説明

水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂および樹脂組成物

【課題】本発明は、レジストなどの感光性材料、インキ、塗料などのコーティング材料、粘接着剤原料、建築材料などとして、硬化収縮性、吸水性などの性能面を向上させる新規な水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂および該樹脂を含む樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、水添テルペンフェノール樹脂を(メタ)アクリレート化した水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂、およびその樹脂組成物に関する。
本発明の樹脂成物は、主としてこの水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂にラジカル重合開始剤を加えた樹脂組成物であり、紫外線などの放射線により硬化させることが可能な組成物である。
水添テルペンフェノール樹脂の水酸基価は、10〜250mgKOH/gであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水添テルペンフェノール樹脂を(メタ)アクリレート化した水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂およびこの樹脂を含む樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、メタクリルアミド、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレートなどを原料とした放射線硬化性組成物に関しては、既にコーティング剤や塗料などの用途として、硬化性の速い、生産性の良好な材料として特許出願されている(特許文献1、2)。
しかしながら、これらの感光性組成物は、硬化収縮性、耐水性などの性能面や価格面で、十分な性能を有するものではない。
【特許文献1】特開2003−12727号公報
【特許文献2】特開2002−47335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、レジストなどの感光性材料、インキ、塗料などのコーティング材料、粘接着剤原料、建築材料などとして、硬化収縮性、吸水性などの性能面を向上させる新規な水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂および該樹脂を含む樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、水添テルペンフェノール樹脂を(メタ)アクリレート化した水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂、およびその樹脂組成物に関するものである。
ここで、水添テルペンフェノール樹脂の水酸基価は、10〜250mgKOH/gである事が好ましい。
本発明の樹脂組成物は、主として、この水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂にラジカル重合開始剤を加えた樹脂組成物であり、紫外線などの放射線により硬化させることが可能な樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂およびこれを用いた樹脂組成物は、硬化収縮性、吸水性などの性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
ここで、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる水添テルペンフェノール樹脂とは一般的にテルペンフェノール樹脂を触媒の存在下、水素と反応させたものである。
【0007】
テルペンフェノール樹脂は、環状テルペンモノマーとフェノール類とをフリーデルクラフト触媒の存在下で反応させたものである。
【0008】
テルペンフェノール樹脂の原料のテルペンモノマーは、単環のテルペンモノマーであってもよいし、双環のテルペンモノマーであってもよい。原料である環状テルペンモノマーの具体例としては、リモネン、ジペンテン(リモネンの光学異性体)、テルピノーレン、α−ピネン、β−ピネン、テルピネン、メンタジエンなどが挙げられる。
【0009】
テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール類の具体例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、メトキシフェノール、ブロモフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等があげられる。
【0010】
テルペンフェノール樹脂は、例えば、テルペンモノマー1モルとフェノール類0.1〜50モルをフリーデルクラフト触媒のもとで、−10〜120℃の温度で0.5〜20時間、カチオン重合反応させて製造することが出来る。
【0011】
反応溶媒は使用しなくてもよいが、通常、芳香族系炭化水素類、アルコール類、エーテル類などの溶媒を使用してもよい。
【0012】
このようにして製造されるテルペンフェノール樹脂としては、例えば、ヤスハラケミカル(株)製YSポリスターS145などがあげられる。
【0013】
水添テルペンフェノール樹脂は、上記テルペンフェノール樹脂を水添することにより得られる。テルペンフェノール樹脂は、テルペン由来の二重結合とフェノール類由来の芳香環二重結合を有しているが、後工程のエステル化を容易にするためには、一部または完全に芳香環二重結合を水添(核水添)することによって、フェノール性水酸基からアルコール性水酸基に変換することが好ましい。
水添する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、パラジウム、ルテニウム、ロジウムなどの貴金属またはそれらを活性炭素、活性アルミナ、珪藻土などの坦体上に担持したものを触媒として使用して行う方法が挙げられる。
この時、粉末状の触媒を懸濁攪拌しながら反応を行うバッチ方式にすることも、成形した触媒を充填した反応塔を用いた連続方式にすることも可能であり、反応形式に特に制限はない。
【0014】
触媒の使用量は、反応がバッチ方式の場合、原料であるテルペンフェノール樹脂に対し0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜20重量%である。触媒量が0.1重量%未満では、水素化反応速度が遅くなり、一方、50重量%を超えても経済的に不適であり好ましくない。
【0015】
水添の際、反応溶媒は用いなくてもよいが、通常、アルコール類、エーテル類、エステル類、飽和炭化水素類を使用してもよい。
【0016】
水添の際の反応温度は、通常20〜300℃、好ましくは、50〜250℃である。反応温度が20℃未満であると、水素化速度が遅くなり、一方、300℃を超えると、水添物の分解が多くなり、分子量の低下、回収率の低下を招くため好ましくない。
【0017】
水添の際の水素圧は、通常5〜300kg/cm2(0.49〜29.40MPa)である。好ましくは、50〜250kg/cm2である。さらに好ましくは80〜240kg/cm2である。5kg/cm2未満であると、水素化速度が遅くなり、一方、300kg/cm2を超えると、水添物の分解が多くなるため好ましくない。
【0018】
本発明の水添テルペンフェノール樹脂の水酸基価は、10〜250mgKOH/gが好ましい。より好ましくは25〜200mgKOH/gである。水酸基価が10mgKOH/g未満であると、水酸基を全てエステル化したとしても硬化物の架橋密度が低く、硬化組成物の特性を低下させるため好ましくない。水酸基価が250mgKOH/gを超えると、アクリル当量が高くなりすぎ、硬化組成物の硬化収縮性、吸水性などの特性を低下させるため好ましくない。
【0019】
また、本発明の水添テルペンフェノール樹脂の水添度合いは特に限定されないが、水添テルペンフェノール樹脂の核水添率は、50%以上であることが望ましい。色相、耐候性、耐熱変色性を重視する場合は、テルペン由来の二重結合、及びフェノール由来の二重結合の水添度合いを上げた樹脂が適している。核水添率が50%未満であると、色相、耐光性、耐熱変色性といった物性が低下し、好ましくない。
ただし、本発明の核水添率は、パーキンエルマー社製Spectrum One システムB型を使用し、IR分析を行い、水添テルペンフェノール樹脂およびテルペンフェノール樹脂のフェノール由来の芳香環のピーク値をそれぞれ測定した後、それらを割り算して決定している。
【0020】
次に、本発明の水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂について説明する。
本発明の水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂は、水添テルペンフェノール樹脂を(メタ)アクリレート化したものである。
水添テルペンフェノール樹脂と(メタ)アクリル酸化合物との反応である(メタ)アクリレート化について説明する。
この反応には、上記水添テルペンフェノール樹脂と(メタ)アクリル酸をエステル化反応させる方法、上記水添テルペンフェノール樹脂と(メタ)アクリル酸ハロゲン化物を反応させる方法、上記水添テルペンフェノール樹脂と(メタ)アクリル酸無水物を反応させる方法、上記水添テルペンフェノール樹脂と(メタ)アクリル酸メチルや(メタ)アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステルをエステル交換反応させる方法などがある。しかし、本発明に用いられる反応は、これらに限定されるものではない。
【0021】
上記(メタ)アクリル酸化合物としては、(メタ)アクリル酸、無水(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシルなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルが好ましく用いられる。
【0022】
上記反応のうち、(メタ)アクリル酸を使用したエステル化反応の際の(メタ)アクリル酸化合物の仕込み比率は、原料である水添テルペンフェノール樹脂100gに対し、1〜200g、好ましくは10〜100gである。1g未満であるとエステル化反応が十分に進行しない可能性があり、200gを超えるとコスト的に好ましくない。
【0023】
また、溶媒は、通常、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素化合物などを使用するが、(メタ)アクリル酸などが溶媒を兼ねるため、使用しなくてもよい。
溶媒を使用する場合、該溶媒の使用量は、原料である水添テルペンフェノール樹脂に対し、0.3〜10重量倍、好ましくは0.5〜7重量倍である。
【0024】
触媒としては、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、イオン交換樹脂、活性白土、塩化チタン(IV)、ジルコニウム(IV)オキシクロライド八水和物、リンタングステン酸などのヘテロポリ酸、酸化ジオクチルスズ、酸化ジブチルスズ、チタン(IV)テトライソプロポキシド、チタン(IV)テトラブトキシド、チタン(IV)テトラメトキシド、ジルコニウム(IV)アセチルアセトン錯体、炭酸カリウム、水酸化リチウム、[5,4,0]−ジアザビシクロウンデカ−7−エン、N,N,−ジメチル−4−アミノピリジン、トリエチルアミンなど、一般的なエステル化あるいはエステル交換反応に利用されるものが使用できる。
触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、原料である水添テルペンフェノール樹脂100gに対し、0.1〜100g、好ましくは1〜50gである。0.1g未満であるとエステル化反応が十分に進行しない、あるいは反応時間が非常に長くなる可能性があり、100gを超えると脱水反応等の副反応の進行が起こる、あるいは高コストになるため好ましくない。
【0025】
このエステル化反応の際には、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤としては、反応系内に発生するラジカルを捕捉しうる化合物であれば、特に限定されるものではないが、例えばハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、t−ブチルハイドロキノン、テトラメチルピペリジルオキシルラジカル、4−ヒドロキシ−テトラメチルピペリジルオキシルラジカル、ジフェニルピクリルヒドラジルなどを使用できる。重合禁止剤の添加量は、仕込み(メタ)アクリル酸に対して、通常、5〜10,000ppm、好ましくは20〜5,000ppm、さらに好ましくは50〜1,000ppmである。
【0026】
エステル化の反応温度は、30〜200℃、好ましくは60〜150℃である。反応温度が、30℃未満であると反応速度が極端に遅い可能性があり、一方、200℃を超えると重合などの副反応が顕著になり好ましくない。エステル化反応は、通常、常圧下で行うが、用いる溶剤の沸点によって、減圧または加圧下で行うこともできる。
【0027】
上記の水添テルペンフェノール樹脂と(メタ)アクリル酸ハロゲン化物を反応させる方法、水添テルペンフェノール樹脂と(メタ)アクリル酸無水物を反応させる方法、水添テルペンフェノール樹脂と(メタ)アクリル酸メチルや(メタ)アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステルをエステル交換反応させる方法としては、水添テルペンフェノール樹脂と(メタ)アクリル酸ハロゲン化物または(メタ)アクリル酸無水物をトリエチルアミンやピリジンなどの塩基性溶媒中0〜70℃で反応させる方法、p−トルエンスルホン酸やチタン(IV)テトライソプロピル、酸化ジオクチルスズ、酸化ジブチルスズ、水酸化リチウムなど一般的なエステル交換反応に用いられる触媒の存在下、水添テルペンフェノール樹脂とアクリル酸メチル、またはアクリル酸エチルとを20〜150℃で反応させる方法などが挙げられる。
【0028】
本発明の水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂は、赤外線吸収スペクトルの、C−H伸縮に起因する3,000〜2,800cm−1、C=O伸縮に起因する1,725cm−1付近、C=C伸縮に起因する1,640〜1,620cm−1、C−H変角に起因する1,500〜1,350cm−1、C−O伸縮に起因する1,300〜1,050cm−1、C−H面外変角に起因する810cm−1のピークにより確認することができる。
【0029】
本発明の水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂にラジカル重合開始剤を配合した樹脂組成物は、紫外線などの放射線により硬化させることができる。通常低圧または高圧水銀灯、キセノン灯が用いられる。
なお、本発明の樹脂組成物とは、本発明の水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂に共重合可能なモノマー、ラジカル重合開始剤、反応性希釈剤などが配合された組成物等であるが、当該水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂がこのラジカル重合開始剤によってオリゴマーや重合物となったものをも広く包含する概念である。
【0030】
光硬化に際し、紫外線照射は、0.1〜6J/cm2で行うことが好ましく、さらに好ましくは、0.3〜3J/cm2である。紫外線照射の強さが0.1J/cm2未満では、未硬化部分が残存する可能性が高くなり、一方、6J/cm2を超えると過剰露光により樹脂部分が変色する可能性が高くなるため、好ましくない。
硬化させる装置に関しては、通常使用されている紫外線照射装置であれば特に指定はない。例えば、浜松ホトニクス(株)製紫外線照射装置UVスポット光源LIGHTNNGUCURE LC6がある。
【0031】
ここで、本発明で使用するラジカル重合開始剤について説明する。
ラジカル重合開始剤は、ラジカル重合する開始剤であれば何でもよい。
具体的には、ベンジル、ベンゾイン、ベンジルアルキルケタノールなどのベンゾインエーテル系、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノンなどのアセトフェノン系、ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸、4,4’−ジアルキルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−アルキルチオキサントンなどのチオキサントン系、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド、その他、2−アルキルアントラキノンなどが挙げられる。
【0032】
本発明の樹脂組成物において、上記の水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂とラジカル重合開始剤を含有する、配合割合は以下のようである。
水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂を100重量部として、ラジカル重合開始剤は、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5.0重量部、さらに好ましくは0.3〜4.0重量部である。0.01重量部未満ではラジカル重合が十分進行せず、一方、10重量部を超えるとラジカル重合以外の余分なものが添加されることになる。
【0033】
本発明の樹脂組成物には、上記の必須成分の他に、必要に応じ、その他の(メタ)アクリレート系化合物やその他の添加剤として熱重合禁止剤、酸化防止剤、可塑剤、染料、顔料、樹脂化合物、適当な希釈溶剤などを添加することができる。
【0034】
上記の水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂の配合量は、樹脂組成物全体に対して少なくとも5重量%以上使用することが望ましい。5重量%未満では本発明の効果があまり見られない。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。尚、実施例中、部および%は特に断らない限り、重量基準を示す。
【0036】
水添テルペンフェノール樹脂の合成例を下記に示す。
合成例1
(テルペンフェノール樹脂Bの合成)
温度計、撹拌装置、滴下ロートおよび冷却管を備えた内容積2リットルの4つ口フラスコを使用して、脱水したトルエン580g、触媒として塩化アルミニウム15gを仕込んだのち、75℃の温度に保持しながら攪拌し、α−ピネン(ヤスハラケミカル(株)製α−ピネン、純度95%)400g(約3モル相当)とフェノール(関東化学(株)製フェノール、純度99%)260g(約2.8モル相当)を2時間かけて滴下し、その後、4時間撹拌して反応させた。
次いで、該混合液を水洗し、触媒を除いた後、5mmHgの減圧条件下、最高到達温度250℃でトルエン、および未反応モノマー、低分子量化合物を蒸留により留去し、淡黄色樹脂状物のテルペンフェノール樹脂B、560gを得た。このテルペンフェノール樹脂Bの軟化点は125℃、GPCによる数平均重量分子量は570、重量平均分子量は770、Z平均重量分子量は890、水酸基価145mgKOH/gであった。
【0037】
合成例2
(水添テルペンフェノール樹脂Cの合成)
合成例1で得られたテルペンフェノール樹脂Bを100g、イソプロピルアルコールを400g、および粉末状の5%パラジウム担持アルミナ触媒2.0gを仕込み、次いで、これを密閉し、雰囲気を窒素ガスで置換した後、水素ガス10kg/cm2の圧力をかけながら導入した。そして攪拌しながら加熱し150℃となったところで、水素の圧力を80kg/cm2とし、吸収された水素を補うことで圧力を80kg/cm2に保ちながら14時間反応させ、水添テルペンフェノール樹脂Cを100g得た。
この水添テルペンフェノール樹脂Cの軟化点は129℃、GPCによる数平均重量分子量は590、重量平均分子量は780、Z平均重量分子量は910であった。また、水酸基価135mgKOH/gで、核水添率95%であった。
【0038】
得られた樹脂Cの分析結果を図1に示す。
分析結果
図1:IRチャート 3,550〜3,200cm−1:O−H伸縮、3,000〜2,800cm−1:C−H伸縮、1,500〜1,350cm−1、:C−H変角、1,070cm−1:C−O伸縮
【0039】
合成例3
(水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂(樹脂A)の合成)
ディーンスターク管、冷却管、温度計、撹拌棒を備えた300ml四つ口フラスコに、上記のようにして得られた水添テルペンフェノール樹脂101gとトルエン205g、アクリル酸68g、ヒドロキノンモノメチルエーテル503mg、およびイオン交換樹脂(アンバーリスト15E、ロームアンドハース社製)10.1gを仕込んだ。混合液を減圧下100℃で12時間還流させた後、得られた混合液へ活性炭(和光純薬製)9.8g加えてろ過し、触媒及び過剰の重合禁止剤を除去した。次いで、ヒドロキノンモノメチルエーテル41mgを加え、減圧下80℃でトルエン及びアクリル酸を留去して、水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂(樹脂A)を112g得た。
この樹脂Aの、GPCによる数平均重量分子量は620、重量平均分子量は815、Z平均重量分子量は935であった。また、水酸基価は15mgKOH/gであった。
【0040】
得られた樹脂Aの分析結果を図2に示す。
分析結果
図2:IRチャート 3,000〜2,800cm−1:C−H伸縮、1,725cm−1:C=O伸縮、1,640〜1,620cm−1:C=C伸縮、1,500〜1,350cm−1、:C−H変角、1,300〜1,050cm−1:C−O伸縮、810cm−1:C−H面外変角
【0041】
実施例1
樹脂Aを60重量部、共栄社化学(株)製イソボルニルアクリレート(純度99.5%以上)40重量部、光重合開始剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン)3重量部を混合し、感光性組成物を得た。
【0042】
実施例2
樹脂Aを40重量部、Sigma−Aldrich製トリシクロデカンジメタノールジアクリレート60重量部、光重合開始剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン)3重量部を混合し、感光性組成物を得た。
【0043】
比較例1
共栄社化学(株)製イソボルニルアクリレート(純度99.5%以上)100重量部、光重合開始剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン)3重量部を混合し、感光性組成物を得た。
【0044】
比較例2
Sigma−Aldrich製トリシクロデカンジメタノールジアクリレート100重量部、光重合開始剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン)3重量部を混合し、感光性組成物を得た。
【0045】
実施例1、実施例2および比較例1、比較例2の硬化収縮率、吸水率について以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりである。
【0046】
(硬化収縮率測定)
上記感光性組成物を25℃の恒温水槽に放置した後、ピクノメーターを用いて、比重D1を測定した。次に、得られる塗膜の厚さが100μmになるようにガラス板に上記感光性組成物を挟み込み、メタルハライドランプで約1J/cm2照射した。JIS Z8807:1976に準じ、この塗膜の固体比重D2を求め、下記計算式により硬化収縮率を求めた。
硬化収縮率の測定結果を表1に記載した。
硬化収縮率(%)=〔(D2−D1)/D2〕×100
【0047】
(吸水率測定)
サンプルを120℃乾燥機中で一晩置き、十分乾燥させた後重量(W0)を測定した。
次にこのサンプルを23℃の蒸留水に浸漬し192時間放置した。水中から取り出した後、布で水分を拭き取り、2分間放置した後、重量(W1)を測定し、次式により吸水率を求めた。吸水率(%)=〔(W1−W0)/W0〕×100
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂およびこれを含む樹脂組成物は、レジスト、ソルダーレジスト、光硬化塗膜、印刷製版材、歯科用修復材などの感光性材料、各種レンズ、光ディスク、光ファイバ材料、インキ・塗料などのコーティング材料、紙、電子部品等のオーバーコート剤、粘接着剤原料、シーリング剤、建築材料、電子機器の絶縁材、電線被覆材料、プリント基板、高分子架橋剤、ポリマー原料など様々な技術分野で使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】合成例2で得られた水添テルペンフェノール樹脂(樹脂C)のIRスペクトルチャートである。
【図2】合成例3で得られた水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂(樹脂A)のIRスペクトルチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水添テルペンフェノール樹脂を(メタ)アクリレート化した水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂。
【請求項2】
水添テルペンフェノール樹脂の水酸基価が、10〜250mgKOH/gである、請求項1記載の水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂。
【請求項3】
請求項1、2いずれかに記載の水添テルペンフェノール(メタ)アクリレート樹脂を含有することを特徴とする樹脂組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−248215(P2008−248215A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117714(P2007−117714)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000117319)ヤスハラケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】