説明

水溶性プレフラックス及びその利用

【課題】 イミダゾール化合物を水に溶解する性能に優れ、且つイミダゾール化合物が有する優れた造膜性を発揮させることができる低揮発性の可溶化剤を含有する水溶性プレフラックスを提供すると共に、前記の水溶性プレフラックスを金属製導電部に接触させる金属製導電部の表面処理方法を提供することを目的とする。
また、前記の水溶性プレフラックスをプリント配線板の回路部を構成する金属製導電部の表面に接触させたプリント配線板および、金属製導電部の表面を前記の水溶性プレフラックスで接触させた後に、半田付けを行う半田付け方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 イミダゾール化合物と、炭素数が4〜16である化1の一般式で示されるカルボン酸化合物を含有することを特徴とする水溶性プレフラックス。
【化1】


(式中、Rは炭素数が1〜4である直鎖状または分岐状のアルキル基、Rは水素原子またはメチル基を表す。mは0〜3の整数を表し、nは1または2を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品などをプリント配線板の回路部を構成する金属製導電部の表面に半田付けする際に使用する水溶性プレフラックス及びその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時プリント配線板の実装方法として、実装密度を向上させた表面実装が広く採用されている。このような表面実装方法は、チップ部品をクリーム半田で接合する両面表面実装、チップ部品のクリーム半田による表面実装とディスクリート部品のスルホール実装を組み合わせた混載実装等に分けられる。いずれの実装方法においても、プリント配線板は複数回の半田付けが行われるので、その度に高温に曝されて厳しい熱履歴を受ける。
その結果、プリント配線板の回路部を構成する金属製導電部の銅、銅合金や銀等の金属表面は、加熱されることにより酸化皮膜の形成が促進されるので、該導電部表面の半田付け性を良好に保つことができない。
【0003】
このようなプリント配線板の金属製導電部を空気酸化から保護するために、表面処理剤を使用して該導電部の表面に化成皮膜を形成させる処理が広く行われているが、金属製導電部が複数回の熱履歴を受けた後も化成皮膜が変成(劣化)することなく金属製導電部を保護し、これによって半田付け性を良好なものに保つことが要求されている。
【0004】
イミダゾール化合物が優れた造膜性を有するところから、このような表面処理剤として、種々のイミダゾール化合物を含有する水溶性プレフラックスが提案されている。例えば、特許文献1〜4には、前記のイミダゾール化合物として、2−ウンデシルイミダゾールの如き2−アルキルイミダゾール化合物、2−フェニルイミダゾールや2−フェニル−4−メチルイミダゾールの如き2−アリールイミダゾール化合物、2−ノニルベンズイミダゾールの如き2−アルキルベンズイミダゾール化合物、2−(4−クロロフェニルメチル)ベンズイミダゾールの如き2−アラルキルベンズイミダゾール化合物が開示されている。
【0005】
ところで、イミダゾール化合物は一般に水に難溶性であるので、その水溶性塩を形成する有機酸または無機酸を可溶化剤として使用して水に溶解させる必要があった。
近年では、イミダゾール化合物を水に溶解させる優れた性能と、イミダゾール化合物の造膜性を発揮させる優れた性能を兼ね備えた蟻酸や酢酸が可溶化剤として広く使用されているが、これらの酸化合物は揮発性が高く、また刺激臭を有するので、水溶性プレフラックス中の酸濃度が低下してイミダゾール化合物が析出したり、作業環境の悪化を招いたりするといった問題点があった。
【0006】
また、前述の半田付けの際には、錫−鉛合金の共晶半田が広く使用されていたが、近年その半田合金中に含まれる鉛による人体への有害性が懸念され、鉛を含まない半田を使用することが求められている。
そのために種々の無鉛半田が検討されているが、例えば錫をベース金属として、銀、亜鉛、ビスマス、インジウム、アンチモンや銅などの金属を添加した無鉛半田が提案されており、一部実用化されつつある。
【0007】
従来の錫−鉛系共晶半田は、金属製導電部の銅、銅合金や銀等の金属表面に対する濡れ性に優れており、金属に対して強固に接合するので、高い信頼性が得られている。
これに対して、無鉛半田は従来の錫−鉛半田に比べると、金属の表面に対する濡れ性が劣っているので、半田付け性が悪くボイド発生などの接合不良が生じ、接合強度も低いものであった。
そのため無鉛半田を使用するに当たっては、より半田付け性の良好な半田合金および無鉛半田に適したフラックスの選定が求められているが、金属製導電部の銅、銅合金や銀等の金属表面の酸化防止のために使用される水溶性プレフラックスに対しても、無鉛半田の濡れ性を改善し半田付け性を良好なものとする機能が求められている。
また、無鉛半田の多くは融点が高く、半田付け温度が従来の錫−鉛系共晶半田に比べて20〜50℃程高くなるため、当該水溶性プレフラックスに対しては、優れた耐熱性を有する化成皮膜を形成させることも望まれている。
【0008】
【特許文献1】特公昭46−17046号公報
【特許文献2】特開平4−206681号公報
【特許文献3】特開平5−25407号公報
【特許文献4】特開平5−186888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであって、イミダゾール化合物を水に溶解する性能に優れ、且つイミダゾール化合物が有する優れた造膜性を発揮させることができる低揮発性の可溶化剤を含有する水溶性プレフラックスを提供すると共に、前記の水溶性プレフラックスを金属製導電部に接触させる金属製導電部の表面処理方法を提供することを目的とする。
また、前記の水溶性プレフラックスをプリント配線板の回路部を構成する金属製導電部の表面に接触させたプリント配線板および、金属製導電部の表面を前記の水溶性プレフラックスで接触させた後に、半田付けを行う半田付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、炭素数が4〜16である化1の一般式で示されるカルボン酸化合物が、イミダゾール化合物を水に可溶化させる優れた性能およびイミダゾール化合物の優れた造膜性を発揮させる性能を有することを見出し本発明を完成するに至った。
【0011】
【化1】

(式中、Rは炭素数が1〜4である直鎖状または分岐状のアルキル基、Rは水素原子またはメチル基を表す。mは0〜3の整数を表し、nは1または2を表す。)
【0012】
即ち、第1の発明は、イミダゾール化合物と、炭素数が4〜16である化1の一般式で示されるカルボン酸化合物を含有する水溶性プレフラックスである。
また、第2の発明は、イミダゾール化合物を0.01〜10重量%の割合で含有し、前記のカルボン酸化合物を0.1〜50重量%の割合で含有する水溶性プレフラックスである。
第3の発明は、第1または第2の発明の水溶性プレフラックスと接触させることを特徴とする金属製導電部の表面処理方法である。
第4の発明は、金属製導電部の表面に第1または第2の発明の水溶性プレフラックスを接触させたことを特徴とするプリント配線板である。
第5の発明は、金属製導電部の表面に、第1または第2の発明の水溶性プレフラックスを接触させた後に半田付けを行うことを特徴とする半田付け方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水溶性プレフラックスは、イミダゾール化合物の可溶化剤として低揮発性であるカルボン酸化合物を含有しているので、水溶性プレフラックス中の可溶化剤の濃度を安定に保つことができ、且つ臭気を発生させることもない。また、可溶化剤として蟻酸や酢酸を使用した場合に比べて、イミダゾール化合物が有する優れた造膜性を発揮させることができる。
本発明の表面処理方法によれば、金属製導電部の表面に化成皮膜を形成させることができるので、金属製導電部表面の酸化を防止することができる。
本発明のプリント配線板を使用した場合には、金属製導電部と電子部品の接合を半田付けにより確実に行うことができる。
本発明の半田付け方法によれば、金属製導電部表面の酸化を防止することができるので、半田付け性を良好なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の実施に適するイミダゾール化合物は特に制限されないが、例えば、アルキルイミダゾール化合物、アリールイミダゾール化合物、アラルキルイミダゾール化合物、アルキルベンズイミダゾール化合物、アリールベンズイミダゾール化合物やアラルキルベンズイミダゾール化合物が例示される。
【0015】
前記アルキルイミダゾール化合物としては、1−デシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシル−4−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−オクチルイミダゾール、2−シクロヘキシルイミダゾール等が挙げられる。
【0016】
前記アリールイミダゾール化合物としては、1−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−トルイルイミダゾール、2−(4−クロロフェニル)イミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−1−ベンジルイミダゾール、2−フェニル−4−ベンジルイミダゾール、2,4−ジフェニルイミダゾール、2,4−ジフェニル−5−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−(3,4−ジクロロフェニル)イミダゾール、2−フェニル−4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−メチルイミダゾール、2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−フェニル−5−メチルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、2−ノニル−4−フェニルイミダゾール、4−フェニル−5−デシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ベンジルイミダゾール、2−(1−ナフチル)イミダゾール、2−(2−ナフチル)−4−(4−クロロフェニル)−5−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−(2−ナフチル)イミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、2−(2,4−ジクロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール、2−(1−ナフチル)−4,5−ジフェニルイミダゾール、2−(4−ピリジル)−4,5−ジフェニルイミダゾール等が挙げられる。
【0017】
前記アラルキルイミダゾール化合物としては、1−ベンジルイミダゾール、1−(4−クロロフェニル)メチル−2−メチルイミダゾール、2−ベンジルイミダゾール、2−ベンジル−4−メチルイミダゾール、2−(2−フェニルエチル)イミダゾール、2−(5−フェニルペンチル)イミダゾール、2−メチル−4,5−ジベンジルイミダゾール、1−(2,4−ジクロロフェニル)メチル−2−ベンジルイミダゾール、2−(1−ナフチル)メチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0018】
前記アルキルベンズイミダゾール化合物としては、1−ドデシル−2−メチルベンズイミダゾール、2−プロピルベンズイミダゾール、2−ペンチルベンズイミダゾール、2−オクチルベンズイミダゾール、2−ノニルベンズイミダゾール、2−ヘプタデシルベンズイミダゾール、2−ヘキシル−5−メチルベンズイミダゾール、2−ペンチル−5,6−ジクロロベンズイミダゾール、2−(1−エチルペンチル)ベンズイミダゾール、2−(2,4,4−トリメチルペンチル)ベンズイミダゾール、2−シクロヘキシルベンズイミダゾール、2−(5−シクロヘキシルペンチル)ベンズイミダゾール、2−フェノキシメチルベンズイミダゾール、2−(2−アミノエチル)ベンズイミダゾール、2,2´−エチレンジベンズイミダゾール、2−(メルカプトメチル)ベンズイミダゾール、2−ペンチルメルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0019】
前記アリールベンズイミダゾール化合物としては、1−フェニルベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、2−(4−クロロフェニル)ベンズイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルベンズイミダゾール、2−オルソトリル−5,6−ジメチルベンズイミダゾール、2−(1−ナフチル)−5−クロロベンズイミダゾール、5−フェニルベンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)ベンズイミダゾール等のアリールベンズイミダゾール化合物が挙げられる。
【0020】
前記アラルキルベンズイミダゾール化合物としては、1−ベンジルベンズイミダゾール、2−ベンジルベンズイミダゾール、2−(4−クロロフェニル)メチルベンズイミダゾール、2−(4−ブロモフェニル)メチルベンズイミダゾール、2−(2,4−ジクロロフェニル)メチルベンズイミダゾール、2−(3,4−ジクロロフェニル)メチルベンズイミダゾール、2−パラトリルメチル−5,6−ジクロロベンズイミダゾール、1−アリル−2−(4−クロロフェニル)メチルベンズイミダゾール、2−(2−フェニルエチル)ベンズイミダゾール、2−(3−フェニルプロピル)−5−メチルベンズイミダゾール、2−(1−ナフチル)メチルベンズイミダゾール、2−(2−フェニルビニル)ベンズイミダゾール、2−(ベンジルメルカプト)ベンズイミダゾール、2−(2−ベンジルメルカプトエチル)ベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0021】
これらのイミダゾール化合物は、水溶性プレフラックス中に0.01〜10重量%の割合、好ましくは0.1〜5重量%の割合で含有すればよい。イミダゾール化合物の含有割合が0.01重量%より少ないと、金属表面に形成される化成皮膜の膜厚が薄くなり、金属表面の酸化を十分に防止することができない。また、イミダゾール化合物の含有割合を10重量%より多くした場合には、半田付け条件に適した所望の膜厚を得るための表面処理の制御が難しくなる。
【0022】
本発明の実施において、イミダゾール化合物を可溶化(水溶液化)して水溶性プレフラックスを調製するに当たっては、可溶化剤として前記化1の一般式で示される炭素数が4〜16であるカルボン酸化合物が使用される。
本発明者等が見出した知見によれば、当該カルボン酸化合物を、アルコキシ基(R−O−)とカルボキシメチル基(−CHCOOH)またはカルボキシエチル基(−CCOOH)を、アルキレンエーテル鎖(−CHCH(R)−O−)により結合した化学構造を有するものとすることにより、イミダゾール化合物の可溶化性能を高めることができるので、mは1〜3であることがより好ましい。
また、炭素数が3である場合の当該カルボン酸化合物はメトキシ酢酸であるが、この物質は生体内で代謝され難く、精巣萎縮あるいは催奇性を有するとの報告がなされており、商用上の使用は好ましくない。
【0023】
化1の一般式で示される炭素数が4〜16であるカルボン酸化合物のうち、nが1である場合の化2の一般式で示される炭素数が4〜15であるカルボン酸化合物は、「油化学、第32巻、118頁(1983年)」に記載された方法に準じて合成することができる。即ち、化3の反応式に示されるとおり、過剰のアルコール化合物と所定モルの金属ナトリウムとを反応させ、次いで、金属ナトリウムの0.5倍モル量のモノクロロ酢酸を加え加熱反応させる。反応終了後、過剰のアルコール化合物を減圧留去し、中和に必要な量の濃塩酸を加え、エーテル等で抽出する。抽出液のエーテル等を減圧留去し、濃縮液を減圧蒸留して、当該カルボン酸化合物を得ることができる。
【0024】
【化2】

(式中、Rは炭素数が1〜4である直鎖状または分岐状のアルキル基、Rは水素原子またはメチル基を表す。mは0〜3の整数を表す。)
【0025】
【化3】

(式中、Rは炭素数が1〜4である直鎖状または分岐状のアルキル基、Rは水素原子またはメチル基を表す。mは0〜3の整数を表す。)
【0026】
前記の化2で示されるmが0の場合のカルボン酸化合物は、エトキシ酢酸、プロポキシ酢酸、イソプロポキシ酢酸、ブトキシ酢酸、イソブトキシ酢酸、sec-ブトキシ酢酸、tert-ブトキシ酢酸である。
【0027】
同様に、mが1であってRが水素原子である場合のカルボン酸化合物は、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸、2−(2−エトキシエトキシ)酢酸、2−(2−プロポキシエトキシ)酢酸、2−(2−イソプロポキシエトキシ)酢酸、2−(2−ブトキシエトキシ)酢酸、2−(2−イソブトキシエトキシ)酢酸、2−(2−sec-ブトキシエトキシ)酢酸、2−(2−tert-ブトキシエトキシ)酢酸である。
【0028】
同様に、mが2であってRが水素原子である場合のカルボン酸化合物は、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、2−[2−(2−プロポキシエトキシ)エトキシ]酢酸、2−[2−(2−イソプロポキシエトキシ)エトキシ]酢酸、2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、2−[2−(2−イソブトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、2−[2−(2−sec-ブトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、2−[2−(2−tert-ブトキシエトキシ)エトキシ]酢酸である。
【0029】
同様に、mが3であってRが水素原子である場合のカルボン酸化合物は、2−{2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}酢酸、2−{2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}酢酸、2−{2−[2−(2−プロポキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}酢酸、2−{2−[2−(2−イソプロポキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}酢酸、2−{2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}酢酸、2−{2−[2−(2−イソブトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}酢酸、2−{2−[2−(2−sec-ブトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}酢酸、2−{2−[2−(2−tert-ブトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}酢酸である。
【0030】
同様に、mが1であってRがメチル基である場合のカルボン酸化合物は、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)酢酸、2−(2−エトキシ−1−メチルエトキシ)酢酸、2−(2−プロポキシ−1−メチルエトキシ)酢酸、2−(2−イソプロポキシ−1−メチルエトキシ)酢酸、2−(2−ブトキシ−1−メチルエトキシ)酢酸、2−(2−イソブトキシ−1−メチルエトキシ)酢酸、2−(2−sec-ブトキシ−1−メチルエトキシ)酢酸、2−(2−tert-ブトキシ−1−メチルエトキシ)酢酸である。
【0031】
同様に、mが2であってRがメチル基である場合のカルボン酸化合物は、2−[2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]酢酸、2−[2−(2−エトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]酢酸、2−[2−(2−プロポキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]酢酸、2−[2−(2−イソプロポキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]酢酸、2−[2−(2−ブトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]酢酸、2−[2−(2−イソブトキ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]酢酸、2−[2−(2−sec-ブトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]酢酸、2−[2−(2−tert-ブトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]酢酸である。
【0032】
同様に、mが3であってRがメチル基である場合のカルボン酸化合物は、2−{2−[2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}酢酸、2−{2−[2−(2−エトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}酢酸、2−{2−[2−(2−プロポキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}酢酸、2−{2−[2−(2−イソプロポキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}酢酸、2−{2−[2−(2−ブトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}酢酸、2−{2−[2−(2−イソブトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}酢酸、2−{2−[2−(2−sec-ブトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}酢酸、2−{2−[2−(2−tert-ブトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}酢酸である。
【0033】
化1の一般式で示される炭素数が4〜16であるカルボン酸化合物のうち、nが2である場合の化4の一般式で示される炭素数が4〜16であるカルボン酸化合物は、「J.Am.Chem.Soc. 、第70巻、1333頁(1948年)」に記載されたシアノエチルエーテル化合物を原料とする方法に準じて合成することができる。
前記シアノエチルエーテル化合物は、「英国特許第544421号公報」や「米国特許第2280792号公報」に記載された方法に準じて合成することができる。
即ち、化5の反応式に示されるとおり、ナトリウムエトキシド等のアルカリ触媒の存在下、アルコール化合物とアクリロニトリルを反応させ、中和後、減圧蒸留してシアノエチルエーテル化合物を合成し、同シアノエチルエーテル化合物を塩酸等の強酸の水溶液中で加熱反応させ、反応混合物を濃縮し、析出する塩化アンモニウム等のアンモニウム塩を濾去し、濾液を減圧蒸留して、当該カルボン酸化合物を得ることができる。
【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

(式中、Rは炭素数が1〜4である直鎖状または分岐状のアルキル基、Rは水素原子またはメチル基を表す。mは0〜3の整数を表す。)
【0036】
前記の化4で示されるmが0の場合のカルボン酸化合物は、3−エトキシプロピオン酸、3−プロポキシプロピオン酸、3−イソプロポキシプロピオン酸、3−ブトキシプロピオン酸、3−イソブトキシプロピオン酸、3−sec-ブトキシプロピオン酸、3−tert-ブトキシプロピオン酸である。
【0037】
同様に、mが1であってRが水素原子である場合のカルボン酸化合物は、3−(2−メトキシエトキシ)プロピオン酸、3−(2−エトキシエトキシ)プロピオン酸、3−(2−プロポキシエトキシ)プロピオン酸、3−(2−イソプロポキシエトキシ)プロピオン酸、3−(2−ブトキシエトキシ)プロピオン酸、3−(2−イソブトキシエトキシ)プロピオン酸、3−(2−sec-ブトキシエトキシ)プロピオン酸、3−(2−tert-ブトキシエトキシ)プロピオン酸である。
【0038】
同様に、mが2であってRが水素原子である場合のカルボン酸化合物は、3−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]プロピオン酸、3−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]プロピオン酸、3−[2−(2−プロポキシエトキシ)エトキシ]プロピオン酸、3−[2−(2−イソプロポキシエトキシ)エトキシ]プロピオン酸、3−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]プロピオン酸、3−[2−(2−イソブトキシエトキシ)エトキシ]プロピオン酸、3−[2−(2−sec-ブトキシエトキシ)エトキシ]プロピオン酸、3−[2−(2−tert-ブトキシエトキシ)エトキシ]プロピオン酸である。
【0039】
同様に、mが3であってRが水素原子である場合のカルボン酸化合物は、3−{2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}プロピオン酸、3−{2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}プロピオン酸、3−{2−[2−(2−プロポキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}プロピオン酸、3−{2−[2−(2−イソプロポキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}プロピオン酸、3−{2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}プロピオン酸、3−{2−[2−(2−イソブトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}プロピオン酸、3−{2−[2−(2−sec-ブトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}プロピオン酸、3−{2−[2−(2−tert-ブトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}プロピオン酸である。
【0040】
同様に、mが1であってRがメチル基である場合のカルボン酸化合物は、3−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)プロピオン酸、3−(2−エトキシ−1−メチルエトキシ)プロピオン酸、3−(2−プロポキシ−1−メチルエトキシ)プロピオン酸、3−(2−イソプロポキシ−1−メチルエトキシ)プロピオン酸、3−(2−ブトキシ−1−メチルエトキシ)プロピオン酸、3−(2−イソブトキシ−1−メチルエトキシ)プロピオン酸、3−(2−sec-ブトキシ−1−メチルエトキシ)プロピオン酸、3−(2−tert-ブトキシ−1−メチルエトキシ)プロピオン酸である。
【0041】
同様に、mが2であってRがメチル基である場合のカルボン酸化合物は、3−[2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]プロピオン酸、3−[2−(2−エトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]プロピオン酸、3−[2−(2−プロポキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]プロピオン酸、3−[2−(2−イソプロポキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]プロピオン酸、3−[2−(2−ブトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]プロピオン酸、3−[2−(2−イソブトキ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]プロピオン酸、3−[2−(2−sec-ブトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]プロピオン酸、3−[2−(2−tert-ブトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]プロピオン酸である。
【0042】
同様に、mが3であってRがメチル基である場合のカルボン酸化合物は、3−{2−[2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}プロピオン酸、3−{2−[2−(2−エトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}プロピオン酸、3−{2−[2−(2−プロポキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}プロピオン酸、3−{2−[2−(2−イソプロポキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}プロピオン酸、3−{2−[2−(2−ブトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}プロピオン酸、3−{2−[2−(2−イソブトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}プロピオン酸、3−{2−[2−(2−sec-ブトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}プロピオン酸、3−{2−[2−(2−tert-ブトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}プロピオン酸である。
【0043】
これらのカルボン酸化合物は、水溶性プレフラックス中に0.1〜50重量%の割合、好ましくは1〜30重量%の割合で含有すればよい。カルボン酸化合物の含有割合が0.1重量%より少ない場合には、イミダゾール化合物を十分に可溶化することができず、また50重量%より多くした場合には、カルボン酸化合物の薬剤コストが増大するため好ましくない。
【0044】
本発明の実施においては、必要に応じて従来知られた有機酸、無機酸または有機溶剤を可溶化剤として、当該カルボン酸化合物と併用しても良い。
この際に使用される代表的な有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、グリオキシル酸、ピルビン酸、アセト酢酸、レブリン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、グリコール酸、グリセリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、パラニトロ安息香酸、パラトルエンスルホン酸、サリチル酸、ピクリン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、酒石酸、アジピン酸等が挙げられ、無機酸としては、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。
【0045】
また有機溶剤としては、水と自由に混和するメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコールあるいはアセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、エチレングリコール等が挙げられる。
【0046】
本発明の水溶性プレフラックスには、金属製導電部の表面における化成皮膜の形成速度を速めるために銅化合物を添加することができ、また形成された化成皮膜の耐熱性を更に向上させるために亜鉛化合物を添加しても良い。
前記銅化合物の代表的なものとしては、酢酸銅、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化銅、水酸化銅、リン酸銅、硫酸銅、硝酸銅等であり、また前記亜鉛化合物の代表的なものとしては、酸化亜鉛、蟻酸亜鉛、酢酸亜鉛、蓚酸亜鉛、乳酸亜鉛、クエン酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、リン酸亜鉛等が挙げられ、何れも水溶性プレフラックス中に0.01〜10重量%の含有割合、好ましくは0.02〜5重量%の含有割合となるように添加すれば良い。
【0047】
これらの銅化合物や亜鉛化合物を用いる場合には、水溶性プレフラックス中に、アンモニアあるいはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類等の緩衝作用を有する物質を添加して水溶性プレフラックスのpHを安定にすることが好ましい。
【0048】
本発明の水溶性プレフラックスには、化成皮膜の形成速度および該皮膜の耐熱性を更に向上させるために、ハロゲン化合物を0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%の含有割合となるように添加することができる。ハロゲン化合物としては、例えばフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、塩化ナトリム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化アンモニウム、ヨウ化ナトリム、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウム等が挙げられる。
【0049】
本発明の水溶性プレフラックスを用いてプリント配線板の金属製導電部の表面を処理する際の条件としては、水溶性プレフラックスの液温を10〜70℃、接触時間を1秒〜10分とすることが好ましい。接触方法としては、浸漬、噴霧、塗布等の方法が挙げられる。
【0050】
また本発明の表面処理を行った後、化成皮膜上に熱可塑性樹脂により二重構造を形成し、更に耐熱性を高めることも可能である。
即ち、金属製導電部の表面上に化成皮膜を生成させた後、ロジン、ロジンエステル等のロジン誘導体、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等のテルペン樹脂誘導体、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂等の炭化水素樹脂やこれらの混合物からなる耐熱性に優れた熱可塑性樹脂を、トルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール等の溶媒に溶解し、ロールコーター等により化成皮膜上に膜厚1〜30μmの厚みになるように均一に塗布して、化成皮膜と熱可塑性樹脂の二重構造を形成させれば良い。
【0051】
本発明の半田付け方法は、加熱溶融した液体状の半田が入っている半田槽の上を、プリント配線板を流し、電子部品とプリント配線板の接合部に半田付けを行なうフロー法または、予めプリント配線板にペースト状のクリーム半田を回路パターンに合わせて印刷し、そこに電子部品を実装し、プリント配線板を加熱して半田を溶融させ、半田付けを行うリフロー法等に適応し得るものである。
【0052】
本発明の半田付けに適する半田としては、従来より使用されている錫−鉛合金の共晶半田の他、Sn−Ag−Cu系、Sn−Ag−Bi系、Sn−Bi系、Sn−Ag−Bi−In系、Sn−Zn系、Sn−Cu系等の無鉛半田が挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例および比較例で使用したイミダゾール化合物、カルボン酸化合物ならびに評価試験方法は次のとおりである。
【0054】
[イミダゾール化合物]
・2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業社製、商品名「C11Z」)
・2−フェニルイミダゾール(四国化成工業社製、商品名「2PZ」)
・2−フェニル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、商品名「2P4MZ」)
・2−フェニル−4−(3,4−ジクロロフェニル)イミダゾール(特開2005−104878号公報に記載の方法に従って合成した)
・2−フェニル−4−(2−ナフチル)−5−メチルイミダゾール(参考例1の方法に従って合成した)
・2−フェニル−4−(2−ナフチル)イミダゾール(参考例2の方法に従って合成した)
・2−ベンジル−4−メチルイミダゾール(Poly Organix社製)
・2−ノニルベンズイミダゾール(SIGMA-ALDRICH社製、試薬)
・2−(4−クロロフェニルメチル)ベンズイミダゾール(「Science of Synthesis、第12巻、529頁(2002年)」に記載の方法に準拠して合成した)
・2−(1−ナフチル)メチルベンズイミダゾール(「Biochemical Pharmacology、第36巻、463頁(1987年)」に記載の方法に準拠して合成した)
【0055】
〔参考例1〕
<2−フェニル−4−(2−ナフチル)−5−メチルイミダゾールの合成方法>
ベンズアミジン塩酸塩と等モルのソジウムメチラートをテトラヒドロフラン中で1時間加熱還流し、冷却後、等モルの2−ブロモ−2’−プロピオナフトンのテトラヒドロフラン溶液を30℃を超えないように滴下し、さらに等モルのソジウムメチラートを加えて1時間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、残渣を水洗しアセトニトリルより再結晶して、灰青色結晶を得た。
【0056】
〔参考例2〕
<2−フェニル−4−(2−ナフチル)イミダゾールの合成方法>
ベンズアミジン塩酸塩と等モルのソジウムメチラートをテトラヒドロフラン中で1時間加熱還流し、冷却後、等モルのω−ブロモ−2−アセトナフトンのテトラヒドロフラン溶液を30℃を超えないように滴下し、さらに等モルのソジウムメチラートを加えて1時間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、残渣を水洗しアセトニトリルより再結晶して、灰青色結晶を得た。
【0057】
[カルボン酸化合物]
・2−エトキシ酢酸(SIGMA-ALDRICH社製の試薬、化合物Aと略記する)。
・2−(2−メトキシエトキシ)酢酸(化合物Bと略記する)
・2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(化合物Cと略記する)
・2−{2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}酢酸(化合物Dと略記する)
・2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)酢酸(化合物Eと略記する)
・2−[2−(2−プロポキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]酢酸(化合物Fと略記する)
・2−{2−[2−(2−ブトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエトキシ]−1−メチルエトキシ}酢酸(化合物Gと略記する)
・3−エトキシプロピオン酸(化合物Hと略記する)
・3−(2−メトキシエトキシ)プロピオン酸(化合物Iと略記する)
・3−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)プロピオン酸(化合物Jと略記する)
・3−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]プロピオン酸(化合物Kと略記する)
・3−{2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}プロピオン酸(化合物Lと略記する)
化合物B〜Gについては、「油化学、第32巻、118頁(1983年)」に記載された方法に準拠して合成した。
化合物H〜Lについては、「J.Am.Chem.Soc. 、第70巻、1333頁(1948年)」と、「英国特許第544421号公報」及び又は「米国特許第2280792号公報」に記載された方法に準拠して合成した。
なお化合物A〜Lの構造式は、表1に示したとおりである。
【0058】
【表1】

【0059】
〔参考例3〕
<イミダゾール化合物の可溶化試験>
2−フェニル−(3,4−ジクロロフェニル)イミダゾール0.20gを、本発明に使用するカルボン酸化合物2.0gに溶解させた後、イオン交換水を加えて白濁化するまでに要した水量(mL)を測定した。この水量が多いほど、カルボン酸化合物が有するイミダゾール化合物の可溶化性能が優れているものと判定される。
得られた試験結果は、表2〜4に示したとおりであり、アルコキシ基(R−O−)とカルボキシメチル基(−CHCOOH)またはカルボキシエチル基(−CCOOH)を、アルキレンエーテル鎖(−CHCH(R)−O−)により結合した化学構造とすることにより、イミダゾール化合物の可溶化性能が高められたものと認められる。
【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
[半田上がり性の評価試験]
試験片として、内径0.80mmの銅スルホールを300穴有する120mm(縦)×150mm(横)×1.6mm(厚み)のガラスエポキシ樹脂製のプリント配線板を使用した。この試験片を脱脂、ソフトエッチング及び水洗を行った後、所定の液温に保持した水溶性プレフラックスに所定時間浸漬し、次いで水洗、乾燥して銅表面上に厚さ約0.10〜0.50μmの化成皮膜を形成させた。
この表面処理を行った試験片について、赤外線リフロー装置(製品名:MULTI−PRO−306、ヴィトロニクス社製)を用いて、ピーク温度が240℃であるリフロー加熱を3回行い、次いで、フロー半田付け装置(コンベア速度:1.0m/分)を用いて半田付けを行った。
なお、使用した半田は、63錫-37鉛(重量%)の組成を有する錫−鉛系共晶半田(商品名:H63A、千住金属工業製)であり、半田付けに際して使用したフラックスはJS−64MSS(弘輝製)である。また、半田温度は240℃とした。
また、前記の表面処理を行った試験片について、錫−鉛系共晶半田の場合と同様にして無鉛半田を使用して半田付けを行った。なお、使用した半田は、96.5錫-3.0銀-0.5銅(重量%)の組成を有する無鉛半田(商品名:H705「エコソルダー」、千住金属工業製)であり、半田付けに際して使用したフラックスはJS−E−09(弘輝製)である。また、リフロー加熱のピーク温度は245℃であり、半田温度も245℃とした。
半田付けを行った試験片について、銅スルーホールの上部ランド部分まで半田が上昇した(半田付けされた)スルーホール数を計測し、全スルーホール数(300穴)に対する割合(%)を算出した。
銅の表面に対して半田の濡れ性が大きい程、溶融した半田が銅スルーホール内を浸透し該スルーホールの上部ランド部分まで上昇し易くなる。即ち、全スルーホール数に対する上部ランド部分まで半田が上昇したスルーホール数の割合が大きい程、銅に対する半田濡れ性が優れ、半田付け性が良好なものと判定される。
【0064】
[半田広がり性の評価試験]
試験片として、50mm(縦)×50mm(横)×1.2mm(厚み)のガラスエポキシ樹脂製のプリント配線板(回路パターンとして、銅箔からなる導体幅0.80mm、長さ20mmの回路部を、1.0mmの間隔にて幅方向に10本形成させたもの)を使用した。この試験片を脱脂、ソフトエッチング及び水洗を行った後、所定の液温に保持した水溶性プレフラックスに所定時間浸漬し、次いで水洗、乾燥して銅表面上に厚さ約0.10〜0.50μmの化成皮膜を形成させた。
この表面処理を行った試験片について、赤外線リフロー装置(製品名:MULTI−PRO−306、ヴィトロニクス社製)を用いて、ピーク温度が240℃であるリフロー加熱を1回行った。その後、開口径1.2mm、厚み150μmのメタルマスクを使用して銅回路部の中央に錫−鉛系クリーム半田を印刷し、前期条件でリフロー加熱を行い、半田付けを行った。なお、使用した錫−鉛系クリーム半田は63錫-37鉛(重量%)からなる組成の共晶半田(商品名:OZ−63−330F−40−10、千住金属工業製)である。
また、前記の表面処理を行った試験片について、錫−鉛系クリーム半田の場合と同様にして無鉛系クリーム半田を使用して半田付けを行った。なお、使用した無鉛系クリーム半田は、96.5錫-3.0銀-0.5銅(重量%)からなる組成の無鉛半田(商品名:M705−221BM5−42−11、千住金属工業製)である。また、クリーム半田の印刷前および印刷後に行うリフロー加熱は、ピーク温度が245℃になるように設定した。
得られた試験片について、銅回路部の表面に濡れ広がった半田の長さ(mm)を測定した。
この長さが大きい程、半田濡れ性が優れ、半田付け性が良好なものと判定される。
【0065】
〔実施例1〕
イミダゾール化合物として2−ウンデシルイミダゾール、可溶化剤としてエトキシ酢酸、金属塩として酢酸銅、ハロゲン化合物として塩化アンモニウムを、各々表5に記載した組成になるようにイオン交換水に溶解させた後、アンモニア水でpH3.7に調整して水溶性プレフラックスを調製した。
次いで、プリント配線板の試験片を40℃に温調した水溶性プレフラックスに60秒間浸漬したのち、水洗、乾燥し、半田上がり性および半田広がり性を測定した。これらの試験結果は表5に示したとおりであった。
【0066】
〔実施例2〜16〕
実施例1と同様にして、表5記載の組成を有する水溶性プレフラックスを調製し、表5に記載の処理条件にて表面処理を行い、評価試験を実施した。得られた試験結果は表5に示したとおりであった。
【0067】
【表5】

【0068】
〔比較例1〜11〕
実施例1と同様にして、表6記載の組成を有する水溶性プレフラックスを調製し、表6に記載の処理条件にて表面処理を行い、評価試験を実施した。得られた試験結果は表6に示したとおりであった。
【0069】
【表6】

【0070】
表5および6に示される試験結果によれば、可溶化剤として化合物A〜Lを含有する水溶性プレフラックスにより表面処理を行い、共晶半田または無鉛半田を使用して半田付けを行った場合の半田上がり性および半田広がり性は、イミダゾール化合物の種類に拘わらず、可溶化剤として蟻酸または酢酸を使用した場合に比べて顕著な改善効果が認められた。
なお、実施例において調製した水溶性プレフラックスは無臭であったが、比較例の水溶性プレフラックスは、酢酸または蟻酸の揮発に起因する特有の刺激臭を有するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミダゾール化合物と、炭素数が4〜16である化1の一般式で示されるカルボン酸化合物を含有することを特徴とする水溶性プレフラックス。
【化1】

(式中、Rは炭素数が1〜4である直鎖状または分岐状のアルキル基、Rは水素原子またはメチル基を表す。mは0〜3の整数を表し、nは1または2を表す。)
【請求項2】
イミダゾール化合物を0.01〜10重量%の割合で含有し、カルボン酸化合物を0.1〜50重量%の割合で含有することを特徴とする請求項1記載の水溶性プレフラックス。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の水溶性プレフラックスを接触させることを特徴とする金属製導電部の表面処理方法。
【請求項4】
金属製導電部の表面に、請求項1または請求項2記載の水溶性プレフラックスを接触させたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項5】
金属製導電部の表面に、請求項1または請求項2記載の水溶性プレフラックスを接触させた後に半田付けを行うことを特徴とする半田付け方法。


【公開番号】特開2007−928(P2007−928A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355985(P2005−355985)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000180302)四国化成工業株式会社 (167)
【Fターム(参考)】