説明

水栓装置

【課題】流量操作部の操作速度に応じて流調弁の駆動速度を設定する一方、止水操作時におけるウォータハンマーの発生を防止することができる水栓装置を提供する。
【解決手段】流調弁33aと、操作ハンドル20aの移動により吐水開始,吐水流量増加,吐水流量減少,止水を指示する流量操作部20と、操作ハンドル20aの移動位置に応じて目標吐水流量を演算すると共に、移動速度に応じて流調弁33aの駆動速度を演算し、流調弁33aを駆動するコントローラ35を備えた水栓装置1において、コントローラ35は、吐水流量減少方向に駆動するとき、演算した駆動速度Vが上限駆動速度V2(V3,V4)より大きい場合には、駆動速度Vを上限駆動速度V2(V3,V4)に制限し、上限駆動速度V3,V4は、通常流量領域内にあるときよりも、低流量領域内にあるときの方が、小さな値に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水栓装置に関し、特に流量操作部の操作に応じて、流量調整弁を電気的に制御する水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水栓装置では、使用者が吐水流量を調整するための流量操作部が、流量調整弁(流調弁)に機械的に連結された構成となっている。このような構成の水栓装置では、使用者は、流量操作部を操作することにより、直接的に流調弁を駆動することができ、流調弁の開度に応じて吐水流量を調整することが可能である。
【0003】
一方、水栓装置において、流量調整部の操作に応じて、流調弁を電気駆動により駆動する所謂電子水栓装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような電子水栓装置では、流量操作部の操作位置に応じて、制御部が流調弁の駆動位置(すなわち開度)を制御するようになっている。このため、この電子水栓装置では、流量操作部を操作すれば、これに追従するように流調弁が駆動される。
【0004】
したがって、このような電子水栓装置では、流量操作部の操作速度と流調弁の駆動速度とが略比例するように制御される。これにより、電子水栓装置では、例えば、流量操作部を高速で移動操作させれば流調弁の駆動速度も速くなり、上述のような流量操作部と流調弁とが機械的に連結されているアナログ水栓と同様に、使用者の操作フィーリングを良好にすることが可能である。
【0005】
【特許文献1】特開平2001−208229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電子水栓装置において、使用者が吐水状態で流量操作部を止水位置まですばやく操作すると、流調弁の駆動速度もこれに連動して速いものとなり、流調弁が閉状態となるとき流路が急激に閉じることにより、ウォータハンマー現象が発生するという問題があった。
【0007】
このようなウォータハンマー現象の発生を防止するため、流調弁の駆動速度を常時低速に制限することが考えられる。しかしながら、このように流調弁の駆動速度を常時低速に制限すると、減流量操作時には、流量操作部の操作速度と、吐水口からの流量変化速度(又は流調弁駆動速度)との間に時間遅れが生じ、操作フィーリングが悪くなってしまう。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、所謂電子水栓装置において、流量操作部の操作速度に応じて流調弁の駆動速度を設定する一方、止水操作時におけるウォータハンマーの発生を防止することができる水栓装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、吐水口から吐水する吐水流量を調整するための流量調整弁と、止水状態で操作体を一方向へ移動させることにより吐水開始と吐水流量増加を指示し、吐水状態で前記操作体を他方向へ移動させることにより吐水流量減少と止水を指示する操作部と、操作体の移動位置に応じて目標吐水流量を演算すると共に、操作体の移動速度に応じて流量調整弁の駆動速度を演算し、目標吐水流量で吐水させる開度まで流量調整弁を駆動速度で駆動する制御部と、を備えた水栓装置において、制御部は、流量調整弁を吐水流量減少方向に駆動するとき、演算した流量調整弁の駆動速度が所定の上限駆動速度より大きい場合には、流量調整弁の駆動速度を上限駆動速度に制限し、上限駆動速度は、目標吐水流量が所定の設定流量より大きな通常流量領域内にあるときよりも、目標吐水流量が設定流量以下の低流量領域内にあるときの方が、小さな値に設定されていることを特徴としている。
【0010】
このように構成された本発明においては、使用者が操作部の操作体を吐水状態から減流量方向に操作した場合には、制御部は、目標吐水流量が低流量領域での流量調整弁の閉方向への駆動速度を、通常流量領域での上限駆動速度よりも小さな上限駆動速度の範囲内で設定する。これにより、操作体が止水位置まですばやく操作された場合であっても、流量調整弁は、低流量領域において駆動速度が小さな上限駆動速度に制限されるので、閉弁時におけるウォータハンマー現象を防止することができる。一方、流量調整弁の開方向への移動時や、目標吐水流量が通常流量領域である場合には、操作体がすばやく操作されると移動速度が大きな上限駆動速度で流量調整弁を駆動することができ、応答性が良い。
【0011】
また、本発明において好ましくは、制御部は、目標吐水流量が通常流量領域内にあるときの流量調整弁の駆動速度を所定の下限駆動速度以上に設定し、目標吐水流量が低流量領域内にあるときの上限駆動速度は、下限駆動速度よりも大きな値に設定されている。
【0012】
このように構成された本発明においては、低流量領域で流量調整弁の閉方向への駆動速度は、通常流量領域での駆動速度の下限駆動速度より大きく、通常流量領域での駆動速度の上限駆動速度よりも小さな値に設定される。これにより、本発明では、流量調整弁の駆動速度の最低値をできるだけ大きな値としながら、ウォータハンマー現象を防止可能であり、良好な止水性能を確保することができる。
【0013】
また、本発明において好ましくは、制御部は、流量調整弁を吐水流量減少方向に駆動するとき、目標吐水流量が低流量領域内にあり、演算した流量調整弁の駆動速度が上限駆動速度以下である場合には、演算した駆動速度で流量調整弁を駆動する。
このように構成された本発明においては、使用者が操作体を低速で止水方向に操作したときには、通常流量領域から低流量領域への切り替えをスムーズとすることができる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、制御部は、目標吐水流量が通常流量領域内にあるときの流量調整弁の駆動速度を所定の下限駆動速度以上に設定し、制御部は、流量調整弁を吐水流量減少方向に駆動するとき、演算した目標吐水流量が低流量領域内にある場合は、流量調整弁の駆動速度を下限駆動速度と等しい値に設定する。
【0015】
このように構成された本発明においては、使用者が操作体を止水方向に操作したときには、低流量領域内で流量調整弁の閉方向への駆動速度が、通常流量領域での流量調整弁の駆動速度の下限駆動速度に設定されるので、ウォータハンマー現象の発生をより抑制することができる。
【0016】
また、本発明において好ましくは、流量調整弁が開状態であるときに第1表示態様を表示する表示部を更に備え、表示部は、少なくとも操作部の操作体が止水を指示する位置にあり且つ流量調整弁が開状態であるときに、第1表示態様とは異なる第2表示態様を表示する。
【0017】
このように構成された本発明においては、使用者が操作部を止水位置まですばやく操作したときには、流量調整弁が上限駆動速度で制限を受けて操作部の操作よりもある遅れ時間後に閉状態となるが、少なくともこの遅れ時間中に表示部が第2表示態様を表示することで、この遅れを使用者に報知し、使用者が誤って操作部をさらに操作してしまうことを防止することができる。
【0018】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、吐水口から吐水する吐水流量を調整するための流量調整弁と、止水状態で操作体を一方向へ移動させることにより吐水開始と吐水流量増加を指示し、吐水状態で操作体を他方向へ移動させることにより吐水流量減少と止水を指示する操作部と、操作体の移動位置に応じて目標吐水流量を演算すると共に、操作体の移動速度が大きくなるのに応じて流量調整弁の駆動速度が大きくなるよう演算し、目標吐水流量で吐水させる開度まで流量調整弁を駆動速度で駆動する制御部と、を備えた水栓装置において、制御部は、流量調整弁を吐水流量減少方向に駆動するときであって、目標吐水流量が所定の設定流量以下の低流量領域内にあるときには、演算した流量調整弁の駆動速度が所定の上限駆動速度より大きいと、流量調整弁の駆動速度を上限駆動速度に制限することを特徴としている。
【0019】
このように構成された本発明においては、使用者が操作部の操作体を吐水状態から減流量方向に操作した場合には、制御部は、目標吐水流量が低流量領域での流量調整弁の閉方向への駆動速度に限っては、設定された上限駆動速度の範囲内で設定する。これにより、操作体が止水位置まですばやく操作された場合であっても、流量調整弁は、低流量領域において駆動速度が小さな上限駆動速度に制限されるので、閉弁時におけるウォータハンマー現象を防止することができる。一方、流量調整弁の開方向への移動時や、目標吐水流量が通常流量領域である場合には、操作体がすばやく操作されるとそれに応じた大きな駆動速度で流量調整弁を駆動することができ、応答性が良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水栓装置によれば、流量操作部の操作速度に応じて流調弁の駆動速度を設定する一方、止水操作時におけるウォータハンマーの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1乃至図8を参照して、本発明の実施形態による水栓装置を説明する。図1は水栓装置全体を示す斜視図、図2は水栓装置の構成を示すブロック図、図3は操作ハンドルの操作量と流調弁の目標開度値の関係を表すグラフ、図4は通常流量領域での操作ハンドルの操作速度と流調弁の駆動速度の関係を表すグラフ、図5は低流量領域での操作ハンドルの操作速度と流調弁の駆動速度の関係を表すグラフ、図6は改変例に係る低流量領域での減流量時における操作ハンドルの操作速度と流調弁の駆動速度の関係を表すグラフ、図7は流調弁の駆動速度を決定する処理フロー、図8は操作ハンドルの操作量と目標吐水量の時間変化を表すグラフである。
【0022】
図1に示すように、本発明の一実施形態による水栓装置1は、ボウル(又はシンク)3に取り付けられたスパウト部である水栓本体10と、ボウル3が配置されたカウンタ2に取り付けられた流量操作部20及び温度操作部22と、カウンタ2の下側に配置された水栓機能部30と、を有する。
【0023】
本実施形態による水栓装置1は、流量操作部20,温度操作部22を操作することにより、水栓機能部30に電気信号が送られ、各機能を実行することができる。具体的には、水栓装置1は、流量操作部20,温度操作部22を回転操作することにより、それぞれ吐水流量,吐水温度の調整を行うことができるように構成されている。すなわち、本実施形態の水栓装置1は、流量操作部20,22により、吐水及び止水を含めた流量調整機能、温度調整機能を果たすことができる。
【0024】
図2に示すように、吐水部である水栓本体10は、水栓機能部30から給水管4dを介して湯水が供給され、吐水口10aから吐水することができる。
【0025】
図1に示すように、流量操作部20及び温度操作部22は、カウンタ2に取り付けられている。
本実施形態では、流量操作部20及び温度操作部22は、同じ形状を有しており、それぞれ操作体である円盤状の操作ハンドル20a,22aと、各操作ハンドルに上端が固定され下方に延びる軸部と、各軸部の下端に接続された回転検出部とを備えている。
【0026】
操作ハンドル20a,22aは、その下面とカウンタ2の上面との間に所定の間隔が設けられた状態で、軸部を介して回転検出部に取り付けられている。
また、流量操作部20及び温度操作部22の操作ハンドル20a,22aの下面には、それぞれ発光手段である表示部21,23が配置されている。表示部21,23は、軸部まわりに複数配置されたLEDと、その制御基板から構成されている。
【0027】
本実施形態の流量操作部20及び温度操作部22では、操作ハンドル20a,22aが止水状態において時計方向及び反時計方向のいずれの方向にも回転自在となっている。したがって、本実施形態では、使用者が操作ハンドル20a,22aを任意の方向に回転させることで、回転検出部が回転量(回転角度)及び回転方向を検出して、この回転量及び回転方向を操作量及び操作方向としてコントローラ35に送出する。具体的には、回転検出部は、操作ハンドルが所定の微小角度回動する毎にパルス信号と共に回転方向を表す信号をコントローラ35に出力する。コントローラ35は、この信号を受け取って、吐水口10aからの吐水流量及び吐水温度を制御する。
【0028】
なお、本実施形態では、回転量を表す信号として所定回転角度毎に出力されるパルス信号を用いているが、これに限らず、回転量に比例した大きさの電気信号を用いてもよい。
【0029】
本実施形態では、温度操作部22は、操作ハンドル22aを時計方向に回動すると吐水温度が上がり、反時計方向に回動すると吐水温度が下がるように構成されている。
一方、流量操作部20は、操作ハンドル20aの増流量方向及び減流量方向が、時計方向及び反時計方向に固定されていない。すなわち、本実施形態では、使用者が、止水状態で操作ハンドル20aをいずれの方向に回動させても、吐水が開始し、その回動方向が増流量方向に設定され、他の回動方向が減流量方向に設定される。
【0030】
また、この流量操作部20,温度操作部22の表示部21,23は、それぞれ制御基板がコントローラ35から吐水流量を表す信号,吐水温度を表す信号を受け取り、これに応じて制御基板がLEDに駆動信号を供給し、LEDが吐水流量,吐水温度に応じた光量の光を照射するように構成されている。これにより、操作ハンドル20a,22aのまわりに吐水流量,吐水温度に応じた径の円形の光照射範囲21a,23aが形成される(第1表示態様)。このような構成により、使用者は、表示部21,23の光照射範囲21a,23aの大きさによって、現在の吐水流量及び吐水温度を認知することができる。
なお、本実施形態では、表示部21が受け取る吐水流量を表す信号は、後述する流量調整手段33の流量調整弁33aの開度を表す信号である。
【0031】
また、本実施形態では、表示部21は、コントローラ35から、止水位置からの操作量(回転量)を表す信号を受け取る。
そして、本実施形態の表示部21では、操作量がゼロ(すなわち止水位置)であるにもかかわらず、流量調整弁33aが開状態である場合には、制御基板がLEDに断続的に駆動信号を供給して、LEDを点滅させるように構成されている。これにより、操作ハンドル20aのまわりに形成される光照射範囲21aが点滅する(第2表示態様)。
【0032】
すなわち、使用者が流量操作部20を止水位置まで戻したにもかかわらず、流調弁33aが開状態となっており、吐水口10aから吐水が継続されているときには、表示部21は、流量操作部20が止水位置にあることを報知するために、光照射範囲21aを点滅表示する。使用者は、この点滅表示により、再度、流量操作部20を操作することを回避することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、流量操作部20及び温度操作部22は、照射円の大きさで吐水流量及び吐水温度を表しているが、これに限らず、照射角度範囲または照射角度位置で流量及び温度を表すように構成してもよい。
また、本実施形態では、流量操作部20が止水位置にあり、流調弁33aが開状態であるときに、表示部21が第2表示態様で報知するように構成されているが、これに限らず、後述する図3の関係が維持されていない場合(すなわち、流調弁33aが流量操作部20の操作位置に対応した位置にない場合)に、表示部21が第2表示態様で報知するように構成してもよい。また、第2表示態様による報知を表示部21とは異なる表示部により報知させるように構成してもよい。
【0034】
図2に示すように、水栓機能部30は、給湯管4a及び給水管4bに接続され温度調整した混合水を混合水管4cに出力する吐水温度調整手段31と、混合水管4cの下流側に接続され流量調整した湯水を給水管4dに出力する流量調整手段33と、吐水温度調整手段31及び流量調整手段33を制御する制御部としてのコントローラ35と、を備えている。
【0035】
吐水温度調整手段31は、図示しない温調弁(温度調整弁)及びこれを駆動するモータ等から構成されている。吐水温度調整手段31では、コントローラ35からの駆動信号により、モータが温調弁を駆動するように構成されている。そして、モータ駆動された温調弁は、その弁開度をコントローラ35にフィードバックする。吐水温度調整手段31は、温調弁の弁開度に応じて、給湯管4aから流入する湯及び給水管4bから流入する水を混合して、混合水管4cに出力する。本実施形態においては、温調弁として、主弁体を形状記憶合金バネ及びバイアスバネの付勢力により駆動して温度を調整するタイプのサーモバルブが使用されている。
【0036】
流量調整手段33は、流調弁(流量調整弁)33a及びこれを駆動するモータ33b等から構成されている。流量調整手段33では、コントローラ35からの駆動信号により、この駆動信号の大きさに応じた駆動速度でモータが流調弁33aを駆動するように構成されている。そして、モータ駆動された流調弁は、その弁開度をコントローラ35にフィードバックする。流量調整手段33は、流調弁33aの弁開度に応じて、混合水管4cから給水管4dへ出力する流量を調整する。
【0037】
コントローラ35は、流量操作部20,温度操作部22等からの信号を入力するための入力インターフェイスと、制御プログラムや設定値等を記憶するメモリからなる記憶部35aと、プログラムを実行するマイクロプロセッサと、モータ等を駆動するための出力インターフェイス等から構成される。
【0038】
本実施形態では、コントローラ35は、流量操作部20及び温度操作部22から、それぞれ吐水流量及び吐水温度に関連した電気信号を受け取り、この信号に基づいて、流量調整手段33及び吐水温度調整手段31に駆動信号(駆動電圧)を送って、これらをフィードバック制御するように構成されている。
【0039】
具体的には、コントローラ35は、温度操作部22から、昇温方向のパルス信号を受け取ると、受け取ったパルス信号の数に応じて設定温度値を増加し、降温方向のパルス信号を受け取ると、受け取ったパルス信号の数に応じて設定温度値を減少させる。そして、コントローラ35は、所定の駆動信号を吐水温度調整手段31に出力して、駆動モータにより温調弁をこの設定温度値に対応する弁開度となるまで駆動させる。
【0040】
一方、コントローラ35は、止水状態で、流量操作部20から、電気信号を受け取ると、この電気信号のうち回転方向を表す信号で表される操作ハンドル20aの回転方向を増流量方向,他の回転方向を減流量方向に設定して、記憶部35aに記憶する。
また、コントローラ35は、止水状態から受け取ったパルス信号の数により、操作ハンドル20aの止水状態からの相対的な回転量(回転角度)を算出し、この回転量に応じて流量設定値である目標吐水流量を決定する。この目標吐水流量は、流量調整手段33の流調弁33aの弁開度に対応する。
【0041】
本実施形態では、図3に示すように、操作ハンドル20aの止水位置からの移動位置(操作量又は回転量)と、流調弁33aの駆動目標値(弁開度)とは、略比例関係にある。しかしながら、これらの関係は、必ずしも比例関係でなくてもよく、例えば、操作量が大きくなるにしたがって、弁開度の増加率が減少するような関係であってもよい。
【0042】
また、本実施形態では、図3に示すように、操作ハンドル20aが操作量Pまで操作されたときに、流調弁33aが設定流量Qとなる弁開度まで駆動されるように構成されている。そして、本実施形態では、設定流量Qより大きな領域を通常流量領域に設定し、設定流量Q以下の領域を低流量領域に設定している。
【0043】
また、コントローラ35は、流量操作部20から受け取ったパルス信号の時間間隔から、流量操作部20の移動速度(操作速度又は回転速度)を算出する。そして、コントローラ35は、算出した移動速度に応じて吐水流量の時間的な変化率(ΔQ/Δt)を決定する。この吐水流量変化率は、流調弁33aの駆動速度(弁開度変化率)に対応する。本実施形態では、コントローラ35は、設定した駆動速度で流量調整弁33aを駆動するように、駆動信号(駆動電圧)の大きさを決定するように構成されている。
【0044】
本実施形態では、図4(グラフ1)に示すように、操作ハンドル20aの操作速度vと、流調弁33aの弁駆動速度Vは、所定の操作速度範囲(0<v<v1,v2<v)を除いて、原則的に略比例関係(V=α・v:αは比例定数)にある。
【0045】
したがって、コントローラ35は、使用者による流量ハンドル20aの操作速度vが低速であれば吐水流量変化率を小さな値に設定し(又は流量調整弁33aの弁駆動速度Vを低速に設定し)、操作速度vが高速であれば吐水流量変化率を大きな値に設定する(又は弁駆動速度Vを高速に設定する)。
【0046】
そして、操作ハンドル20aの操作速度vに応じて決定される弁駆動速度V(すなわち、操作速度vと略比例関係となる弁駆動速度V)では、流調弁33aは、操作ハンドル20aの操作位置に追従した弁開度で駆動するようになっている。すなわち、図3に示した関係を維持した状態で、流調弁33aは駆動される。
【0047】
しかしながら、コントローラ35は、操作速度vに応じて演算した弁駆動速度Vを、所定の下限駆動速度V1及び上限駆動速度V2によって制限する。すなわち、操作ハンドル20aが、下限値v1よりも小さい操作速度vで操作された場合(止水位置で操作速度がゼロになる場合を含む)には、演算により得られた弁駆動速度Vが下限駆動速度V1よりも小さい低速度になるが、コントローラ35は、演算した弁駆動速度Vが下限駆動速度V1よりも小さい場合には、弁駆動速度Vを下限駆動速度V1に設定する。
したがって、弁駆動速度Vが制限される場合には、流調弁33aは、操作ハンドル20aの操作位置に追従した弁開度で駆動されず、図3に示した関係は維持されない。
【0048】
一方、流量操作部20aが、上限値v2よりも大きな操作速度vで操作されたと判断されている場合には、演算により得られた弁駆動速度Vが上限駆動速度V2よりも大きい高速度になってしまうが、これは信号トラブル等の何らかの不具合に起因している可能性がある。このため、コントローラ35は、演算した弁駆動速度Vが上限駆動速度V2よりも大きい場合には、弁駆動速度Vを上限駆動速度V2に制限する。
【0049】
このような構成により、コントローラ35は、止水状態から使用者が操作ハンドル20aを操作することに応じて、このときの操作方向を増流量方向に設定し、他方を減流量方向に設定し、流量調整手段33のモータ33bの駆動方向を決定する。そして、コントローラ35は、決定した弁開度(目標吐水流量)となるまで、決定した弁駆動速度に対応する大きさの駆動信号(駆動電圧)をモータ33bに出力してフィードバック制御を行う。
【0050】
これにより、使用者は、止水状態で操作ハンドルをいずれの方向に操作しても吐水を開始させることができ、さらに、止水状態からの回転量に応じて増流量調整することができる。また、使用者は、選択した方向と反対方向に回転させることにより減流量調整及び止水することができる。
【0051】
次に、本実施形態における、低流量制御について説明する。
本実施形態では、コントローラ35は、演算した目標吐水流量が所定の設定流量Qより大きな通常流量領域内にある場合には、操作ハンドル20aが増減流量方向のいずれの操作方向に操作されたときでも、上述の図4に示したような操作速度と弁駆動速度との関係を用いて、操作ハンドル20aの操作速度vに応じて弁駆動速度Vを決定する。
【0052】
しかしながら、演算した目標吐水流量が設定流量Q以下の低流量領域内にある場合は、コントローラ35は、増流量時,減流量時に、それぞれ図5(A)(グラフ2),図5(B)(グラフ3)に示す関係を用いて、弁駆動速度Vを決定する。
【0053】
本実施形態では、増流量時における図5(A)の関係は、図4と同一であるので説明を省略する。なお、図5(A)を図4と異なるように設定してもよい。
減流量時における図5(B)の関係は、操作速度vにかかわらず、弁駆動速度Vが通常流量領域内での上限駆動速度V2よりも小さな一定速度(上限駆動速度)V3に制限されている。本実施形態では、弁駆動速度V3は、通常流量領域内での下限駆動速度V1と等しい(V3=V1)。すなわち、本実施形態では、低流量領域で減流量方向に操作する場合には、流調弁33aは、常時、下限駆動速度V1で閉方向に駆動される。なお、弁駆動速度V3は、下限駆動速度V1より大きい値であることが望ましいが(V3>V1)、小さい値でもよい(V3<V1)。
【0054】
また、改変例では、図5(B)に示す関係の代わりに、図6(グラフ4)に示す関係を用いてもよい。
グラフ4は、上限駆動速度が速度V2からこれよりも低速な速度V4(V1<V4<V2)に変更されていることを除いて、グラフ1と同一である。すなわち、図6の例では、操作速度vが上限値v4(v1<v4<v2)以上となると、弁駆動速度Vは、上限駆動速度V4に制限される。したがって、本実施形態では、低流量領域で減流量方向に操作する場合には、流調弁33aは、操作速度vが下限値v1から上限値v4までの間であるときは、操作速度vに応じて下限駆動速度V1から上限駆動速度V4の間の速度で閉方向に駆動され、操作速度vが下限値v1よりも低速のときは、下限駆動速度V1に制限され、操作速度vが上限値v4よりも高速のときは、上限駆動速度V4に制限される。
【0055】
図7に、流調弁33aの弁駆動速度Vを決定する際の処理フローを示す。この処理は、コントローラ35によって、所定時間毎に行われる。
この処理では、コントローラ35は、まず、操作ハンドル20aが回動されていることを検知すると、操作ハンドル20aの操作量から流量設定値(目標吐水流量)を演算し、演算した流量設定値が設定流量Q以下であるか否かを判定する(ステップS1)。すなわち、この判定処理では、コントローラ35は、操作ハンドル20aの操作が、通常流量領域内の操作と低流量領域内の操作のいずれであるかを判定する。
【0056】
演算した流量設定値が設定流量Q以下でない場合(ステップS1;No)、通常流量領域での操作であるから、コントローラ35は、グラフ1の関係に基づいて弁駆動速度Vを決定し(ステップS2)、処理を終了する。
一方、演算した流量設定値が設定流量Q以下である場合(ステップS1;Yes)、低流量領域での操作であるから、コントローラ35は、操作ハンドル20aが増流量方向へ操作されているか否かを判定する(ステップS3)。
【0057】
増流量方向へ操作されている場合(ステップS3;Yes)、コントローラ35は、グラフ2の関係に基づいて弁駆動速度Vを決定し(ステップS4)、処理を終了する。
一方、増流量方向へ操作されていない場合(ステップS3;No)、コントローラ35は、グラフ3(又はグラフ4)の関係に基づいて弁駆動速度Vを決定し(ステップS5)、処理を終了する。
【0058】
次に、図8に基づいて、本実施形態における作用を説明する。
図8(C)は操作ハンドル20aの操作量(回転角度)の時間変化を示しており、図8(A),図8(B)は、それぞれ図8(C)の操作時における目標吐水流量(流調弁33aの弁開度に相当)の時間変化を示している。
【0059】
図8(C)の操作では、操作ハンドル20aを止水状態から操作して吐水状態とした後、止水位置まで戻す一連の操作を3回繰り返している。1回目の操作(時間t0から時間t6)は、操作ハンドル20aを止水位置まで低速で戻すものである。2回目(時間t7から時間t12)の操作は、操作ハンドル20aを止水位置まで中程度の速度で戻すものである。3回目の操作(時間t14から時間t19)は、操作ハンドル20aを止水位置まで高速で戻すものである。
【0060】
まず、図8(A)について説明する。図8(A)は、低流量領域での減流量時に、図5(B)に示すグラフ3の関係で弁駆動速度Vを決定する例を示している。
1回目の操作において、使用者は、時間t0から時間t1に止水状態から増流量方向に一定の操作速度vで操作ハンドル20aを操作量Pまで操作している(v1≦v≦v2)。操作量Pは、目標吐水流量が設定流量Qとなる値である。したがって、コントローラは、時間t0から時間t1までは、低流量領域に対応するグラフ2を用いて、弁駆動速度Vを決定する(V1≦V≦V2)。これにより、図8(A)に示すように、流調弁33aは、操作ハンドル20aの操作に追従して、時間t1に目標吐水流量が設定流量Qとなる弁開度まで駆動される。
【0061】
時間t1から時間t5までは、目標吐水流量が設定流量Qより大きくなるので、コントローラ35は、通常流量領域に対応するグラフ1を用いて、弁駆動速度Vを決定する。時間t1から時間t2に掛けて、使用者は、時間t0から時間t1と等速度で操作ハンドル20aを操作している。グラフ1とグラフ2とは同一であるので、時間t1に弁駆動速度は変更されることなく、流調弁33aは一定の駆動速度で開方向へ駆動される。
【0062】
また、時間t2から時間t3には、操作速度がやや低速となり、その後、時間t3から時間t4には、操作ハンドル20aは操作されずに同一位置に保持されている。
時間t4から時間t6に掛けて、操作ハンドル20aは、一定の操作速度vで減流量方向へ操作され、止水位置まで戻されている。このときの操作速度vは下限値v1と等しい(v=v1)。このため、時間t4から時間t5までは、コントローラ35は、グラフ1を用いて、弁駆動速度Vを下限駆動速度V1に決定する(V=V1)。時間t4から時間t5には、流調弁33aは、操作ハンドル20aの操作に追従して、時間t5に目標吐水流量が設定流量Qとなる弁開度まで駆動される。
【0063】
時間t5から時間t6は、目標吐水流量が設定流量Q以下となるので、コントローラ35は、グラフ3を用いて弁駆動速度Vを決定する。したがって、コントローラ35は、操作速度vにかかわらず、弁駆動速度Vを速度V3(V=V3=V1)に設定する。このときの弁駆動速度V3は、時間t4から時間t5にかけての弁駆動速度V1と等しい。時間t5から時間t6には、流調弁33aは、操作ハンドル20aの操作に追従して、時間t6に目標吐水流量がゼロとなる弁開度まで駆動される。これにより、流調弁33aは、時間t6に操作ハンドル20aが止水位置に到達するのと、略同時に時間遅れなく閉状態となる。
【0064】
2回目の操作において、使用者は、時間t7から時間t9に止水状態から増流量方向に一定の操作速度vで操作ハンドル20aを操作している(v1≦v≦v2)。時間t8に目標吐水流量が設定流量Qとなるので、コントローラ35は、時間t7から時間t8まではグラフ2を用い、時間t8から時間t9はグラフ1を用いて弁駆動速度Vを決定する。
【0065】
時間t10から時間t12に掛けて、操作ハンドル20aは、一定の操作速度vで減流量方向へ操作され、止水位置まで戻されている。この操作速度vは下限値v1から上限値v2との間の速度である(v1<v<v2)。このため、目標吐水流量が設定流量Qに達する時間t11までは、コントローラ35は、グラフ1を用いて操作速度vに応じた弁駆動速度Vを決定する(V1<V<V2)。時間t10から時間t11には、流調弁33aは、操作ハンドル20aの操作に追従して、時間t11に目標吐水流量が設定流量Qとなる弁開度まで駆動される。
【0066】
時間t11から時間t12には、コントローラ35は、グラフ3を用いて弁駆動速度Vを決定するため、弁駆動速度Vは速度V3に制限される(V=V3=V1)。したがって、時間t11から時間t12には、流調弁33aは、操作ハンドル20aの操作に追従することができず、時間t12に操作ハンドル20aが止水位置に到達しても、流調弁33aは、閉状態に到達しない。
【0067】
コントローラ35は、時間t12以降は、目標吐水流量であるゼロとなるまで(弁開度がゼロとなるまで)、操作ハンドル20aが止水位置に到達した時間t12時点で設定されている弁駆動速度V(=V3)を維持して、流調弁33aを駆動する。これにより、流調弁33aは、時間遅れをもって時間t13(t13>t12)に、閉状態となる。
【0068】
時間t12から時間13の間は、操作ハンドル20aが止水位置にあるが、流調弁33aが開状態であるので、操作ハンドル20aと流調弁33aの位置が不一致であり、表示部21は、光照射範囲21aを点滅表示する。
【0069】
3回目の操作は、減流量方向への操作ハンドル20aの操作速度がさらに高速であること以外は2回目の操作と同一である。すなわち、3回目の操作の時間t14から時間t17の操作は、2回目の操作の時間t7から時間t10の操作と同一である。
【0070】
時間t17から時間t19に掛けて、操作ハンドル20aは、一定の操作速度v(v1<v<v2)で減流量方向へ操作され、止水位置まで戻されている。
コントローラ35は、目標吐水流量が設定流量Qに達する時間t18まではグラフ1を用いて弁駆動速度Vを決定するが、弁駆動速度Vが下限駆動速度V1から上限駆動速度V2の間の速度であり(V1<V<V2)、速度制限されていないので、流調弁33aは、操作ハンドル20aの操作に追従して、時間t18に目標吐水流量が設定流量Qとなる弁開度まで駆動される。
【0071】
コントローラ35は、時間t18から時間t19まではグラフ3を用いて弁駆動速度Vを決定するため、弁駆動速度Vは速度V3に制限される(V=V3=V1)。したがって、時間t18から時間t19には、流調弁33aは、操作ハンドル20aの操作に追従することができず、時間t19に操作ハンドル20aが止水位置に到達しても、流調弁33aは、閉状態に到達しない。
【0072】
コントローラ35は、時間t19以降は、流調弁33aが閉状態となるまで、時間t18時点で設定されている弁駆動速度V(=V3)を維持して流調弁33aを駆動し、これにより、流調弁33aは時間遅れをもって時間t21(>t19)に閉状態となる。
時間t19から時間21の間は、操作ハンドル20aが止水位置にあるが、流調弁33aが開状態であるので、表示部21は、光照射範囲21aを点滅表示する。
【0073】
このように、本実施形態では、通常流量領域においては、下限駆動速度V1又は上限駆動速度V2で制限される範囲を除いて、操作ハンドル20aの操作速度及び操作位置に追従するように流調弁33aが駆動されるため、使用者の操作フィーリングを良好とすることができる。
【0074】
一方、本実施形態では、低流量領域において、操作ハンドル20aの操作速度にかかわらず、流調弁33aの閉方向への駆動速度が、通常流量領域での下限駆動速度V1と等しい速度V3に制限される。これにより、使用者が操作ハンドル20aを止水位置まで高速で戻した場合であっても、流調弁33aは、駆動速度は高速とならずに、閉状態となるまで速度V3で閉方向に駆動されるので、ウォータハンマー現象の発生を有効に防止することができる。
【0075】
また、流調弁33aの閉方向への駆動速度が速度V3に制限されると、操作ハンドル20aが止水位置まで戻っていても、しばらくの間は吐水が継続されるが、本実施形態では、表示部21が点滅表示することで、使用者に流調弁33aが遅れ時間をもって閉状態まで操作中であることを報知することができる。これにより、使用者は、操作ハンドル20aが止水位置まで戻っていることを確認することができる。したがって、操作ハンドル20aが止水位置まで戻っていないと誤って判断して、操作者が操作ハンドル20aを再度、減流量方向へ操作してしまうことを防止することができる。
【0076】
次に、図8(B)について説明する。図8(B)は、低流量領域での減流量時に、図6に示すグラフ4の関係で弁駆動速度Vを決定する例を示している。なお、図8(A)と共通する作用については、説明を省略する。
【0077】
1回目の操作において、時間t5から時間t6は、目標吐水流量が設定流量Q以下となるので、コントローラ35は、グラフ4を用いて弁駆動速度Vを決定する。時間t5から時間t6は、時間t4から時間t5と同様に、操作ハンドル20aは、一定の操作速度v(v=v1)で減流量方向へ操作され、止水位置まで戻されている。
【0078】
このため、コントローラ35は、グラフ4を用いて操作速度v1に応じて弁駆動速度Vを速度V1に設定する。なお、このときの弁駆動速度Vは、時間t4から時間t5において、グラフ1を用いて決定した弁駆動速度と同一である。したがって、時間t4から時間t6は、弁駆動速度Vは、速度V1に維持される。
【0079】
また、時間t5から時間t6における弁駆動速度Vは、下限駆動速度V1及び上限駆動速度V4に制限されていないので、この間には、流調弁33aは、操作ハンドル20aの操作に追従して、時間t6に目標吐水流量がゼロとなる弁開度まで駆動される。これにより、流調弁33aは、時間t6に操作ハンドル20aが止水位置に到達するのと、略同時に時間遅れなく閉状態となる。
【0080】
2回目の操作において、時間t11から時間t12は、目標吐水流量が設定流量Q以下となるので、コントローラ35は、グラフ4を用いて弁駆動速度Vを決定する。時間t11から時間t12は、時間t10から時間t11と同様に、操作ハンドル20aは、一定の操作速度v(v1<v<v4<v2)で減流量方向へ操作され、止水位置まで戻されている。
【0081】
これにより、コントローラ35は、グラフ4を用いて操作速度vに応じて弁駆動速度Vを決定する(V1<V<V4)。なお、このときの弁駆動速度Vは、時間t10から時間t11において、グラフ1を用いて決定した弁駆動速度と同一である。したがって、時間t10から時間t12は、弁駆動速度Vは、同一の駆動速度に維持される。
【0082】
また、時間t11から時間t12における弁駆動速度Vは、下限駆動速度V1及び上限駆動速度V4に制限されていないので、この間には、流調弁33aは、操作ハンドル20aの操作に追従して、時間t12に目標吐水流量がゼロとなる弁開度まで駆動される。これにより、流調弁33aは、時間t12に操作ハンドル20aが止水位置に到達するのと、略同時に時間遅れなく閉状態となる。
【0083】
3回目の操作において、時間t18から時間t19は、目標吐水流量が設定流量Q以下となるので、コントローラ35は、グラフ4を用いて弁駆動速度Vを決定する。時間t18から時間t19は、時間t17から時間t18と同様に、操作ハンドル20aは、一定の操作速度v(v4<v<v2)で減流量方向へ操作され、止水位置まで戻されている。
【0084】
コントローラ35は、操作速度vに応じて弁駆動速度Vを演算するが、演算により得られた弁駆動速度Vは、上限駆動速度V4よりも大きくなる(V4<V<V2)。このため、コントローラ35は、グラフ4を用いて弁駆動速度Vを速度V4に制限する(V=V4)。したがって、時間t18から時間t19における弁駆動速度Vは、時間t17から時間t18における弁駆動速度よりも低速に制限される。
【0085】
このように、時間t18から時間t19における弁駆動速度Vは、上限駆動速度V4によって制限されので、この間には、流調弁33aは、操作ハンドル20aの操作に追従することができず、時間t19に操作ハンドル20aが止水位置に到達しても、流調弁33aは、閉状態に到達しない。
【0086】
コントローラ35は、時間t19以降は、目標吐水流量であるゼロとなるまで(弁開度がゼロとなるまで)、時間t19時点で設定されている弁駆動速度V(V=V4)を維持して、流調弁33aを駆動する。これにより、流調弁33aは、時間遅れをもって時間t20(>t19)に、閉状態となる。
時間t19から時間20の間は、操作ハンドル20aが止水位置にあるが、流調弁33aが開状態であるので、表示部21は、光照射範囲21aを点滅表示する。
【0087】
このように、本実施形態では、低流量領域において、操作ハンドル20aの操作速度が所定の操作速度v4よりも大きく、これにより演算した駆動速度が上限駆動速度V4よりも大きい場合は、流調弁33aの閉方向への駆動速度が、通常流量領域での上限駆動速度V2よりも小さい上限駆動速度V4に制限される。そして、この上限駆動速度V4は、この速度で流調弁33aを閉状態まで閉じたときに、ウォータハンマー現象を発生しない程度の中低速の速度が選択されている。
【0088】
これにより、使用者が操作ハンドル20aを止水位置まで高速で戻した場合であっても、流調弁33aは、少なくとも上限駆動速度V4以下の中低速に制限された駆動速度で閉状態となるまで閉方向に駆動されるので、ウォータハンマー現象の発生を防止することができる。
【0089】
上記実施形態は、以下のように改変することができる。
上記実施形態では、流量操作部20及び温度操作部22が、それぞれ円盤状の操作ハンドル20a,22aを有し、これらの回転量を操作量とする構成であるが、これに限られるものではない。例えば、流量操作部20及び温度操作部22が、それぞれ操作範囲が限定されたレバー状の操作ハンドルを有し、これらの移動量を操作量とする構成としてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、通常流量領域及び低流量領域において下限速度としてV1,V3が設定されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、下限駆動速度が設定されないものも含まれる。
【0091】
また、上記実施形態では、通常流量領域での増減流量時,及び低流量領域での増流量時において上限駆動速度V2が設定されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、通常流量領域での増減流量時,及び低流量領域での増流量時において上限設定速度が設定されていないものも含まれる。
【0092】
これらの例として、上記実施形態の別の改変例について、図9,図10を用いて説明する。図9は通常流量領域での増減流量時,及び低流量領域での増流量時における操作ハンドル20aの操作速度と流調弁33aの駆動速度の関係を表すグラフ、図10は低流量領域での減流量時における操作ハンドル20aの操作速度と流調弁33aの駆動速度の関係を表すグラフである。
【0093】
通常流量領域での増減流量時,及び低流量領域での増流量時では、図9(グラフ5)に示すように上限及び下限の駆動速度が設定されておらず、流量操作部20の全ての操作速度範囲において、コントローラ35で演算した流量調整弁33aの駆動速度で駆動させるようになっている。また低流量領域の減流量時では、図10(グラフ6)に示すように、下限駆動速度が設定されておらず上限駆動速度V4のみが設定されている。
【0094】
このように設定されているため、通常流量領域では使用者が操作する流量操作部20の操作速度に対し、流量調整弁33aの駆動速度が常に追随する。
また低流量領域では、増流量時は通常流量領域と同じく使用者が操作する流量操作部20の操作速度に対し、流量調整弁33aの駆動速度が常に追随し、減流量時は流量操作部20の操作速度が所定値v3以上の範囲において流量調整弁33aの駆動速度が上限駆動速度V4に制限される。この速度V4はウォータハンマー現象が発生しない速度であることから、使用者が吐水状態から高速で流量操作部20を操作し、止水位置まで移動させても、ウォータハンマー現象が発生することはない。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施形態による水栓装置全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態による水栓装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態による操作ハンドルの操作量と流調弁の目標開度値の関係を表すグラフである。
【図4】本発明の実施形態による通常流量領域での操作ハンドルの操作速度と流調弁の駆動速度の関係を表すグラフである。
【図5】本発明の実施形態による低流量領域での操作ハンドルの操作速度と流調弁の駆動速度の関係を表すグラフである。
【図6】本発明の改変例に係る低流量領域での減流量時における操作ハンドルの操作速度と流調弁の駆動速度の関係を表すグラフである。
【図7】本発明の実施形態による流調弁の駆動速度を決定する処理フローである。
【図8】本発明の実施形態による操作ハンドルの操作量と目標吐水量の時間変化を表すグラフである。
【図9】本発明の改変例に係る通常流量領域での増減流量時及び低流量領域での増流量時における操作ハンドルの操作速度と流調弁の駆動速度の関係を表すグラフである。
【図10】本発明の改変例に係る低流量領域での減流量時における操作ハンドルの操作速度と流調弁の駆動速度の関係を表すグラフである。
【符号の説明】
【0096】
1 水栓装置
10 水栓本体
10a 吐水口
20 流量操作部
20a 操作ハンドル
22 温度操作部
22a 操作ハンドル
30 水栓機能部
31 吐水温度調整手段
33 流量調整手段
33a 流調弁
35 コントローラ
35a 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水口から吐水する吐水流量を調整するための流量調整弁と、
止水状態で操作体を一方向へ移動させることにより吐水開始と吐水流量増加を指示し、吐水状態で前記操作体を他方向へ移動させることにより吐水流量減少と止水を指示する操作部と、
前記操作体の移動位置に応じて目標吐水流量を演算すると共に、前記操作体の移動速度に応じて前記流量調整弁の駆動速度を演算し、前記目標吐水流量で吐水させる開度まで前記流量調整弁を前記駆動速度で駆動する制御部と、を備えた水栓装置において、
前記制御部は、前記流量調整弁を吐水流量減少方向に駆動するとき、演算した前記流量調整弁の駆動速度が所定の上限駆動速度より大きい場合には、前記流量調整弁の駆動速度を前記上限駆動速度に制限し、
前記上限駆動速度は、前記目標吐水流量が所定の設定流量より大きな通常流量領域内にあるときよりも、前記目標吐水流量が前記設定流量以下の低流量領域内にあるときの方が、小さな値に設定されていることを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記目標吐水流量が前記通常流量領域内にあるときの前記流量調整弁の駆動速度を所定の下限駆動速度以上に設定し、
前記目標吐水流量が前記低流量領域内にあるときの前記上限駆動速度は、前記下限駆動速度よりも大きな値に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の水栓装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記流量調整弁を吐水流量減少方向に駆動するとき、前記目標吐水流量が前記低流量領域内にあり、演算した前記流量調整弁の駆動速度が前記上限駆動速度以下である場合には、前記演算した駆動速度で前記流量調整弁を駆動することを特徴とする請求項1に記載の水栓装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記目標吐水流量が前記通常流量領域内にあるときの前記流量調整弁の駆動速度を所定の下限駆動速度以上に設定し、
前記制御部は、前記流量調整弁を吐水流量減少方向に駆動するとき、演算した前記目標吐水流量が前記低流量領域内にある場合は、前記流量調整弁の駆動速度を前記下限駆動速度と等しい値に設定することを特徴とする請求項1に記載の水栓装置。
【請求項5】
前記流量調整弁が開状態であるときに第1表示態様を表示する表示部を更に備え、
前記表示部は、少なくとも前記操作部の操作体が止水を指示する位置にあり且つ前記流量調整弁が開状態であるときに、前記第1表示態様とは異なる第2表示態様を表示することを特徴とする請求項1に記載の水栓装置。
【請求項6】
吐水口から吐水する吐水流量を調整するための流量調整弁と、
止水状態で操作体を一方向へ移動させることにより吐水開始と吐水流量増加を指示し、吐水状態で前記操作体を他方向へ移動させることにより吐水流量減少と止水を指示する操作部と、
前記操作体の移動位置に応じて目標吐水流量を演算すると共に、前記操作体の移動速度が大きくなるのに応じて前記流量調整弁の駆動速度が大きくなるよう演算し、前記目標吐水流量で吐水させる開度まで前記流量調整弁を前記駆動速度で駆動する制御部と、を備えた水栓装置において、
前記制御部は、前記流量調整弁を吐水流量減少方向に駆動するときであって、前記目標吐水流量が所定の設定流量以下の低流量領域内にあるときには、演算した前記流量調整弁の駆動速度が所定の上限駆動速度より大きいと、前記流量調整弁の駆動速度を前記上限駆動速度に制限することを特徴とする水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−77734(P2010−77734A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249120(P2008−249120)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】