説明

水栓装置及びその製造方法

【課題】 高級感を損なうことなく、押し釦によって覆われた部分を有効に活用することができる水栓装置を提供する。
【解決手段】 押し釦により吐水、止水を切り替える水栓装置(1)であって、開閉バルブユニット(16)を収納する水栓装置本体(2)と、この水栓装置本体に固定される押し釦支持部材(20)と、この押し釦支持部材に対して回動可能に取り付けられ、使用者の操作により開閉バルブユニットを押圧するための押し釦(4、6)と、この押し釦と係合するように所定の位置に取り付けられ、押し釦の回動可能範囲を規制する角度規制部材(24)とを有し、上記押し釦を閉じた状態においても、上記押し釦支持部材の一部が可視状態となる開口部(4e)が設けられ、上記押し釦支持部材は上記開口部から可視状態となる部分に取り付けられる固定用部材(20d)により上記水栓装置本体に固定され、上記開口部を塞ぐための塞ぎ部材(25)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓装置に関し、特に、押し釦の押圧操作により吐水状態と止水状態を切り替える水栓装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005−179915号公報(特許文献1)には、水栓装置が記載されている。この水栓装置は、シャワー用、スパウト用の押し釦を適宜押圧操作することにより、シャワーヘッド又はスパウトから吐水させることができるように構成されている。また、この水栓装置では、各押し釦が、押し釦を支持するための押し釦支持部材に回動可能に取り付けられており、この押し釦支持部材を水栓装置本体にビス止めすることにより、押し釦が水栓装置本体に取り付けられている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−179915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2005−179915号公報記載の水栓装置のように、押し釦を支持する押し釦支持部材を水栓装置本体にビス止めすると、その固定用のビスの頭が水栓装置の外に露出し、水栓装置の外観が悪くなるという問題がある。また、操作性を改善するために、押し釦を大きく構成した場合には、押し釦支持部材が外部に露出する面積が少なくなり、押し釦支持部材を外部から固定すること自体が難しくなるという問題がある。
【0005】
一方、水栓装置の押し釦を大きく構成した場合には、押し釦によって覆われる面積が必然的に大きくなる。従って、押し釦を開いて、押し釦によって覆われた部分を露出させることができるように水栓装置を構成することにより、この露出された部分を水栓装置のメンテナンスや、押し釦の取付機構に有効に活用することが可能になる。しかしながら、使用時において押し釦が偶発的に開いて、水栓装置の内部が露出してしまうと、水栓装置の高級感が著しく損なわれるという問題がある。
従って、本発明は、高級感を損なうことなく、押し釦によって覆われた部分を有効に活用することができる水栓装置及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、押し釦の押圧操作により吐水状態と止水状態を切り替える水栓装置であって、押圧操作により開閉される開閉バルブユニットと、この開閉バルブユニットを収納する水栓装置本体と、この水栓装置本体に固定される押し釦支持部材と、この押し釦支持部材に対して回動可能に取り付けられ、使用者の操作により開閉バルブユニットを押圧するための押し釦と、この押し釦と係合するように所定の位置に取り付けられ、押し釦の回動可能範囲を規制する角度規制部材とを有し、上記押し釦を閉じた状態においても、上記押し釦支持部材の一部が可視状態となる開口部が設けられ、上記押し釦支持部材は、上記開口部から可視状態となる部分に取り付けられる固定用部材により、上記水栓装置本体に固定され、上記開口部を塞ぐための塞ぎ部材を備えた構成とした。
【0007】
このように構成された本発明においては、水栓装置本体に開閉バルブユニットが収納されている。使用者の操作により開閉バルブユニットを押圧するための押し釦は、押し釦支持部材に対して回動可能に取り付けられ、角度規制部材は、押し釦と係合するように所定の位置に取り付けられ、押し釦の回動可能範囲を規制する。この状態においても押し釦支持部材の固定部は、開口部より可視状態となっており、この開口部から工具を差し込んで水栓装置本体に固定される。
【0008】
このように構成された本発明によれば、押し釦支持部材に回動可能に取り付けられた押し釦の回動範囲を角度規制部材によって規制するので、押し釦によって覆われる部分の有効活用を可能にしながら、押し釦が大きく引き上げられることにより、水栓装置の内部が露出されるのを防止することができる。また、開口部を、塞ぎ部材によって隠蔽するため、水栓装置の内部が露出されるのを防止することができる。これにより、水栓装置の外観を向上させることができる。
また、開口部から水栓装置内部に異物が入ることを防ぐことができるため、異物により押し釦の操作に支障がでることがない。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記開口部は上記押し釦に形成された孔であり、上記塞ぎ部材は上記押し釦の表面の一部又は全体を覆うことによって上記開口部を塞いでいる。
このように構成された本発明によれば、上記開口部が塞ぎ部材で覆われるために、水栓装置内部が可視状態となることがないため意匠性に優れる。
更に、塞ぎ部材により、押し釦の表面全体を覆う構成とすれば、その全周で押し釦と接触しているため、塞ぎ部材を押し釦に対して強固に固定できる。また、表面全体が塞ぎ部材で覆われるために、この押し釦と開口部との境目が見えず、より意匠性に優れる。
【0010】
本発明において、好ましくは、塞ぎ部材の表面には操作に関わる情報が表示されている。
このように構成された本発明によれば、使用者が使用したい機能を視覚的に認識することができるため、押し釦の誤操作を防止することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、塞ぎ部材は、紙などのシート状のものと、その裏面に塗布した粘着剤により構成されている。
このように構成された本発明によれば、金属部品や樹脂部品で構成した場合と比較し、複雑な加工工程が不要なため低コストで製作できる。また、軽量化のメリットも期待できる。
【0012】
また、本発明は、押し釦の押圧操作により吐水状態と止水状態を切り替える水栓装置の製造方法であって、水栓装置本体を準備する段階と、この水栓装置本体に開閉バルブユニットを収納し、固定する段階と、使用者の操作により上記開閉バルブユニットを押圧するための押し釦が角度規制部材によって回動範囲を規制された状態で取り付けられた押し釦支持部材であって、しかも、上記押し釦はこの押し釦支持部材の上記水栓装置本体への固定部が露出する形状である押し釦支持部材を準備する段階と、この押し釦支持部材の取付部が露出された状態で上記水栓装置本体に固定する段階と、上記押し釦支持部材における上記押し釦によって覆われていない位置に、上記押し釦と一体に回動可能に塞ぎ蓋を取り付け、上記押し釦支持部材の固定部を隠蔽する段階と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
従って、本発明の水栓装置及びその製造方法によれば、高級感を損なうことなく、押し釦によって覆われた部分を有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
まず、図1乃至図12を参照して、本発明の実施形態による水栓装置を説明する。図1は、本実施形態による水栓装置全体を示す斜視図である。また、図2は、本実施形態の水栓装置の止水状態における断面図であり、図3は吐水状態における断面図である。図4は、押し釦部を組立てる前の状態を示す分解斜視図である。。図5は、ロック部材と押し釦の係合部の構成を示す斜視図である。図6はロック部材を押し釦支持部材にスナップ止めする際の状態を示す斜視図である。図7は、押し釦支持部材を、水栓装置本体に取り付ける前の状態を示す斜視図である。図8は、押し釦支持部材を、水栓装置本体に取り付けた状態を示す斜視図である。図9は、押し釦に、塞ぎ部材を取り付ける際の状態を示す斜視図である。図10は塞ぎ部材の裏面形状を示す斜視図である。図11は塞ぎ部材と押し釦との嵌合状態を示す斜視図である。図12は別の構成による押し釦を示した図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施形態による水栓装置1は、壁面Wに取り付けられた水栓装置本体2と、この水栓装置本体2に取り付けられたシャワー吐水用押し釦4及びスパウト吐水用押し釦6と、各押し釦に取り付けられた塞ぎ部材25、26と、水栓装置本体2の両側面に設けられた温度設定用つまみ8及び流量調整用つまみ10と、を有する。また、水栓装置本体2の、各押し釦の下方にはスパウト吐水用吐水口12が設けられ、水栓装置本体2の側面にはシャワーホースが接続されるシャワー吐水用吐水口14が設けられている。さらに、水栓装置本体2の前部中央には、誤操作防止用のロック用つまみ24aが設けられている。また、塞ぎ部材25,26の外観部には、それぞれにの押し釦に対応する吐水形態を示す、シャワー吐水表示25a及びスパウト吐水表示26aが設けられている。
【0016】
本実施形態の水栓装置1は、シャワー吐水用押し釦4が押圧操作されると、供給された湯及び水が内蔵されたサーモ水栓で適温に混合され、混合された湯水が、内蔵された流量調整弁を通ってシャワー吐水用吐水口14から吐水されるように構成されている。同様に、スパウト吐水用押し釦6が押圧操作されると、適温に混合され、流調調整された湯水が、スパウト吐水用吐水口12から吐水されるように構成されている。また、混合される湯水の温度は、温度設定用つまみ8を操作することによって設定され、吐水される湯水の流量は、流量調整用つまみ10によって設定されるように構成されている。さらに、ロック用つまみ24aを操作することにより、シャワー吐水用押し釦4及びスパウト吐水用押し釦6をロックし、偶発的な押圧操作を防止できるように構成されている。
【0017】
図2乃至図3に示すように、水栓装置本体2は、内部に通水路が形成された金属部分と、これを覆う断熱カバーにより構成されている。水栓装置本体2の金属部分には、供給された湯及び水を設定温度に混合するサーモユニット8aと、流量調整弁(図示せず)が収容されている。また、水栓装置本体2には、そのバルブ収容部2aに収容されたシャワー吐水用の開閉バルブユニット16及びスパウト吐水用の開閉バルブユニット(図示せず)と、各開閉バルブユニットを水栓装置本体2に固定するバルブ押さえ18が内蔵されている。さらに、水栓装置本体2には、シャワー吐水用押し釦4及びスパウト吐水用押し釦6が回動可能に取り付けられた押し釦支持部材20と、この押し釦支持部材20によって摺動可能に支持されたプッシャー22が内蔵されている。また、押し釦支持部材20の前端部には、角度規制部材であるロック部材24が、水平方向に摺動可能に取り付けられている。
【0018】
シャワー吐水用押し釦4は概ね正方形板状の部材であり、その上端がシャフト4aによって押し釦支持部材20の後端部に取り付けられている。これにより、シャワー吐水用押し釦4は、水栓装置本体2に対して、所定の回動軸線であるシャフト4aの軸線を中心に回動可能に配置される。
【0019】
さらに、シャワー吐水用押し釦4の裏面には、概ね三角形板状の当接部4bが形成されている。この当接部4bは、円弧状に丸くなった先端の角がシャワー吐水用押し釦4の背面側に突出するように設けられており、この当接部4bの先端がプッシャー22の当接面22aに接触するように構成されている。なお、図2、図3には図示されていないが、スパウト吐水用押し釦6も同様に構成されている。
【0020】
また、シャワー吐水用押し釦4の裏面前端部には、2つの係合部4cが設けられている(図4)。この係合部4cは、シャワー吐水用押し釦4の裏面から下方に延びる概ねL字形の突起であり、L字形の水平部分が前方に突出するように形成されている。同様に、スパウト吐水用押し釦6にも2つの係合部が設けられている。
【0021】
サーモユニット8aは、水栓装置本体2の前部に収容されており、水栓装置本体2に流入した湯及び水を混合して、温度設定用つまみ8によって設定された温度の湯水として流出させるように構成されている。サーモユニット8aから流出した湯水は、流量調整弁(図示せず)に流入し、流量調整用つまみ10によって設定された流量に調整される。流量調整弁(図示せず)によって流量調整された湯水は、シャワー吐水用又はスパウト吐水用の開閉バルブユニットに流入するように構成されている。
【0022】
開閉バルブユニット16は概ね円柱状の部品であり、水栓装置本体2のバルブ収容部2aに収容されている。開閉バルブユニット16を収容した状態で、円筒状のバルブ押さえ18をバルブ収容部2aの入口部に螺合させることにより、開閉バルブユニット16はバルブ収容部2a内に固定される。開閉バルブユニット16の先端部には、円柱状の操作部16aが設けられており、この操作部16aが押圧操作される毎に、開閉バルブユニット16は開閉される。即ち、操作部16aは開閉バルブユニット16の閉状態(止水状態)では引っ込んだ位置に、開状態(吐水状態)では突出した位置に移動される。
【0023】
押し釦支持部材20は、上方が開放した箱状の部材であり、水栓装置本体2の内部に配置され、その全体がシャワー吐水用押し釦4及びスパウト吐水用押し釦6によって覆われるように構成されている。また、押し釦支持部材20の後部上端の縁には、シャフト4aが取り付けられ、シャワー吐水用押し釦4を回動可能に支持している。同様に、スパウト吐水用押し釦6も、押し釦支持部材20によって回動可能に支持されている。さらに、押し釦支持部材20の後ろ側の側面には、プッシャー22を摺動可能に支持するガイド円筒20aが設けられている。また、ガイド円筒20aは、スパウト吐水用の開閉バルブユニット(図示せず)に対応する位置にも設けられている。
【0024】
プッシャー22は、端面が斜めに切断された円柱状の部材であり、押し釦支持部材20のガイド円筒20aの中に摺動可能に受け入れられている。また、プッシャー22の両側の側面には、線状の突起(図示せず)が形成されており、これらの突起は、ガイド円筒20aの内側に形成された線状のガイド溝20bに受け入れられている。さらに、プッシャー22先端の斜めに切断された端面は、シャワー吐水用押し釦4の背面から突出している当接部4bと当接する当接面22aを構成する。この当接面22aは、シャフト4aに近い側において、中心軸線A方向の高さが低くなるように傾斜した平面として構成されている。
【0025】
ロック部材24は、図4に示すように、水栓装置本体2の前方に突出するロック用つまみ24aと、このロック用つまみ24aがほぼ中央に設けられ、水平方向に延びる横棒部24bと、この横棒部24bの上面から鉛直上方に延びる4本の縦棒部24cと、を有する。各縦棒部24cの中間部には、シャワー吐水用押し釦4の係合部4c、及びスパウト吐水用押し釦6の係合部6cを受け入れるための係合部受け凹部24dが夫々設けられている。さらに、各縦棒部24cの先端には、水平方向に延びる角度規制突起24eが夫々設けられている。
【0026】
また、図4に示すように、横棒部24bの底面には、ロック部材24を、押し釦支持部材20に摺動可能に取り付けるための6つのスナップ止め突起24fが設けられている。各スナップ止め突起24fは、鉛直下方に突出する概ねL字形の突起である。これらのスナップ止め突起24fは、ロック部材24の横棒部24bの底面を押し釦支持部材20に押し付けることにより、弾性変形されながら押し釦支持部材20の底面に設けられた2本の長穴20c(図6)に受け入れられるように構成されている。各スナップ止め突起24fは、押し釦支持部材20の長穴20cに一旦受け入れられると、L字形の先端部が長穴20cの縁に係合し、長穴20cから容易に抜けないように構成されている。これにより、ロック部材24は押し釦支持部材20にスナップ止めされる。また、ロック部材24は、押し釦支持部材20にスナップ止めされた状態においても、長穴20cが延びる横方向には摺動可能である。即ち、ロック部材24は、第1位置である非ロック位置と第2位置であるロック位置との間で移動可能に、押し釦支持部材20に取り付けられる。
【0027】
次に、本発明の実施形態による水栓装置の組立手順を説明する。
本実施形態による水栓装置1を組み立てるには、まず、水栓装置本体2の金属部分に、サーモユニット8a、流量調整弁(図示せず)等を取り付ける。さらに、シャワー吐水用及びスパウト吐水用の開閉バルブユニットを、夫々、水栓装置本体2のバルブ収容部2aに挿入し、バルブ押さえ18によって夫々固定する。次いで、水栓装置本体2の金属部分に、断熱カバーを取り付ける。
【0028】
次に、図4に示すように、押し釦支持部材20に、シャワー吐水用押し釦4及びスパウト吐水用押し釦6を回動可能に取り付けたものを準備する。次いで、図5に示すように、ロック部材24を準備し、これを、シャワー吐水用押し釦4及びスパウト吐水用押し釦6の裏面に設けられた各係合部4c、6cの先端が、ロック部材24の各係合部受け凹部24dに受け入れられるようにセットする。この状態を維持したまま、シャワー吐水用押し釦4及びスパウト吐水用押し釦6を押し下げるように回動させることにより、ロック部材24の横棒部24bの底面が、押し釦支持部材20に押し付けられる。シャワー吐水用押し釦4及びスパウト吐水用押し釦6を適度な力で押し下げることにより、横棒部24bの底面に設けられたスナップ止め突起24fが、弾性変形されながら押し釦支持部材20に設けられた長穴20cに押し込まれ、ロック部材24が押し釦支持部材20にスナップ止めされる(図6)。これにより、ロック部材24は、ロック位置と非ロック位置の間で摺動可能に、押し釦支持部材20に取り付けられる。次いで、各押し釦が取り付けられた押し釦支持部材20を、図8に示すように、水栓装置本体2の所定の位置に落とし込む。この状態においては、シャワー吐水用押し釦4及びスパウト吐水用押し釦6には、塞ぎ部材25及び26は取り付けられておらず、押し釦の開口部4e及び6eから押し釦支持部材20の内部が可視状態となる。
【0029】
次に、押し釦支持部材20の内部を露出させた状態で、2本のねじを、押し釦支持部材20の底面に設けられた取付部である2つの固定用孔20d(図6)に通し、水栓装置本体2に設けられた2つの雌ねじ穴2bに螺合させる。これにより、シャワー吐水用押し釦4及びスパウト吐水用押し釦6は、押し釦支持部材20を介して水栓装置本体2に回動可能に固定される。
【0030】
次に、図9に示すように、塞ぎ部材25,26を準備し、これをそれぞれの表示内容に対応した押し釦に取り付ける。図10に示すように、塞ぎ部材25の裏面にはスナップ止め突起25bが設けられており、塞ぎ部材25を押し釦4の上方から押し込むことにより、図11に示すように、スナップ固定用突起25bと押し釦4の開口部4eが係合し、容易に押し釦に塞ぎ部材を取り付けることができる。また、塞ぎ部材26も同様の構造となっており(図示しない)、容易に押しボタン6に取り付けることができる。
この実施例においては、塞ぎ部材の取付け方法にスナップ止めを用いたが、これに限定されず、他の固定方法を用いてもよい。
【0031】
また、塞ぎ部材の材質は、押し釦の開口部の大きさに応じて、押し釦の操作に支障のない剛性を持つものから選択でき、金属、樹脂、ゴムなどが考えられる。
また、図12に示すように、押し釦の開口部を工具が入る最低限の大きさとすれば、塞ぎ部材自体にはあまり剛性が必要ないため、紙などのシート状の部材(例えば、ラミネートコーティングした紙、又はビニールコーティングしたポリエステル)を採用することもできる。この場合はシート状の部材の裏面に塗布された粘着材によって、押し釦に固定する。図12においては、シャワー側の押し釦4には、塞ぎ部材が取り付けられていない状態を示す。
【0032】
次に、本発明の実施形態による水栓装置の作用を説明する。
まず、ロック部材24のロック用つまみ24aを操作して、ロック部材24を非ロック位置に摺動させる。この非ロック位置においては、ロック部材24は、その各縦棒部24cと、各押し釦の各係合部4c、6cが整合しない位置に摺動されている。非ロック位置においては、各係合部4c、6cの先端は、各縦棒部24cの先端に形成された角度規制突起24eの下方に位置する。従って、シャワー吐水用押し釦4及びスパウト吐水用押し釦6は何れも押圧操作可能な状態にされている。一方、各押し釦を引き上げる方向の回動は、各係合部4c、6cの先端と角度規制突起24eが夫々係合することにより、所定範囲に規制される。このため、シャワー吐水用押し釦4又はスパウト吐水用押し釦6に、偶発的にこれを引き上げる方向の力が作用した場合にも、各押し釦の回動は所定範囲に規制され、水栓装置本体2の内部が露出されることはない。
【0033】
次に、図2に示す止水状態において、使用者がシャワー吐水用押し釦4を押圧操作すると、シャワー吐水用押し釦4は、シャフト4aを中心に、図2における反時計回りに僅かに回動される。これにより、シャワー吐水用押し釦4背面の当接部4bの先端は、プッシャー22の当接面22aを押圧する。プッシャー22は、当接面22aが押圧されると、ガイド円筒20aにガイドされながら、その中心軸線の方向にスライド移動される。本実施形態においては、押し釦上面の広い範囲が塞ぎ部材で覆われており、実質的な操作は押し釦を直接押すのではなく、押し釦に取り付けられ、押し釦と共に回動する塞ぎ部材を押すことによって行われる。
【0034】
プッシャー22が移動されると、プッシャー22の後端面に当接されている開閉バルブユニット16の操作部16aが押圧され、操作部16aは、その中心軸線の方向に一旦わずかに後退される。これにより、開閉バルブユニット16内部のロック機構(図示せず)が解除されると、内蔵されたコイルバネ(図示せず)により操作部16aがその中心軸線の方向にに突出されると共に、開閉バルブユニット16は開状態に切り換えられる。
【0035】
開閉バルブユニット16が開状態に切り換えられると、操作部16aは、開閉バルブユニット16に内蔵されたコイルバネ(図示せず)により中心軸線の方向に突出される。これにより、プッシャー22も突出する方向にスライド移動され、プッシャー22によって押されたシャワー吐水用押し釦4は、図2における時計回りに回動されて、図3に示す状態まで押し上げられる。
【0036】
開閉バルブユニット16が開状態に切り換えられると、水栓装置本体2内に流入した湯及び水は、サーモユニット8a、流量調整弁(図示せず)を通って、開閉バルブユニット16の後部側面から開閉バルブユニット16内に流入し、後端面から流出する。開閉バルブユニット16の後端面から流出した湯水は、水栓装置本体2側面に設けられたシャワー吐水用吐水口14から流出され、シャワーヘッド(図示せず)から吐出される。
【0037】
吐水状態において、使用者がシャワー吐水用押し釦4を再度押圧操作すると、シャワー吐水用押し釦4の背面の当接部4bが、プッシャー22を介して開閉バルブユニット16の操作部16aを後退させる。これにより、操作部16aは、図2に示す位置に後退され、開閉バルブユニット16は、閉状態(止水状態)に切り換えられる。ここではシャワー吐水用押し釦4を押圧した場合の作用を説明したが、同様に、スパウト吐水用押し釦6を操作した場合もスパウト吐水用の開閉バルブユニット(図示せず)が開閉され、スパウト吐水用吐水口12からの吐水、止水が切り換えられる。
【0038】
次に、図2に示す止水状態において、ロック部材24をロック位置に摺動させる。このロック位置においては、ロック部材24は、その各縦棒部24cと、各押し釦の各係合部4c、6cが整合する。これにより、各押し釦に設けられた各係合部4c、6cの先端が、ロック部材24の各係合部受け凹部24dに受け入れられ、シャワー吐水用押し釦4及びスパウト吐水用押し釦6は、押し込む方向及び引き上げる方向の回動が規制される。このため、各押し釦の押圧操作は阻止され、又、偶発的な力により各押し釦が引き上げられることも防止される。
【0039】
なお、図3に示す吐水状態においては、各押し釦に設けられた各係合部4c、6cの先端と、ロック部材24の各係合部受け凹部24dが整合しないため、吐水状態においてロック部材24をロック位置に摺動させることはできない。このため、吐水状態において、偶発的にロック部材24がロック位置に摺動され、止水するための押圧操作ができなくなることはない。
【0040】
本発明の実施形態の水栓装置によれば、押し釦支持部材に回動可能に取り付けられた押し釦の回動範囲をロック部材によって規制するので、押し釦によって覆われる部分の有効活用を可能にしながら、押し釦が大きく引き上げられることにより、水栓装置の内部が露出されるのを防止することができる。
【0041】
また、本実施形態の水栓装置によれば、押し釦に設けた開口部4e及び6eを利用して押し釦支持部材を水栓本体に固定するので、押し釦によって覆われてしまう部分を活用して、押し釦支持部材を水栓装置本体に固定することができる。また、押し釦の開口部4e及び6eを塞ぎ部材25及び26で隠蔽することで、水栓装置の外観を向上させることができる。さらに、塞ぎ部材25及び26にそれぞれの押し釦に対応した吐水形態を表示することにより、使用者が容易に使用したい吐水形態を認識することができ、押し釦の誤操作を防止することができる。
【0042】
さらに、本実施形態の水栓装置によれば、ロック部材を、押し釦の係合部と係合された状態で押し釦の回動方向に押し込むことにより、容易に、押し釦支持部材にスナップ止めすることができる。
また、本実施形態の水栓装置によれば、ロック部材を使用して、水栓装置の内部が露出されるのを防止すると共に、押し釦の誤操作を防止することができる。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、角度規制部材が、押し釦の誤操作を防止するロック部材を兼ねていたが、角度規制部材にロック機能を持たせなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態による水栓装置全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態による水栓装置の止水状態における断面図である。
【図3】本発明の実施形態による水栓装置の吐水状態における断面図である。
【図4】押し釦部を組立てる前の状態を示す分解斜視図である。
【図5】ロック部材と押し釦の係合部の構成を示す図である。
【図6】ロック部材を押し釦支持部材にスナップ止めする際の状態を示す図である。
【図7】押し釦支持部材を、水栓装置本体に取り付ける前の状態を示す図である。
【図8】押し釦支持部材を、水栓装置本体に取り付けた状態を示す図である。
【図9】押し釦に、塞ぎ部材を取り付ける際の状態を示す図である。
【図10】本発明の実施形態による塞ぎ部材の裏面形状を示す図である。
【図11】本発明の実施形態による塞ぎ部材と押し釦との嵌合状態を示す図である。
【図12】本発明の実施形態による押し釦の、別の構成を示した図である。
【符号の説明】
【0045】
1 本発明の第1実施形態による水栓装置
2 水栓装置本体
2a バルブ収容部
2b 雌ねじ穴
4 シャワー吐水用押し釦
4a シャフト
4b 当接部
4c 係合部
4e 開口部
6 スパウト吐水用押し釦
6c 係合部
6e 開口部
8 温度設定用つまみ
8a サーモユニット
10 流量調整用つまみ
12 スパウト吐水用吐水口
14 シャワー吐水用吐水口
16 開閉バルブユニット
16a 操作部
18 バルブ押さえ
20 押し釦支持部材
20a ガイド円筒
20b ガイド溝
20c 長穴
20d 固定用孔(取付部)
22 プッシャー
22a 当接面
24 ロック部材(角度規制部材)
24a ロック用つまみ
24b 横棒部
24c 縦棒部
24d 係合部受け凹部
24e 角度規制突起
24f スナップ止め突起
25 塞ぎ部材
25a シャワー吐水表示
25b スナップ止め突起
26 塞ぎ部材
26a スパウト吐水表示
26b スナップ止め突起
27 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押し釦の押圧操作により吐水状態と止水状態を切り替える水栓装置であって、
押圧操作により開閉される開閉バルブユニットと、
この開閉バルブユニットを収納する水栓装置本体と、
この水栓装置本体に固定される押し釦支持部材と、
この押し釦支持部材に対して回動可能に取り付けられ、使用者の操作により上記開閉バルブユニットを押圧するための押し釦と、
この押し釦と係合するように所定の位置に取り付けられ、上記押し釦の回動可能範囲を規制する角度規制部材とを有し、
上記押し釦を閉じた状態においても、上記押し釦支持部材の一部が可視状態となる開口部が設けられ、
上記押し釦支持部材は、上記開口部から可視状態となる部分に取り付けられる固定用部材により、上記水栓装置本体に固定され、
上記開口部を塞ぐための塞ぎ部材を備えたことを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
上記開口部は上記押し釦に形成された孔であり、上記塞ぎ部材は上記押し釦の表面の一部又は表面全体を覆うことによって上記開口部を塞いでいることを特徴とする請求項1記載の水栓装置。
【請求項3】
上記塞ぎ部材の表面には操作に関わる情報が表示されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の水栓装置。
【請求項4】
上記塞ぎ部材を、紙などのシート状のものと、その裏面に塗布した粘着剤により構成したことを特徴とする、請求項1〜請求項3何れか一項に記載の水栓装置。
【請求項5】
押し釦の押圧操作により吐水状態と止水状態を切り替える水栓装置の製造方法であって、
水栓装置本体を準備する段階と、
この水栓装置本体に開閉バルブユニットを収納し、固定する段階と、
使用者の操作により上記開閉バルブユニットを押圧するための押し釦が角度規制部材によって回動範囲を規制された状態で取り付けられた押し釦支持部材であって、しかも、上記押し釦はこの押し釦支持部材の上記水栓装置本体への固定部が露出する形状である押し釦支持部材を準備する段階と、
この押し釦支持部材の取付部が露出された状態で上記水栓装置本体に固定する段階と、
上記押し釦支持部材における上記押し釦によって覆われていない位置に、上記押し釦と一体に回動可能に塞ぎ蓋を取り付け、上記押し釦支持部材の固定部を隠蔽する段階と、
を有することを特徴とする水栓装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−79432(P2009−79432A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250418(P2007−250418)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】