説明

水溶性有効成分の付着化組成物及び水溶性有効成分の付着方法

【課題】安全、簡便かつ短時間で対象面に水溶性有効成分を対象面に付着させ、付着した有効成分が滞留してその機能を発現させることができる水溶性有効成分を高効率に付着させる組成物を提供する。
【解決手段】塩感応性高分子化合物と、この塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解され、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物の溶解性が低下する電解質水溶液と、水溶性有効成分とを含み、水で希釈することにより水溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させることを特徴とする水溶性有効成分の付着化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象面に水溶性有効成分を高効率に付着させる組成物及び水溶性有効成分を対象面に高効率に付着させる方法に関するものである。具体的には、電解質水溶液に一部又は全部が溶解している塩感応性高分子化合物が、水で希釈され溶解性が低下し、その際、水溶性有効成分を担持して対象物表面に付着し、対象面に水溶性有効成分を付着させる付着化組成物及び水溶性有効成分の付着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの水溶性有効成分は、主に水を主体とする溶液として製品化され、洗浄、吸着、塗布等の手法により用いられている。しかしながら、水溶性有効成分は、水に溶けやすいため水中又は水溶液で処理しても対象表面に吸着・滞留させて、放出量を制御することが困難であった。
【0003】
以上のことから、水溶性有効成分を、安全かつ簡便に対象面に付着させる技術の開発が望まれていた。なお、本発明に関連する先行技術文献としては下記が挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−342122号公報
【特許文献2】特開2001−181354号公報
【特許文献3】特表2005−512943号公報
【特許文献4】特表2002−528406号公報
【特許文献5】特開平7−173077号公報
【特許文献6】特表平11−508609号公報
【特許文献7】特開昭60−51107号公報
【特許文献8】特表平8−512061号公報
【特許文献9】特表2002−502364号公報
【特許文献10】特開平9−175971号公報
【特許文献11】特開2005−145952号公報
【特許文献12】特表2004−231665号公報
【特許文献13】特開平6−298631号公報
【特許文献14】特開平6−287124号公報
【特許文献15】特開平4−244012号公報
【特許文献16】特表2002−521415号公報
【特許文献17】特開2002−325556号公報
【特許文献18】特表2005−255645号公報
【特許文献19】特表2005−510538号公報
【非特許文献1】「月刊フードケミカル」、1995年10月、別冊、p55−60
【非特許文献2】「FOOD Style21」、2005年、9巻2号、p47−49
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、安全、簡便かつ短時間で、水溶性有効成分を対象面に付着させ、付着した有効成分が滞留してその機能を発現させることができる、水溶性有効成分を高効率に付着させる組成物、及び水溶性有効成分を高効率に付着させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、例えば、1分子中にアニオン性解離基とカチオン性解離基とを有する両性高分子化合物や、アニオン性高分子化合物等とカチオン性高分子化合物等との組み合わせが、電解質を含む水溶液中では一部又は全部が溶解する性質を有する一方、水で希釈されることにより溶解性が低下することを知見した。さらに、このような性質を有する化合物(以下、塩感応性高分子化合物)の一部又は全部が溶解した電解質水溶液と、水溶性有効成分とを有する組成物を水で希釈することにより、塩感応性高分子化合物が水溶性有効成分とともに析出し、対象表面に付着することを知見し、本発明を完成するに至ったものである。
さらに、一価金属塩(但し、フッ素化合物を除く)と水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)とを併用することにより、塩感応性高分子化合物とフッ素化合物との結びつきが強固になり、フッ素化合物の対象物への付着増加効果をより得ることができることを知見し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は下記発明を提供する。
[1].塩感応性高分子化合物(A)と、この塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解され、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物の溶解性が低下する、電解質(B)を含有する水溶液と、水溶性有効成分(C)とを含み、水で希釈することにより水溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させることを特徴とする水溶性有効成分の付着化組成物。
[2].塩感応性高分子化合物(A)0.001〜20質量%と、電解質(B)0.5〜10質量%と、水溶性有効成分(C)0.001〜20質量%と、水とを含み、上記塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解された組成物であって、この組成物を水で希釈することにより水溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させることを特徴とする水溶性有効成分の付着化組成物。
[3].水溶性有効成分(C)が、抗菌成分又は殺菌成分である[1]又は[2]記載の付着化組成物。
[4].塩感応性高分子化合物(A)と、この塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解され水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物の溶解性が低下する、一価金属塩(但し、フッ素化合物を除く)(B´)を含む電解質水溶液と、水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)と、フッ素化合物(C´)とを含有し、水で希釈することによりフッ素化合物とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させることを特徴とするフッ素化合物の付着化組成物。
[5].塩感応性高分子化合物(A)0.001〜20質量%と、一価金属塩(但し、フッ素化合物を除く)(B´)0.5〜10質量%と、水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)と、フッ素化合物(C´)と、水とを含有し、上記塩感応性高分子化合物(A)の一部又は全部が溶解された組成物であって、水で希釈されることにより、フッ素化合物とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させることを特徴とするフッ素化合物の付着化組成物。
[6].水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)が、水溶液中でカルシウムイオンを供給する化合物である[4]又は[5]記載の付着化組成物。
[7].塩感応性高分子化合物(A)が、1分子中にアニオン性解離基とカチオン性解離基とを有する両性高分子化合物である[1]〜[6]のいずれかに記載の付着化組成物。
[8].塩感応性高分子化合物(A)が、スルホベタイン系高分子化合物、カルボキシベタイン系高分子化合物、ホスホベタイン系高分子化合物、又はアニオン性基含有ビニル単量体とカチオン性基含有ビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体である[7]記載の付着化組成物。
[9].塩感応性高分子化合物(A)が、アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質、及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上と、カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質、及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせである[1]〜[6]のいずれかに記載の付着化組成物。
[10].付着対象面が口腔内である[1]〜[9]のいずれかに記載の付着化組成物。
[11].塩感応性高分子化合物(A)と、この塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解され、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物の溶解性が低下する電解質(B)を含有する水溶液と、水溶性有効成分(C)とを含む組成物を水で希釈することにより、水溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、水溶性有効成分を付着させるべき対象面に析出・付着させる水溶性有効成分の付着方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安全かつ簡便に対象面に水溶性有効成分が効率よく滞留し、その機能を発現することができる水溶性有効成分の付着化組成物及び水溶性有効成分の付着方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の付着化組成物は、塩感応性高分子化合物(A)と、この塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解され、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物の溶解性が低下する、電解質(B)を含有する水溶液と、水溶性有効成分(C)とを含み、水で希釈することにより水溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させることを特徴とする水溶性有効成分の付着化組成物である。
【0010】
また、本発明の付着化組成物は、塩感応性高分子化合物(A)と、この塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解され水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物の溶解性が低下する、一価金属塩(但し、フッ素化合物を除く)(B´)を含む電解質水溶液と、水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)と、フッ素化合物(C´)とを含有し、水で希釈することによりフッ素化合物とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させることを特徴とするフッ素化合物の付着化組成物である。
【0011】
(A)塩感応性高分子化合物
本発明の塩感応性高分子化合物は、その一部又は全部が25℃において、電解質溶液中で溶解する一方、電解質濃度の低下によって溶解状態が低下するという塩感応性を有する高分子化合物をいう。具体的には0.5〜10質量%の電解質水溶液中に、20質量%以下、好ましくは0.001〜20質量%、より好ましくは0.1〜20質量%の塩感応性高分子化合物の一部又は全部、好ましくは全部が溶解しているが、水で希釈されて電解質濃度が0.5質量%未満になると溶解性が低下し、分離・析出する高分子化合物をいう。溶解性低下の基準としては、水で希釈したときの不溶分が電解質溶液中での不溶分質量より増大することで確認することができる。より具体的には、塩感応性高分子化合物を含む電解質水溶液を水で希釈し遠心分離操作(5000G(49033.25m/s2)、15分、5℃)したときの不溶分質量(W1:遠心分離操作後の下層質量)と、希釈操作を行わない電解質溶液に対する不溶分(W2:遠心分離操作後の下層質量)の比で評価することができ、W1/W2が1.01以上であり、好ましくは1.05以上、さらに好ましくは1.1以上である。なお、詳細は後述する試験例1に記載する。
【0012】
塩感応性高分子化合物としては、下記(A−I),(A−II)の塩感応性を有する化合物又は組み合わせが挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
(A−I)1分子中にアニオン性解離基とカチオン性解離基とを有する両性高分子化合物
(A−II)アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上と、カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせ(混合物)
なお、上記高分子化合物及びタンパク質は、塩、例えば、ナトリウム、カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニウム塩等でもよい。
【0013】
(A−I)1分子中にアニオン性解離基とカチオン性解離基とを有する両性高分子化合物としては、スルホベタイン系高分子化合物、カルボキシベタイン系高分子化合物、ホスホベタイン系高分子化合物、又はアニオン性基含有ビニル単量体とカチオン性基含有ビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体が挙げられる。
【0014】
スルホベタイン系塩感応性高分子化合物としては、スルホベタイン基含有ビニル単量体を含む単量体混合物の重合体が挙げられ、具体的には、(1).(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体の重合体、(2).(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体、(3).(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体と、(c1)上記(a1)及び(b)単量体と共重合可能なビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体が挙げられる。
【0015】
カルボキシベタイン系塩感応性高分子化合物としては、カルボキシベタイン基含有ビニル単量体を含む単量体混合物の重合体が挙げられ、具体的には、(1).(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体の重合体、(2).(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体、(3).(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体と、(c2)上記(a2)及び(b)単量体と共重合可能なビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体が挙げられる。
【0016】
ホスホベタイン系塩感応性高分子化合物としては、ホスホベタイン基含有ビニル単量体を含む単量体混合物の重合体が挙げられ、具体的には、(1).(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体の重合体、(2).(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体、(3).(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体と、(c3)上記(a3)及び(b)単量体と共重合可能なビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体が挙げられる。
【0017】
(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体、(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体、(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体とは、それぞれ、単量体中にアニオン性であるスルホン酸基又はその塩、カルボン酸基又はその塩、リン酸基又はその塩と、カチオン性基との両者を有するものである。カチオン性基としてはアミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基等を挙げることができる。(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体、(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体、及び(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。以下、(a1)、(a2)及び(a3)を総称する場合(a)、(c1)、(c2)及び(c3)を総称する場合(c)と示す。
【0018】
(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体としては、下記一般式(1−(1))で示される化合物が挙げられる。
【0019】
【化1】

(式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、R3,R4は独立に、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示し、R5は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜15の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキレン基、又は水酸基で置換されていてもよいフェニレン基、Aは酸素原子又はNHを示し、X1はスルホン酸アニオンを示す。)
【0020】
一般式(1−(1))で表される化合物としては、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート、3−ジメチル(アクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムブタンスルホネート、3−ジメチル(アクリロイルオキシエチル)アンモニウムスルホネート等が挙げられる。
【0021】
一般式(1−(1))の化合物は、3級アミノ基含有ビニル単量体のスルホベタイン化により合成することができる。スルホベタイン化は、該3級アミノ基含有ビニル単量体と、2−ブロモエタンスルホン酸塩等のハロスルホン酸塩、又は1,3−プロパンサルトンや1,4−ブタンサルトン等のサルトン類等との反応によって得ることができる。本発明においては、反応後速やかに進行し塩を副生しない点から、サルトン類との反応が好ましい。
【0022】
上記3級アミノ基含有ビニル単量体としては、具体的には、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なお、(メタ)アクリルとはアクリル及び/又はメタクリルを示す。
【0023】
(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体としては、下記一般式(1−(2))で示される化合物が挙げられる。
【0024】
【化2】

(式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、R3,R4は独立に、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示し、R5は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜15の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキレン基、又は水酸基で置換されていてもよいフェニレン基、Aは酸素原子又はNHを示し、X2はカルボン酸アニオンを示す。)
【0025】
一般式(1−(2))で表される化合物としては、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムエタンカルボキシレート、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンカルボキシレート、3−ジメチル(アクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンカルボキシレート、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムブタンカルボキシレート、3−ジメチル(アクリロイルオキシエチル)アンモニウムカルボキシレート等が挙げられる。
【0026】
一般式(1−(2))の化合物は、3級アミノ基含有ビニル単量体のカルボキシベタイン化により合成することができる。カルボキシベタイン化は、該3級アミノ基含有ビニル単量体と、モノクロロ酢酸塩等のハロカルボン酸塩、又はβ−ラクトンやγ−ラクトン等のラクトン類との反応によって得ることができる。本発明においては、反応後速やかに進行し塩を副生しない点から、ラクトン類との反応が好ましい。
【0027】
(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体としては、下記一般式(1−(3))で示される化合物が挙げられる。
【0028】
【化3】

(式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、R3,R4は独立に、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示し、R5は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜15の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキレン基、又は水酸基で置換されていてもよいフェニレン基、Aは酸素原子又はNHを示し、X3はリン酸アニオンを示す。)
【0029】
一般式(1−(3))で表される化合物としては、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムエタンホスフェート、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンホスフェート、3−ジメチル(アクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンホスフェート、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムブタンホスフェート、3−ジメチル(アクリロイルオキシエチル)アンモニウムスホスフェート等が挙げられる。
【0030】
一般式(1−(3))の化合物は、3級アミノ基含有ビニル単量体のホスホベタイン化により合成することができる。ホスホベタイン化は、該3級アミノ基含有ビニル単量体と、ω−ブロモアルキルホスフェートやω−ブロモアルキルホスフィネート等のハロアルキルホスフェート類、2−クロロ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン等のハロホスホラン類、又は2−ブロモエチルジクロロホスフェート等のハロアルキルジハロホスフェート類との反応によって得ることができる。
【0031】
(b)疎水性基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、下記一般式(2)で表される化合物又はシリコーンマクロモノマー等の疎水性重合体を含有するマクロモノマーが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0032】
【化4】

(式中、R1,Aは上記と同様であり、R6は炭素数1〜18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基もしくはベンジル基を示す。)
【0033】
上記一般式(2)で示される化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、プロピル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド、ヘキシル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
塩感応性高分子化合物としては、塩感応性の機能をさらに発揮せしめる点から、さらに、(c)上記(a)及び(b)単量体と共重合可能なビニル単量体を含む単量体組み合わせの共重合体であることが好ましい。このような単量体としては、特に限定されるものではないが、合成される共重合体の溶解性のコントロールや担持、付着機能の調整等の目的に応じて使用することができ、例えば、親水性基含有ビニル単量体や架橋性単量体等を使用することができる。
【0035】
親水性基含有ビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アクリルアミドメタンスルホン酸(塩)、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)、メタンスルホン酸(メタ)アクリレート等のアニオン性基を有するもの、塩化トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、塩化トリメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、塩化トリメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、塩化トリエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、塩化トリメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、塩化トリメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、塩化トリメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、塩化トリエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、等の4級アンモニウム基を有するもの、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の3級アミノ基を有するもの、(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有するもの、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するもの、ビニルピロリドン、ビニルピリジン又は下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン基含有ビニル単量体等を挙げることができる。
【0036】
【化5】

(式中、R7は水素原子又はメチル基を示し、R8は水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を示し、BOはエチレンオキシ基、又はエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とからなるアルキレンオキシ基を示し、nはBOの平均付加モル数であり、4〜50の数を示す。)
【0037】
架橋性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0038】
これらの(c)単量体としては、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。好ましい(c)単量体としては、塩感応性の機能を損なうことなく、共重合体の溶解性コントロールが容易である点から、親水性基含有ビニル単量体が好ましく、上記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン基含有ビニル単量体がより好ましく、特にエチレンオキサイド基含有ビニル単量体が好ましい。
【0039】
本発明のスルホベタイン系塩感応性高分子化合物、カルボキシベタイン系塩感応性高分子化合物、ホスホベタイン系塩感応性高分子化合物は、上記組み合わせの単量体の混合物を後述する製法等で共重合することにより得ることができる。(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体、(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体、又は(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体の場合、共重合比は、本発明の目的に適用しうる塩感応性を発現させる点から、上記(b)単量体と上記(a)単量体との質量比〔b〕/〔a〕が0.01〜5であることが好ましく、より好ましくは0.03〜3である。この〔b〕/〔a〕の比が上記0.01〜5の範囲外になると、電解質水溶液に溶解できないか、溶解したとしても本発明の目的に適用し得るだけの塩感応性が得られない場合がある。
【0040】
(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体、(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体又は(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体と、(c)上記(a)及び(b)単量体と共重合可能なビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体の場合、本発明の目的に適用しうる塩感応性をさらに発現させる点から、上記(b)単量体と(a)単量体の質量比〔b〕/〔a〕が0.01〜5、及び(c)単量体と(a)単量体の質量比〔c〕/〔a〕が0.01〜2の範囲内が好ましい。より好ましくは、〔b〕/〔a〕が0.03〜3、〔c〕/〔a〕が0.01〜1である。〔b〕/〔a〕及び〔c〕/〔a〕が上記各範囲(0.01〜5、0.01〜2)外となると、溶解性・分散性の観点から電解質水溶液に溶解できないか、溶解したとしても本発明の目的に適用し得るだけの塩感応性が得られない場合がある。この中でも0.5質量%以上10質量%未満の電解質水溶液中に、塩感応性高分子化合物0.1〜10質量%が溶解し、水で希釈することで溶解性が低下し、水溶性有効成分と共に対象面に付着する特徴を持つものが好ましい。
【0041】
(d)アニオン性基含有ビニル単量体と(e)カチオン性基含有ビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体について説明する。(d)アニオン性基含有ビニル単量体としては、カルボン酸、リン酸、スルホン酸等の官能基を有するビニル単量体が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸及びその塩、無水マレイン酸、その加水分解物及び加アルコール分解物、ハーフエステル及びその塩、クロトン酸及びその塩、アシッドホスホオキシ(アルキル)(メタ)アクリレート及びその塩、アシッドホスホオキシ(ポリオキシアルキレン)(メタ)アクリレート及びその塩、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、ビニルスルホン酸及びその塩、アリルスルホン酸及びその塩、メタリルスルホン酸及びその塩、スチレンスルホン酸及びその塩等が挙げられる。この中でも、(メタ)アクリル酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸が好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0042】
(e)カチオン性基含有ビニル単量体としては、3級又は4級アミノ基を有するビニル単量体が挙げられる。具体的には、下記一般式(4)又は(5)で表される少なくとも1種のカチオン性又はカチオン化可能な官能基を有するモノエチレン性ビニル単量体が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0043】
【化6】

(式中、R9は水素原子又はメチル基、Yは酸素原子又はNHを示し、R10は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、R11,R12は独立に、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。)
【0044】
一般式(4)で示すビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジプロピルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド化合物等が挙げられる。一般式(4)で表されるビニル単量体は、重合前又は重合後に他の化合物と反応させてもよい。反応例としては、臭化ブロム等のハロゲン化アルキルによるカチオン化が挙げられる。
【0045】
【化7】

(式中、R9は水素原子又はメチル基、Yは酸素原子又はNHを示し、R10は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、R11,R12及びR13は独立に、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。Zはハロゲン、OH、1/2HSO4、1/3PO4、HCO2又はCH3CO2を示す。)
【0046】
一般式(5)で表されるビニル単量体として、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエチルクロライド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエチル硫酸、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルリン酸、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエチルリン酸、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルメチルクロライド、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエチルクロライド、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエチル硫酸、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルメチルリン酸、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエチルリン酸、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドメチルクロライド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドエチルクロライド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドエチル硫酸、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドメチルリン酸、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドエチルリン酸等が挙げられる。この中で、メタクリル酸ジメチルアミノエチルクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドクロライドが好ましい。
【0047】
アニオン性基含有ビニル単量体とカチオン性基含有ビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体は、(1)(d)アニオン性基含有ビニル単量体と(e)カチオン性基含有ビニル単量体との共重合体、(2)(d)アニオン性基含有ビニル単量体と、(e)カチオン性基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体、(3)(d)アニオン性基含有ビニル単量体と、(e)カチオン性基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体と、(f)アニオン性基含有ビニル単量体、カチオン性基含有ビニル単量体、及び上記(b)単量体と共重合可能なビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体が挙げられる。
【0048】
(b)疎水性基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、下記一般式(2)で表される化合物又はシリコーンマクロモノマー等の疎水性重合体を含有するマクロモノマーが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0049】
【化8】

(式中、R1,Aは上記と同様であり、R6は炭素数1〜18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基もしくはベンジル基を示す。)
【0050】
上記一般式(2)で示される化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、プロピル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド、ヘキシル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
(f)アニオン性基含有ビニル単量体、カチオン性基含有ビニル単量体及び上記(b)単量体と共重合可能なビニル単量体としては、(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有する単量体、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン基含有ビニル単量体、架橋性単量体が挙げられる。
【0052】
【化9】

(式中、R7は水素原子又はメチル基を示し、R8は水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を示し、BOはエチレンオキシ基、又はエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とからなるアルキレンオキシ基を示し、nはBOの平均付加モル数であり、4〜50の数を示す。)
【0053】
架橋性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0054】
これらの(f)単量体としては、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。好ましい(f)単量体としては、塩感応性の機能を損なうことなく、共重合体の溶解性コントロールが容易である点から、親水性基含有ビニル単量体が好ましく、上記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン基含有ビニル単量体がより好ましく、特にエチレンオキサイド基含有ビニル単量体が好ましい。
【0055】
(3)(d)アニオン性基含有ビニル単量体と、(e)カチオン性基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体と、(f)アニオン性基含有ビニル単量体、カチオン性基含有ビニル単量体及び上記(b)単量体と共重合可能なビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体の場合、本発明の目的に適用しうる塩感応性をさらに発現させる点から、上記(b)単量体と、(d)アニオン性基含有ビニル単量体と、(e)カチオン性基含有ビニル単量体との合計((d)+(e))との質量比〔b〕/〔(d)+(e)〕が0.01〜5、及び(f)単量体と((d)+(e))との質量比〔f〕/〔(d)+(e)〕が0.01〜2の範囲内が好ましい。より好ましくは、〔b〕/〔(d)+(e)〕が0.03〜3、〔f〕/〔(d)+(e)〕が0.01〜1である。〔b〕/〔(d)+(e)〕及び〔f〕/〔(d)+(e)〕が上記各範囲(0.01〜5、0.01〜2)外となると、電解質水溶液に溶解できないか、溶解したとしても本発明の目的に適用し得るだけの塩感応性が得られない場合がある。この中でも0.5質量%以上10質量%未満の電解質水溶液中に、塩感応性高分子化合物0.1〜10質量%が溶解し、水で希釈することで溶解性が低下し、水溶性有効成分と共に対象面に付着する特徴を持つものが好ましい。
【0056】
本発明において、得られる共重合体を含む塩感応性高分子化合物の分子量は、特に限定されないが、通常、重量平均分子量で1000〜100万、好ましくは、水溶性有効成分の担持性、単独又は担持した状態での付着性の点から、1万〜50万の範囲にあるものが好ましい。なお、重量平均分子量の測定方法は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、スルホベタイン化、カルボシキベタイン化、ホスホベタイン化等の変性前の重合体を試料とし、0.42質量%トリエチルアミンを含むテトラヒドロフランを溶媒とし、ポリスチレン標準にて換算して分子量を算出する。
【0057】
本発明の共重合体の製造方法は特に限定されず、上記単量体の混合物を、溶液重合、乳化重合、沈殿重合等の各種の方法を用いることにより共重合して製造することができる。溶液重合を行う場合は、性質の異なる複数の単量体を溶解するための重合溶媒が用いられる。このようなものとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が使用される。また、重合開始剤は特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、過硫酸カリウム等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物を用いることができる。さらに、開始剤の使用量も特に限定されず、通常、全単量体量に対して、0.1〜10モル%である。重合温度は、重合方法や用いる開始剤の種類等により異なるが、通常、50〜100℃であり、重合時間は、2〜10時間である。なお、本発明の共重合体は、使用する開始剤の量、重合溶媒の種類、重合時のモノマー濃度等の重合条件を調整することで、分子量を制御することができる。
【0058】
本発明のスルホベタイン系塩感応性高分子化合物、カルボキシベタイン系塩感応性高分子化合物及びホスホベタイン系塩感応性高分子化合物は、上述の如く、(a)単量体、(a)及び(b)単量体、さらに好ましくはこれらと共重合可能な(c)単量体を上記重合方法等に従って重合することにより製造することができるが、(a)単量体のうち上記一般式(1)〜(3)で示される単量体に関しては、前駆体である3級アミノ基含有ビニル単量体を(b)単量体、必要に応じてさらに(c)単量体と共重合したのち、共重合体中3級アミノ基部をスルホベタイン化、カルボキシベタイン化又はホスホベタイン化することで製造することもできる。
【0059】
とりわけ、(c)単量体の一部又は全部として3級アミノ基を有するビニル単量体を選択し、かつ(a)単量体が該3級アミノ基含有単量体のスルホベタイン化、カルボキシベタイン化又はホスホベタイン化反応により得られるものである場合には、最終的に得られる高分子化合物中におけるそれらの構成比が所望となるように、共重合体中該3級アミノ基を部分的にスルホベタイン化、カルボキシベタイン化又はホスホベタイン化反応することで、所望の構成比からなる目的のスルホベタイン系塩感応性高分子化合物、カルボキシベタイン系塩感応性高分子化合物、ホスホベタイン系塩感応性高分子化合物を得ることができる。
【0060】
本発明の塩感応性高分子化合物として、(A−I)1分子中にアニオン性解離基とカチオン性解離基とを有する両性高分子化合物を用いる場合、その含有量は、付着化組成物中0.001〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。
【0061】
(A−II)アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上と、カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせは、上記塩感応性を有するものである。(i)アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上と、(ii)カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上との質量比(i)/(ii)は、1/99〜99/1の範囲が好ましく、より好ましくは1/19〜19/1であり、さらに好ましくは1/5〜5/1、特に好ましくは1/2〜2/1である。さらに、タンパク質を含まない場合は、電荷比でアニオン/カチオンが0.01〜100の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜10、さらに好ましくは0.5〜5の範囲のものが好ましい。電荷の比率は、高分子化合物を構成する荷電性単量体のモル数を高分子化合物1単位質量で割ったものが、当該高分子化合物の電荷として算出され、混合するそれぞれの高分子化合物について、電荷と混合質量比を掛け合わせたもの(総電荷数)の比率が、混合時の電荷比である。
【0062】
(i)アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種
又は2種以上
(i−1)アニオン性高分子化合物
アニオン性高分子化合物としては、カルボン酸基含有モノマーの(共)重合体、リン酸基含有モノマーの(共)重合体、スルホン酸基含有モノマーの(共)重合体、硫酸基含有モノマーの(共)重合体、カルボン酸基含有多糖類、スルホン酸基含有多糖類、リン酸基含有多糖類等のアニオン性多糖、ポリグルタミン酸等のポリアミノ酸類、及びこれらの塩が挙げられる。
【0063】
カルボン酸基含有モノマーの(共)重合体の具体例としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸共重合体、ポリイタコン酸、カルボキシビニルポリマー、エチレン無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、エチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、n−ブチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、イソプロピル無水マレイン酸共重合体及びそれらの開環体、グリオキシル酸による部分アセタール化ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0064】
リン酸基含有モノマーの(共)重合体の具体例としては、市販リン酸含有モノマー(アシッドホスホオキシエチルアクリレート(ホスマーA)、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート(ホスマーM)、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート(ホスマーCl)、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート(ホスマーPE)、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート(ホスマーPP):以上、全てユニケミカル(株))との共重合体等が挙げられる。
【0065】
スルホン酸基含有モノマーとの(共)重合体の具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレンスルホン酸、(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等)の(共)重合体等が挙げられる。硫酸基含有モノマーの(共)重合体の具体例としては、ポリビニル硫酸等が挙げられる。
【0066】
アニオン性多糖としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸、キサンタンガム、ジェランガム、シェラック、カラギーナン、ペクチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマンタン硫酸、ヘパリン及びこれらの塩等のムコ多糖等が挙げられる。
【0067】
また、これらの塩、例えば、ナトリウム、カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニウム塩等が挙げられる。これらは、酵素、酸、アルカリ等により加水分解してから用いてもよく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0068】
本発明に用いるアニオン性高分子化合物としては、リン酸基含有アニオン性高分子化合物、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸、カーボポール等の疎水化ポリアクリル酸、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体及びその開環体等のアクリル酸含有共重合体、アニオン性多糖、ならびにこれらの塩が好ましい。
【0069】
市販品としては、リン酸基含有アニオン性高分子化合物として、ホスマーM、ホスマーPE、ホスマーMH、ホスマーCL、ホスマーPP(ユニケミカル(株)製)、ポリアクリル酸ナトリウム(アロンビスM:日本純薬)、ポリグルタミン酸ナトリウム(γ−PGA LMW、γ−PGA HMW:日本ポリグル(株)製、明治ポリグルタミン酸:(株)明治フードマテリア製)が挙げられる。ここで、明治ポリグルタミン酸については、その分子量が多くの場合100万程度であることが、「FOOD Style21」9巻2号(2005)に記載されている。また、γ−PGA LMW及びγ−PGA HMWについては、その分子量は、それぞれ20万〜40万、及び、80万〜100万であることが、日本ポリグル(株)のカタログ等に記されている。
【0070】
また、アニオン性高分子化合物としては、アニオン性基含有ビニル単量体を含む単量体混合物の共重合体が挙げられ、具体的には、上記(d)アニオン性基含有ビニル単量体混合物の共重合体、上記(d)アニオン性基含有ビニル単量体と、上記(b)疎水性基含有ビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体、上記(d)アニオン性基含有ビニル単量体と、上記(b)疎水性基含有ビニル単量体と、上記(f)アニオン性基含有ビニル単量体及び(b)単量体と共重合可能なビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体が挙げられる。この場合の比率は(b)/(d)=0.01〜5、(f)/((b)+(d))=0.01〜5が好ましい。
【0071】
アニオン性高分子化合物の分子量は特に制限がないが、1000〜500万が好ましい。分子量が小さすぎると析出性が不足する場合がある。大きすぎると製造時のハンドリング性等が低下する場合がある。なお、分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量を用いた。
【0072】
(i−2)酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質
酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質とは、等電点がpH7より酸性側にあるタンパク質及び糖タンパク質である。酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質としては、アルブミン、オボアルブミン、グリニシン、カゼイン、ゼラチン、ムチン及びこれらの塩等が挙げられる。これらの天然高分子化合物は、酵素又は酸により加水分解してから用いてもよい。
【0073】
より具体的には、カゼインナトリウム(三栄源エフエフアイ(株)製)、カゼインのトリプシン分解物(CPP−I、CPP−II、CPP−III:(株)明治フードマテリア製、CPOP、商品名:森永乳業(株)製)が挙げられる。また、カゼインのトリプシン分解物であるCPP−I、CPP−II、CPP−IIIについては、その製造法や、分子構造(アミノ酸配列)が、「月刊フードケミカル」10月号(1995)に記載されている。また、CPP−I、CPP−II、CPP−IIIは、マクロペプチドの混合物であるが、特に、その性能に寄与するホスホセリン高含有マクロペプチド(カゼインホスホペプチドといわれる)の分子量が4600、及び3100であることが、やはり上記文献中に記載されている。酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質の中では、カゼイン、カゼイン分解物、ムチンが好ましい。
【0074】
特に、一価金属塩(但し、フッ素化合物を除く)(B´)を含む電解質水溶液と、水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)とを併用し、フッ素化合物(C´)を対象面に付着させる場合、(i)アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質又は酸性糖タンパク質としては、リン酸基含有アニオン性高分子化合物、カゼイン、その分解物、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸、疎水化ポリアクリル酸、アクリル酸含有共重合体及びこれらの塩が好ましい。
【0075】
(i)アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上の含有量は、付着化組成物中0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.3〜3質量%である。この範囲で、より十分な付着効果が発揮され、含有量が多すぎると、例えば歯磨き等にした場合の使用性が低下する場合がある。
【0076】
(ii)カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上
本発明に用いられるカチオン性高分子化合物としては、カチオン化セルロース、ジメチルジアリルアンモニウム重合体(ホモポリマー)、塩化ジメチルジアリルアンモニウムとエチレン性不飽和炭化水素基を有する重合可能な単量体とのコポリマー、カチオン化ポリビニルピロリドン、カチオン化ポリアミド、ポリエチレンイミド、カチオン化デンプン、カチオン化アミロース、カチオン化グアーガム、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化寒天、キチン、キトサン及びこれらの変性物等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これらの中でも、キトサン、カチオン化セルロース、ポリリジンが好ましい。
【0077】
カチオン化セルロースとしては、カチオン化度が0.01〜1で、粘度が100〜10000mPa・s(カチオン化セルロース1質量%水溶液、B型粘度計、25℃、No.3ローターで30rpm・1分で測定)のカチオン化セルロースが好ましい。カチオン化セルロースとしては、ヒドロキシエチルセルロースにジメチルジアリルアンモニウム塩をグラフト重合したヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウム塩(日本エヌエスシー(株)製のセルコートL−200、セルコートH−100等)、ヒドロキシエチルセルロースに2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドを結合した塩化O−〔2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース(ライオン(株)製のレオガードMGP、レオガードHLP、レオガードGPS、レオガードKGP、レオガードG、レオガードGP、レオガードMLP、レオガードLP等が挙げられる。この中でも、レオガードMLP(カチオン化度(α)0.2、1%水溶液粘度1000〜2600mPa・s,25℃)が好ましい。特に、一価金属塩(但し、フッ素化合物を除く)(B´)を含む電解質水溶液と、水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)とを併用し、フッ素化合物(C´)を対象面に付着させる場合、水溶性有効成分(C)とを含有する場合は、カチオン化セルロースが好ましく、塩化O−〔2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース(レオガードMLP、α=0.2、レオガードLP、α=0.4、レオガードGP、α=0.6:ライオン(株)製)、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド(セルコートL−200、セルコートH−100:日本エヌエスシー(株)製)が好ましい。
【0078】
また、カチオン性高分子化合物としては、カチオン性基含有ビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体が挙げられ、具体的に上記(e)カチオン性基含有ビニル単量体の重合体、(e)カチオン性基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体、(e)カチオン性基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体と、(f)上記(e)カチオン性基含有ビニル単量体及び(b)単量体と共重合可能なビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体が挙げられる。この場合の比率は(b)/(e)=0.01〜5、(f)/((e)+(b))=0.01〜5が好ましい。
【0079】
具体的には、ジメチルジアリルアンモニウム重合体、ジメチルジアリルアンモニウムとエチレン性不飽和炭化水素基を有する重合可能な単量体との共重合体、カチオン化ポリビニルピロリドン、カチオン化ポリアミド、カチオン化ポリメタクリレート、カチオン化ポリアクリルアミド、カチオン化メタクリレートとアクリルアミドとの共重合体、カチオン化メタクリレートとメタクリレートの共重合体、ポリエチレンイミド等が挙げられる。この中でも、ジメチルジアリルアンモニウム重合体(マーコート100:イー・シー・シー・インターナショナル社製)が好ましい。
【0080】
塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質とは、等電点がpH7より塩基性側にあるタンパク質及び糖タンパク質である。塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質としては、ラクトフェリン、卵白リゾチーム、塩化リゾチーム等のリゾチーム、ポリリジン、アテロコラーゲン、コラーゲン及びこれらの塩等が挙げられる。これらの天然高分子化合物は、酵素又は酸により加水分解してから用いてもよい。塩基性タンパク質、塩基性糖タンパク質の中ではラクトフェリン、ラクトフェリン分解物、ポリリジン、リゾチーム、アテロコラーゲンが好ましい。市販品としては、ラクトフェリン(森永乳業(株)製)、ラクトフェリン分解物(森永乳業(株)製)、リゾチーム(卵白リゾチーム、塩化リゾチーム:キユーピー(株)製)、アテロコラーゲン等が挙げられる。特に、一価金属塩(但し、フッ素化合物を除く)(B´)を含む電解質水溶液と、水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)とを併用し、フッ素化合物(C´)を対象面に付着させる場合は、リゾチーム(卵白リゾチーム、塩化リゾチーム:キユーピー(株)製)、アテロコラーゲンが好ましい。
【0081】
(ii)カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上の含有量は、付着化組成物中0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.3〜3質量%である。この範囲で、より十分な付着効果が発揮され、含有量が多すぎると、例えば歯磨き等にした場合の使用性が低下する場合がある。
【0082】
アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上と、カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせの場合、アニオン性多糖、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸、カゼイン及びカゼイン分解物、ムチン、ならびにこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上と、キトサン、カチオン化セルロース、ラクトフェリン、リゾチーム、ポリリジン、コラーゲン及びこれらの塩、ならびにジメチルジアリルアンモニウム重合体及びジメチルジアリルアンモニウムとエチレン性不飽和炭化水素基を有する重合可能な単量体との共重合体から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせが好ましい。
【0083】
この中でも、コンドロイチン硫酸又はその塩とラクトフェリン、コンドロイチン硫酸又はその塩とラクトフェリン分解物、ポリグルタミン酸又はその塩とラクトフェリン、ポリグルタミン酸又はその塩とラクトフェリン分解物、ヒアルロン酸又はその塩とラクトフェリン、ヒアルロン酸又はその塩とラクトフェリン分解物、ムチンとラクトフェリン、ムチンとラクトフェリン分解物、ポリグルタミン酸又はその塩とカチオン化セルロース、ポリグルタミン酸又はその塩とリゾチーム、ポリグルタミン酸又はその塩とコラーゲン、ポリグルタミン酸又はその塩と卵白リゾチーム、ポリグルタミン酸又はその塩と卵白ポリリジン、カゼイン又はその塩と卵白リゾチーム、カゼイン分解物と卵白リゾチーム、酵素分解カゼインとラクトフェリン、酵素分解カゼインとラクトフェリン分解物、酵素分解カゼインとコラーゲン、酵素分解カゼインとカチオン化セルロース、ムチンとポリリジン、ポリアクリル酸又はその塩とリゾチーム、ポリアクリル酸又はその塩とコラーゲン、アルギン酸又はその塩とカチオン化セルロース、アルギン酸又はその塩とコラーゲン、コンドロイチン硫酸とコラーゲン、ポリアクリル酸又はその塩とカチオン化セルロース、ポリアクリル酸又はその塩とラクトフェリン分解物、ジェランガムとカチオン化セルロース、ジェランガムとキトサン、ヒアルロン酸又はその塩とカチオン化セルロース、カラギーナンとカチオン化セルロース、カラギーナンとポリリジン、ヒアルロン酸ナトリウムと卵白リゾチーム、コンドロイチン硫酸ナトリウムと卵白リゾチーム、ヒアルロン酸又はその塩と塩化リゾチーム、コンドロイチン硫酸又はその塩と塩化リゾチーム、コンドロイチン硫酸ナトリウムとカチオン化セルロース、ペクチンとラクトフェリン、ペクチンとラクトフェリン分解物、ポリアクリル酸又はその塩と塩化リゾチームが好ましい。なお、上記塩はナトリウム塩が好ましい。
【0084】
特に、一価金属塩(但し、フッ素化合物を除く)(B´)を含む電解質水溶液と、水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)とを併用し、フッ素化合物(C´)を対象面に付着させる場合は、アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上と、カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせの場合、ポリグルタミン酸又はその塩とカチオン化セルロース、ポリグルタミン酸又はその塩とリゾチーム、ポリグルタミン酸又はその塩とコラーゲン、ポリグルタミン酸又はその塩とキトサン、酵素分解カゼインとカチオン化セルロース、酵素分解カゼインとリゾチーム、酵素分解カゼインとラクトフェリン、酵素分解カゼインとコラーゲン、カゼイン又はその塩とリゾチーム、ムチンとポリリジン、ポリアクリル酸とカチオン化セルロース、ポリアクリル酸とリゾチーム、ポリアクリル酸とジメチルジアリルアンモニウム重合体、ポリアクリル酸とコラーゲン、アルギン酸とカチオン化セルロース、アルギン酸とコラーゲン、コンドロイチン硫酸とコラーゲン、カラギーナンとコラーゲン、ヒアルロン酸又はその塩とカチオン化セルロース、カルボン酸基含有モノマーの(共)重合体とカチオン化セルロース等が好ましい。なお、上記塩はナトリウム塩が好ましい。
【0085】
塩感応性高分子化合物として、(A−II)アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上と、カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせを用いる場合、その合計含有量は、付着化組成物中0.001〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.001〜10質量%、さらに好ましくは0.003〜5質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%である。この範囲で、より十分な付着効果と、水溶性有効成分の十分な機能発揮が得られる。
【0086】
特に、一価金属塩(但し、フッ素化合物を除く)(B´)を含む電解質水溶液と、水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)とを併用し、フッ素化合物(C´)を対象面に付着させる場合は、塩感応性高分子化合物として、(B−II)アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上と、カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせを用いる場合、その合計含有量は、付着化組成物中0.001〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜20質量%、さらに好ましくは0.1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは0.2〜10質量%、最も好ましくは0.5〜5質量%である。この範囲で、より十分な付着効果が発揮され、含有量が多すぎると、例えば歯磨き等にした場合の使用性が低下する場合がある。
【0087】
(B)電解質
本発明は、塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解され、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物の溶解性が低下する、電解質(B)を含有する水溶液を有する。塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解された電解質水溶液に用いられる電解質は、水に溶解してイオンを形成するものであれば特に限定されることはなく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。電解質としては、一価の無機塩(但し、フッ素化合物を除く)が好ましく、具体的には、一価金属塩(B´)が挙げられ、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。また、一価金属の対イオンとなるアニオン性イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオン等が挙げられる。また、これら一価金属とアニオン性イオンが塩を形成する場合に、水素イオンが含まれてもよい。この中でも、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等のような無機電解質が好適に使用される。
【0088】
電解質の含有量は、塩感応性高分子化合物が溶解できれば特に限定されないが、塩感応性高分子化合物を溶解させるのに十分でかつ希釈時に析出させるためにできるだけ低い濃度に設定することが好ましく、電解質濃度としては付着化組成物中0.5質量%以上10質量%が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上10質量%未満、さらに好ましくは0.5〜7質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。少なすぎると、塩感応性高分子化合物を溶解できない場合があり、多すぎると逆に析出物が生じたり(塩析)、口腔用組成物の場合は、味覚が損なわれる場合がある。
【0089】
本発明においては、一価金属塩(但し、フッ素化合物を除く)(B´)を用い、さらに(D)水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物を併用することで、フッ素化合物(C´)を、対象面に析出・付着させる効果が顕著に発揮される。
【0090】
この場合、フッ素化合物(C´)としては、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、フッ化カリウム(KF)が好ましく、(B´)の含有量は、塩感応性高分子化合物が溶解できれば特に限定されないが、付着化組成物中0.5〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上10質量%未満、さらに好ましくは0.5〜5質量%、特に好ましくは0.5〜3質量%である。少なすぎると、塩感応性高分子化合物を溶解できない場合があり、多すぎると逆に析出物が生じたり(塩析)、口腔用組成物の場合は、味覚が損なわれる場合がある。
【0091】
(D)水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物
本発明の付着化組成物に、水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物を配合することにより、塩感応性高分子化合物と、フッ素化合物の親和性が大幅に向上するため、対象物に対するフッ素化合物付着量が大幅に増加する。このような成分としては、塩化カルシウム(CaCl2)、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸カルシウム(CaP27)等の水溶液中でカルシウムイオンを供給する化合物が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。この中でも、塩化カルシウム(CaCl2)が好ましい。
【0092】
(D)水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物は、付着化組成物中0.001〜1質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜0.5質量%、さらに好ましくは0.01〜0.3質量%である。この範囲で、特にフッ素化合物の対象物への付着増加効果をより得ることができ、多すぎると、塩感応性高分子化合物やフッ素化合物が析出する場合がある。
【0093】
アニオン性高分子化合物と上記(D)成分を併用する場合は、アニオン性高分子化合物と多価金属イオンを供給する化合物との質量比は、多価金属イオンを供給する化合物の質量/アニオン性高分子化合物の質量の値が、0.005〜0.5であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.3である。この値が少なすぎると、フッ素化合物付着増加効果が不十分であり、多すぎると、フッ素化合物やアニオン性高分子化合物が析出するおそれがある。
【0094】
本発明の付着化組成物は電解質水溶液を含み、付着化組成物中の水の含有量は、塩感応性高分子化合物(A)の一部又は全部が溶解されれば特に限定されず、1〜99.5質量%未満の範囲で適宜選定され、5〜99質量%が好ましく、より好ましくは50〜99質量である。
【0095】
(C)水溶性有効成分
本発明の水溶性有効成分とは、25℃条件下で、水溶性有効成分1質量%水溶液を、0.45ミクロンフィルターでろ過したときの固形分濃度低下率が1質量%未満であるものをいう。水溶性有効成分は特に限定されず、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、殺菌成分、抗菌成分、水溶性の殺菌・抗菌成分、水溶性香味剤、水溶性色素、水溶性ビタミン、水溶性医薬品等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。この中でも、殺菌剤・抗菌剤であるフッ化物イオンを放出するフッ素化合物が好ましく、より好ましくはフッ化物イオンの金属塩である。
【0096】
抗菌成分又は殺菌成分としては、口腔用水溶性有効成分が挙げられ、具体的には、う蝕予防有効成分として一般に用いられるフッ素化合物(C´)が挙げられる。より具体的には、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化アンモニウム(NH4F)、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化第一錫(SnF2)、フッ化銀(AgF)、フッ化亜鉛(ZnF2)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、フッ化鉄(FeF3)、(FeF2)等の無機フッ化物塩、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のモノフルオロ酸塩が挙げられ、この中でもフッ化物イオンの金属塩が好ましく、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫、フッ化アミン、フッ化カリウムがより好ましく、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫がさらに好ましい。特に、一価金属塩(但し、フッ素化合物を除く)(B´)を含む電解質水溶液と、水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)とを併用し、フッ素化合物(C´)を対象面に付着させる場合は、フッ素化合物(C´)が好ましく、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、フッ化カリウム(KF)等のフッ化物イオンの金属塩が好ましい。
【0097】
水溶性殺菌成分としては、塩酸ジアミノエチルグリシン、ラウロイルサルコシリルナトリウム、塩化セチルピリジニウム等が挙げられる。水溶性抗菌成分としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、塩酸ポリヘキサメチレンビグアニジン、塩化ベンザルコニウム、塩化セタルコニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム、アイオネン、ポリオキシアルキレンアンモニウム、塩化3−(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウム(ダウコーニング社製:DC5700)等が挙げられる。特に好ましくは、塩化セチルピリジニウム、ラウロイルサルコシリルナトリウムが挙げられる。
【0098】
水溶性色素としては、特に限定されず、天然色素:クチナシ黄色素、ベニバナ黄色素、ベニコウジ色素、クチナシ赤色素、ベニバナ赤色素、ビートレッド、コチニール色素、ラック色素、アカネ色素、シソ色素、アカキャベツ色素、アカダイコン色素、ムラサキイモ色素、ムラサキトウモロコシ色素、ブドウ果皮色素、ブドウ果汁色素/ブルーベリー色素、エルダーベリー色素、クチナシ青/クチナシ黄、クチナシ青/ベニバナ黄、クチナシ青/ベニコウジ黄、クチナシ青色素、スピルリナ色素、カカオ色素、カキ色素、タマリンド色素、コウリャン色素、合成色素:食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食青色1号、食用青色2号、緑色3号等が挙げられる。
【0099】
水溶性ビタミンとしては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、葉酸、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン等が挙げられる。
【0100】
水溶性医薬品としては、フェニルプロパノールアミン、クロロフェニラミン、硝酸イソソルバイド、硫酸アトロビン、ペンタメタゾンリン酸ナトリウム、マレイン酸ブロモフェニラミン、リン酸クリンダマイシン、デシプラミン塩酸塩、マレイン酸デクスプロモフェニラミン、デキストロアンフタミン塩酸塩、エフエドリン塩酸塩、フルロアゼバム、テオフィリンオレイン酸ナトリウム、テトラサイクリン塩酸塩、硝酸モルフィネ、ベンチレンテトラゾール、硫酸フイソスチグミン、スコポラミン臭酸塩、ワフアリンカルシウム等が挙げられる。
【0101】
水溶性有効成分(C)の含有量は、付着化組成物中0.001〜20質量が好ましく、より好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.02〜5質量%、特に好ましくは0.1〜1.2質量%である。特に、一価金属塩(但し、フッ素化合物を除く)(B´)を含む電解質水溶液と、水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)とを併用し、フッ素化合物(C´)を対象面に付着させる場合は、フッ素化合物(C´)の含有量は、付着化組成物中0.02〜1.2質量%が好ましい。付着化組成物が歯磨きの場合は、歯磨き組成物中、フッ素濃度として0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜1質量%である。また、洗口剤の場合は、洗口剤組成物中、フッ素濃度として0.005〜1質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.5質量%である。この範囲で、特にう蝕予防効果と人体への安全性に関するバランスが、最も適切に両立できる。
【0102】
本発明の付着化組成物は、塩感応性高分子化合物(A)と、この塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解され、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物の溶解性が低下する、電解質(B)を含有する水溶液と、水溶性有効成分(C)とを含み、水で希釈することにより水溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させることを特徴とする水溶性有効成分の付着化組成物である。水溶性有効成分は、電解質水溶液に溶解されていてもよいし、希釈に用いられる水に配合され、電解質水溶液を第1剤、水溶性有効成分を第2剤とする2剤式に分けてもよい。なお、水溶性有効成分が希釈に用いられる水に配合され、電解質水溶液と水溶性有効成分が2剤に分かれている場合の水溶性有効成分の上記含有量(質量%)は、前記水溶性有効成分を希釈する水の量を含まない水溶性有効成分を高効率に付着させる組成物全量に対するものとする。
【0103】
本発明の付着化組成物の例としては、塩感応性高分子化合物(A)0.001〜20質量%と、電解質(B)(好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム及び硫酸ナトリウムから選ばれる電解質)0.5〜10質量%(好ましくは0.5質量%以上10質量%未満)と、水溶性有効成分(C)0.001〜20質量%と、水とを含み、上記塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解された組成物であって、この組成物を水で希釈することにより水溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させることを特徴とする水溶性有効成分の付着化組成物が挙げられる。
【0104】
さらに、本発明のフッ素化合物の付着化組成物の例としては、塩感応性高分子化合物(A)0.001〜20質量%と、一価金属塩(但し、フッ素化合物を除く)(B´)0.5〜10質量%と、水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)と、フッ素化合物(C´)と、水とを含有し、上記塩感応性高分子化合物(A)の一部又は全部が溶解された組成物であって、水で希釈されることにより、フッ素化合物とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させることを特徴とするフッ素化合物の付着化組成物が挙げられる。
【0105】
本発明の付着化組成物、塩感応性高分子化合物を含有する電解質水溶液以外に、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等を含むことができるが、この場合、付着化組成物中0〜50質量%が好ましく、さらに好ましくは0〜20質量%である。50質量%を超えると、塩感応性を示さない場合がある。
【0106】
本発明の付着化組成物には、上記成分以外に本発明の効果を損なわない範囲で、乳化、分散等の目的で、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤等の界面活性剤、その他有効成分、pH調整剤等の成分を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0107】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウム等のN−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルPOE硫酸ナトリウム、ラウリルPOE酢酸ナトリウム、ラウリルPOEリン酸ナトリウム、ステアリルPOEリン酸ナトリウム等が用いられる。
【0108】
ノニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸モノグリセリル、ラウリン酸デカグリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ミリスチン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸エタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、オキシエチレン−オキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等が用いられる。
【0109】
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシン等のN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が用いられる。
【0110】
その他の成分としては、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素、スーパーオキサイドディムスターゼ等の酵素等が挙げられる。その他の有効成分としては、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等の水溶性ポリリン酸塩、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アラントイン、ジヒドロコレスタノール、グリチルレチン酸、ε−アミノカプロン酸、トラネキサム酸、ビサボロール、塩化ベンザルコニウム、アスコルビン酸及びその塩類が挙げられる。
【0111】
さらに、メントール、アネトール、カルボン、ペパーミント油、スペアミント油等の香料、安息香酸及びそのナトリウム塩、パラベン類等の防腐油、雲母チタン、ベンガラ等の着色剤、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、グリチルリチン、アスパルテーム等の甘味剤、グリセリン、ソルビット等の湿潤剤等を配合し得る。
【0112】
本発明の付着化組成物は、電解質(B)及び水溶性有効成分(C)を含む水溶液中に塩感応性高分子化合物(A)を溶解させることで調製できる。このとき、塩感応性高分子化合物として両性高分子化合物を用いる場合は、該水溶液に両性高分子化合物を溶解させることで、組成物が得られる。また、アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質、及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上と、カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質、及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせを用いる場合には、該水溶液にそれぞれの高分子化合物をあらかじめ溶解させておき、所定量ずつ混合することで調製するほうが好ましい。
【0113】
特に、一価金属塩(但し、フッ素化合物を除く)(B´)を含む電解質水溶液と、水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)と、フッ素化合物(C´)とを含有する場合は、下記方法で得ることができる。
【0114】
1).(B´)成分を配合した溶液に、(A−I)両性高分子化合物を溶解する。このようにすることで、(A−I)両性高分子化合物溶解時に塩が共存し、(A−I)両性高分子化合物溶解時の析出を抑制することができる。
【0115】
2).(A−I)両性高分子化合物と、(D)成分とを混合した後、(C´)成分を混合する。このようにすることで、フッ素化合物(C´)と(D)成分との混合時に、多価金属イオンを分散する上記(A−I)成分が共存するため、例えば、CaF2の生成を抑制することができる。
【0116】
上記1)及び2)の製造工程を有する製造方法としては、(B´)成分水溶液と、(D)成分水溶液との混合水溶液((B´)+(D))を調製し、この水溶液に(A−I)両性高分子化合物水溶液を均一混合して((A−I)+(B´)+(D))混合水溶液を調製する。これとは別に、(C´)成分水溶液を調製し、この水溶液(C´)と、上記((A−I)+(B´)+(D))混合水溶液を混合する。
【0117】
塩感応性高分子化合物が(A−II)(i)アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質、及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上と、(ii)カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質、及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせである場合は、下記製造過程3)又は4)をとることが好ましい。
【0118】
3).(B´)成分を配合した溶液と、(i)成分又は(ii)成分とを混合した後に、混合していない(i)又は(ii)成分を混合する。このようにすることで、上記(i)成分と(ii)成分との混合時に塩が共存し、高分子コンプレックスが析出することを防ぐことができる。
【0119】
4).上記(i)成分と、(D)を混合した後、(C´)成分を混合する。このようにすることで、フッ素化合物(C´)と(D)成分との混合時に、多価金属イオンを分散する上記(i)成分が共存するため、例えば、CaF2の生成を抑制することができる。
【0120】
上記3)及び4)の製造工程を有する製造方法としては、(B´)成分及び(D)成分を含む水溶液((B´)+(D))を調製し、この水溶液に、(i)成分を均一混合した後、水酸化ナトリウム水溶液又は塩酸水溶液を用いてpH7±0.1に調整する((i)+(B´)+(D))。これとは別に、(C´)成分の水溶液を調製し、その溶液に(ii)成分を均一混合した後、同様にpH7±0.1に調整した((C´)+(ii))。その後、調製した2つの水溶液を混合する。
【0121】
上記3)及び4)の製造工程を有する別の製造方法としては、(D)成分の水溶液を調製し、その水溶液に(i)成分を均一混合した後、水酸化ナトリウム水溶液又は塩酸水溶液を用いてpH7±0.1に調整する((i)+(D))。これとは別に、(C´)成分と、(B´)成分の混合水溶液((C´)+(B´))を調製し、その溶液に、(ii)成分を均一混合した後、同様にpH7±0.1となるようにpHを調整する((C´)+(ii)+(B´))。その後、調製した2つの水溶液を混合する。
【0122】
本発明の付着化組成物の25℃におけるpHは特に限定されず、用途に応じて適切な範囲で用いればよい。例えば、シャンプー等の毛髪洗浄剤であれば、pH4〜8、ボディーソープ等の身体洗浄剤であればpH4〜10、住居用・衣料用等洗浄剤であれば、pH3〜10、歯磨等口腔組成物用途であれば、pH5〜9、好ましくはpH6〜8に調整して用いることができる。特に、人体洗浄剤(ボディーソープ、シャンプー、歯磨き、洗口剤)では、pHが4〜10であることが好ましい。本発明の効果を損なわない範囲で、pH調整剤として、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等を配合し得る。
【0123】
本発明の付着化組成物は、塩感応性高分子化合物(A)と、この塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解され、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物の溶解性が低下する電解質(B)を含有する水溶液と、水溶性有効成分とを含み、水で希釈することにより水溶性有効成分(C)とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させるものである。これにより、水溶性有効成分を付着させるべき対象面に水溶性有効成分を高効率に付着させることができる。これは、本発明の塩感応性高分子化合物が、電解質水溶液中で溶解する一方、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物の溶解性が低下するという性質により達成できるものである。よって、本発明は、塩感応性高分子化合物と、この塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解され、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物の溶解性が低下する電解質水溶液と、水溶性有効成分とを含む組成物を水で希釈することにより、水溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、水溶性有効成分を付着させるべき対象面に析出・付着させる水溶性有効成分の付着方法を提供する。
【0124】
具体的には、例えば本発明の塩感応性高分子化合物(A)を、電解質(B)を含有する電解質水溶液中に溶解しておき、ここに水溶性有効成分(C)を溶解させた組成物を、単に水で希釈するという安全かつ簡便な方法で、効率よく水溶性有効成分を担持した状態で塩感応性高分子化合物を析出させられるものである。また、上記組成物で対象面を処理し、水で希釈して析出させる操作により、水溶性有効成分と塩感応性高分子化合物とを水溶性有効成分を付着させるべき対象面に析出・付着させることができる。
【0125】
水溶性有効成分を付着させるべき対象面に、水溶性有効成分を担持した塩感応性高分子化合物を析出・付着させる方法としては、塩感応性高分子化合物を溶解して含有し、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物の溶解性が低下する電解質水溶液(以下、塩感応性高分子化合物の電解質水溶液)及び水溶性有効成分を含む溶液を水で希釈した後、対象面を処理してもよく、塩感応性高分子化合物の電解質水溶液及び水溶性有効成分を含む溶液で対象面を処理した後、さらに水で対象面を処理してもよい。さらに、塩感応性高分子化合物の電解質水溶液で処理した後、水溶性有効成分含有水溶液で処理してもよく、塩感応性高分子化合物の電解質水溶液で処理した後、水溶性有効成分で処理し、さらに水で処理してもよい。さらに、塩感応性高分子化合物の電解質水溶液で処理した後、フッ素化合物等の有効成分含有水溶液で処理してもよく、塩感応性高分子化合物の電解質水溶液で処理した後、フッ素化合物等の有効成分含有水溶液で処理し、さらに水で処理してもよい。なお、水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)はいずれかに入れてもよい。
【0126】
希釈は水で行うが、水道水、下水、雨水、唾液、汗、涙等の体液であってもよく、電解質濃度が0.5質量%未満のものを使用する。希釈は塩感応性高分子化合物や電解質の濃度によって適宜選定され、希釈液の電解質濃度が0.5質量%未満となり、塩感応性高分子化合物の溶解性が低下して析出するまで行うが、通常、付着化組成物1に対して、水を1〜10(質量比)、好ましくは2〜5(質量比)用いる。希釈水に電解質を含む場合、組成物と希釈する水の組み合わせによって適宜選定され、塩感応性高分子化合物の溶解性が低下して析出するまで行うが、組成物中の電解質濃度と希釈する水中の電解質濃度の比が2倍以上(質量比)としてもよい。
【0127】
対象面としては、塩感応性高分子化合物の析出物が付着するものであれば特に限定されない。例えば、水溶性有効成分の付着・滞留を目的とする口腔粘膜、皮膚、毛髪、歯牙、つめ、木綿、絹、麻、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、レーヨン、キュプラ等の布帛、金属、プラスチック、ゴム、板、ガラス、木材、コンクリート、鉱物、岩、大理石、石膏、セラミック等の硬質表面等が挙げられる。この中でも安全かつ簡便に水溶性有効成分の付着・滞留ができることから、口腔粘膜、皮膚、毛髪、歯牙、つめ等に用いることが好ましく、特に、歯磨き、洗口剤等の口腔用組成物のような口腔粘膜、歯牙等の口腔内を対象面とすることが好ましい。
【実施例】
【0128】
以下、例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示す。
【0129】
[試験例1]
〈塩感応性評価〉
下記表1,2に示す被験高分子化合物(混合物)0.1gをあらかじめ秤量したサンプル瓶にとり、1.5質量%塩化ナトリウム水溶液9.9gを加え、室温(25℃)で1.5cmのスターラーバーを用いて5時間撹拌した。あらかじめ秤量した遠心分離チューブを2本用意し、一方には調製した溶液を2g、もう一方には調製した溶液2gを採取し蒸留水6gを添加して希釈した。2本の遠心分離チューブを5000G、15分間、5℃の条件で遠心分離操作を行った。上澄みを廃棄し、析出物とサンプル瓶を合わせた質量を測定し、風袋質量との差から下層質量を算出した。希釈操作したサンプルの下層質量をWa、希釈操作を含まない溶液の下層質量をWbとし、塩感応性を下記評価基準で判断した。
<塩感応性(塩濃度低下により溶解性・分散性が低下する効果)>
○:Wa/Wbが1.01以上
×:Wa/Wbが1.01未満
【0130】
[試験例2]
<析出性評価(フッ化ナトリウム)>
下記表1,2に示す被験高分子化合物(混合物)1.0%、フッ化ナトリウム0.2%、塩化ナトリウム0.8%、及び水残部(98%)を含有する組成物0.5gを調製し(被験高分子化合物が塩感応性を示すものは、組成物中に被験高分子化合物(混合物)の一部又は全部が溶解)、これに蒸留水1.5gを添加して希釈し、5000G、15分間遠心分離した。デカンテーションにより上層を取り除き、下層を2%塩化ナトリウム水溶液で再溶解させサンプル溶液を得た。サンプル溶液0.4mLを採取し、クエン酸緩衝液(クエン酸カリウム1mol/L、pH=5.5、25℃)1.6mLを加え、フッ素電極によりフッ化物イオン濃度を測定した。下層フッ素質量は、サンプル溶液質量と得られたフッ化物イオン濃度の積として算出し、フッ化物イオンの析出性を下記基準で判定した。溶液調製及びフッ化物濃度測定は、25℃にて行った。
基準
×:下層フッ素質量が0から1μg未満
△:下層フッ素質量が1μg以上5μg未満
○:フッ素質量が5μg以上10μg未満
◎:フッ素質量が10μg以上
【0131】
【表1】

【0132】
【表2】

【0133】
[調製例1:合成ポリマー1]
3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート(以下、DMAPSと略す)、ラウリルメタクリレート(以下、LMAと略す)及びメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(下記式(6)で表される単量体p=9、以下M90Gと略す)の共重合体(DMAPS/LMA/M90G=73/25/2)の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計、モノマー滴下口、開始剤滴下口及び窒素の導入管を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、エタノール155.1gを加え、85℃の湯浴で加温を始めるとともに、窒素導入管より窒素の導入を開始した。
一方、300mL容のビーカーに、(a)スルホベタイン基含有ビニル単量体の前駆体としてジメチルアミノエチルメタクリレート85.6g、(b)疎水性基含有ビニル単量体としてラウリルメタクリレート(LMA)47.4g、(a)及び(b)と共重合可能な(c)ビニル単量体として、M90G7g、エタノール77.5gを秤取り、かき混ぜて均一なモノマー溶液を調製した。
また、100mLのビーカーに2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル1.4gを秤取り、エタノール25.8gを加えて溶解し、開始剤溶液を調製した。
次に、前記セパラブルフラスコの内温が78℃になった時点で、滴下ポンプを用いて、開始剤溶液、モノマー溶液を2時間かけて添加し、さらに5時間撹拌を続け、重合を終了した。得られた共重合体溶液をエタノールで該共重合体の質量濃度が15%になるように希釈し、液温25℃で、1,3−プロパンサルトン66.5gを1時間かけて添加し、35℃に昇温後、4時間反応を継続した。冷却後、反応溶媒を除去、乾燥することで、共重合体を得た。該共重合体の〔b〕/〔a〕(質量比)は0.31、〔c〕/〔a〕(質量比)は0.05であり、重量平均分子量は7万であった。なお、調製例1〜3の重量平均分子量は、スルホベタイン化前の重合体を試料とし、0.42%トリエチルアミンを含むテトラヒドロフランを溶媒とし、ポリスチレン標準にて換算して分子量を算出した。
なお、該構成単量体(a)は、下記式(7)で示されるものである。
【0134】
【化10】

【0135】
[調製例2:合成ポリマー2]
DMAPS及びLMAの共重合体(DMAPS/LMA=75/25)の調製
モノマーとしてDMAPS92.6g、LMA47.4gを用いる以外は調製例1と同様の方法で、合成ポリマー2を調製した。
【0136】
[調製例3:合成ポリマー3]
pDMAPS(ホモポリマー)の調製
モノマーとしてDMAPS140gを用いる以外は調製例1と同様の方法で、合成ポリマー3を調製した。
【0137】
上記で得られたポリマー1〜3について、試験例1の方法で塩感応性を評価し、下記方法で析出性評価(フッ化ナトリウム)を行った。結果を表3に併記する。
【0138】
[試験例3]
<析出性評価(フッ化ナトリウム)>
被験ポリマー4%、フッ化ナトリウム0.2%、塩化ナトリウム(表3中に示した量)、及び水残部からなる組成物0.5gを調製し(被験ポリマーが塩感応性を示すものは、組成物中に被験ポリマーの一部又は全部が溶解)、これに1.5g(但し、被験ポリマーがDMAPS/LMA=75/25の場合は4.5g)の蒸留水を添加して希釈し、5000rpm、15分間遠心分離した。デカンテーションにより上層を取り除き、下層を5%塩化ナトリウム2mLで再溶解させサンプル溶液を得た。サンプル溶液0.4mLを採取しクエン酸緩衝液(クエン酸カリウム1M、pH=5.5)1.6mLを加えフッ素電極によりフッ化物濃度を測定した。下層フッ素質量は、サンプル溶液質量と得られたフッ化物濃度の積として算出し、フッ化ナトリウムの析出性を下記基準で判定した。溶液調製及びフッ化物濃度測定は、25℃にて行った。
基準
×:下層フッ素質量が0から1μg未満
△:下層フッ素質量が1μg以上5μg未満
○:フッ素質量が5μg以上10μg未満
◎:フッ素質量が10μg以上
【0139】
【表3】

DMAPS:3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート
LMA:ラウリルメタクリレート
M90G:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート
【0140】
表4,5に記載の被験高分子化合物(混合物)について、試験例1の方法で塩感応性を評価し、下記方法で析出性評価(モノフルオロリン酸2ナトリウム)を行った。結果を表中に併記する。
【0141】
[試験例4]
<析出性評価(モノフルオロリン酸2ナトリウム)>
下記表4,5に示す被験高分子化合物(混合物)1.0%、モノフルオロリン酸2ナトリウム(ローディア日華製 SMFP)0.7%、塩化ナトリウム0.5%、及び水残部(97.8質量%)からなる組成物0.5gを調製し(被験高分子化合物が塩感応性を示すものは、組成物中に被験高分子化合物(混合物)の一部又は全部が溶解)、これに蒸留水1.5gを添加して希釈し、5000rpm、15分間遠心分離した。デカンテーションにより上層を取り除き、下層に2%塩化ナトリウム12mLを加え再溶解させ、さらに6mol/Lの過塩素酸を加え、100℃、10分間加熱、水冷処理して分解させサンプル溶液を得た。サンプル溶液0.4mLを採取し、クエン酸緩衝液(クエン酸カリウム1M、pH=5.5)1.6mLを加えフッ素電極によりフッ化物濃度を測定した。下層フッ素質量は、サンプル溶液質量と得られたフッ化物濃度の積として算出し、フッ化ナトリウムの析出性を下記基準で判定した。溶液調製及びフッ化物濃度測定は、25℃にて行った。
基準
×:ブランクと同等(下層フッ素量が0から1μg未満)
△:下層フッ素量が1μg以上5μg未満
○:下層フッ素量が5μg以上10μg未満
◎:下層フッ素量が10μg以上
【0142】
【表4】

【0143】
【表5】

VP:ビニルピロリドン
MMA:メチルメタクリレート
M90G:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート
DMAPAA:ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
【0144】
[試験例5]
<析出性評価(塩化セチルピリジニウム)>
下記表6に示す被験高分子化合物(混合物)1.0%、塩化セチルピリジニウム0.05%、塩化ナトリウム1.5%、及び水残部(97.45%)を含有する組成物0.5gを調製し(被験高分子化合物が塩感応性を示すものは、組成物中に被験高分子化合物(混合物)の一部又は全部が溶解)、これに蒸留水1.5gを添加して希釈し、5000G、15分間遠心分離した。デカンテーションにより上層を取り除き、下層を2%塩化ナトリウム水溶液で再溶解させサンプル溶液を得た。サンプル溶液0.4mLを採取し、蒸留水にて10倍希釈し、吸光光度計(UV−260、島津製作所製)にて波長265nmでの吸光度を測定した。
下層塩化セチルピリジニウム質量は、サンプル溶液質量と得られた塩化セチルピリジニウム濃度の積として算出し、塩化セチルピリジニウムの析出性を下記基準で判定した。溶液調製及び塩化セチルピリジニウム濃度測定は、25℃にて行った。
基準
×:下層塩化セチルピリジニウム質量が0から10μg未満
△:下層塩化セチルピリジニウム質量が10μg以上20μg未満
○:下層塩化セチルピリジニウム質量が20μg以上100μg未満
◎:下層塩化セチルピリジニウム質量が100μg以上
【0145】
【表6】

【0146】
[実施例1〜11、比較例1]
表7に示す組成の組成物(サンプル)を調製し、下記モデル口腔への付着性・滞留性評価を行った。結果を表中に併記する。なお、表7に示す実施例の組成物は、試験例1の塩感応性評価において、全て○という結果であり、実施例組成物は、組成物中に高分子化合物(混合物)の一部又は全部が溶解していた。
【0147】
<モデル口腔への付着性・滞留性評価>
PE(ポリエチレン、神戸電機製)板表面に2cm×4cmのシリコン枠を載せ、枠内にヒトの吐出唾液5mLを流し込み、室温で30分処理しPE板をイオン交換水5mLにて3回洗浄し、唾液タンパクの付着した表面を調製した(ペリクル化PE板)。
次に、調製した組成物(サンプル)0.5gを枠内に流し込み、さらに緩衝液(塩化カリウム50mmol/L、KH2PO41mmol/L、塩化カルシウム1mmol/L、塩化マグネシウム0.1mmol/L)1.5gを添加して組成物(サンプル)を希釈し、室温にて30分間付着させた。上層部の液を取り出し、5000G、15分間遠心分離して析出物を除き、0.4mLを採取しクエン酸緩衝液(クエン酸カリウム1M、pH=5.5)1.6mLを加え、フッ素電極により上層液のフッ化物濃度を測定した。シリコン枠内に水道水1.5gを添加し、液を抜き取る作業を3回繰り返して洗浄し、2%塩化ナトリウム水溶液2gにてPE板表面に残存した付着物を再溶解させた。採取した再溶解液0.4mLを採取し、クエン酸緩衝液(クエン酸カリウム1M、pH=5.5)1.6mLを加え、フッ素電極によりフッ化物濃度を測定した。残存フッ素質量は、回収した再溶解溶液質量と得られたフッ化物濃度の積として算出した。下記の基準により、フッ化物の付着性及び滞留性を評価した。
付着性
×:Fs−Faが5ppm未満
○:Fs−Faが5ppm以上10ppm未満
◎:Fs−Faが10ppm以上
サンプル中のフッ化物イオン濃度:Fs
上層液のフッ化物イオン濃度:Fa
滞留性
×:残存フッ素質量が1μg未満
○:残存フッ素質量が1μg以上10μg未満
◎:残存フッ素質量が10μg以上
【0148】
【表7】

【0149】
[実施例12〜15]
表8に示す組成の組成物(サンプル)を調製し、下記基板への付着・滞留性評価を行った。結果を表中に併記する。なお、表8に示す実施例の組成物は、試験例1の塩感応性評価において、全て○という結果であり、実施例組成物は、組成物中に高分子化合物(混合物)の一部又は全部が溶解していた。
【0150】
<基板への付着・滞留性評価>
基板(タイル、ステンレス、ガラス)表面に2cm×4cmのシリコン枠を載せ、枠内に調製した組成物(サンプル)0.5gを流し込み、さらに1.5gの水道水を添加してサンプルを希釈し、室温にて1時間付着させた。上層部の液を取り出し、5000G、15分間遠心分離して析出物を除き、0.4mLを採取しクエン酸緩衝液(クエン酸カリウム1M、pH=5.5)1.6mLを加え、フッ素電極により上層液のフッ化物濃度を測定した。シリコン枠内に水道水1.5gを添加し、液を抜き取る作業を3回繰り返して洗浄し、2%塩化ナトリウム水溶液2gにて基板表面に残存した付着物を再溶解させた。採取した再溶解液の0.4mLを採取し、クエン酸緩衝液(クエン酸カリウム1M、pH=5.5)1.6mLを加え、フッ素電極によりフッ化物濃度を測定した。残存フッ素質量は、回収した再溶解溶液質量と得られたフッ化物濃度の積として算出した。
下記の判定基準により、フッ化物の付着性及び滞留性を評価した。
付着性
×:Fs−Faが5ppm未満
○:Fs−Faが5ppm以上10ppm未満
◎:Fs−Faが10ppm以上
サンプル中のフッ化物イオン濃度:Fs
上層液のフッ化物イオン濃度:Fa
滞留性
×:残存フッ素量が10μg未満
○:残存フッ素量が10μg以上20μg未満
◎:残存フッ素量が20μg以上
【0151】
【表8】

【0152】
[実施例16,25、比較例2]
表9,10に示す各成分について、記載された濃度をそれぞれの最終濃度として、製造例1に従って調製し付着化組成物を得た。
【0153】
[製造例1]
最終濃度の2倍の(C)一価金属の塩(但し、フッ素化合物を除く)及び(D)水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物を含む水溶液を調製し、その溶液に、最終濃度の2倍の(i)アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上を均一混合した後、水酸化ナトリウム水溶液又は塩酸水溶液を用いてpH7±0.1に調整した。これとは別に、0.4%の(A)フッ素化合物水溶液を調製し、その溶液に、最終濃度の2倍の(ii)カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上を均一混合した後、同様にpH7±0.1に調整した。その後、調製した2つの水溶液を等量で混合し組成物を得た。これらの操作は25℃で行った。
【0154】
[実施例17,24,26〜32、比較例3]
表9,10に示す各成分について、記載された濃度をそれぞれの最終濃度として、製造例2に従って調製し付着化組成物を得た。
【0155】
[製造例2]
最終濃度の2倍の(D)多価金属塩の水溶液を調製し、その溶液に最終濃度の2倍の(i)成分を均一混合した後、水酸化ナトリウム水溶液又は塩酸水溶液を用いて、pH7±0.1に調整した。これとは別に、0.4%の(A)成分と最終濃度の2倍の(C)成分塩との混合水溶液を調製し、その溶液に、最終濃度の2倍の(ii)成分を均一混合した後、同様にpH7±0.1となるようにpHを調整した。その後、調製した2つの水溶液を等量で混合し組成物を得た。これらの操作は25℃で行った。
【0156】
[実施例18、20〜23]
表9,10に示す各成分について、記載された濃度をそれぞれの最終濃度として、製造例3に従って調製し付着化組成物を得た。
【0157】
[製造例3]
最終濃度の2倍の(C)成分を含む水溶液を調製し、その水溶液に、最終濃度の2倍のカゼイン酵素分解物のCPP−III(明治フードマテリア(株))を均一混合した後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH7±0.1に調整した。ここで、CPP−IIIは、出荷時に多量のカルシウムイオンを製品中に含んでいることが知られているため、Caイオン量の測定を、高周波誘導結合プラズマ発光(ICP発光)分析装置により行った結果、Caイオン量はCPP−IIIに対して約5質量%であった。これとは別に、0.4%の(A)成分と最終濃度の2倍の(C)成分との混合水溶液を調製し、その溶液に、最終濃度の2倍の(ii)成分を均一混合した後、水酸化ナトリウム水溶液又は塩酸水溶液を用いて、pH7±0.1に調整した。その後、調製した2つの水溶液を等量で混合し組成物を得た。これらの操作は25℃で行った。
【0158】
[実施例19]
表9,10に示す各成分について、記載された濃度をそれぞれの最終濃度として、製造例4に従って調製し付着化組成物を得た。
【0159】
[製造例4]
最終濃度の2倍の(C)成分を含み、さらに(D)成分を含む水溶液を調製した。ここで、(D)成分の濃度は、「最終濃度の2倍の値」から、後述する「CPP−IIIにより系に持ち込まれる多価金属塩の濃度」を、差し引いて得られる値とした。その溶液に、最終濃度の2倍のカゼイン酵素分解物のCPP−III(明治フードマテリア(株))を均一混合した後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH7±0.1に調整した。ここで、CPP−IIIは、出荷時に多量のカルシウムイオンを製品中に含んでいることが知られているため、Caイオン量の測定を、高周波誘導結合プラズマ発光(ICP発光)分析装置により行った結果、Caイオン量はCPP−IIIに対して約5質量%であった。これとは別に、0.4%の(A)成分と最終濃度の2倍の(C)成分との混合水溶液を調製し、その溶液に、最終濃度の2倍の(ii)成分を均一混合した後、水酸化ナトリウム水溶液又は塩酸水溶液を用いて、pH7±0.1に調整した。その後、調製した2つの高分子含有液を等量で混合し化組成物を得た。これらの操作は25℃で行った。
なお、実施例16〜32の組成物は、組成物中に高分子化合物(混合物)の一部又は全部が溶解していた。
【0160】
〈塩感応性評価〉
下記表9,10に示す被験高分子化合物(混合物)について、以下の方法で塩感応性評価を行った。下記表9,10に示す被験高分子化合物(混合物)0.1gをあらかじめ秤量したサンプル瓶にとり、1.5質量%塩化ナトリウム水溶液9.9gを加え、室温で1.5cmのスターラーバーを用いて5時間撹拌した。あらかじめ秤量した遠心分離チューブを2本用意し、一方には調製した溶液を2g、もう一方には調製した溶液2gを採取し蒸留水6gを添加して希釈した。2本の遠心分離チューブを5000G、15分間、5℃の条件で遠心分離操作を行った。上澄みを廃棄し、析出物とサンプル瓶を合わせた質量を測定し、風袋質量との差から下層質量を算出した。希釈操作したサンプルの下層質量をWa、希釈操作を含まない溶液の下層質量をWbとし、塩感応性を下記評価基準で判断した。
<塩感応性(塩濃度低下により溶解性・分散性が低下する効果)>
○:Wa/Wbが1.01以上
×:Wa/Wbが1.01未満
【0161】
<析出性評価>
付着化組成物について、以下の方法で析出性を評価した。
付着化組成物0.5gに対して、1.5g蒸留水を添加して希釈し、5000gで15分間遠心分離を行った。デカンテーションにより上層を取り除き、下層を2質量%塩化ナトリウムで再溶解させサンプル溶液を得た。サンプル溶液0.4mLを採取しクエン酸緩衝液(クエン酸カリウム1mol/L、pH=5.5、25℃)1.6mLを加えフッ素電極によりフッ化物イオン濃度を測定した。下層フッ素質量は、サンプル溶液質量と得られたフッ化物イオン濃度の積として算出し、下記の基準で判定した。フッ化物イオン濃度測定は25℃にて行った。
基準
×:下層フッ素質量が0から1μg未満
△:下層フッ素質量が1μg以上5μg未満
○:下層フッ素質量が5μg以上10μg未満
◎:下層フッ素質量が10μg以上20μg未満
◎+:下層フッ素量が20μg以上50μg未満
◎++:下層フッ素量が50μg以上
【0162】
【表9】


上記組成の残部は水、合計100%
NaF:フッ化ナトリウム(関東化学)
NaCl:塩化ナトリウム(関東化学)
CaCl2:塩化カルシウム(関東化学)
*1:CPP−III中に含有
*2:この内、0.1%はCPP−III中に含有
【0163】
【表10】

上記組成の残部は水、合計100%
NaF:フッ化ナトリウム(関東化学)
NaCl:塩化ナトリウム(関東化学)
CaCl2:塩化カルシウム(関東化学)
【0164】
<付着性・滞留性評価>
実施例16、17、26及び27について、以下の方法で付着性・滞留性を評価した。
ポリエチレン(以下、PEとする)板表面に2cm×4cmのシリコン枠を載せ、枠内にヒトの吐出唾液5mLを流し込み、室温で30分処理しPE板をイオン交換水5mLにて3回洗浄し、唾液タンパク質の付着した表面を調製した(ペリクル化PE板)。
次に、付着化組成物(サンプル)0.5gを流し込み、さらに緩衝液(塩化カリウム50mmol/L、KH2PO41mmol/L、塩化カルシウム1mmol/L、塩化マグネシウム0.1mmol/L)1.5gを添加して、付着化組成物を希釈し、室温にて30分間付着させた。上層部の液を取り出し、5000Gで15分間遠心分離して析出物を除き、0.4mLを採取しクエン酸緩衝液(クエン酸カリウム1M、pH=5.5)1.6mLを加えフッ素電極により上層液のフッ化物濃度(Faとする)を測定した。さらに、シリコン枠内に水道水1.5gを添加し、液を抜き取る作業を3回繰り返して洗浄し、2%塩化ナトリウム水溶液2gにてPE板表面に残存した付着物を再溶解させた。採取した再溶解液の0.4mLを採取しクエン酸緩衝液(クエン酸カリウム1M、pH=5.5)1.6mLを加え、フッ素電極によりフッ化物イオン濃度を測定した。残存フッ素質量は、回収した再溶解溶液質量と得られたフッ化物イオン濃度の積として算出した。下記の基準により、フッ素化合物の付着性及び滞留性を評価した。
付着性
サンプル中のフッ化物イオン濃度をFsとし、
×:Fs−Faが5ppm未満
○:Fs−Faが5ppm以上10ppm未満
◎:Fs−Faが10ppm以上
サンプル中のフッ化物イオン濃度:Fs
上層液のフッ化物イオン濃度:Fa
滞留性
×:残存フッ素質量が1μg未満
○:残存フッ素質量が1μg以上10μg未満
◎:残存フッ素質量が10μg以上20μg未満
◎+:残存フッ素量が20μg以上
【0165】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩感応性高分子化合物(A)と、この塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解され、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物の溶解性が低下する、電解質(B)を含有する水溶液と、水溶性有効成分(C)とを含み、水で希釈することにより水溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させることを特徴とする水溶性有効成分の付着化組成物。
【請求項2】
塩感応性高分子化合物(A)0.001〜20質量%と、電解質(B)0.5〜10質量%と、水溶性有効成分(C)0.001〜20質量%と、水とを含み、上記塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解された組成物であって、この組成物を水で希釈することにより水溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させることを特徴とする水溶性有効成分の付着化組成物。
【請求項3】
水溶性有効成分(C)が、抗菌成分又は殺菌成分である請求項1又は2記載の付着化組成物。
【請求項4】
塩感応性高分子化合物(A)と、この塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解され水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物の溶解性が低下する、一価金属塩(但し、フッ素化合物を除く)(B´)を含む電解質水溶液と、水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)と、フッ素化合物(C´)とを含有し、水で希釈することによりフッ素化合物とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させることを特徴とするフッ素化合物の付着化組成物。
【請求項5】
塩感応性高分子化合物(A)0.001〜20質量%と、一価金属塩(但し、フッ素化合物を除く)(B´)0.5〜10質量%と、水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)と、フッ素化合物(C´)と、水とを含有し、上記塩感応性高分子化合物(A)の一部又は全部が溶解された組成物であって、水で希釈されることにより、フッ素化合物とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させることを特徴とするフッ素化合物の付着化組成物。
【請求項6】
水溶液中で多価金属イオンを供給する化合物(D)が、水溶液中でカルシウムイオンを供給する化合物である請求項4又は5記載の付着化組成物。
【請求項7】
塩感応性高分子化合物(A)が、1分子中にアニオン性解離基とカチオン性解離基とを有する両性高分子化合物である請求項1〜6のいずれか1項記載の付着化組成物。
【請求項8】
塩感応性高分子化合物(A)が、スルホベタイン系高分子化合物、カルボキシベタイン系高分子化合物、ホスホベタイン系高分子化合物、又はアニオン性基含有ビニル単量体とカチオン性基含有ビニル単量体とを含む単量体混合物の共重合体である請求項7記載の付着化組成物。
【請求項9】
塩感応性高分子化合物(A)が、アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質、及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上と、カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質、及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせである請求項1〜6のいずれか1項記載の付着化組成物。
【請求項10】
付着対象面が口腔内である請求項1〜9のいずれか1項記載の付着化組成物。
【請求項11】
塩感応性高分子化合物(A)と、この塩感応性高分子化合物の一部又は全部が溶解され、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物の溶解性が低下する電解質(B)を含有する水溶液と、水溶性有効成分(C)とを含む組成物を水で希釈することにより、水溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、水溶性有効成分を付着させるべき対象面に析出・付着させる水溶性有効成分の付着方法。

【公開番号】特開2008−63334(P2008−63334A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209281(P2007−209281)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】