説明

水槽用の支柱、及び水槽

【課題】耐久性、及び衛生性を両立可能な水槽用の支柱を提供すること。
【解決手段】水槽10の天井壁16と底壁12と連結する支柱24は、合成樹脂製の外側パイプ27の内部に、支柱24に必要とされる強度を確保した金属パイプ26を配置して合成樹脂製の取付部材28で内部を密閉した構造とされている。このため、芯材となる金属パイプ26で支柱24としての強度は十分に確保され、金属パイプ26の腐食は合成樹脂製の外側パイプ27の内部で密閉されることで防止される。支柱24の内部は中空であるが、内部に水が侵入しないので、死水を発生することがなく、衛生面に対しても優れた性能を有している。また、外側パイプ27は従来のコーティングに比較して厚いため、耐損傷性に優れ、長期耐久性が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽用の支柱、及び水槽に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、集合住宅や大規模な工場での水道水の供給設備として、FRP製等の単位パネルを順次組立ててなるいわゆる組立水槽が広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。この単位パネルは方形の面板部とこの四周に立設したフランジ部とからなり、このフランジ部を順次ボルト及びナットにて連結する構造であり、この構造の組立水槽にあっては耐震性を付与するために水槽内部に補強を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−207991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地震等の発生時には水槽内の水が大きくゆれ動き、いわゆる水槽内にスロッシングが発生し、これが成長すると天井にまで達し天井パネルを破壊させることとなる。
このスロッシングによる天井パネルの破壊を防止する手段として天井壁と底壁とを支柱で連結し、天井の補強を行う場合がある。
【0005】
合成樹脂パイプで支柱を形成した場合、補強効果を高めるためには、支柱の本数を増やす、パイプの肉厚を厚くする、等の方法が考えられるが、重量増加、現場での設置の工数が増える等の問題がある。
合成樹脂よりも強度の高い鋼材を支柱に用いることで、支柱の本数、及び設置の工数を少なくすることができる。なお、鋼材は錆を発生するため、錆の発生を防止するために、例えば合成樹脂コーティングを施す必要がある。
【0006】
しかしながら、合成樹脂コーティングにより鋼材の錆を防ぐことは理論上可能であるが、実際には、支柱の搬送途中、施工現場での施工時等に、支柱に何らかの物体が当たって合成樹脂コーティングに傷が付く場合があり、合成樹脂コーティングに傷が付いた支柱を長期に渡って使用すると、傷付いた部分から錆を発生する場合があり、衛生上好ましくない。
【0007】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、耐久性、及び衛生性を両立可能な水槽用の支柱、及び水槽を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであって、請求項1に記載の発明は、水槽の内部に用いられる水槽用の支柱であって、金属パイプと、前記金属パイプの外周側に配置される合成樹脂製の外側パイプと、前記外側パイプの両端に設けられ、前記外側パイプの端部開口を塞いで内部を密閉すると共に、前記金属パイプに連結される合成樹脂製の取付部材と、を有する。
【0009】
次に、請求項1に記載の水槽用の支柱の作用を説明する。
請求項1に記載の水槽用の支柱は、金属パイプと合成樹脂製の外側パイプとから構成され、取付部材で外側パイプの内部を密閉したため、芯材となる金属パイプで支柱としての強度を十分に確保し、金属パイプの腐食を防止することができる。合成樹脂製の外側パイプは、コーティング(従来品は1mm未満)とは異なり肉厚であるため、コーティングよりも耐損傷性に優れ、内部に水が浸入することに起因する金属パイプの腐食を防止することができ、長期耐久性が確保される。また、支柱は、内部が密閉されているので、死水を発生することがなく、衛生面でも優れている。
【0010】
この水槽用の支柱は、取付部材によって水槽の内壁面等に連結することができ、例えば、水槽の天井壁と底壁とを連結することが出来る。取付部材は金属パイプと連結されているので、剛性の高い金属パイプで水槽からの力を受けることができ、水槽を補強することができる。
なお、金属パイプは、密閉空間で保護されているため表面処理が不要である。また、金属パイプは、補強に必要な必要最小限の厚さがあれば良く、合成樹脂のみのパイプに比較して薄肉にでき、支柱の軽量化が可能となる。
【0011】
さらに、合成樹脂製の外側パイプも、汎用のPVCパイプ等を用いて切断するだけで良く、コーティング等の複雑な工程を必要としないので支柱を安価に製造することができる。また、コーティングは、コーティング不良(ピンホール、厚みのムラ等)が考えられる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の水槽用の支柱において、前記金属パイプは、厚さ1mm以上4mm以下の鋼管であり、前記外側パイプは、厚さが2mm以上6.5mm以下である。
【0013】
次に、請求項2に記載の水槽用の支柱の作用を説明する。
支柱としての強度を確保するために、鋼管の厚さは1mm以上確保することが好ましい。なお、水槽の補強としては、鋼管の厚さは4mm以下で十分であり、4mmを超えると重量が重くなり、加工性も落ち、材料費も増える。
【0014】
また、外側パイプは、厚さが最低でも2mmあればコーティングに比較して優位である。なお、厚さを2mm以上とすることで、損傷等に対して十分強くなり、耐水性を長期に渡って確保することができる。一方、外側パイプの厚さが6.5mmを超えると、耐損傷に関して必要以上の厚さとなり、重量増を招き、材料費も増える。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の水槽用の支柱において、前記取付部材は、合成樹脂で形成されると共に締結部材を挿通する取付孔を有し、前記取付部材と前記外側パイプとは溶着されている。
【0016】
次に、請求項3に記載の水槽用の支柱の作用を説明する。
取付部材を合成樹脂で形成し、外側パイプと溶着(素材の一部分を熱、溶媒等で溶解して接合する)することで、外側パイプと取付部材とが強固に固着され、かつ確実なシールが行われるので、外力等による取付部材と外側パイプとの間の隙間が発生を防止することが出来る。したがって、死水の発生防止、及び金属パイプの錆発生防止に対する信頼性が向上し、長期衛生面での信頼性が格段に向上する。
【0017】
また、支柱は、取付部材に、ボルト等の締結部材を挿通させて水槽に連結することができる。なお、金属パイプに取付孔を形成すると、外側パイプにも締結部材を挿通する孔を形成しなければならず、締結部材と孔との間の隙間から支柱内部に水が浸入してしまうため、締結部材と孔との間のシールが必要となり、構成が複雑になり、長期衛生面での信頼性も低下する。
【0018】
請求項4に記載の発明は、液体を貯留する水槽であって、前記水槽の底壁と天井壁とが請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の前記水槽用の支柱で連結されている。
【0019】
次に、請求項4に記載の水槽の作用を説明する。
請求項4に記載の水槽では、水槽の底壁と天井壁とが請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の前記水槽用の支柱で連結されることで、底壁と天井壁との補強が行われる。
【0020】
また、水槽に水が貯留されている場合、支柱内部に水が入らないので、金属パイプが腐食しない。しかも、金属パイプは、合成樹脂製の外側パイプで覆われているので、コーティングを施した金属パイプに比較して、耐損傷性が格段に優れている。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明の水槽用の支柱によれば、耐久性、及び衛生性を両立可能することができる、という優れた効果を有する。
請求項2に記載の水槽用の支柱によれば、必要最小限の重量で、耐損傷性を確保できる。
請求項3に記載の水槽用の支柱によれば、長期衛生面での信頼性が格段に向上する。
請求項4に記載の水槽によれば、耐久性、及び衛生性を両立可能することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る水槽の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】天井壁の斜視図である。
【図3】天井壁、及び底壁に取り付けられた支柱の一部を断面図にした側面図である。
【図4】取付部材の軸方向から見た正面図である。
【図5】底壁に取り付けられた取付金具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の水槽の一実施形態を図1乃至図5にしたがって説明する。
図1は、本実施形態の水槽10の概略構成を示す縦断面図(端面のみ図示)である。
図1に示すように、本実施形態の水槽10は、底壁12を構成する複数の底壁用単位パネル14、天井壁16を構成する複数の天井壁用単位パネル18、及び側壁20を構成する複数の側壁用単位パネル22をボルト、及びナット等の締結部材により連結して箱形状とした所謂組立水槽であり、底壁12と天井壁16とは、複数箇所において、後述する支柱24にて連結されている。
【0024】
図2は、水槽10の天井壁16の斜視図であり、本実施形態の天井壁用単位パネル18は、例えばFRP製で形成され、1辺が1mの正方形の面板部18Aと、その面板部18Aの周囲に一定高さのフランジ部18Bを備えている。
図3に示すように、これら天井壁用単位パネル18は、隣接するフランジ部18Bが互いに密着するようにボルト25A及びナット25Bにより締結して組立てられている。
また、側壁20、及び底壁12においても、天井壁用単位パネル18と同様に組立てられている。なお、これら水槽壁面を形成する方法は従来通りである。なお、ボルト25A及びナット25Bは、樹脂キャップで覆われている。
【0025】
図3に示すように、支柱24は、芯側に断面円形の薄肉の金属パイプ26を備え、金属パイプ26の外周側には、金属パイプ26と同じ長さで、断面円形とされた合成樹脂製の外側パイプ27が配置されている。
【0026】
金属パイプ26は、強度、加工性、重量(材料使用量)等のバランスを考慮すると厚さ1mm以上、4mm以下の鋼管が好ましいが、素材は鋼に限らず、他の金属であっても良い。なお、鋼管は、例えば、JIS規格品等が好ましい。本実施形態では、金属パイプ26として塗装、メッキ等を施していない鋼管が用いられている。
【0027】
外側パイプ27は、例えば、耐損傷性、加工性等を考慮すると、配管等に用いられる押出の塩ビパイプ(PVC)を用いることが好ましいが、塩ビ以外の合成樹脂のパイプであっても良い。本実施形態では、外側パイプ27に配管用(JIS規格品)の塩ビパイプを用いている。なお、外側パイプ27の厚さは、耐損傷性を考慮すると2mm以上確保することが好ましく、高い耐損傷性、及び重量(材料使用量)のバランスを考慮すると3〜6.5mmの範囲内が更に好ましい。
【0028】
外側パイプ27の両端には、合成樹脂製(本実施形態では塩ビ)の取付部材28が設けられている。本実施形態の取付部材28は、インジェクション成形品である。
図3、及び図4に示すように、取付部材28は、円筒部分28Aと、円筒部分28Aの一端側へ閉塞する円板状の蓋部分28Bと、蓋部分28Bから軸方向外側に向けて延びる十字に配置された4枚の取付板28Cを供えている。これら取付板28Cには、ボルトを挿通するための取付孔30が形成されている。
【0029】
円筒部分28Aには外側パイプ27の端部が挿入されており、外側パイプ27と取付部材28とが溶着されている。なお、外側パイプ27と取付部材28との接触部分を摩擦熱で溶解して溶着しても良く、外側パイプ27と取付部材28との接触部分を溶媒等で溶解して溶着しても良い。なお、外側パイプ27と取付部材28とは、溶着に限らず、接着剤を用いて接合しても良い。
外側パイプ27の両端の開口部分を取付部材28で塞ぐことにより、支柱内部は完全密閉される。
なお、金属パイプ26の端部は、取付部材28の蓋部分28Bに接触している。
【0030】
支柱24は、底壁12に対して、取付金具32で連結されている。図5に示すように、取付金具32は、3枚の板材32Aを互いに直交する向きに配置して連結した構造であり、各板材32Aにはボルトを挿通する孔32Bが形成されている。
支柱24を底壁12に連結するには、例えば、図5に示すように、4枚の底壁用単位パネル14の角部が合わさる部分に、対角方向に2つの取付金具32を配置し、図3に示すように、取付金具32をボルト34A、及びナット34Bで底壁用単位パネル14に固定し、その取付金具32に対してボルト36A、及びナット36Bで取付部材28の取付板28Cを固定する。
【0031】
また、支柱24を天井壁16に固定するには、本実施形態では、天井壁用単位パネル18のフランジ部18Bに沿って補強板38を配置して補強板38をボルト25A、及びナット25Bでフランジ部18Bに固定し、その補強板38に対してボルト42A、及びナット42B(図示せず)で取付部材28の取付板28Cを固定する。
【0032】
(作用)
次に、本実施形態の水槽10の作用を説明する。
本実施形態の水槽10では、天井壁16と底壁12とを芯材としての金属パイプ26を備えた支柱24で連結したので、天井壁16が強化され、スロッシングに対して天井壁16の耐力が向上している。
なお、水槽10からの力は、取付部材28を介して内部の金属パイプ26に伝達される。
【0033】
本実施形態の水槽10では、支柱24は、合成樹脂製の外側パイプ27の内部に、支柱24に必要とされる強度を確保した金属パイプ26を配置して合成樹脂製の取付部材28で内部を密閉したため、芯材となる金属パイプ26で支柱24としての強度は十分に確保され、金属パイプ26の腐食は合成樹脂製の外側パイプ27で防止される。したがって、金属パイプ26は防錆のための表面処理が不要である。また、金属パイプ26は必要最小限の厚さとされているので、支柱24の軽量化が可能となる。
【0034】
支柱24の内部は中空であるが、内部に水が侵入しないので、死水を発生することがなく、衛生面に対しても優れた性能を有している。
また、外側パイプ27は従来のコーティングに比較して厚いため、耐損傷性に優れ、長期耐久性が確保される。
また、本実施形態の外側パイプ27は、市販品を用いることができ、耐損傷性を向上するために金属パイプ26よりも簡単に厚肉化できる。
【0035】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、天井壁16と底壁12との連結に支柱24を用いたが、支柱24の接続対象は天井壁16、及び底壁12に限らず、側壁20等の他の部分であっても良い。
支柱24の構造は上記実施形態のものに限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記実施形態では、2つの取付金具32を用いて支柱24を底壁12に連結したが、4枚の底壁用単位パネル14の各々に取付金具32を取り付け、支柱24の取付部材28を4つの取付金具32に取り付けても良い。
上記実施形態では、支柱24の取付部材28を、天井壁用単位パネル18のフランジ部18Bに取り付けられた補強板38に固定したが、必要な強度が得られれば、取付部材28を直に天井壁用単位パネル18のフランジ部18Bに取り付けても良い。
【符号の説明】
【0036】
10 水槽
12 底壁
14 底壁用単位パネル
16 天井壁
18 天井壁用単位パネル
20 側壁
22 側壁用単位パネル
24 支柱
26 金属パイプ
27 外側パイプ
28 取付部材
28C 取付板
30 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽の内部に用いられる水槽用の支柱であって、
金属パイプと、
前記金属パイプの外周側に配置される合成樹脂製の外側パイプと、
前記外側パイプの両端に設けられ、前記外側パイプの端部開口を塞いで内部を密閉すると共に、前記金属パイプに連結される合成樹脂製の取付部材と、
を有する水槽用の支柱。
【請求項2】
前記金属パイプは、厚さ1mm以上4mm以下の鋼管であり、
前記外側パイプは、厚さが2mm以上6.5mm以下である、請求項1に記載の水槽用の支柱。
【請求項3】
前記取付部材は、締結部材を挿通する取付孔を有し、
前記取付部材と前記外側パイプとは溶着されている、請求項1または請求項2に記載の水槽用の支柱。
【請求項4】
液体を貯留する水槽であって、
前記水槽の底壁と天井壁とが請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の前記水槽用の支柱で連結されている水槽。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−247876(P2010−247876A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100985(P2009−100985)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】