説明

水流揺動ノズル体

【課題】液体を広範囲に噴出でき、容易に製造できる水流揺動ノズルを提供する。
【解決手段】吸水用の配管に球面継ぎ手を介して流入部2を接続する。この流入部2には、流入部2より内径が小さい絞り流路3が一体的に連通する。また、この絞り流路3と連通し、噴出口4を有する乱流発生部5の基端部の嵌合部6と絞り流路3とを嵌合する。さらに、乱流発生部5内の絞り流路3の先端部近傍に乱流発生体7を設ける。このような水流揺動ノズル体1では、流入部2から絞り流路3に液体が流入し、さらに、絞り流路3から乱流発生部5に液体が流入する。この絞り流路3から乱流発生部5に液体が流入する際に、乱流発生体7に液体が衝突し、液体に乱流が発生する。この乱流によって、液体が噴出口4から揺動して広範囲に噴出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水等の液体を揺動させて噴出し広範囲に散布できる水流揺動ノズル体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば踏切内の消雪や畑地の灌水等で水等の液体を散布するスプリンクラは、ノズル本体に回転機構を有し、ノズルから液体を噴出する際の水流や水圧等を利用してノズル本体を回転させ、液体を多方向に噴出する。
【0003】
このように液体を多方向に噴出することにより、液体を広範囲に噴出でき、効果的に例えば消雪や灌水等ができる。
【0004】
そして、回転自在なノズル本体を備えたスプリンクラ本体を、このスプリンクラ本体の機軸を中心に揺動自在に構成することにより、例えば液体を噴出する際の液体の流体圧力をエネルギ源として、ノズル本体を回転させるとともにスプリンクラ本体を揺動させながら液体を噴出し、より広範囲に液体を噴出できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−290079号公報(第2−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述した特許文献1のスプリンクラでは、液体を噴出する際のノズル本体の回転動作およびスプリンクラ本体の揺動動作によって広範囲に液体を噴出できるものの、ノズル本体を回転可能にし、さらに、スプリンクラ本体を揺動可能にするには、ノズル本体およびスプリンクラ本体それぞれに回転機構を設ける必要があり、構成が複雑になるので、容易に製造できない問題が考えられる。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、液体を広範囲に噴出でき、容易に製造できる水流揺動ノズル体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、流入部と、この流入部と連通した絞り流路と、この絞り流路と連通し、噴出口を有する乱流発生部と、乱流発生部の内周面から突出する乱流発生体とを具備した水流揺動ノズル体である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された水流揺動ノズル体において、乱流発生体が、先端部が乱流発生部の長手方向に沿った中心軸上に位置するものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載された発明によれば、乱流発生部に乱流発生体が設けられたことにより、前記乱流発生部内で液体に乱流を発生させ、前記乱流発生部の噴出口から前記液体を揺動させて広範囲に噴出できる。
【0010】
また、流入部と絞り流路と前記乱流発生部とを連通させ、前記乱流発生部にこの乱流発生部の内周面から突出する乱流発生体を設けるだけであるので、容易に製造できる。
【0011】
請求項2に記載された発明によれば、乱流発生体の先端部が、乱流発生部の長手方向に沿った中心軸上に位置することにより、前記乱流発生体により前記乱流発生部内でより確実に液体に乱流を発生でき、液体を揺動させて広範囲に噴出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図1を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1に示される水流揺動ノズル体1は、例えば水等の液体を噴出して散布することにより、鉄道の線路の消雪や畑地の灌水、道路や壁体の清掃等に用いられる。
【0014】
この水流揺動ノズル体1は、流入部2とこの流入部2の先端に一体的に連通した絞り流路3とを備え、絞り流路3は、先端部に噴出口4を有する乱流発生部5と連通している。さらに、乱流発生部5内の絞り流路3の先端部近傍には、乱流発生部5の内周面から突出するように乱流発生体7が設けられている。
【0015】
流入部2は、筒状の形状であり、この流入部2の基端部が図示しない球面継ぎ手を介して給水用の配管に接続され、この球面継ぎ手によって液体の流動方向が設定される。
【0016】
さらに、流入部2の先端部には筒状の絞り流路3が一体的に連通されており、この絞り流路3は、流入部2より内径が小さく形成され、流入部2から絞り流路3へ液体が流入することにより、液体が加圧され、乱流発生部5の方向へ付勢される。
【0017】
乱流発生部5は、筒状の形状であり、先端部には噴出口4が設けられ、基端部は開口されて嵌合部6が形成されている。この嵌合部6の内径は、絞り流路3の外径よりやや大きく形成され、絞り流路3と乱流発生部5の嵌合部6とが嵌合されて、絞り流路3と乱流発生部5とが連通し、流入部2の長手方向に沿った中心軸と、絞り流路3の長手方向に沿った中心軸と、乱流発生部5の長手方向に沿った中心軸と、噴出口4とが同一線上に位置する。
【0018】
このように、流入部2と絞り流路3と乱流発生部5とが連通することにより、流入部2から絞り流路3へ流動し加圧されて乱流発生部5の方向へ付勢された液体が乱流発生部5に流入する。
【0019】
そして、乱流発生部5には、絞り流路3の先端部の近傍に位置し、乱流発生部5の内周面から突出する乱流発生体7が設けられており、絞り流路3から乱流発生部5に流入する液体が乱流発生体7に衝突する。
【0020】
乱流発生部5内では、液体が乱流発生体7に衝突することにより液体が乱流発生体7の周囲に回り込むように流動し、乱流発生体7より噴出口4側に渦8が発生して液体に乱流が発生する。
【0021】
ここで、乱流発生部5の内周面から突出する乱流発生体7の先端部は、乱流発生部5の長手方向に沿った中心軸上に位置する構成とすることにより、乱流発生体7に液体が衝突して、乱流発生部5内で乱流が発生し易いので好ましいが、この構成には限定されず、乱流発生体7によって乱流発生部5内で乱流が発生できればよい。
【0022】
乱流発生体7は、ねじ形状のものであり、乱流発生部5の外側面には例えばボスやナット等で形成された乱流発生体固定部9が設けられ、乱流発生部5の側面には乱流発生体7が挿入される挿入孔10が形成されており、乱流発生体7は、乱流発生部5の外側面から乱流発生体固定部9を介して挿入孔10に挿入されて固定される。
【0023】
このように、ねじ形状の乱流発生体7を用い、乱流発生部5に乱流発生体固定部9および挿入孔10を形成した構成とすることにより、乱流発生体7を乱流発生部5に容易に設置でき、また、乱流発生体7の乱流発生部5の内周面からの突出長さが容易に調整できるので好ましい。
【0024】
また、乱流発生体7の乱流発生部5の内周面からの突出長さが調整できる構成にすることにより、乱流発生体7によって乱流発生部5内で乱流が発生する最適な条件に調整でき、より確実に乱流発生部5内で乱流を発生できるので好ましい。
【0025】
しかし、乱流発生体7としてねじ形状のもの用いることには限定されず、乱流発生体7は、乱流発生部5の内周面から突出するように設置できるものであれば、例えば棒状や板状のもの等でもよく、乱流発生部5に乱流発生体固定部9や挿入孔10を形成しない構成としてもよい。
【0026】
乱流発生部5の先端部には長手方向を有する細長形状の噴出口4が設けられている。この噴出口4の長手方向と乱流発生体7の軸方向とが垂直になるように設定されることにより、乱流発生部5内で乱流が発生した液体が噴出口4から揺動しながら噴出し易いので好ましいが、乱流発生部5から液体が揺動しながら噴出できる構成であれば、噴出口4の長手方向と乱流発生体7の軸方向とが垂直な構成には限定されず、さらに、噴出口4の形状も、細長形状に限定されない。
【0027】
なお、この実施の形態では、流入部2と絞り流路3とが一体的に形成され、絞り流路3と乱流発生部5の基端部とが嵌合された構成としたが、このような構成には限定されず、流入部2と絞り流路3と乱流発生部5とが連通していればよい。
【0028】
次に、上記第1の実施の形態の作用および効果を図2を参照しながら説明する。
【0029】
図2(a)および(b)は、水流揺動ノズル体1内における断面方向の液体の流動の様子を模式的に示したものである。
【0030】
水流揺動ノズル体1による例えば水等の液体の散水に際しては、まず、給水用の配管から流入部2へ液体を給水する。
【0031】
流入部2に流入した液体は、流入部2と連通した絞り流路3に流入し、流入部2より内径の小さい絞り流路3に流入することによって、加圧され、乱流発生部5の方向へ付勢されて乱流発生部5に流入する。
【0032】
付勢されて乱流発生部5に流入した液体は、乱流発生部5内で絞り流路3の先端部の近傍に位置する乱流発生体7に衝突する。
【0033】
乱流発生部5内で乱流発生体7に衝突した液体は、乱流発生体7の周囲に回り込むように流動し、乱流発生部5内では、乱流発生体7より噴出口4側に渦8が生じ、液体に乱流が発生する。
【0034】
特に、水流揺動ノズル体1の断面方向では、図2(a)に示されるように乱流発生体7の先端部側へ液体の主流が流動し、渦8によって主流から分かれた液体は、乱流発生体7を回り込むように、乱流発生体7の基端部側へ流動する。
【0035】
このように、液体の主流が乱流発生体7の先端部側へ流動し、主流から分かれた液体は乱流発生体7の基端部側へ流動することにより、乱流発生部5内では、乱流発生体7の先端部側の液体の密度が乱流発生体7の基端部側の液体の密度より大きくなるとともに、乱流発生体7の先端部側の圧力が乱流発生体7の基端部側の圧力より高くなる。
【0036】
したがって、乱流発生部5内では、乱流発生体7の先端部側から基端部側へ液体が流動し易い状態となるので、乱流発生体7の先端部側から基端部側へ押し出されるように基端部方向へ噴出口4から液体が噴出される。
【0037】
さらに、乱流発生体7の先端部側から基端部側の方向へ液体が押し出されるように噴出されたことにより、水流揺動ノズル体1の断面方向では、図2(b)に示されるように、乱流発生体7の先端部側の液体の密度が小さくなり、乱流発生体7の基端部側の液体の密度が乱流発生体7の先端部側の液体の密度より大きくなるとともに、乱流発生体7の先端部側の圧力より基端部側の圧力が高くなる。
【0038】
したがって、乱流発生部5内では、乱流発生体7の基端部側から先端部側へ液体が流動し易い状態となり、乱流発生体7の基端部側から先端部側へ押し出されるように先端部方向へ噴出口4から液体が噴出される。
【0039】
そして、乱流発生部5内で乱流によって水流揺動ノズル体1の断面方向の乱流発生体7の先端部側と基端部側とで圧力の変化が繰り返されることにより、乱流発生部5の噴出口4から液体を揺動させながら噴出される。
【0040】
このように、流入部2と絞り流路3と乱流発生部5とが連通し、乱流発生部5に乱流発生体7が設けられたことにより、乱流発生部5に流入する液体を乱流発生体7に衝突させて、乱流発生部5内で液体に乱流を発生させ、乱流発生部5内の乱流発生体7の先端部側と基端部側との圧力を変化させられるので、乱流発生部5の噴出口4から液体を揺動させながら広範囲に噴出できる。
【0041】
また、乱流発生部5において、絞り流路3の先端部近傍に位置するように乱流発生体7を設けることにより、乱流発生部5内で液体液体に乱流を発生させて、揺動させながら噴出する構成なので、水流揺動ノズル体1に例えば回転機構等を設ける必要がなく、容易に製造できる。
【0042】
乱流発生体7の先端部が、乱流発生部5の長手方向に沿った中心軸上に位置するように、乱流発生体7を設置することによって、乱流発生部5内で液体を乱流発生体7に衝突させ、乱流発生部5の乱流発生体7より噴出口4側に渦8を発生させて、より確実に液体に乱流を発生できる。したがって、乱流発生部5内において、断面方向の乱流発生体7の先端部側と基端部側とで圧力の変化が起こり易くなり、液体をより確実に揺動させて広範囲に噴出できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の水流揺動ノズル体の実施の形態を示す断面図である。
【図2】(a)、(b)は、同上水流揺動ノズルにおける液体の流動の様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 水流揺動ノズル体
2 流入部
3 絞り流路
4 噴出口
5 乱流発生部
7 乱流発生体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入部と、
この流入部と連通した絞り流路と、
この絞り流路と連通し、噴出口を有する乱流発生部と、
乱流発生部の内周面から突出する乱流発生体と
を具備したことを特徴とする水流揺動ノズル体。
【請求項2】
乱流発生体は、
先端部が乱流発生部の長手方向に沿った中心軸上に位置する
ことを特徴とする請求項1記載の水流揺動ノズル体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−90203(P2009−90203A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262861(P2007−262861)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(391035669)株式会社イーエス・ウォーターネット (7)
【出願人】(303059071)独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 (64)
【Fターム(参考)】