説明

水溶性スルホ基含有コポリマー、その製造法及びその使用

本発明は、水溶性スルホ基含有コポリマー、該コポリマーの製造法、及び、水硬性バインダー、例えばセメント、石灰、石膏及び硬石膏をベースとする水性建築材料系中での、並びに水性塗料系及び水性被覆系中での安定剤、レオロジー改質剤及び保水剤としての該コポリマーの使用に関する。本発明による添加剤は、建築材料系に対して、加工の際及び硬化ないし乾燥された状態において顕著な応用技術的特性を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、スルホ基含有水溶性コポリマー、その製造法及び水性建築材料系中での、及び水性塗料系及び水性被覆系中での安定剤としての該コポリマーの使用に関する。
【0002】
過去において、高流動性のコンクリート、例えば自己充填コンクリート(Self Compacting Concrete, SCC)が開発され、該コンクリートは加工者に対して一連の利点を提供している。そのようなコンクリートは型枠への充填後にもはや費用のかかる締固めを必要としない。なぜならば、該コンクリートは所定の型を自力で充填し、その上更に該コンクリート自体で締固めるためである。極めて密な建築材料構造が得られ、これはコンクリートの耐久性に有利である。更に、自己充填コンクリートを用いて、建築上の要求を容易に満足する極めて平滑な表面が得られる。
【0003】
そのようなコンクリートの高い流動性を達成するためには、大抵はポリカルボキシレートエーテルをベースとする高性能の流動化剤が使用される。しかしながら、そのようなコンクリート混合物の高い流動性によって、より重い成分の偏析及び表面上での浸出水の分離が生じる可能性がある。これは、加工性及び硬化された建築材料混合物の固体特性に対してマイナスの影響を及ぼす。これは、この望ましくない効果を防止するために、標準コンクリート及び付加的な安定剤(偏析防止剤、浸出防止剤又は粘度調整剤とも呼称される)の場合よりも明らかに高い自己充填コンクリートの細材含分が使用されることによって防止される。
【0004】
そのために、水性建築材料混合物中で、特に多糖類の水溶性の非イオン性誘導体(セルロース誘導体及びデンプン誘導体)を、しかしまた微生物により生成される多糖類、例えばウェランゴム(Welan Gum)も使用することができる。
【0005】
しかしながら、合成ポリマーも安定剤として高流動性コンクリート中でより一層使用されており、それというのも、合成ポリマーは多糖類誘導体と比較して著しい利点を示すためである(流動性、貯蔵安定性を損なわない安定化、固化の遅延なし)。そのような2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をベースとするポリマーは、例えばWO2005/035603A1及びDE102004032304A1に記載されている。細材に富む流動性の建築材料系、例えば細材に富む自己充填コンクリートにおいて、前記コポリマーは極めて良好な安定特性(浸出及び偏析の防止)を示す。
【0006】
同様に、極めて良好な安定作用を示すスルホ基含有コポリマーは、DE19806482A1及びDE10037629A1に記載されている。しかしながら、前記ポリマーを使用した場合、混合物の塑性粘度は極めて強度に上昇するため、建築材料系の流動性は利用者にとって認容不可能な程度に制限されてしまう。確かに、流動化剤の添加ないし供給量の増加によって塑性粘度を再度低下させることはできるが、流動化剤のために付加的に発生するコストは、利用者にとって著しい経済的欠点である。
【0007】
細材に富む自己充填コンクリートは、確かに多くの利点を提供するが、しかしながら著しい欠点をも有する。高い細材含分(とりわけセメント)によって、利用者のための原料コストは標準のコンクリートの場合よりも明らかに高い。従って、コストの削減を達成するために、細材含分、特にセメント含分を明確に低減させる努力がなされている。同時に、自己充填コンクリートの有利な特性は維持されるのが望ましい。細材含分の明らかな低減により、安定剤の作用に対する要求は著しく高められる。高流動性混合物の細材含分が低くなるほど、より重い成分の偏析及び表面上での浸出の傾向が高くなる。
【0008】
確かに、従来技術による安定剤で、細材含分のわずかな低下を補償することができるが、この安定作用は、例えば、高流動性であってそれにもかかわらず均質である、即ち偏析も浸出も示さない極めて細材に乏しい自己充填コンクリートを製造するのには十分ではない。
【0009】
従って本発明は、上記の従来技術の欠点を有しない、極めて細材に乏しい水性建築材料系用の安定剤及びレオロジー改質剤として適用するためのコポリマーを提供するという課題に基づいていた。該コポリマーは、極めてわずかな細材含分を有するに過ぎない水性の流動性建築材料系用の安定剤として卓越した安定作用を示すのが望ましく、かつ同時に、加工性がマイナスの影響を受けないように、もしくはポンプ輸送される建築材料混合物の場合にはポンプ圧が著しく高められないように、系の粘度が過度に上昇することのないのが望ましい。
【0010】
更に、添加剤は、建築材料系に対して、加工の際及び硬化ないし乾燥された状態において顕著な応用技術的特性を付与するのが望ましい。
【0011】
前記課題は、本発明によれば、請求項1に相応するコポリマーにより解決された。
【0012】
即ち、意想外にも、本発明によるコポリマーによって、水硬性バインダー、例えばセメント、石灰、石膏、硬石膏等をベースとする極めて細材に乏しい建築材料系における安定化の著しい改善が達成されることが判明した。
【0013】
本発明に相応する水溶性スルホ基含有コポリマーは、少なくとも3種の構造基a)、b)、c)及び/又はd)からなる。
【0014】
第一の構造基は、式(I)
【化1】

[式中、
1は水素又はメチルであり、
2、R3、R4は水素、1〜6個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、メチル基で置換されていてもよいフェニル基であり、かつ
Mは水素、一価又は二価の金属カチオン、アンモニウムないし有機アミン基であり、かつ
aは1/2又は1である]のスルホ基を含有する置換されたアクリル誘導体又はメタクリル誘導体である。
【0015】
一価又は二価の金属カチオンとして、有利にナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンが使用される。有機アミン基として、有利に1級、2級又は3級C1〜C20−アルキルアミン、C1〜C20−アルカノールアミン、C5〜C8−シクロアルキルアミン及びC6〜C14−アリールアミンから誘導される置換されたアンモニウム基が使用される。相応するアミンの例は、プロトン化されたアンモニウムの形でのメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロへキシルアミン、フェニルアミン並びにジフェニルアミンである。
【0016】
構造基a)は、モノマー、例えば2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドブタンスルホン酸、3−アクリルアミド−メチルブタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2,4,4−トリメチルペンタンスルホン酸から誘導される。2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸は特に有利である。
【0017】
場合により、構造基a)の30%までが、メタリルスルホン酸モノマー又はアリルスルホン酸モノマーから誘導される他のスルホン酸基含有構造単位と交換されていてよい。
【0018】
第二の構造基b)は、式(II)
【化2】

[式中、
YはO、NH又はNR5であり、
Vは
【化3】

であり、
5及びR6は相互に無関係に1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜8個のC原子を有する脂環式炭化水素基、又は6〜14個のC原子を有するアリール基を表し、前記基はヒドロキシル基、カルボキシル基又はスルホン酸基で置換されていてもよく、
7
【化4】

であり、
xは1〜6であり、
Xはハロゲン(有利にCl、Br)、C1〜C4−アルキルスルフェート(有利にメチルスルフェート)又はC1〜C4−アルキルスルホネートを表し、かつ
1、M及びaは上記の意味を有する]に相応する。
【0019】
構造(II)を形成するモノマーとして、有利に以下の化合物が挙げられる:[2−(アクリロイルオキシ)−エチル]−トリメチルアンモニウムクロリド、[2−(アクリロイルアミノ)−エチル]−トリメチル−アンモニウムクロリド、[2−(アクリロイルオキシ)−エチル]−トリメチル−アンモニウムメトスルフェート、[2−(メタクリロイルオキシ)−エチル]−トリメチルアンモニウム−クロリドないし−メトスルフェート、[3−(メタクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド、N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリルオキシエチル−N’−N−ジメチル−アンモニウム−ベタイン、N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリルアミドプロピル−N,N−ジメチル−アンモニウム−ベタイン及び1−(3−スルホプロピル)−2−ビニル−ピリジニウム−ベタイン。
【0020】
場合により、構造基b)の5モル%までが、N,N−ジメチル−ジアリル−アンモニウムクロリド及びN,N−ジエチル−ジアリル−アンモニウムクロリドから誘導される他のカチオン性構造単位と交換されていてよい。
【0021】
第三の構造基c)は、式(III)
【化5】

[式中、
Zは−(CH2q−O(Cn2nO)p−R8、−COO(Cn2nO)p−R8であり、
nは2〜4であり、
pは1〜200であり、
qは0〜20であり、
8はH、C1〜C4−アルキル基を表し、かつ
1は上記の意味を有する]に相応する。
【0022】
式(III)を形成する有利なモノマーは、アリルポリエチレングリコール−(350〜2000)、メチルポリエチレングリコール−(350〜3000)−モノビニルエーテル、ポリエチレングリコール−(500〜5000)−ビニルオキシ−ブチルエーテル、ポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコール−(500〜5000)−ビニルオキシ−ブチルエーテル、メチルポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコールアリルエーテル、メチルポリエチレングリコール−750−メタクリレート、ポリエチレングリコール−500−メタクリレート、メチルポリエチレングリコール−2000−モノビニルエーテル、メチルポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコールアリルエーテル等である。
【0023】
第四の構造基d)は、式(IV)
【化6】

[式中、
Uは−COO(Cn2nO)p−R9、−(CH2q−O(Cn2nO)p−R9であり、
9
【化7】

並びに、10〜30個のC原子を有する不飽和又は飽和直鎖又は分枝鎖脂肪族アルキル基であり、
10はH、C1〜C6−アルキル基、C1〜C12−アルキル基とC6〜C14−アリール基とを有するアリールアルキル基を表し、
yは1〜3であり、かつ
1、n、p及びqは上記の意味を有する]に相応する。
【0024】
構造(IV)を形成する有利なモノマーは、トリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール−1100−メタクリレート、ベヘニルポリエチレングリコール−1100−メタクリレート、ステアリルポリエチレングリコール−1100−メタクリレート、ラウリルポリエチレングリコール−350−メタクリレート、トリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール−1100−アクリレート、トリスチリルフェノール−ポリエテングリコール−1100−モノビニルエーテル、ベヘニルポリエテングリコール−1100−モノビニルエーテル、ステアリルポリエテングリコール−1100−モノビニルエーテル、ラウリルポリエチレングリコール−モノビニルエーテル、トリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール−1100−ビニルオキシ−ブチルエーテル、ベヘニルポリエチレングリコール−1100−ビニルオキシ−ブチルエーテル、ラウリルポリエチレングリコール−モノアリルエーテル、トリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコールアリルエーテル、ベヘニルポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコールアリルエーテル、ステアリルポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコールアリルエーテル等である。
【0025】
コポリマーが、構造基a)40〜93.89モル%、構造基b)6〜59.89モル%、構造基c)0.1〜10モル%及び/又は構造基d)0.01〜0.5モル%からなり、従って合計で100モル%となることは本発明の本質であると見なすことができる。有利に、使用されるコポリマーはa)50〜89.67モル%、b)10〜45モル%、c)0.3〜5モル%及び/又はd)0.03〜0.4モル%を含有し、従って合計で100モル%となる。
【0026】
本発明の範囲内で、本発明によるコポリマーは、更に、構造基a)、b)、c)及び/又はd)の合計に対して20モル%まで、特に15モル%まで、式(V)
【化8】

[式中、
Wは−CO−O−(CH2m−、−CO−NR2−(CH2m−であり、
mは1〜6を表し、かつ
1、R2、5及びR6は上記の意味を有する]のもう1つの構造基e)を含むことが可能である。
【0027】
構造(V)を形成するモノマーとして、有利に以下の化合物が挙げられる:[3−(メタクリロイルアミノ)−プロピル]−ジメチルアミン、[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−ジメチルアミン、[2−(メタクリロイル−オキシ)−エチル]−ジメチルアミン、[2−(アクリロイル−オキシ)−エチル]−ジメチルアミン、[2−(メタクリロイル−オキシ)エチル]−ジエチルアミン、[2−(アクリロイル−オキシ)−エチル]−ジエチルアミン等。
【0028】
本発明の範囲内で、更に、本発明によるコポリマーにおいて、構造基a)の30モル%までを、一般式(VI)
【化9】

[式中、
1、M及びaは上記の意味を有する]のモノマーf)と交換することも可能である。
【0029】
構造(VI)を形成するモノマーとして、有利に以下の化合物が挙げられる:アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム等。
【0030】
場合により、コポリマーは付加的に、少量の架橋剤の組み入れによって、わずかに架橋されたか又は架橋された構造を得ることができる。そのような架橋剤成分の例は、トリアリルアミン、トリアリルメチルアンモニウムクロリド、テトラアリルアンモニウムクロリド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、トリエチレングリコールビスメタクリレート、トリエチレングリコールビスアクリレート、ポリエチレングリコール(400)−ビスメタクリレート及びポリエチレングリコール(400)−ビスアクリレートである。前記化合物は、依然として水溶性のコポリマーが得られるような量でのみ使用されてよい。総じて、濃度は、構造基a)、b)、c)、d)及び場合によりe)及びf)の合計に対して0.1モル%を上回ることはほとんどないが、当業者は架橋剤成分の最大使用可能量を容易に決定することができる。
【0031】
本発明によるコポリマーの製造は、自体公知の方法で、構造a)〜f)を形成するモノマーを、ラジカル性、イオン性又は錯体配位性の塊状重合、溶液重合、ゲル重合、乳化重合、分散重合又は懸濁重合により結合させることによって行われる。本発明による生成物は水溶性コポリマーであるため、水相中での重合、逆エマルション中での重合ないし逆懸濁液中での重合が有利である。特に有利な実施態様において、反応は水相中でのゲル重合又は溶液重合として行われる。
【0032】
ラジカル溶液重合のための適当な開始剤は、例えばナトリウム−、カリウム−又はアンモニウムペルオキソジスルフェート、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド及び他の慣用のラジカル開始剤である。ラジカル開始剤の濃度は有利に0.01g〜10g/モノマー100gに調節される。
【0033】
モノマーの重合は10〜100℃の温度で20分〜24時間の有利な期間にわたって行われ、その際、水溶液の濃度は有利に5〜30質量%に調節される。
【0034】
他の助剤、例えば分子量調節剤、例えばチオグリコール酸、メルカプトエタノール、ギ酸及び次亜リン酸ナトリウムを同様に使用することができる。
【0035】
同様に有利なゲル重合において、低い反応温度及び適当な開始剤系で重合する場合に有利である。まず低い温度で光化学的に、及び引き続き重合の発熱に基づき熱的に開始される二種類の開始剤系(光開始剤及びレドックス系)を組み合わせることによって、≧99%の変換率を達成することができる。
【0036】
その他の助剤、例えば分子量調節剤、例えばチオグリコール酸、メルカプトエタノール、ギ酸及び次亜リン酸ナトリウムを同様に使用することができる。
【0037】
ゲルブロックの後処理は、ゲル顆粒の接着を防止する離型剤(例えばGoldschmidt社のSitren 595)の使用により軽減される。それによって、流動性のゲル粒子はより容易に乾燥格子上に分配される。従って、乾燥プロセスは単純化され、更には乾燥時間も短縮され得る。
【0038】
ゲル重合は有利に−5℃〜50℃で行われ、その際、モノマー水溶液の濃度は有利に35〜65質量%に調節される。有利な実施態様による重合の実施のために、スルホ基含有(メタ)アクリル誘導体はその市販の酸形の形で水中に溶解され、アルカリ金属水酸化物の添加により中和され、撹拌下に、他の本発明により使用されるべきモノマー並びに緩衝液、分子量調節剤、とりわけ重合助剤と混合される。重合のpH値を有利に4〜9に調節した後、ゲル混合物のパージを保護ガス、例えばヘリウム又は窒素を用いて行い、引き続き相応する重合温度に加熱又は冷却する。
【0039】
実施態様として、撹拌されないゲル重合が選択される場合、2〜20cm、特に8〜10cmの有利な層厚で重合される。重合は重合開始剤の添加により、及びUV光の照射により低温(−5℃〜10℃)で開始される。ポリマーは、比較的大きな表面によって乾燥を促進するために、モノマーの完全な変換後に離型剤(例えばGoldschmidt社のSitren 595)を使用して粉砕される。
【0040】
出来る限り穏やかな反応条件及び乾燥条件によって架橋性副反応を回避することができ、従って極めてわずかなゲル含分を有するポリマーが得られる。
【0041】
本発明によるコポリマー中の繰返し構造要素の数は制限されず、それぞれの応用分野に極めて強く依存する。しかしながら、構造単位の数を、コポリマーが50000〜10000000の数平均分子量を有するように調節することが有利であることが判明した。該コポリマーは、水硬性バインダー、例えばセメント、石灰、石膏及び硬石膏等を含有する水性建築材料系用の添加剤として抜群に好適である。更に、該コポリマーは水性塗料系及び水性被覆系に適用可能である。
【0042】
本発明によるコポリマーは極めて細材に乏しい高流動性の建築材料系において既に低い供給量で卓越した安定特性を有し、かつ表面上での浸出水の分離を妨げる。本発明によるコポリマーは、極めて細材に乏しい自己充填コンクリートに対して、加工状態及び硬化ないし乾燥された状態において、とりわけ顕著な応用技術的特性を付与する。しかしながら、細材に富む水性建築材料系においても、本発明によるコポリマーは同様に低い供給量で卓越した安定特性を有し、かつ表面上での浸出水の分離を妨げる。本発明によるコポリマーは、自己水平性床用目止め剤、流し込みモルタル及び補修用モルタル、石膏流し込み床張り材、流動性コンクリート、自己充填コンクリート、水中コンクリート、水中モルタル、顔料含有塗料に対して、加工状態及び硬化ないし乾燥された状態において、とりわけ顕著な応用技術的特性を付与する。
【0043】
コポリマーの添加により、建築材料混合物の粘度(塑性粘度)は本質的に高められず、かつ流動限界はほぼ不変のままである。従って、流動性の建築材料系の加工性が損なわれることはない。更に、本発明によるコポリマーの水溶液は極めて良好な貯蔵安定性を有する。
【0044】
本発明によるコポリマーは、非イオン性多糖類の誘導体、例えばメチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)並びにウェランゴム又はジウタンゴム(Diutan Gum)と組み合わせて使用することもできる。
【0045】
本発明によるコポリマーの有利な使用量は、使用の様式に応じて、建築材料系、塗料系及び被覆系の乾燥質量に対して0.005〜3質量%である。
【0046】
本発明によるコポリマーは、コンクリート中で有利に水溶液の形の添加剤としてその本発明による使用に供される。溶液重合により製造されたコポリマーは、水溶液として使用される。しかしながら、本発明によるコポリマーがゲル重合により製造される場合には、それからまず溶液が製造されねばならない。そのためには、特に300μm〜800μmの平均粒子直径を有する比較的粗い顆粒が適当であり、その際、100μm未満の粒子直径を有する粒子の割合は2質量%未満である。本発明によるコポリマーが、別のコンクリート添加剤ないしコンクリート添加物からの配合物中(例えば流動化剤中)に溶解される場合にも同様のことが当てはまる。
【0047】
乾燥モルタル適用(例えばセメント−又は硬石膏−流し込み床張り材)のために、コポリマーは粉末形でその本発明による使用に供される。そのために、ポリマーは乾燥されかつ微粉砕される。この場合、粒子のサイズ分布は、粉砕パラメータを適合させることによって、平均粒子直径が100μm未満であり、かつ200μmを上回る粒子直径を有する粒子の割合が2質量%未満となるように選択される。平均粒子直径が60μm未満であり、かつ120μmを上回る粒子直径を有する粒子の割合が2質量%未満である粉末は有利である。平均粒子直径が50μm未満であり、かつ100μm上回る粒子直径を有する粒子の割合が2質量%未満である粉末は特に有利である。
【0048】
以下の実施例により本発明を詳説する。
【0049】
実施例
コポリマー1:溶液重合
強力冷却器、KPG−撹拌機、温度計及びガス導入管を備えた2Lの重合フラスコ中に水684mlを充填し、N2保護ガスで1時間パージした。撹拌下で水酸化ナトリウム小片9.2gを溶解させ、ゆっくりと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(I)47.6g(0.23モル、83.95モル%)を添加し、かつ澄明な溶液が得られるまで撹拌した。引き続き、[3−(メタクリルアミド)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド(水中50質量%溶液)(II)17.2g(0.04モル、15.0モル%)及びトリスチリルフェノールポリエチレングリコール−1100−メタクリレート(水中60質量%溶液)(IV)0.39g(0.14ミリモル、0.05モル%)をその中に溶解させた。撹拌及び冷却下に5質量%苛性ソーダ水溶液を添加し、かつpH値を7に調節した。引き続き、ポリエチレングリコール−(3000)−ビニルオキシブチルエーテル(水中60質量%溶液)(III)13.6g(2.74ミリモル、1.0モル%)を添加し、混合物を80℃に加熱した。2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミド)ジヒドロクロリド0.5gを添加することにより反応を開始させた。4時間後、反応バッチを室温に冷却した。得られたコポリマー1の溶液は10質量%の固体含分を有する。
【0050】
コポリマー2:ゲル重合
撹拌機及び温度計を備えた2Lの三ッ口フラスコ中に、水580gを装入した。撹拌下に水酸化ナトリウム小片87gを溶解させ、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(I)450g(2.17モル、81モル%)をゆっくりと添加し、かつ澄明な溶液が得られるまで撹拌した。クエン酸水和物0.50gを添加した後、撹拌及び冷却下に5質量%苛性ソーダ水溶液を添加し、かつpH値を7に調節した。引き続き、順次、[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド(水中60質量%溶液)(II)155g(0.45モル、17モル%)及びメチルポリエチレングリコール−1100−モノビニルエーテル(III)55g(0.05モル、2モル%)を添加した。分子量調節剤としてギ酸50ppmを添加した。溶液を20%苛性ソーダ液でpH=7に調節し、窒素で30分間パージすることにより不活性化させ、約5℃に冷却した。溶液を15cm×10cm×20cm(幅×奥行×高さ)のサイズのプラスチック容器中に移し換え、引き続き順次、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド150mg、1%ロンガリットC溶液1.0g及び0.1%t−ブチルヒドロペルオキシド溶液10gを添加した。重合をUV光の照射(Philips社製の2つの管;Cleo Performance 40W)により開始させた。約2〜3時間後、硬質のゲルをプラスチック容器から取り出し、ハサミで切断して約5cm×5cm×5cmのサイズのゲル立方体にした。このゲル立方体を慣用の肉挽き機を用いて粉砕する前に、このゲル立方体に離型剤Sitren 595(ポリジメチルシロキサン−エマルション;Goldschmidt社)を塗布した。この離型剤は水で1:20に希釈したポリジメチルシロキサンエマルションである。
【0051】
得られたコポリマー2のゲル顆粒を乾燥格子上に均一に分配させ、循環空気乾燥棚中で約90〜120℃で真空中で恒量となるまで乾燥させた。
【0052】
白色の硬質の顆粒約625gが得られ、この顆粒を遠心ミルを用いて粉末状にした。コポリマー2のポリマー粉末の平均粒子直径は40μmであり、かつ100μmを上回る粒子直径を有する粒子の割合は1質量%未満であった。
【0053】
コポリマー3
コポリマー1に相応して、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(I)83.1モル%、[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド(II)15.2モル%、ポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコール−(1100)−ビニルオキシ−ブチルエーテル1.5モル%及びラウリル−ポリエチレングリコール−1100−メタクリレート(IV)0.2モル%からなるコポリマー3を製造した。分子量調節剤としてギ酸50ppmを添加した。
【0054】
コポリマー4
コポリマー1に相応して、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(I)60モル%、[3−(メタクリルアミド)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド(II)23モル%、メチルポリエチレングリコール−750−メタクリレート(III)2モル%及びN,N−[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−ジメチルアミン(V)15モル%からなるコポリマー4を製造した。
【0055】
コポリマー5
コポリマー2に相応して、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(I)50モル%、[3−(メタクリルアミド)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド(II)38.45モル%、ポリエチレングリコール−(1100)−ビニルオキシブチルエーテル(III)1.5モル%、トリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール−1100−メタクリレート0.05モル%及びアクリル酸(VI)10モル%からなるコポリマー5を製造した。分子量調節剤としてギ酸350ppmを添加した。
【0056】
コポリマー6
コポリマー1に相応して、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(I)60モル%、[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド(II)25モル%、ポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコール−(1100)−ビニルオキシ−ブチルエーテル1モル%、トリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール−1100−メタクリレート(IV)0.05モル%及びN,N−[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−ジメチルアミン(V)13.95モル%からなるコポリマー6を製造した。分子量調節剤としてギ酸20ppmを添加した。
【0057】
コポリマー7
コポリマー1に相応して、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(I)60.5モル%、[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド(II)24モル%、ポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコール−(1100)−ビニルオキシ−ブチルエーテル0.5モル%、N,N−[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−ジメチルアミン(V)10モル%及びアクリル酸(VI)5モル%からなるコポリマー7を製造した。
【0058】
コポリマー8
コポリマー1に相応して、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(I)90モル%、[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド(II)9.95モル%及びトリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール−1100−メタクリレート(IV)0.05モル%からなるコポリマー8を製造した。分子量調節剤としてギ酸70ppmを添加した。
【0059】
コポリマー9
コポリマー1に相応して、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(I)69.93モル%、[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド(II)15モル%、トリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール−1100−メタクリレート(IV)0.07モル%及びアクリル酸(VI)15モル%からなるコポリマー9を製造した。分子量調節剤としてギ酸80ppmを添加した。
【0060】
比較例1
WO2005/035603A1に従って、比較例1を、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸55モル%及び[2−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド45モル%から製造した。
【0061】
比較例2
DE102004032304.6に従って、比較例2を、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸47.5モル%、アクリルアミド41.3モル%、ポリエチレングリコール−ブロック−プロピレングリコール−(790)−ビニルオキシ−ブチルエーテル2.5モル%、及び[3−(アクリロイルアミノ)−プロピル]−ジメチルアミン8.7モル%から製造した。分子量調節剤としてギ酸800ppmを添加した。
【0062】
比較例3
WO02/10229A1に従って、比較例3を、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸69.0モル%、N,N−ジメチルアクリルアミド26.4モル%、[2−(メタクリロイルロイルアミド)−プロピル]−トリメチルアンモニウムクロリド3.8モル%及びトリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール−1100−メタクリレート0.8モル%から製造した。
【0063】
第1表に、ゲル重合により製造されたコポリマーに関する粉砕特性及び必要な乾燥時間を示す。粉砕された粉末の残留湿分は乾燥プロセスの完全性に関する一つの尺度である。
【0064】
【表1】

【0065】
第2表に水溶液の溶液粘度を示す。
【0066】
【表2】

【0067】
応用例
本発明によるコポリマーの応用技術的評価を、極めて細材に乏しい自己充填コンクリート、石膏流し込み床張り材及び流し込みモルタルの範囲からの試験混合物をもとに行った。
【0068】
コンクリートを、実験室中で50リットルの強制ミキサーを用いて混合した。ミキサーの効率は45%であった。
【0069】
自己充填コンクリートの混合工程において、まず、骨材と微粉物質とを10秒間ミキサー中で均質化させ、その後引き続き混練水、流動化剤及び安定剤(水溶液としてかもしくは粉末として)を添加した。混合時間は4分間であった。引き続き、生コンクリート試験(スランプ流動性、気泡含分)を実施し、評価した。コンシステンシーの経過を120分間に亘って観察した。
【0070】
自己充填コンクリートを用いた試験に関しては、以下の試験装置を使用した:
流動性を測定するために、いわゆるアブラム(Abram)コーンと呼ばれるスランプコーン(上部内径100mm、下部内径200mm、高さ300mm)を使用した(スランプ流動性とは、2個の互いに垂直に位置する軸について測定されたものであり、コンクリートケークの直径平均cmである)。
【0071】
スランプ流動性の測定を、混合毎に5回、特に、混合後t=0、30、60、90及び120分の時点で行い、その際、混合物をそれぞれの流動性測定前にコンクリートミキサを用いて60秒に亘って再度混合した。
【0072】
気泡含分を測定するために、DIN1048(T1)に記載された気泡ポット(内容量8リットル)を使用した。
【0073】
混合物の浸出(未硬化の建築材料の表面上の水の分離)及び偏析を目視により評価した。
【0074】
セメントモルタル及び硬石膏−流し込み床張り材を、実験室でDIN EN 196−1によりモルタルミキサを用いて混合した。混合工程についても、DIN EN 196−1に記載の通りに実施した。混合時間は4分であった。流動性(=拡がったケークの直径cm)を、DIN EN 196第3部に記載のビカーリング(上部内径=70mm、下部内径=80mm、高さ=40mm)を用いて、平坦な乾燥したガラスプレート上で測定した(混合物を、流動性測定前に匙で60秒間再度撹拌した)。
【0075】
CP Kelco社のKelco-Crete(ウェランゴム)並びにセルロースエーテルTylose H20 P2及びTylose MH 2000 YP2(SE Tylose GmbH & Co. KG社、ヴィースバーデン在の製品)を、本発明によるコポリマーに対する他の比較物質として使用した。
【0076】
実施例B1:極めてわずかな微細粒含分を有する自己充填コンクリート
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
【表5】

【0079】
上記結果は、本発明によるコポリマーを添加した場合、400kg/m3の微細粒含分を有する極めて微細粒に乏しい自己充填コンクリートの加工性(経時的スランプ流動性)が著しく改善され、かつ同時に極めて安定なコンクリートが得られ、即ち浸出水の分離も偏析も生じないことを示す。それに対して比較例1〜3では極めて微細粒に乏しいコンクリートの十分な安定化は達成されず、即ち、浸出及び偏析が生じ、これは固体コンクリート特性に関して極めて不利である。確かに、ウェランゴムを用いた場合には極めて安定なコンクリートが得られるが、ウェランゴムの強過ぎる増粘作用によって加工性は明らかに悪化し、これは利用者にとって重大な欠陥である。
【0080】
曲げ引張り強さ及び圧縮強さは、本発明によるコポリマーによって何ら悪影響を受けない。
【0081】
実施例B2:わずかな微細粒含分を有する自己充填コンクリート
【表6】

【0082】
【表7】

【0083】
【表8】

【0084】
本発明によるコポリマーを添加した場合、極めて微細粒に乏しい実施例混合物B2の自己充填コンクリートにおいても、加工性(経時的スランプ流動性)は明らかに改善される。浸出水の分離及び偏析は同様に生じない。それに対して、比較例1〜3の場合には浸出及び偏析が生じるため、350kg/m3の微細粒含分を有する極めて微細粒に乏しいコンクリートの十分な安定化は達成されず、これはまたもや固体コンクリート特性に関して極めて不利である。確かに、ウェランゴムを用いた場合にはまたもや極めて安定なコンクリートが得られるという効果が生じるが、その加工性はウェランゴムの強過ぎる増粘作用によって明らかに悪化する。これは利用者にとって重大な欠陥である。
【0085】
固体コンクリート特性(曲げ引張り強さ及び圧縮強さ)は、本発明によるコポリマーによって、何ら悪影響を受けない。
【0086】
本発明によるコポリマーは、極めて細材に乏しい建築材料系において安定剤として抜群に作用するばかりでなく、微細粒にそれほど乏しくない建築材料系においても抜群に使用可能である。このことを、石膏流し込み床張り材及び流し込みモルタルの範囲からの以下の試験混合物によって詳説する。
【0087】
実施例B3:合成硬石膏ベースの石膏流し込み床張り材
【表9】

【0088】
【表10】

【0089】
【表11】

【0090】
第10表及び第11表の結果に示されるように、本発明によるコポリマーを添加した場合、極めて安定な建築材料混合物が得られ(浸出なし、偏析なし)、かつ加工性は比較例に対して明らかに改善される(経時的な流動性の低下がより低い)。更に、本発明によるコポリマーは明らかにより低い供給量で添加されるだけでよい。
【0091】
実施例B4:流し込みモルタル:
流し込みモルタルの組成を第12表に示す。
【0092】
【表12】

【0093】
【表13】

【0094】
第13表の試験結果は、本発明によるコポリマーによって、流し込みモルタルの極めて良好な流動性(経時的にも)並びに浸出及び偏析の効果的な防止が可能となることを示す。本発明によるコポリマーは安定剤としてポリカルボキシレートエーテル流動化剤(Melflux 1641 F)と一緒に抜群の作用を示し、かつ利用者にとって最適な流し込みモルタルの加工性を保証する。更に、市販の安定剤(Tylose H 20 P2)に対して、浸出及び偏析を生じることなく経時的により高い流動性が得られる。更に、本発明によるコポリマーは明らかにより低い供給量で添加されるだけでよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下
a)式(I)
【化1】

[式中、
1は水素又はメチルであり、
2、R3、R4は水素、1〜6個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、メチル基で置換されていてもよいフェニル基であり、かつ
Mは水素、一価又は二価の金属カチオン、アンモニウムないし有機アミン基であり、かつ
aは1/2又は1である]の構造基40〜93.89モル%
b)式(II)
【化2】

[式中、
YはO、NH又はNR5であり、
Vは
【化3】

であり、
5及びR6は相互に無関係に1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜8個のC原子を有する脂環式炭化水素基、又は6〜14個のC原子を有するアリール基を表し、その際、前記基はヒドロキシル基、カルボキシル基又はスルホン酸基で置換されていてもよく、
7
【化4】

であり、
xは1〜6であり、
XはF、Cl、Br、I、C1〜C4−アルキルスルフェート又はC1〜C4−アルキルスルホネートを表し、かつ
1、M及びaは上記の意味を有する]の構造基6〜59.89モル%
c)式(III)
【化5】

[式中、
Zは−(CH2q−O(Cn2nO)p−R8、−COO(Cn2nO)p−R8であり、
nは2〜4であり、
pは1〜200であり、
qは0〜20であり、
8はH、C1〜C4−アルキル基を表し、かつ
1は上記の意味を有する]の構造基0.1〜10モル%
及び/又は
d)式(IV)
【化6】

[式中、
Uは−COO(Cn2nO)p−R9、−(CH2q−O(Cn2nO)p−R9であり、
9
【化7】

並びに、10〜30個のC原子を有する不飽和又は飽和直鎖又は分枝鎖脂肪族アルキル基であり、
10はH、C1〜C6−アルキル基、C1〜C12−アルキル基とC6〜C14−アリール基とを有するアリールアルキル基を表し、
yは1〜3であり、かつ
1、n、p及びqは上記の意味を有する]の構造基0.01〜0.5モル%
からなる水溶性スルホ基含有コポリマー。
【請求項2】
一価又は二価の金属カチオンが、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンからなる、請求項1記載のコポリマー。
【請求項3】
有機アミン基が、有利に1級、2級及び3級C1〜C20−アルキルアミン、C1〜C20−アルカノールアミン、C5〜C8−シクロアルキルアミン及びC6〜C14−アリールアミンから誘導される置換されたアンモニウム基である、請求項1又は2記載のコポリマー。
【請求項4】
構造基a)50〜89.67モル%、構造基b)10〜45モル%、構造基c)0.3〜5モル%及び/又は構造基d)0.03〜0.4モル%からなる、請求項1から3までのいずれか1項記載のコポリマー。
【請求項5】
50000〜10000000g/モルの数平均分子量を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のコポリマー。
【請求項6】
構造基a)の30モル%までが、メタリルスルホン酸モノマー又はアリルスルホン酸モノマーから誘導される他のスルホン酸基含有構造単位と交換されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のコポリマー。
【請求項7】
構造基a)、b)、c)及び/又はd)からなる化合物が、更に、構造基a)、b)、c)及び/又はd)の合計に対して20モル%まで、特に15モル%まで、式(VI)
【化8】

[式中、
Wは−CO−O−(CH2m−、−CO−NR2−(CH2m−であり、
mは1〜6を表し、かつ
1、R2、5及びR6は上記の意味を有する]をベースとする更にもう1つの構造基f)を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載のコポリマー。
【請求項8】
構造基a)の30モル%までが、一般式(V)
【化9】

[式中、
1、M及びaは上記の意味を有する]のモノマーe)と交換されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のコポリマー。
【請求項9】
構造基b)の5モル%までが、N,N−ジメチルジアリル−アンモニウムクロリド及びN,N−ジエチルジアリル−アンモニウムクロリドから誘導される他のカチオン性構造単位と交換されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のコポリマー。
【請求項10】
更に、構造基a)、b)、c)及び/又はd)並びに場合によりe)及びf)の合計に対して0.1モル%まで、トリアリルアミン、トリアリルメチルアンモニウムクロリド、テトラアリルアンモニウムクロリド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、トリエチレングリコールビスメタクリレート、トリエチレングリコールビスアクリレート、ポリエチレングリコール(400)−ビスメタクリレート及びポリエチレングリコール(400)−ビスアクリレートの群から選択された架橋剤成分を含有する、請求項1から9までのいずれか1項記載のコポリマー。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載のコポリマーの製造法において、構造a)、b)、c)及び/又はd)並びに場合によりe)及びf)を形成するモノマーを、ラジカル性、イオン性又は錯体配位性の塊状重合、溶液重合、ゲル重合、乳化重合、分散重合又は懸濁重合により反応させることを特徴とする方法。
【請求項12】
コポリマーを、水相中で開始剤又は場合により他の助剤、例えば分子量調節剤の存在でのゲル重合又は溶液重合により製造する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
ゲル重合を、−5℃〜50℃で、35〜65質量%の水溶液の濃度で行う、請求項12記載の方法。
【請求項14】
溶液重合を、10〜100℃で、5〜30質量%の水溶液の濃度で行う、請求項12記載の方法。
【請求項15】
水硬性バインダー、例えばセメント、石灰、石膏及び硬石膏をベースとする水性建築材料系中での、並びに水性塗料系及び水性被覆系中での添加剤としての請求項1から10までのいずれか1項記載のコポリマーの使用。
【請求項16】
コポリマーを安定剤、レオロジー改質剤及び保水剤として使用する、請求項15記載の使用。
【請求項17】
コポリマーを、建築材料系、塗料系及び被覆系の乾燥質量に対して0.005〜3質量%の量で使用する、請求項15又は16記載の使用。

【公表番号】特表2009−526883(P2009−526883A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554667(P2008−554667)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001249
【国際公開番号】WO2007/093392
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】