズレベルはかなり低かった。
【0070】
例4:
この例において、例3の手順に従って製造したS803製品の熱安定性を評価した。
【0071】
S803の2%w/vタンパク質水溶液を生成した。pHメーターを用いて該溶液のpHを求め、該溶液の透明度を、HunterLab Color Quest XE測定器を用いたヘイズ測定により評価した。次いで、該溶液を95℃まで加熱し、この温度で30秒間保持し、次いで、氷浴中で直ちに室温まで冷却した。次いで、熱処理した溶液の透明度を測定した。
【0072】
S803溶液のpHは2.91であった。加熱の前および後のタンパク質溶液の透明度を、以下の表6に示す。
【0073】
【表6】

【0074】
表6から分かるように、S803の2%溶液の透明度は、例3において調製した3.2%溶液より劣っていた。その理由は不明である。いずれにしても、2%タンパク質溶液を熱処理すると、試料中のヘイズレベルは低下した。したがって、熱処理により透明度は損なわれなかった。
【0075】
例5:
この例において、S803の製造を卓上規模からパイロットプラント規模まで拡大した。
【0076】
「a」kgの脱脂し最小限に加熱処理した大豆粉を、周囲温度で「b」Lの逆浸透精製水に添加し、30分間撹拌して、タンパク質水溶液を得た。該粉が水に分散した直後に、希HClの添加により該系のpHを3に調整した。30分の抽出の間に定期的にpHをモニターし、3に補正した。残留する大豆粉を除去し、得られたタンパク質溶液を遠心分離および濾過により清澄化して、「d」重量%のタンパク質含量を有する濾過タンパク質溶液「c」Lを生成した。
【0077】
濾過タンパク質溶液の体積を、「g」ダルトンの分画分子量(molecular weight cut−off)を有する膜「f」での濃縮により「e」Lまで減少させた。「i」重量%のタンパク質含量を有し、最初の濾過タンパク質溶液の「j」wt%の収率を示す濃縮タンパク質溶液の「h」Lのアリコートを乾燥して、「k」%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有することが判明した生成物を得た。この生成物は、「l」S803−02と名付けた。残りの「m」Lの濃縮タンパク質溶液を「n」Lの逆浸透精製水「o」で透析濾過した(diafiltered)。その結果得られた、透析濾過し(diafiltered)、濃縮したタンパク質溶液は、「p」重量%のタンパク質含量を有しており、最初の濾過タンパク質溶液の「q」wt%の収率を示した。次いで、透析濾過し(diafiltered)、濃縮したタンパク質溶液を乾燥して、「r」%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有することが判明した生成物を得た。この生成物は、「l」S803と名付けた。
【0078】
2つの試験に関するパラメーター「a」〜「r」を、以下の表7に示す。
【0079】
【表7】

【0080】
S005−L16−08A S803、S803−02およびS005−A20−09A S803の3.2%w/vタンパク質水溶液を調製し、HunterLab Color Quest XE測定器を使用し透過モードで操作して色および透明度を評価した。pHメーターを用いてpHも測定した。
【0081】
pH、色および透明度の値を、以下の表8に示す。
【0082】
【表8】

【0083】
表8から分かるように、S803溶液の色は非常に明るく、ヘイズレベルは低かった。
【0084】
HunterLab Color Quest XE測定器を反射モードで用いて乾燥粉末の色も評価した。色の値を、以下の表9に示す。
【0085】
【表9】

【0086】
表9から分かるように、全ての乾燥製品の色が非常に明るかった。
【0087】
例6:
この例は、例5の方法により製造した大豆タンパク質単離物(S803)の水中での熱安定性の評価を含む。
【0088】
S005−L16−08A S803およびS005−A20−09A S803の2%w/vタンパク質水溶液を生成し、pHを3に調整した。これらの溶液の透明度を、HunterLab Color Quest XE測定器を透過モードで用いたヘイズ測定により評価した。次いで、該溶液を95℃まで加熱し、この温度で30秒間保持し、次いで、氷浴中で直ちに室温まで冷却した。次いで、熱処理した溶液の透明度を再び測定した。
【0089】
加熱の前および後のタンパク質溶液の透明度を、以下の表10に示す。
【0090】
【表10】

【0091】
表10の結果から分かるように、例5に記載のようにパイロット規模で調製したこれらのS803の2%溶液の透明度は、例3に記載のように実験室規模で調製したS803の2%溶液の透明度よりずっと良好であった。この差異が生じる理由は不明である。例4の場合と同様に、S803の溶液は、透明度を改善すると考えられる熱処理により熱安定性となることが判明した。
【0092】
例7:
この例は、例5の方法により製造した大豆タンパク質単離物(S803)の水中の溶解度の評価を含む。タンパク質溶解度(いわゆるタンパク質法、Morrら、J. Food Sci. 50:1715-1718の手順の改良版)および生成物全体の溶解度(いわゆるペレット法(pellet method))に基づいて、溶解度を試験した。
【0093】
0.5gのタンパク質を供給するのに十分なタンパク質粉末を秤量してビーカーに入れ、次いで、少量の逆浸透(RO)精製水を添加し、滑らかなペーストが形成するまで混合物を撹拌した。次いで、追加の水を添加して、体積を約45mlとした。次いで、電磁撹拌機を使用してビーカーの中身をゆっくりと60分間撹拌した。タンパク質の分散の直後にpHを求め、希NaOHまたはHClで適切なレベル(2、3、4、5、6または7)に調整した。自然のpHの試料も調製した。pHを調整した試料についてはpHを測定し、60分間の撹拌の間に2回補正した。60分間の撹拌後、RO水で試料の体積を合計で最大50mlとし、1%w/vタンパク質分散液を得た。Leco FP528窒素測定器を使用して分散液のタンパク質含量を測定した。次いで、分散液のアリコート(20ml)を、100℃のオーブンにおいて終夜乾燥した、予め秤量した遠心分離管に移し、次いで、乾燥器において冷却し、該管に蓋をした。試料を7800gで10分間遠心分離し、それにより不溶性物質が沈降し、透明な上澄み液が生じた。Leco分析により上澄み液のタンパク質含量を測定し、次いで、上澄み液および該管の蓋を廃棄し、100℃に設定したオーブンにおいてペレット材料を終夜乾燥した。翌朝、該管を乾燥器に移し、冷却させた。乾燥ペレット材料の重量を記録した。使用した粉末の重量に((100−該粉末の含水率(%))/100)の倍率(factor)を乗算することにより、最初のタンパク質粉末の乾燥重量を算出した。次いで、この生成物の溶解度を2種の異なる方法で算出した:
1)溶解度(タンパク質法)(%)=(上澄み液中のタンパク質%/最初の分散液中のタンパク質%)×100
2)溶解度(ペレット法)(%)=(1−(重量乾燥不溶性ペレット材料/((20mlの分散液の重量/50mlの分散液の重量)×最初の重量乾燥タンパク質粉末)))×100
例5において製造したタンパク質単離物(1%タンパク質)の水中の自然のpH値を、表11に示す。
【0094】
【表11】

【0095】
得られた溶解度の結果を、以下の表12および13に示す。
【0096】
【表12】

【0097】
【表13】

【0098】
表12および13の結果から分かるように、S803製品は2、3および7のpH値ならびに自然のpHで極度に可溶性であった。
【0099】
例8:
この例は、例5の方法により製造した大豆タンパク質単離物(S803)の水中の透明度の評価を含む。
【0100】
例7に記載のように調製した1%w/vタンパク質分散液の透明度を、600nmでの吸光度を測定することにより評価し、吸光度スコアが低いほど透明度が高いことを示していた。HunterLab Color Quest XE測定器の透過モードでの試料の分析により、透明度の別の尺度であるパーセンテージヘイズ値(percentage haze reading)も得られた。
【0101】
透明度の結果を、以下の表14および15に示す。
【0102】
【表14】

【0103】
【表15】

【0104】
表14および15の結果から分かるように、S803の溶液は、2、3および7のpH値ならびに自然のpHで優れた透明度を示した。
【0105】
例9:
この例は、例5の方法により製造した大豆タンパク質単離物(S803)の、ソフトドリンク(Sprite)およびスポーツドリンク(Orange Gatorade)への溶解度の評価を含む。pHを補正していない各飲料にタンパク質を添加して溶解度を求め、タンパク質強化飲料のpHを元々の飲料のレベルに調整して再び溶解度を求めた。
【0106】
pHを補正せずに溶解度を評価する場合、1gのタンパク質を供給するのに十分な量のタンパク質粉末を秤量してビーカーに入れ、少量の飲料を添加し、滑らかなペーストが形成するまで撹拌した。追加の飲料を添加して体積を50mlとし、次いで、各溶液を電磁撹拌機で60分間ゆっくりと撹拌して、2%タンパク質w/v分散液を得た。LECO FP528窒素測定器を使用して試料のタンパク質含量を分析し、次いで、タンパク質を含有する飲料のアリコートを7800gで10分間、遠心分離し、上澄み液のタンパク質含量を測定した。
【0107】
溶解度(%)=(上澄み液中のタンパク質%/最初の分散液中のタンパク質%)×100
pHを補正して溶解度を評価する場合、タンパク質を含まないソフトドリンク(Sprite)(3.39)およびスポーツドリンク(Orange Gatorade)(3.19)のpHを測定した。1gのタンパク質を供給するのに十分な量のタンパク質粉末を秤量してビーカーに入れ、少量の飲料を添加し、滑らかなペーストが形成されるまで撹拌した。追加の飲料を添加して体積を約45mlとし、次いで、各溶液を電磁撹拌機で60分間、ゆっくりと撹拌した。タンパク質を含有する飲料のpHを測定し、次いで、必要に応じてHClまたはNaOHを用いて元々のタンパク質を含まないpHに調整した。次いで、追加の飲料を用いて各溶液の体積を合計で50mlとし、2%タンパク質w/v分散液を得た。LECO FP528窒素測定器を使用して試料のタンパク質含量を分析し、次いで、タンパク質を含有する飲料のアリコートを7800gで10分間、遠心分離し、上澄み液のタンパク質含量を測定した。
【0108】
溶解度(%)=(上澄み液中のタンパク質%/最初の分散液中のタンパク質%)×100
得られた結果を、以下の表16に示す。
【0109】
【表16】

【0110】
表16の結果から分かるように、S803はSpriteおよびOrange Gatoradeに極度に可溶であった。S803は酸性化した製品であるため、タンパク質の添加は飲料のpHに対して全く影響を及ぼさなかった。
【0111】
例10:
この例は、例5の方法により製造した大豆タンパク質単離物(S803)の、ソフトドリンクおよびスポーツドリンク中での透明度の評価を含む。
【0112】
例9においてソフトドリンク(Sprite)およびスポーツドリンク(Orange Gatorade)中で調製した2%w/vタンパク質分散液の透明度を、例8に記載の方法を使用して評価した。600nmでの吸光度測定については、測定を実施する前に、適切な飲料を用いて分光光度計のブランク測定を行った(are blanked)。
【0113】
得られた結果を、以下の表17および18に示す。
【0114】
【表17】

【0115】
【表18】

【0116】
表17および18の結果から分かるように、S005−L16−08A S803は、Orange GatoradeにおけるヘイズをS005−A20−09A S803より増大させた。その理由は不明である。両方のS803製品をSprite中に入れると、該飲料は実質的に透明であるか、またはおそらくわずかに濁っていた。
【0117】
本開示の概要
本開示を要約すると、本発明は、大豆タンパク質原料の水抽出に基づいた、酸性媒体に可溶である大豆タンパク質製品の製造方法を提供する。本発明の範囲内で変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥重量基準で少なくとも約60wt%(N×6.25)の大豆タンパク質含量を有する大豆タンパク質製品の調製方法であって、
(a)大豆タンパク質源を低pHの水で抽出して、タンパク質源からの大豆タンパク質の可溶化を引き起こし、大豆タンパク質水溶液を形成するステップと、
(b)残留する大豆タンパク質源から大豆タンパク質水溶液を分離するステップと、
(c)選択的膜技法を使用して大豆タンパク質水溶液を濃縮するステップと、
(d)場合により濃縮大豆タンパク質溶液を透析濾過するステップと、
(e)場合により濃縮大豆タンパク質溶液を乾燥するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記水が約1.5〜約3.6のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
pHが約2.6〜約3.6である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出ステップが約15℃〜約35℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記大豆タンパク質水溶液が約5〜約50g/Lのタンパク質濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記大豆タンパク質水溶液が約10〜約50g/Lのタンパク質濃度を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記水が酸化防止剤を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記大豆タンパク質水溶液を吸着剤で処理して、大豆タンパク質水溶液から色および/または臭気化合物を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記大豆タンパク質水溶液に熱処理を施して、熱不安定性の抗栄養因子を不活性化する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
抗栄養因子が熱不安定性トリプシン阻害剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
熱処理ステップにより、酸性化した透明なタンパク質水溶液の低温殺菌も行う、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記熱処理ステップが約70°〜約120℃の温度で約10秒間〜約60分間、実施される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記熱処理ステップが約85°〜約95℃の温度で約30秒間〜約5分間、実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
熱処理した大豆タンパク質溶液がさらなる処理のために約2°〜約60℃の温度まで冷却される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
熱処理した大豆タンパク質溶液がさらなる処理のために約20°〜約35℃の温度まで冷却される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
大豆タンパク質水溶液が約50〜約400g/Lのタンパク質濃度まで濃縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
タンパク質水溶液が約100〜約250g/Lのタンパク質濃度まで濃縮される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
大豆タンパク質水溶液が約3000〜約1000000ダルトンの分画分子量を有する膜を使用して濃縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
大豆タンパク質水溶液が約5000〜約100000ダルトンの分画分子量を有する膜を使用して濃縮される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
任意選択の透析濾過ステップが大豆タンパク質溶液に対して水または酸性化した水を使用して、その完全な濃縮の前または後に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
任意選択の透析濾過ステップが約2〜約40倍量の透析濾過溶液を使用して実施される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
任意選択の透析濾過ステップが約5〜約25倍量の透析濾過溶液を使用して実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記透析濾過ステップが約3000〜約1000000ダルトンの分画分子量を有する膜を使用して実施される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記透析濾過ステップが約5000〜約100000ダルトンの分画分子量を有する膜を使用して実施される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
酸化防止剤が透析濾過ステップの少なくとも一部の間に存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
さらなるかなりの汚染物質または可視色が透過液中に存在しなくなるまで前記任意選択の透析濾過ステップが実施される、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
乾燥すると、少なくとも約60wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する大豆タンパク質製品を生成するように保持液を十分に精製するまで、前記任意選択の透析濾過が実施される、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
乾燥すると、少なくとも約90wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する大豆タンパク質単離物を生成するように保持液を十分に精製するまで、前記任意選択の透析濾過が実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
乾燥すると、少なくとも約100wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する大豆タンパク質単離物を生成するように保持液を十分に精製するまで、前記任意選択の透析濾過が実施される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記濃縮ステップおよび任意選択の透析濾過ステップが約2°〜約60℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記温度が約20°〜約35℃である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
濃縮および/または任意選択の透析濾過ステップがトリプシン阻害剤の除去に好都合な様式で操作される、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
濃縮し、場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液を前記乾燥ステップの前に吸着剤で処理して、色および/または臭気化合物を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
濃縮し、場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液が乾燥の前に低温殺菌される、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記低温殺菌ステップが約55°〜約70℃の温度で約30秒間〜約60分間、実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記低温殺菌ステップが約60°〜約65℃の温度で約10〜約15分間実施される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記低温殺菌し、濃縮し、場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液が乾燥またはさらなる処理のために約15℃〜約35℃の温度まで冷却される、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
還元剤が前記抽出ステップの間に存在して、トリプシン阻害剤のジスルフィド結合を破壊または再配置して、トリプシン阻害活性の低減を実現する、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
還元剤が濃縮および/または任意選択の透析濾過ステップの間に存在して、トリプシン阻害剤のジスルフィド結合を破壊または再配置して、トリプシン阻害活性の低減を実現する、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
還元剤を、濃縮し、乾燥前の場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液および/または乾燥した大豆タンパク質製品に添加して、トリプシン阻害剤のジスルフィド結合を破壊または再配置して、トリプシン阻害活性の低減を実現する、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
濃縮し、場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液を乾燥して、約60〜約90wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する大豆タンパク質製品を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
濃縮し、場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液を乾燥して、少なくとも約90wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する大豆タンパク質単離物を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
濃縮し、場合により透析濾過した大豆タンパク質溶液を乾燥して、少なくとも約100wt%(N×6.25)d.b.のタンパク質含量を有する大豆タンパク質単離物を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
請求項1に記載の方法により製造される大豆タンパク質製品。
【請求項45】
請求項44に記載の大豆タンパク質製品がその中に溶解した酸性溶液。
【請求項46】
飲料である請求項45に記載の水溶液。
【請求項47】
ブレンドの水溶液の製造のために水溶性の粉末状物質とブレンドされる請求項44に記載の大豆タンパク質製品。
【請求項48】
粉末状飲料である請求項47に記載のブレンド。
【請求項49】
請求項44に記載の大豆タンパク質製品がその中に溶解した中性溶液。

【公表番号】特表2012−517228(P2012−517228A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549409(P2011−549409)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000191
【国際公開番号】WO2010/091511
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(503403869)バーコン ニュートラサイエンス (エムビー) コーポレイション (25)
【氏名又は名称原語表記】BURCON NUTRASCIENCE (MB) CORP.
【Fターム(参考)】