説明

水槽システム

【課題】緊急遮断弁の設置数を減らした水槽システムを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る水槽システムは、2つの貯水室14、16が形成されている水槽18と、水槽18を下方から支える架台20と、貯水室14、16を互いに連通させる連通管26と、連通管26の中央に接続している取水管32と、を備えている。連通管26には、貯水室14、16の下流側にそれぞれ開閉弁28、30が配置されている。取水管32には緊急遮断弁40が設けられている。また、架台20には、緊急遮断弁40の側へ延び出している架台延長部22が取付けられている。緊急遮断弁40は架台延長部22に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の貯水室が形成されている水槽からの水を緊急時に遮断する緊急遮断弁を備えた水槽システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マンション、テナントビル、工場、商業施設等には、飲料水、中水などを貯留する水槽が設置されている(例えば特許文献1、2参照)。このような水槽を設置する場合、地震などの災害発生時に建屋の配管等が破損したときに水槽からの流水を遮断し、二次災害の防止や生活用水を確保する手段を設ける必要がある。従来では、この手段として、振動をいち早く感知し水槽の流出口付近で自動的に配管を閉じる緊急遮断弁が設けられていた。このような緊急遮断弁を配置する際、地震等で水槽が移動したときに水槽と一体的に移動させて、緊急遮断弁と水槽との間の配管部分から水漏れなどの事故が生じることを防止する必要がある。
【0003】
ところで、比較的大型の水槽(例えば大型のパネル水槽)では、複数の貯水室を形成し、一部の貯水室で清掃などのメンテナンスを行いつつ、残りの貯水室で通常の運転を行うシステムにしていることが多い。この場合、上述したように緊急遮断弁が水槽と一体的に移動することを確保するために、各貯水室近くにそれぞれ緊急遮断弁を配置する必要がある。このため、高価な緊急遮断弁を貯水室の数だけ配置することが必要であった。
【特許文献1】特開平10−184958号公報
【特許文献2】特開平10−332014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、緊急遮断弁の設置数を減らした水槽システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、複数の貯水室が形成されている水槽と、前記貯水室の下流側にそれぞれ設けられた複数の開閉弁と、前記開閉弁の下流側にそれぞれ接続されて合流路を形成している取水ラインと、前記合流路に設けられた緊急遮断弁と、前記水槽が移動したときに前記緊急遮断弁が前記水槽と一体的に移動するように前記緊急遮断弁を固定する固定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明では、合流路に設けられた緊急遮断弁が水槽から多少離れていても、固定手段により、水槽が移動したときには緊急遮断弁が水槽と一体的に移動する。従って、配置すべき緊急遮断弁の数を合流路の本数にまで低減させることができる。
また、上記複数の開閉弁を開にすることにより、複数の貯水室から緊急遮断弁までの配管部分が連通する。従って、複数の貯水室から緊急遮断弁までの配管部分に連通管としての機能を備えさせることができる。これにより、取水ラインとは別に連通管を設ける必要がなく、装置構成がコンパクトになる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記固定手段として、前記水槽を支える架台から延び出しかつ前記緊急遮断弁を固定している架台延長部を設けたことを特徴とする。
架台は水槽を支えているので地震時などには水槽と一体的に移動する。従って、固定手段を、架台から延び出す簡単な構成にすることができる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記固定手段として、前記水槽に当接するとともに前記緊急遮断弁の近くの配管部を固定する補強部を設けたことを特徴とする。
これにより、請求項2に記載の発明と同様、固定手段の構成を簡単な構成にすることができる。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記取水ラインは、複数の前記貯水室に連通する連通配管部と、前記連通配管部に接続して前記合流路を形成している取水管と、を備えていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明では、連通配管部が取水ラインの上流部を構成している。また、緊急遮断弁は取水管に設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記構成としたので、緊急遮断弁の設置数を減らした水槽システムとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。なお、第2実施形態以下では、既に説明した構成要素と同様のものには同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0012】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。図1、図2に示すように、本実施形態に係る水槽システム10は、中仕切壁12によって2つの貯水室14、16が形成されている水槽18を備えている。
【0013】
また、図2に示すように、水槽システム10は、水槽18を下方から支える架台20と、貯水室14、16を互いに連通させるように取水側(下流側)に設けられた連通管26と、を備えている。連通管26には、貯水室14に近い部位に開閉弁28が設けられているとともに、貯水室16に近い部位に開閉弁30が設けられている。開閉弁28、30は手動式あっても電動式であってもよい。
【0014】
また、水槽システム10は、連通管26の中央位置に接続された取水管32を有する。この構成により、貯水室14、16からそれぞれ流出した水が連通管26に両端からそれぞれ流入して取水管32で合流するようになっている。従って、連通管26と取水管32とで取水ライン34が形成されている。
【0015】
更に、水槽システム10は、取水管32に設けられた緊急遮断弁40を備えている。緊急遮断弁40にはアクチュエータ42が設けられ、図示しない制御部によって、衝撃等による移動が生じたときに弁を閉じるようになっている。
また、水槽システム10は、架台20から緊急遮断弁40の側に延び出している架台延長部22を備えている。架台延長部22は、架台20に固定された本体部46と、緊急遮断弁40の下方であって本体部46に固定されている受け台部48と、で構成される。緊急遮断弁40は受け台部48にボルト等によって固定されている。
【0016】
架台20は水槽18を支えているので地震時などには水槽18と一体的に移動する。従って、取水管32に設けられた緊急遮断弁40と水槽18とが多少離れていても、水槽18が移動した際に、架台延長部22によって緊急遮断弁40が水槽18と一体的に移動する。従って、架台20から延び出す簡素な構成の架台延長部22を設けることによって、配置すべき緊急遮断弁40の数を、合流路を形成している取水管32の本数である1つに低減させることができる。
【0017】
また、本実施形態に係る水槽システム10には、連通管26に上方から掛け渡されているUバンド50、52と、Uバンド50、52を固定するとともに架台延長部22に固定されている固定具(例えばH型鋼で構成される部材)54と、が設けられている。これにより、連通管26も架台延長部22と一体的に移動する構成になっている。
【0018】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図3に示すように、本実施形態では、第1実施形態に比べ、本体部46に代えて架台延長部の本体部66を設けるとともに、受け台部48に代えてH型鋼で構成される水槽補強材68を設けている。本体部66の緊急遮断弁側への延長長さは本体部46よりも短い。水槽補強材68はこの本体部66に固定されている。
【0019】
更に、本実施形態では、固定具54及びUバンド50、52に代えて、緊急遮断弁40の近くで連通管26を水槽補強材68に固定するUバンド70、72が設けられている。そして、水槽補強材68の水槽18側は、水槽18の中仕切壁12に水槽内側で当接している側壁凸部19に当接している。
本実施形態により、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0020】
<施工例>
本発明者は、第1実施形態の水槽システム10の一例(以下、実施例の水槽システムという)、及び、従来の水槽システムの一例(以下、従来例の水槽システムという)を施工した。
【0021】
ここで、従来例の水槽システムは、図4に示すように、実施例の水槽システムと同様に中仕切壁82によって区画された貯水室84、86を有する水槽80と、貯水室84、86の流出口付近にそれぞれ取付けられた緊急遮断弁90、92と、を備えている。更に、従来例の水槽システムは、緊急遮断弁90、92が設けられた側とは反対側で貯水室84、86を連通させる連通管96と、連通管96の開閉を行う開閉弁98と、を備えている。
【0022】
従って、従来例の水槽システムでは、2つの緊急遮断弁を設置する必要があった。その上、貯水室84、86には、それぞれ、連通管96に連通する開口100、102を、緊急遮断弁90、92にそれぞれ接続する取水管用の開口104、106とは別に形成する必要があり、合計4つの水取出し口を形成する必要があった。
【0023】
これに比べ、実施例の水槽システムは、緊急遮断弁の配置数は1つであり、装置コストの大幅な低減を図ることができた。また、連通管26に取水管32を接続することにより、貯水室14、16に形成する水取出し口を2つにまで低減させることができたとともに、装置構成をコンパクトにすることができた。
【0024】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態に係る水槽システムの全体構成を示す平面図である。
【図2】図2(A)及び(B)は、それぞれ、第1実施形態に係る水槽システムの要部を示す側面図及び平面図である。
【図3】図3(A)及び(B)は、それぞれ、第2実施形態に係る水槽システムの要部を示す側面図及び平面図である。
【図4】施工例で用いた従来例の水槽システムの全体構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 水槽システム
14 貯水室
16 貯水室
18 水槽
19 側壁凸部(補強部)
20 架台
22 架台延長部
26 連通管(連通配管部)
28 開閉弁
30 開閉弁
32 取水管(取水管、合流路)
34 取水ライン
40 緊急遮断弁
68 水槽補強材(補強部)
70 Uバンド(補強部)
72 Uバンド(補強部)
80 水槽
84 貯水室
86 貯水室
90 緊急遮断弁
92 緊急遮断弁
96 連通管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貯水室が形成されている水槽と、
前記貯水室の下流側にそれぞれ設けられた複数の開閉弁と、
前記開閉弁の下流側にそれぞれ接続されて合流路を形成している取水ラインと、
前記合流路に設けられた緊急遮断弁と、
前記水槽が移動したときに前記緊急遮断弁が前記水槽と一体的に移動するように前記緊急遮断弁を固定する固定手段と、
を備えたことを特徴とする水槽システム。
【請求項2】
前記固定手段として、前記水槽を支える架台から延び出しかつ前記緊急遮断弁を固定している架台延長部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の水槽システム。
【請求項3】
前記固定手段として、前記水槽に当接するとともに前記緊急遮断弁の近くの配管部を固定する補強部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の水槽システム。
【請求項4】
前記取水ラインは、複数の前記貯水室に連通する連通配管部と、
前記連通配管部に接続して前記合流路を形成している取水管と、
を備えていることを特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項に記載の水槽システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−150171(P2009−150171A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330368(P2007−330368)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】