説明

水環境電池

【課題】浴槽水等の細菌が繁殖しやすい水環境中でもバイオフィルム(微生物被膜)の形成を効果的に防止して、長期間にわたって殺菌等の諸機能を当初と同様に持続的に発揮し続けることができる水環境電池の提供。
【解決手段】水環境電池は、通水若しくは流水または貯水に対して、殺菌・抗菌・抗カビ・防虫等の諸機能を長期間にわたって付与する。水環境電池は、卑金属体と貴金属体とを間隔保持部材を介して同軸状に重ね合わせて殺菌ユニットとし、殺菌ユニットを通水・流水中に配置したり、貯水中に浸漬して、卑金属体と貴金属体との間の均一な隙間空間で水を媒介として電池反応を発生し、卑金属体から完全なイオン化状態で金属イオンを溶出して水に殺菌機能を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン化傾向を利用した電池作用により金属イオン及び活性酸素を水中に溶出した機能水(以下、「電池作用水」ということがある。)を生成して、水道水、井戸水、浄水装置の浄水、各種容器や貯水槽やプール等の貯水、河川等の自然環境の流水、堀や湖沼や海等の自然環境の貯水等、各種の水環境中の水に対して殺菌機能、抗菌機能(抗カビ等の微生物防除機能も含む)、防虫・害虫忌避機能、生鮮品保存機能、植物生育促進機能等の各種有用な機能を付与する水環境電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、卑な金属からなる陰電極と貴な金属からなる陽電極を利用した殺菌装置として、特許文献1(特開2003−181454号公報)に記載のものがある。同文献1は本願が優先権を主張する基礎出願の一つとしての国際特許出願(PCT/JP2008/002366)の国際調査報告で(文献1として)引用されたものであり、同国際調査報告に添付の国際調査機関の見解によれば、「文献1の請求項8,0009段落を参酌すれば、文献1には、スペーサを用いて、異種金属を非接触に存在させる殺菌装置が記載されていると認められる。」とされている。また、同見解によれば、「文献1に記載された発明が、金属を非接触に存在させる発明である以上、文献1に記載された発明において、スペーサを絶縁体で構成することは、当業者が適宜行い得ることである。」とされている。
【0003】
一方、上記国際調査報告では、特許文献2(特開2005−58847号公報)も(文献2として)引用され、上記見解によれば、「文献2には、金属を同心円状に配置する技術が記載されている。そして、文献1に記載された発明において、文献2に記載された上記技術を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。」とされている。また、上記見解によれば、「金属の材質やスペーサの形状の選択、流量の調整、殺菌装置全面をスペーサで覆うことは、当業者にとっては技術の具体化に際する設計的事項に過ぎない。」ともされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−181454号公報
【特許文献2】特開2005−58847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たしかに、特許文献1の請求項8には、「ケーシング内にオープンセル構造のマグネシウムからなる陰電極と孔付き銅合金からなる陽電極と活性炭等の濾過部材を上方へ非接触に重ねて取り付けた」との記載があり、また、段落009には、「ケーシング2内には・・・通水を可能とした陰極部材3であるオープンセル構造のマグネシウムが設けられ、スペーサ6aを介して通水可能とした陽極部材4である孔空き構造の銅合金が対峙して重ねられ」との記載があり、陰電極と陽電極とがスペーサを介して非接触で重ねてケーシング内に取り付けられてはいる。しかし、この「非接触」構造は、以下に説明するように、陰電極と陽電極とをスペーサの厚み分の間隔乃至隙間をおいて互いに対向させることでそれらの対向面については「非接触」とする構造であり、陰電極と陽電極とはスペーサ部分では「接触」すると共に、この「接触」部分(スペーサ部分)で電気的に接続(導通)することが必須の構成となっている。即ち、特許文献1の殺菌装置は、陰電極を「異種金属接触腐食における卑な金属」から構成すると共に、陽電極も「異種金属接触腐食における貴な金属」から構成し(請求項1、段落004、005等参照)、「異種金属接触腐食における卑な金属からなる陰電極と異種金属接触腐食における貴な金属からなる陽電極」をスペーサを介して対峙させて配置することにより、それらの間に「0.7ボルト以上の電圧」を発生する「ガルバニック電池」を形成するものである(段落005)。
【0006】
このような「異種金属接触腐食における卑な金属」と「異種金属接触腐食における貴な金属」との間で「ガルバニック電池」を構成する構造は、いわゆる流電陽極法による(電源を使用しない、異種金属の直接接触による腐食電池(マクロ電池)を利用した)起電力発生構造であり、陰電極の端部と陽電極の端部との間に介装されるスペーサは、陰電極と陽電極とを端部間で直接電気的に接続乃至導通する必要があるために、当然、金属等の導電体(非絶縁体)により形成することが必須となる。これは、特許文献1における「陰電極と陽電極間に起電流が発生するため、その作用を利用して殺菌装置に攪拌装置設けて駆動」させることができるとの記載(段落006)、及び、「陰電極及びよう電極間に発生する起電圧を利用することにより風呂水を攪拌する機能を持たせたものであり、図7に示す原理図及び図8に示す回路図の通り、各陰電極と陽電極間で閉回路を形成しその回路の中間部に攪拌器を介在させて駆動可能としている。」との記載(段落015)からも明らかであり、陰電極と陽電極とはスペーサを介して閉回路を形成する、即ち、スペーサにより電気的に直接接続・導通されるものである。
【0007】
したがって、上記見解のように「文献1に記載された発明において、スペーサを絶縁体で構成する」ことは、特許文献1の発明の構成上ありえない構成、即ち、発明の本質的特徴を損なう構成であり、当業者は、特許文献1の「スペーサ」を必ず電気的導体により構成し、電気的絶縁体により構成することはありえない。
【0008】
次に、特許文献2には、浄化殺菌体4の構造として、塩ビ管16の内部に、順次、材質の異なる管として、チタン管17、ステンレス管18、チタン管19、ステンレス管20、チタン管21をそれぞれ隣接して配置することにより、「管間にイオンが発生し、このイオン効果により浄化対象物の浄化殺菌」を行うとの記載がある(段落0015)が、当該イオン効果におけるイオンがどのようにして発生するかについては具体的な説明がない。一方、特許文献2には、これと同様の「イオン効果」により浄化殺菌を行う構成として、(例えばステンレス材からなる)筒体13と、この外部に密に巻回されている(ステンレス材と異なる銅線等の材料からなる)コイル状線14との間の「イオン効果」により水や空気を浄化殺菌する構成が記載されている(段落0014)。このコイル状線14は、筒体13の外部に密に巻回されて、即ち、筒体13の外周面に接触しているため、上記特許文献1の殺菌装置のように、いわゆる流電陽極作用により、筒体13とコイル状線14との間でイオンを発生させ、このイオンにより殺菌効果を発揮するものと考えられる。したがって、前記浄化殺菌体4においても、チタン管17、ステンレス管18、チタン管19、ステンレス管20及びチタン管21は、それぞれ隣接して配置されているものの、その端部(例えば、図4の各間の下端を接続する板状の部材)において直接電気的に接続乃至導通され、同様の流電陽極作用により、管間でイオンを発生させているものと思われる。
【0009】
したがって、上記見解のように、当業者が「文献1に記載された発明において、文献2に記載された上記技術を採用する」、即ち、「金属を同心円状に配置する技術」を採用するとしても、特許文献1の技術がいわゆる流電陽極法による陰電極と陽電極との電気的接続乃至導通(閉回路形成)を必須構成とし、また、特許文献2の技術も同様の流電陽極法によるイオン発生構造を採用していると思われる以上、当業者は、やはり、流電陽極法による構造となるよう、「金属を同心円状に配置」する、即ち、異種金属の管を互いに電気的に接続することとなる。
【0010】
このように、従来、外部電源を必要とせずに異種金属間で殺菌作用を発揮する電流やイオン等を発生する構成としては、いわゆる流電陽極法乃至異種金属の直接接触によるマクロ電池による構成しか提案されていない。
【0011】
本発明者等は、流電陽極法やマクロ電池による構造では、異種金属間の電気的導通部位(スペーサ等)自体が金属腐食し、その腐食部分で電気的非導通が発生すると、流電陽極法による起電力作用が不安定となったり消失したりして、所期の目的を達成できない等の不具合があることから、流電陽極法以外の機構乃至メカニズムにより、異種金属間で安定して金属イオン等の発生を長期間継続させ、所期の殺菌作用等を長期にわたって安定的に発揮できる技術について鋭意研究を重ねた結果、外部電源を不要とする構造として、いわゆる流電陽極構造によることのない起電力構造に想到した。即ち、本発明者等は、研究開発を重ねた結果、イオン化傾向の異なる金属(卑な金属及び貴な金属)からなる少なくとも2種類の反応体を、電気的導通材料によって互いに直接電気的に接続するのではなく、逆に、電気的絶縁材料を介装することによって、当該反応体間に微小隙間空間の流通空間(水がその内外で流通可能な隙間空間)を形成し、これらの反応体を水中に配置することで、反応体間の前記流通空間での電池作用によって、当該流通空間に進入した水に金属イオンや活性酸素を放出乃至溶出し、当該金属イオンや活性酸素によって水に殺菌効果等の有用な諸機能を付与して機能水とすることできることを見出した。
【0012】
そこで、本発明の第1の課題は、外部電源を不要とする構造として、いわゆる流電陽極構造乃至異種金属直接接触によるマクロ電池構造によることのない起電力構造であって、イオン化傾向の異なる金属からなる少なくとも2種類の反応体を、電気的導通材料によって互いに電気的に接続するのではなく、逆に、電気的絶縁材料を介装することによって、当該反応体間に微小隙間空間の流通空間を形成したユニットを構成し、当該ユニットを、通水環境若しくは流水環境としての通水路若しくは流水空間内部に、通水経路若しくは流水経路に沿って配置したり、通水路若しくは流水空間内部の水と流通可能な隣接する空間に配置したりすることにより、または、貯水環境としての貯水空間内部に配置することにより、水のみを通電媒体とした反応体間での電池作用によって、その通水若しくは流水または貯水に対して、水中に卑金属体から金属イオンを完全なイオン化状態で溶出乃至放出すると共に活性酸素をも溶出乃至放出し、このようにユニットの反応体間で発生する電池作用水による殺菌・抗菌・抗カビ・防虫・害虫忌避機能、生鮮品保存機能、植物生育促進機能等の諸機能を長期間にわたって安定的に付与することができる水環境電池を提供することにある。
【0013】
一方、かかる本発明者等による各種の実験及び研究の結果、水中で金属イオンの放出を行うマグネシウム等の金属を水中に一定期間以上浸漬し続けると、金属表面が変色する(マグネシウムの場合、黒変する)ことを発見した。これは、水中の溶存酸素により、金属表面が酸化して金属表面に酸化膜が形成されるためと推定されるが、かかる酸化膜が上記反応体の一方としての卑な金属の表面に形成された場合、卑な金属と貴な金属との間での電池形成作用が阻害され、金属イオンや活性酸素の発生が大きく低減したり最悪の場合消失したりする。また、金属表面の変色層(酸化膜部分)が金属表面から剥離して水中に放出されると、特に、水道水等の飲用水に発明を適用する場合に、水質を悪化させたり、水質基準を満たさない水となったりするおそれがある。
【0014】
更に、本発明者等による各種の実験及び研究の結果、マグネシウム等の金属を水中に一定期間以上浸漬し続けると、水中に一般細菌がある程度以上存在する水の場合(特に、井戸水や風呂水乃至浴槽水等の場合)、金属表面に生物膜乃至生物被膜(以下、「バイオフィルム」という。)が発生することを発見した。かかるバイオフィルムが上記反応体の表面(特に、反応体の一方としての卑な金属の表面)に形成された場合、やはり、卑な金属と貴な金属との間での電池形成作用が阻害され、金属イオンや活性酸素の発生が大きく低減したり最悪の場合消失したりする。また、金属表面のバイオフィルムが金属表面から剥離して水中に放出されると、特に、水道水等の飲用水に発明を適用する場合に、やはり、水質を悪化させたり、水質基準を満たさない水となったりするおそれがある。
【0015】
ここで、本発明者らは、上記卑な金属からなる反応体と貴な金属からなる反応体とを流通空間を介して水中に配置し、それらの間で電池作用を発生させた場合においても、これら卑な金属からなる反応体と貴な金属からなる反応体とを単に水中に配置するだけでは、やはり、金属表面(特に卑な金属の表面)に酸化膜やバイオフィルムが形成されることを発見した。これは、反応体間の流通空間を水が自由に流通することにより、反応体間の電池作用による電池作用水(電池作用により金属イオンや活性酸素を含有する水)中の金属イオンや活性酸素が瞬時に反応体間の流通空間から外部の水環境中に流出し、流通空間内の水中の電池作用水の濃度(イオン濃度及び活性酸素濃度)が希薄となることに起因すると考えられる。即ち、流通空間内の水中の電池作用水の濃度(イオン濃度及び活性酸素濃度)が一定濃度以上であれば、当該濃度の金属イオンや活性酸素により、酸化被膜やバイオフィルムの発生を抑制及び防止する(特に、バイオフィルムの原因となる細菌を攻撃して死滅させ、バイオフィルムの形成を防止する)のに対し、流通空間内の水中の電池作用水が瞬時に外部水環境に放出されてその濃度が不足すると、金属表面に酸化膜やバイオフィルムが形成されやすくなり、また、金属表面に酸化膜やバイオフィルムが形成されるに伴って、上記のように電池作用が阻害され、更に金属表面への酸化膜やバイオフィルムの形成が促進されるためと考えられる。特に、卑な金属からなる反応体の表面が貴な金属の表面と対向せずに電池作用が全く発生しない状態では、卑な金属の表面には、比較的短期間であっても、酸化膜が発生して表面が変色したり、バイオフィルムが形成されたりする。
【0016】
そこで、本発明の第2の課題は、上記第1の課題を解決すると共に、井戸水や浴槽水等の細菌が繁殖しやすい水環境中でも酸化被膜やバイオフィルムの形成を効果的に防止して、長期間にわたって殺菌等の諸機能を当初と同様に持続的に発揮し続けることができる水環境電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る水環境電池は、第1の反応体、第2の反応体及び間隔保持部材を備える。第1の反応体は、所定のイオン化傾向を有し、水中で金属イオン化して殺菌効果を発揮する第1の金属(卑な金属)からなる金属体(以下、単に「卑金属体」という。)である。第2の反応体は、前記第1の金属より低いイオン化傾向を有する第2の金属(貴な金属)からなる金属体(以下、単に「貴金属体」という。)であり、前記第1の反応体の表面における金属イオンの発生面の主要部の全面に対向して配置される対向面を有する。
【0018】
例えば、第1の反応体としての卑金属体が円柱状等の柱状となる場合は、第2の反応体としては、卑金属体を内装してその外周面全面を覆うような対応する円筒状の1個の貴金属体が使用される。また、卑金属体が円筒状等の筒状とされる場合は、第2の反応体としては、卑金属体を内装して内周面が卑金属体の外周面全面を覆うような対応する円筒状の1個の第1の貴金属体(外側貴金属体)と、卑金属体に内装されてその外周面が卑金属体の内周面全面に対向するような対応する円筒状の1個の第2の貴金属体(内側貴金属体)とを使用することが好ましい。
【0019】
また、間隔保持部材は、前記第1の反応体及び第2の反応体を、全面にわたって互いに非接触状態となるよう、かつ、少なくともそれらの長さ方向全体に均一となる小間隔の隙間空間(流通空間)を置いて互いに面的に対向するよう配置した状態で、互いに固定的に(例えば、意図して離脱するような外力を加えない限り移動不能となるように)保持する電気絶縁体(典型的には、合成樹脂材料、ゴム等の電気絶縁材料)からなる。前記隙間空間は、電池作用を発揮できる小間隔の隙間であり、河川等の水環境に適用する場合は流量確保のため絶対値は大きくなるが、通常の水環境に適用する場合、一般的には第1の反応体の厚み程度若しくはそれより小さい厚みとなるが、卑金属体と貴金属体との間での電池反応を最大限まで高めるためには、(それらが直接接触しない範囲で)できるだけ小さくすることが好ましいが、一方、隙間空間の厚みが小さくなるほど(隙間空間の長さ及び径が同一であれば)卑金属体と貴金属体との間の隙間空間の容積が小さくなって電池作用水の容量が小さくなるため、この点も考慮して設定する。したがって、当該隙間空間は、一般的な用途の場合、約0.1mm以上(下限値が約0.1mm)とすることが好ましいが、例えば、水道配管等の配管内に配置される水環境電池の場合、0.1~7.0mmの範囲内、好ましくは約0.5〜5.0mmの範囲内、より好ましくは約0.5〜3.0mmの範囲内、より一層好ましくは約0.5〜2.0mmの範囲内、更により一層好ましくは0.5〜1.5mmの範囲内とする。
【0020】
また、この隙間空間は、少なくとも長さ方向には同一厚みとなっているが、幅方向や周方向には厚みが変化する場合もある。例えば、貴金属体を円筒状として円柱状の卑金属体を内装する構成とした場合、円柱状の卑金属体の外周面に軸方向に延びる複数の(半球断面状等の)凹溝を、周方向に一定間隔を置いて互いに平行となるよう延設すると、卑金属体と貴金属体との間の隙間空間は、卑金属体の外周面の凹溝以外の部分では、単純円柱状の卑金属体の外周面の場合と同様に、長さ方向(軸方向)のみならず幅方向や周方向を含む全ての方向において、均一(同一)の間隔乃至厚みとなるが、凹溝部分では、長さ方向には均一(同一)の間隔乃至厚みとなる一方、幅方向には凹溝の中央に向かって厚みが漸減して変化する厚みとなる。ただし、この場合でも、前記隙間空間の少なくとも長さ方向における厚みを均一とすれば、卑金属体からの完全な金属イオン化を期待することができると共に、卑金属体の凹凸等の形状変化によるキャビテーション腐食等の不具合を防止することができる。
【0021】
また、本発明に係る水環境電池は、通水路中で通水したり、貯水中で水浸漬することにより、前記第1の反応体と前記第2の反応体との間の隙間空間に進入した水を媒介として、前記第1の反応体と前記第2の反応体との間でのイオン化傾向の差(イオン化傾向の差によって卑な金属からなる第1の反応体の表面に発生する電池作用)により、前記のようにイオン化傾向の大きい卑な金属からなる第1の反応体から前記のようにイオン化傾向の低い貴な金属からなる第2の反応体へと向かって前記第1の反応体の卑な金属イオンが水中に溶出して、水に殺菌機能を付与する。なお、本発明では、殺菌とは、抗菌、滅菌、除菌、防菌等の概念も含み、また、対象菌類としては、ウイルス、細菌、真菌等の各種微生物も含む。したがって、殺菌機能には、抗カビ機能も含む。
【0022】
また、本発明に係る水環境電池では、更に、前記第1の反応体は、マグネシウムを含有した亜鉛合金(ZnMg合金)として、或いは、亜鉛を含有したマグネシウム合金(MgZn合金)として、強い殺菌力を発揮することができる。また、前記第2の反応体は、ステンレス鋼やチタン(チタン合金も含む)等を好適に使用することできるが、更に好ましくは、SUS304等のステンレス鋼として、耐腐食性及び耐変色性を長期にわたって安定して発揮するようにすることができる。更に、前記第2の反応体は、少なくとも(長さ方向の大部分を占める)主要部が軸方向に同一断面形状となる所定径の所定断面形状をなし、かつ、全体が中空筒状(円筒状、多角形筒状、異形筒状等の各種筒状)に形成されて軸方向に延びる内部空間を有している。また、前記第1の反応体は、少なくとも(長さ方向の大部分を占める)主要部が前記第2の反応体の内径より小径の外径を有すると共に軸方向に同一断面形状となる所定断面形状をなし、かつ、全体が中実柱状(円柱状、多角形柱状、異形柱状等の各種柱状)に形成され、前記第2の反応体の内部空間内に同軸上に配置される。
【0023】
なお、通常は、第1の反応体は、全体が同一断面形状で軸方向に延びる柱状とされるが、例えば、その柱状の先端部(流水方向の上流側端部)を半球状等の先端に向かって断面を漸減する形状とすることもできる。この場合、先端部を除く同一断面形状の部分が前記主要部となる。また、通常は、第2の反応体は、全体が同一断面形状で軸方向に延びる筒状とされるが、例えば、上記のような第1の反応体の漸減する先端部の形状に合わせて先細りとなる先端部を設けてもよく、この場合、先端部を除く同一断面形状の部分が前記主要部となる。
【0024】
一方、前記間隔保持部材は、好ましくは、以下の構成とする。即ち、間隔保持部材は、前記筒状の第2の反応体の内部空間内に前記柱状の第1の反応体を同軸上に配置した状態で前記第1の反応体と前記第2との間(少なくともその一部)に介装されると共に、その外周面側が全体にわたって前記第2の反応体の内周面に点状または線状に当接すると共に、その筒状部分の内周面が全体にわたって前記第1の反応体の外周面に点状または線状に当接して、前記第1の反応体及び第2の反応体を、全面にわたって互いに非接触状態となるよう、かつ、少なくともそれらの主要部の長さ方向全体にわたって均一な小間隔の隙間空間を置いて互いに面的に対向するよう配置した状態で、互いに固定的に保持するものである。この場合、間隔保持部材は、第1の反応体と第2の反応体との間での摩擦力により単なる挟持状態として、意図して離脱する外力を加えない限り移動不能となるようにしてもよい。また、この場合、間隔保持部材の形状は、反応体が円筒状の場合、卑金属体と貴金属体との間の隙間空間に配置されるものは、当該隙間空間に対応する円筒状の網状(多数の小孔を穿設した円筒を含む)とすることができ、貴金属体の外周面を覆うよう配置されるものは、貴金属体の外周面に密接して装着される円筒状の網状とすることができる。
【0025】
このように、円筒状の貴金属体の内側に円柱状の卑金属体を配置することで、卑金属体の外周面が全て貴金属体の内周面と小隙間を置いて対向し、卑金属体の外周面の全体から金属イオンが均一に溶出し、かつ、完全に金属イオン化するため、卑金属体の外周面が、水中の溶存酸素により酸化して変色(黒変)することはない。また、内側の卑金属体が筒状の場合は、その内周面と対向する貴金属体を内装しない限り、使用に伴って卑金属体の内周面が徐々に変色することになるが、卑金属体が柱状の場合、筒状とした場合のような内周面は存在せず、イオン溶出面である外周面は貴金属の内周面と必ず対向するため、卑金属体の外周面の変色や酸化膜の形成を防止することができ、卑金属体が溶出により消失しない限り、永続的に所期のイオン溶出効果を持続することができる。
【0026】
また、前記間隔保持部材は、電気絶縁性樹脂材料(通常の樹脂材料、電気伝導性樹脂材料以外)からなり、前記第1の反応体と第2の反応体との間の前記隙間空間の全体形状に対応する均一厚みの網状の筒状部分を有する内側隔離網筒であり、その筒状部分の内周面側が全体にわたって前記第1の反応体の外周面に点状または線状に当接するよう構成する(例えば、外周面側に半球状やピン状等の突起状の当接部を設けて点状に当接するようにしたり、線状の頂部を有するリブを設けて線状に当接するようにする)と共に、その筒状部分の外周面側が全体にわたって前記第2の反応体の内周面に点状または線状に当接して、前記第1の反応体と第2の反応体との間に前記均一な間隔の隙間空間を形成保持する。
【0027】
間隔保持部材が卑金属体と面接触した場合、面接触した部分では、卑金属体が貴金属体から間隔保持部材により遮蔽されることになり、卑金属体と貴金属体との間での面対向が妨げられることから、電池作用が発生せずに初期の金属イオン化が行われない可能性がある。また、間隔保持部材が卑金属体に面接触していても、水は当該面接触部分に浸入するため、イオン溶出が行われないことに連動して、水中の溶存酸素によりその面接触部分の卑金属体の外周面が変色する可能性もある。しかし、点接触または線接触とした場合には、間隔保持部材が介在していても、卑金属体は貴金属体と全面で完全に対向し、所期の電池作用が発生して卑金属体の全面において完全な金属イオン化が行われ、また、卑金属の外周面が変色する等の不具体が発生することはない。
【0028】
ここで、本発明において、間隔保持部材により決定される第1の反応体と第2の反応体との間の隙間空間の間隔(厚み)は、第1の反応体と第2の反応体との間で電池作用を発揮できる限り任意の値とすることができるが、殺菌ユニットが小型の場合は比較的小さい間隔(狭小間隔乃至微小間隔)となり、殺菌ユニットが大型となる場合は比較的と大きい間隔となり、例えば、河川等用の殺菌ユニットの場合は流量確保のため絶対値は大きくなるが、相対的には円筒状の第2の反応体の厚み程度となる。また、幅方向や周方向には凹溝を設けて間隔が漸減した後に漸増したりして変化することもある。
【0029】
ところで、本発明の水環境電池では、貴金属体からなる第2の反応体は、少なくとも(長さ方向の大部分を占める)主要部が軸方向に同一断面形状となる所定径の所定断面形状をなし、かつ、全体が中空筒状(円筒状、多角形筒状、異形筒状等の各種筒状)に形成されて軸方向に延びる内部空間を有し、卑金属体からなる第1の反応体は、少なくとも(長さ方向の大部分を占める)主要部が前記第2の反応体の内径より小径の外径を有すると共に軸方向に同一断面形状となる所定断面形状をなし、かつ、全体が中実柱状(円柱状、多角形柱状、異形柱状等の各種柱状)に形成され、前記第2の反応体の内部空間内に同軸上に配置されるものであればよい。
【0030】
また、この場合、間隔保持部材は、上記の構成とする場合でも、前記第2の反応体の内部空間内に前記第1の反応体を同軸上に配置した状態で前記第1の反応体と前記第2との間(の少なくとも一部)に介装されると共に、その外周面側が全体にわたって前記第2の反応体の内周面に点状または線状に当接すると共に、その筒状部分の内周面が全体にわたって前記第1の反応体の外周面に点状または線状に当接して、前記第1の反応体及び第2の反応体を、全面にわたって互いに非接触状態となるよう、かつ、少なくともそれらの主要部の長さ方向全体にわたって均一な小間隔の隙間空間を置いて互いに面的に対向するよう配置した状態で、互いに固定的に(移動不能となるよう)保持するものであればよい。この場合、間隔保持部材は、第1の反応体と第2の反応体との間で挟持状態として、意図して離脱しない限り移動不能となるようにしてもよく、或いは、それらの間に固定してもよい。
【0031】
また、本発明の水環境電池において、隔離部材としての上側隔離網板、外側隔離網筒、下側隔離網板は、支持線または支持点を有せず相手側部材と面接触するものでもよいが、流量確保等の観点からは、支持線による線接触、特に支持点による点接触により卑金属体及び貴金属体の上下両端面、並びに、貴金属体の外周面に接触支持し、また、貴金属体や卑金属体の外側で対向する部材に接触するよう構成することが好ましい。同様に、間隔保持部材は、少なくとも、卑金属体の外周面を支持線による線接触、特に、支持点による点接触により支持する構成とするが、内外両側とも線接触、特に、点接触する構成とすることが好ましい。
【0032】
更に、間隔保持部材は、例えば、柱状(円柱状等)の卑金属体を内側に配置し、同卑金属体の外側に前記隙間空間を介して対応する筒状(円筒状等)の貴金属体を同軸状に配置する2層構造の場合は、柱状の卑金属体の軸方向(長さ方向)上端部及び下端部において、周方向に所定角度間隔(好ましくは同一角度間隔)を置いた複数位置に、その外周面から内部に放射方向に延びる凹部をそれぞれ形成し、当該凹部に小棒状の間隔保持部材の一端部を密嵌固定してそれ以外の部分を卑金属体の外周面から放射方向に、前記隙間空間と同一寸法だけ突出させ、この間隔保持部材の先端面により貴金属体の内周面を当接支持するようにして、卑金属体の外側に貴金属体を前記隙間空間を置いて配置する構成とすることができる。
【0033】
また、間隔保持部材は、例えば、柱状(円柱状等)または筒状(円筒状等)の貴金属体を最内側に配置し、当該貴金属体の外側に前記隙間空間を介して対応する筒状(円筒状等)の卑金属体を同軸状に配置し、更に当該卑金属体の外側に前記隙間空間を介して対応する筒状(円筒状等)の貴金属体を同軸状に配置する3層構造の場合は、筒状の卑金属体の軸方向(長さ方向)上端部及び下端部において、周方向に所定角度間隔(好ましくは同一角度間隔)を置いた複数位置に、その内周面から外周面に貫通して放射方向に延びる小孔をそれぞれ形成し、当該小孔に小棒状の間隔保持部材を挿入してその長さ方向両端部(小孔内に配置される中間部分の両側の部分)を卑金属体の内周面及び外周面から、それぞれ、放射方向に前記隙間空間と同一寸法だけ突出させ、この間隔保持部材の内側の先端面により最内側の貴金属体の外周面を当接支持すると共に、連結片の外側の先端面により最外側の貴金属体の内周面を当接支持するようにして、卑金属体の内外側にそれぞれ(最内側及び最外側の)貴金属体を前記隙間空間を置いて配置する構成とすることができる。
【0034】
いずれの場合も、網状の間隔部材により卑金属体と貴金属体とを隙間空間を置いて配置する場合に比べ、卑金属体と貴金属体との間(隙間空間内)には小棒状の間隔保持部材が存在するだけであり、卑金属体と貴金属体との間(隙間空間内)に存在する部材の容積乃至体積を大幅に小さくすることができ、卑金属体と貴金属体との間の隙間空間における電池作用をより一層効果的に行うことができ、また、酸化被膜やバイオフィルムの形成を一層効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る水環境電池は、イオン化傾向の異なる金属からなる2種類の反応体(卑金属体及び貴金属体)を通水環境または流水環境としての通水路(給水装置の通水路や井戸水の通水路等)または流水空間(河川等)の内部に通水経路または流水経路に沿って配置したり、通水路または流水空間内部の水と流通可能な隣接する空間(給水管の通水路と連通して隣接する位置に設けたハウジングの内部空間等)に配置したりすることにより、或いは、貯水環境としての貯水空間(貯水槽等)内部に配置することにより、その通水若しくは流水または貯水に対して、殺菌・抗菌・抗カビ・防虫・害虫忌避機能、生鮮品保存機能、植物生育促進機能等の諸機能を長期間にわたって付与することができる。
【0036】
また、本発明に係る水環境電池は、間隔保持部材により卑金属体と貴金属体との間で均一な隙間空間を確実に安定して維持することができる。
【0037】
ここで、卑金属体は、通水環境、流水環境、貯水環境等の水環境において、水を媒体として貴金属体との間での電池反応により金属を溶出する一方(かかる電池反応を、「水環境電池反応」と呼ぶことがある)、卑金属体の金属イオンは、貴金属体との対向面以外にも貴金属体と隣接する面からも溶出されると考えられるが、主には、貴金属体との対向面から溶出されると考えられる。
【0038】
そして、本発明に係る水環境電池は、間隔保持部材により貴金属体と卑金属体との間で均一な隙間空間を維持しているため、卑金属体を柱状として貴金属体を当該卑金属外の外周を覆う筒状としたり、卑金属体を筒状として当該卑金属体の内周側及び外周側をそれぞれ覆う貴金属体を設けたりした場合に、主要な金属イオン溶出面となる柱状の卑金属体の外周面(貴金属体の内周面との対向面)または筒状の卑金属体の内周面(内側の貴金属体の外周面との対向面)及び外周面(外側の貴金属体の内周面との対向面)は、その全面から均一な金属イオンの溶出を持続することができる。
【0039】
また、金属体である卑金属体は、金属イオンの長期溶出によって消失するまでその表面から金属イオンを溶出することができる。即ち、卑金属体が貴金属体と均一な隙間空間を維持していない場合、卑金属体と貴金属体との間で均一な水環境電池反応が形成されず、卑金属体の金属が完全なイオン化状態で溶出せずに、粉粒状の金属となって溶出してしまい、殺菌効果を大きく減殺したり(金属イオンでない粉粒状の金属の場合、その殺菌効果は大幅に減少する)、また、清水を濁らせたり金気臭を発生させたりして水質を劣化させ、飲用水として不適当となる等の不具合を発生するが、本発明に係る水環境電池は、間隔保持部材により卑金属体と貴金属体との間の全面において均一な隙間空間が永続的に保持されることから、卑金属体から完全なイオン化状態で金属イオンが溶出し、粉粒状金属が溶出乃至放出されることはないため、そのような不具合を確実に防止することができる。
【0040】
これにより、本発明に係る水環境電池は、水中のウイルスや細菌類を殺菌または滅菌することができ、合わせて、カビ等の真菌類や微生物類も死滅、減少または繁殖防止することができる。更に、本発明に係る水環境電池は、水環境において使用すると卑金属体の金属イオンが水中に溶出し、当該金属イオンを含有した機能水を生成することができるため、例えば、その機能水を植物等に散布することにより、植物に対する防虫機能や害虫忌避機能等の諸機能までも発揮することができる。
【0041】
即ち、本発明に係る水環境電池は、水環境中で貴金属体と対向する卑金属体が、腐食電池作用により錆びを発生したり金属腐食したりするという電気化学反応(特に、局部電池)を逆に利用した技術であり、更に、この場合の卑金属体の金属腐食(粉粒状の金属流出)を伴うことなく、逆に、金属イオンの溶出を完全なイオン化状態で行うために、間隔保持部材によって卑金属体を貴金属体に対して均一な隙間空間をおいて対向させた状態に保持し、これにより、卑金属体から完全なイオン化状態の金属イオンのみを水環境中に溶出させて水環境を機能化し、粉粒状金属の溶出乃至放出を確実に防止している。
【0042】
特に、使用時に貴金属体に外力が加わり貴金属体が内方に窪んだりして変形すると、卑金属体との間のわずかな隙間空間が其の変形部分で閉塞されて、通水環境や流水環境の場合の通水・流水空間となる隙間空間における通水・流水の妨げとなったり、貴金属体の変形部分が卑金属体に圧接して内部に食い込んだりして電気的に導通し、他の隙間空間に比べて圧接部分に過大な腐食電流が発生してその部分の卑金属体が非イオン化状態(粉粒状金属)で放出されたり、通水環境や流水環境の場合に同圧接部で乱流が発生してキャビティ腐食を発生して、卑金属体の金属がより大きな粒状となって放出されたり、当該部分の卑金属体が大きく腐食する可能性がある。
【0043】
また、当該圧接部分では、少なくとも貴金属体と卑金属体との間の隙間空間が不均一かつ乱雑な厚みとなるため、卑金属体からの均一な金属イオンの溶出が期待できなくなる。しかし、本発明は、好ましくは、間隔保持部材を貴金属体と卑金属体との間の隙間空間全体にわたって介装される対応する筒状をなし、全面にわたって多数の小孔を係止したもの(網筒状)とするため、筒状の貴金属体が使用時の外力等により変形することを確実に防止することができ、上記不具合を確実に防止することができる。
【0044】
更に、卑金属体は、マグネシウムを含有した亜鉛合金(亜鉛マグネシウム合金等)、マグネシウム合金(マグネシウム亜鉛合金等)から形成することができ、殺菌力の点でマグネシウムを含有した亜鉛合金(亜鉛マグネシウム合金)、または、亜鉛を含有したマグネシウム合金から形成することが好ましいが、本発明者らは、上述したように、鋭意実験研究の結果、これらの金属材料からなる卑金属体の場合、卑金属体が電気絶縁体(樹脂材料やガラス材料)と面的に接触すると、卑金属体がその接触面で変色することを確認した。
【0045】
卑金属体が変色すると、上記のとおり、変色金属の溶出等により水質汚濁が発生し、飲用水等の清水としての条件を満たさなくなる。これは、卑金属体と電気絶縁体との接触面の範囲では、卑金属体と貴金属体との間での水を媒体として電池反応がほぼ完全に遮断され、当該接触面の範囲の卑金属体の表面から金属イオンが溶出せず、結果として、当該接触面の範囲の卑金属体の表面が水中の溶存酸素により酸化したりして変色するためであると考えられる。
【0046】
また、かかる面接触の場合、卑金属体と貴金属体との間での水を媒体として電池反応がほぼ完全に遮断され、当該接触面の範囲の卑金属体の表面から金属イオンが溶出しないことから、卑金属体の当該接触面部分をイオン溶出面として活用することができず、かかる面積が大きくなると、殺菌装置全体の殺菌効果をその分減殺することになる。
【0047】
そこで、本発明者らは、当該知見に基づき、少なくとも卑金属体については、間隔保持部材が面的に接触しないよう、即ち、間隔保持部材の卑金属体に対する接触が線接触または点接触となるよう、間隔保持部材を形成している。例えば、間隔保持部材を網筒状とし、その網目を構成する線状部の接触側を隆起させて断面突起状とすることにより、間隔保持部材の卑金属体との接触部位がかかる線状部の先端の線のみから構成されるようしたり、その網目の交差部の接触側に点状の突起を設けることにより、間隔保持部材の卑金属体との接触部位がかかる突起の先端の点のみから構成されるようしている。
【0048】
なお、貴金属体と卑金属体との間の隙間空間への水の進入及び充填を促進する点からは、間隔保持部材の卑金属体との接触部は点接触とすることが好ましい。また、前記線接触と点接触とを組み合わせた(線接触部分と点接触部分とを混在させた)間隔保持部材を使用することもできる。これにより、間隔保持部材は、少なくとも卑金属体に対しては線接触または点接触のみにより接触して、面接触することが全くないため、変色やイオン不溶出といった上記のような不具合を確実に防止することができる。
【0049】
加えて、間隔保持部材を貴金属体との接触面についても、上記と同様の線接触または点接触により接触支持するようにすれば、貴金属体と卑金属体との対向面(隙間空間部分)の全面が、間隔保持部材が存在しない部分(網筒状の間隔保持部材の網目部分乃至小孔部分)は当然のこと、間隔保持部材が存在する部分(網筒状の間隔保持部材の網部分乃至線状部)であっても、かかる部分は貴金属体及び卑金属体と線接触または点接触してかかる部分による貴金属体及び卑金属体の表面被覆面積は実質的にゼロとなる。
【0050】
したがって、貴金属体及び卑金属体は、間隔保持部材の接触部分が存在しない場合と同様に、その対向面の全面が互いに対向することになり、卑金属体の対向面の全面をイオン溶出面として活用することができ、殺菌装置全体の殺菌効果等の卑金属体を利用した金属イオン溶出による種々の効果を大幅に向上することができる。
【0051】
また、上記のように、間隔保持部材を貴金属体と卑金属体の対向面の全面にわたる形状とした場合でも、間隔保持部材を線接触または点接触により貴金属体及び卑金属体を支持するようにすれば、上記の各効果による相乗効果を得ることができる。
【0052】
なお、少なくとも卑金属体の変色を防止する点からは、間隔保持部材以外であっても、少なくとも卑金属体と他の部材との接触を防止する電気絶縁部材(後述する上側隔離網板、下側隔離網板等)については、卑金属体との接触を同様の線接触または点接触とすることが好ましい。
【0053】
また、貴金属体についての変色や、卑金属体や貴金属体が接触する他の金属体の変色が予想される場合(これらの金属体が水中で変色する可能性のある材質の場合)も、変色防止の観点から、卑金属体や貴金属体と他の部材との接触を防止する電気絶縁部材(後述する上側隔離網板、下側隔離網板等)については、当該金属体との接触を同様の線接触または点接触とすることが好ましい。また、この場合、卑金属体や貴金属体と他の部材との接触を防止する電気絶縁部材と卑金属体や貴金属体との間の流水を円滑化するという効果も得られる。
【0054】
また、上記のように、間隔保持部材を貴金属体と卑金属体との間の隙間空間の全体にわたる形状とし、かつ、線接触または点接触による接触とした場合、卑金属体が長期にわたる金属イオン溶出により徐々に厚みを減少しても、その厚みの減少分が卑金属体の全面にわたって均一となり、卑金属体の厚みが常に全面にわたって均一となる。したがって、卑金属体が金属イオン溶出により厚みを減少しても、貴金属体との間の隙間空間の厚みは常に全体にわたって均一となり、使用期間にかかわらず(卑金属体がイオン溶出により消失するまで)、卑金属体の全面が貴金属体の全面に対して均一な間隔で対向し、完全な金属イオンの溶出を持続的に行うことができる。この場合、間隔保持部材と卑金属体または貴金属体との間に更なる隙間が生じてがたつくことも考えられるが、この場合でも、間隔保持部材の存在により卑金属体が貴金属体と直接接触することはない。
【0055】
また、上記のように、間隔保持部材を介装した貴金属体及び卑金属体の上下両端を別の網板状の電気絶縁体(隔離網板)により閉塞すると共に当接支持すれば、間隔保持部材と卑金属体または貴金属体との間に更なる隙間が生じても、卑金属体が位置ずれしたり最悪の場合でも離脱したりすることはない。また、この場合、卑金属体、間隔保持部材、貴金属体及びその上下の隔離網板を一体としてユニット化することができ、殺菌装置をユニットとして各種の給水装置等の水環境化に置かれる装置に簡単に着脱することができる。
【0056】
なお、本発明の殺菌装置は、通水環境や流水環境で使用する場合、小径円柱状(単純円柱状のほか断面菊型の円柱状等も含む)の卑金属体と、当該卑金属体の外側に間隔保持部材による隙間空間を置いて嵌合される大径円筒状(単純円筒状のほか断面菊型の円筒状等も含む)の貴金属体との組み合わせを使用することができるが、この場合、円柱状の卑金属体の通水方向の上流側(流水が衝突する側)は、単純円柱状の場合のような平坦面(流水と衝突する面)とするより、半球状等の流水を外周面に案内する形状とすることが好ましい。
【0057】
また、卑金属体を単純円柱状とする場合は貴金属体を断面菊型の円筒状とし、逆に、貴金属体を単純円筒状とする場合は卑金属体を断面菊型の円柱状として、断面菊型による凹溝により流水を軸方向に沿って案内する(流水方向を変えることなく同一方向に案内する)ことにより、流水抵抗を低減すると共に整流効果を発揮するようにすることが好ましい。また、本発明の殺菌装置は、通水環境や流水環境で使用する場合、小径円柱状の貴金属体と、当該貴金属体の外側に間隔保持部材による隙間空間を置いて嵌合される中径円筒状の卑金属体と、当該卑金属体の外側に間隔保持部材による隙間空間を置いて嵌合される大径円筒状の貴金属体との組み合わせを使用することもできるが、この場合も、卑金属体や貴金属体を断面菊型とすることが好ましい。
【0058】
なお、卑金属体は、亜鉛マグネシウム合金やマグネシウムのように、貴金属体に比較して水中で腐食及び変色しやすい材質であるが、このように卑金属体を円筒状としても、その内側に貴金属体を収容配置すると、卑金属体の内周面側でも外周面側と同様の機序により貴金属体との間での電池作用による均一かつ確実な金属イオン溶出が行われ、卑金属体の内周面が変色する等の不具合はない。即ち、変色したマグネシウム等による水質汚濁を全く考慮しなくてよい場合はともかく、通常は、卑金属体を筒状とする場合、外側のみならず内側にも貴金属体を配置することが必要となる。
【0059】
一方、貴金属体としてステンレス鋼等の通常の水環境化で長期にわたって腐食及び変色を防止できる材質を選択した場合、卑金属体の内側に配置する貴金属体は筒状としても変色することがないため、特に問題はない(柱状とすることも無論可能である)。また、卑金属体の外側に配置される筒状の貴金属体の外周面についても、貴金属体としてステンレス鋼等の通常の水環境化で長期にわたって腐食及び変色を防止できる材質を選択した場合、変色等の問題については基本的に無視できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係る水環境電池の内部ユニットを示し、(a)はその全体を示す斜視図、(b)はその内部構造を示すために1/4程度を切除して斜視的に示す一部断面図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態2に係る水環境電池としての流水浄化用水処理装置を示す側面図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態2に係る水環境電池としての流水浄化用水処理装置の部品構成を示すための分解側面図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態2に係る水環境電池としての流水浄化用水処理装置の断面図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態2に係る水環境電池としての流水浄化用水処理装置を取付対象の一例としての吐水パイプに内装して取付けた状態を示す要部断面図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態3に係る水環境電池としての流水浄化用水処理装置を取付対象の一例としての吐水パイプに取り付ける前の状態を示す側面図である。
【図7】図7は本発明の実施の形態3に係る水環境電池としての流水浄化用水処理装置を示す正面図である。
【図8】図8は図7のA−A線断面図である。
【図9】図9は本発明の実施の形態3に係る水環境電池としての流水浄化用水処理装置を吐水パイプに内装して取付けた状態を示す要部断面図である。
【図10】図10は本発明の実施の形態4に係る水環境電池としての流水浄化用水処理装置をシャワーヘッドに内装して取付けた状態を示す要部断面図である。
【図11】図11は本発明の実施の形態5に係る水環境電池としての流水浄化用水処理装置を配管に併設する並列回路として設けた状態を示す断面図である。
【図12】図12は本発明の実施の形態6に係る水環境電池としての水抜付アダプタを示す分解斜視図である。
【図13】図13は本発明の実施の形態6に係る水環境電池を水抜付アダプタのハウジング内に各部品を挿入して収容する状態を示す組立図である。
【図14】図14は本発明の実施の形態6に係る水環境電池としての水抜付アダプタを配管に取り付けた状態を示す断面図である。
【図15】図15は本発明の実施の形態6に係る水環境電池としての水抜付アダプタを配管の一例としてのシングルレバー水栓の吐水パイプに取付けた状態を示す一部断面図であり、水抜付アダプタ部分を拡大して示す。
【図16】図16は本発明の実施の形態7に係る水環境電池としての水抜無アダプタを示す分解斜視図である。
【図17】図17は本発明の実施の形態8に係る水環境電池としての4層構造アダプタの部品構成を示すための分解斜視図である。
【図18】図18は本発明の実施の形態8に係る水環境電池としての4層構造アダプタの組立過程を示す斜視図である。
【図19】図19は本発明の実施の形態8に係る水環境電池としての4層構造アダプタを示す断面図である。
【図20】図20は本発明の実施の形態9に係る水環境電池としての吐水口アダプタを示す正面図である。
【図21】図21は本発明の実施の形態9に係る水環境電池としての吐水口アダプタを示す断面図である。
【図22】図22は本発明の実施の形態9に係る水環境電池としての吐水口アダプタを示し、(a)は内部構成部品を示す斜視図、(b)は内部構成部品の別例を示す斜視図である。
【図23】図23は本発明の実施の形態1〜9に係る水環境電池の各種の別例としての水環境電池ユニットを示し、(a)は菊柱型卑金属体を有する2層構造の水環境電池ユニット、(b)は菊筒型貴金属体を有する2層構造の水環境電池ユニット、(c)は角型の水環境電池ユニットをそれぞれ示す。
【図24】図24は本発明の実施の形態1〜9に係る水環境電池の各種卑金属体を示し、(a)は通常の2層構造或いは4層構造以上の偶数層構造の水環境電池で使用される円柱型卑金属体、(b)は菊柱砲弾型卑金属体、(c)は3層構造以上の奇数層構造の水環境電池で使用される円筒状卑金属体、(d)は角柱型卑金属体をそれぞれ示す。
【図25】図25は本発明の実施の形態1〜9に係る水環境電池の各種貴金属体を示し、(a)は通常の2層構造の水環境電池で使用される円筒型貴金属体、(b)3層構造以上の水環境電池で使用されるスリット付貴金属体、(c)は小孔付円筒型貴金属体、(d)は螺旋円筒型貴金属体、(e)は網円筒型貴金属体、(f)はリブ付円筒型貴金属体、(g)は菊筒型貴金属体、(h)は各筒型貴金属体をそれぞれ示す。
【図26】図26は本発明の実施の形態1〜9に係る水環境電池の内部ユニット(卑金属体、貴金属体及び間隔保持部材)を示し、(a)は内部ユニットの組立状態を示す正面図、(b)は内部ユニットの組立状態を示す平面図、(c)は(a)のB−B線断面図、(d)は(b)のC−C線断面図、(e)は内部ユニットの組立過程を示す分解斜視図である。
【図27】図27は本発明の実施の形態1〜9に係る水環境電池の第1の別例としての3層構造の内部ユニット(内側貴金属体、卑金属体、外側貴金属体及び間隔保持部材)を示し、(a)は内部ユニットの平面図、(b)は内部ユニットの斜視図である。
【図28】図28は本発明の実施の形態1〜9に係る水環境電池の第1の別例の内部ユニットの一部を切り欠いて内部構造を示す斜視図である。
【図29】図29は本発明の実施の形態1〜9に係る水環境電池の第2の別例としての2層構造の内部ユニット(卑金属体、貴金属体及び間隔保持部材)を示し、(a)は内部ユニットの平面図、(b)は内部ユニットの斜視図である。
【図30】図30は本発明の実施の形態1〜9に係る水環境電池の第2の別例の内部ユニットの一部を切り欠いて内部構造を示す斜視図である。
【図31】図31は本発明の実施の形態10に係る水環境電池としての多板式アダプタを示す分解斜視図である。
【図32】図32は本発明の実施の形態10に係る水環境電池としての多板式アダプタの一部を切り欠いて内部構造を概略的に示す斜視図である。
【図33】図33は本発明の実施の形態10に係る水環境電池としての多板式アダプタの断面図である。
【図34】図34は本発明の実施の形態11に係る水環境電池としての多板式アダプタを示し、(a)は多板式アダプタの分解斜視図、(b)は多板式アダプタの一部を切り欠いて内部構造を概略的に示す斜視図である。
【図35】図35は本発明の実施の形態11に係る水環境電池としての多板式アダプタの断面図である。
【図36】図36は本発明の実施の形態12に係る水環境電池としての還流式アダプタを示す要部断面図である。
【図37】図37は本発明の実施の形態13に係る水環境電池としての多段式アダプタ(電池式水環境電池ユニットと簡易還流式水環境ユニットとを直列接続したアダプタ)を取付対象の一例としての吐水パイプに取り付けた状態を示す要部断面図である。
【図38】図38は本発明の実施の形態14に係る水環境電池としての貯水浄化用水処理装置であるフロート式水環境電池を示す斜視図である。
【図39】図39は本発明の実施の形態14に係る水環境電池としてのフロート式水環境電池の別例を示し、(a)は第1の別例のフロート式水環境電池を示す正面図、(b)は第2の別例のフロート式水環境電池を示す正面図であり、(a)及び(b)の間に(実施の形態15並びにその第1及び第2の別例で使用される)水環境電池ユニットの内部構造を示す断面図を図示している。
【図40】図40は本発明の実施の形態15に係る水環境電池としての貯水浄化用水処理装置であるカプセル型水環境電池を示す正面図である。
【図41】図41は本発明の実施の形態15に係る水環境電池としてのカプセル型水環境電池の内部構造をそれぞれ示し、(a)は図40のD−D線断面図、(b)は図39のD−D線断面図に対応してカプセル型水環境電池をスリット部分で切断して示す断面図、(c)は図40のE−E線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
上記のとおり、本発明の水環境電池は、極めて安価に提供できて、簡便で、人間・生物・環境に安心、安全な素材で構成され、ノンメンテナンスで、効果を半永久的に安定して継続することができるものであり、水環境中で使用されることにより、水を介して環境に貢献できる趣旨から「水環境電池」と称している。また、水環境電池の構造は、中心に「卑な」金属体のアノード極(負極(−))として、(ミネラル材ともなる)Zn−Mg合金材を、(3層構造の場合)その内外側に、或いは、(2層構造の場合)外側に、円筒形の「貴な」金属体のカソード極(正極(+)」)として、ステンレス鋼(好ましくはSUS304材)を、それらの中間にプラスチック製の間隔保持部材を配列し、アノード極とカソード極を(間隔保持部材による)均一な隙間空間を介して同軸上に重ね合わせ、これを外部保護カバーにより包囲乃至収容してユニット化した構成となっている。
【0062】
そして、本発明は、水中で電位差(またはイオン化傾向)の異なる2種類以上の金属を組み合わせると(直接電気的に接続すると)腐食電池(マクロ電池)が形成されるという電気化学の原理を、更に、本発明者等による実験・研究に基づく知見から応用発展し、イオン化傾向の異種金属を水中に(電気的に直接接続することなく)対面配置することにより、貴金属体が対面する卑金属体の反応面で水を媒体として電池作用(腐食を伴わないミクロ電池作用とも称すべき電池作用)が発生するという独自の知見に基づいて創作されたものである。特に、本発明者等は、水中では、卑金属体をイオン化傾向の近接している金属を合金化して形成した場合(例えば、上記のように、亜鉛とマグネシウムとを組み合わせて合金化した場合)、卑金属体の金属表面の原子配列が乱れることにより、そのアノード極となる金属表面で電池作用が均一に発生し、金属がイオン化することなく粉粒状となって水中に流出するというようなことがなく、金属イオンが完全なイオン化状態で水中に溶出すると共に、電流は当該金属表面から水中に均一に流れ出し、これにより生じる電池反応も均一となるという知見も見出し、この知見に基づく独自技術である卑金属体(第1の反応体)の創作も行っている。そして、かかる卑金属体を使用すると、水の濁りが全く見られない清く澄んだ水で、飲んで美味しい水が、ミネラルイオン水となって溶出する現象を見出し、この更なる知見を本発明の水環境電池に応用している。また、本発明者等は、この水環境電池において、電位差の異なる2種類以上の金属を組み合わせることで、水を媒体として形成される電池反応(上記のように腐食を伴わないミクロ電池類似の電池反応)で得られる直流により、卑金属体から金属イオンと電子が生成され、電子は水中の酸素に取り込まれ、その酸素が活性化して「活性酸素」となって、様々な病原体を効果的に酸化分解し、消滅させる働きがある点も見出し、この点を、人間、動物、植物等、すべての生物の抗原作用を排除、抑制するためにも利用すべく、本発明を発展的に改良しつづけ、現在の発明に至っている。
【0063】
このため、本発明の水環境電池は、卑金属体として、亜鉛(Zn)をベースにイオン化傾向の近接しているマグネシウム(Mg)を通常より多く含有させた独自の亜鉛マグネシウム合金(ZnMg合金)を作成し、或いは、マグネシウム(Mg)ベースにイオン化傾向の近接している亜鉛(Zn)を通常より多く含有させた独自のマグネシウム亜鉛合金(MgZn合金)を作成し、当該ZnMg合金またはMgZn合金表面の原子配列を乱して液中にイオン(Zn2+及びMg2+)を溶出し易くするとともに、かかるZnMg合金またはMgZn合金製の卑金属体から放出される金属イオン(Zn2+及びMg2+)により、本発明を飲料水の殺菌浄化装置等に適用した場合、その飲料水中の必須ミネラル成分(Zn及びMg)の比率を高めることができるという効能を持つ電池となっている。
【0064】
そして、本発明の水環境電池を殺菌ユニットとして通水、流水、貯水等の水中に浸漬配置すると、上記のように、水中に浸漬された卑金属体と貴金属体との間の均一な隙間空間で、水を媒体として電池反応が発生し、卑金属体から完全なイオン状態で金属イオンが溶出する。その結果、水を媒体として形成される電池反応で得られる直流の電流により、卑金属体で金属イオンと電子が生成され、そのうちの電子は水中の酸素に取り込まれ、その酸素が活性化して活性酸素となり、様々な病原体を効果的に酸化分解して消滅させ、殺菌作用を発揮する。
【0065】
かかる水環境電池の効果を確認するため、水環境電池を銅合金製のケースに収容し、給水栓の吐水口パイプに取り付け、一般細菌数700個/ml残存の井戸水を15L/分の量で通水したところ、一般細菌は不検出であった(岐阜県公衆衛生検査センターによる効果確認試験結果による)。また、通水された水は、飲用水質基準値を全ての項目でクリアしており、水環境電池を使用する前の水でわずかに感じられた鉄臭も水環境電池使用後の水からは消えており、飲んでも美味しい水となることが確認された。更に、シンク内の排水パイプのぬめり(細菌膜)も消失した。また、使用開始から相当期間が経過しても(約1年4ヶ月経過後であるにもかかわらず)、殺菌効果は変わらず、ノンメンテナンスで長期間使用できることも確認されている。この水質検査の結果を含む一連の試験結果からは、15L/分の量の通水中でも確実に殺菌できることが判明した。
【0066】
次に、本発明の水環境電池の電池反応のメカニズム(機序)について概略的に説明すると、水の中でステンレス製の貴金属体と、ZnMg合金製またはMgZn合金製の卑金属体を組み合わせると、水を媒体としてそれらの間に電池が形成され、形成された電池で生起する電池反応は、ステンレス製の貴金属体を正極(+)、ZnMg合金製またはMgZn合金製の卑金属体を負極(−)とした電池反応である。ここで、電流は、ステンレスから水中を経てZnMg合金またはMgZn合金に流れ、更に、ZnMg合金またはMgZn合金から水中を経てステンレスへと流れる。一方、電子は、電流と反対方向、即ち、ZnMg合金から水中を経てステンレスへと流れる。このとき、ZnMg合金またはMgZn合金からなる電極(負極)では、Zn及びMgがそれぞれプラスイオン(Zn2+及びMg2+)となり、これに伴いその分だけ電子(−)が生成される。しかし、ZnMg合金またはMgZn合金からステンレスへと向かう電子は、そのままでは水中に入れない。即ち、水に電流を流すには、この電子が反応してイオンとなることが必要であるため、電子は水中の酸素に取り込まれて活性酸素としての水酸化物イオン(OH)となる。これにより、負極(−)としての卑金属体ではZn2+及びMg2+が、正極(+)としての貴金属体ではOHが生成されることにより、水中に電流が流れる。このように、電池作用による直流電流が、金属製の反応体から水中へ流出するのに伴って、Znイオン及びMgイオンが形成されて活性酸素が生成される。なお、生成される活性酸素の種類は、水酸化物イオン以外にも、(活性酸素自体としては)公知の各種のものがあると想定される。
【0067】
次に、水環境電池の両極(電池の負極(イオン化傾向の大きい電極))及び電池の正極(イオン化傾向の小さい電極))に使用する金属の選定について説明すると、水環境電池に使用される正極の金属(貴金属体)は、負極(卑金属体)よりもイオン化傾向の小さい金属であり、負極の金属(卑金属体)は、正極に使用される金属よりもイオン化傾向の大きい卑な金属でなければならない。その中で、本発明の水環境電池では、種々の電極となりうる金属について確認試験を繰り返し行った結果、負極となる卑な金属としては、亜鉛金属単体にマグネシウム金属単体を少量添加したZnMg合金が好ましく、また、亜鉛に対するマグネシウムの含有率を、好ましくはZn:Mg=90:10〜97:3の範囲、より好ましくはZn:Mg95:5〜97:3の範囲とすることが好ましいと判明した。また、負極となる卑な金属としては、マグネシウム金属単体に亜鉛金属単体を少量添加したMgZn合金も好ましいと考えられ、この場合、マグネシウムに対する亜鉛の含有率は、Mg:Zn=90:10〜97:3の範囲とすることが好ましく、Mg:Zn=95:5〜97:3の範囲とすることがより好ましいと考えられる。かかるMgZn合金の場合でも、上記の電池作用を良好に発揮すると考えられる。なお、ZnMg合金の反応体におけるZn/Mgの比率は、電池作用によって得ようとする用途により、自在に配合を変えることができる。同様に、MgZn合金の反応体におけるMg/Znの比率も、電池作用によって得ようとする用途により、自在に配合を変えることができる。また、正極となる金属についても、種々の確認試験を繰り返し行った結果、ステンレス鋼をパイプ形状としたステンレスパイプ、または、チタン鋼をパイプ形状としたチタンパイプを使用することが好ましいと判明したが、これら以外に、負極のZnMg合金等よりもイオン化傾向の小さい金属であれば、Fe,Ni,Cu,Ag,Pt,Anも、その用途に応じ使用することができる。
【0068】
かかる卑金属体の材料として好適なZnMg合金について、最適素材の選定と実験解析結果を以下に示す。まず、ルツボを用いた実験結果から、アノード電極に使用する卑な金属は、マグネシウム含有率3〜5%のZnMg合金が最適であることを把握した。また、日本水道協会の基準値内に収まり、かつ、殺菌効果が得られる範囲を前提に選定しても、マグネシウム含有比率3〜5%が最適な範囲であることが確認試験により判明している。マグネシウム含有率が6%以上となると脆弱性の問題が発生し、ルツボ等での確認試験において所望形状に成形できない可能性が大きいと考えられるため、マグネシウム含有率の上限値は5%とすることが好ましい。一方、マグネシウム含有率が3%以下となると殺菌効果が低下し、製品としての効能が落ちる可能性が高い。
【0069】
上記の水環境電池により得られる特有の利点乃至効果(及び、かかる効果に基づく水環境電池の適用分野)としては、例えば、以下のものがある。
(1) 環境汚染、水質汚濁に係る化学物質を一切使用することなく、一般家庭・職場・工場等で、水道水や生活用水等、あらゆる水を殺菌できる。
(2) 一般家庭や職場等から排出されるおびただしい種類の化学洗浄剤による環境汚染や水質汚濁物質の発生源であるシンク、風呂、トイレ、洗面所等で、水環境電池を用いてバイオフィルム(ぬめり)の発生を抑制することで、(試算によれば)化学洗浄剤の使用量を(現在の)1/3に減少させることができる。
(3) 「水環境電池」のアノード電極にZnMg合金を使用することで、電池反応により水中にZnイオン及びMgイオンを完全なイオン状態で溶出でき、飲用水に適用した場合、水中に溶出したZnイオン及びMgイオンを「必須ミネラル」として飲用者に摂取させることができる。また、この電池作用により通常の水を「還元水」に変性することができると同時に、水を電気分解することで「水素を生成」することができる。
(4) 活性酸素の中でも水素が「ヒドロキシルラジカル」を選択的に消去すると同時に、消去しきれなかった悪玉の活性酸素を「SOD(スーパーオキシドジムスターゼ(活性酸素を抑制する酵素の一つで、亜鉛、マグネシウム、セレン、マンガン、銅、鉄等のミネラルが関与))」が大量に発生し、その酵素の働き(前記のうちZn及びMgのミネラルが関与)により悪玉の活性酸素を分解及び消去して、人間、動物、植物等、全ての生物の抗原作用を排除及び抑制することができる。
(5) 本発明の水環境電池の電池作用に伴い発生する水素は、最小分子であり、油性と水性を兼備している為、油性の細胞膜や水性の細胞内にも、すばやく、すみずみまで浸透するため、浴槽水等の人の肌に接触する水に適用された場合、肌に潤い等の有用な影響を与えることができる。例えば、本発明の水環境電池を適用した場合、洗顔水栓やシャワー水は水素水となり、また、循環風呂に水環境電池を使用することにより、浴槽水がミネラル水で還元水となるため、使用者の全身が潤いのあるみずみずしい肌となることも期待できる。
(6) 本発明の水環境電池による処理水(電池作用水としての還元水)を、水耕栽培用水として使用したり、養魚場用水の殺菌に使用したり、ミネラル補充等に利用したりすることにより、(廃棄水の再利用、即ち)水の循環が可能となり、水処理に関する大幅なコスト削減を行うことができ、また、農作物や魚類の抗原作用を排除及び抑制したり、本発明の処理水を直接農作物に噴霧することにより、防虫及び害虫防御を行うことができる。
(7) 本発明の水環境電池による処理水を家畜の「ミネラル補充水」として使用することにより、家畜の抗原作用を排除及び抑制することができ、また、家畜舎の消臭及び消毒を行う消臭・消毒水としても使用することができる。
(8) 生鮮食品の鮮度維持プロセスに本発明による電池作用水としての還元水を使用することにより、生鮮食品の鮮度を保つことができ、また、還元水を凍結させて(氷にして)氷の結晶を形成することにより、その還元効果を倍増することができる。
【0070】
本発明の水環境電池の動作原理
次に、本発明の水環境電池の構造及び動作原理について図41に従って説明する。図41に示すように、本発明の水環境電池は、主要な特徴として、上記のように(また、具体的な実施の形態として詳細に後述するように)、卑金属体の主要部の全面に対して、電気的絶縁材料からなる間隔保持部材により貴金属体を均一な微小間隔の隙間空間を介して対面配置すると共に、それらを容器内に収容してユニット化(このユニットを、本願中において、代表的な機能面からの称呼である「殺菌ユニット」と称することがあり、また、単に「内部ユニット」と称することもある。)することにより、その内部ユニットを水中に配置することで、卑金属体と貴金属体との間の隙間空間内の水を電池作用水(卑金属体の金属イオン及び活性酸素を含有する機能水)として、その電池作用水により殺菌等の諸機能を発揮するようにした構成(第1の特徴)を備えているが、これに加え、水中での使用に伴う卑金属体表面の変色(例えば、マグネシウムについての黒変等)を確実に防止するための構成(第2の特徴)、並びに、水中での使用に伴う卑金属体表面へのバイオフィルムの形成を確実に防止するための構成(第3の特徴)をも備えている。
【0071】
水環境電池容器の構造とバイオフィルム
水環境電池の内部ユニットを収容する容器(ハウジング、ケース、ハウジング等、内部ユニットを収納可能なあらゆるものを含む)の構造は、内部ユニットの卑金属体の表面(陽極)と貴金属体の対向面(陰極)との間で電池反応が常に正常に、かつ、安定して持続的に機能するよう、外部の水環境との間での水の自由流通を制限して(即ち、自由に外部の水が容器内部に流入して自由に流出しないよう)、容器における水の流通口乃至流通孔の寸法(及び必要な場合は形状)を、適用用途における水環境の各条件に合わせて適宜設定した構造とする必要がある。
即ち、前述したように、本発明者等による実験研究の結果、バイオフィルム(微生物膜)の形成を生じる原因となる諸要素の一つの要素として、対象となる細菌や真菌等の微生物を含む水が、水環境電池の容器内に流入しても、ZnイオンやMgイオン等、及び、電池作用により発生する活性酸素(OH等)を含有する電池作用水が、常に容器内で微生物を殺菌できるだけの一定濃度を確保及び維持していないと、一次電池不足(水環境電池内の作用物質である金属イオンや活性酸素が消費しつくされ、それらの再生が間に合わない状態)が繰り返し行われることになり、金属表面にバイオフィルムが発生することが判明した。
【0072】
ここで、水環境電池の永続的な電池作用の発揮に大きく関与するバイオフィルムの形成に関わる要因として、以下のものがあることが判明した。
1) 水環境中の水質、菌量、水温
2) 水環境電池の形態と構造、及び、電池反応槽(容器)の大きさ
3) 電極に使用する金属材料の選定と使用量
【0073】
以上、本発明では、ノンメンテナンスで電極となる金属表面へのバイオフィルムを抑制し、永続的な電池作用を可能にする上で、重要な上記条件1〜3を総合的に検討し、水環境電池の構造を以下のように改善している。
1) (後述する実施の形態で説明する)乾電池形態の水環境電池(乾電池型水環境電池)の構造(特に容器構造)として、本発明の適用対象となる飲用井戸水、循環式の風呂水、その他、殺菌・抗菌目的に使用する水が水環境電池の容器内に全量流入する開放形容器構造とするのではなく、その一部のみが容器内に流入及び容器外に流出する(即ち、制限された流量の水が、容器に設けて流量制限用の流通孔や流量調整板等の流量調整手段を介して間接的に容器内に流入及び容器外に流出し、容器内部の卑金属体及び貴金属体間の電池反応空間乃至電池作用空間としての隙間空間内を制限された流量の水のみが流通する)間接流入出型容器構造とした。
2) かかる間接流入出型容器構造として、水環境電池を水中に配置する配置対象としての流水管等の管材の内径に対して、水環境電池の容器の流入口(流入出口或いは流出入口として機能するあらゆるものであって、丸孔状、細孔状、小孔状、長孔状、開口状、スリット状、スロット状等、あらゆるタイプの流入・流出を可能にする構成のものを含む)を、飲用井戸水等の比較的水中微生物濃度が低い(単位水量あたりの微生物数が少ない)水環境の場合は、その孔径を、容器の内径の約1/20〜3/10の範囲、好ましくは、約1/15〜1/10の範囲に制限し、水道水等、塩素消毒により微生物が殆ど存在しない水環境の場合は、その孔径を、容器の内径の約1/10〜3/10の孔径の範囲に制限し、一方、浴槽水等の比較的微生物濃度が高い水環境の場合は、その孔径を、容器の内径の約1/20〜1/15の孔径の範囲に制限している。このようにして、本発明では、水環境電池の容器内の内部ユニット(卑金属体、貴金属体および間隔保持部材)により生成される一次電池用水(卑金属体と貴金属体との間の一次的な電池作用により金属イオンおよび活性酸素を含有する機能水)が、容器外部から容器内部の内部ユニット(特に、卑金属体と貴金属体との間の電池作用区間としての隙間空間)に流入する量の水によって完全に消費しつくされないような容器構造、即ち、当該電池作用水中の(殺菌機能等の機能発揮に関与する)金属イオンや活性酸素が当該流入水により完全に消費されて消失して次に流入した水に含まれる微生物の殺菌を行えなくなるような事態が生じないような容器構造としている。
3) 上記容器自体の構造と同時に、適用対象となる流水管等の管材や流水路の種類に応じて管材内の水圧が異なることに着目し、当該管材内の水圧を考慮して、孔径の異なる流量調整孔を有する複数種類の流量調整板を別個に用意して使用し、管材の水圧に応じて流量調整孔の孔径が異なるものを使用した。即ち、容器の流通口の孔径よりも小径となる流量調整孔を有する流量調整板を複数種類用意して、管材の水圧に応じて最適な流量調整孔の流量調整板を使用するようにした。具体的には、容器の流通口の孔径によって容器に流入出する水量を上記制限された水量とすることができる場合は、流量調整板を容器の流通口に装着する必要がないため装着しない。一方、容器の流通口の孔径によって容器に流入出する水量を上記制限された水量とすることができない場合(当該水量では電池作用水が消費されつくしてしまう場合)は、流量調整板を容器の流通口に装着する。このとき、相対的に水圧の低い管材では、相対的に大径となる流量調整孔の流量調整板を容器の流通口に装着して、容器への水の流入出を許容する孔を、流通口の径より小さい径の当該流量調整孔へと縮小し、容器に流入出する水量を(流通口の場合より)低減し、また、相対的に水圧の高い管材では、相対的に小径となる流量調整孔の流量調整板を容器の流通口に装着し、容器への水の流入出を許容する孔を、流通口の径より小さい径で、かつ、水圧の低い管材の場合よりも更に小さい径の当該流量調整孔へと縮小し、容器に流入出する水量を(流通口の場合、及び、前記相対的低水圧の管材の場合より)更に相対的に低減するようにして、その流出入量の調整をはかっている。また、この流量調整板は、Znイオン、Mgイオン等のミネラルの水中含有量乃至水中含有率(容器から管材へ戻る水中のミネラル含有率)を調整する調整板としても応用することができる。
4) アノード(負極)となる卑金属体と、カソード(正極)となる貴金属体との間の間隔を極限まで(最小値で約0.1m程度、通常は、約0.5mm程度以上)まで小さくすることにより、電池反応を最大限まで強め、濃度の高い電池作用水乃至電解水を得るようにしている。
【0074】
本発明者等は、上記各観点に基づく各構成の改良により、種々、試作品を作成し、実施試験及び効果確認試験等を繰り返し行った結果、バイオフィルムの形成を効果的に抑えることができ、あらゆる用途に適用しても永続的に電池作用を発揮することが可能となる水環境電池を創作するに至った。
【0075】
即ち、第1の発明の水環境電池は、容器と前記容器内部に収容配置される内部ユニットとを備えている。また、内部ユニットは、所定のイオン化傾向を有し、水中で金属イオン化して殺菌効果を発揮する第1の金属からなる第1の反応体と、前記第1の金属より低いイオン化傾向を有する第2の金属からなり、前記第1の反応体の表面における金属イオンの発生面の主要部の全面に対向して配置される対向面を有する第2の反応体と、前記第1の反応体及び第2の反応体を、全面にわたって互いに非接触状態となるよう、かつ、少なくともそれらの長さ方向全体に均一となる小間隔の隙間空間を置いて互いに面的に対向するよう配置した状態で、互いに固定的に保持する電気絶縁体からなる間隔保持部材とを含んでいる。そして、前記容器は、当該容器の外部と当該容器の内部に配置した前記内部ユニットとの間での水の流通を許容する流通口(孔状のもの、即ち、流通孔も含み、点孔状、長孔状、スリット状、スロット状等、流通可能なあらゆる形状のものを含む)を有している。そして、前記内部ユニットを収容した前記容器内部に前記流通口を介して通水することにより、または、当該容器を水浸漬することにより、当該容器内部の前記第1の反応体と前記第2の反応体との間の隙間空間に進入した水を媒介として、前記第1の反応体と前記第2の反応体との間でのイオン化傾向の差による電池反応により、前記第1の反応体から前記第2の反応体へと向かって前記第1の反応体の金属イオンを水中に溶出すると共に、当該金属イオンの発生に伴って発生する電子を水中の酸素が取り込むことによって活性酸素を生成して、当該金属イオン及び活性酸素からなる電池作用水により水に機能を付与して機能水としている。
【0076】
そして、前記第1の反応体が、前記金属イオンの発生面として、面的に異なる複数の発生面を有する場合、当該第1の反応体の複数の発生面の各々に対して、前記第2の反応体の対向面が、前記間隔保持部材による前記隙間空間を置いて面的に対向配置されるようにしている。例えば、第1の反応体が円筒の場合は、その内周面と外周面、円盤の場合はその両側面、立方体や直方体の場合はその六面(多面体の各面)等、(円筒体の端面や円柱の端面等、面積的に小さく無視できる面以外の面であって、第1の反応体の大部分の面積を構成することになる面(即ち、主要部の面乃至主要面)について、第2の反応体の対向面が、前記間隔保持部材による前記隙間空間を置いて面的に対向配置されるようにしている。
【0077】
これにより、本発明の水環境電池は、間隔保持部材が電気絶縁部材であるため、第1の反応体(卑金属体)と第2の反応体(貴金属体)とが直接的に電気的に接続・導通されることはなく、水のみを媒介とした電池作用により、卑金属体から金属イオンが完全なイオン化状態で発生し、かつ、この金属イオンの発生に伴う電子の発生により、当該電子が水中の酸素に取り込まれて活性酸素を生成し、これら金属イオン及び活性酸素により、殺菌等の諸機能を効果的に発揮する。
【0078】
また、第1の反応体(卑金属体)が円筒体の場合は、その内側及び外側に、別個の対応する円筒状の第2の反応体(貴金属体)を配置し(内側の貴金属体は円柱状でも可)、卑金属体が円盤の場合は、その両側面にそれぞれ別個の円盤状の貴金属体を配置し、卑金属体が多面体の場合は、その各面に対して別個のまたは連続して対応する面を形成した形状の貴金属体を1個以上配置する。これにより、卑金属体の全ての反応面が貴金属体の対向面と対向して貴金属体との間で電池反応を形成するため、卑金属体の反応面のうち卑金属対の対向面と対向しない面が存在しないことになり、対向しないある程度大きな面積の反応面が卑金属体に存在した場合に発生する酸化による金属表面の変色等の不具合を確実に防止することができる。
【0079】
また、第2の発明の水環境電池は、更に、上記構成に加えて、前記容器の流通口を介して、当該容器の外部の水が制限された単位時間当たり流量(自由流通する場合の流量より小さい流量であって、例えば、少なくとも1/2以下の量)で当該容器の内部に流入し、かつ、制限された単位時間当たり流量で当該容器の外部に流出するよう、前記容器の流通孔の開口面積を当該容器に収容した前記第1の反応体と第2の反応体との対向総面積及び/または当該第1の反応体と第2の反応体との間の前記隙間空間の総容積に対して(相対的に)設定している。また、前記容器の流通口の開口面積は、前記制限された単位時間当たり流量の水が当該流通孔を介して前記容器内部に流入して容器内部を流通した後に当該流通口を介して前記容器の外部に流出したときに、前記容器に収容した第1の反応体と第2の反応体との間の隙間空間に存在する前記電池作用水に含有される前記金属イオン及び活性酸素の濃度が、当該第1の反応体と第2の反応体との間の隙間空間に存在する水中の微生物による前記第1の反応体及び/または第2の反応体(特に、第2の反応体をステンレス鋼等の耐腐食材料とした場合は、第1の反応体のみ)へのバイオフィルムの形成を阻止できる濃度を継続的に維持するような値(微生物を継続的に長期間にわたって安定してほぼ完全に死滅させるために必要な濃度、即ち、金属イオンや活性酸素が完全に消費されることなく、機能発揮後もそれらの一部が残存するような濃度以上となるような値)に設定されている。
【0080】
例えば、この場合、前記容器外部の水が前記容器内部を自由に流通しないよう、当該容器の径の1/3以下の大きさの径としたり、或いは、容器の外部の水中の電池作用水濃度よりも大きな(少なくとも2倍以上の)一定濃度(バイオフィルム形成を阻止できる濃度)以上に維持するようにする。このように、容器内外の水の流通量を制限する流通口を設けることにより、当該流通口を介して、水を前記容器の内外で制限状態で流通させて、前記容器内部の内部ユニットの第1の反応体と第2の反応体との間の隙間空間に存在する(卑金属体と貴金属体との間で発生した)電池作用水を容器外部に除放することができ、当該隙間空間に存在する電池作用水に含有される前記金属イオン及び活性酸素の濃度を前記外部空間の濃度よりも大きな(例えば、少なくとも2倍以上の)一定濃度(即ち、バイオフィルム形成を阻止できる濃度)以上に維持することができる。ここで、「制限された単位時間当たり流量」とは、本発明の水環境電池が使用される水環境中の水質(水中微生物濃度や濁度等)や水量等の諸条件に応じて、バイオフィルムの形成条件も変更されるため、各種用途についての絶対的な範囲を特定乃至一般化することはできないため、容器の流通口の径やその相対的な範囲も、各種用途について一般化したものを特定することは困難であるが、例えば、水道水の場合は、上記のとおり、容器の内径の約1/10〜3/10の孔径の範囲に設定する等、各用途(特に適用対象の水中微生物濃度(単位水量当り微生物数または単位時間当たり微生物数))に応じて設定される。
【0081】
また、本発明の水環境電池では、例えば、前記第1の反応体は筒状をなし、前記金属イオンの発生面として内周面及び外周面を有している。また、前記第2の反応体は、前記第1の反応体の内周面に対応する筒状または柱状をなす内側の第2の反応体と、前記第1の反応体の外周面に対応する筒状をなす外側の第2の反応体とからなる。そして、前記内側の第2の反応体を前記筒状の第1の反応体の内部に同軸状に収容配置して、当該内側の第2の反応体の対向面としての外周面が、前記間隔保持部材による前記隙間空間を置いて当該第1の反応体の内周面と面的に対向配置されるようにし、かつ、前記外側の第2の反応体を前記筒状の第1の反応体の外側に同軸状に嵌合配置して、当該外側の第2の反応体の対向面としての内周面が、前記間隔保持部材による前記隙間空間を置いて当該第1の反応体の外周面と面的に対向配置されるようにしている。
【0082】
ここで、前記第1の反応体は、典型的には、柱状、筒状、板状とすることができる。上記のように、前記第1の反応体を柱状とした場合は、その外側に当該柱状に対応する筒状の前記第2の反応体を対向配置し、第1の反応体を筒状とした場合は、その内側及び外側の双方にそれぞれ前記第2の反応体を対向配置し、第1の反応体を板状とした場合は、その両側面に第2の反応体を対向配置する。このようにして、前記第1の反応体の主要部の全面が必ず前記第2の金属の対向面と対向するようにしている。
【0083】
本発明の水環境電池では、(バイオフィルム形成防止のための構成としての)前記容器の流通口の開口面積は、更に、前記制限された単位時間当たり流量の水が当該流通口を介して前記容器内部に流入して容器内部を流通した後に当該流通口を介して前記容器の外部に流出したときに、前記容器に収容した第1の反応体と第2の反応体との間の隙間空間に進入する水中の酸素濃度が、前記金属イオン及び活性酸素の濃度を継続的に維持しながら、前記第1の反応体と第2の反応体との間の隙間空間において前記金属イオン及び/または活性酸素の生成に必要となる濃度以上となるような値に設定される。即ち、前記容器内部の卑金属体と貴金属体との間の隙間空間(電池作用空間)の水中に、常に、活性酸素の生成のために必要な量の酸素(分子中に存在して活性酸素となる酸素も含む)が含有された状態が継続するようにし、これにより、卑金属体から発生する電子が取り込まれる酸素が枯渇しないようにすべく、前記流通口の径を調整している。したがって、活性酸素の生成を安定的に確保して、バイオフィルムの形成を効果的に阻止することができる。
【0084】
また、本発明の水環境電池では、前記容器は、水が内部の流水路に沿って流れる管材の当該流水路中に配置されるものである。また、前記容器は、前記管材の軸方向に沿って配置される筒状をなすと共に、その両端を閉塞端としたものであり、当該閉塞端の一方にのみ、前記流通口を当該閉塞端を貫通して当該容器の内部空間と連通する小孔状となるよう形成している。そして、前記容器は、前記管材の流水路中の流水の流向と軸方向が平行するよう、かつ、前記一方の閉塞端が前記容器の下流側に配置されて前記流通口が前記管材の流水路の下流側にのみ配置されるよう、前記管材の流水路中に固定的に配設されている。
【0085】
或いは、本発明の水環境電池では、前記容器は、水が内部の流水路に沿って流れる管材の当該流水路中に配置されるものである。また、前記容器は、前記管材の軸方向に沿って配置される筒状をなすと共に、その両端を閉塞端としたものであり、前記管材の流水路に配置されたときにその外周面の上側となる上側部にのみ、前記流通口を当該上側部を貫通して当該容器の内部空間と連通する小孔状となるよう形成している。更に、前記容器は、前記管材の流水路中の流水の流向と軸方向が平行するよう、かつ、前流通口が前記管材の流水路の上側にのみ配置されるよう、前記管材の流水路中に固定的に配設されている。
【0086】
或いは、本発明の水環境電池では、前記容器は、水が内部の流水路に沿って流れる管材の当該流水路中に配置されるものである。また、前記容器は、前記管材の軸方向に沿って配置される筒状をなすと共に、その両端を閉塞端としたものであり、当該両方の閉塞端に、それぞれ、前記流通口を当該閉塞端を貫通して当該容器の内部空間と連通する小孔状となるよう形成している。更に、前記容器は、前記管材の流水路中の流水の流向と軸方向が平行するよう、前記管材の流水路中に固定的に配設されている。
【0087】
或いは、本発明の水環境電池は、流水の流向と軸方向が平行するよう円筒状の容器を配置し、容器の上側部分にのみ制限孔を形成したり、または、流水の流向と軸方向が直交するよう円筒状の容器を配置し、容器の上側部分にのみ制限孔を形成し、流量に応じて、容器の制限孔の直径を更に狭小とする流量調製板を複数種類用意し、流量に応じた径の流量調製版を配置している。
【0088】
或いは、本発明の水環境電池では、前記容器は、水が内部の流水路に沿って流れる管材の当該流水路に併設して配置されるものである。また、前記容器は、前記管材の軸方向と略直交して配置される筒状をなすと共に、その両端を閉塞端としたものであり、当該閉塞端の一方にのみ、前記流通口を当該閉塞端を貫通して当該容器の内部空間と連通する孔状となるよう形成し手いる。更に、前記容器は、前記管材の流水路中の流水の流向と軸方向が略直交するよう、かつ、前記一方の閉塞端が前記管材の流水路に接続されて、前記流通口が前記管材の流水路と略直交状態で連通するよう、前記管材に固定的に配設されている。更にまた、前記容器の流通口に同軸状となるよう着脱自在に取り付けられる板状をなすと共に、前記容器の流通口より小さい径の流量調整孔を有する流量調整板を備えている。そして、異なる径の流量調整孔を有する複数の流量調整板を用意して、前記管材の流水路を流れる水の種類(水質、水中微生物濃度等)に応じて前記複数の流量調整板を選択的に取り付けることにより、前記容器の流通口の開口面積を当該選択的に取付られた流量調整板の流量調整孔の開口面積により制限自在としている。
【0089】
本発明の水環境電池では、好ましくは、前記第1の反応体として亜鉛マグネシウム合金を使用し、前記亜鉛マグネシウム合金柱のマグネシウムの含有率を3〜5%の範囲内に設定している。
【0090】
実施の形態1〜15
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」という。)を説明する。なお、各実施の形態を通じ、同一の部材、要素または部分には同一の符号を付して、その重複する説明は省略する。以下の述べる実施の形態1〜15の水環境電池は、上記した本発明の構成を具体化するものであり、上述した構成の一部または全部(必須構成について全部)を備えるものであり、対応する特有の作用効果を発揮する。
【0091】
実施の形態1
本発明の実施の形態1に係る水環境電池は、図1に示すように、所定直径で所定長さの単純円筒状をなす卑金属体1の内側に、隙間空間の分だけ小径の単純円筒状をなす内側の貴金属体2を同軸状に配置し、また、卑金属体1の外側に、隙間空間の分だけ大径のスロット付き円筒状をなす外側の貴金属体3を同軸状に配置しており。また、卑金属体1の内周面と貴金属体2の外周面との間に、前記隙間空間に対応する円筒状のネット状をなす小径の間隔保持部材4をそれらと同軸状に介装配置して、卑金属体1の内周面と内側の貴金属体2の外周面との間に均一な厚みの微小間隙となる隙間空間を形成すると共に、卑金属体1の外周面と貴金属体3の内周面との間に、前記隙間空間に対応する円筒状のネット状をなす大径の間隔保持部材5をそれらと同軸状に介装配置して、卑金属体1の外周面と貴金属体3の内周面との間に均一な微小間隙となる外側の隙間空間を形成している。貴金属体3には、円周方向に所定角度間隔を置いた位置に、それぞれ、軸方向に延びる長孔状のスロット3aが貫通形成されている。なお、図示はしないが、これら卑金属体1、貴金属体2,3及び間隔保持部材4,5からなる内部ユニットは、(貴金属体3に対応する有底蓋付円筒状等の形状をなす)樹脂製の保護カバー内に直接収容配置され、或いは、貴金属体3との間を隔離する電気絶縁材料からなる円筒状のネット状をなす隔離部材を介して、金属製の保護カバー内に収容配置される。このように構成した水環境電池は、本発明の基本型の乾電池型水環境電池を構成するものであり、各種の用途に応用して、上記のような特有の作用効果を発揮することができる。
【0092】
実施の形態2
本発明の実施の形態2に係る水環境電池は、図2〜図4に示すように、流水浄化用水処理装置10(流水中収容タイプの水環境電池)に具体化される。この流水浄化用水処理装置10は、流水中に収容して使用するタイプの水処理装置であり、図2に示すように、両端を開口した円筒状をなすハウジング11(後述する円筒状の貴金属体により構成)の右端及び左端に、フランジ付短円筒状をなす入口部12及びフランジ付短円筒状をなす出口部13を、それぞれ、密嵌や螺着によって着脱自在に同軸状となるよう固着した構造である。入口部12及び出口部13のフランジ部分は、流水浄化用水処理装置10の適用対象部材の水環境内部(典型的には水道配管等の管材の内部空間の流水路)に流水浄化用水処理装置10を内装乃至収容して配置したときに、それぞれ、当該内部空間の内周面(例えば、管材の流路内周面)に当接係止されて、流水浄化用水処理装置10を適用対象部材の内部空間に固定的に配設するためのものである。また、入口部12及び出口部13の外端(フランジ側の端)は、それぞれ、円形開口が形成されて開放端とされると共に、内端(ハウジング11側の端)は閉塞端とされ、入口部12及び出口部13によりハウジング11の両端の開口を水密に閉塞するようになっている。また、入口部12及び出口部13の円筒部分には、円周方向に所定角度(図の例では180度)の角度間隔を置いた位置に、円形の連通孔12a及び連通孔13aが穿設され、入口部12及び出口部13の円筒部分の内部空間を介してそれらの開放端とそれぞれ連通している。そして、入口部12を適用対象部材の内部空間乃至流水路の上流側に配置すると共に、出口部13を下流側に配置したときに、入口部12の開放端から内部に流入する水が、その連通孔12aを介して、ハウジング11の外周面へと流出し、ハウジング11の外周面に沿って流れた水が、出口部13の連通孔13aからその内部に流入してその開放端から下流側に流出するようになっている。また、図4に示すように、出口部13の閉塞端の中心には、貫通孔である細孔状の流通孔13bが流通口として形成され、流通孔13bを介して、ハウジング11の内部空間が(出口部13側の)外部空間と連通するようになっている。なお、本実施の形態では、流通孔13bの径(直径)は、ハウジング11の径(直径)の約1/15程度に設定されている。
【0093】
一方、流水浄化用水処理装置10は、図3に示すように、容器としてのハウジング11により円筒状の貴金属体(第2の反応体)を構成し、貴金属体としてのハウジング11内に、間隔保持部材としての円筒ネット状の隔離網14を介して、ハウジング11の円筒形状に対応する寸法の円柱状をなす卑金属体15を収容配置している。また、卑金属体15の両端には、対応する入口部12の閉塞端の内面及び出口部13の閉塞端の内面との間に、それぞれ、対応する円形ネット状の隔離網16,17が介装配置されている。隔離網14は、ハウジング11の内周面に略密接する外径の円筒ネット状をなし、隔離網16,17の合計の厚み分だけハウジング11の軸長より小さい軸長(卑金属体15と同一軸長)を有する。また、卑金属体15は、隔離網14の厚さ分だけハウジング11の内径より小さい外径を有し、隔離網16,17の合計の厚み分だけハウジング11の軸長より小さい軸長を有する。更に、隔離網14及び隔離網16,17は、それぞれ、少なくとも内面側が、卑金属体15の外周面並びに一端面及び他端面と点状または線状に接触して卑金属体15を支持する(即ち、先端を先鋭化した点状の小突起または先端を先鋭化した線状のリブが内面に複数または多数形成されて、卑金属体15点接触または線接触で支持する)ようになっている。
【0094】
そして、流水浄化用水処理装置10は、図4〜図5に示すように、ハウジング11内に隔離網14を挿入して配置すると共に、隔離網14内に卑金属体15を挿入して配置し、その両端に隔離網16,17を重ねた配置した後、入口部12及び出口部13をハウジングに取り付けることにより、全体が一体化されてユニット化される。
【0095】
ここで、卑金属体15は、所定含有量のマグネシウム(3〜10%の範囲、好ましくは、3〜5%の範囲)を含有した亜鉛マグネシウム合金からなる所定直径の単純円柱状をなす。貴金属体としてのハウジング11は、ステンレス鋼(好ましくはSUS304)からなる所定直径(内径が卑金属体15より隔離網14の厚み分だけ大径)の単純円筒状をなし、長さ方向(軸方向)全体にわたって同一断面形状で所定長さ(卑金属体15と同一長さ)延びている。隔離網14は間隔保持部材を構成する。即ち、隔離網14は、卑金属体15が貴金属体としてのハウジング11内部に収容された状態において、卑金属体15の外周面と貴金属体(ハウジング11)の内周面とが全面にわたって互いに非接触状態となるよう、かつ、少なくともそれらの長さ方向全体に均一なる小間隔の隙間空間をおいて卑金属体15と貴金属体とが互いに面的に対向するよう配置して、互いに固定的に(互いに意図しない外力を加えない限りは移動不能となるよう)保持する電気絶縁体(合成樹脂、ゴム等)からなる。
【0096】
流水浄化用水処理装置10は、例えば、図5に示すように、水栓の原水浄化用水処理装置として適用することができ、この場合、給水栓1の給水管2の内部に収容して配置され、ハウジング11の両端の入口部12のフランジ部分及び出口部13のフランジ部分を、それぞれ、給水管2の内周面の基端側及び先端側に当接して係止することにより固定される。この固定状態で、ハウジング11の外周面は給水管2の内周面と所定の隙間空間を置いて対向し、ハウジング11の外周面と給水管2の内周面との間の円筒状の通水空間(流水路)が形成される。この状態で、給水栓の給水口から内部に原水(井戸水、水道水等)を通水すると、その原水が、前記入口部から前記ハウジングの外周面と給水管の内周面との間の通水空間内を通水し、前記出口部へ流入する。このとき、流水浄化用水処理装置10の上流側から流れて来た水は、入口部12により一旦遮断され、基本的には入口部12の連通孔12aのみを介して、ハウジング11の外周の流水路に流入する。また、ハウジング11の外周の流水路を流れる水も、出口部13により一旦遮断され、基本的には出口部13の連通孔13aのみを介して、給水管2の下流側に流出する。また、ハウジング11の外周の流水路からの水が、出口部13の連通孔13aから出口部13の円筒部内部に流入してフランジ部分の開口端から給水管2の下流側に流出するとき、出口部13の円筒部内部に流入した通水の一部が、出口部13内の流通孔13bを介してハウジング11内に流入し、ハウジング11としての円筒状の貴金属体の内周面と貴金属体内に収容された円柱状の卑金属体15の外周面との間の円筒状の隙間空間内(隔離網14により形成される空間内)に流入し、当該隙間空間内に一定時間滞留する。
【0097】
このとき、卑金属体15の外周面の全面と貴金属体(ハウジング11)の内周面とが均一な微小寸法の隙間空間を置いて対面するため、それらの間でのイオン化傾向の差による電池作用(腐食を伴わないミクロ電池類似の電池作用と想定される)によって、卑金属体15(亜鉛マグネシウム合金)の外周面から金属イオン(亜鉛イオン及びマグネシウムイオン)が溶出され、また、これに伴って発生した電子が酸素に取り込まれて活性酸素が発生し、それらが水中に溶出する。これにより、原水が処理水(金属イオン及び活性酸素が溶存する機能水)となり、一定時間経過後、その処理水が、前記出口部13の円筒部内から連通孔13aを経て外部に流出する原水に誘引されて、出口部13の円筒部内に位置する流通孔13bからハウジング11の外部に流出する。当該流通孔13bから流出した処理水は、ハウジング11の外周面と給水管の内周面との間の通水空間内の通水に混合されて(希釈され)、一体となって出口部13の連通孔13aから給水栓の給水管2内の下流側に流出し、最終的に、給水管2の吐水口から吐出される。
【0098】
上記処理水は、強力な殺菌機能・活性化機能を有する機能水である。即ち、亜鉛(Zn)イオンやマグネシウム(Mg)イオンは、水中での殺菌作用がある特定の金属イオンであり、特に、Mgイオンは強い殺菌作用があるため、通水中に溶出したZnイオンやMgイオンにより、通水中の一般細菌、大腸菌等の各種細菌を殺菌することができる。また、活性酸素も同様に殺菌機能を発揮する。したがって、これらの金属イオン及び活性酸素によって、通水(原水)中の殺菌や滅菌を行うことができ、吐水(処理水)を殺菌済みの水として利用に供することができ、飲用に供した場合の安全性を高めることができる。また、処理水は、ミネラル分としてのZnイオンやMgイオンが溶存しているため、飲用した場合に飲用者にそれらのミネラル分を補充させることも可能となる。
【0099】
実施の形態3
図6〜7に示すように、本発明の実施の形態3に係る水環境電池は、実施の形態2と同様の流水浄化用水処理装置20に具体化され、同様の用途に適用可能である。実施の形態3の流水浄化用水処理装置20は、更に、出口部13が、その円筒部の外周から外方(放射方向)に突出する突起部13cを備えている。突起部13cは、出口部13の円周方向に所定角度位置(図示の例では180度)をおいた箇所にそれぞれ形成されている。また、図8に示すように、流水浄化用水処理装置20では、ハウジング11の(配管2への装着状態における)上部乃至頂部に、流通口としての流通孔11aが貫通形成され、ハウジング11の内部と外部とを連通している。流通孔11aはハウジング11の軸方向(長さ方向)に所定間隔を置いた2つの位置に形成されている。なお、それ以外の箇所(出口部13等)には連通口は形成されていない。そして、取付対象である配管2に流水浄化用水処理装置20を取り付けたときに、突起部13cが配管2の内周面の対応する位置に形成された凹部乃至溝部に係合乃至掛止して、前記流通孔11aが最上部にくるよう、ハウジング11の円周方向の位置決めを行うようになっている。
【0100】
図9に示すように、流水浄化用水処理装置20は、給水栓1の給水管2の内部に収容して配置され、ハウジング11の出口部13の突起部13cを給水管2の対応する凹部乃至溝部に係合乃至掛止して位置決めすることにより固定される。この固定状態で、実施の形態2と同様、ハウジング11の外周面と給水管2の内周面との間の円筒状の通水空間が形成される。この状態で、給水栓1の給水口から内部に原水を通水すると、その原水が、入口部12からハウジング11の外周面の通水空間内を通水し、出口部13へ流入する。そして、流水浄化用水処理装置10の上流側から入口部12連通孔12aを介してハウジング11の外周の流水路に流入した水が、ハウジング11の外周の流水路を流れ、出口部13の連通孔13aから給水管2の下流側に流出する。このとき、ハウジング11の外周の流水路を流動する原水が、ハウジング11の流通孔11aからハウジング11内に流入し、ハウジング11としての円筒状の貴金属体の内周面と貴金属体内に収容された円柱状の卑金属体15の外周面との間の円筒状の隙間空間内(隔離網14により形成される空間内)に流入し、当該隙間空間内に一定時間滞留して処理水(電池作用水)となり、一定時間経過後、その処理水が、ハウジング11の外周を流れる原水に誘引されて、流通孔11aからハウジング11の外部に流出する。当該流通孔11aから流出した処理水は、ハウジング11の外周面の通水空間内の通水に混合されて、一体となって出口部13の連通孔13aから給水栓の給水管2内の下流側に流出し、最終的に、給水管2の吐水口から吐出される。
【0101】
実施の形態4
図10に示すように、本発明の実施の形態4に係る水環境電池は、実施の形態2と同様の流水浄化用水処理装置30に具体化され、同様の用途に適用可能である。実施の形態4の流水浄化用水処理装置30は、シャワーヘッドのハンドル部(手で把持する部分)の内部空間(流水路)に装着される構成となっているが、入口部12にも(流通孔13bと同様の細孔状をなす)流通孔12bを貫通形成した点を除き、基本的には、実施の形態2の流水浄化用水処理装置10とほぼ同様の構成である。よって、流水浄化用水処理装置30では、シャワーヘッドの原水導入部からの原水(上流側の原水)は、入口部12の流通孔12bからハウジング11内に流入し、卑金属体15からの金属イオン及び活性酸素により電池作用水となって、出口部13の流通孔13bから流出し、ハウジング11の外周面からの原水と混合されて、シャワーヘッドのヘッド部の吐水口から吐出される。
【0102】
実施の形態5
図11に示すように、本発明の実施の形態5に係る水環境電池は、実施の形態2と同様の流水浄化用水処理装置10を、主管としての配管MPの途中において配管MPに並列接続した副管SPの内部に配置され、電池作用水を供給する。この場合、配管MP内に送出する電池作用水の必要量に応じて、副管SPの径を増減変更すると共に、これに対応して流水浄化用水処理装置10(即ち、ハウジング11及び卑金属体15等の径を)増減変更することにより(必要量が多ければこれらを大径とし、少なければ小径として)、必要に応じた量の電池作用水を供給することができる。
【0103】
実施の形態2〜5に係る流水浄化用水処理装置は、上記以外の他の用途(原水浄化用水処理装置以外の用途)に適用することができる。例えば、流水浄化用水処理装置は、原水浄化用水処理装置以外にも、農業用水処理装置,製氷機用水処理装置,洗濯機用水処理装置,魚類生鮮保持用水処理装置等に適用することができる。これらは、それぞれ、その用途が前記水栓の原水浄化用水処理装置と異なるが、構造及び機能は同様であるため、構造及び機能の詳細な説明は省略する(上記を参照)。即ち、まず、農業用水処理装置は、例えば、上記水栓の原水浄化用水処理装置を(花壇等に設置される)散水栓の通水路に収容することで、散水栓から吐水した処理水を、花壇や菜園の植物に散水して、その処理水が備える上記殺菌機能により、植物に到来する害虫の駆除・防除、植物に付着する微生物の駆除・防除等を行い、また、植物にとっても必須の栄養分であるMgイオンにより植物の成長を促進する。また、製氷機用水処理装置は、例えば、上記水栓の原水浄化用水処理装置を(製氷機用に設置される)給水栓の通水路に収容することで、給水栓から吐水した処理水を製氷機で凍結させて氷を製造することにより、処理水が備える上記殺菌機能により、その氷を飲食用に供した場合の安全性を高め、また、氷に含まれるミネラル分によるミネラル補給機能を発揮する。また、洗濯機用水処理装置は、例えば、上記水栓の原水浄化用水処理装置を(洗濯機への給水用に設置される)給水栓の通水路に収容することで、給水栓から吐水した処理水を洗濯機の洗濯槽内に給水して洗濯することにより、処理水が備える上記殺菌機能により、洗濯物の殺菌を行い、また、洗濯槽への微生物(カビ等の真菌類)の付着を防止する。また、魚類生鮮保持用水処理装置は、例えば、上記水栓の原水浄化用水処理装置を(採取した魚の洗浄用・貯蔵用に使用される)給水栓の通水路に収容することで、給水栓から吐水した処理水を、魚に散水したり魚を貯蔵する箱内に貯留して、その処理水が備える上記殺菌機能により、魚に付着する微生物の駆除・防除等を行い、また、腐敗や異臭の発生を防止する。
【0104】
実施の形態6
図12〜15に示すように、本発明の実施の形態6に係る水環境電池は、水抜きハウジング120に殺菌ユニット110を収容した水抜きアダプタに具体化される。詳細には、実施の形態6に係る水抜きアダプタは、給水栓1の配管としての吐水パイプ2の基端部の下面側に形成された短円筒状の取付部(雌螺子)に着脱自在に取付けられ、取付部の下端の円形開口を介して、吐水パイプ2内の通水路と水密に連通する。実施の形態6の水抜きアダプタは、殺菌ユニット110と、殺菌ユニット110を内部に収容する略円筒状の容器としての金属製の水抜きハウジング120と、水抜きハウジング120の下端開口に水密に嵌合する金属製の水抜きキャップ130とから構成される。
【0105】
水抜きハウジング120は、大径の円筒状をなす基部121の上端に、小径の円筒状をなす雄螺子部122を一体形成している。雄螺子部122の上端は、小径の円形をなす上端開口122aとなっている。雄螺子部122の内部の小径の円形断面の空間は、基部121の内部の大径の円形断面の空間と連通している。雄螺子部122の外周面の雄螺子を水栓1の吐水パイプ2の前記取付部の内周面の雌螺子に螺合して装着することにより、水抜きハウジング120を取付部に装着して、吐水パイプ2内の通水路と水抜きハウジング120の内部空間とを水密に連通する。一方、水抜きハウジング120の基部121の下端部外周面には雄螺子部123が形成されている。雄螺子部123の下端は、大径の円形をなす下端開口123aとなっている。水抜きハウジング120の下端開口123aから、流量調整板124及び殺菌ユニット110を順に内部に収容できるようになっている。
【0106】
流量調整板124は、真鍮等の銅合金等の金属製で、水抜きハウジング120の基部121の上端内周部に対応する直径(略同一径又は若干小径)の孔あき円盤体である。流量調整板124は、中央に所定直径の円形の流量調整孔124aを貫通形成すると共に、基部121の上端内周部に収容され、流量調整孔124aが雄螺子部122の円形開口に対応するよう配置される。これにより、流量調整板124の流量調整孔124aを介して、基部121の内部空間と雄螺子部122の内部空間及び吐水パイプ2の内部通水路とが水密に連通される。よって、吐水パイプ2内から水抜きハウジング120内へ流入する水は、雄螺子部122の内部空間に進入した後、流量調整板124の流量調整孔124aを通過して基部121の内部空間に進入し、基部121の内部空間を還流した後、再度、流量調整板124の流量調整孔124aを通過して雄螺子部122の内部空間から吐水パイプ2の内部通水路に還流する。したがって、流量調整板124の流量調整孔124aの孔の孔径の増減及び/または孔形状の変更により、その断面積を増減調整して通水許容量を増減調整することにより、吐水パイプ2から水抜きハウジング120内へ流入する水量、及び、水抜きハウジング120内から吐水パイプ2へと流出する水量を調整することができる。例えば、流量調整孔124aの孔形が異なる複数種類の流量調整板124を予め用意しておき、所望の孔形を有する流量調整板124に交換する。例えば、流量調整孔124aを大径なものに交換すると流量調整孔124aの通水量が増加し、流量調整孔124aを小径なものに交換すると流量調整孔124aの通水量が減少する。こうすることにより、流量調整板124により水抜きハウジング120内へ通水量を調整することができる。なお、流量調整板124の流量調整孔124aは、円形以外にも、多角形状等の別の形状とし、その形状や寸法を変更することにより、同様にして断面積を増減変更して、流量調整を行うこともできる。
【0107】
水抜きキャップ130は、キャップ状の雌螺子部132と、雌螺子部132の下端面中央部に一体形成された有底円筒状の水抜き部131とからなる。雌螺子部132は、内周面の雌螺子を水抜きハウジング120の基部121の雄螺子部23の外周面の雄螺子に螺合することにより、水抜きハウジング120の下端に装着するようになっている。これにより、雌螺子部132の内部空間を介して、水抜き部131の内部空間が水抜きハウジング120の基部121の内部空間と連通する。このとき、水抜きハウジング120内に殺菌ユニット110を装着し、シール材としてのリング状のパッキン125を殺菌ユニット110の下端と水抜きキャップ130との間に介装して、水抜きハウジング120と水抜きキャップ130との間の水密を維持する。なお、水抜きキャップ130は、通常の水抜き機能も備えることができ、前記リング状のパッキン125により水抜きハウジング120と水抜きキャップ130との間の水密を維持し、かつ、水抜き部131により基部121の内部の水を外部に調整して水抜き可能としている。
【0108】
殺菌ユニット110は、上側隔離網板111、卑金属体112、内側隔離網筒113、貴金属体114、外側隔離網筒115及び下側隔離網板116を備える。上側隔離網板111は、流量調整板124と略同一直径の網状の円盤状をなし、全面にわたって厚さ方向に貫通する多数の小孔111aを有している。また、上側隔離網板111は、ポリプロピレン等の合成樹脂等からなる所定の電気絶縁材料または非導電性材料により多数の線状部を交差配置してなる通常の網状乃至ネット状の円盤状に形成されるが、上下両面側では、全部または一部の線状部の頂部が線状(一次元状)の支持線11bとなるよう形成されている。これにより、上側隔離網板111の上下両面は、線状とした線状部の支持線111bのみを介して、対向する部材である上側の流量調整板124の下面並びに下側の卑金属体112の上端面及び貴金属体114の上端面に対して、一部にでも面的に接触することなく全体が線のみで接触(線接触)するようになっている。したがって、上側隔離網板111の上下両面と、上側の流量調整板124の下面並びに下側の卑金属体112の上端面及び貴金属体114の上端面とのそれぞれの接触面積の大きさをほぼゼロとすることができる。
【0109】
内側隔離網筒113は、本実施の形態の間隔保持部材を構成し、卑金属体112及び貴金属体14間に前記隙間空間を形成する。内側隔離網筒113は、全面にわたって厚さ方向に貫通する多数の小孔113aを有している。また、内側隔離網筒113は、上側隔離網板111と同様の電気絶縁材料により多数の線状部を交差配置してなる通常の網状乃至ネット状の円筒状に形成されるが、その内周面側及び外周面側では、全部または一部の線状部の頂部が線状(一次元状)の支持線113bとなるよう形成されている。これにより、内側隔離網筒113の内周面及び外周面は、線状とした線状部の支持線113bのみを介して、対向する部材である卑金属体112の外周面及び貴金属体114の内周面に対して、それぞれ、一部にでも面的に接触することなく全体が線のみで接触(線接触)するようになっている。したがって、内側隔離網筒113の内周面及び外周面と、卑金属体112の外周面及び貴金属体114の外周面とのそれぞれの接触面積の大きさをほぼゼロとすることができる。
【0110】
外側隔離網筒115は、貴金属体114の外周面全体が水抜きハウジング120の基部121の内周面に対して非接触状態となるよう、貴金属体114の外周面の全面を覆う網状の円筒状をなす。外側隔離網筒115は、全面にわたって厚さ方向に貫通する多数の小孔115aを有している。また、外側隔離網筒115は、上側隔離網板111と同様の電気絶縁材料により多数の線状部を交差配置してなる通常の網状乃至ネット状の円筒状に形成されるが、その内周面側及び外周面側では、内側隔離網筒113と同様、全部または一部の線状部の頂部が線状(一次元状)の支持線115bとなるよう形成されている。これにより、外側隔離網筒115の内周面及び外周面は、線状とした線状部の支持線115bのみを介して、対向する部材である貴金属体114の外周面及び基部121の内周面に対して、それぞれ、一部にでも面的に接触することなく全体が線のみで接触(線接触)するようになっている。したがって、外側隔離網筒115の内周面及び外周面と、貴金属体114の外周面及び基部121の外周面とのそれぞれの接触面積の大きさをほぼゼロとすることができる。
【0111】
下側隔離網板116は、上側隔離網板111と同様の構成であり、全面にわたって厚さ方向に貫通する多数の小孔116aを有し、また、その上下両面側では、前記支持線111bと同様の支持線116bが設けられている。これにより、下側隔離網板116の上下両面は、支持線116bのみを介して上側の卑金属体112の下端面及び貴金属体114の下端面並びに下側のパッキン1251に対して、一部にでも面的に接触することなく全体が線のみで接触(線接触)するようになっている。したがって、下側隔離網板116の上面と、上側の卑金属体112の下端面及び貴金属体114の下端面とのそれぞれの接触面積の大きさをほぼゼロとすることができる。
【0112】
実施の形態7
図16に示すように、本発明の実施の形態7に係る水環境電池は、実施の形態6の水抜付アダプタの水抜きキャップ130を水抜き機能を備えない通常のキャップ130Aに変更した点を除き、基本的に、実施の形態7の水抜きアダプタと同様の構成であり、同様の作用効果を発揮する。
【0113】
ここで、実施の形態6及び7では、殺菌ユニット110を内装する水抜きハウジング120が、殺菌等の作用対象となる水環境である吐水パイプ2内の原水の通水路(流水方向)に対して略直交して取付けられ、吐水パイプ2内の原水が、水抜きハウジング120の上端開口122aから内部へと、その流水方向と略直交して進入し、その後、ハウジング120内部を還流して殺菌ユニット110により金属イオン電池作用水となる。即ち、前記流量調整板124の流量調整孔124aは、水抜きハウジング120の内部空間において殺菌ユニット110の卑金属体112と貴金属体114との間での電池作用により卑金属体22から溶出された金属イオン(Mgイオン、Znイオン)や、同じく電池作用により水中に発生すると考えられる活性酸素(ヒドロキシラジカル(・OH)等)を含有する水(以下、「電池作用水」ということがある。)が、水抜きハウジング20の内部空間(内部水環境)から外部水環境(水抜きハウジング120の接続先乃至通水先である吐水パイプ2の内部空間等)へ流出する量を調整する流出量調整手段を構成する。そして、流量調整孔124aは、対象となる水環境の単位時間当たり流量、単位量当たり細菌数、ハウジングの容積、殺菌ユニットの電極容積等に依存するが、一般に、孔径はハウジング120の直径の1/10〜3/10とすることが好ましい。
【0114】
ここで、例えば、吐水パイプ2からの原水の全量または大部分の量が水抜きハウジング120の内部に(流量調整板24等の障害物を関与せずに)直接的に流入すると、内部に進入した原水は、殺菌ユニット110の層状の空間構造によって流水抵抗を受けるものの、水抜きハウジング120内を一気に(短時間で)還流する。特に、進入した原水は、電池作用水を発生する卑金属体112と貴金属体114との間の隙間空間を短時間で流れ、水抜きハウジング120から吐水パイプ2内に流入量と近い量が流出する。このとき、電池作用水は、(電池作用水の発生空間である)卑金属体112と貴金属体114との間の隙間空間内にある程度の時間滞留することなく、短時間で同隙間空間から外部に流出することになる。したがって、上記のように殺菌効果や抗カビ効果等の抗微生物効果を発揮する電池作用水が、水抜きハウジング120内に短時間しか滞留しないことになる。
【0115】
この場合、特に循環風呂(24時間風呂)の水(浴槽水)等の細菌が繁殖しやすい水環境中に上記殺菌ユニット110と同様の殺菌ユニットからなる水環境電池を配設すると、ある程度の期間の使用により卑金属体112の表面に微生物被膜(バイオフィルム)が形成されることを本発明者らは実験により確認している。一方、上記実施の形態のように、円筒状の卑金属体112と貴金属体114とを微小な一定の隙間空間を保持して同軸状に配置固定した複層構造の殺菌ユニット110を、対応する円筒状のハウジング120に内装した水環境電池は、その軸方向が殺菌等の対象となる水環境の通水路の流水方向(吐水パイプや配管等の通水路の軸方向)と略直交するよう取付けると共に、流量調整板により流入出する水量を調整することで、微生物被膜の生成を効果的に防止することができる。
【0116】
実施の形態8
図17〜図19に示すように、本発明の実施の形態8に係る水環境電池は、4層構造アダプタに具体化し、上端を開口した円筒状の容器としてのハウジング290内に、卑金属体212,216及び貴金属体214,218を4層構造として同軸状に配置した殺菌ユニット210を収容したものである。内側卑金属体212、内側貴金属体214、外側卑金属体216及び外側貴金属体218の各金属体が互いに直接接触しないよう、それらの間には、それぞれ、隔離網筒(第1内側隔離網筒213、第2内側隔離網筒215、第1外側隔離網筒217)が介装されると共に、外側貴金属体218が他部材と直接接触しないよう外側貴金属体218の外周面には第2外側隔離筒219が装着され、また、同軸多段円筒状となるように重ね合わせた内側卑金属体212、内側貴金属体214、外側卑金属体216及び外側貴金属体218の上端及び下端面には、それぞれ、隔離網板(上側隔離網板211、下側隔離網板220)が装着されている。なお、貴金属体214,218党の構成は、実施の形態の外側の貴金属体3と同様である。
【0117】
実施の形態9
図20〜図22に示すように、本発明の実施の形態9に係る水環境電池は、水栓の吐水口に着脱自在に装着される吐水口アダプタとしての吐水キャップに具体化される。吐水キャップは、略円筒状の基部301と、基部301の一端(上流端)に一体形成されて水栓の吐水口に着脱自在な流入口302と、基部の他端(下流端)に一体形成された吐水口303とからなるハウジング300を有する。吐水口303内には泡沫内芯304が内装されている。また、ハウジング300の内部空間には殺菌ユニット310が内装されている。
【0118】
図21及び図22(a)に示すように、第1の例の殺菌ユニット310は、内側卑金属体312、第1内側隔離網筒313、内側貴金属体314、第2内側隔離網筒315、外側卑金属体316、第1外側隔離網筒317、外側貴金属体318、第2外側隔離網筒319及び下側隔離網板320からなり、全体として、ハウジング300内の空間に対応した形状をなす。即ち、殺菌ユニット310は、内側卑金属体312、内側貴金属体314、外側卑金属体316及び外側貴金属体318をそれぞれ同軸上に配置して構成され、全体として、円筒状をなす。このとき、内側卑金属体312、内側貴金属体314、外側卑金属体316及び外側貴金属体318の各金属体が互いに直接接触しないよう、それらの間にはそれぞれ隔離網筒(第1内側隔離網筒313、第2内側隔離網筒315、第1外側隔離網筒317)が介装されると共に、外側貴金属体318が他部材と直接接触しないよう外側貴金属体318の外周面には第2外側隔離筒319が装着され、また、同軸多段円筒状となるように重ね合わせた内側卑金属体312、内側貴金属体314、外側卑金属体316及び外側貴金属体318の下端面には、隔離網板(下側隔離網板320)が装着されている。
【0119】
内側卑金属体312等の基本構成は上記と同様である。一方、外側貴金属体318は、その全面に、円形の小孔状をなす通水孔318aが、多数、厚さ方向に貫通形成されている。前記円筒状の内側貴金属体314は、その厚み方向に貫通するよう複数の小径の通水孔314aを形成し、内側卑金属体312と内側貴金属体314との間の円筒状の内側隙間空間内の電池作用水が、それらの通水孔314aを介して、内側貴金属体314の外周面側の電池作用水用の貯留空間319内へと流出し、また、貯留空間319内の電池作用水(外側卑金属体316及び外側貴金属体318からの電池作用水も含有)が貯留空間319から通水孔314aを介して内側卑金属体312と内側貴金属体314との間の円筒状の内側隙間空間内に還流するようにしている。これにより、内側卑金属体312と内側貴金属体314との間の内側隙間空間の一端(上流端)から内部に進入した原水が、内側卑金属体312と内側貴金属体314との間の内側隙間空間の他端(下流端)から直接的に流出して、内側卑金属体312と内側貴金属体314との間の内側隙間空間内で発生した前記電池作用水が、流水と共に瞬時に流出しないよう遮断し、当該電池作用水が、前記内側貴金属体314の通水孔314aの一端(内周端)へと略90度流水方向を変更されて貯留空間310内へと流入し、貯留空間319で外側卑金属体316と外側貴金属体318との間で発生した電池作用水を更に追加含有した後、再度、通水孔314aから内側卑金属体312と内側貴金属体314の上端側の空間内に還流し、その後、内側卑金属体312と内側貴金属体314との間の内側隙間空間内に進入して、吐水口303から泡沫内芯304を介して吐出される。
【0120】
即ち、本実施の形態では、内側貴金属体314の通水孔314aと貯留空間319との間での電池作用水の往復流動により、内側卑金属体312と内側貴金属体314との間で発生する金属イオンや活性酸素を含有する電池作用水を、一定時間だけは確実に内部(特に貯留空間内319)に滞留してその電池作用水の濃度を一定濃度以上に維持する。換言すれば、貯留空間319等が電池作用水除放空間または電池作用水濃度維持空間として機能する。即ち、内側卑金属体312と内側貴金属体314との間の内側隙間空間の電池作用水中の金属イオンや活性酸素は、内側卑金属体312と内側貴金属体614との間の内側隙間空間を流動する分だけ減少して電池作用水が希釈されるが、通水孔314aを介してその一部が貯留空間319内に滞留し、かつ、同貯留空間319で外側卑金属体316と外側貴金属体318との間での電池作用水中の金属イオンや活性酸素が追加含有されて、当該(合計分の)電池作用水が内側卑金属体312と内側貴金属体314との間の内側隙間空間を経て吐水口303から吐出される。したがって、内側卑金属体312と内側貴金属体314との間の内側隙間空間を流水が直接通過する場合のように短時間で電池作用水の全体が流出することはなく、常に金属イオンや活性酸素を一定濃度以上含有する状態の電池作用水が貯留空間319や基部310内部の上端側の空間内に残留する。なお、電池作用水中の金属イオンや活性酸素の必要最低限濃度は、流水と共に内側卑金属体312と内側貴金属体314との間の内側隙間空間内、及び、外側卑金属体616と外側貴金属体318との間の外側隙間空間内に侵入する細菌や真菌等の微生物を確実に殺菌・滅菌して、内側卑金属体312や内側貴金属体314の表面、及び、外側卑金属体316や外側貴金属体318の表面に微生物被膜が形成されるのを確実に防止することができる濃度とする。なお、内側貴金属体314及び外側貴金属体318をステンレス鋼等の微生物被膜の形成が困難な材料により形成した場合は、電池作用水中の金属イオンや活性酸素の必要最低限濃度は、内側卑金属体312及び外側卑金属体316のみを考慮対象とし、内側卑金属体312及び外側卑金属体316の表面に微生物被膜が形成されるのを確実に防止することができる濃度とすればよい。したがって、内側貴金属体314の通水孔314aの数及び孔径、並びに、貯留空間319の容積は、使用対象の吐水キャップの単位時間当り流水量や単位量当り微生物含有量等を考慮して、上記条件を維持できるような値に設定する。
【0121】
図22(b)に示すように、第2の例の殺菌ユニット310Aは、第1の例の殺菌ユニット310と同様の基本的構成であるが、内側卑金属体312、第1内側隔離網筒313、内側貴金属体614、第2内側隔離網筒、外側貴金属体318Aの構成が異なっている。即ち、外側貴金属体318Aは、外側貴金属体318より少ない数の通水孔318aを形成したもの、或いは、通水孔318aを全く形成しない単純円筒状としてもよい。この第2の例の場合も、第1の例と同様の作用効果を発揮する。
【0122】
実施の形態1〜9の別例の水環境電池
以上、実施の形態1〜実施の形態9の水環境電池は、いずれも、乾電池式水環境電池である。図23に示すように、本発明の実施の形態1〜9に係る水環境電池は、各種の構成として実施することができる。
【0123】
別例1〜3:異種金属体の組合わせ態様(シングルタイプ)
本発明の水用殺菌装置は、上記実施の形態のように殺菌ユニット10等を給水装置等に内装する態様のほか、殺菌ユニット単体で殺菌装置として使用することも無論可能である。例えば、図23(a)に示すように、殺菌ユニット410は、菊型柱状の卑金属体412(第1の反応体)の外側に円筒網状の隔離筒網413(間隔保持部材)を介して円筒状の貴金属体414(第2の反応体)を同軸状に外装した丸型構成とし、単体で殺菌装置とすることができる(実施例1)。また、図23(b)に示すように、殺菌ユニット510は、円柱状の卑金属体512(第1の反応体)の外側に円筒網状の隔離筒網513(間隔保持部材)を介して菊型筒状の貴金属体514(第2の反応体)を同軸状に外装した丸型構成とし、単体で殺菌装置とすることができる(実施例2)。更に、図23(c)に示すように、殺菌ユニット610は、矩形柱状の卑金属体612(第1の反応体)の外側に矩形筒網状の隔離筒網613(間隔保持部材)を介して矩形筒状の貴金属体614(第2の反応体)を同軸状に外装した角型構成とし、単体で殺菌装置とすることができる(実施例3)。
【0124】
実施の形態1〜9の別例の卑金属体
図24に示すように、本発明の実施の形態1〜9に係る水環境電池は、各種の卑金属体として実施することができる。即ち、本発明の水用殺菌装置で使用する卑金属体は、上記実施の形態のもの以外に各種構成とすることができるが、一般的な通水環境・流水環境や貯水環境では、図24(a)に示す円柱状タイプの卑金属体712を使用することが好ましく、その外周面712aから金属イオンを溶出する(実施例5)。また、水栓の吐水口等の流量確保と整流効果が要求される通水環境では、図24(b)に示す菊型柱状タイプの卑金属体722を使用することが好ましく、その外周面722aから金属イオンを溶出する(実施例6)。なお、この場合、卑金属体722は、菊型柱状の基部722xの上端側(吐水口内の上端等、上流側の端部)に、上側に向かって縮径するテーパー状の頭部722yを一体形成し、頭部722yの外周面722bによって向かってくる水流の整流を一層円滑に行うようにしてもよい。以上の柱状をなす卑金属体712,722は、図23等に示すシングルタイプ(2層構造)の殺菌ユニットに使用される。また、ダブルタイプ(3層構造以上)の殺菌ユニットでは、図24(c)に示す円筒状の卑金属体732を使用することが好ましく、その内周面及び外周面の両方から金属イオンを溶出する(実施例7)。なお、図24(d)に示すように、角型(六角断面等)の卑金属体742を使用し、その外面742aから金属イオンを溶出するようにしてもよい(実施例8)。
【0125】
実施の形態1〜9の別例の貴金属体
図25に示すように、本発明の実施の形態1〜9に係る水環境電池は、各種の貴金属体として実施することができる。即ち、本発明の水用殺菌装置で使用する貴金属体は、上記実施の形態のもの以外に各種構成とすることができるが、一般的な通水環境・流水環境や貯水環境では、図25(a)に示す円筒状タイプの貴金属体714を使用することが好ましい(実施例9)。また、上記ダブルタイプ等の二層以上の隙間空間を設ける殺菌ユニットの場合、図25(b)に示すスリット付の円筒状をなす貴金属体724を使用し、スリット724aを介して内側の卑金属体への通水を促進することもできる(実施例10)。また、上記ダブルタイプ等の二層以上の隙間空間を設ける殺菌ユニットの場合、図25(c)に示す円形小孔付の円筒状をなす貴金属体734を使用し、多数の小孔734aを介して内側の卑金属体への通水を促進したり(実施例11)、図25(d)に示す螺旋状乃至コイルスプリング状の円筒状をなす貴金属体744を使用し、螺旋間の隙間744aを介して内側の卑金属体への通水を促進したり(実施例12)、図25(e)に示す網状の円筒状をなす貴金属体754を使用し、多数の網目754aを介して内側の卑金属体への通水を促進したりすることができる(実施例13)。更に、水栓の吐水口等の流量確保と整流効果が要求される通水環境では、図25(f)に示すリブ付円筒状をなす貴金属体764を使用し、周方向に一定間隔で設けた湾曲リブ764a間に形成される凹溝764bや、湾曲リブ764aの内面側に形成される同一曲率の小凹溝764cを介して流量確保や整流効果を発揮することもできるが(実施例14)、好ましくは、図25(g)に示す菊型筒状をなす貴金属体774を使用し、その内外の周方向に一定間隔で設けられる凹溝を介して流量確保や整流効果を発揮するようにする(実施例15)。なお、図25(h)に示すように、角型(六角断面等)の貴金属体784を使用してもよい(実施例16)。
【0126】
実施の形態1〜9の内部ユニット
本発明の実施の形態1〜9に係る水環境電池の内部ユニット(卑金属体、貴金属体及び間隔保持部材)は、図26に示す内部ユニットの構成(特に、隔離網の構成)とすることができる。即ち、本発明の水用殺菌装置は、上記のように、殺菌ユニット単体で殺菌装置として使用することができる、図26に示すように、殺菌ユニット810は、上記実施の形態の場合と同様に、小孔811aを有する円盤網状の上側隔離網板811(隔離部材)、円柱状の卑金属体812(第1の反応体)、小孔813aを有する円筒網状の内側隔離網筒813(間隔保持部材)、円筒状の貴金属体814(第2の反応体)、小孔815aを有する円筒網状の外側隔離網筒815(隔離部材)及び小孔816aを有する円盤網状の下側隔離網板816(隔離部材)とから構成することができる。一方、内側隔離網筒813は、上記支持線等の代わりに、網を構成する線状部の交差部の内面及び外面に、それぞれ、半球状の突起からなる支持点813bを一体形成し、内側の卑金属体812の外周面及び外側の貴金属体814の内周面をそれぞれ点接触により支持するようになっている。特に、図26(c)及び(d)に示すように、支持点813b間には十分な流水用の隙間が形成され、殺菌ユニット810の卑金属体812と貴金属体814との間の隙間空間に進入する水が、非常に円滑に流動することが確認できる。また、殺菌ユニット810では、外側隔離網筒815の内周面にも、網を構成する線状部の交差部に半球状の突起からなる支持点815bを一体形成し、内側の貴金属体814の外周面を点接触により支持するようにしている。
【0127】
実施の形態1〜9の第1の別例の内部ユニット
図27〜図28に示すように、本発明の実施の形態1〜9に係る水環境電池は、上記と異なる内部ユニット910の構成、特に、その間隔保持部材を異なる構成(第1の別例)とすることができる。詳細には、水環境電池は、円筒状の卑金属体911の内外に、対応する円筒状をなす2個の貴金属体912,913を配置する3層構造とした内部ユニット910に具体化する場合において、それらを前記所定隙間空間を置いて離間配置するための間隔保持部材914を、小棒状として構成している。間隔保持部材914は、卑金属体911の軸方向(長さ方向)の両端部において、円周方向に所定角度間隔(図示の例では120度の一定角度間隔)を置いた位置に、それぞれ、卑金属体911の厚さ方向に貫通するよう設けられている。即ち、内部ユニット910の一端部及び他端部において、それぞれ、3本ずつの間隔保持部材914が配設されている。各間隔保持部材914は、その両端部が卑金属911の内周面及び外周面からそれぞれ所定寸法(前記隙間空間の厚みと同一寸法)だけ突出するよう卑金属体911に取り付けられている。そして、かかる間隔保持部材914を配置した卑金属体911の内側及び外側に、それぞれ、貴金属体912,913を挿入または嵌合することにより、貴金属体912の外周面及び貴金属体913の内周面が、それぞれ、間隔保持部材914の内端及び外端に当接して支持され、卑金属体911の内周面と内側の貴金属体912の外周面との間、及び、卑金属体911の外周面と外側の貴金属体913の内周面との間に、それぞれ、前記隙間空間が形成される。この隙間空間は、小棒状の間隔保持部材914が存在する部位以外の全ての卑金属体911及び貴金属体912,913の内周面及び外周面を、前記卑金属体911の反応面及び貴金属体912,913の対向面として使用することができ、より一層大きな電池作用を発揮することができる。
【0128】
実施の形態1〜9の第2の別例の内部ユニット
図29〜図30に示すように、本発明の実施の形態1〜9に係る水環境電池は、上記と異なる内部ユニット1010の構成、特に、その間隔保持部材を異なる構成(第2の別例)とすることができる。詳細には、水環境電池は、円柱状の卑金属体1011の外側に、対応する円筒状をなす1個の貴金属体1012を配置する2層構造とした内部ユニット1010に具体化する場合において、それらを前記所定隙間空間を置いて離間配置するための間隔保持部材1014を、小棒状として構成している。間隔保持部材1014は、卑金属体1011の軸方向(長さ方向)の両端部において、円周方向に所定角度間隔(図示の例では120度の一定角度間隔)を置いた位置に、それぞれ、卑金属体1011の厚さ方向に貫通するよう設けられている。即ち、内部ユニット1010の一端部及び他端部において、それぞれ、3本ずつの間隔保持部材1014が配設されている。各間隔保持部材1014は、その先端部(内端部)が卑金属体1011の外周面から所定寸法(前記隙間空間の厚みと同一寸法)だけ突出するよう卑金属体1011に取り付けられている。そして、かかる間隔保持部材1014を配置した卑金属体1011の外側に、貴金属体1012を嵌合することにより、貴金属体1012の内周面が間隔保持部材1011の先端に当接して支持され、卑金属体1011の外周面と貴金属体1012の内周面との間に前記隙間空間が形成される。この隙間空間は、小棒状の間隔保持部材1014が存在する部位以外の全ての卑金属体1011及び貴金属体1012の外周面及び内周面を、前記卑金属体1011の反応面及び貴金属体1012の対向面として使用することができ、より一層大きな電池作用を発揮することができる。
【0129】
乾電池型水環境電池のまとめ
以上、実施の形態1〜9に係る水環境電池は、乾電池と同様に陽極及び陰極を同心状に積層配置するタイプ(かかるタイプの水環境電池を、「乾電池型水環境電池」という。)である。
【0130】
かかる乾電池型水環境電池について、殺菌効果確認試験及び変色確認試験を行った結果、ZnMg合金柱とステンレスパイプまたはチタンパイプの組み合わせから構成される殺菌ユニットの場合、筒状のZnMg合金は、ステンレスパイプまたはチタンパイプの表面から遠く離れた面、即ち、電池反応が弱くなるステンレスパイプまたはチタンパイプとの対向面と反対側の面(ステンレスパイプ等を外周面側に配置した場合のZnMg合金筒の内周面、及び、ステンレスパイプ等を内周面側に配置した場合のZnMg合金筒の外周面)では、正極であるステンレスパイプ等との間での水環境電池作用が完全に妨げられ、亜鉛・マグネシウム合金を形成しているマグネシウムがイオン化できずに単に酸化腐食されて酸化マグネシウムとなり、その酸化マグネシウムによりZnMg合金筒の表面全体が黒く変色されるものと考えられる。即ち、この酸化マグネシウムは、マグネシウムと亜鉛ではマグネシウムの方がイオン化傾向が大であり亜鉛に対してマグネシウムが負極となるため、マグネシウムと亜鉛との間で局部電池が形成されて腐食電流が発生し、負極となるマグネシウムが腐食されて出来た反応生成物の酸化マグネシウムと思われる。要するに、上記変色確認試験1〜2の試験結果から、ZnMg合金筒表面の黒変の原因は、電池反応の弱い箇所のMgがイオンとして溶出できず、酸化マグネシウムの状態で表面を覆っているためであると判断できる。
【0131】
また、試験結果から、亜鉛のみからなる卑金属体(亜鉛柱)では殺菌効果が弱く、亜鉛にマグネシウムを少量加えることで卑金属体の殺菌効果が格段に向上することが確認されたが、亜鉛マグネシウム合金製の卑金属体に貴金属体と対向する面と反対側の面では、その表面が黒く変色するため、このままでは水が黒く濁り、水質の点でかかる黒変を確実に抑止する必要があることが判明した。また、第1の試験体のZnMg合金パイプの上端面、第2の試験体のZnMg合金パイプの上端面、第3の試験体のZnMg合金柱の上端面及び第4の試験体のZnMg合金柱の上端面は、いずれも、黒く変色していないことから、正極側のステンレスパイプ等の表面と対向していない面でも、ステンレスパイプ等の表面と隣接する面であれば、ステンレスパイプ等との対向面と正反対となる面でない限り、それらの下端面と貴金属体であるステンレスパイプ等の表面との間での電池作用が完全には妨げられず、ZnMg合金の表面からマグネシウムがイオン化して溶出し、表面の黒変を抑止するものと考えられる。更に、第3及び第4の試験体のように、ステンレスパイプ等との表面と対向する面では、ZnMg合金の表面からマグネシウムが効率よくイオン化して溶出し、表面の黒変を確実に抑止するものと考えられる。
【0132】
上記に着目し、本発明者らは、上記実施の形態のように、卑金属体としてZnMg合金を最も内側に配置する場合はZnMg合金柱として、貴金属体の表面から遠く離間する部分がないようにし、また、ZnMg合金を筒状とする場合は、その内外に貴金属体を配置して、同様に貴金属体の表面から遠く離間する部分がないようにしている。
【0133】
正・負二極間電池反応は、必ずしも一定の力が働く訳ではなく、例えば、正・負二極の電極が極端に近い箇所があれば、そこに強い局部電池が発生して激しく反応し、負極側では局部腐食が発生する。また、そこに水流が加わればキャビテーション腐食が発生し、素材が渦巻き状に浸食される。他方、正極側の遠く離れた電池反応の弱い箇所でも、使用する金属、水質等の条件次第で腐食が始まる。金属が腐食されると金属は殆どの場合、イオンとして溶解せず、粒状・粉状となって水の中に分散し、水が濁り、味・臭い・色度が悪くなる。よって、正・負二極間に使用する金属の選定は重要であるが、それ以上に正・負二極間で局部電池を発生させない適度な間隔を均一に保持し、有効に電池反応を応用する事が最大の条件となる。このため、本発明では、上記のように、間隔保持部材により卑金属体と貴金属体との間の隙間空間を全体にわたって均一な厚みとしている。また、特に卑金属体としてのZnMg合金が他の金属体から確実に隔離されて電気絶縁され、かつ、他の部材(金属は無論のこと、樹脂やガラス等の電気絶縁体も含む)と面接触しないよう、卑金属体や貴金属体の外側の全体を隔離部材に完全に覆うと共に、少なくとも卑金属体との接触は線接触または点接触となるようにしている。
【0134】
実施の形態10
図31〜図33に示すように、本発明の実施の形態10に係る水環境電池は、水栓の吐水口等に着脱自在に装着される並列式乾電池形態の水環境電池(多板式電池型水環境電池)1100に具体化される。実施の形態10の水環境電池1100は、略円筒状のハウジング1101と、ハウジング1101の軸方向一端(流入端)の円形開口を着脱自在に水密に閉塞する円盤状の蓋部102を備える。蓋部1102の中央には円形の装着孔1102aが貫通形成されている。また、ハウジング1101の軸方向他端は円盤状の底部1103により閉塞されている。ハウジング1101の内部空間には殺菌ユニット1110が内装されている。
【0135】
殺菌ユニット1110は、ハウジング1101の軸心に沿って延びるようハウジング1101の蓋部1102と底部1103との間に介装して固定保持される円筒状の支持軸1111を有している。支持軸1111はステンレス合金等からなり、その先端が蓋部1102の装着孔1102aに水密に密嵌して着脱自在に保持される。支持軸1111には、軸方向に所定間隔を置いて、複数の小径の円形孔である通水孔1111aが厚さ方向に貫通形成されている。また、殺菌ユニット1110は、支持軸1111上に、多数枚の(支持軸1111の外径に対応する内径の円形孔を有する)リング板状の卑金属体1112と多数枚の(支持軸1111の外径に対応する内径の円形孔を有する)円盤状の貴金属体1114とを外装し、かつ、それらを相互に(1枚ずつ互い違いに)重ね合わせて配置すると共に、各対の卑金属体1112と貴金属体1114の間に間隔保持部材としての微小肉厚の円盤網板状の隔離網板1113を介装してそれらを電気的に絶縁すると共に、それらを面全体で互いに平行に対向させ、それらの間に微小隙間空間の円盤状の空間を形成して、各対の卑金属体1112と貴金属体1114との間で上記のような機序により電池作用水が発生するようにしている。また、卑金属体1112と貴金属体1114の内周面には網筒状の内側隔離網筒1115が外装され、卑金属体1112及び貴金属体1114の内周面と支持軸1111の外周面とを電気的に絶縁している。更に、卑金属体1112と貴金属体1114の外周面には網筒状の外側隔離網筒1116が外装され、卑金属体1112及び貴金属体1114の外周面とハウジング1101の内周面とを電気的に絶縁している。なお、説明の便宜上、図31及び図32には内側隔離網筒1115は図示しておらず、また、卑金属体1112、隔離網板1113及び貴金属体1114も一部の枚数しか図示していない。
【0136】
ここで、貴金属体1114の外径は外側隔離網筒1116の内径より若干小径とされて外側隔離網筒1116の内周面との間に若干の隙間空間1118aを形成すると共に、卑金属体1112の外径は貴金属体1114の外径より更に所定寸法だけ小径とされて外側隔離網筒1116の内周面との間に更に大きな寸法の隙間空間1118bを形成している。卑金属体1114の外周の隙間空間1118aと貴金属体1114の外周の隙間空間1118bとにより、軸方向に多段段差状となる略円筒状の貯留空間1118が、ハウジング1101の内周面側に形成される。なお、外側隔離網筒1116部分も、その多数の網目部分の空間により、貯留空間1118の一部となる。
【0137】
本実施の形態の水環境電池では、支持軸1111の一端を配管等の水源に接続してその一端開口により形成される円形状の流入出口1111bから内部に水源の水を流入させると、その水は、支持軸1111内の通水路1111cを流れて通水孔1111aから卑金属体1112と貴金属体1114との間の円盤状の隙間空間内に流出し、同隙間空間で電池作用水とされた後、卑金属体1112及び貴金属体1114の外周の貯留空間1119に一定時間滞留されて、電池作用水中の金属イオンや活性酸素の濃度を必要値以上に常に保持すると共に、その電池作用水の一部を、卑金属体1112と貴金属体1114との間の円盤状の隙間空間から通水孔1111aを介して支持軸1111の内部に還流し、支持軸1111の通水路1111cを再度経て、支持軸1111の流入出口1111bから水源へと還流する。したがって、本実施の形態の水環境電池も、上記実施の形態の単純乾電池型の水環境電池と同様の作用効果を発揮する。
【0138】
実施の形態11
図34及び図35に示すように、本発明の実施の形態11に係る水環境電池は、実施の形態10の別例となるものであり、水栓の吐水口等に着脱自在に装着される並列式乾電池形態の水環境電池(多板式電池型水環境電池)1200に具体化される。詳細には、水環境電池1200は、円筒状のハウジング1201の一端の円形開口に対して円形蓋1202を着脱自在に取り付けることにより水密に閉塞し、円形蓋1202の中心に円筒状の導入部1203を形成すると共に、ハウジング1201の他端の閉塞端の中心に円筒状の導出部1204を形成している。そして、ハウジング1201内に、単純円盤状の貴金属体1212及び卑金属体1214を、それぞれ、複数枚づつ重ねて収容すると共に、それらの間に単純ネット円盤状の間隔保持部材1213を各々介装して、前記隙間空間を形成している。実施の形態11の構成は、全体の構成を単純化することができる。なお、実施の形態10及び11の多板式電池型水環境電池1100,1200は、(引用井戸水等の)給水栓の吐水パイプの吐水口等に取り付けて使用することもでき、この場合、大面積の卑金属体1112,1212及び貴金属体1114,1214間での大規模な電池反応により、より効果的に殺菌等の諸機能を発揮することができる。
【0139】
実施の形態12
図36に示すように、本発明の実施の形態12に係る水環境電池は、配管途中に着脱自在に装着される(金属系抗菌剤と光触媒との)ハイブリッド式の水環境電池に具体化される。実施の形態12の水環境電池は、配管途中に着脱自在に装着される接続管1300と、接続管1300に固着されて接続管1300内の水を一端流入して電池作用水とした後に接続管1300内に再度還流する殺菌ユニット1310とを備えている。
【0140】
接続管1300は、円筒状の基部1301と、基部1301の一端(上流端)に一体形成される水流入用の流入口1302aを有する流入部1302と、基部1301の他端(下流端)に一体形成される水流出用の流出口1303aを有する流出部1303とを備えている。また、接続管1300は、基部1301の上面側の中央に短円筒状の接続部1304を上方に突出して一体形成している。更に、基部1301は、その内部に、傾斜壁状の導入部1305を一体形成し、流入部1302からの流入水を上方の接続部1304に導入するようになっている。また、基部1301は、その内部に、傾斜壁状の導出部1306を一体形成し、その導出孔1306aを介して、殺菌ユニット1310からの流出水(電池作用水を含む水)を流出部1303に導出するようになっている。なお、接続管1300は、流入部1302及び流出部1303を介して配管途中に着脱自在に接続される。
【0141】
殺菌ユニット1310は、円筒状の基部1311を備え、基部1311の下面から同軸状に下方に突出するよう短円筒状の装着部1312を基部1311に一体形成している。装着部1312は内周面に雌螺子を形成し、その雌螺子を前記配管部1300の接続部1304の外周面の雄螺子に螺合して、接続部1304に装着部1312を水密に連結するようになっている。また、殺菌ユニット1310は、基部1312の上端にアクリル樹脂等の透明樹脂やガラス等の透明材料からなる略円筒状のハウジング1313を固着している。ハウジング1313は下端全体を円形開口として開放すると共に上端部を半球状とした円筒状をなし、上端部の内周面を半球状の湾曲面1313aとしている。基部1311の内周面には導水部1314が水密に挿着して固定保持されている。導水部1314の上端面はハウジング1313内に露出している。また、導水部1314は、下端面に導入口1314aを形成し、配管部1300の接続部1304からの水を導入口1314aから内部に導入するようになっている。また、導水部1314は、導入口1314aに連続して所定の角度で上方に傾斜しつつ螺旋状に延びる螺旋通路状の導水路1314bを内部に形成すると共に、導水路1314bの先端を導水部1314の上面の(凹レンズ状の)湾曲面1314cで開口している。これにより、配管部1300からの水が接続部1304から導水部1314の導水路1314bを経てハウジング1313内に放出されるが、このとき、ハウジング1313内への流入水は、導水路1313bの傾斜角度乃至螺旋角度に対応する傾斜角度の螺旋流となってハウジング1313内を上方に向かって流れる。一方、導水部1314の中央には断面円形の挿通孔が軸方向に貫通形成され、導水部1314の挿通孔には、ステンレス合金からなる円筒状の導水筒1315の下端部が水密に挿着されている。導水筒1315の上端はハウジング1313の上部の湾曲面1313aの中央に水密に当接し、下端部は導水部1314の下面から基部1311の下端を経て配管部1300の前記導出部1306まで延び、下端が導出孔1306aに水密に嵌合されている。そして、ハウジング1313内の螺旋水流が導水筒1315上端の流入孔1315aから導水筒1315内部を流れ、下端の円形開口状の導出孔1315bから導水部1306の導出孔1306aを経て、配管部1300の流出部1303に流出するようになっている。
【0142】
ハウジング1313の内部空間(その内周面と導出筒1315との間の空間)には、小球状の二酸化チタン製の光触媒体1321、小球状のステンレス製の貴金属体1322、小球状のマグネシウム製の卑金属体1323、小球状の亜鉛製の卑金属体1324、小球状の銀製の貴金属体1325が、それぞれ所定個数ずつ(多数個)収容されている。これら光触媒体1321及び貴金属体1322,1325及び卑金属体1323,1323は、ハウジング1313内の螺旋水流により螺旋状にほぼ均一間隔で分散されながら互いに衝突及び分離を繰り返し、貴金属体1322,1325及び卑金属体1323,1323が、衝突直前の微小間隔での対向時(または衝突時)に、イオン化傾向の差により、上記実施の形態の場合と同様の電池反応を形成し、それらの間で電池作用水を生成すると共に、光触媒体1321が光触媒効果を発揮する。また、卑金属体1323,1323は、ステンレスからなる導出筒1315の外面との間でも電池反応を形成し、それらの間で電池作用水を生成する。そして、生成された電池作用水が、導出筒1315から接続管1300へと還流され、上記実施の形態と同様の作用効果を発揮する。
【0143】
実施の形態13
図37に示すように、本発明の実施の形態13に係る水環境電池は、多段式アダプタとして、水栓の吐水パイプ2の途中に介装して装着される(乾電池型水環境電池と光触媒装置との)ハイブリッド式の水環境電池に具体化される。実施の形態13の水環境電池1510は、断面円筒形状の筒状をなすアクリル樹脂等の透明樹脂やガラス等の透明材料からなるハウジング1511を備え、ハウジング1511の基端の導入部1512を吐水パイプ2に対して水密に固着している。また、ハウジング1511は基端の導入部1512を開口として開放すると共に、先端の流出部1513の中央に円形の挿通孔を形成とした筒状をなしている。ハウジング1511の基端側の半分程度の内部空間には、円柱状の卑金属体1521、対応する円筒網状の間隔保持部材1522及び対応する円筒状の貴金属体1523からなる内部ユニット(殺菌ユニット)が同軸状に収容されている。また、ハウジング1511の中央部の内周面には導水部1414が水密に挿着して固定保持されている。導水部1414は、基端面に導入口1414aを形成し、吐水パイプ2から前記内部ユニットを経て来た水を内部に導入するようになっている。また、導水部1414は、導入口1414aに連続して所定の角度で前方に傾斜しつつ螺旋状に延びる螺旋通路状の導水路1414cを内部に形成すると共に、導水路1414cの先端を導水部1414の先端面で開口1414bとして開放しているこれにより、ハウジング1611内への流入水は、導水部1414において、導水路1414cの傾斜角度乃至螺旋角度に対応する傾斜角度の螺旋流となって、次段(下流側)の光触媒装置へと向かって流れ、光触媒装置内でも螺旋流を維持したまま、ハウジング1511の先端の流出部1513から吐水パイプ2の吐水口側へと流出する。具体的には、前記光触媒装置は、ハウジング1511の先端側の半分程度の円筒状の部分として設けられ、その中心には軸方向に延びる案内筒1415を一体的に設け、その内周面1416との間に螺旋流促進用の円筒状の空間を形成している。また、光触媒装置の内部空間には、前記光触媒体1321、貴金属体1322、卑金属体1323、卑金属体1324、貴金属体1325と同様の反応体(半球状)が、それぞれ所定個数ずつ(多数個)収容されている。水栓のハンドルを操作して通水すると、これら反応体は、光触媒装置内の螺旋水流により螺旋状にほぼ均一間隔で分散されながら互いに衝突及び分離を繰り返し、卑金属体及び貴金属体が、衝突直前の微小間隔での対向時(または衝突時)に、イオン化傾向の差により、上記実施の形態の場合と同様の電池反応を形成し、それらの間で電池作用水を生成すると共に、光触媒体が光触媒反応を生起する。そして、生成された電池作用水と光触媒反応水との混合水が、吐水パイプ1654から外部に導出されて吐出され、上記実施の形態と同様の作用効果を発揮する。
【0144】
実施の形態14
図38及び図39に示すように、本発明の実施の形態14に係る水環境電池は、貯水浄化用水処理装置(貯水中浸漬タイプの水環境電池)としてのフロート式水処理装置1600に具体化される。詳細には、貯水浄化用水処理装置とは、貯水中に浸漬して使用するタイプのものであり、フロート式水処理装置1600は、図38に示すように、中空半球状の上側ケース1601と(上側ケース1601と同一の)中空半球状をなす下側ケース1602とを分割自在に嵌合して組み立てて球状の容器を構成し、当該容器1601,1602が回転自在となるよう、上側ケース1601と下側ケース1602の連結部分(それらの境界部の帯状部分)において円周方向に180度間隔を置いた位置(容器1601,1602の回転軸上の位置)の2点に、半円弧棒状の連結部1603の両端を枢着している。また、連結部1603の中央部は、球状のフロート1610の小さい半円弧棒状の連結部1611に対して紐状の連結体1620により連結されている。更に、容器を構成する上側ケース1601と下側ケース1602には、それぞれ、スリット1601a及び1602aが多数形成され、その内部と外部との間では通水自在になっている。また、かかる容器1601,1602の中空の内部空間は、(中心部分以外の部分を区画する)隔壁1605により複数室に区画され、その区画された内部空間には、小球状の卑金属体1631、小球状の貴金属体1632、小球状の光触媒体1633が、それぞれ、複数個乃至多数個収納され、連結部1603を介した容器1601,1602の回転により、内部で転動して互いに接触・衝突するようになっている。なお、卑金属体1631は上記ZnMg合金等からなり、貴金属体1632は上記ステンレス鋼等からなり、光触媒体1633は光触媒活性物質としての酸化チタン(TiO)等からなる。
【0145】
そして、フロート式水処理装置1600は、例えば、風呂用フロート式水処理装置として適用した場合、浴槽内に貯留された貯水内に投入浸漬すると、その貯水が、上側ケース1601及び下側ケース1602のスリット1601a,1602aから内部空間に浸入する。そして、浸入した貯水の一部が当該内部空間に一定時間滞留する。このとき、卑金属体1631と貴金属体1632との間でのイオン化傾向の差による電池作用によって、卑金属体1631の外周面から金属イオン(亜鉛イオン及びマグネシウムイオン)が溶出され、また、活性酸素が発生し、それらが水中に溶出する。また、光触媒体1633が光を吸収することによって強力な酸化作用を発揮する。これにより、貯水が処理水(金属イオン及び活性酸素が溶存すると共に光触媒による酸化処理がなされた機能水)となり、一定時間経過後、その処理水が、上側ケース1601及び下側ケース1602のスリット1601a,1602aから貯水中に放出され、上記のような殺菌等の諸機能を発揮すると共に、更に、光触媒体1633による有機物分解機能に基づく消臭機能等の追加機能を発揮することができる。
【0146】
なお、貯水浄化用水処理装置は、上記浴槽水貯水浄化用水処理装置以外に、魚類生鮮保持用水処理装置,赤潮用水処理装置,トイレタンク用水処理装置は、それぞれ、その用途が前記風呂用フロート式水処理装置と異なるが、構造及び機能は同様であるため、構造及び機能の詳細な説明は省略する。即ち、まず、赤潮用水処理装置は、例えば、上記風呂用フロート式水処理装置を浄化対象となる地域の河川等(河川、海、運河、湖沼等)に直接又は河川等の底に設けた収容の溝内に載置することで、本赤潮用水処理装置内を通過して生成された処理水を、水中に放出して、その処理水が備える上記殺菌機能により、プランクトンの異常増殖による赤潮を抑制する。また、トイレタンク用水処理装置は、例えば、上記風呂用フロート式水処理装置をトイレタンク内に貯留された貯水中に浸漬することで、本トイレタンク用水処理装置内を通過して生成された処理水を、当該貯水中に放出して、その処理水が備える上記殺菌機能により、トイレタンクの内壁に発生するカビの除去・抑制等を行い、また、当該貯水をトイレ便器に流して、その処理水が備える上記殺菌機能により、トイレ便器の内壁に発生するカビの除去・抑制等を行う。また、魚類生鮮保持用水処理装置は、例えば、上記風呂用フロート式水処理装置を魚類用水槽内に貯留された貯水中に浸漬することで、本魚類生鮮保持用水処理装置内を通過して生成された処理水を当該貯水中に放出して、その処理水が備える上記殺菌機能により、流水浄化用水処理装置の機能と同様に、魚に付着する微生物の駆除・防除等を行い、また、腐敗や異臭の発生を防止する。
【0147】
なお、実施の形態14の別例として、図39(b)に示すように、上側ケース1601及び下側ケース1602を嵌合した容器を包囲する網状の外側ケース1651を追加して、その上端の連結部1652を連結体1620に連結してもよい。
【0148】
実施の形態15
図40及び図41に示すように、本発明の実施の形態15に係る水環境電池としての水環境電池ユニット1720は、所定高さを有する水環境電池1725,1726と当該水環境電池1725,1726を収容する電気絶縁性材料からなる収容体1721,1722とを含む。詳細には、水環境電池ユニット1720の収容体1721,1722は、第1の収容体半部1721と第2の収容体半部1722とからなる。第1の収容体半部1721は、一端側の頂面を湾曲状(略半球状)とすると共に他端を円形の開口とした中空の略円筒状をなしている。第1の収容体半部1721の周面には、一定角度間隔で複数の直線状の通水スリット1721aが、第1の収容体半部1721の周壁の厚さ方向に貫通形成され、その内外の空間を連通している。同様に、第2の収容体半部1722は、一端側の頂面を湾曲状(略半球状)とすると共に他端を円形の開口とした中空の略円筒状をなしている。第2の収容体半部1722は第1の収容体半部1721より長寸(2〜3倍程度の長さ)とされている。第2の収容体半部1722の周面には、一定角度間隔で複数の直線状の通水スリット1722aが、第2の収容体半部1722の周壁の厚さ方向に貫通形成され、その内外の空間を連通している。そして、第1の収容体半部1721の他端部の内周側に形成した雌螺子1721bに第2の収容体半部1722の他端部の外周側に形成した雄螺子1722bを螺入または螺退することにより、第1の収容体半部1721と第2の収容体半部1722とを互いに連結して組み立て、また、分解することができるようになっている。第1の収容体半部1721と第2の収容体半部1722とを互いに連結して組み立てた状態で、収容体1721,1722の内部には、水環境電池1725,1726を固定的に収容保持するための円筒状の収容空間が形成され、同収容空間が、スリット1721a,1722aを介して外部空間が連通する。
【0149】
一方、水環境電池1725,1726は、卑金属体1725と貴金属体1726とからなる。卑金属体1725は、所定直径の単純円柱状をなしている。貴金属体1726は、所定直径のスリット付円筒状をなし、卑金属体1725と同一長さ延びている。貴金属体1725は、複数のスリット(長孔)1725aを厚さ方向に貫通形成したスリット付円筒状である。例えば、第1の収容体半部1721及び第2の収容体半部1722の各8個のスリット1721a,1722aに対応して、合計8個の長孔状のスリット1725aが貴金属体1725の円周方向に等角度間隔で配置され、それぞれ、軸方向に直線的に延びている。そして、水環境電池は、卑金属体1725の外側に貴金属体1726を一定(均一)の微小隙間空間を置いた状態で配置した状態で水中に浸漬することにより、卑金属体1725と貴金属体1726との間のイオン化傾向の差により、卑金属体25の外周面と貴金属体26の対向面(スリット1725a以外の部分)との間の微小隙間空間に存在する水を媒体として、卑金属体1725と貴金属体1726との間で電池反応が発生する。
【0150】
第1の収容体半部1721の内部底面(湾曲上の頂面部の内底面)には、短リング状の係止突起1721cが一体形成されている。係止突起1721cは、同一肉厚で円周方向に延びる円形の短リング状をなしている。係止突起1721cの肉厚は、収容体1721,1722に収容したときの卑金属体1725と貴金属体1726との間に形成すべき前記一定(均一)の微小隙間空間と同一寸法に設定されている。同様に、第2の収容体半部1722の内部底面(湾曲上の頂面部の内底面)には、短リング状の係止突起1722cが一体形成されている。係止突起1722cは、同一肉厚で円周方向に延びる円形の短リング状をなしている。係止突起1722cの肉厚は、収容体1721,1722に収容したときの卑金属体1725と貴金属体1726との間に形成すべき前記一定(均一)の微小隙間空間と同一寸法に設定されている。
【0151】
第1の収容体半部1721の内部周面(収容空間部分の内周面)におけるスリット1721a以外の部分(スリット1721a間の部分)には、それぞれ、内周側を頂点とした断面略三角形状の当接保持部1721dが収容空間の中心に向かって突出するよう一体形成されている。同様に、第2の収容体半部1722の内部周面(収容空間部分の内周面)におけるスリット1722a以外の部分(スリット1722a間の部分)には、それぞれ、内周側を頂点とした断面略三角形状の当接保持部1722dが収容空間の中心に向かって突出するよう一体形成されている。これにより、収容体1721,1722内に水環境電池を収容したときに、貴金属体1726の外周面に当接保持部1721d,1722dの頂点が当接して、その稜線に沿って貴金属体1726を線的に支持すると共に、水環境電池とスリット1721a,1722aとの間での十分な水の流通空間を確保している。また、水環境電池側でも、貴金属体1726のスリット1726aにより、卑金属体1725と貴金属体1726の間の隙間空間と外部の水環境との間での十分水の流通空間を確保している。
【0152】
このように、前記係止突起21c及び係止突起22cは、協働して、卑金属体25及び貴金属体26間の隙間空間を固定的に一定に保持する間隔保持手段を構成する。本実施の形態では、水環境電池1725,1726を収容体1721,1722に収容するだけで、卑金属体1725と貴金属体1726との間の隙間空間を一定に保持して固定することができる。この場合、卑金属体1725の接触箇所としては、その外周面端部で係止突起1721a,1722aが円周方向に線状に接触するのみである(接触面として無視できる)ため、卑金属体1725の貴金属体1726との対向面の主要部分の全面(スリット1725aと対向する部分の全面)を電池作用に供することができる。また、貴金属体1726の接触箇所としても、その外周面で当接保持部1721d,1722dが線状に接触するのみである(接触面として無視できる)。したがって、本実施の形態の水環境電池は、卑金属体1725及び貴金属体1726の対向面間の寸法(隙間空間)が全面にわたって均一(同一)となり、対向面の各箇所が均一な電池作用部となり、対向面の全面で均一な電池作用を発生する。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の水環境電池は、上記のように、水道配管や水栓や配管部品等の通水中に通水可能に配置する装置、浄水器や活水器や浄活水器等の通水中に通水可能に配置する装置、散水器やスプリンクラー等の通水中に通水可能に配置する各種の水環境電池として具体化及び適用することができる。また、本発明の水環境電池は、上記のように、A)流水浄化用水処理装置とB)貯水浄化用水処理装置とに類別することができる。そして、流水浄化用水処理装置は、水栓の原水浄化用水処理装置,農業用水処理装置,製氷機用水処理装置,洗濯機用水処理装置,魚類生鮮保持用水処理装置等に適用することができる。また、貯水浄化用水処理装置は、赤潮用水処理装置,トイレタンク用水処理装置,風呂用フロート式水処理装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0154】
卑金属体(第1の反応体):1,15,112,212,216,312,316,412,512,612,712,722,732,742,812,911,1011,1114,1214,1323,1324,1631
内側隔離網筒(間隔保持部材):4,5,14,113,213,215,313,315,813,914,1013,1113,1213,
貴金属体(第2の反応体):2,3,11,114,214,218,314,318,414,514,614,413,513,613,714,724,734,744,754,764,774,784,814,912,913,1012,1112,1212,1322,1325,1632

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のイオン化傾向を有し、水中で金属イオン化して殺菌効果を発揮する第1の金属からなる筒状をなす第1の反応体と、
前記第1の金属より低いイオン化傾向を有する第2の金属からなり、前記第1の反応体の内部に同軸状に配置され、その外周面の全面が前記第1の反応体の内周面の全面に対向して配置される第2の反応体と、
前記第1の反応体及び第2の反応体を、全面にわたって互いに非接触状態となるよう、かつ、全体に均一となる小間隔の隙間空間を置いて互いに面的に対向するよう配置した状態で、互いに固定的に保持することにより、前記第1の反応体と第2の反応体とが直接的に電気的に導通しないようにして電気的に絶縁する電気絶縁体からなる間隔保持部材とを含み、
前記間隔保持部材は、小棒状をなし、一端部を前記第2の反応体の外周面から内部に埋設すると共に、他端部を前記第2の反応体の外周面から突出し、前記小棒状の間隔保持部材の前記他端部である突出部分の先端を前記第1の反応体の内周面に当接支持することにより、前記第1の反応体と前記第2の反応体との間に前記隙間空間を形成維持することを特徴とする水環境電池。
【請求項2】
前記第1の反応体は、イオン化傾向の近接している金属を合金化して形成したものであることを特徴とする請求項1記載の水環境電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2012−6011(P2012−6011A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176439(P2011−176439)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【分割の表示】特願2010−526575(P2010−526575)の分割
【原出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(509141707)
【Fターム(参考)】