説明

水浄化システムの運転方法及び水浄化システム

【課題】 膜モジュールの汚れや目詰まりを効果的に防止し、長期間安定した濾過運転のできる水浄化システムの運転方法を提供する。
【解決手段】 本発明の水浄化システムの運転方法は、膜モジュールを用いる水浄化システムにおいて、水を水供給ポンプによって加圧し、膜モジュールに供給して膜濾過を行う水浄化システムの運転方法であって、前記水供給ポンプでの加圧後であって膜モジュール供給前の水中に超微細気泡を発生させ、該超微細気泡を含有する液を膜モジュールに供給することを特徴とする。水供給ポンプに供する水が、原水及び/又は膜モジュールからの濃縮循環水であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水浄化システムの運転方法及び水浄化システム、より詳しくは、濾過運転エネルギーを低減でき、膜モジュールの目詰まりを効果的に防止できる水浄化システムの運転方法及び水浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の凝集−沈殿−砂濾過−塩素滅菌工程を経る水浄化システムに代わって、膜分離技術を適用した水浄化システムが注目されている。たとえば、限外濾過膜や精密濾過膜を用いたクロスフロー濾過が試行されている。クロスフロー濾過とは、分離膜の一方の膜面(原水供給側分離膜面)に原水を供給し、分離膜を透過した透過水を分離膜の他方の膜面(透過水側分離膜面)から回収する際、原水供給側分離膜面に平行に原水を流して濾過を行うことにより、分離膜表面に付着した原水に含まれていた濁質物質をその膜表面からはぎ取る効果を有する濾過方法をいう。しかし、クロスフロー濾過によっても、濾過時間の経過によって原水中に含まれる濁質物質が分離膜表面に積層して、分離膜の目詰まりを生ずる。
【0003】
この目詰まりは水浄化システムの濾過運転エネルギーを上昇させるだけでなく、運転中断の原因となるため、この目詰まりを解消あるいは予防する方法として、一般に逆圧洗浄(以下、「逆洗」と称する場合がある)が行われており、分離膜の長期使用を可能とするため、原水濁度、透過水量、透過水圧等の各種変化量等に基づいて逆洗頻度、逆洗時間等を変化させる方法が提案されている。たとえば、クロスフロー濾過における逆洗としては、原水濁度に依存した定期的な逆洗を行う方法、水質と濾過量の変動による濾過量低下傾向時に膜の逆洗条件を変更させる方法、原水濁度の変動に応じて逆洗の頻度を調節し、分離膜を閉鎖させる危険を排除し、かつ用水の回収率を高める方法などが知られている。これらの方法は、原水側分離膜面に濁質物質が付着した場合には、その目詰まりによって原水供給側の原水圧が上昇するため、その上昇した圧力の数倍の圧力を逆洗圧として用い、濁質物質の剥離を実施しようとするものである。従って、分離膜には常に高圧が負荷されることとなり、分離膜の耐用年数が短縮されるおそれがある。しかも、高圧負荷は分離膜のみならず、使用されるポンプにも及ぶ。
【0004】
このため、逆洗効率の向上、ならびに高価な分離膜モジュールの使用条件を緩和し、かつ各種水浄化システムに容易に対応できる逆洗方法の開発が求められている。特許文献1には、逆洗の直前又は直後に濾過過程の休止過程を設けること、殺菌剤を含む逆洗水を用いることが開示されている。特許文献2には、逆洗処理工程、次亜塩素酸塩注入浸漬工程、硫酸注入浸漬工程を有し、浸漬洗浄時間が10〜60分である濾過膜の洗浄方法が開示されている。しかし、これらの方法は薬液を使用することが必須であるとともに、操作が煩雑であり、必ずしも工業的に効率のよい水浄化システムとは言えない。
【0005】
微細気泡を用いる膜洗浄システムとして、特許文献3には、逆浸透膜の洗浄運転時に微細気泡発生装置を起動させる膜浄化システムが開示されているが、膜洗浄時に微細気泡を発生させる方法であり、膜濾過運転の効率はさほど改善されない。特許文献4には、微細気泡を用いた中空糸膜モジュールの洗浄方法が開示されているが、膜洗浄時に膜濾過水に気体を過飽和させて微細気泡を発生させる方法であり、膜濾過時に原水中に発生させていないために充分な洗浄効果が得られないと同時に膜濾過水を洗浄水として用いるために濾過回収率が小さくなってしまう。
【0006】
非特許文献1には、窒素ボンベ、制御ユニット、圧力容器、マイクロバブル発生装置、ポンプ及びスターラーで構成される装置を用い、塩濃度1%の精製水が入った圧力容器内に、窒素ガスで圧力をかけ、スターラーで回転させ、ポンプを駆動させてマイクロバブルを塩水中に発生させ、RO膜を透過させ真水を回収する方法が提案されている。しかし、この方法では、空気が圧力容器の上方に溜まるため、これを除去し且つ液流量を安定に保つため、圧力容器内に窒素ボンベから窒素ガスを供給して余剰のバブルを排出するとともに、圧力容器内の圧力を制御ユニットで制御している。このため、装置が複雑化するとともに、操作も煩雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−197053号公報
【特許文献2】特開2005−87887号公報
【特許文献3】特開2006−263501号公報
【特許文献4】特開2003−251157号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】混相流学会年会講演会 2009(熊本大学) 講演論文集、第218頁〜第219頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、膜モジュールの汚れや目詰まりを効果的に防止し、効率的で且つ長期間安定した高濾過速度の濾過運転のできる水浄化システムの運転方法及び水浄化システムを提供することにある。
本発明の他の目的は、煩雑な操作を必要とせず、また薬品を用いなくても、長期間安定した高濾過速度の濾過運転のできる水浄化システムの運転方法及び水浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、膜モジュールを用いる水浄化システムにおいて、原水(又は膜モジュールからの濃縮循環水)を水供給ポンプで加圧した後に、該原水(又は膜モジュールからの濃縮循環水)中に超微細気泡を発生させ、前記供給ポンプによって前記原水(又は膜モジュールからの濃縮循環水)を膜モジュールに供給して膜濾過を行うと、超微細気泡の作用により、膜モジュールの汚れや目詰まりを効果的に防止でき、逆洗の頻度及び時間を大幅に低減できること、そのため、煩雑な操作を行うことなく、効率的で且つ長期間安定した高濾過速度の濾過運転のできることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、膜モジュールを用いる水浄化システムにおいて、水を水供給ポンプによって加圧し、膜モジュールに供給して膜濾過を行う水浄化システムの運転方法であって、前記水供給ポンプでの加圧後であって膜モジュール供給前の水中に超微細気泡を発生させ、該超微細気泡を含有する液を膜モジュールに供給することを特徴とする水浄化システムの運転方法を提供する。
【0012】
この水浄化システムの運転方法において、水供給ポンプに供する水が、原水及び/又は膜モジュールからの濃縮循環水であってもよい。
【0013】
また、水供給ポンプに供する水が、清浄水及び/又は膜モジュールからの透過水であり、これに超微細気泡を含有させた液を、被洗浄機器又は装置の洗浄に使用した後、使用後の洗浄液を膜モジュールに供給してもよい。
【0014】
また、水に気体を混合して得られる気液混合流体を、水供給ポンプによる高圧により縮小部・最挟部・拡大部を有する流路を流通させ、前記流路内で形成される前記気液混合流体の高速せん断流の流速と圧力を変化させて、主に50μm以下のサイズの超微細気泡を発生させてもよい。
【0015】
水供給ポンプによって水を加圧して膜モジュールによる膜濾過を行う際の濾過圧力が、0.01MPa(ゲージ圧)以上であるのが好ましい。
【0016】
膜モジュールにおける膜濾過方式としてはクロスフロー濾過方式が好ましい。また、膜モジュールとしては、例えば、限外濾過膜モジュール、精密濾過膜モジュール、ナノ濾過膜モジュール、および逆浸透膜モジュールが挙げられる。膜モジュールとしては、なかでも、限外濾過膜モジュール、精密濾過膜モジュールが好ましい。
【0017】
上記運転方法においては、膜モジュールに対して、膜モジュールからの透過水又は別途供給される清浄水により、間欠的な逆洗を施してもよい。
【0018】
本発明は、また、膜モジュールを用いる水浄化システムにおいて、水を膜モジュールに供給する水供給ポンプ、水の供給ライン内に気体を供給する気体供給手段、及び前記水中に気体を混合して得られる気液混合流体を、前記水供給ポンプによる高圧により縮小部・最挟部・拡大部を有する流路を流通させ、前記流路内で形成される前記気液混合流体の高速せん断流の流速と圧力を変化させて、水中に超微細気泡を発生させる超微細気泡発生手段を備えていることを特徴とする水浄化システムを提供する。
【0019】
この水浄化システムにおいて、水供給ポンプに供する水は、原水及び/又は膜モジュールからの濃縮循環水であってもよい。
【0020】
また、水供給ポンプに供する水が、清浄水及び/又は膜モジュールからの透過水であり、これに超微細気泡を含有させた液により洗浄される被洗浄機器又は装置を備えており、被洗浄機器又は装置の洗浄後の液が膜モジュールに供給されてもよい。
【0021】
また、気体供給手段が水供給ポンプの直前に設けられているのが好ましい。
【0022】
この水浄化システムには、さらに、膜モジュールを間欠的に逆洗する洗浄手段が備えられていてもよい。
【0023】
この水浄化システムには、さらに、原水の夾雑物を除去するプレフィルターが設けられていてもよい。
【0024】
なお、本発明の水浄化システムの運転方法には、透過水(濾過水;製品)を得ることなく、単に膜モジュールを洗浄する方法は含まれない。また、本発明の水浄化システムには、透過水(濾過水;製品)を得ることなく、単に膜モジュールを洗浄する装置は含まれない。本発明には、透過水(濾過水)を被洗浄機器又は装置の洗浄に使用し、洗浄に使用した後の水を膜モジュールで浄化する方法およびシステムは含まれる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の水浄化システムの運転方法及び水浄化システムによれば、膜モジュールの汚れや目詰まりを効果的に防止でき、効率的で且つ長期間安定した高濾過速度の濾過運転を行うことができる。また、逆洗の頻度及び時間を低減でき、煩雑な操作を必要とせず、また薬品を用いなくても、長期間安定した高濾過速度の濾過運転が可能である。さらに、濾過水の回収率を高めることができるので、逆洗の回数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の水浄化システムの運転方法の一例を示す概略説明図(概略フロー図)である。
【図2】本発明の水浄化システムの運転方法の他の例を示す概略説明図(概略フロー図)である。
【図3】本発明の方法で使用される超微細気泡発生装置の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の方法で使用される送水ポンプと超微細気泡発生装置とが一体化した装置(超微細気泡発生装置内蔵送水ポンプ)の一例を示す部分断面図(送液分散部の断面図)である。
【図5】図4の超微細気泡発生装置内蔵送水ポンプの収納室の部分拡大図(断面図)である。
【図6】本発明の方法で使用される送水ポンプと超微細気泡発生装置とが一体化した装置(超微細気泡発生装置内蔵送水ポンプ)の他の例を示す断面図である。
【図7】図6の超微細気泡発生装置内蔵送水ポンプの部分拡大図(断面図)である。
【図8】本発明の方法で使用される送水ポンプと超微細気泡発生装置とが一体化した装置(超微細気泡発生装置内蔵送水ポンプ)のさらに他の例を示す断面図である。
【図9】実施例1における運転日数と実フラックスの関係を示すグラフである。
【図10】実施例2における経過時間と濾過流量の関係を示すグラフである。
【図11】本発明の水浄化システムの運転方法のさらに他の例を示す概略説明図(概略フロー図)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の水浄化システムの運転方法では、水を水供給ポンプによって加圧し、前記水供給ポンプでの加圧後であって膜モジュール供給前の水中に超微細気泡を発生させ、該超微細気泡を含有する液を膜モジュールに供給して膜濾過を行う。
【0028】
本発明の一つの態様では、原水及び/又は膜モジュールからの濃縮循環水(以下、「膜モジュールからの濃縮循環水」を、単に「濃縮循環水」と称する場合がある)を水供給ポンプによって加圧し、前記水供給ポンプでの加圧後であって膜モジュール供給前の原水及び/又は膜モジュールからの濃縮循環水中に超微細気泡を発生させ、該超微細気泡を含有する液を膜モジュールに供給して膜濾過を行い、水を清浄化する。
【0029】
膜濾過に付す原水としては、特に限定されず、淡水(河川水、湖沼水等)、海水などが挙げられる。
【0030】
また、本発明の別の態様では、清浄水及び/又は膜モジュールからの透過水(濾過水)を水供給ポンプによって加圧し、前記水供給ポンプでの加圧後であって膜モジュール供給前の清浄水及び/又は膜モジュールからの透過水(濾過水)中に超微細気泡を発生させるとともに、こうして得られる超微細気泡含有液を被洗浄機器又は装置の洗浄に使用し、得られた使用後の洗浄液を膜モジュールに供給して膜濾過を行い、水を清浄化する。
【0031】
被洗浄機器又は装置としては、タンク、反応器、配管、熱交換器、蒸留塔、抽出塔、充填塔、容器、膜モジュール、フィルター、紡糸ノズルなどが挙げられる。
【0032】
本発明において、濾過膜としては、特に限定されず、限外濾過膜、精密濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜などが挙げられる。限外濾過(UF)膜とは分子量500〜30万の物質(分子サイズとして0.001〜0.03μm程度)を分離対象とする分離膜であり、通常のナノ濾過膜の範疇も含む。精密濾過(MF)膜は粒径0.02〜2μmの粒子を分離対象とする分離膜である。従って、限外又は精密濾過膜の孔径は0.001〜2μmであるが、より好ましくは、0.01〜1μmである。また、逆浸透(RO)膜は塩類や分子量500程度までの物質を分離対象とする分離膜(分子サイズとして1Å〜0.001μm程度)であり、例えば海水の淡水化に使用される。また、限外濾過膜の透過水を逆浸透膜に通すこともある。
【0033】
膜モジュールとしては、中空糸型濾過膜モジュール、平板モジュール、チューブラーモジュール、スパイラルモジュール等の何れであってもよいが、逆洗が比較的容易に行える点から、中空糸型濾過膜モジュールが好ましい。中空糸型濾過膜モジュールにおける中空糸膜の内径は、中空糸膜の内側に気泡径50μm以下の微細気泡を効果的に通過させるとともに、汚染物質の閉塞の防止、中空糸充填率の向上という観点から、0.1〜2.0mm程度の範囲が好ましく、0.5〜1.0mmの範囲がさらに好ましい。なお、膜モジュールには、メンブレンフィルターによる濾過器も含まれる。
【0034】
分離膜の材質としては、一般的なもの、例えば、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、芳香族ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、セラミックなどを使用できる。これらの中でも、限外濾過膜の材質としては酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、芳香族ポリアミドが好ましく、精密濾過膜の材質としてはポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、セラミックが好ましい。逆浸透膜の材質としては、酢酸セルロース、芳香族ポリアミドなどが好ましい。
【0035】
中空糸膜としては、酢酸セルロース系中空糸膜、ポリスルホン系中空糸膜、ポリアクリロニトリル系中空糸膜、ポリフッ化ビニリデン中空糸膜等を挙げることができるが、これらの中でも、低い膜間圧力で運転することができ、膜のファウリングも抑制しやすいことから、酢酸セルロース系中空糸膜が好ましい。また、外表面側の細孔より内表面側の細孔の方が小さい孔径のものが内圧式としては好適である。
【0036】
本明細書において、超微細気泡とは、発生時において気泡径50μm以下の気泡をいう。気泡径は、発生時において50μm以下が好ましく、更に好ましくは発生時において気泡径10μm以下である。超微細気泡は、発生時において例えば10μm程度であっても時間とともに徐々に小さくなる現象がある。本発明においては、膜モジュールに流入させる超微細気泡含有水(超微細気泡含有原水等)中に含まれる気泡径2〜50μmの気泡の個数(パーティクルカウンタで測定される個数)は、20〜30℃において、例えば100個/mL以上、好ましくは300個/mL以上、さらに好ましくは1000個/mL以上であり、特に2000個/mL以上が好ましい。超微細気泡の使用により、膜モジュールの膜表面の汚れや膜の孔の目詰まりを防止できる。特に、膜の孔の目詰まり防止効果が大きい。なお、膜モジュールに流入させる超微細気泡含有水(超微細気泡含有原水等)には、気泡径50μm以上の気泡が含有されていてもよい。このような気泡も、膜モジュールの膜表面の汚れの防止等に寄与する。なお、超微細気泡は、膜表面の汚れをはぎ取り、泡の表面にその汚れを吸着させ、再び膜表面に付着させない働きをするものと推測される。
【0037】
超微細気泡源としての気体を水(原水又は濃縮循環水等)中に混入させた気液混合流体に高速せん断を与えたり、或いは該気液混合流体を間隙の変化する流路を流通させ、流路間隙の変化によって該気液混合流体の流速と圧力を変化させて、主に50μm以下のサイズの気泡を発生させる超微細気泡発生装置(例えば、発生する全気泡の70%以上が気泡径50μm以下の気泡である超微細気泡発生装置)を用いることができる。超微細気泡発生方法としては、一般に、薬品を用いる方法、気体を過飽和に溶解させてから圧力低下させて発生させる方法、流体に気体を混合させて高速せん断を与える方法、気液混合流体の流路間隙を変化させて該気液混合流体の流速と圧力を変化させる方法などがある。超微細気泡の発生方法が異なると、発生した超微細気泡の性質は大きく異なることが一般に知られている(大成博文:マイクロバブルのすべて、日本実業出版 p1−285、2006)。超微細気泡の発生方法としては、水(原水又は濃縮循環水等)中に気体を混入させて高速せん断を与える方法や、気液混合流体の流路間隙を変化させて該気液混合流体の流速と圧力を変化させる方法が好ましい。高速せん断を与える方法としては、液体と気体を円筒形状の中で超高速旋回させることによって気泡を発生させる方法、気液混合流体を高速で環状スリットに通過させて気泡を発生させる方法などがある。特に、気液混合流体を環状スリットに通過させて噴出させることにより、液中に超微細気泡を発生させる環状スリットを備えた装置が好適である。この環状スリットは、内径側から外径側に向かって間隙最小部から拡大するように設けられた流路拡大部を備えているのが好ましい(この場合、気液混合流体は内径側から外径側に向かって流れる)。なお、環状スリットは、外径側から内径側に向かって間隙最小部から拡大するように設けられた流路拡大部を備えているものであってもよい(この場合、気液混合流体は外径側から内径側に向かって流れる)。気液混合流体を環状スリットに通過させて噴出させる際、遠心翼を備えた回転体の高速回転で発生する高圧を利用して環状スリットを通過させてもよい。また、気液混合流体の流路間隙を変化させることにより該気液混合流体の流速と圧力を変化させる方法としては、例えば、気液混合流体を高圧により縮小部・最挟部・拡大部を有する流路(例えば、環状スリット)を流通させる方法などが挙げられる。なお、本発明では、気体による圧力制御を行うことなく、超微細気泡を含む水(原水及び/又は膜モジュールからの濃縮循環水等)を膜モジュールに供給することができる。
【0038】
本発明では、水供給ポンプ(原水供給ポンプ及び/又は濃縮循環水供給ポンプ等)での加圧後(より具体的には水供給ポンプのポンプインペラの回転による加圧後)において、超微細気泡を発生させつつ、前記水供給ポンプによる加圧膜濾過を行うことが重要である。水供給ポンプにより圧力が高められた状態で発生した超微細気泡は、膜を通過する際の圧力降下により膨張するとともに、高圧下で溶解した気体が膜(ならびに膜孔)を流通する際の圧力降下により極めて多数の超微細気泡が発生するため、膜モジュールの汚れや目詰まりを効果的に防止できる。限外又は精密濾過膜モジュールを用いる場合、水供給ポンプの吐出側の圧力(すなわち、膜濾過時の濾過圧力)は、例えば0.01MPa(ゲージ圧)以上[例えば、0.01〜0.1MPa(ゲージ圧)]、好ましくは0.02MPa(ゲージ圧)以上[例えば、0.02〜0.08MPa(ゲージ圧)]である。膜モジュールとして逆浸透膜モジュールを用いる場合には、水供給ポンプの吐出側圧力は、限外又は精密濾過膜モジュールの場合の100倍程度高いため、水供給ポンプの吐出側の圧力は、例えば1MPa以上[例えば、1〜7MPa(ゲージ圧)]であり、高圧ポンプが必要である。また、気体による圧力制御を行う必要がなく、通常水供給ポンプのみの加圧により、超微細気泡を発生させ且つ該超微細気泡を含有する膜供給水を膜モジュールに供給するので、複雑な装置、煩雑な操作を行うことなく水を浄化することができる。
【0039】
超微細気泡源となる気体(空気等)の導入位置(気体供給手段の設置箇所)は、膜モジュール及び超微細気泡を発生させる装置(超微細気泡発生手段)の上流側であれば特に限定されないが、導入された気体と水(原水等)とを水供給ポンプの回転羽根などで効率よく混合できる点で、前記水供給ポンプの上流側(ポンプインペラの回転による加圧前)であるのが好ましく、特に、前記水供給ポンプの直前(ポンプインペラの回転による加圧直前)であるのが好ましい。気体の供給量は、水供給ポンプの吐出流量1m3/hあたり、例えば0.005〜0.50L/min(標準状態)、好ましくは0.03〜0.30L/min(標準状態)、さらに好ましくは0.05〜0.30L/min(標準状態)である。気体の供給量は、少なすぎれば超微細気泡の数が少なくなり、多すぎれば超微細気泡の大きさが50μm以上のものの割合が多くなり、いずれも膜モジュールの汚れや目詰まりを効果的に防止できなくなる。なお、気体の供給量が少なくても、超微細気泡が発生すれば、ある程度の効果が得られる。
【0040】
膜モジュールにおける膜濾過方式は、モジュールの構造等に応じて適宜選択でき、全量濾過方式、クロスフロー濾過方式の何れであってもよいが、膜供給水中の懸濁物質やコロイドが膜面に堆積する現象を抑制できる点で、内圧式のクロスフロー濾過方式が特に好ましい。
【0041】
クロスフロー濾過方式の場合、水(原水等)の膜面線速が大きいほど膜面への付着物質の堆積が抑制されるので高い濾過流束(フラックス)が得られ、膜汚染防止の点で好ましいが、高膜面線速となるほどランニングコストが増加することになる。本発明によれば、超微細気泡を含有する水(原水等)を膜モジュールに供給するため、水(原水等)の膜面線速をさほど大きくしなくても膜面や孔への付着物質の堆積等を抑制できる。そのため、エネルギーの低減、ランニングコストの低減が可能となる。本発明において、クロスフロー濾過方式における水(原水等)の膜面線速(クロスフロー速度)は、例えば0.02m/s以上0.5m/s未満であり、好ましくは0.05m/s以上0.2m/s未満である。
【0042】
本発明の方法では、膜面への付着物質の堆積を防止し、長期間膜濾過運転を行うため、膜モジュールに対し、該膜モジュールからの透過水又は別途供給される清浄水により間欠的な逆洗を施すのが好ましい。逆洗は、圧力を制御しつつ、予め定められた周期で行うのが好ましい。逆洗の頻度は、0.5〜3時間に1回であることが好ましい。逆洗の時間は0.5〜2分が好ましい。この際、濾過回収率は90%以上、より好ましくは95%以上に設定すると良い。濾過回収率は、次式で表させる。本発明の方法では、濾過回収率を高めることができるため、逆洗回数(頻度)を減らすことができる。
濾過回収率=100×(膜濾過流量−逆洗水量)/膜濾過流量
【0043】
なお、逆洗に用いる洗浄水には、必要に応じて、次亜塩素酸ナトリウム等の殺菌剤などの薬剤を添加してもよい。
【0044】
本発明によれば、超微細気泡を含有する水(原水等)を膜モジュールに供給するため、膜面の付着物質の堆積を抑制できるだけでなく、膜の孔に懸濁物質等が詰まる目詰まり現象を効果的に防止できるので、逆洗の頻度及び時間を大幅に低減することができ、濾過回収率の向上、操作性の向上、エネルギーコストの低減等の点から、工業的意義は極めて大である。
【0045】
本発明の方法では、膜モジュール(例えば、限外濾過膜モジュール、精密濾過膜モジュール)の透過水側に該濾過膜の孔径よりも大きい気泡が確認されることが好ましい。超微細気泡は発生時において、例えば気泡径10μmであっても時間とともに徐々に収縮し、やがてナノサイズにまで収縮すると、この気泡は膜細孔内部を透過することができ膜細孔内部の洗浄にも寄与することができる。従って、超微細気泡は膜細孔内を透過することが好ましく、実際に超微細気泡を膜に透過させると膜の透過側の膜表面には気泡の生成が確認される場合がある。
【0046】
図1は、本発明の水浄化システム(設備)及び水浄化システムの運転方法の一例を示す概略説明図(概略フロー図)である。本発明の水浄化システム(設備)及び水浄化システムの運転方法は図1に示すものに限定されるものではなく、必要に応じて、凝集剤による凝集処理、活性炭処理、その他の分離膜処理等の公知の水浄化手段を組み合わせることができる。
【0047】
原水供給ライン1からプレフィルター2を経て原水タンク3に送水貯留された原水(被処理水)は、原水供給ライン4から送水ポンプ(原水供給ポンプ)6により膜モジュール11に供給される。送水ポンプ6の上流側には空気を原水中に導入するエア吸引口(気体供給手段;空気供給口)5が設けられている。送水ポンプ6の下流側(吐出側)には超微細気泡発生装置7(後に詳述する)が設けられている。原水供給ライン4は複数設けてもよく、そのうちの1つを送水ポンプ6と超微細気泡発生装置7の間に接続してもよい。プレフィルター2は原水の夾雑物を除去する目的で取り付けられている。プレフィルター2は原水タンク3より下流に設置してもよい。プレフィルターの濾過精度(濾過目開き)は、超微細気泡発生装置において高速せん断が与えられる間隙あるいはスリット幅よりも小さいことが望ましく、例えば5〜200μm、好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは50〜100μmである。プレフィルターの形式としては、特に限定されないが、オートストレーナー、カートリッジフィルター、メンブレンフィルターなどを使用できる。
【0048】
超微細気泡発生装置7では、エア吸引口5から供給される空気により原水中に超微細気泡が多数生成する。超微細気泡発生装置7で調製された超微細気泡含有原水は、バルブ8及び9を経て、縦置きに設置された膜モジュール(中空糸膜モジュール;内圧式のクロスフロー濾過方式)11の下端に設けられた超微細気泡含有原水供給口10から膜モジュール11に供給される。なお、原水には、原水中の懸濁質(SS)濃度や懸濁質の大きさ等に応じ、必要により凝集剤による凝集処理を施すことができる。
【0049】
膜モジュール11は、ハウジング内に中空糸膜束が収容されたものであり、超微細気泡含有原水供給口10、透過水取り出し口18、濃縮液排出口12を有している。超微細気泡含有原水供給口、透過水取り出し口は少なくとも1つ備えていればよい。なお、全量濾過の場合には、濃縮液排出口12は設けなくてもよい。超微細気泡含有原水供給口10は、逆圧洗浄の際には、逆圧洗浄排水口として使用される。中空糸膜束は、所要数の中空糸膜の両端側が接着剤等で一体化されると共に、中空糸膜の両端部が開口されたもので、ハウジングの内壁面に固定されている。超微細気泡含有原水供給量の調整はバルブ8により行う。
【0050】
膜モジュール11において、所定条件下で膜濾過された透過水は、バルブ19を経て、透過水ライン20を通じて透過水タンク21に送られ貯水される。濃縮液は、バルブ14を操作することにより、濃縮液循環流量およびクロスフロー速度を調整し、濃縮循環水ライン17を通じて送水ポンプ6に循環される。濃縮液はその一部または全部を排水ライン16を通じて廃棄してもよい。15a,15bはバルブである。濃縮循環水ライン17の途中に、濃縮循環水ポンプと超微細気泡発生装置及び空気供給口を設けて濃縮循環水中に超微細気泡を発生させ、それを膜モジュール11に供給することもできる。
【0051】
膜濾過運転時には、濾過能力を維持するために、定期的に水又は空気による逆圧洗浄を行うことが望ましい。逆圧洗浄媒体として水を用いる場合には、逆圧ポンプ22を作動させることにより、透過水タンク21内の透過水を逆圧洗浄ライン25を通じて膜モジュール11の透過水取り出し口18から圧入して、膜(中空糸膜)を逆圧洗浄する。逆圧洗浄時の流量は、濾過流量の1〜5倍であることが好ましい。逆圧洗浄は次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて行ってもよい。その場合は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液タンク23内の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を薬液ポンプ24により逆圧洗浄ライン25内に供給する。
【0052】
なお、超微細気泡を用いた膜濾過運転は長期間連続して原水中への気体供給を行ってもよいが、必要に応じて、気体の供給を停止する停止期間を定期的に設けてもよい。原水中に積極的に気体を供給しなくても原水に溶存した気体や微量の混入気体により、超微細気泡が発生する場合がある。気体の供給停止期間は、例えば、膜濾過運転を1日〜30日程度行った後、0.1日〜5日程度設けることができる。
【0053】
また、超微細気泡を用いた膜濾過運転において、膜濾過運転を間欠的に停止する期間、あるいは濾過流束(フラックス)を下げる期間を定期的に設けてもよい。これらを設けることにより、超微細気泡による膜の洗浄効果が高まるために、より長期間安定した濾過運転を行うことができる。膜濾過運転を停止する期間としては、例えば、膜濾過運転を1日〜30日程度行った後、0.1日〜1日程度設けることができる。
【0054】
上記の超微細気泡発生装置7について、以下にさらに詳しく説明する。
【0055】
図3は超微細気泡発生装置の一例を示す断面図である。この例では、超微細気泡発生装置7は、直径と比較して高さの低い円筒状の筐体71と、該筐体71の内部に水平に設置されている上下2つの円盤74,75とで構成されている。筐体71の下部には気液混合物流入口72が設けられており、上部には気液混合物流出口73が設けられている。2つの円盤のうち下に位置する円盤74はドーナッツ状であり、筐体71の内部の底面に設置されている。2つの円盤のうち上に位置する円盤75は円盤74とほぼ同径の円板状であり、円盤74を覆うように設置されている。円盤74と円盤75の対向面周縁部の周方向には、送水ポンプ6により圧力がかけられた気液混合物を通過させて外方向に噴出させる環状スリットが形成されている。気液混合物の噴出方向は、気液混合物流入口から円盤74と円盤75とで区画される領域に流入する気液混合物の流入方向に対して直交する方向である。圧力がかけられた気液混合物が環状スリットを通過する際、超微細気泡が多数生成し、この超微細気泡を含んだ気液混合物(超微細気泡混合液)が気液混合物流出口73から流出し、膜モジュール11に供給される。図3中の矢印は気液混合物の流れを示す。気液混合物流出口73が筐体71の上部に設けられているため、気体が滞留せず、超微細気泡混合液がスムーズに膜モジュール6に供給される。このように、本発明では、超微細気泡発生装置はできる限り気体が滞留しない構造を有しているのが好ましい。
【0056】
超微細気泡発生装置7では、例えば環状スリットの構造、気液混合物の環状スリットにおける通過速度、気体と液体の供給割合等を調整することにより、超微細気泡混合液中の(超)微細気泡の気泡径、気泡径分布、及び気泡の個数を制御することができる。気泡の個数、気泡径、気泡径の分布等は、前記のように、パーティクルカウンターを用いて測定することができる。
【0057】
環状スリットは、内径側から外径側に向かって間隙最小部77から拡大するように設けられた流路拡大部78を備えているのが好ましい。環状スリットがこのような構造を有すると、気液混合物が高速で通過して噴出することにより、流路間隙の変化によって、気液混合物中に超微細気泡が発生する。これは、気液混合物が内径側から外径側に向かって間隙最小部77から連続的に拡大する流路(流路拡大部78)を通過する際に、気液混合物の流速が変化して圧力が変化するためである。
【0058】
上記好ましい環状スリットの構造においては、少なくとも内径側から外径側に向かって間隙最小部77から拡大するように設けられた流路拡大部78を備えている限り特に限定されず、例えば、間隙最小部77の内径側に、間隙最小部に向かって連続的に流路が縮小する流路縮小部76を有していてもよい。また、環状スリットは、内径側から外径側に向かって段階的に流路断面積が増える構造、内径側から外径側に向かって段階的に流路断面積が減少する構造、内径側から外径側に向かって連続的に流路断面積が増える構造、内径側から外径側に向かって連続的に流路断面積が減少する構造を有していてもよい。本発明では、超微細気泡を効率よく発生させる観点から、環状スリットは、内径側から外径側に向かって間隙最小部から連続的に流路断面積が増える流路拡大部を備えることが好ましい。
【0059】
環状スリットの流路拡大部78における拡がり角度(断面での拡がり角度)θ2は、超微細気泡発生効率の点から、流路縮小部76における縮小角度(断面での縮小角度)θ1より小さくする場合が多いが、θ2はθ1と等しいか又はそれより大きくてもよい。
【0060】
上記のような構造を有する超微細気泡発生装置7を用いることにより、気泡径2〜50μmの気泡の個数(パーティクルカウンタで測定される個数)が、20〜30℃において、例えば100個/mL以上(好ましくは300個/mL以上、さらに好ましくは1000個/mL以上、特に2000個/mL以上)である超微細気泡含有原水を得ることができる。また、上記のような構造を有する超微細気泡発生装置7を用いた場合、気泡径2〜5μmの気泡の個数(パーティクルカウンタで測定される個数)が、20〜30℃において、例えば100個/mL以上(好ましくは300個/mL以上、さらに好ましくは1000個/mL以上、特に2000個/mL以上)である超微細気泡混合液を得ることができる。
【0061】
上記の例では、送水ポンプと超微細気泡発生装置とが別個の機器、装置として用いられているが、送水ポンプと超微細気泡発生装置、あるいは前記の2装置とエア吸引口とは一体化していてもよい。以下に、送水ポンプと超微細気泡発生装置とが一体化した装置について、説明する。なお、下記の図4〜図8で示される送水ポンプと超微細気泡発生装置とが一体化した装置を用いた場合も、上記と同様、20〜30℃において、例えば100個/mL以上(好ましくは300個/mL以上、さらに好ましくは1000個/mL以上、特に2000個/mL以上)である超微細気泡含有原水を得ることができ、気泡径2〜5μmの気泡の個数(パーティクルカウンタで測定される個数)が、20〜30℃において、例えば100個/mL以上(好ましくは300個/mL以上、さらに好ましくは1000個/mL以上、特に2000個/mL以上)である超微細気泡混合液を得ることができる。
【0062】
図4は、送水ポンプと超微細気泡発生装置とが一体化した装置(以下、「超微細気泡発生ポンプ」或いは「超微細気泡発生装置内蔵送水ポンプ」と称する場合がある)の一例を示す部分断面図(送液分散部の断面図)である。図5は、図4の送液ポンプと超微細気泡発生装置とが一体化した装置の収納室の部分拡大図(断面図)である。
【0063】
この超微細気泡発生ポンプは、液体中に供給された気体を超微細気泡として分散させるものであり、キャンドモータと送液分散部とを備えている。図4ではキャンドモータ部は省略されている。30はキャンドモータの回転軸であり、31は前部軸受箱(前部の軸受収納固定部位)である。
【0064】
筐体34は、前部軸受箱31にボルト42にて液密に締結固定されている。筐体34と前部軸受箱31は、収納室35を画定する。筐体34には、液体供給口39及び液体流出口38が設けられてる。液体供給口39は、キャンドモータの回転子の回転軸30の延在位置に設けられ、液体流出口38は、筐体34の回転軸30に対し交差する方向に位置する面に設けられている。
【0065】
収納室35内には、インペラ(ポンプインペラ)43が収納される。インペラ43は、キャンドモータの回転軸30の先端にボルト44により締結される。図4に示すように、インペラ43は、クローズタイプの遠心インペラで構成され、インペラ本体部45内部に、インペラ本体部の一部を構成する円板の表面に送液用の遠心羽根46を備えた構成となっている。また、インペラ本体部45の裏面側には、循環羽根47が設けられている。循環羽根47は、遠心羽根46に比較して大径に構成されている。
【0066】
インペラ43は、収納室35内において、前部軸受箱31のインペラ本体部45の対向面32とインペラ43との間に隙間が生じるように構成されている。インペラ本体部45によって、収納室35内は、送液空間36と循環空間37に区画される。送液空間36は、インペラ43の遠心羽根46によって、収納室35内の流体を液体流出口38側に搬送し、循環空間37では、供給された液体が、インペラ43の遠心羽根46及び循環羽根47によって生じた圧力差によって、インペラ本体部45の遠心方向及び求心方向に循環する。
【0067】
前部軸受箱31のインペラ本体部45の対向面32とインペラ43との間の隙間には、分散部48が設けられる。分散部48は、前部軸受箱31の対向面32に当接して配置される。分散部48は、図5に示すように、2枚の円盤49,50で構成された分散部本体を備え、これら円盤49,50間には、円盤49,50の(ほぼ)全周にわたって分散流路51(環状スリット)が形成されている。
【0068】
2枚の円盤49,50がそれぞれ対向する側の対向面には、図5に示すように、内径側から外径側に向かって拡開するようにテーパー部が対向して形成されており、流路51には、外径側から内径側に向かうに従って流路51の間隙が縮小していく流路縮小部51aが設けられる。また、この流路縮小部51aの内径側で流路51の隙間が外径側から内径側に向かうに従って拡大していく流路拡大部51bが形成され、これら流路縮小部51aと流路拡大部51bとの間に流路51の間隙が最も小さくなる間隙最小部51cが設けられている。このように、環状スリットは、外径側から内径側に向かって間隙最小部から拡大するように設けられた流路拡大部を備えているのも好ましい。
【0069】
前部軸受箱31を貫通する管路として設けられた気体供給流路40は、循環空間37の回転軸30の近接位置に開口する。
【0070】
次に、図4、図5を用いて超微細気泡発生ポンプの動作を説明する。
【0071】
キャンドモータの回転軸30が回転すると、インペラ43も一体に回転し、液体を液体供給口39より取り入れる。インペラ43が回転することにより、液体が回転軸から遠心方向に送られ、一部が液体流出口38から流出する。
【0072】
インペラ43の回転により収納室35内において圧力分布が生じる。圧力分布は、回転軸30から離れるにつれて圧力が高くなり、図5に示すように、回転軸30から遠い側の領域A2の方が、回転軸30に近い側の領域A1よりも高圧になる。
【0073】
液体流出口38から流出しなかった液体は、インペラ43の循環空間37へ移動する。循環空間37では、気体供給流路40から取り込まれた空気と液体とが存在している。循環空間37の圧力は、回転軸30近傍の流体の領域A3の圧力よりも高いため流体は回転軸に近づくように移動する。このとき、気液混合物は、分散部48の分散流路51に設けられた流路縮小部51aおよび流路拡大部51bを順に通過して回転軸30に近づく方向に移動する。そして、気液混合物が流路縮小部51aを経て流路拡大部51bを通るとき、流路隙間の変化により気液混合物は流速が変化して圧力が変化し、気体が微細化され、超微細気泡が発生する。すなわち、ポンプのインペラ43での加圧後において、超微細気泡が発生する。
【0074】
この気体微細化は、主として、液体の流速、気体の量、間隙最小部51cおよび流路拡大部51bの隙間寸法などによって決定される。例えば、気体の流速がある閾値以下であると、気泡の径が小さくならず十分な微細化が行われない。この場合、微細化される気泡の径は、主として、間隙最小部51cおよび流路拡大部51bの隙間寸法によって調整することができる。一方、液体の流速が閾値以上になると、気泡の径は小さくなって十分な微細化が行われる。分散流路51に設けられた流路拡大部51bがベンチュリ管と同様の効果を呈し、気体を伴った液体が分散部48の流路51内を通過することにより、気体を微細化することができる。分散流路(環状スリット)51の流路拡大部51bにおける拡がり角度(断面での拡がり角度)は、超微細気泡発生効率の点から、流路縮小部51aにおける縮小角度(断面での縮小角度)より小さくすることが多いが、前記拡がり角度は前記縮小角度と同じか又はそれより大きくてもよい。
【0075】
インペラ本体部45の裏面側に設けられた循環羽根47は、放射流を発生させ、循環空間37内の気液分散流体を回転軸30側から遠心方向に移動させる。上記の通り、循環空間37内の回転軸近傍には、分散部48を通過して微細化された気液分散流体が存在しているため、この流体が回転軸30側から遠心方向に移動する。
【0076】
また、循環羽根47の回転により、回転軸30に近傍の領域A3と循環羽根47の外側領域A4における流体の圧力が高くなるため、インペラ本体部45の循環空間37内の流体が遠心方向及び求心方向へ循環流動する。また、循環羽根の回転による遠心圧力場の形成により、気体供給流路40の出口は負圧になり、空気の自吸が促進される。
【0077】
なお、本実施形態では、循環空間37内の流体の循環を促進するため、分散部48のインペラに近い側に設けられている円盤50には、回転軸側へ伸びる仕切り部50aが設けられている。円盤50によって、循環空間37内を仕切ることにより(37a、37b)、仕切り部50aを含む円盤50とインペラの本体部に対する対向面との空間、すなわち、分散流路51では、流体は求心方向へ移動しやすくなり、また、循環羽根47が位置するインペラの本体部45と円盤50との空間では、流体が遠心方向へ移動しやすくなる。このような構成を採用することにより、循環空間37内の流体の循環が促進され、また、流体が分散部48をより効率よく通過することとなるため、超微細気泡の発生を促進することができる。
【0078】
本実施形態にかかる超微細気泡発生ポンプは、収納室35内で遠心羽根46によって加圧された流体の一部が遠心羽根46の背後で循環流を起こす機構を有している。また、循環流路に空気を自吸させることができ、その自給させた空気を遠心羽根46の流れに合流させて、液体流出口38から流出させることができる。また、循環流の途中に分散部を備え、気泡の微細化を行うことができるため、液体の搬送と微細気泡の生成とを1つの装置で行うことができる。また、収納室35内に循環羽根47を備えることで、加圧条件下での使用であっても、差圧を発生させることができ、気泡の微細化を行うことができる。
【0079】
なお、上記の例では、循環羽根47が2つの円盤49,50で区画された領域の外側に設けられているが、循環羽根47を2つの円盤49,50で区画された領域の内側に設けるとともに、2つの円盤49,50で区画された領域内に流体が流入する流路を設けることもできる。このような実施形態では、上記の例とは逆に、2つの円盤49,50で区画された領域内に流入した流体(ポンプのインペラ43で加圧された流体)が分散流路(環状スリット)を、流路縮小部、間隙最小部、流路拡大部の順に通過して、前記領域の外側に(遠心方向に)噴出し、超微細気泡が発生する。
【0080】
また、上記の例では、分散部48がインペラ43の近傍に設けられているが、インペラ43で加圧された後に気液混合物中に超微細気泡を発生させる(例えば、環状スリットを通過させることにより)機構を有する限り、分散部48はインペラ43から離隔した位置に設けられていてもよい。
【0081】
図6は本発明の方法で使用される送水ポンプと超微細気泡発生装置とが一体化した装置(超微細気泡発生ポンプ;超微細気泡発生装置内蔵送水ポンプ)の他の例を示す断面図である。図7は、図6の超微細気泡発生装置内蔵送水ポンプのポンプ部及び分散部(超微細気泡発生部)の部分拡大図(断面図)である。図6、図7において、矢印は液体、気液混合物の流れ方向を示す。図6において、「MB発生部」とは分散部(超微細気泡発生部)を意味する。
【0082】
この超微細気泡発生ポンプは、液体中に供給された気体を超微細気泡として分散させるものであり、モータ部(キャンドモータ部)とポンプ部と超微細気泡発生部とからなっている。230はキャンドモータの回転軸である。
【0083】
ポンプ部には、液体供給口239、気体供給流路240及びエア抜きバルブ260が設けられてる。液体供給口239は、キャンドモータの回転子の回転軸230の延在位置に設けられ、エア抜きバルブ260は、回転軸230に対し交差する方向に位置する面に設けられている。259はバルブである。
【0084】
ポンプ部内には、インペラ(ポンプインペラ)243が収納される。インペラ243は、キャンドモータの回転軸230の先端に取り付けられている。図6、図7に示すように、インペラ243は、クローズタイプの遠心インペラで構成され、インペラ本体部内部に、インペラ本体部の一部を構成する円板の表面に送液用の遠心羽根246を備えた構成となっている。インペラ243の高速回転により、液体供給口239付近は負圧となり、空気が気体供給流路240から自吸される。
【0085】
液体供給口239及び気体供給流路240からポンプ部内に流入した液体と気体(空気)は遠心羽根246により混合され、遠心方向に移行した後、ポンプ部とモータ部の間に設けられた超微細気泡発生部に流入する。超微細気泡発生部は、図7に示すように、2枚の円盤249,250で構成された分散部本体を備え、これら円盤249,250間には、その周縁部において、円盤249,250の(ほぼ)全周にわたって分散流路251(環状スリット)が形成されている。また、2枚の円盤249,250で区画された領域内において、回転軸230に回転体252が設けられており、回転体252は円盤252aと複数の遠心翼252bにより構成されている。
【0086】
2枚の円盤249,250がそれぞれ対向する側の対向面には、図7に示すように、内径側から外径側に向かって拡開するようにテーパー部が対向して形成されており、流路251には、内径側から外径側に向かうに従って流路251の間隙が縮小していく流路縮小部251aが設けられる。また、この流路縮小部251aの外径側で流路251の隙間が内径側から外径側に向かうに従って拡大していく流路拡大部251bが形成され、これら流路縮小部251aと流路拡大部251bとの間に流路251の間隙が最も小さくなる間隙最小部251cが設けられている。
【0087】
次に、図6、図7を用いて超微細気泡発生ポンプの動作を説明する。
【0088】
キャンドモータの回転軸230が回転すると、インペラ243も一体に回転し、液体を液体供給口239から、気体(空気)を気体供給流路240から取り入れる。インペラ243が回転することにより、気液混合物が回転軸から遠心方向に送られ、さらに超微細気泡発生部に移動する。
【0089】
超微細気泡発生部では、回転軸230の高速回転により、気液混合物は2枚の円盤249,250で区画された領域内に流入し、回転体252の遠心翼252bの回転により、分散部248の分散流路251に設けられた流路縮小部251aおよび流路拡大部251bを順に通過する。そして、気液混合物が流路縮小部251aを経て流路拡大部251bを通るとき、流路隙間の変化により気液混合物は流速が変化して圧力が変化し、気体が微細化され、超微細気泡が発生する。すなわち、ポンプのインペラ243での加圧後において、超微細気泡が発生する。
【0090】
この気体微細化は、前述したように、主として、液体の流速、気体の量、間隙最小部251cおよび流路拡大部251bの隙間寸法などによって決定される。分散流路(環状スリット)251の流路拡大部251bにおける拡がり角度(断面での拡がり角度)は、超微細気泡発生効率の点から、流路縮小部251aにおける縮小角度(断面での縮小角度)より小さくすることが多いが、前記拡がり角度は前記縮小角度と同じか又はそれより大きくてもよい。
【0091】
図8は本発明の方法で使用される送水ポンプと超微細気泡発生装置とが一体化した装置(超微細気泡発生ポンプ;超微細気泡発生装置内蔵送水ポンプ)のさらに他の例を示す断面図である。図8において、矢印は液体、気液混合物の流れ方向を示す。また、「MB発生部」とは分散部(超微細気泡発生部)を意味する。
【0092】
この超微細気泡発生ポンプは、液体中に供給された気体を超微細気泡として分散させるものであり、モータ部(キャンドモータ部)とポンプ部と超微細気泡発生部とからなっている。330はキャンドモータの回転軸である。ポンプ部と超微細気泡発生部はモータ部を挟んでその両側に設けられている。
【0093】
ポンプ部には、液体供給口339、気体供給流路340が設けられてる。液体供給口339は、キャンドモータの回転子の回転軸330の延在位置に設けられいる。359はバルブである。
【0094】
ポンプ部内には、インペラ(ポンプインペラ)343が収納される。インペラ343は、キャンドモータの回転軸330の先端に取り付けられている。図8に示すように、インペラ343は、クローズタイプの遠心インペラで構成され、インペラ本体部内部に、インペラ本体部の一部を構成する円板の表面に送液用の遠心羽根346を備えた構成となっている。インペラ343の高速回転により、液体供給口339付近は負圧となり、空気が気体供給流路340から自吸される。
【0095】
液体供給口339及び気体供給流路340からポンプ部内に流入した液体と気体(空気)は遠心羽根346により混合され、その一部はキャンドモータの冷却用として用いられ(冷却ラインを循環した後、ポンプ部に戻る)、残りは遠心方向に移行した後、中間配管370を通って超微細気泡発生部に流入する。超微細気泡発生部は、図8に示すように、2枚の円盤349,350で構成された分散部本体を備え、これら円盤349,350間には、その周縁部において、円盤349,350の(ほぼ)全周にわたって分散流路351(環状スリット)が形成されている。また、2枚の円盤349,350で区画された領域内において、回転軸330に回転体352が設けられており、回転体352は円盤352aと複数の遠心翼352bにより構成されている。
【0096】
2枚の円盤349,350がそれぞれ対向する側の対向面には、図8に示すように、内径側から外径側に向かって拡開するようにテーパー部が対向して形成されており、流路351には、内径側から外径側に向かうに従って流路351の間隙が縮小していく流路縮小部351aが設けられる。また、この流路縮小部351aの外径側で流路351の隙間が内径側から外径側に向かうに従って拡大していく流路拡大部351bが形成され、これら流路縮小部351aと流路拡大部351bとの間に流路351の間隙が最も小さくなる間隙最小部351cが設けられている。なお、超微細気泡発生部には、エア抜きバルブ360が、回転軸330に対し交差する方向に位置する面に設けられている。
【0097】
次に、図8を用いて超微細気泡発生ポンプの動作を説明する。
【0098】
キャンドモータの回転軸330が回転すると、インペラ343も一体に回転し、液体を液体供給口339から、気体(空気)を気体供給流路340から取り入れる。インペラ343が回転することにより、気液混合物が回転軸から遠心方向に送られ、中間配管370を通ってMB発生部に移動する。
【0099】
MB発生部では、回転軸330の高速回転により、気液混合物は2枚の円盤349,350で区画された領域内に流入し、回転体352の遠心翼352bの回転により、分散部348の分散流路351に設けられた流路縮小部351aおよび流路拡大部351bを順に通過する。そして、気液混合物が流路縮小部351aを経て流路拡大部351bを通るとき、流路隙間の変化により気液混合物は流速が変化して圧力が変化し、気体が微細化され、超微細気泡が発生する。すなわち、ポンプのインペラ343での加圧後において、超微細気泡が発生する。
【0100】
この気体微細化は、前述したように、主として、液体の流速、気体の量、間隙最小部351cおよび流路拡大部351bの隙間寸法などによって決定される。分散流路(環状スリット)351の流路拡大部351bにおける拡がり角度(断面での拡がり角度)は、超微細気泡発生効率の点から、流路縮小部351aにおける縮小角度(断面での縮小角度)より小さいのが好ましい。
【0101】
図2は本発明の水浄化システムの運転方法の他の例を示す概略説明図(概略フロー図)である。なお、図中、108はバルブ、109は流量調整バルブ、128は圧力計、129は流量計を示す。
【0102】
原水供給ライン101から原水タンク103に送水貯留された原水(被処理水)は、原水供給ライン104から超微細気泡発生ポンプ(送水ポンプと超微細気泡発生装置とが一体化した装置)106により膜モジュール(濾過器)111に供給される。超微細気泡発生ポンプ106には空気を原水中に導入するエア吸引口(気体供給手段;空気供給口)105が設けられている。エア吸引口105はポンプインペラによる加圧前、加圧後の何れに設けられていてもよいが、自吸できる点からは、ポンプインペラによる加圧前に設けられているのが好ましい。原水供給ライン104は複数設けてもよい。原水の夾雑物を除去する目的で適宜な位置にプレフィルターを取り付けてもよい。超微細気泡発生ポンプ106としては、例えば、前記したものを使用できる。
【0103】
超微細気泡発生ポンプ106により原水中に超微細気泡が多数生成する。超微細気泡発生ポンプ106で調製された超微細気泡含有原水は、バルブV−4及び流量調整バルブFCVを経て、縦置きに設置された膜モジュール(濾過器)111の側部に設けられた超微細気泡含有原水供給口110から膜モジュール(濾過器)111に供給される。
【0104】
膜モジュール(濾過器)111は、円筒状のハウジング内に円筒状の濾過フィルター126が収容されたものであり、超微細気泡含有原水供給口110、濾過水取り出し口118、濃縮液排水口112を有している。超微細気泡含有原水供給口、濾過水取り出し口は少なくとも1つ備えていればよい。濾過フィルター126には焼結金網製円筒型エレメント等のエレメントが収容されている。
【0105】
膜モジュール(濾過器)111において、所定条件下で膜濾過された濾過水は、濾過水取り出し口118、バルブV−6を経て、濾過水及び濃縮液排水ライン116より回収される。
【0106】
膜濾過運転時には、濾過能力を維持するために、定期的に逆圧洗浄を行うことが望ましい。逆圧洗浄は、例えば、膜濾過運転の状態で、バルブV−6を閉止することで濾過フィルター内部を昇圧し、昇圧完了後、バルブV−4を閉止し、濾過フィルター126を加圧状態のまま、密閉した後、バルブV−7、V−8を一気に開け、フィルター内部の圧力を一次側(濃縮液排水側)方向へ脱圧し、エレメントを洗浄し、洗浄液(濃縮液を含む)を濃縮液排水口112から濃縮液排水ライン113を通じ、バルブV−8を経て、濾過水及び濃縮液排水ライン116を通じて排出する。このように、膜濾過運転において定期的に逆圧洗浄を行うことで、フィルターエレメントの目詰まりを抑制しながら濾過運転を長期間継続できる。
【0107】
膜濾過運転を長期間行うと、フィルター内部に濁質が蓄積されるため、そのような濁質の定期的な排出が必要となる。その場合には、定期的に、濾過水をバルブV−9側より濾過水ライン120を通じて濾過水タンク121へ貯留した後、バルブV−1とV−2を切り替え、バルブV−7,V−8を開の状態にして、濾過水を超微細気泡発生ポンプ106を用いて、濾過フィルター126へ送液することで、フィルター内部の一次側(濃縮液側)の水を更新して、フィルター内部の原水の過剰な濁質濃度上昇を防止する。濾過水を濾過フィルター126へ送液する経路については、V−4側から送り込むフラッシング方式とV−5側から送り込む逆流方式の2つの方式を使い分けることができる。
【0108】
図11は本発明の水浄化システムの運転方法のさらに他の例を示す概略説明図(概略フロー図)である。なお、図中、108はバルブ、109は流量調整バルブ、128は圧力計、129は流量計を示す。
【0109】
この例は、前述した、清浄水及び/又は膜モジュールからの透過水(濾過水)を水供給ポンプによって加圧し、前記水供給ポンプでの加圧後であって膜モジュール供給前の清浄水及び/又は膜モジュールからの透過水(濾過水)中に超微細気泡を発生させるとともに、こうして得られる超微細気泡含有液を被洗浄機器又は装置の洗浄に使用し、得られた使用後の洗浄液を膜モジュールに供給して膜濾過を行い、水を清浄化する態様の一例である。
【0110】
膜モジュール(濾過器)111からバルブV−6、V−9を経て、濾過水ライン120を通じて濾過水タンク121に貯留された濾過水は、バルブV−10を経て、濾過水循環ライン117から超微細気泡発生ポンプ(送水ポンプと超微細気泡発生装置とが一体化した装置)106により、バルブV−3からタンク供給液ライン132を通じて、被洗浄機器又は装置である撹拌機131付きのタンク130に供給される。超微細気泡発生ポンプ106には空気を原水中に導入するエア吸引口(気体供給手段;空気供給口)105が設けられている。エア吸引口105はポンプインペラによる加圧前、加圧後の何れに設けられていてもよいが、自吸できる点からは、ポンプインペラによる加圧前に設けられているのが好ましい。超微細気泡発生ポンプ106としては、例えば、前記したものを使用できる。
【0111】
超微細気泡発生ポンプ106により原水中に超微細気泡が多数生成する。このため、タンク130に供給される洗浄液は気泡径の極めて小さい超微細気泡を含み、タンク130の微細な箇所の汚染に対しても優れた洗浄効果が発揮される。なお、前記濾過水の一部又は全部は清浄水で置き換えることができる。
【0112】
タンク洗浄後の液は膜モジュール供給液ライン133を通じて、バルブV−4及び流量調整バルブFCVを経て、縦置きに設置された膜モジュール(濾過器)111の側部に設けられた超微細気泡含有原水供給口110から膜モジュール(濾過器)111に供給される。
【0113】
膜モジュール(濾過器)111は、円筒状のハウジング内に円筒状の濾過フィルター126が収容されたものであり、超微細気泡含有原水供給口110、濾過水取り出し口118、濃縮液排水口112を有している。超微細気泡含有原水供給口、濾過水取り出し口は少なくとも1つ備えていればよい。濾過フィルター126には焼結金網製円筒型エレメント等のエレメントが収容されている。
【0114】
膜モジュール(濾過器)111において、所定条件下で膜濾過された濾過水は、濾過水取り出し口118、バルブV−6、V−9を経て、濾過水ライン120を通じて濾過水タンク121に貯留される。
【0115】
膜濾過運転時には、濾過能力を維持するために、定期的に逆圧洗浄を行うことが望ましい。逆圧洗浄は、例えば、膜濾過運転の状態で、バルブV−6を閉止することで濾過フィルター内部を昇圧し、昇圧完了後、バルブV−4を閉止し、濾過フィルター126を加圧状態のまま、密閉した後、バルブV−7、V−8を一気に開け、フィルター内部の圧力を一次側(濃縮液排水側)方向へ脱圧し、エレメントを洗浄し、洗浄液(濃縮液を含む)を濃縮液排水口112から濃縮液排水ライン113を通じ、バルブV−8を経て、濾過水及び濃縮液排水ライン116を通じて排出する。フィルター内部の急激な圧力降下が起こる際に、濾過装置内部(特に、濾過フィルターの濾材エレメントや分離膜に蓄積した堆積物の内部)にしみ込んだ液中に存在する超微細気泡が膨張し、堆積物が破砕する。これに加えて、原液側(一次側)より圧力降下が生じるため、濾過液側(二次側)の圧力も一次側へ逃げることから、濾過液の逆流が生じ、破砕された堆積物は濾材又は分離膜表面から流れに沿って引き離される。このため、膜表面の堆積物(タンク等の汚れ)が膜表面から効率よく且つ確実に剥離されることになる。
【0116】
上記方法によれば、超微細気泡を含む洗浄液でタンクを洗浄するので、超微細気泡の働きによりタンクの隅々まで清浄化できる。また、洗浄後の液(使用済みの洗浄液)は、濾過フィルターにより浄化され、浄化された濾過水はまた洗浄液として再利用される。さらに、濾過水を用いるので、ポンプが閉塞したりしない。また、上記の逆圧洗浄においては、超微細気泡の働きにより、濾過フィルターの詰まりを効果的に防止できる。このため、タンク等の機器又は装置の洗浄を極めて効率よく行うことができる。
【0117】
なお、本発明の水浄化システムの運転方法は、使用前の膜モジュールの前処理にも適用できる。すなわち、上記水浄化システムの運転方法において、原水の代わりに透過水等の浄化された水を水供給ポンプにより膜モジュールに供給し、水供給ポンプでの加圧後に、超微細気泡を発生させつつ、該清浄水を加圧濾過することにより、膜表面の接触角が変化し(親水化し)して、汚れにくい膜モジュールを得ることができる。
【実施例】
【0118】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0119】
実施例1
図1に示す水浄化システム(設備)により、膜濾過運転を行った。原水(揖保川の河川水)を、原水供給ライン1を通じ、プレフィルター2(オートストレーナー)を経て原水タンク3に送液した。プレフィルター2として、セントラルフィルター工業(株)製の製品名「ジュラクリーン」(濾過精度100μm)を用いた。原水タンク3の原水を原水供給ライン4を通じ、送水ポンプ6を用いて、送水ポンプ6の下流側にて超微細気泡を発生させつつ、縦置きに設置された中空糸膜モジュール11[UF膜、分画分子量:150000(孔径0.01μm)、膜材質:酢酸セルロース、膜形状:内圧型中空系、膜内径:0.8mm、膜外径:1.3mm、有効膜面積:5m2、モジュール外形寸法:1126mm、純水透過性能:3000L/hr・0.1MPa・25℃]に供給した。ラインの途中、送水ポンプ6の上流側に設けたエア吸引口5から空気を0.13L/min0(標準状態)の流量で原水中に混合させ、空気を混合させた原水を送水ポンプ6により該送水ポンプ6の下流側に設けられた超微細気泡発生装置7に供給し、超微細気泡発生装置7で超微細気泡含有原水を調製した。送水ポンプ6の吐出側の圧力(濾過圧力)は0.05MPa(ゲージ圧)であり、送水ポンプ6のサクション側の圧力は−0.01MPa(ゲージ圧)であった。濾過方式は内圧式のクロスフロー方式(クロスフロー速度:0.05m/s)である。
【0120】
超微細気泡発生装置7としては、図3に示されるような、上下にそれぞれ気液混合物流出口73及び気液混合物流入口72を備えた円筒状の筐体71と、該筐体71の内部に水平に設置されている上下2つの円盤74,75とで構成され、2つの円盤の対向面周縁部に周方向に設けられ、筐体71の内部の気液混合物を通過させて噴出させることにより気液混合物中に超微細気泡を発生させる環状スリットが形成されている装置を用いた。
【0121】
各部位の寸法は以下の通りである。筐体71の直径:208.3mmφ、円盤75の直径:198mmφ、環状スリットの間隙最小部77のギャップ:0.2mm、気液混合液流入口72及び気液混合液流出口73の直径:38.6mmφ、環状スリットの流路拡大部78における拡がり角度(断面での拡がり角度)θ2:5°、環状スリットの流路縮小部76における縮小角度(断面での縮小角度)θ1:90°である。
【0122】
中空糸膜モジュール11において加圧膜濾過された透過水は、透過水ライン20を通じて透過水タンク21に送液し貯水した。濃縮液は運転開始より23日まではライン16を通じて全量排水し、それ以降は濃縮循環水ライン17を通じて送水ポンプ6に循環した。この際、透過水に次亜塩素酸ナトリウムを注入して有効塩素濃度3〜5ppmに調整した次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて、1時間おきに30秒間の逆洗を行った。23日経過後、濃縮液を全量循環するラインに切り替えて膜濾過運転を23日〜51日間行った。実フラックスの変化を測定し、20℃換算フラックス[m/日]の経日変化として図9に示す。なお、運転開始後7日まではフラックスを2.0〜2.5m/日の条件で運転を行った。運転開始後14日〜23日、および38日〜51日の間は、それぞれエア吸引口5からの空気供給を停止、および空気流量が若干不安定であった。いずれの場合も一定の空気量が供給されていなかったが、フラックスは若干低下したものの、急激な低下はなかった。51日経過した時点で、超微細気泡発生装置7を取り外し、短管(通常の配管)に取り替え、51日〜60日の間は超微細気泡が発生しない条件下で膜濾過運転を行った。60〜71日は運転を停止し、71日からは再度短管を超微細気泡発生装置7に取り替え、運転を続行した。
その結果、超微細気泡発生装置を稼働した場合には、フラックス2.5〜3.0m/dayという高水準を維持できた。超微細気泡発生装置を短管に取り替えた場合には、フラックスが急激に低下した。
【0123】
超微細気泡発生装置7稼働時(空気供給時)の微細気泡の発生個数をパーティクルカウンターで測定したところ、気泡径2〜50μmの気泡の個数は2000個/mL以上であった。
【0124】
実施例2
図2に示す水浄化システム(設備)により、膜濾過運転を行った。濾過フィルター126として、SUS特殊焼結金網製円筒型エレメント(セントラルフィルター工業社製、商品名「PM−A−C65*40*250−GL」、濾材寸法Φ65/Φ40×250L、濾過面積0.05m2)を円筒状のハウジング内に充填したものを用いた。超微細気泡発生ポンプ106として図8に示すポンプを用いた。また、原水として、水に生化学用カオリン(和光純薬工業社製)(擬似汚泥)を100重量ppm添加したものを用いた。
(1)超微細気泡発生ポンプ106により超微細気泡を含有させた原水を、バルブV−4側から濾過フィルター内の特殊エレメントで濾過し、バルブV−6より濾過水を取得する(バルブV−2、V−5、V−7、V−8は閉)[濾過運転]。
(2)濾過運転の状態で、バルブV−6を閉止することで、濾過フィルター内部を昇圧する[加圧工程]。
(3)昇圧完了後、バルブV−4を閉止し、フィルターを加圧状態のまま、密閉した後、バルブV−7、V−8を一気に開け、フィルター内部の圧力を一次側(濃縮液排水側)方向へ脱圧し、特殊エレメント洗浄を行う[脱圧工程〜復帰]。
上記(1)〜(3)の操作を繰り返すことで、膜濾過運転を行った。上記(1)〜(3)までの運転の1サイクルを3分とした。また、比較のため、超微細気泡発生ポンプ106にエア吸引口105からエアを供給しないこと以外は同様にして膜濾過運転を行った(超微細気泡を含有しない原水を濾過フィルターに供給した例)。
超微細気泡を添加した場合と添加しなかった場合のそれぞれについて、濾過流量と経過時間の関係を示すグラフを図10に示した。図10において、バブルありとは超微細気泡を添加した場合をいい、バブルなしとは超微細気泡を添加しなかった場合をいう。
濾過流量の測定値は、1サイクル終了時毎に実施する脱圧工程後の運転再開直後の流量を面積流量計で読み取った値である。
図10に見られるように、運転初期の流量低下は何れの運転でも発生したが、その後の濾過流量の低下は、超微細気泡添加原水を用いた場合が、超微細気泡を添加しない原水を用いた場合と比較して軽微であり、且つ安定した運転がなされた。図10に示した経過時間範囲内で、スタート直後に発生する流量低下部分を除いた場合、超微細気泡添加原水を用いたときの濾過流量の低下率は約10%であった。これに対し、超微細気泡を添加しない原水を用いたときの濾過流量の低下率は約35%であった。
【符号の説明】
【0125】
1,101 原水供給ライン
2 プレフィルター
3,103 原水タンク
4,104 原水供給ライン
5,105 エア吸引口
6 送水ポンプ(水供給ポンプ)
7 超微細気泡発生装置
8,108 バルブ
9 バルブ
10,110 超微細気泡含有原水供給口
11 膜モジュール
12,112 濃縮液排出口
13 逆圧洗浄排水ライン
14 バルブ
15a,15b バルブ
16 排水ライン
17 濃縮循環水ライン
18 透過水取り出し口
19 バルブ
20 透過水ライン
21 透過水タンク
22 逆洗用ポンプ
23 次亜塩素酸ナトリウム水溶液タンク
24 薬液ポンプ
25 逆圧洗浄ライン
106 超微細気泡発生ポンプ
109 流量調整バルブ
111 膜モジュール(濾過器)
113 濃縮液排水ライン
116 濾過水及び濃縮液排水ライン
117 濾過水循環ライン
118 濾過水取り出し口
120 濾過水ライン
121 濾過水タンク
126 濾過フィルター
127 原水戻りライン
128 圧力計
129 流量計
130 タンク
131 撹拌機
132 タンク供給液ライン
133 膜モジュール供給液ライン
30,230,330 キャンドモータの回転軸
31 前部軸受箱
32 前部軸受箱のインペラ本体部45の対向面
33 潤滑液排出口
34 筐体
35 収納室
36 送液空間
37 循環空間
38,238,338 液体流出口
39,239,339 液体供給口
40,240,340 気体供給流路
41 潤滑液管路
42 ボルト
43,243,343 インペラ
44 ボルト
45 インペラ本体部
46,246,346 遠心羽根
47 循環羽根
48,248,348 分散部
49,249,349 円盤
50,250,350 円盤
50a 仕切り部
51,251,351 分散流路
51a,251a,351a 流路縮小部
51b,251b,351b 流路拡大部
51c,251c,351c 間隙最小部
259,359 バルブ
260,360 エア抜きバルブ
370 中間配管
71 筐体
72 気液混合物流入口
73 気液混合物流出口
74 円盤
75 円盤
76 流路縮小部
77 間隙最小部
78 流路拡大部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜モジュールを用いる水浄化システムにおいて、水を水供給ポンプによって加圧し、膜モジュールに供給して膜濾過を行う水浄化システムの運転方法であって、前記水供給ポンプでの加圧後であって膜モジュール供給前の水中に超微細気泡を発生させ、該超微細気泡を含有する液を膜モジュールに供給することを特徴とする水浄化システムの運転方法。
【請求項2】
水供給ポンプに供する水が、原水及び/又は膜モジュールからの濃縮循環水である請求項1記載の水浄化システムの運転方法。
【請求項3】
水供給ポンプに供する水が、清浄水及び/又は膜モジュールからの透過水であり、これに超微細気泡を含有させた液を、被洗浄機器又は装置の洗浄に使用した後、使用後の洗浄液を膜モジュールに供給する請求項1記載の水浄化システムの運転方法。
【請求項4】
水に気体を混合して得られる気液混合流体を、水供給ポンプによる高圧により縮小部・最挟部・拡大部を有する流路を流通させ、前記流路内で形成される前記気液混合流体の高速せん断流の流速と圧力を変化させて、主に50μm以下のサイズの超微細気泡を発生させる請求項1〜3のいずれかに記載の水浄化システムの運転方法。
【請求項5】
水供給ポンプによって水を加圧して膜モジュールによる膜濾過を行う際の濾過圧力が、0.01MPa(ゲージ圧)以上である請求項1〜4のいずれかの項に記載の水浄化システムの運転方法。
【請求項6】
膜モジュールにおける膜濾過方式がクロスフロー濾過方式である請求項1〜5のいずれかの項に記載の水浄化システムの運転方法。
【請求項7】
膜モジュールが限外濾過膜モジュール又は精密濾過膜モジュールである請求項1〜6のいずれかの項に記載の水浄化システムの運転方法。
【請求項8】
膜モジュールに対して、膜モジュールからの透過水又は別途供給される清浄水により、間欠的な逆洗を施す請求項1〜7のいずれかの項に記載の水浄化システムの運転方法。
【請求項9】
膜モジュールを用いる水浄化システムにおいて、水を膜モジュールに供給する水供給ポンプ、水の供給ライン内に気体を供給する気体供給手段、及び前記水中に気体を混合して得られる気液混合流体を、前記水供給ポンプによる高圧により縮小部・最挟部・拡大部を有する流路を流通させ、前記流路内で形成される前記気液混合流体の高速せん断流の流速と圧力を変化させて、水中に超微細気泡を発生させる超微細気泡発生手段を備えていることを特徴とする水浄化システム。
【請求項10】
水供給ポンプに供する水が、原水及び/又は膜モジュールからの濃縮循環水である請求項9記載の水浄化システム。
【請求項11】
水供給ポンプに供する水が、清浄水及び/又は膜モジュールからの透過水であり、これに超微細気泡を含有させた液により洗浄される被洗浄機器又は装置を備えており、被洗浄機器又は装置の洗浄後の液が膜モジュールに供給される請求項9記載の水浄化システム。
【請求項12】
気体供給手段が水供給ポンプの直前に設けられている請求項9〜11のいずれかの項に記載の水浄化システム。
【請求項13】
さらに、膜モジュールを間欠的に逆洗する洗浄手段が備えられている請求項9〜12のいずれかの項に記載の水浄化システム。
【請求項14】
さらに、原水の夾雑物を除去するプレフィルターが設けられている請求項10のいずれかの項に記載の水浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−83764(P2011−83764A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136494(P2010−136494)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】