説明

水栓装置

【課題】様々な使用場面において好ましい操作フィーリングを得ることができる水栓装置を提供する。
【解決手段】本発明は、吐出される湯水の温度又は流量を設定可能な水栓装置(1)であって、吐出される湯水の温度又は流量を設定するための、使用者の操作により動かされる可動操作部(8、10)と、この可動操作部により設定された湯水を生成する吐水調整部(16、18)と、可動操作部を使用者が操作する際の操作抵抗を、電気的に変更可能に発生させる操作抵抗発生部(30)と、可動操作部による設定に基づいて吐水調整部を制御すると共に、操作抵抗発生部に信号を送り、操作抵抗発生部が発生させる操作抵抗を制御する制御部(20)と、を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水栓装置に関し、特に、吐出される湯水の温度又は流量を設定可能な水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9−133249号公報(特許文献1)には、水栓のハンドルが記載されている。この水栓のハンドルにおいては、ハンドル部の内周に係合溝が形成され、ハンドル部の内側に配置されたストップリングの外周には節度突起が設けられている。これらの係合溝と節度突起は、ハンドル部を高温吐水域側へ回動させたとき抵抗を生じて係脱し、高温吐水域においてハンドル部に節度感のある回転抵抗が与えられる。
【0003】
【特許文献1】特開平9−133249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開平9−133249号公報記載のハンドルにおいては、ハンドルが高温領域に回転されたときハンドルに回転抵抗を付与し、ハンドルの操作感を変化させることにより、水栓装置が高温吐水に設定されたことを使用者に報知している。このように、特開平9−133249号公報記載のハンドルでは、ハンドルに機械的に回転抵抗が付与されるので、ハンドルの回転位置とハンドルに与えられる操作抵抗の関係は固定的なものであり、ハンドルが同一の回転位置にあるときは、常に一定の回転抵抗がハンドルに付与される。
【0005】
しかしながら、操作部(ハンドル)の好ましい操作抵抗(回転抵抗)は、水栓装置の様々な使用場面により異なるものであり、特開平9−133249号公報記載のハンドルのように、操作部の位置に対して常に一定の操作抵抗が与えられる機構では、水栓装置の操作フィーリングを十分に改善することができないという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、様々な使用場面において好ましい操作フィーリングを得ることができる水栓装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、吐出される湯水の温度又は流量を設定可能な水栓装置であって、吐出される湯水の温度又は流量を設定するための、使用者の操作により動かされる可動操作部と、この可動操作部により設定された湯水を生成する吐水調整部と、可動操作部を使用者が操作する際の操作抵抗を、電気的に変更可能に発生させる操作抵抗発生部と、可動操作部による設定に基づいて吐水調整部を制御すると共に、操作抵抗発生部に信号を送り、操作抵抗発生部が発生させる操作抵抗を制御する制御部と、を有することを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、制御部は、可動操作部によって設定された湯水の温度又は流量が生成されるように、吐水調整部を制御する。また、制御部は、操作抵抗発生部に信号を送り、操作抵抗発生部が発生させる操作抵抗を制御して、可動操作部を使用者が操作する際の操作抵抗を、電気的に変更する。
【0009】
このように構成された本発明によれば、可動操作部を使用者が操作する際の操作抵抗が電気的に変更されるので、様々な使用場面において可動操作部の好ましい操作フィーリングを得ることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、操作抵抗発生部は、可動操作部が同一の位置にある場合でも異なる操作抵抗を発生させる。
このように構成された本発明によれば、可動操作部が同一の位置にある場合でも異なる操作抵抗を発生させるので、操作抵抗を変更することにより可動操作部の位置を使用者に報知するばかりでなく、操作フィーリングを向上させることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、さらに、可動操作部の操作状態を検出する操作状態センサを有し、制御部は、操作状態センサの検出値に基づいて操作抵抗発生部に信号を送り、操作抵抗発生部が発生させる操作抵抗を制御する。
このように構成された本発明によれば、使用者の操作意図を推定して操作抵抗を変更することができ、操作フィーリングを向上させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、操作状態センサは、可動操作部が動かされている速度又は角速度を検出し、制御部は検出された速度又は角速度に基づいて操作抵抗発生部を制御する。
このように構成された本発明によれば、可動操作部の粗調整時、微調整時に応じて適切な操作抵抗を与えることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、制御部は、可動操作部が所定時間内に所定回数以上操作された場合には、操作抵抗を増大させるように操作抵抗発生部を制御する。
このように構成された本発明によれば、不要に可動操作部を操作する悪戯を防止することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、さらに、吐水状態検出手段を有し、制御部は吐水状態検出手段の検出値に基づいて、操作抵抗発生部が発生させる操作抵抗を制御する。
このように構成された本発明によれば、水栓装置の吐水状態に応じた適切な操作抵抗を付与することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、吐水状態検出手段は、吐出される湯水の温度又は流量を検出し、制御部は吐水状態検出手段によって検出された温度又は流量に基づいて、操作抵抗発生部が発生させる操作抵抗を制御する。
このように構成された本発明によれば、実際に吐水されている温度又は流量に応じた適切な操作抵抗を付与することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、さらに、吐水先切替操作部を有し、吐水状態検出手段は、吐水先切替操作部によって切り替えられた吐水先を検出し、制御部は吐水状態検出手段によって検出された吐水先に基づいて、操作抵抗発生部が発生させる操作抵抗を制御する。
このように構成された本発明によれば、設定温度又は設定流量の操作頻度が高い吐水先と、操作頻度が低い吐水先で、夫々に適切な操作抵抗を付与することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、制御部は、操作抵抗発生部が発生させる操作抵抗を0とし、又は発生させる操作抵抗を一定値とするように、操作抵抗発生部を制御することができる。
このように構成された本発明によれば、操作抵抗が変更される水栓装置の使用に慣れない使用者が使用するパブリックユースにも対応することができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、操作抵抗発生部は、可動操作部の操作により動かされる移動子と、この移動子の移動に抵抗を与える粘性流体と、この粘性流体が流れる流れ抵抗を変更する流れ抵抗可変手段と、を備え、制御部が流れ抵抗可変手段を制御することにより、操作抵抗発生部が発生させる操作抵抗が変更される。
このように構成された本発明によれば、簡単な機構で、安定した操作抵抗を付与することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水栓装置によれば、様々な使用場面において好ましい操作フィーリングを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
まず、図1乃至図4を参照して、本発明の第1実施形態による水栓装置を説明する。図1は、本実施形態による水栓装置全体を示す斜視図である。図2は、本実施形態による水栓装置の構成を示すブロック図である。さらに、図3は操作抵抗発生部の構成を示す断面図である。図4は本実施形態の水栓装置の作用を示すタイムチャートである。
【0021】
図1に示すように、本発明の第1実施形態による水栓装置1は、吐水口2aが設けられた吐水部である吐水ヘッド2と、洗面ボウル4に取り付けられた水栓本体6と、洗面ボウル4に配置された流調用の可動操作部である流調ハンドル8及び温調用の可動操作部である温調ハンドル10と、洗面ボウル4の下側に配置された水栓装置機能部12(図2)と、を有する。また、水栓装置機能部12は、抵抗切替オン・オフスイッチ14(図2)を備えており、このスイッチを操作することにより、後述する流調ハンドル8及び温調ハンドル10の操作抵抗を変更する機能をオン又はオフに切り換えることができる。
【0022】
本実施形態による水栓装置1は、流調ハンドル8及び温調ハンドル10を操作することにより、水栓装置機能部12に電気信号が送られ、各機能を実行することができる。即ち、水栓装置1は、流調ハンドル8を押圧操作することにより吐水ヘッド2の吐水口2aからの吐水、止水の切り換えを行うことができ、流調ハンドル8を回転操作することにより吐水流量の調整を行うことができる。また、水栓装置1は、温調ハンドル10を回転操作することにより、吐水温度の調整を行うことができるように構成されている。
【0023】
流調ハンドル8及び温調ハンドル10の内部には、表示手段であるLED(図示せず)が内蔵されており、このLEDからの照射光により各ハンドルの周りに概ね扇形の光照射部8a、10aが形成される。各光照射部の扇形の中心角は、設定流量及び設定温度に応じて夫々大きくなるように構成されており、使用者は、各光照射部の形状により、設定流量、設定温度を視覚的に認識できるようになっている。また、吐水ヘッド2は、水栓本体6から外して引き出して、シャワーヘッドとして使用できるように構成されている。
【0024】
図2に示すように、水栓装置機能部12は、給湯管16a及び給水管16bに接続された温度調整用の吐水調整部である温調バルブ16と、この温調バルブ16の下流側に接続された流量調整用の吐水調整部である流量調整弁18と、この流量調整弁18の下流側に接続された電磁弁20と、温調バルブ16、流量調整弁18及び電磁弁20を制御する制御部であるコントローラ22と、を有する。
【0025】
温調バルブ16の出口管路には流量調整弁18が接続され、流量調整弁18の出口管路には電磁弁20が接続され、電磁弁20の出口管路には吐水ヘッド2が接続されている。この構成により、電磁弁20が開放されると、温調バルブ16から流出した湯水は流量調整弁18を通って電磁弁20に流入し、吐水ヘッド2の吐水口2aから吐出される。
【0026】
また、図2に示すように、流調ハンドル8及び温調ハンドル10の下方の、洗面ボウル4の裏側には、各ハンドルの操作信号をコントローラ22に送る流調機能部24及び温調機能部26が、夫々配置されている。
【0027】
温調バルブ16は、温度設定に従って、給湯管16aから流入した湯、及び給水管16bから流入した水を混合して流出させるように構成されている。本実施形態においては、温調バルブ16として、主弁体を形状記憶合金バネ及びバイアスバネの付勢力により駆動して温度を調整するタイプのサーモバルブが使用されている。また、温調バルブ16から吐出される湯水の設定温度は、温調バルブ16に連結されたモータ16cを駆動することにより変更することができる。
【0028】
流量調整弁18は、流量設定に従って、温調バルブ16から流入した湯水を流量調整して流出させるように構成されている。また、流量調整弁18から吐出される湯水の設定流量は、コントローラ22からの信号により弁の開度を可変することにより変更することができる。
また、水栓本体6と電磁弁20との間には、流量温度センサー50が備えられており、電磁弁20より吐出される湯水の流量及び温度を検知するようになっている。
【0029】
コントローラ22は、流調機能部24及び温調機能部26、流量温度センサー50から入力された電気信号に基づいて、電磁弁20、温調バルブ16及び流量調整弁18に信号を送って、これらを制御するように構成されている。具体的には、コントローラ22は、各操作部からの信号を入力するための入力インターフェイス、制御プログラム、メモリ、プログラムを実行するマイクロプロセッサ、電磁弁及び温調バルブを駆動するための出力インターフェイス等から構成される(図示せず)。コントローラ22による制御の詳細は、後述する。
【0030】
次に、図3(a)を参照して、流調機能部24の構成を説明する。
図3(a)に示すように、流調機能部24は、流調ハンドル8から延びる回転軸8bに連結された操作状態センサであるハンドル操作検知部28と、回転軸8bに連結された操作抵抗発生部であるダンパー機構30と、を有する。
【0031】
図3(b)に示すように、ダンパー機構30は、回転軸8bと共に回転する移動子である羽根車32と、この羽根車32を格納した羽根車ケース34と、この羽根車ケース34に接続されたループ管路36と、このループ管路36の途中に設けられた流れ抵抗可変手段である可変絞りバルブ38と、を有する。
【0032】
ハンドル操作検知部28は流調ハンドル8の回転操作を検知するエンコーダー(図示せず)と、流調ハンドル8の押圧操作を検知する押圧操作検知部(図示せず)を内蔵している。
エンコーダは、概ね円盤状の流調ハンドル8の中心から洗面ボウル4の裏側へ延びる回転軸8bに連結されており、使用者が流調ハンドル8を回転操作すると、これを検知して、検出信号をコントローラ22に送るように構成されている。また、押圧操作検知部は、同じく回転軸の底部に固定されており、使用者が流量ハンドル8を押圧操作するとこれを検知して、検出信号をコントローラ22に送るように構成されている。
【0033】
ダンパー機構30は回転軸8bに連結されており、回転軸8bの回転に抵抗するトルクを発生するように構成されている。
ダンパー機構30に備えられている羽根車32は、回転軸8bと共に回転するように構成されている。
【0034】
羽根車ケース34は、内部に羽根車32が格納されており、また、ループ管路36の2つの端部36a、36bが連通されている。羽根車ケース34及びループ管路36の内部には粘性流体であるオイルが充填されており、羽根車32が回転されると、このオイルがループ管路36の中を循環するようになっている。図3(b)において、羽根車32が時計回りに回転されると、羽根車ケース34内のオイルは、ループ管路36の端部36aに押し出され、ループ管路36を通ったオイルが端部36bから羽根車ケース34に戻る。逆に、羽根車32が反時計回りに回転されると、オイルは、ループ管路36の端部36bに押し出され、ループ管路36を通ったオイルが端部36aから羽根車ケース34に戻る。ループ管路36を循環するオイルの粘性により、羽根車32の回転を妨げる方向のトルクが羽根車32に作用し、このトルクが操作抵抗となる。
【0035】
可変絞りバルブ38は、ループ管路36の途中に設けられており、ループ管路36を一巡する流れ抵抗を可変するように構成されている。可変絞りバルブ38はバルブモーター38aを備えており、コントローラ22がバルブモーター38aに信号を送ることにより、可変絞りバルブ38の開度が変更されるように構成されている。可変絞りバルブ38を絞ることにより、ループ管路36を一巡する流れ抵抗が大きくなるので、羽根車32の回転を妨げる方向のトルクが大きくなり、流調ハンドル8の操作抵抗が大きくなる。このように、ダンパー機構30が発生する操作抵抗は、電気信号により電気的に変更することができる。
【0036】
また、抵抗切替オン・オフスイッチ14がオフにされている場合には、コントローラ22は、可変絞りバルブ38の開度を常に一定とし、流調ハンドル8の操作抵抗は常に一定にされる。或いは、抵抗切替オン・オフスイッチ14がオフにされている場合には、可変絞りバルブ38を全開とし、ダンパー機構30により操作抵抗を付与しないように、水栓装置を構成することもできる。
【0037】
ここでは、図3を参照して流調機能部24の構成を説明したが、温調機能部26の構成も、ハンドル操作検知部28が温調ハンドル10の押圧操作を検出しないことを除き同様である。
【0038】
次に、図4を参照して、本発明の第1実施形態による水栓装置1の作用を説明する。図4は、流調ハンドル8の回転方向を上段に、流調ハンドル8の回転角速度を中段に、流調ハンドル8に加えられる操作抵抗の大きさ(トルクの絶対値)を下段に示すタイムチャートである。
【0039】
まず、使用者が流調ハンドル8を押圧操作すると、ハンドル操作検知部28の押圧操作検知部がこれを検知し、コントローラ22に所定の信号を送る。コントローラ22は、電磁弁20に信号を送り、これを開放状態にする。これにより、吐水口2aからの吐水が開始される。
【0040】
図4に示すように、流調ハンドル8が回転操作されていない(流調ハンドル8の回転角速度=0)場合には、可変絞りバルブ38は最も絞られた状態にされており、ダンパー機構30により流調ハンドル8に付与される操作抵抗は、最大のF3になっている。
【0041】
図4の時刻t1において、使用者が時計回りに流調ハンドル8の回転操作を開始すると、ハンドル操作検知部28のエンコーダは、この回転を検出しコントローラ22に送る。コントローラ22は、送られた信号に基づいて流調ハンドル8の回転角速度を計算する。時刻t2において、流調ハンドル8の回転角速度がω1に達すると、コントローラ22は可変絞りバルブ38のバルブモーター38aに信号を送り、可変絞りバルブ38の開度を大きくする。これにより、ダンパー機構30が流調ハンドル8に付与する操作抵抗は減少しF2になる。
【0042】
このように、ダンパー機構30が付与する操作抵抗は、流調ハンドル8の回転角速度により変更されるので、流調ハンドル8の回転位置と付与される操作抵抗に対応関係はなく、流調ハンドル8が同一の回転位置にあっても異なる操作抵抗が発生されることになる。
【0043】
さらに、時刻t3において、流調ハンドル8の回転角速度がω2まで上昇すると、コントローラ22はバルブモーター38aに信号を送り、可変絞りバルブ38の開度を更に大きくする。これにより、ダンパー機構30が流調ハンドル8に付与する操作抵抗は更に減少しF1になる。このように、使用者が流量を大きく変更することを意図し、流調ハンドル8を大きな角速度で操作した場合には、操作抵抗を減少させ、流調ハンドル8を容易に操作できるようにする。
【0044】
次いで、時刻t4において、流調ハンドル8の回転角速度がω2を下回ると、コントローラ22は可変絞りバルブ38の開度を小さくし、操作抵抗をF2に高める。さらに、時刻t5において、回転角速度がω1を下回ると、操作抵抗は最大のF3に戻る。
【0045】
次に、時刻t6において、流調ハンドル8の回転方向が反転し、反時計回りの回転が開始されても、可変絞りバルブ38の開度が変更されることはなく、操作抵抗は最大のF3に維持される。しかしながら、オイルがループ管路36を循環する方向が逆転するので、ダンパー機構30が操作抵抗として流調ハンドル8に付与するトルクの方向も逆転する。さらに、時刻t7において、反時計回りの回転角速度がω1を超えると、操作抵抗はF2になる。ただし、ダンパー機構30が操作抵抗として流調ハンドル8に付与するトルクの方向は、時刻t2〜t3、t4〜t5とは反対になる。
【0046】
続いて、時刻t8の後、流調ハンドル8の回転角速度の絶対値がω1を下回っている間は、ダンパー機構30が発生する操作抵抗は最大のF3に維持される。しかしながら、操作抵抗として流調ハンドル8に付与されるトルクの方向は、流調ハンドル8の回転方向に応じて反転される。このように、使用者が流量を微調整することを意図し、流調ハンドル8を小さい角速度で操作している場合には、適度な操作抵抗付与し、容易に微調整ができるようにする。
【0047】
以上、流調ハンドル8に付与される操作抵抗を説明したが、温調ハンドル10に付与される操作抵抗についても同様である。
【0048】
本発明の第1実施形態の水栓装置によれば、各ハンドルを使用者が操作する際の操作抵抗が電気的に変更されるので、様々な使用場面においてハンドルの好ましい操作フィーリングを得ることができる。
【0049】
また、本実施形態の水栓装置によれば、ハンドルが同一の位置にある場合でも異なる操作抵抗を発生させることができるので、操作抵抗を変更することによりハンドルの位置を使用者に報知するばかりでなく、操作フィーリングを向上させることができる。
【0050】
さらに、本実施形態の水栓装置によれば、エンコーダの検出値に基づいてダンパー機構に信号を送り、操作抵抗を制御しているので、使用者の操作意図を推定して操作抵抗を変更することができ、操作フィーリングを向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態の水栓装置によれば、各ハンドルの角速度に基づいて操作抵抗を発生させているので、ハンドルの粗調整時、微調整時に応じて適切な操作抵抗を与えることができる。
【0052】
さらに、本実施形態の水栓装置によれば、抵抗切替オン・オフスイッチにより、操作抵抗を変更する機能をオン又はオフに切り換えることができるので、操作抵抗が変更される水栓装置の使用に慣れない使用者が使用するパブリックユースにも対応することができる。
【0053】
また、図3(b)に示したダンパー機構においては、ハンドルの操作により回転される羽根車は1つであったが、変形例として、図5に示すように羽根車を2つにすることもできる。
【0054】
図5に示すように、本変形例においては、2つの羽根車が対向して配置されており、ハンドルの回転軸が回転されると、各羽根車が歯車機構(図示せず)により互いに反対方向に回転されるように構成されている。この構成により、ハンドルの回転軸に連結されている羽根車40aが時計回りに回転されると、これに対向して配置されている羽根車40bは反時計回りに回転され、羽根車ケース内のオイルはループ管路の端部42aに押し出される。同様に、羽根車40aが反時計回りに回転されると、羽根車ケース内のオイルはループ管路の端部42bに押し出される。
本変形例によれば、単一の羽根車の場合よりも大きな操作抵抗を付与することができる。
【0055】
次に、図6を参照して、本発明の第2実施形態による水栓装置を説明する。本実施形態による水栓装置は、コントローラによる制御が上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明する。
【0056】
図6(a)は、本実施形態の水栓装置において流量温度センサー50で検知された吐水流量と、流調ハンドルに付与される操作抵抗の関係を示すタイムチャートであり、図6(b)は、流量温度センサー50で検知された吐水温度と、温調ハンドルに付与される操作抵抗の関係を示すタイムチャートである。
【0057】
図6(a)に示すように、本実施形態の水栓装置においては、コントローラ22は、実際の吐水流量が大きい場合には、ダンパー機構30の可変絞りバルブ38を開いて流調ハンドル8の操作抵抗を小さくし、実際の吐水流量が小さい場合には、可変絞りバルブ38を絞って操作抵抗を大きくする。なお、コントローラ22は、吐水状態に基づいて流調ハンドル8の操作抵抗を可変するので、操作抵抗検出手段として機能する。
【0058】
これにより、微調整が要求される小流量領域においては、適度な操作抵抗が付与されるので、容易に流量の微調整を行うことができる。また、微調整が要求されない大流量領域では、操作抵抗が小さくなるので、流量を容易に変更することができる。
【0059】
また、図6(b)に示すように、コントローラ22は、実際の吐水温度が高い場合には、ダンパー機構30の可変絞りバルブ38を絞って温調ハンドル10の操作抵抗を大きくし、吐水温度が低い場合には、可変絞りバルブ38を開いて操作抵抗を小さくする。なお、コントローラ22は、吐水状態である吐水温度に基づいて温調ハンドル10の操作抵抗を可変するので、操作抵抗検出手段として機能する。
【0060】
これにより、温度設定を慎重にすべき高温領域においては、適度な操作抵抗が付与されるので、設定温度を意に反して大きく変更してしまうのを防止することができる。また、設定温度が偶発的に変化しても実害の少ない低温領域では、操作抵抗が小さくなるので、温度を容易に変更することができる。
【0061】
本発明の第2実施形態の水栓装置によれば、コントローラが吐水状態に応じて操作抵抗を制御しているので、水栓装置の吐水状態に応じた適切な操作抵抗を付与することができる。
【0062】
また、本実施形態の水栓装置によれば、吐水状態である温度、流量に基づいて操作抵抗を制御しているので、温度、流量に応じた適切な操作抵抗を付与することができる。
【0063】
次に、図7を参照して、本発明の第3実施形態による水栓装置を説明する。本実施形態による水栓装置は、コントローラによる制御が上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明する。
【0064】
本実施形態の水栓装置においては、コントローラは各ハンドルの操作頻度を監視し、通常使用では考えられない頻度で操作が行われた場合には、操作抵抗を極めて大きくすることにより、水栓装置の悪戯を防止するものである。
図7は、本実施形態の水栓装置において、コントローラが操作抵抗を決定するフローチャートである。
【0065】
まず、ハンドルが操作された旨の信号がコントローラ22に入力されると、図7に示すフローチャートが実行される。図7のステップS1においては、ハンドルの操作回数を積算するカウンターcntの値が0か否かが判断される。初期状態においては、カウンターcntの値は0であるので、ステップS2に進む。ステップS2においては、カウンターcntの値が1にされる。次いで、ステップS3において、タイマーtの値がリセットされると共に、タイマーによる積算が開始され、図7に示すフローチャートの一回の処理が終了する。
【0066】
再びハンドルが操作されると、図7のフローチャートが実行される。ステップS1において、カウンターcntの値が0でない場合にはステップS4に進み、ステップS4においては、タイマーによる積算開始後、所定の時間Tresetが経過している場合にはステップS5に進み、経過していない場合にはステップS7に進む。
【0067】
ステップS7においては、カウンターcntの積算値が所定の回数Nに達しているか否かが判断される。所定の回数に達している場合にはステップS9に進み、所定の回数に達していない場合にはステップS8に進む。ステップS8においては、カウンターcntの積算値、即ち、ハンドルの操作回数を1増加させる。
【0068】
一方、ステップS7において、カウンターcntの積算値が所定の回数Nに達している場合、即ち、所定の時間Tresetの間に所定回数以上ハンドルが操作されている場合には、ハンドルが悪戯されていると判断してステップS9に進む。ステップS9においては、コントローラ22は、可変絞りバルブ38に信号を送り、操作抵抗を極めて大きな値に設定してハンドルの悪戯を防止する。
【0069】
また、前述のように、ステップS3においてタイマーによる積算開始後所定の時間Tresetが経過し、その後ハンドルが操作された場合には、処理は、ステップS4からステップS5に移行する。ステップS5においては、カウンターcntの積算値が0にリセットされると共に、タイマーによる積算が停止される。次いで、ステップS6においては、コントローラ22は、可変絞りバルブ38に信号を送り、ハンドルの操作抵抗を操作しやすい通常値に設定する。
【0070】
本発明の第3実施形態の水栓装置によれば、ハンドルが所定時間内に所定回数以上操作された場合に、操作抵抗を増大させているので、不要にハンドルを操作する悪戯を防止することができる。
【0071】
次に、図8及び図9を参照して、本発明の第4実施形態による水栓装置を説明する。本実施形態による水栓装置は、吐水先が切り替えられる点、及びコントローラによる制御が上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明する。
図8は本発明の第4実施形態による水栓装置の全体構成を示す斜視図であり、図9は本実施形態による水栓装置の作用を示すタイムチャートである。
【0072】
図8に示す本実施形態の水栓装置100は、シャワーヘッド102と、カラン104と、流調ハンドル106と、温調ハンドル108と、吐水先切替操作部であるシャワー・カラン切替ハンドル110と、を有する。この水栓装置100は、シャワー・カラン切替ハンドル110を操作することにより、吐水状態として、シャワー吐水とカラン吐水を切替えることができるように構成されている。シャワー・カラン切替ハンドル110の操作は、コントローラ22によって検知される。
【0073】
図9に示すように、吐水先がカランに設定されている間は、コントローラ22は、可変絞りバルブ38の開度を大きくし、温調ハンドル108の操作抵抗を小さくする。また、コントローラ22が、シャワー・カラン切替ハンドル110がシャワー側に切り替えられたことを検知すると、コントローラ22は、可変絞りバルブ38を絞り、温調ハンドル108の操作抵抗を大きくする。
【0074】
これにより、温度調節を行うことが少ないシャワー吐水においては、温調ハンドル108が偶発的に動いて、使用者の意に反する吐水温度に設定されるのを防止する。また、温度調節を頻繁に行うカラン吐水については操作抵抗を小さくして、容易に温度調節できるようにしている。
【0075】
本発明の第4実施形態の水栓装置によれば、吐水先に基づいて操作抵抗を制御しているので、設定温度又は設定流量の操作頻度が高い吐水先と、操作頻度が低い吐水先で、夫々に適切な操作抵抗を付与することができる。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、各ハンドルは回転操作するものであったが、使用者の操作により直線的に摺動する操作部や、レバーハンドル等、種々の形態の操作部に本発明を適用することもできる。
また、上述した実施形態においては、設定温度及び設定流量をコントローラ自身が認識して操作抵抗を制御していたが、吐出している湯水の温度、流量を検出する温度センサ、流量センサを吐水状態検出手段として使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1実施形態による水栓装置全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態による水栓装置の構成を示すブロック図である。
【図3】操作抵抗発生部の構成を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態による水栓装置の作用を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態の変形例を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態による水栓装置の作用を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の第3実施形態による水栓装置において、コントローラが操作抵抗を決定するフローチャートである。
【図8】本発明の第4実施形態による水栓装置の全体構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の第4実施形態による水栓装置の作用を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0078】
1 本発明の第1実施形態による水栓装置
2 吐水ヘッド
2a 吐水口
4 洗面ボウル
6 水栓本体
8 流調ハンドル(可動操作部)
8a 光照射部
8b 回転軸
10 温調ハンドル(可動操作部)
12 水栓装置機能部
14 抵抗切替オン・オフスイッチ
16 温調バルブ(吐水調整部)
16a 給湯管
16b 給水管
18 流量調整弁(吐水調整部)
20 電磁弁
22 コントローラ(制御部)
24 流調機能部
26 温調機能部
28 ハンドル操作検知部(操作状態センサ)
30 ダンパー機構(操作抵抗発生部)
32 羽根車(移動子)
34 羽根車ケース
36 ループ管路
38 可変絞りバルブ(流れ抵抗可変手段)
38a バルブモーター
40a、40b 羽根車
42a、42b 端部
50 流量温度センサー
100 水栓装置
102 シャワーヘッド
104 カラン
106 流調ハンドル
108 温調ハンドル
110 シャワー・カラン切替ハンドル(吐水先切替操作部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出される湯水の温度又は流量を設定可能な水栓装置であって、
吐出される湯水の温度又は流量を設定するための、使用者の操作により動かされる可動操作部と、
この可動操作部により設定された湯水を生成する吐水調整部と、
上記可動操作部を使用者が操作する際の操作抵抗を、電気的に変更可能に発生させる操作抵抗発生部と、
上記可動操作部による設定に基づいて上記吐水調整部を制御すると共に、上記操作抵抗発生部に信号を送り、上記操作抵抗発生部が発生させる操作抵抗を制御する制御部と、
を有することを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
上記操作抵抗発生部は、上記可動操作部が同一の位置にある場合でも異なる操作抵抗を発生させる請求項1記載の水栓装置。
【請求項3】
さらに、上記可動操作部の操作状態を検出する操作状態センサを有し、上記制御部は、上記操作状態センサの検出値に基づいて上記操作抵抗発生部に信号を送り、上記操作抵抗発生部が発生させる操作抵抗を制御する請求項1又は2記載の水栓装置。
【請求項4】
上記操作状態センサは、上記可動操作部が動かされている速度又は角速度を検出し、上記制御部は検出された速度又は角速度に基づいて上記操作抵抗発生部を制御する請求項3記載の水栓装置。
【請求項5】
上記制御部は、上記可動操作部が所定時間内に所定回数以上操作された場合には、操作抵抗を増大させるように上記操作抵抗発生部を制御する請求項3記載の水栓装置。
【請求項6】
さらに、吐水状態検出手段を有し、上記制御部は上記吐水状態検出手段の検出値に基づいて、上記操作抵抗発生部が発生させる操作抵抗を制御する請求項1又は2記載の水栓装置。
【請求項7】
上記吐水状態検出手段は、吐出される湯水の温度又は流量を検出し、上記制御部は上記吐水状態検出手段によって検出された温度又は流量に基づいて、上記操作抵抗発生部が発生させる操作抵抗を制御する請求項6記載の水栓装置。
【請求項8】
さらに、吐水先切替操作部を有し、上記吐水状態検出手段は、上記吐水先切替操作部によって切り替えられた吐水先を検出し、上記制御部は上記吐水状態検出手段によって検出された吐水先に基づいて、上記操作抵抗発生部が発生させる操作抵抗を制御する請求項6記載の水栓装置。
【請求項9】
上記制御部は、上記操作抵抗発生部が発生させる操作抵抗を0とし、又は発生させる操作抵抗を一定値とするように、上記操作抵抗発生部を制御することができる請求項1乃至8の何れか1項に記載の水栓装置。
【請求項10】
上記操作抵抗発生部は、上記可動操作部の操作により動かされる移動子と、この移動子の移動に抵抗を与える粘性流体と、この粘性流体が流れる流れ抵抗を変更する流れ抵抗可変手段と、を備え、上記制御部が上記流れ抵抗可変手段を制御することにより、上記操作抵抗発生部が発生させる操作抵抗が変更される請求項1乃至9の何れか1項に記載の水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−84326(P2010−84326A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251106(P2008−251106)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】