説明

水熱合成法を用いたニッケル粉末直接製造方法

【課題】分散性及び還元率に優れる水熱合成法を用いたニッケル粉末直接製造方法を提供する。
【解決手段】(a)NiO、pH調節剤、PdCl、アントラキノン(Anthraquinone)、PVP(Polyvinyl pyrrolidone)、及び水が混合された水熱合成混合物を用意するステップ、(b)上記水熱合成混合物を反応容器に投入した後、水の沸騰点以上に加熱するステップ、(c)上記(b)ステップの加熱した混合物に還元剤を加えて、上記NiOを溶解した後、Niに還元させるステップ、(d)上記(c)ステップの水熱反応の結果物を冷却するステップ、及び(e)上記(d)ステップの冷却された結果物を洗浄及び乾燥してNiパウダーを収得するステップを経てニッケル粉末を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層セラミックキャパシタ(Multi Layer Ceramic Capacitor:MLCC)などに使われるニッケル粉末の製造方法に関し、より詳しくは、水熱合成法を用いたニッケル粉末直接製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子産業が飛躍的に発展するにつれて、電子回路素子は、微小化、高機能化、多様化、及び精密化されている。先端電子製品には優れる物性と機能性を有する材料が求められている。
【0003】
電子素材用ニッケル粉末は、主としてMLCCの電極素材の用途に使われる。
【0004】
図1は、一般的なMLCCの断面を概略的に示す図である。
【0005】
図1に示すように、MLCCは、誘電体110と電極120とが交互に積層され、両端部には銅などの材質のターミナル電極130が形成される。電極120の一端部はターミナル電極130に連結され、他端部はターミナル電極130に連結されないように形成される。
【0006】
この際、電極120の素材に主にニッケル粉末が使われている。
【0007】
図2は、MLCCの誘電層と電極を人の髪の毛と比較したSEM写真である。
【0008】
図2を参照すると、人の髪の毛は略60μmぐらいであることに反して、誘電層の厚さは6μm程度で、電極は1μm未満の厚さで形成される。
【0009】
従来にはこのようなMLCCの電極を形成するためのニッケル粉末を液相還元法によりニッケル塩の水溶液から製造されている。
【0010】
しかしながら、液相還元法により製造されたニッケル粉末は、凝集が厳しく、形状及びサイズの制御が難しくて、MLCC電極のような電子素材用への適用は困難であることと知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、分散性及び収得率に優れる水熱合成法を用いたニッケル粉末直接製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、MLCC電極などに活用できるように球形の形状及び少ない粒子サイズを有するニッケル粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記1つの目的を達成するための本発明の実施形態に係る水熱合成法を用いたニッケル粉末直接製造方法は、(a)NiO、pH調節剤、PdCl、アントラキノン(Anthraquinone)、PVP(Polyvinyl pyrrolidone)、及び水が混合された水熱合成混合物を用意するステップ、(b)上記水熱合成混合物を反応容器に投入した後、水の沸騰点以上に加熱するステップ、(c)上記(b)ステップの加熱した混合物に還元剤を加えて、上記NiOを溶解した後、Niに還元させるステップ、(d)上記(c)ステップの水熱反応の結果物を冷却するステップ、及び(e)上記(d)ステップの冷却された結果物を洗浄及び乾燥してNiパウダーを収得するステップを含むことを特徴とする。
【0014】
この際、水熱合成混合物にはNi前駆体としてNiSOが更に添加されていることが好ましい。
【0015】
上記他の目的を達成するための本発明に係るニッケル粉末は、上記提示された方法により製造されて球形の形状及び1.0μm以下の平均粒径を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る水熱合成法を用いたニッケル粉末製造方法は、水熱合成法を用いて形状及び粒度制御が容易であり、併せて、優れる分散性と収得率を表すことができる長所がある。
【0017】
したがって、製造されたニッケル粉末はMLCC(Multi Layer Ceramic Capacitor)などの電極素材への活用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一般的なMLCCの断面を概略的に示す図である。
【図2】MLCCの誘電層と電極を人の髪の毛と比較したSEM写真である。
【図3】本発明に係る水熱合成法を用いたニッケル粉末直接製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【図4】NiO−NiのE−pHダイヤグラムを示す図である。
【図5】NiSOを添加しない場合、NiSOを1.178g/L添加した場合、NiSOを1.178g/L添加した場合の製造されるニッケル粉末を示すSEM写真である。
【図6】NiSOを添加しない場合、NiSOを1.178g/L添加した場合、NiSOを1.178g/L添加した場合の製造されるニッケル粉末を示すSEM写真である。
【図7】NiSOを添加しない場合、NiSOを1.178g/L添加した場合、NiSOを1.178g/L添加した場合の製造されるニッケル粉末を示すSEM写真である。
【図8】NiSOの添加に従うNiOの還元率を示すものである。
【図9】NiSOの添加量によって製造されるニッケル粉末のXRD分析結果を示すものである。
【図10】反応温度が200℃の場合、225℃の場合、及び250℃の場合に製造されるニッケル粉末のSEM写真を示すものである。
【図11】反応温度が200℃の場合、225℃の場合、及び250℃の場合に製造されるニッケル粉末のSEM写真を示すものである。
【図12】反応温度が200℃の場合、225℃の場合、及び250℃の場合に製造されるニッケル粉末のSEM写真を示すものである。
【図13】反応温度変化に従うNiOの還元率を示すものである。
【図14】反応温度変化によって製造されたNi粉末のXRD分析結果を示すもの である。
【図15】pH3.5、5.2、9.0の条件で製造されたNi粉末を示すSEM写真である。
【図16】pH3.5、5.2、9.0の条件で製造されたNi粉末を示すSEM写真である。
【図17】pH3.5、5.2、9.0の条件で製造されたNi粉末を示すSEM写真である。
【図18】初期pH変化に従うNiOの還元率を示すものである。
【図19】初期pH変化によって製造されたニッケル粉末のXRD分析結果を示すものである。
【図20】反応容器に吹き込まれる水素分圧150psi及び300psiの場合の製造されたニッケル粉末を示すSEM写真である。
【図21】反応容器に吹き込まれる水素分圧150psi及び300psiの場合の製造されたニッケル粉末を示すSEM写真である。
【図22】水素分圧変化に従うNiOの還元率を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、詳細に後述されている実施形態及び図面を参照すれば明らかになる。
【0020】
しかしながら、本発明は、以下に開示される実施形態に限定されるものでなく、互いに異なる多様な形態に具現されることができ、単に本実施形態は本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせてくれるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇により定義されるだけである。
【0021】
以下、本発明に係る水熱合成法を用いたニッケル粉末直接製造方法について詳細に説明する。
【0022】
図3は、本発明に係る水熱合成法を用いたニッケル粉末直接製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【0023】
図3を参照すると、図示されたニッケル粉末製造方法は、水熱合成混合物用意ステップ(S310)、水熱合成混合物加熱ステップ(S320)、Ni粉末水熱合成ステップ(S330)、冷却ステップ(S340)、及び洗浄及び乾燥ステップ(S350)を含む。
【0024】
水熱合成混合物用意ステップ(S310)では、NiO、pH調節剤、PdCl、アントラキノン(Anthraquinone)、PVP(Polyvinyl pyrrolidone)、及び水が混合された水熱合成混合物を用意する。
【0025】
NiOはニッケル前駆体として作用し、水溶液内でNi2+にイオン化した後、Niに還元される。
【0026】
上記NiOは混合物全重量に対し、2〜5重量%(混合物1Lを基準に20〜30g)で含まれることが好ましい。上記NiOの含有量が2重量%未満の場合、生産性が少なくて、工程への適用が困難であり、上記NiOの含有量が5重量%を超過する場合、全量還元されないという問題点がある。
【0027】
PdClはニッケル粉末のシードとして作用するパラジウム(Pd)を提供する。
【0028】
パラジウムは表面活性が極めて優れる。したがって、パラジウムをシードに用いる場合、パラジウムの表面にニッケル粒子が生成されて、より大きい粒子に容易に成長して緻密な表面を有する粒子生成を可能にする。
【0029】
このようなPdClは1×10−3〜1.5×10−3重量%の含有量比で添加することが好ましい。PdClの含有量が1×10−3重量%未満の場合、ニッケル粉末のシードとしてその量が不充分である。反対に、PdClの含有量が1.5×10−3重量%を超過する場合、パラジウムシードに析出されるニッケルの量が少な過ぎて非経済的であるという問題点がある。
【0030】
アントラキノン(Anthraquinone)は触媒役割をして、水熱合成反応の反応時間を短縮させる役割をする。
【0031】
上記アントラキノンは、混合物の全重量の0.1〜0.2重量%で含まれることが好ましい。アントラキノンの含有量が0.1重量%未満の場合、触媒役割が不充分で、反対に、アントラキノンの含有量が0.2重量%を超過する時は、反応時間が速過ぎて収得されるニッケル粉末の形状制御が困難であり、凝集問題が発生することがある。
【0032】
PVP(Polyvinyl pyrrolidone)は、パラジウムあるいはニッケルの安定化剤の役割をする。
【0033】
上記PVPは水熱合成混合物の全重量の1〜3重量%で含まれることが好ましい。PVPが1重量%未満に添加される場合、パラジウムなど、金属の安定化効果を十分に発揮することは困難である。反対に、PVPの含有量が3重量%を超過する場合、分散効果の過剰により不規則なニッケル粒子が生成されて、形状及び粒度制御が困難であるという問題点がある。
【0034】
pH調節剤は、水熱合成混合物のpHを調節する役割をする。このようなpH調節剤は、NaHPO及びNaHPOのうちの1つ以上を利用することができる。これら物質は、NaHPOはシードであるパラジウム還元用にも利用できる。
【0035】
次に、水熱合成混合物加熱ステップ(S320)では、用意された水熱合成混合物をオートクレーブ(autoclave)のような水熱合成が可能な反応容器に投入した後、水の沸騰点以上に加熱する。これを通じて反応容器の内部が水熱合成に適合した加圧加温の条件になることができる。
【0036】
この際、加熱温度は200〜250℃のものが好ましい。加熱温度が200℃未満の場合、製造されるニッケル粉末の凝集が発生し、粒度が均等でないという問題点がある。充分な水熱合成反応がなされ難いという問題点がある。但し、加熱温度が250℃を超過する場合、水熱合成反応が過度に速くなされて、製造されるニッケル粉末の形状制御が困難であるという問題点がある。
【0037】
加熱時、水熱合成混合物の攪拌のためにインペラなどを用いて650RPMぐらいで水熱合成混合物を回転させることができる。
【0038】
次に、Ni粉末水熱合成ステップ(S330)では、加熱した混合物に水素(H2)ガスのような還元剤を加えて、NiOを溶解した後、Niに還元させる。
【0039】
還元剤に水素ガスを用いる場合、次のような反応式1及び反応式2の順にニッケル粒子が形成される。
反応式1:NiO+2H→Ni2++H
反応式2:Ni2++H→Ni+2H
反応式1はNiOを溶解する過程で、4≦pH≦6条件下でなされることが好ましい。
【0040】
図4はNiO−NiのE−pHダイヤグラムを示すものであって、図4を参照すると、水溶液上でNiイオン(Ni2+)はpH6まで存在するので、pH6以下で水素のような還元剤によりニッケルイオンが還元できる。
【0041】
但し、NiO溶解時のpHが4未満の場合、反応終了後、pHがより低く変化して、ニッケルが水素イオンと反応して、また溶解される現象(反応式2の逆反応)が発生して、ニッケル還元率がむしろ低下する。
【0042】
この際、水素ガスは150〜400psi分圧で供給される。水素ガスの分圧が150psi未満の場合、反応時間が長くなり、製造されるニッケル粉末の凝集程度が大きくなる問題点がある。反対に、水素分圧が400psiを超過する場合、反応速度が過度に速くなって粉末粒度が増加して、1μm以下の粒度を有するニッケル粉末を製造し難くなる。
【0043】
一方、水熱合成混合物は、Ni前駆体としてNiSOを更に含むことができる。
【0044】
NiSOは下記の反応式3のように水溶液にイオン化され、反応式4のように水素イオンを発生させることによって、NiO溶解時に要求される水素イオンを提供することができる。
反応式3:NiSO→Ni2++SO42−
反応式4:Ni2++H→Ni+2H
【0045】
NiSOを用いない場合、NiOが十分に溶解されていない状態でNiO表面にあるニッケルが水素イオンにより還元されてNiO表面に緻密なニッケル金属コーティング層を形成し、このようなニッケル金属コーティング層は、全体的な水素ガスとの還元反応を妨害して還元率が低くなる。
【0046】
しかしながら、NiSOを用いる場合、NiSOの上記反応により提供される水素イオンを通じてNiOを溶解してニッケルイオンを水溶液上に湧出させる。最終的に、湧出されたNiイオンは水素により還元されるので、還元率を格段に高めることができる。
【0047】
この際、上記NiSOは上記NiO 100重量部に対し、10重量部以下に含まれることが好ましい。上記のようにNiSOが添加されるニッケルの還元率を向上させることができる長所があるが、NiO 100重量部対比10重量部を超過して過多に添加されれば、実際に還元しなければならないNiOの還元は少なくなり、NiSOの還元が多くなって効率性が落ちるという問題点がある。
【0048】
次に、冷却ステップ(S340)では、水熱反応の結果物を冷却する。以後、洗浄及び乾燥ステップでは、冷却された結果物を脱イオン水及びエタノールを用いて3回ぐらい洗浄した後、乾燥してNiパウダーを収得する。
【0049】
上記の過程で製造されるニッケル粉末は、球形の形状を有することができ、1.0μm以下の平均粒径と共に均等な粒度を有することができるので、MLCC(Multi Layer Ceramic Capacitor)などの電極素材に活用できる。
【0050】
実施形態
以下、本発明の好ましい実施形態を通じて本発明に係る水熱合成法を用いたニッケル粉末直接製造方法について説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示されたものであり、これによって本発明が制限されるものではない。
【0051】
ここに記載していない内容は、この技術分野で熟練した者であれば、十分に技術的に類推できるものであるので、その説明を省略する。
【0052】
実施形態で使われた物質は、次の通りである。
ニッケル供給源:Nickel(II)oxide(NiO95%、Junsei chemical Co., Japan)。
パラジウム(Pd):PdCl(純度99.99%、Kojima chemical reagents Inc., Japan.)を蒸溜水に溶解させて使用。
PVP:PVP k−30(CNO)n 12~13%、Junsei Chemical Co., Japan。
【0053】
全ての試薬は脱イオン水に溶解して実験に用いたものであり、ニッケル粉末合成後、脱イオン水及びエタノールを使用して3回洗浄して、物理化学的分析を行って特性を調べた。
【0054】
NiSOの影響
NiO 26g/l、PVP 16g/l、PdCl 12.3mg/l、アントラキノン 1.2g/l、反応温度250℃、PH2 300psi、攪拌速度650RPM、初期pH5.12の実験条件で、NiSOを0g/Lから2.356g/Lまで変化させながらニッケル粉末を製造した。
【0055】
図5乃至図7は、NiSOを添加しない場合、NiSOを1.178g/L添加した場合、NiSOを1.178g/L添加した場合の製造されるニッケル粉末のSEM写真を示すものである。
【0056】
図5を参照すると、NiSOを添加しない場合、製造されるニッケル粉末の形状が不規則で、微細なニッケル粒子が凝集していることを見ることができる。
【0057】
また、図6を参照すると、NiSOを1.178g/L添加した場合には、生成される ニッケル粒子のサイズが微細であるが、若干不規則な形状を帯びていることを見ることができる。
【0058】
また、NiSOを2.356g/Lを添加した場合には、粒子のサイズは約1μm以下であり、若干の凝集した形態を表してことを見ることができる。
【0059】
したがって、NiSOを添加する場合、ニッケル粉末をより微細で、規則的な形状に製造することができる。
【0060】
図8はNiSO添加によるNiOの還元率を示すものであり、図9はNiSO添加量によって製造されるニッケル粉末のXRD分析結果を示すものである。
【0061】
図8を参照すると、NiSOを添加しない場合には、反応時間20分が経過した後にもNi粉末還元率が10%未満に表れている。
【0062】
一方、NiSOを1.178g/L添加した場合、反応時間が増加するにつれて、還元率が直線的に増加している。しかしながら、反応時間30分以後にも還元率は50%未満に表れている。
【0063】
NiSOを2.356g/Lを添加した場合には、反応時間15分以内に反応が終了して還元率が100%に到達した。
【0064】
また、図9を参照すると、NiSOを添加しないか、1.178g/L添加した場合には、NiOのピークが観察されるが、NiSOを2.356g/L添加した場合には地味なニッケルピークのみ表している。
【0065】
したがって、図8及び図9を参照すると、NiSOの添加量が高いほど、NiOの還元率も高まることが分かる。
【0066】
反応温度の影響
NiOから水熱合成法によりNi粉末の製造時、温度条件の影響を見出すために、NiO 26g/l、NiSO 2.4g/L、PVP 16g/l、PdCl 12.3mg/l、アントラキノン 1.2g/l、PH2300psi、攪拌速度650RPM、初期pH 5.12の実験条件で反応温度を200〜250℃に変化させながら実験を行った。
【0067】
図10乃至図12は反応温度が200℃の場合、225℃の場合、及び250℃の場合の製造されるニッケル粉末のSEM写真を示すものである。
【0068】
図10乃至図12を参照すると、反応温度が増加するにつれて、粉末の凝集度が減少し、単分散化することを確認することができる。
【0069】
図13は反応温度変化に従うNiOの還元率を示すものであり、図14は反応温度変化によって製造されたNi粉末のXRD分析結果を示すものである。
【0070】
図13を参照すると、反応温度が増加するにつれて、還元率が増加することが分かり、反応温度250℃の場合には、約12.5分に反応が完了することを見ることができる。一方、反応温度が200℃の場合には、時間の経過にも還元率があまり高まらないことを見ることができる。
【0071】
また、図14を参照すると、反応温度が225℃以下の温度条件では未反応したNiOが存在することを確認することができる。一方、反応温度が250℃の場合には、NiOのピークはほとんど検出されないので、大部分のNiOはニッケルに還元されたことを見ることができる。
【0072】
したがって、NiOの還元率を高めるためには、250℃程度の反応温度で水熱合成がなされることがより好ましい。
【0073】
初期pHの影響
NiOからNi粉末製造時、初期pHの影響を見出すために、NiO 26g/l、NiSO 2.4g/L、PVP 16g/l、PdCl 12.3mg/l、アントラキノン1.2g/l、反応温度250℃、PH2300psi、攪拌速度650RPM、初期pHを3.5から9.0まで変化させながら実験を行った。
【0074】
図15乃至図17は、pH3.5、5.2、9.0の条件で製造されたNi粉末のSEM写真を示すものである。
【0075】
図15乃至図17を参照すると、初期pHが3.5から5.2に増加するにつれて、粒子の凝集度が減少するが、pHが5.2から9.0に増加時には凝集現象が甚だしく表れることを確認することができる。即ち、図16に示すように、pHが5.2で粒子の凝集度を最小化することが分かる。
【0076】
図15に示すように、pH3.5の条件では、反応終了後、pH変化が低pHに変化するので、反応式2の逆反応が進行されて反応が進行し難くなるので、むしろ粒子の凝集度が増加することと見える。
【0077】
また、図17に示すように、pH9.0の条件では、反応30分後にもpHが7.98に若干減少することに過ぎないので、反応式2あるいは反応式4による反応が十分に進行されていないことが分かる。
【0078】
図18は初期pH変化に従うNiOの還元率を示すものであり、図19は初期pH変化に従って製造されたニッケル粉末のXRD分析結果を示すものである。
【0079】
図18を参照すると、初期pHが5.2の場合、最も高い還元率を表すことを見ることができる。また、pH5.2の場合には、約10分に反応が完了することが分かる。
【0080】
また、図19を参照すると、pH9.53及び3.5の場合には、未反応したNiOが検出されるが、pH5.12の場合には大部分還元されて純粋なNiのピークのみ検出されたことを見ることができる。
【0081】
水素分圧の影響
水素分圧の影響を見出すために、NiO 26g/l、NiSO 2.4g/L、PVP 16g/l、PdCl 12.3mg/l、アントラキノン1.2g/l、反応温度250℃、攪拌速度650RPM、初期pH5.12の実験条件で水素分圧を150psi及び300psiに変化させながら実験を行った。
【0082】
図20及び図21は反応容器に吹き込まれる水素分圧150psi及び300psiの場合、製造されたニッケル粉末のSEM写真を示すものであり、図22は水素分圧変化に従うNiOの還元率を示すものである。
【0083】
図20及び図21を参照すると、水素分圧が150psiの場合が300psiの場合より粒子サイズが小さいが、凝集程度は大きく表れていることが分かる。
【0084】
しかしながら、図22を参照すると、水素分圧300psiの場合、約10分内に反応完了するが、150psiの場合には、約25分がかかることを見ることができる。
【0085】
即ち、水素分圧が低い場合、粒子サイズを小さくすることができるが、凝集程度が大きく、反応時間が更にかかるので、水素分圧は300psi程度がより好ましい。
【0086】
以上、添付した図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、互いに異なる多様な形態に変形可能であり、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明の技術的事象や必須な特徴を変更しなくて他の具体的な形態で実施できるということを理解することができる。したがって、前述した実施形態は例示的なものであり、限定的でないことと理解すべきである。
【符号の説明】
【0087】
S310:水熱合成混合物用意ステップ
S320:水熱合成混合物加熱ステップ
S330:Ni粉末水熱合成ステップ
S340:冷却ステップ
S350:洗浄及び乾燥ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)NiO、pH調節剤、PdCl、アントラキノン(Anthraquinone)、PVP(Polyvinyl pyrrolidone)、及び水が混合された水熱合成混合物を用意するステップと、
(b)前記水熱合成混合物を反応容器に投入した後、水の沸騰点以上に加熱するステップと、
(c)前記(b)ステップの加熱した混合物に還元剤を加えて、前記NiOを溶解した後、Niに還元させるステップと、
(d)前記(c)ステップの水熱反応の結果を冷却するステップと、
(e)前記(d)ステップの冷却された結果物を洗浄及び乾燥してNiパウダーを収得するステップと、
を含むことを特徴とする、ニッケル粉末直接製造方法。
【請求項2】
前記水熱合成混合物は、NiO:2〜5重量%、PVP:1〜3重量%、PdCl:1×10−3〜1.5×10−3重量%、アントラキノン:0.1〜0.2重量%、及び残りの水とpH調節剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載のニッケル粉末直接製造方法。
【請求項3】
前記水熱合成混合物は、NiSOを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のニッケル粉末直接製造方法。
【請求項4】
前記NiSOは、前記NiO 100重量部に対し、10重量部以下に含まれることを特徴とする、請求項3に記載のニッケル粉末直接製造方法。
【請求項5】
前記pH調節剤は、NaHPO及びNaHPOのうちの1つ以上を用いることを特徴とする、 ニッケル粉末直接製造方法。
【請求項6】
前記(b)ステップは、前記水熱合成混合物を200〜250℃に加熱することを特徴とする、請求項1に記載のニッケル粉末直接製造方法。
【請求項7】
前記(b)ステップは、加熱と共に前記水熱合成混合物を攪拌することを特徴とする、請求項1に記載のニッケル粉末直接製造方法。
【請求項8】
前記還元剤は、水素ガスであることを特徴とする、請求項1に記載のニッケル粉末直接製造方法。
【請求項9】
前記水素ガスは、150〜400psi分圧で供給されることを特徴とする、請求項8に記載のニッケル粉末直接製造方法。
【請求項10】
前記(c)ステップで、前記NiOの溶解は4≦pH≦6雰囲気下でなされることを特徴とする、請求項8に記載のニッケル粉末直接製造方法。
【請求項11】
前記(d)ステップは、下記の反応式1及び反応式2の過程でなされることを特徴とする、請求項8に記載のニッケル粉末直接製造方法。
反応式1:NiO+2H→Ni2++H
反応式2:Ni2++H→Ni+2H
【請求項12】
前記水熱合成混合物にNiSOが含まれる場合、前記(d)ステップは、下記の反応式3乃至反応式4により発生する水素イオンを前記反応式1に提供することを特徴とする、請求項11に記載のニッケル粉末直接製造方法。
反応式3:NiSO→Ni2++SO2−
反応式4:Ni2++H→Ni+2H
【請求項13】
前記(e)ステップの洗浄は、脱イオン水及びエタノールを使用することを特徴とする、請求項1に記載のニッケル粉末直接製造方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項の記載の方法により製造されて球形の形状及び1.0μm以下の平均粒径を有することを特徴とする、ニッケル粉末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−126991(P2012−126991A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244909(P2011−244909)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(506081530)コリア インスティチュート オブ ジオサイエンス アンド ミネラル リソースズ (21)
【Fターム(参考)】