説明

水溶性有機化合物の除去システム

【課題】簡便なシステム構成で、排ガス中に含まれる水溶性有機化合物を効率良く分解除去することができる水溶性有機化合物の除去システムを提供する。
【解決手段】筒状容器10内に所定の充填材11を設置し、この充填材11の上部から水を滴下するように構成したスクラバー1と、筒状容器21内に液相系光触媒22及び紫外線ランプ23を設置すると共に、オゾン含有微細気泡を発生させる微細気泡発生ノズル24を設置した反応槽2とを備え、スクラバー1に水溶性有機化合物を含む排ガスを導入して、スクラバー1内の水に水溶性有機化合物を溶解させた後、この水を反応槽2に導入し、この反応槽において、液相系光触媒22とオゾン含有微細気泡によって水溶性有機化合物の分解処理を行うように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場等からの排出ガスに含まれる水溶性有機化合物の除去システムに係り、特に、微細気泡と液相系光触媒を用いることにより、水溶性有機化合物の除去効率を大幅に向上させた水溶性有機化合物の除去システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
浮遊粒子状物質(以下、SPM;Suspended Particulate Matter)による人の呼吸器への悪影響、光化学オキシダントによる目やのどへの刺激や呼吸器への悪影響などの健康被害は未だに生じており、これら大気汚染物質への対処が求められている。このSPM及び光化学オキシダントの発生原因は多岐に渡っているが、揮発性有機化合物(以下、VOC;Volatile Organic Compounds)がその原因の1つとなっており、VOC排出源である印刷工場、塗装工場、半導体製造工場等では、VOCの除去が求められている。
【0003】
水溶性の揮発性有機化合物(以下、WSOC;Water Soluble Organic Compounds)はVOCの一部であり、トルエンなど不溶性VOCの代替として、塗装工場で使用されるようになってきているほか、製品の乾燥工場ではIPAが使用されるなど、工場からの排出ガスにWSOCが含まれる場合は多い。
【0004】
一般に、VOCを分解除去する方法としては、(a)直接燃焼法、(b)蓄熱燃焼法、(c)触媒燃焼法、(d)生物分解法、(e)活性炭吸着法、(f)低温プラズマ分解法などがある(特許文献1、特許文献2等)。
【特許文献1】特開2003−161424号公報
【特許文献2】特開2008−133751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、VOCを分解除去する方法として用いられている上記(a)〜(c)の各種燃焼法においては、大規模な事業所の場合、CO2の排出量が多くなるという問題点があり、また、分解生成物がダイオキシン等の有害物質を発生させる危険性があるという問題点があった。
【0006】
また、(d)生物分解法においては、分解速度が遅い上、入口濃度が変動すると分解効率が不安定になりやすいという問題点があり、(e)活性炭吸着法においては、活性炭が破過した場合、活性炭を産業廃棄物にして処理しなければならないという問題点があった。また、再生を行う場合は、熱などのエネルギーを投入しなければならず、脱着した場合は溶剤の回収装置が必要となるという問題点があった。さらに、(f)低温プラズマ分解法においては、大量処理ができないといった問題点が挙げられる等、既存の方法は様々な問題を抱えていた。
【0007】
一方、WSOC除去には、上記の方法のほか、(g)吸収法の適用が可能であるが、薬液の維持管理や廃液処理が必要なため、ランニングコストが高くなるほか、吸収液として水を使用した場合は、除去性能及び補給水量の増加などの問題があった。
【0008】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、簡便なシステム構成で、排ガス中に含まれる水溶性有機化合物を効率良く分解除去することができる水溶性有機化合物の除去システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の水溶性有機化合物の除去システムは、容器内に所定の充填材が設置され、該充填材の上部から水が滴下されるように構成されたスクラバーと、容器内に液相系光触媒及び紫外線ランプが設置されると共に、微細気泡を発生させる微細気泡発生ノズルが設置された反応槽とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2に記載の水溶性有機化合物の除去システムは、容器内に所定の充填材が設置され、該充填材の上部から水が滴下されるように構成されたスクラバーと、容器内に液相系光触媒及び紫外線ランプが設置されると共に、微細気泡を発生させる微細気泡発生ノズルが設置された反応槽とを備え、前記スクラバーに水溶性有機化合物を含む排ガスを導入して、スクラバー内の水に水溶性有機化合物を溶解させた後、この水を前記反応槽に導入し、前記反応槽において、水溶性有機化合物の分解処理を行うように構成したことを特徴とするものである。
【0011】
上記のような構成を有する請求項1及び請求項2に記載の発明によれば、スクラバー内の水を水溶性有機化合物の吸収液として用いることにより、ランニングコストを削減することができる。また、水溶性有機化合物を溶解した水を、液相系光触媒を設置した反応槽内に導入し、該反応槽内において微細気泡を発生させると共に紫外線を照射することにより、水溶性有機化合物と光触媒との接触効率を大幅に向上させることができ、液相系光触媒反応によって水溶性有機化合物の分解処理を高効率で行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の水溶性有機化合物の除去システムにおいて、前記反応槽において水溶性有機化合物の分解処理がなされた水を、再度前記スクラバーに循環供給するように構成したことを特徴とするものである。
【0013】
上記のような構成を有する請求項3に記載の発明によれば、水溶性有機化合物を溶解した水を反応槽において連続して処理することができると共に、再度、スクラバーに供給して利用することが可能となるので、スクラバーへの補給水を大幅に削減することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の水溶性有機化合物の除去システムにおいて、前記微細気泡が、オゾン含有微細気泡であることを特徴とするものである。
【0015】
上記のような構成を有する請求項4に記載の発明によれば、オゾン含有微細気泡中のオゾン分子が循環水中に効率良く溶解し、水中のオゾン分子は自己分解によりヒドロキシラジカル(・OH)を生成する。これにより、水中において、ヒドロキシラジカル(・OH)によるフリーラジカル反応が起こるため、効率良くWSOCを分解することができる。その結果、反応槽内において、ヒドロキシラジカル(・OH)による酸化分解と液相系光触媒反応の相乗効果を得ることができるので、WSOCの分解効率を大幅に向上させることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の水溶性有機化合物の除去システムにおいて、前記液相系光触媒が、粉末状のTiO2光触媒を所定のプラスチック表面又は繊維小片表面に担持したもの、又は、担持媒体として不織布を用いたものであることを特徴とするものである。
【0017】
上記のような構成を有する請求項5に記載の発明によれば、粉末状のTiO2光触媒を所定のプラスチック表面又は繊維小片表面に担持したものを用い、これを所定の大きさに切断して短冊状にし、処理対象となる溶液内に分散させ、水流により自由に動くことができるように設置する、あるいは、容器の中央部又は底部に層状に固定配置することにより、紫外線ランプから照射されるエネルギーを効率良く受けることができるので、光触媒反応による水溶性有機化合物の分解処理を高効率で行うことができる。また、さらに分解効率を高めるためには、担持媒体として不織布を用いると良い。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の水溶性有機化合物の除去システムにおいて、前記スクラバーと反応槽とが、上下に積層配置されていることを特徴とするものである。
上記のような構成を有する請求項6に記載の発明によれば、反応槽をスクラバーの下部に設置することにより、大幅な省スペース化を実現することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の水溶性有機化合物の除去システムにおいて、前記充填材が高密度に配置されていることを特徴とするものである。
上記のような構成を有する請求項7に記載の発明によれば、充填材における気液接触面積を大きくすることができるので、水溶性有機化合物の除去効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡便なシステム構成で、排ガス中に含まれる水溶性有機化合物を効率良く分解除去することができる水溶性有機化合物の除去システムを提供することができる。
【0021】
具体的には、WSOCの吸収液としてスクラバーに供給される水を用いることにより、ランニングコストを削減できるだけでなく、吸収液中に含まれるWSOCをオゾン含有微細気泡及び液相系光触媒によって分解することで、吸収液となる水の連続処理及び再利用が可能となるため、スクラバーへの補給水を大幅に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る水溶性有機化合物の除去システムの具体的な実施の形態(以下、実施形態という)を、図面を参照して説明する。
【0023】
(1)第1実施形態
(1−1)構成
(1−1−1)全体構成
本実施形態の水溶性有機化合物の除去システムは、図1に示すように、WSOCを含む排ガスを水と接触させることにより、排ガス中のWSOC濃度を低減させるスクラバー1と、このスクラバー1に供給される循環水に溶解したWSOCを分解する反応槽2と、この反応槽2における処理後の循環水を貯留し、活性炭による吸着処理を行う下部水槽3と、この下部水槽3の下流側に設けられたクッションタンク4と、循環水を前記スクラバー1に循環供給する循環ポンプ5及び循環用配管7とから構成されている。なお、前記スクラバー1は、台座6の上に設置されている。
【0024】
(1−1−2)スクラバーの構成
前記スクラバー1は筒状容器10から構成され、その容器の中央部には所定の充填材11が充填され、この充填材11の上下にはそれぞれ上部空間12及び下部空間13が形成されている。そして、前記下部空間13には、処理対象となるWSOCを含む排ガスを該スクラバー1内に導入する排ガス供給配管14が接続されると共に、排ガス中のWSOCを溶解した循環水15を後述する反応槽2に送るための循環水排出配管16が接続されている。なお、前記排ガス供給配管14には送風機17が設けられ、スクラバー1内に導入する排ガス量を適宜調整できるように構成されている。なお、前記筒状容器10には、円柱状容器だけでなく、角柱状容器も含まれる。
【0025】
一方、前記上部空間12には散水ヘッダー18が設けられ、後述する反応槽2等で処理された循環水を前記充填材11に散水するように構成されている。また、散水ヘッダー18の上部にはミストセパレータ19が設けられ、このミストセパレータ19を通過した処理後の排ガスが、筒状容器10の上端に設けられた排ガス排出配管20を介して外部に排出されるように構成されている。
【0026】
上記のような構成を有するスクラバー1に導入された排ガス中のWSOCは、散水ヘッダー18によって上部から滴下された循環水(水)により充填材11の表面に形成された液膜で吸収除去される。そのため、スクラバー1内に配置される充填材11は、図2に示すように、高密度に組合せ配置することが好ましい。このように配置することにより、気液接触面積を大きくすることができるので、WSOCの除去効率を向上させることができる。
【0027】
また、上記充填材11としては、有効面積が大きく、圧損が小さいこと、合成樹脂製で化学的、機械的性質が強いこと、軽量で充填材取出し作業が容易であること、懸濁物質(SS)などの付着物の除去が容易である充填材が好ましい(例えば、テラレット(商品名):月島環境エンジニアリング社製)。なお、処理対象物質によっては、容易に気液接触面積を向上できる気化式加湿膜(例えば、VHRシリーズ:ウェットマスター社製)を利用しても良い。
【0028】
(1−1−3)反応槽の構成
前記反応槽2は筒状容器21から構成され、その容器内には所定の液相系光触媒22及び紫外線ランプ23が設置されている。なお、前記液相系光触媒22としては、粉末状TiO2光触媒をプラスチック表面や繊維小片表面に担持したもの、又は、担持媒体として不織布(ポリオレフィンのような疎水性繊維または親水性繊維)を用いたものを、所定の大きさに切って短冊状にしたものを用いることが好ましい。なお、前記筒状容器21には、円柱状容器だけでなく、角柱状容器も含まれる。
【0029】
そして、粉末状TiO2光触媒をプラスチック表面や繊維小片表面に担持したもの、又は、粉末状TiO2光触媒を担持した不織布を、反応槽内に分散させ、水流により自由に動くことができるように設置する、あるいは、容器の中央部に層状に固定配置する。なお、上記のように構成した液相系光触媒22を反応槽2内に分散配置した場合には、液相系光触媒22は容器内の水流により移動が可能となるため、紫外線ランプ23から照射されるエネルギーを効率良く受けることができる。
【0030】
また、紫外線ランプ23としては、水中で使用可能な紫外線ランプ(主波長254nm(UV254)、主波長254nm(185nmを数%含む、(UV254+185))を用いることが好ましい。
【0031】
また、前記反応槽2内には、微細気泡発生ノズル24が設置され、この微細気泡発生ノズル24には、微細気泡発生用ポンプ25が接続されると共に、オゾン供給配管26を介してオゾン発生器27あるいはオゾンガスボンベが接続されている。なお、前記微細気泡発生ノズル24は、高速せん断方式等によりnmサイズ又はμmサイズ、あるいはその両方の気泡径を有する微細気泡を発生させる装置であり、これにより反応槽2内において数十nm〜数十μmの微細気泡を発生させることができるように構成されている。なお、ここでいう微細気泡とは、マイクロサイズの気泡、ナノサイズの気泡、またはその両方を含む気泡であり、微細気泡発生直後の粒径が数十nm〜数十μmの微細な気泡をいう。
【0032】
なお、図1に示した本実施形態においては、微細気泡発生ノズル24にはオゾン供給配管26を介してオゾンが導入されるように構成されているが、オゾンの代わりに空気を投入して、微細気泡を発生させるように構成しても良い。
【0033】
(1−1−4)下部水槽及びクッションタンクの構成
図1に示すように、前記反応槽2においてWSOCの分解処理がなされた循環水が導入される下部水槽3には、配管31を介してポンプ32及び活性炭塔33が接続されている。そして、前記反応槽2において一次分解または完全分解まで至らなかったWSOCを活性炭に吸着させることができるように構成されている。
【0034】
また、下部水槽3の下流側にはクッションタンク4が設けられ、スクラバー1に供給される循環水の水量が不足している場合に、このクッションタンク4において適宜水を補給することができるように構成されている。なお、前記下部水槽3及びクッションタンク4は必ずしも必要ではなく、反応槽2を経た循環水を所定のろ過フィルタを通すことでろ過するように構成しても良く、また、補給水をスクラバー1あるいは反応槽2に直接供給できるように構成しても良い。
【0035】
(1−2)作用
上記のような構成を有する本実施形態の水溶性有機化合物の除去システムは、以下のように作用する。
【0036】
スクラバー1においては、散水ヘッダー18によって上部から滴下された循環水(水)によって充填材11の表面に液膜が形成されている。このスクラバー1に、排ガス供給配管14を介してWSOCを含む排ガスが導入されると、この排ガスは筒状のスクラバー1内を上昇し、充填材11の表面に形成された液膜と接触する。その結果、排ガス中に含まれるWSOCは、充填材11の表面に形成された液膜によって吸収され、排ガス中から除去される。
【0037】
WSOCが除去された排ガスは、ミストセパレータ19を経た後、排ガス排出配管20を介して外部に排出される。一方、排ガス中のWSOCを溶解した循環水15は、スクラバー1の底部に貯留され、循環水排出配管16を介して、反応槽2に導入される。
【0038】
反応槽2内には所定の液相系光触媒22が設置されており、WSOCを溶解した循環水が導入されると同時に、微細気泡発生ノズル24により所定の粒径を有するオゾン含有微細気泡を発生させ、紫外線ランプ23により所定の波長の紫外線が照射される。
【0039】
反応槽2内において、液相系光触媒22は、バンドキャップ以上のエネルギーの紫外光を紫外線ランプ23によって照射することにより生じる伝導帯の電子による還元反応と、価電子帯の正孔による酸化反応によってWSOCを分解することができる。
【0040】
また、微細気泡は表面積がミリバブルなどに比べて非常に小さく、気液接触面積が大きいことから、オゾン含有微細気泡中のオゾン分子が循環水中に効率良く溶解する。水中のオゾン分子は自己分解によりヒドロキシラジカル(・OH)を生成するため、水中において、このヒドロキシラジカル(・OH)によるフリーラジカル反応が起き、効率良くWSOCを分解することができる。
【0041】
このように、本実施形態の水溶性有機化合物の除去システムにおいては、反応槽2内において、オゾンによる酸化分解と液相系光触媒反応の相乗効果を得ることができるので、WSOCの分解率を大幅に向上させることができる。
【0042】
続いて、反応槽2においてWSOCの分解処理が行われた循環水は下部水槽3に導入され、配管31を介して活性炭筒33に導入される。これにより、循環水中に含まれる一次分解または完全分解まで至らなかったWSOCを活性炭に吸着させることができる。
【0043】
続いて、下部水槽3の下流側に設置されたクッションタンク4において、スクラバー1に供給される循環水の水量が不足している場合には適宜水が補給された後、前記循環ポンプ5及び循環用配管7を介して、前記スクラバー1に循環水が供給される。
【0044】
(1−3)効果
上述したように、本実施形態によれば、スクラバーにおけるWSOCの吸収液として水を用いることで、ランニングコストを削減することができる。また、WSOCを溶解した水を、所定の液相系光触媒22を設置した反応槽2内に導入し、オゾン含有微細気泡を発生させると共に紫外線を照射することにより、WSOCと光触媒との接触効率を大幅に向上させることができ、また、オゾンによる酸化分解と液相系光触媒反応の相乗効果を得ることができるので、WSOCの分解処理を高効率で行うことができる。
【0045】
さらに、本実施形態によれば、WSOCを溶解した水を連続して処理することができると共に、再度、スクラバーに供給して利用することが可能となるので、補給水を大幅に削減することができる。また、スクラバー内に設置する充填材を適切に配置することにより、充填密度すなわち気液接触面積を向上させることができるので、排ガス中のWSOCの除去性能を容易に向上させることができる。
【0046】
(2)第2実施形態
本実施形態は、上記第1実施形態の変形例であって、反応槽2をスクラバー1の下部に設置することにより、よりコンパクトな構成としたものである。
【0047】
(2−1)構成
本実施形態の水溶性有機化合物の除去システムは、図3に示すように、WSOCを含む排ガスを水と接触させることにより、排ガス中のWSOC濃度を低減させるスクラバー1と、このスクラバー1に供給される循環水に溶解したWSOCを分解する反応槽2と、この反応槽2における処理後の循環水をろ過するろ過フィルタ40と、このろ過フィルタ40を経た循環水を前記スクラバー1に循環供給する循環ポンプ5とから構成されている。
【0048】
また、本実施形態においては、前記スクラバー1は台座6の上に設置されると共に、前記反応槽2は前記スクラバー1の下部、ここでは台座6内に設置され、スクラバー1の底面には、排ガス中のWSOCを溶解した循環水15を反応槽2に導入するための循環水排出配管16が接続されている。また、前記反応槽2には、該反応槽2内に水を供給するための給水用配管41及び排水用配管42が接続されている。なお、スクラバー1及び反応槽2のその他の部分の構成は、上記第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0049】
(2−2)作用・効果
上記のような構成を有する本実施形態の水溶性有機化合物の除去システムによれば、上記第1実施形態と同様の作用・効果が得られるだけでなく、反応槽2をスクラバー1の下部に設置することにより、大幅な省スペース化を実現することができる。
【0050】
(3)第3実施形態
本実施形態は、上記第1実施形態の変形例であって、第1実施形態で示した反応槽2と下部水槽3とを一体化して構成することにより、よりコンパクトな構成としたものである。
【0051】
(3−1)構成
本実施形態の水溶性有機化合物の除去システムにおいては、図4に示すように、水槽50の内部に部分隔壁51が設置され、この部分隔壁51によって、該水槽50はその上層部及び中層部においては2つの区画50a、50bに仕切られ、下層部においては2つの区画が連通するように構成されている。
【0052】
そして、この水槽50の一方の区画50aには、所定の液相系光触媒22及び紫外線ランプ23が設置されると共に、微細気泡発生ノズル24が設置され、この微細気泡発生ノズル24には、微細気泡発生用ポンプ25が接続されると共に、オゾン供給配管26を介してオゾン発生器27あるいはオゾンガスボンベが接続されている。
【0053】
また、他方の区画50bには、第1の配管52を介してポンプ32及び活性炭塔33が接続されると共に、第2の配管53を介してポンプ54及びろ過フィルタ40が接続されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0054】
(3−2)作用・効果
上記のような構成を有する本実施形態の水溶性有機化合物の除去システムにおいては、前記部分隔壁51によって水槽50内に形成された一方の区画50aにおいて、上述したと同様にオゾンによる酸化分解と液相系光触媒反応の相乗効果を得ることができるので、WSOCの分解率を大幅に向上させることができる。
【0055】
また、水槽50内に形成された他方の区画50bにおいては、WSOCの分解処理がなされた循環水を第1の配管52を介して活性炭筒33に導入することにより、循環水中に含まれる一次分解または完全分解まで至らなかったWSOCを活性炭に吸着させることができる。さらに、第2の配管53を介してろ過フィルタ40に導入することにより、循環水をろ過することもできるので、より高効率な除去システムとなる。
【0056】
このように本実施形態の水溶性有機化合物の除去システムによれば、上記第1実施形態と同様の作用・効果が得られるだけでなく、反応槽2と下部水槽3とを一体化して構成することにより、大幅な省スペース化を実現することができる。
【0057】
(4)他の実施形態
本発明は上述したような実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が考えられる。例えば、上記の実施形態においてスクラバー1に設置した充填材11の代わりに熱交換コイルを配置して、排気の熱回収を行うと共に、そのコイルフィン面に形成した水膜によって排ガス中のWSOCを吸収するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る水溶性有機化合物の除去システムの第1実施形態の構成を示す図である。
【図2】スクラバー内に設置される充填材の配置例を示す図である。
【図3】本発明に係る水溶性有機化合物の除去システムの第2実施形態の構成を示す図である。
【図4】本発明に係る水溶性有機化合物の除去システムの第3実施形態の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1…スクラバー
2…反応槽
3…下部水槽
4…クッションタンク
5…循環ポンプ
6…台座
7…循環用配管
10…筒状容器
11…充填材
12…上部空間
13…下部空間
14…排ガス供給配管
15…WSOCを溶解した循環水
16…循環水排出配管
17…送風機
18…散水ヘッダー
19…ミストセパレータ
20…排ガス排出配管
21…筒状容器
22…液相系光触媒
23…紫外線ランプ
24…微細気泡発生ノズル
25…微細気泡発生用ポンプ
26…オゾン供給配管
27…オゾン発生器
31…配管
32…ポンプ
33…活性炭塔
40…ろ過フィルタ
41…給水用配管
42…排水用配管
50…水槽
51…部分隔壁
52…第1の配管
53…第2の配管
54…ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に所定の充填材が設置され、該充填材の上部から水が滴下されるように構成されたスクラバーと、
容器内に液相系光触媒及び紫外線ランプが設置されると共に、微細気泡を発生させる微細気泡発生ノズルが設置された反応槽とを備えたことを特徴とする水溶性有機化合物の除去システム。
【請求項2】
容器内に所定の充填材が設置され、該充填材の上部から水が滴下されるように構成されたスクラバーと、
容器内に液相系光触媒及び紫外線ランプが設置されると共に、微細気泡を発生させる微細気泡発生ノズルが設置された反応槽とを備え、
前記スクラバーに水溶性有機化合物を含む排ガスを導入して、スクラバー内の水に水溶性有機化合物を溶解させた後、この水を前記反応槽に導入し、
前記反応槽において、水溶性有機化合物の分解処理を行うように構成したことを特徴とする水溶性有機化合物の除去システム。
【請求項3】
前記反応槽において水溶性有機化合物の分解処理がなされた水を、再度前記スクラバーに循環供給するように構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水溶性有機化合物の除去システム。
【請求項4】
前記微細気泡が、オゾン含有微細気泡であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の水溶性有機化合物の除去システム。
【請求項5】
前記液相系光触媒が、粉末状のTiO2光触媒を所定のプラスチック表面又は繊維小片表面に担持したもの、又は、担持媒体として不織布を用いたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の水溶性有機化合物の除去システム。
【請求項6】
前記スクラバーと反応槽とが、上下に積層配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の水溶性有機化合物の除去システム。
【請求項7】
前記充填材が、高密度に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の水溶性有機化合物の除去システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−36147(P2010−36147A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204058(P2008−204058)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000236160)株式会社テクノ菱和 (50)
【Fターム(参考)】