水田作業機
【課題】 水田作業装置と機体との間に対地作業装置を備え、対地作業装置を昇降する昇降機構を水田作業装置の前側に備えた水田作業機において、農用供給体を供給部に供給する搬送ホースに、鋭角的に局部的に折れ曲がる部分が発生しないように構成する。
【解決手段】 水田作業装置5と機体との間に対地作業装置54を備えて、対地作業装置54を昇降する昇降機構73,78を水田作業装置5の前側に備える。農用供給体を貯留する貯留部と繰り出し部とを機体に備え、農用供給体を田面Gに供給する供給部16を備える。繰り出し部と供給部16とに亘って搬送ホース22を接続し、搬送ホース22をを昇降機構73,78の前側に配置する。
【解決手段】 水田作業装置5と機体との間に対地作業装置54を備えて、対地作業装置54を昇降する昇降機構73,78を水田作業装置5の前側に備える。農用供給体を貯留する貯留部と繰り出し部とを機体に備え、農用供給体を田面Gに供給する供給部16を備える。繰り出し部と供給部16とに亘って搬送ホース22を接続し、搬送ホース22をを昇降機構73,78の前側に配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の後部に水田作業装置(苗植付装置や直播装置等)を昇降自在に支持した水田作業機(乗用型田植機や乗用型直播機等)に関する。
【背景技術】
【0002】
水田作業機の一例である乗用型田植機では例えば特許文献1に開示されているように、機体の後部に苗植付装置(水田作業装置に相当)(特許文献1の図1及び図2の5)を昇降自在に支持し、整地装置(対地作業装置に相当)(特許文献1の図1,2,4の53)を、苗植付装置と機体との間に備えて、整地装置を昇降する昇降機構(特許文献1の図2,3,7の55,56,58)を、苗植付装置の前側に備えたものがある。これにより、整地装置により田面を整地しながら、苗植付装置による苗の植え付けを行うことができるのであり、昇降機構により整地装置の高さ(整地深さ)を変更することができる。
【0003】
特許文献1では、粉粒状の肥料(農用供給体に相当)を貯留するホッパー(貯留部に相当)(特許文献1の図1の12)と、ホッパーの肥料を繰り出す繰り出し部(特許文献1の図1の13)とを機体に備え、肥料を田面に供給する作溝器(供給部に相当)(特許文献1の図1及び図2の15)を苗植付装置に備えて、繰り出し部と作溝器とに亘って搬送ホース(特許文献1の図1及び図2の16)を接続している。これにより、ホッパーの肥料が繰り出し部によって繰り出され、搬送ホースを介して作溝器に供給されるのであり、苗植付装置による苗の植え付けに伴って、田面に肥料を供給することができる。
【0004】
乗用型田植機では一般に、一回の植付行程が終了して畦際に達すると、苗植付装置を田面から大きく上昇させて、畦際で旋回を行い、次に苗植付装置を田面に下降させながら次の植付行程に入る。このような苗植付装置の大きな昇降を行う為に、搬送ホースは自由に屈曲する可撓性を備えたものに構成されている。
このようなホッパー、繰り出し部、作溝器及び搬送ホースを備えた場合、特許文献1では、整地装置の昇降機構(特許文献1の図2の55,56,58)と苗のせ台(特許文献1の図2の10)との間に、搬送ホース(特許文献1の図2の16)を配置している。
【0005】
【特許文献1】特開2005−341881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、整地装置の昇降機構と苗のせ台との間に、搬送ホースを配置しているので、搬送ホースにおける整地装置の昇降機構と作溝器との間の部分は屈曲するように構成することができない(整地装置の昇降機構及び苗のせ台と搬送ホースとの干渉を避ける為)。整地装置の昇降機構の位置が比較的高い為、搬送ホースにおける整地装置の昇降機構と作溝器との間の部分が、比較的長いものとなっている。
これにより、繰り出し部から作溝器までの搬送ホースの全長において、屈曲できない部分(搬送ホースにおける整地装置の昇降機構と作溝器との間の部分)の占める割合が大きなものとなり、これに伴って搬送ホースにおける屈曲できる部分が短くなっている。
【0007】
このように搬送ホースにおける屈曲できる部分が短くなると、苗植付装置の大きな昇降を行った際に、搬送ホースにおける屈曲できる部分が苗植付装置の大きな昇降を吸収しきれずに、搬送ホースにおける屈曲できる部分に、鋭角的に局部的に折れ曲がる部分が発生する可能性があり、搬送ホースの破損や肥料の詰まりに発展する可能性がある。
【0008】
本発明は、水田作業装置と機体との間に対地作業装置を備え、対地作業装置を昇降する昇降機構を水田作業装置の前側に備えた水田作業機において、農用供給体を供給部に供給する搬送ホースに、鋭角的に局部的に折れ曲がる部分が発生しないように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、水田作業機において次のように構成することにある。
機体の後部に水田作業装置を昇降自在に支持する。水田作業装置と機体との間に対地作業装置を備えて、対地作業装置を昇降する昇降機構を水田作業装置の前側に備える。農用供給体を貯留する貯留部と、貯留部の農用供給体を繰り出し部とを機体に備え、農用供給体を田面に供給する供給部を備える。繰り出し部と供給部とに亘って搬送ホースを接続して、搬送ホースを昇降機構の前側に配置する。
【0010】
(作用)
対地作業装置の昇降機構と水田作業装置との間は比較的狭いので、搬送ホースにおける対地作業装置の昇降機構と供給部との間の部分は屈曲するように構成することができないのに対して、対地作業装置の昇降機構の前側は比較的大きな空間(対地作業装置の昇降機構と機体の後部との間)となっている。
本発明の第1特徴によると、搬送ホースを対地作業装置の昇降機構の前側に配置しているので、対地作業装置の昇降機構の前側は比較的大きな空間(対地作業装置の昇降機構と機体の後部との間)となっている点により、対地作業装置の昇降機構や機体の後部と搬送ホースとの干渉を不必要に考慮しなくてもよい。
【0011】
これにより、本発明の第1特徴によると、対地作業装置の昇降機構や機体の後部との干渉を避ける為に搬送ホースに屈曲できない部分を備えたとしても、搬送ホースにおける屈曲できない部分を不必要に長くする必要がなくなり(比較的短いものにすることができるようになり)、繰り出し部から供給部までの搬送ホースの全長において、屈曲できる部分を長いものにすることができる。
このように搬送ホースにおける屈曲できる部分が長くなると、対地作業装置の大きな昇降を行った際、搬送ホースにおける屈曲できる部分が全体的に大きな半径で屈曲して、対地作業装置の大きな昇降が吸収されるのであり、搬送ホースにおける屈曲できる部分に、鋭角的に局部的に折れ曲がる部分が発生する可能性が小さくなる。
【0012】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、水田作業装置と機体との間に対地作業装置を備え、対地作業装置を昇降する昇降機構を水田作業装置の前側に備えた水田作業機において、農用供給体を供給部に供給する搬送ホースに、鋭角的に局部的に折れ曲がる部分が発生する可能性を小さくすることができて、搬送ホースの破損や肥料の詰まりを防止することができるようになり、搬送ホースの耐久性及び農用供給体の供給性能を向上させることができた。
【0013】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
供給部を対地作業装置に備える。
【0014】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
前項[I]に記載のように、水田作業装置と機体との間に対地作業装置を備えて、対地作業装置を昇降する昇降機構を水田作業装置の前側に備えているので、機体や水田作業装置の高さの変化に影響を受けることなく、田面に対する対地作業装置の高さを変更したり設定高さに維持したりすることができる。
【0015】
本発明の第2特徴によると、供給部を対地作業装置に備えているので、前述のように対地作業装置の昇降機構により、田面に対する対地作業装置の高さを変更したり設定高さに維持したりすることにより、供給部から田面への農用供給体の供給深さを変更したり設定深さに維持したりすることができる。
【0016】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、対地作業装置の昇降機構を有効に利用することにより、供給部から田面への農用供給体の供給深さを変更したり設定深さに維持したりすることができるようになって、農用供給体の供給性能を向上させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[1]
図1に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2で支持された機体の後部に、リンク機構3により4条植型式の苗植付装置5(水田作業装置に相当)が昇降自在に支持され、リンク機構3を昇降駆動する油圧シリンダ4が備えられて、水田作業機の一例である乗用型田植機が構成されている。
【0018】
次に、苗植付装置5について説明する。
図1,4,5に示すように、苗植付装置5は1個のフィードケース17、2個の伝動ケース6、伝動ケース6の後部に回転駆動自在に支持された一対の回転ケース7、回転ケース7の両端に備えられた一対の植付アーム8、中央のセンターフロート9及びサイドフロート10、4個の苗のせ面を備えて左右方向に往復横送り駆動される苗のせ台11等を備えて構成されている。左右方向に配置された支持フレーム18にフィードケース17及び伝動ケース6が固定されており、リンク機構3の後部に接続された支持部材19の下部の前後軸芯P1(図2及び図3参照)周りに、フィードケース17がローリング自在に支持されている(苗植付装置5が前後軸芯P1周りにローリング自在に支持されている)。
【0019】
図2,3,4に示すように、伝動ケース6にガイドレール38が左右方向に支持され、苗のせ台11の下部がガイドレール38に沿って横移動自在に支持されている。支持フレーム18の右及び左側部に支持フレーム26が固定され上方に延出されて、右及び左の支持フレーム26の上部及び下部に亘って支持フレーム20,28が固定されている。苗のせ台11の上部の前面にガイドレール27が固定されており、右及び左の支持フレーム26に支持されたローラー21に、ガイドレール27及び苗のせ台11が横移動自在に支持されている。
【0020】
図2及び図3に示すように、支持アーム29が支持部材19に固定されて上方に延出されており、ガイドレール27の右及び左側部に固定されたブラケット27aと、支持アーム29とに亘って右及び左のバネ47が接続されている。右及び左のバネ47により苗植付装置5が機体と平行な姿勢に付勢されているのであり、苗のせ台11が往復横送り駆動されるのに伴って、右又は左のバネ47が引き延ばされると、右又は左のバネ47の付勢力により苗植付装置5の右又は左への傾斜が抑えられる。
【0021】
図1,2,5に示すように、運転座席12の後側に、肥料(農用供給体に相当)を貯留するホッパー13(貯留部に相当)、及び2つの植付条に対応した2個の繰り出し部14が備えられており、繰り出し部14の横側にブロア15が備えられている。センターフロート9に2個の作溝器16(供給部に相当)が固定され、サイドフロート11に1個の作溝器16が固定されて、4個の作溝器16が備えられており、繰り出し部14と作溝器16とに亘って4本の搬送ホース22が接続されている。
【0022】
[2]
図1,2,3,4に示すように、エンジン(図示せず)の動力が植付クラッチ23(図11参照)及びPTO軸24を介して、支持フレーム18を貫通する入力軸25に伝達されて、入力軸25からフィードケース17に伝達される。入力軸25の動力がフィードケース17の横送り変速機構(図示せず)を介して、苗のせ台11を往復横送り駆動する横送り軸(図示せず)に伝達され、入力軸25の動力がフィードケース17の伝動チェーン30、伝動ケース6に亘って架設された伝動軸31、伝動ケース6の入力軸32、伝動チェーン33、少数条クラッチ34及び駆動軸35を介して回転ケース7に伝達される。フィードケース17及び伝動ケース6に亘って円筒状のカバー36が固定されており、カバー36により伝動軸31が覆われている。
【0023】
植付クラッチ23が伝動状態に操作されると、苗のせ台11が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース7が図1の紙面反時計方向に回転駆動され、苗のせ台11の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面Gに植え付ける。植付クラッチ23が遮断状態に操作されると、苗のせ台11の往復横送り駆動及び回転ケース7の回転駆動が停止する。
【0024】
図1に示すように、エンジン(図示せず)の動力が施肥クラッチ37(図11参照)を介して繰り出し部14に伝達されており、施肥クラッチ37により繰り出し部14の作動及び停止を行う。これにより、前述のような苗の植え付けに伴って、ホッパー13から肥料が所定量ずつ繰り出し部14によって繰り出され、ブロア15の送風により肥料が搬送ホース22を通って作溝器16に供給されるのであり、作溝器16を介して肥料が田面Gに供給される。
【0025】
[3]
次に、苗植付装置5の昇降制御機構について説明する。
図2,5,6に示すように、支持フレーム18の右及び左側部に固定されたブラケット39の横軸芯P2周りに支持軸41が回転自在に支持されて、支持軸41に固定された支持アーム41aが後方に延出されており、支持軸41の支持アーム41aの後端の横軸芯P3周りに、センターフロート9及びサイドフロート10の後部が上下に揺動自在に支持されている。人為的に操作可能な植付深さレバー42が支持軸41に固定されて前方上方に延出されており、支持フレーム18,28及びフィードケース17に亘って固定されたレバーガイド43に、植付深さレバー42が挿入されている。
【0026】
図5,6,11に示すように、植付深さレバー42により支持軸41の支持アーム41aを回動操作して、横軸芯P3(センターフロート9及びサイドフロート10)の位置を上下に変更することにより、植付設定高さA1(設定深さ)(田面Gから支持軸41(横軸芯P2)までの高さ)を変更することができるのであり、植付深さレバー42をレバーガイド43に係合させることにより、横軸芯P3(センターフロート9及びサイドフロート10)の位置を固定して、植付設定高さA1(設定深さ)を設定することができる。
【0027】
図5,6,7に示すように、センターフロート9の前端部の左側部にブラケット9aが固定されて、センターフロート9のブラケット9aに操作ロッド45が接続され、操作ロド45が支持フレーム18を貫通して上方に延出されており、操作ロッド45の上端部にブラケット45aが固定されている。支持フレーム18にブラケット46が固定されて、ブラケット46の前後軸芯P4周りに天秤状の連係アーム48が揺動自在に支持されており、連係アーム48の端部に接続された連係ロッド49が支持フレーム18を貫通して下方に延出され、支持軸41に固定された連係アーム41bに、連係ロッド49の下端部が接続されている。
【0028】
図6,7,11に示すように、油圧シリンダ4に作動油を給排操作する機械操作式の制御弁50が機体に備えられており、制御弁50にワイヤ51のインナー51aが接続されている。ワイヤ51のアウター51bが操作ロッド45のブラケット45aに固定され、ワイヤ51のインナー51aが連係アーム48の端部に接続されている。
【0029】
図6,7,11に示す状態においてセンターフロート9が田面Gに接地追従するので、操作ロッド45及び操作ロッド45のブラケット45aは田面Gから一定の高さに位置している。植付深さレバー42がレバーガイド43に係合して固定されているので、支持軸41の連係アーム41b及び連係ロッド49により、連係アーム48が苗植付装置5に固定された状態(前後軸芯P4周りに揺動しない状態)となっている。
【0030】
以上の構造により、機体の姿勢変化等により苗植付装置5が上下動すると、連係アーム48が苗植付装置5と一緒に上下動して、連係アーム48によりワイヤ51のインナー51aが押し引き操作され、ワイヤ51のインナー51aにより制御弁50が操作される。制御弁50により作動油の給排操作が行われ、油圧シリンダ4により苗植付装置5が昇降駆動されて、植付設定高さA1(設定深さ)が維持される(苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付深さが設定深さに維持される)(昇降制御機構)。
【0031】
図6,7,11に示すように、植付深さレバー42により横軸芯P3(センターフロート9及びサイドフロート10)の位置を変更すると、新たな植付設定高さA1(設定深さ)が設定される。これに伴い支持軸41の連係アーム41b及び連係ロッド49により、連係アーム48の姿勢が前後軸芯P4周りに変更されて、操作ロッド45のブラケット45aと連係アーム48の端部との上下間隔(ワイヤ51のインナー51aの出ている長さ)が、植付設定高さA1(設定深さ)の変更に関係なく、制御弁50の中立位置に対応するものに維持される。
【0032】
[4]
次に、苗植付装置5の昇降操作について説明する。
図1及び図11に示すように、前輪1を操向操作する操縦ハンドル52の右横側に昇降操作レバー53が備えられて、昇降操作レバー53は上昇位置、中立位置、下降位置及び植付位置に操作自在に構成されており、昇降操作レバー53と制御弁50、植付及び施肥クラッチ23,37とが機械的に連係されている。
【0033】
図11に示すように、昇降操作レバー53を上昇位置に操作すると、植付及び施肥クラッチ23,37が遮断状態に操作され、前項[3]に記載の昇降制御機構が停止した状態で、制御弁50が上昇位置に操作されて苗植付装置5が上昇する。昇降操作レバー53を中立位置に操作すると、植付及び施肥クラッチ23,37が遮断状態に操作され、前項[3]に記載の昇降制御機構が停止した状態で、制御弁50が中立位置に操作されて苗植付装置5の昇降が停止する。
【0034】
図11に示すように、昇降操作レバー53を下降位置に操作すると、植付及び施肥クラッチ23,37が遮断状態に操作され、前項[3]に記載の昇降制御機構が停止した状態で、制御弁50が下降位置に操作されて苗植付装置5が下降し、センターフロート9が田面Gに接地すると、前項[3]に記載の昇降制御機構が作動する。昇降操作レバー53を植付位置に操作すると、前述の昇降操作レバー53を下降位置に操作した状態に加えて、植付及び施肥クラッチ23,37が伝動状態に操作される。
【0035】
[5]
次に、苗植付装置5と機体との間に備えられる整地装置54(対地作業装置に相当)について説明する。
図2,3,4に示すように、支持フレーム18の左側部に支持フレーム55が固定されて、支持フレーム55にボス部材64が固定され、伝動軸31及び入力軸32の横軸芯P5周りに、伝動ケース56がボス部材64に上下に揺動自在に支持されている。支持フレーム18の右側部に支持フレーム57が固定されて、支持フレーム57の横軸芯P5(伝動軸23及び入力軸32の横軸芯P5)周りに、支持アーム58が上下に揺動自在に支持されており、伝動ケース56及び支持アーム58に亘って、断面正方形状の駆動軸61が回転自在に支持されている。
【0036】
図9に示すように、合成樹脂により一体的に形成された小幅の回転体62が備えられている。回転体62はボス部62a、ボス部62aに形成された断面正方形状の取付孔62b、ボス部62aから放射状に延出されたアーム部62c、アーム部62cの端部に接続された凸状の整地部62dを備えて構成されており、隣接するアーム部62cの間に大きな空間62eが形成されている。
【0037】
図3及び図4に示すように、多数の回転体62のボス部62a(取付孔62b)に駆動軸61が挿入されて、回転体62が駆動軸61に固定されており、駆動軸61の中央部にスペーサ63が外嵌されて、回転体62の位置が決められている。回転体62とスペーサ63との間、回転体62と伝動ケース56及び支持アーム58との間に、円盤部材59が駆動軸61に固定されている。図9に示すように、円盤部材59は回転体62と略同じ外径を備えて、多数の長孔59aが放射状に形成されている。
【0038】
図3,4,9に示すように、多数の回転体62において、全ての回転体62のアーム部62c(空間62e)の位相(位置)が一致するように、回転体62が駆動軸61に固定されている。スペーサ63によって分けられた右側の多数の回転体62と左側の多数の回転体62とにおいても、回転体62のアーム部62c(空間62e)の位相(位置)が一致するように構成されている。全ての円盤部材59において、円盤部材59の長孔59aの位相(位置)と、回転体62の空間62eの位相(位置)とが一致するように構成されている。平面視(図4参照)でスペーサ63の位置にPTO軸24が配置されており、苗植付装置5が大きく上昇した際に、PTO軸24が円盤部材59の間に入り込んで回転体62に干渉しないようにしている。
【0039】
図2,3,4に示すように、駆動軸61、回転体62及び円盤部材59、伝動ケース56及び支持アーム58等により整地装置54が構成されている。苗植付装置5(センターフロート9及びサイドフロート10)と機体(後輪2)との間に、整地装置54が備えられており、伝動ケース56及び支持アーム58が横軸芯P5周りに上下に揺動することによって、整地装置54が昇降自在に支持されている。
【0040】
図2及び図4に示すように、整地装置54の横幅と略同じ横幅を備えたカバー60が支持フレーム18の前部に固定されて、カバー60が整地装置54の後方に位置し、センターフロート9及びサイドフロート10の前方に位置するように構成されており、整地装置54から後方に飛散する泥が、センターフロート9及びサイドフロート10に堆積しないようにしている。この場合、植付設定高さA1(設定深さ)が最低位置(設定深さが最深位置)に設定されても、カバー60の下端部が田面Gに接地しないように、カバー60の下端部の位置が設定されている。
【0041】
図1,3,4に示すように、丸棒状のガード部材65が支持フレーム55,57に備えられて後方に延出されており、ガード部材65が伝動ケース56及び支持アーム58、ガイドレール38の横外側に位置して、ガード部材65により伝動ケース56及び支持アーム58、ガイドレール38が保護されている。ガード部材65が支持フレーム55,57に回転自在に支持されており、ガード部材65を図1に示す後方に向く姿勢から真下に向く姿勢に変更することによって、ガード部材65を苗植付装置5のスタンドとしても使用することができる。
【0042】
[6]
次に、整地装置54の駆動構造について説明する。
図4に示すように、入力軸32に接続された伝動軸66が、ボス部材64及び伝動ケース56の内部に配置されており、伝動ケース56の内部において、伝動軸66と駆動軸61とに亘って伝動チェーン67が巻回されている。伝動ケース6及びボス部64に亘って円筒状のカバー36が固定されており、カバー36により伝動軸66が覆われている。
【0043】
前項[2][4]に記載のように、植付クラッチ23(図11参照)が伝動状態に操作されると、苗のせ台11が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース7が図1の紙面反時計方向に回転駆動され、苗のせ台11の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面Gに植え付けるのであり、伝動軸31及び入力軸32の動力が整地装置54に伝達されて、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)が図2の紙面反時計方向に回転駆動される。植付クラッチ23が遮断状態に操作されると、苗のせ台11の往復横送り駆動及び回転ケース7の回転駆動が停止するのであり、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)が停止する。
【0044】
この場合、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)が、機体の走行速度よりも高速で回転駆動される(右及び左の後輪2の外周部の周速度よりも、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)の外周部の周速度が高速になるように回転駆動される)。これにより、植付アーム8の前方の田面Gが回転体62及び円盤部材59(整地装置54)によって整地(代掻き)されるのであり、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)から後方に飛散する泥が、カバー60によって止められる。
【0045】
[7]
次に整地装置54の昇降駆動構造について説明する。
図2,3,8に示すように、左の支持フレーム26にブラケット26aが固定されて、板材を折り曲げて構成された支持部材68が、左の支持フレーム26のブラケット26aにボルト連結されており、支持部材68に固定されたボス部68aに操作軸69が回転自在に支持されている。支持部材68の後側部(苗のせ台11側)において、操作軸69に扇型ギヤ70(昇降機構に相当)及び操作アーム71(昇降機構に相当)が固定されており、左の支持フレーム26のブラケット26aと支持部材68との間から操作アーム71が突出して、操作アーム71と伝動ケース56とに亘って左の操作ロッド72が接続されている。
【0046】
図2,3,8に示すように、支持部材68の後側部(苗のせ台11側)において、電動モータ73(昇降機構に相当)及び減速機構74(昇降機構に相当)が固定されて、減速機構74のピニオンギヤ74aが扇型ギヤ70に咬合しており、電動モータ73及び減速機構74が袋状のカバー75によって覆われている。支持部材68の前側部において、カバーで覆われた制御装置40が固定されて、操作軸69の角度を検出するポテンショメータ76が固定されており、ポテンショメータ76の検出値が制御装置40に入力されている。
【0047】
図2,3,8に示すように、右の支持フレーム26にブラケット26bが固定されて、右の支持フレーム26のブラケット26bの前後軸芯P6周りに、正面視(図3参照)で「く」字状の操作アーム77(昇降機構に相当)が揺動自在に支持されている。扇型ギヤ70に固定されたブラケット70aと操作アーム77の端部とに亘って、操作ロッド78(昇降機構に相当)が接続されており、操作アーム77の端部と支持アーム58とに亘って右の操作ロッド72が接続されている。
【0048】
図2,3,8に示すように、電動モータ73及び減速機構74により扇型ギヤ70が図 の紙面反時計方向に回転駆動されると、操作アーム71が上方に駆動されて、右の操作ロッド72により伝動ケース56が上昇する。扇型ギヤ70により操作ロッド78を介して、操作アーム77が図3の紙面時計方向に回転駆動されて、左の操作ロッド72により支持アーム58が上昇する。これにより、整地装置54が上昇する。
逆に、電動モータ73及び減速機構74により扇型ギヤ70が図8の紙面時計方向に回転駆動されると、操作アーム71が下方に駆動されて、右の操作ロッド72により伝動ケース56が下降する。扇型ギヤ70により操作ロッド78を介して、操作アーム77が図3の紙面反時計方向に回転駆動されて、左の操作ロッド72により支持アーム58が下降する。これにより、整地装置54が下降する。
【0049】
この場合、図11に示すように、苗植付装置5(センターフロート9及びサイドフロート10)が田面Gに接地しても、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)が田面Gに接地しない上方位置A3、及び苗植付装置5(センターフロート9及びサイドフロート10)が田面Gに接地すると、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)も田面Gに接地する作業位置A4が設定されており、上方及び作業位置A3,A4の範囲で整地装置54が昇降する。
【0050】
[8]
次に、整地装置54の整地制御について説明する。
図3,5,11に示すように、支持フレーム18にポテンショメータ44が固定され、支持軸41に固定された連係アーム41cがポテンショメータ44の検出部に接続されており、ポテンショメータ44により支持軸41の角度が検出される。ポテンショメータ44の検出値が制御装置40に入力されており、制御装置40において,ポテンショメータ44の検出値に基づいて、植付設定高さA1(設定深さ)を認識することができるのであり、ポテンショメータ76の検出値に基づいて、苗植付装置5(植付設定高さA1(設定深さ))に対する整地装置54の高さを認識することができる。
【0051】
図11に示すように、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)による整地(代掻き)にとって、作業位置A4において適正な高さである整地設定高さA2(整地深さ)が制御装置40に設定されている。これにより前項[3]に記載のように、植付深さレバー42によって植付設定高さA1(設定深さ)が設定(変更)されると、ポテンショメータ44,76の検出値に基づいて、苗植付装置5(植付設定高さA1(設定深さ))に対する整地装置54の高さが、作業位置A4において整地設定高さA2(整地深さ)となるように、制御装置40により電動モータ73が操作されて、整地装置54が昇降される。
【0052】
前項[3]及び図11に示すように、油圧シリンダ4により苗植付装置5が昇降駆動されて、植付設定高さA1(設定深さ)が維持されると(苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付深さが設定深さに維持されると)、苗植付装置5と一緒に整地装置54が昇降されて、苗植付装置5(植付設定高さA1(設定深さ))に対する整地装置54の高さが、作業位置A4において整地設定高さA2(整地深さ)に維持される。
【0053】
図3及び図11に示すように、ポテンショメータ式のダイヤル設定器79が支持部材68に備えられて、ダイヤル設定器79の設定信号が制御装置40に入力されており、ダイヤル設定器79により整地設定高さA2(整地深さ)を低側(深側)及び高側(浅側)に調節することができる。
ダイヤル設定器79を標準位置に操作していると、整地設定高さA2(整地深さ)に変更はない。植付深さレバー42をレバーガイド43の一目盛りだけ操作した際の植付設定高さA1(設定深さ)の変更量に対して、ダイヤル設定器79を低側(深側)及び高側(浅側)に操作することにより、最大で前述の植付設定高さA1(設定深さ)の変更量を越える範囲(約150%)に、整地設定高さA2(整地深さ)を低側(深側)及び高側(浅側)に変更することができる。
【0054】
図3及び図11に示すように、プッシュオン・プッシュオフ式の操作スイッチ80が支持部材68に備えられており、操作スイッチ80の操作信号が制御装置40に入力されている。昇降操作レバー53が植付位置に操作されたことを検出するリミットスイッチ81が備えられて、リミットスイッチ81の検出信号が制御装置40に入力されており、リミットスイッチ81により植付及び施肥クラッチ23,37が伝動及び遮断状態が認識される。
【0055】
図11に示すように、操作スイッチ80がON位置に操作されている場合において、昇降操作レバー53が植付位置に操作されると(植付及び施肥クラッチ23,37が伝動状態に操作されると)、制御装置40により電動モータ73が操作されて、整地装置54が作業位置A4に下降する。昇降操作レバー53が下降位置、中立位置及び上昇位置に操作されると(植付及び施肥クラッチ23,37が遮断状態に操作されると)、制御装置40により電動モータ73が操作されて、整地装置54が上方位置A3に上昇する。
【0056】
操作スイッチ80がOFF位置に操作されていると、昇降操作レバー53に関係なく(植付及び施肥クラッチ23,37の伝動及び遮断状態に関係なく)、制御装置40により電動モータ73が操作されて、整地装置54が上方位置A3に上昇する。例えば、センターフロート9及びサイドフロート10を田面Gに接地させた状態で、センターフロート9及びサイドフロート10により田面Gを整地しながら旋回する場合(スライディングターン)に対して、操作スイッチ80をOFF位置に操作することは有効である。
【0057】
[9]
次に、搬送ホース22について説明する。
図1,2,3,10に示すように、搬送ホース22は第1ホース部分22aと第2ホース部分22bとにより構成されている。搬送ホース22の第2ホース部分22bは半透明の硬質樹脂製(屈曲不可)で丸パイプ状に構成されており、搬送ホース22の第2ホース部分22bの下部が作溝器16に接続され、搬送ホース22の第2ホース部分22bの上部が支持フレーム28に固定されている。
【0058】
図1,2,3に示すように、搬送ホース22の第1ホース部分22aは半透明の樹脂製のジャバラ状で屈曲自在(可撓性)なホース状に構成されており、搬送ホース22の第1ホース部分22aの上部(前部)が繰り出し部14に接続され、搬送ホース22の第1ホース部分22aの下部(後部)が、搬送ホース22の第2ホース部分22bの上部に接続されている。
【0059】
図3及び図10に示すように、線材を折り曲げて2つのループ部を備えるように支持部材82が構成されて、支持部材82が支持アーム29に固定されており、中央側の2つの搬送ホース22の第1ホース部分22aが、支持部材82の右及び左のループ部に通されている。この場合、図2,3,4,10に示すように、中央側の2つの搬送ホース22の第1及び第2ホース部分22a,22bの接続部分が、操作ロッド78よりも下側に位置しており、中央側の2つの搬送ホース22の第1ホース部分22aが、操作ロッド78の前側(操作ロッド78と機体の後部との間)に位置している。
【0060】
図2,3,4に示すように、右及び左の2つの搬送ホース22の第1及び第2ホース部分22a,22bが、側面視(図2参照)で中央側の2つの搬送ホース22の第1及び第2ホース部分22a,22bと略同じ位置に配置されており、右及び左の2つの搬送ホース22の第1及び第2ホース部分22a,22bの前側(機体の後部側)に、右及び左の操作ロッド72が配置されている。
【0061】
図3及び図4に示すように、線材を折り曲げて1つのループ部を備えるように支持部材83が構成されて、支持部材83が支持フレーム28の右及び左側部に固定されており、右及び左の2つの搬送ホース22の第1ホース部分22aが、支持部材83の上部のループ部に通されている。これにより、右及び左の2つの搬送ホース22の第1ホース部分22aと右及び左の操作ロッド72との干渉が、支持部材83によって防止される。
【0062】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、作溝器16を整地装置54に備えるように構成してもよい。
図12及び図13に示すように、センターフロート9及びサイドフロート11に固定される作溝器16(図5参照)の位置に対応し、整地装置54において回転体62が取り外され、回転体62が取り外された駆動軸61の部分にリング部材84が固定されている。作溝器16にボス部16aが備えられ、作溝器16のボズ部16aが駆動軸61のリング部材84に相対回転自在に外嵌されて、作溝器16が整地装置54(駆動軸61)に支持されている。搬送ホース22の第2ホース部分22bの下部が作溝器16に接続されて、搬送ホース22の第2ホース部分22bにより作溝器16の回り止めが行われている。
【0063】
これにより、前項[8]に記載のように、ダイヤル設定器79により整地設定高さA2(整地深さ)を低側(深側)及び高側(浅側)に調節することによって、作溝器16の田面Gへの入り込み深さ(肥料の供給深さ)を低側(深側)及び高側(浅側)に変更することができる。
【0064】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]において、電動モータ73及び減速機構74を廃止し、人為的に操作される昇降レバー(図示せず)を扇型ギヤ70に固定して、昇降レバーの操作により整地装置54を昇降するように構成してもよい。
【0065】
前述の[発明を実施するための最良の形態]〜[発明の実施の第2別形態]において、水田作業装置及び対地作業装置として、ペースト状の肥料を田面に供給する施肥装置、直播装置、薬剤散布装置及び米ぬか散布装置、溝切り器(不耕起田植用の溝)、溝切り器(排水用の溝)、シート敷設装置(ロール状に巻かれたシート(雑草防止用)を田面に展開させながら敷設する)を備えてもよい。対地作業装置を水田作業装置に支持するのではなく、機体の後部から延出されたリンク機構(図示せず)に対地作業装置を支持するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】苗植付装置及び整地装置の側面図
【図3】苗植付装置及び整地装置の正面図
【図4】苗植付装置及び整地装置の平面図
【図5】センターフロート及びサイドフロートの付近の平面図
【図6】センターフロート及び植付深さレバーの付近の側面図
【図7】センターフロートの前端部の左側部の付近の正面図
【図8】左の支持フレーム、電動モータ及び減速機構、扇型ギヤの付近の正面図
【図9】回転体及び円盤部材の斜視図
【図10】中央側の2つの搬送ホースの付近の側面図
【図11】苗植付装置と整地装置との連係状態を示す図
【図12】発明の実施の第1別形態における整地装置の平面図
【図13】発明の実施の第1別形態における作溝器の付近の縦断側面図
【符号の説明】
【0067】
5 水田作業装置
13 貯留部
14 繰り出し部
16 供給部
22 搬送ホース
54 対地作業装置
70,71,73,74,77,78 昇降機構
G 田面
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の後部に水田作業装置(苗植付装置や直播装置等)を昇降自在に支持した水田作業機(乗用型田植機や乗用型直播機等)に関する。
【背景技術】
【0002】
水田作業機の一例である乗用型田植機では例えば特許文献1に開示されているように、機体の後部に苗植付装置(水田作業装置に相当)(特許文献1の図1及び図2の5)を昇降自在に支持し、整地装置(対地作業装置に相当)(特許文献1の図1,2,4の53)を、苗植付装置と機体との間に備えて、整地装置を昇降する昇降機構(特許文献1の図2,3,7の55,56,58)を、苗植付装置の前側に備えたものがある。これにより、整地装置により田面を整地しながら、苗植付装置による苗の植え付けを行うことができるのであり、昇降機構により整地装置の高さ(整地深さ)を変更することができる。
【0003】
特許文献1では、粉粒状の肥料(農用供給体に相当)を貯留するホッパー(貯留部に相当)(特許文献1の図1の12)と、ホッパーの肥料を繰り出す繰り出し部(特許文献1の図1の13)とを機体に備え、肥料を田面に供給する作溝器(供給部に相当)(特許文献1の図1及び図2の15)を苗植付装置に備えて、繰り出し部と作溝器とに亘って搬送ホース(特許文献1の図1及び図2の16)を接続している。これにより、ホッパーの肥料が繰り出し部によって繰り出され、搬送ホースを介して作溝器に供給されるのであり、苗植付装置による苗の植え付けに伴って、田面に肥料を供給することができる。
【0004】
乗用型田植機では一般に、一回の植付行程が終了して畦際に達すると、苗植付装置を田面から大きく上昇させて、畦際で旋回を行い、次に苗植付装置を田面に下降させながら次の植付行程に入る。このような苗植付装置の大きな昇降を行う為に、搬送ホースは自由に屈曲する可撓性を備えたものに構成されている。
このようなホッパー、繰り出し部、作溝器及び搬送ホースを備えた場合、特許文献1では、整地装置の昇降機構(特許文献1の図2の55,56,58)と苗のせ台(特許文献1の図2の10)との間に、搬送ホース(特許文献1の図2の16)を配置している。
【0005】
【特許文献1】特開2005−341881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、整地装置の昇降機構と苗のせ台との間に、搬送ホースを配置しているので、搬送ホースにおける整地装置の昇降機構と作溝器との間の部分は屈曲するように構成することができない(整地装置の昇降機構及び苗のせ台と搬送ホースとの干渉を避ける為)。整地装置の昇降機構の位置が比較的高い為、搬送ホースにおける整地装置の昇降機構と作溝器との間の部分が、比較的長いものとなっている。
これにより、繰り出し部から作溝器までの搬送ホースの全長において、屈曲できない部分(搬送ホースにおける整地装置の昇降機構と作溝器との間の部分)の占める割合が大きなものとなり、これに伴って搬送ホースにおける屈曲できる部分が短くなっている。
【0007】
このように搬送ホースにおける屈曲できる部分が短くなると、苗植付装置の大きな昇降を行った際に、搬送ホースにおける屈曲できる部分が苗植付装置の大きな昇降を吸収しきれずに、搬送ホースにおける屈曲できる部分に、鋭角的に局部的に折れ曲がる部分が発生する可能性があり、搬送ホースの破損や肥料の詰まりに発展する可能性がある。
【0008】
本発明は、水田作業装置と機体との間に対地作業装置を備え、対地作業装置を昇降する昇降機構を水田作業装置の前側に備えた水田作業機において、農用供給体を供給部に供給する搬送ホースに、鋭角的に局部的に折れ曲がる部分が発生しないように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、水田作業機において次のように構成することにある。
機体の後部に水田作業装置を昇降自在に支持する。水田作業装置と機体との間に対地作業装置を備えて、対地作業装置を昇降する昇降機構を水田作業装置の前側に備える。農用供給体を貯留する貯留部と、貯留部の農用供給体を繰り出し部とを機体に備え、農用供給体を田面に供給する供給部を備える。繰り出し部と供給部とに亘って搬送ホースを接続して、搬送ホースを昇降機構の前側に配置する。
【0010】
(作用)
対地作業装置の昇降機構と水田作業装置との間は比較的狭いので、搬送ホースにおける対地作業装置の昇降機構と供給部との間の部分は屈曲するように構成することができないのに対して、対地作業装置の昇降機構の前側は比較的大きな空間(対地作業装置の昇降機構と機体の後部との間)となっている。
本発明の第1特徴によると、搬送ホースを対地作業装置の昇降機構の前側に配置しているので、対地作業装置の昇降機構の前側は比較的大きな空間(対地作業装置の昇降機構と機体の後部との間)となっている点により、対地作業装置の昇降機構や機体の後部と搬送ホースとの干渉を不必要に考慮しなくてもよい。
【0011】
これにより、本発明の第1特徴によると、対地作業装置の昇降機構や機体の後部との干渉を避ける為に搬送ホースに屈曲できない部分を備えたとしても、搬送ホースにおける屈曲できない部分を不必要に長くする必要がなくなり(比較的短いものにすることができるようになり)、繰り出し部から供給部までの搬送ホースの全長において、屈曲できる部分を長いものにすることができる。
このように搬送ホースにおける屈曲できる部分が長くなると、対地作業装置の大きな昇降を行った際、搬送ホースにおける屈曲できる部分が全体的に大きな半径で屈曲して、対地作業装置の大きな昇降が吸収されるのであり、搬送ホースにおける屈曲できる部分に、鋭角的に局部的に折れ曲がる部分が発生する可能性が小さくなる。
【0012】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、水田作業装置と機体との間に対地作業装置を備え、対地作業装置を昇降する昇降機構を水田作業装置の前側に備えた水田作業機において、農用供給体を供給部に供給する搬送ホースに、鋭角的に局部的に折れ曲がる部分が発生する可能性を小さくすることができて、搬送ホースの破損や肥料の詰まりを防止することができるようになり、搬送ホースの耐久性及び農用供給体の供給性能を向上させることができた。
【0013】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
供給部を対地作業装置に備える。
【0014】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
前項[I]に記載のように、水田作業装置と機体との間に対地作業装置を備えて、対地作業装置を昇降する昇降機構を水田作業装置の前側に備えているので、機体や水田作業装置の高さの変化に影響を受けることなく、田面に対する対地作業装置の高さを変更したり設定高さに維持したりすることができる。
【0015】
本発明の第2特徴によると、供給部を対地作業装置に備えているので、前述のように対地作業装置の昇降機構により、田面に対する対地作業装置の高さを変更したり設定高さに維持したりすることにより、供給部から田面への農用供給体の供給深さを変更したり設定深さに維持したりすることができる。
【0016】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、対地作業装置の昇降機構を有効に利用することにより、供給部から田面への農用供給体の供給深さを変更したり設定深さに維持したりすることができるようになって、農用供給体の供給性能を向上させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[1]
図1に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2で支持された機体の後部に、リンク機構3により4条植型式の苗植付装置5(水田作業装置に相当)が昇降自在に支持され、リンク機構3を昇降駆動する油圧シリンダ4が備えられて、水田作業機の一例である乗用型田植機が構成されている。
【0018】
次に、苗植付装置5について説明する。
図1,4,5に示すように、苗植付装置5は1個のフィードケース17、2個の伝動ケース6、伝動ケース6の後部に回転駆動自在に支持された一対の回転ケース7、回転ケース7の両端に備えられた一対の植付アーム8、中央のセンターフロート9及びサイドフロート10、4個の苗のせ面を備えて左右方向に往復横送り駆動される苗のせ台11等を備えて構成されている。左右方向に配置された支持フレーム18にフィードケース17及び伝動ケース6が固定されており、リンク機構3の後部に接続された支持部材19の下部の前後軸芯P1(図2及び図3参照)周りに、フィードケース17がローリング自在に支持されている(苗植付装置5が前後軸芯P1周りにローリング自在に支持されている)。
【0019】
図2,3,4に示すように、伝動ケース6にガイドレール38が左右方向に支持され、苗のせ台11の下部がガイドレール38に沿って横移動自在に支持されている。支持フレーム18の右及び左側部に支持フレーム26が固定され上方に延出されて、右及び左の支持フレーム26の上部及び下部に亘って支持フレーム20,28が固定されている。苗のせ台11の上部の前面にガイドレール27が固定されており、右及び左の支持フレーム26に支持されたローラー21に、ガイドレール27及び苗のせ台11が横移動自在に支持されている。
【0020】
図2及び図3に示すように、支持アーム29が支持部材19に固定されて上方に延出されており、ガイドレール27の右及び左側部に固定されたブラケット27aと、支持アーム29とに亘って右及び左のバネ47が接続されている。右及び左のバネ47により苗植付装置5が機体と平行な姿勢に付勢されているのであり、苗のせ台11が往復横送り駆動されるのに伴って、右又は左のバネ47が引き延ばされると、右又は左のバネ47の付勢力により苗植付装置5の右又は左への傾斜が抑えられる。
【0021】
図1,2,5に示すように、運転座席12の後側に、肥料(農用供給体に相当)を貯留するホッパー13(貯留部に相当)、及び2つの植付条に対応した2個の繰り出し部14が備えられており、繰り出し部14の横側にブロア15が備えられている。センターフロート9に2個の作溝器16(供給部に相当)が固定され、サイドフロート11に1個の作溝器16が固定されて、4個の作溝器16が備えられており、繰り出し部14と作溝器16とに亘って4本の搬送ホース22が接続されている。
【0022】
[2]
図1,2,3,4に示すように、エンジン(図示せず)の動力が植付クラッチ23(図11参照)及びPTO軸24を介して、支持フレーム18を貫通する入力軸25に伝達されて、入力軸25からフィードケース17に伝達される。入力軸25の動力がフィードケース17の横送り変速機構(図示せず)を介して、苗のせ台11を往復横送り駆動する横送り軸(図示せず)に伝達され、入力軸25の動力がフィードケース17の伝動チェーン30、伝動ケース6に亘って架設された伝動軸31、伝動ケース6の入力軸32、伝動チェーン33、少数条クラッチ34及び駆動軸35を介して回転ケース7に伝達される。フィードケース17及び伝動ケース6に亘って円筒状のカバー36が固定されており、カバー36により伝動軸31が覆われている。
【0023】
植付クラッチ23が伝動状態に操作されると、苗のせ台11が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース7が図1の紙面反時計方向に回転駆動され、苗のせ台11の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面Gに植え付ける。植付クラッチ23が遮断状態に操作されると、苗のせ台11の往復横送り駆動及び回転ケース7の回転駆動が停止する。
【0024】
図1に示すように、エンジン(図示せず)の動力が施肥クラッチ37(図11参照)を介して繰り出し部14に伝達されており、施肥クラッチ37により繰り出し部14の作動及び停止を行う。これにより、前述のような苗の植え付けに伴って、ホッパー13から肥料が所定量ずつ繰り出し部14によって繰り出され、ブロア15の送風により肥料が搬送ホース22を通って作溝器16に供給されるのであり、作溝器16を介して肥料が田面Gに供給される。
【0025】
[3]
次に、苗植付装置5の昇降制御機構について説明する。
図2,5,6に示すように、支持フレーム18の右及び左側部に固定されたブラケット39の横軸芯P2周りに支持軸41が回転自在に支持されて、支持軸41に固定された支持アーム41aが後方に延出されており、支持軸41の支持アーム41aの後端の横軸芯P3周りに、センターフロート9及びサイドフロート10の後部が上下に揺動自在に支持されている。人為的に操作可能な植付深さレバー42が支持軸41に固定されて前方上方に延出されており、支持フレーム18,28及びフィードケース17に亘って固定されたレバーガイド43に、植付深さレバー42が挿入されている。
【0026】
図5,6,11に示すように、植付深さレバー42により支持軸41の支持アーム41aを回動操作して、横軸芯P3(センターフロート9及びサイドフロート10)の位置を上下に変更することにより、植付設定高さA1(設定深さ)(田面Gから支持軸41(横軸芯P2)までの高さ)を変更することができるのであり、植付深さレバー42をレバーガイド43に係合させることにより、横軸芯P3(センターフロート9及びサイドフロート10)の位置を固定して、植付設定高さA1(設定深さ)を設定することができる。
【0027】
図5,6,7に示すように、センターフロート9の前端部の左側部にブラケット9aが固定されて、センターフロート9のブラケット9aに操作ロッド45が接続され、操作ロド45が支持フレーム18を貫通して上方に延出されており、操作ロッド45の上端部にブラケット45aが固定されている。支持フレーム18にブラケット46が固定されて、ブラケット46の前後軸芯P4周りに天秤状の連係アーム48が揺動自在に支持されており、連係アーム48の端部に接続された連係ロッド49が支持フレーム18を貫通して下方に延出され、支持軸41に固定された連係アーム41bに、連係ロッド49の下端部が接続されている。
【0028】
図6,7,11に示すように、油圧シリンダ4に作動油を給排操作する機械操作式の制御弁50が機体に備えられており、制御弁50にワイヤ51のインナー51aが接続されている。ワイヤ51のアウター51bが操作ロッド45のブラケット45aに固定され、ワイヤ51のインナー51aが連係アーム48の端部に接続されている。
【0029】
図6,7,11に示す状態においてセンターフロート9が田面Gに接地追従するので、操作ロッド45及び操作ロッド45のブラケット45aは田面Gから一定の高さに位置している。植付深さレバー42がレバーガイド43に係合して固定されているので、支持軸41の連係アーム41b及び連係ロッド49により、連係アーム48が苗植付装置5に固定された状態(前後軸芯P4周りに揺動しない状態)となっている。
【0030】
以上の構造により、機体の姿勢変化等により苗植付装置5が上下動すると、連係アーム48が苗植付装置5と一緒に上下動して、連係アーム48によりワイヤ51のインナー51aが押し引き操作され、ワイヤ51のインナー51aにより制御弁50が操作される。制御弁50により作動油の給排操作が行われ、油圧シリンダ4により苗植付装置5が昇降駆動されて、植付設定高さA1(設定深さ)が維持される(苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付深さが設定深さに維持される)(昇降制御機構)。
【0031】
図6,7,11に示すように、植付深さレバー42により横軸芯P3(センターフロート9及びサイドフロート10)の位置を変更すると、新たな植付設定高さA1(設定深さ)が設定される。これに伴い支持軸41の連係アーム41b及び連係ロッド49により、連係アーム48の姿勢が前後軸芯P4周りに変更されて、操作ロッド45のブラケット45aと連係アーム48の端部との上下間隔(ワイヤ51のインナー51aの出ている長さ)が、植付設定高さA1(設定深さ)の変更に関係なく、制御弁50の中立位置に対応するものに維持される。
【0032】
[4]
次に、苗植付装置5の昇降操作について説明する。
図1及び図11に示すように、前輪1を操向操作する操縦ハンドル52の右横側に昇降操作レバー53が備えられて、昇降操作レバー53は上昇位置、中立位置、下降位置及び植付位置に操作自在に構成されており、昇降操作レバー53と制御弁50、植付及び施肥クラッチ23,37とが機械的に連係されている。
【0033】
図11に示すように、昇降操作レバー53を上昇位置に操作すると、植付及び施肥クラッチ23,37が遮断状態に操作され、前項[3]に記載の昇降制御機構が停止した状態で、制御弁50が上昇位置に操作されて苗植付装置5が上昇する。昇降操作レバー53を中立位置に操作すると、植付及び施肥クラッチ23,37が遮断状態に操作され、前項[3]に記載の昇降制御機構が停止した状態で、制御弁50が中立位置に操作されて苗植付装置5の昇降が停止する。
【0034】
図11に示すように、昇降操作レバー53を下降位置に操作すると、植付及び施肥クラッチ23,37が遮断状態に操作され、前項[3]に記載の昇降制御機構が停止した状態で、制御弁50が下降位置に操作されて苗植付装置5が下降し、センターフロート9が田面Gに接地すると、前項[3]に記載の昇降制御機構が作動する。昇降操作レバー53を植付位置に操作すると、前述の昇降操作レバー53を下降位置に操作した状態に加えて、植付及び施肥クラッチ23,37が伝動状態に操作される。
【0035】
[5]
次に、苗植付装置5と機体との間に備えられる整地装置54(対地作業装置に相当)について説明する。
図2,3,4に示すように、支持フレーム18の左側部に支持フレーム55が固定されて、支持フレーム55にボス部材64が固定され、伝動軸31及び入力軸32の横軸芯P5周りに、伝動ケース56がボス部材64に上下に揺動自在に支持されている。支持フレーム18の右側部に支持フレーム57が固定されて、支持フレーム57の横軸芯P5(伝動軸23及び入力軸32の横軸芯P5)周りに、支持アーム58が上下に揺動自在に支持されており、伝動ケース56及び支持アーム58に亘って、断面正方形状の駆動軸61が回転自在に支持されている。
【0036】
図9に示すように、合成樹脂により一体的に形成された小幅の回転体62が備えられている。回転体62はボス部62a、ボス部62aに形成された断面正方形状の取付孔62b、ボス部62aから放射状に延出されたアーム部62c、アーム部62cの端部に接続された凸状の整地部62dを備えて構成されており、隣接するアーム部62cの間に大きな空間62eが形成されている。
【0037】
図3及び図4に示すように、多数の回転体62のボス部62a(取付孔62b)に駆動軸61が挿入されて、回転体62が駆動軸61に固定されており、駆動軸61の中央部にスペーサ63が外嵌されて、回転体62の位置が決められている。回転体62とスペーサ63との間、回転体62と伝動ケース56及び支持アーム58との間に、円盤部材59が駆動軸61に固定されている。図9に示すように、円盤部材59は回転体62と略同じ外径を備えて、多数の長孔59aが放射状に形成されている。
【0038】
図3,4,9に示すように、多数の回転体62において、全ての回転体62のアーム部62c(空間62e)の位相(位置)が一致するように、回転体62が駆動軸61に固定されている。スペーサ63によって分けられた右側の多数の回転体62と左側の多数の回転体62とにおいても、回転体62のアーム部62c(空間62e)の位相(位置)が一致するように構成されている。全ての円盤部材59において、円盤部材59の長孔59aの位相(位置)と、回転体62の空間62eの位相(位置)とが一致するように構成されている。平面視(図4参照)でスペーサ63の位置にPTO軸24が配置されており、苗植付装置5が大きく上昇した際に、PTO軸24が円盤部材59の間に入り込んで回転体62に干渉しないようにしている。
【0039】
図2,3,4に示すように、駆動軸61、回転体62及び円盤部材59、伝動ケース56及び支持アーム58等により整地装置54が構成されている。苗植付装置5(センターフロート9及びサイドフロート10)と機体(後輪2)との間に、整地装置54が備えられており、伝動ケース56及び支持アーム58が横軸芯P5周りに上下に揺動することによって、整地装置54が昇降自在に支持されている。
【0040】
図2及び図4に示すように、整地装置54の横幅と略同じ横幅を備えたカバー60が支持フレーム18の前部に固定されて、カバー60が整地装置54の後方に位置し、センターフロート9及びサイドフロート10の前方に位置するように構成されており、整地装置54から後方に飛散する泥が、センターフロート9及びサイドフロート10に堆積しないようにしている。この場合、植付設定高さA1(設定深さ)が最低位置(設定深さが最深位置)に設定されても、カバー60の下端部が田面Gに接地しないように、カバー60の下端部の位置が設定されている。
【0041】
図1,3,4に示すように、丸棒状のガード部材65が支持フレーム55,57に備えられて後方に延出されており、ガード部材65が伝動ケース56及び支持アーム58、ガイドレール38の横外側に位置して、ガード部材65により伝動ケース56及び支持アーム58、ガイドレール38が保護されている。ガード部材65が支持フレーム55,57に回転自在に支持されており、ガード部材65を図1に示す後方に向く姿勢から真下に向く姿勢に変更することによって、ガード部材65を苗植付装置5のスタンドとしても使用することができる。
【0042】
[6]
次に、整地装置54の駆動構造について説明する。
図4に示すように、入力軸32に接続された伝動軸66が、ボス部材64及び伝動ケース56の内部に配置されており、伝動ケース56の内部において、伝動軸66と駆動軸61とに亘って伝動チェーン67が巻回されている。伝動ケース6及びボス部64に亘って円筒状のカバー36が固定されており、カバー36により伝動軸66が覆われている。
【0043】
前項[2][4]に記載のように、植付クラッチ23(図11参照)が伝動状態に操作されると、苗のせ台11が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース7が図1の紙面反時計方向に回転駆動され、苗のせ台11の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面Gに植え付けるのであり、伝動軸31及び入力軸32の動力が整地装置54に伝達されて、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)が図2の紙面反時計方向に回転駆動される。植付クラッチ23が遮断状態に操作されると、苗のせ台11の往復横送り駆動及び回転ケース7の回転駆動が停止するのであり、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)が停止する。
【0044】
この場合、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)が、機体の走行速度よりも高速で回転駆動される(右及び左の後輪2の外周部の周速度よりも、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)の外周部の周速度が高速になるように回転駆動される)。これにより、植付アーム8の前方の田面Gが回転体62及び円盤部材59(整地装置54)によって整地(代掻き)されるのであり、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)から後方に飛散する泥が、カバー60によって止められる。
【0045】
[7]
次に整地装置54の昇降駆動構造について説明する。
図2,3,8に示すように、左の支持フレーム26にブラケット26aが固定されて、板材を折り曲げて構成された支持部材68が、左の支持フレーム26のブラケット26aにボルト連結されており、支持部材68に固定されたボス部68aに操作軸69が回転自在に支持されている。支持部材68の後側部(苗のせ台11側)において、操作軸69に扇型ギヤ70(昇降機構に相当)及び操作アーム71(昇降機構に相当)が固定されており、左の支持フレーム26のブラケット26aと支持部材68との間から操作アーム71が突出して、操作アーム71と伝動ケース56とに亘って左の操作ロッド72が接続されている。
【0046】
図2,3,8に示すように、支持部材68の後側部(苗のせ台11側)において、電動モータ73(昇降機構に相当)及び減速機構74(昇降機構に相当)が固定されて、減速機構74のピニオンギヤ74aが扇型ギヤ70に咬合しており、電動モータ73及び減速機構74が袋状のカバー75によって覆われている。支持部材68の前側部において、カバーで覆われた制御装置40が固定されて、操作軸69の角度を検出するポテンショメータ76が固定されており、ポテンショメータ76の検出値が制御装置40に入力されている。
【0047】
図2,3,8に示すように、右の支持フレーム26にブラケット26bが固定されて、右の支持フレーム26のブラケット26bの前後軸芯P6周りに、正面視(図3参照)で「く」字状の操作アーム77(昇降機構に相当)が揺動自在に支持されている。扇型ギヤ70に固定されたブラケット70aと操作アーム77の端部とに亘って、操作ロッド78(昇降機構に相当)が接続されており、操作アーム77の端部と支持アーム58とに亘って右の操作ロッド72が接続されている。
【0048】
図2,3,8に示すように、電動モータ73及び減速機構74により扇型ギヤ70が図 の紙面反時計方向に回転駆動されると、操作アーム71が上方に駆動されて、右の操作ロッド72により伝動ケース56が上昇する。扇型ギヤ70により操作ロッド78を介して、操作アーム77が図3の紙面時計方向に回転駆動されて、左の操作ロッド72により支持アーム58が上昇する。これにより、整地装置54が上昇する。
逆に、電動モータ73及び減速機構74により扇型ギヤ70が図8の紙面時計方向に回転駆動されると、操作アーム71が下方に駆動されて、右の操作ロッド72により伝動ケース56が下降する。扇型ギヤ70により操作ロッド78を介して、操作アーム77が図3の紙面反時計方向に回転駆動されて、左の操作ロッド72により支持アーム58が下降する。これにより、整地装置54が下降する。
【0049】
この場合、図11に示すように、苗植付装置5(センターフロート9及びサイドフロート10)が田面Gに接地しても、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)が田面Gに接地しない上方位置A3、及び苗植付装置5(センターフロート9及びサイドフロート10)が田面Gに接地すると、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)も田面Gに接地する作業位置A4が設定されており、上方及び作業位置A3,A4の範囲で整地装置54が昇降する。
【0050】
[8]
次に、整地装置54の整地制御について説明する。
図3,5,11に示すように、支持フレーム18にポテンショメータ44が固定され、支持軸41に固定された連係アーム41cがポテンショメータ44の検出部に接続されており、ポテンショメータ44により支持軸41の角度が検出される。ポテンショメータ44の検出値が制御装置40に入力されており、制御装置40において,ポテンショメータ44の検出値に基づいて、植付設定高さA1(設定深さ)を認識することができるのであり、ポテンショメータ76の検出値に基づいて、苗植付装置5(植付設定高さA1(設定深さ))に対する整地装置54の高さを認識することができる。
【0051】
図11に示すように、回転体62及び円盤部材59(整地装置54)による整地(代掻き)にとって、作業位置A4において適正な高さである整地設定高さA2(整地深さ)が制御装置40に設定されている。これにより前項[3]に記載のように、植付深さレバー42によって植付設定高さA1(設定深さ)が設定(変更)されると、ポテンショメータ44,76の検出値に基づいて、苗植付装置5(植付設定高さA1(設定深さ))に対する整地装置54の高さが、作業位置A4において整地設定高さA2(整地深さ)となるように、制御装置40により電動モータ73が操作されて、整地装置54が昇降される。
【0052】
前項[3]及び図11に示すように、油圧シリンダ4により苗植付装置5が昇降駆動されて、植付設定高さA1(設定深さ)が維持されると(苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付深さが設定深さに維持されると)、苗植付装置5と一緒に整地装置54が昇降されて、苗植付装置5(植付設定高さA1(設定深さ))に対する整地装置54の高さが、作業位置A4において整地設定高さA2(整地深さ)に維持される。
【0053】
図3及び図11に示すように、ポテンショメータ式のダイヤル設定器79が支持部材68に備えられて、ダイヤル設定器79の設定信号が制御装置40に入力されており、ダイヤル設定器79により整地設定高さA2(整地深さ)を低側(深側)及び高側(浅側)に調節することができる。
ダイヤル設定器79を標準位置に操作していると、整地設定高さA2(整地深さ)に変更はない。植付深さレバー42をレバーガイド43の一目盛りだけ操作した際の植付設定高さA1(設定深さ)の変更量に対して、ダイヤル設定器79を低側(深側)及び高側(浅側)に操作することにより、最大で前述の植付設定高さA1(設定深さ)の変更量を越える範囲(約150%)に、整地設定高さA2(整地深さ)を低側(深側)及び高側(浅側)に変更することができる。
【0054】
図3及び図11に示すように、プッシュオン・プッシュオフ式の操作スイッチ80が支持部材68に備えられており、操作スイッチ80の操作信号が制御装置40に入力されている。昇降操作レバー53が植付位置に操作されたことを検出するリミットスイッチ81が備えられて、リミットスイッチ81の検出信号が制御装置40に入力されており、リミットスイッチ81により植付及び施肥クラッチ23,37が伝動及び遮断状態が認識される。
【0055】
図11に示すように、操作スイッチ80がON位置に操作されている場合において、昇降操作レバー53が植付位置に操作されると(植付及び施肥クラッチ23,37が伝動状態に操作されると)、制御装置40により電動モータ73が操作されて、整地装置54が作業位置A4に下降する。昇降操作レバー53が下降位置、中立位置及び上昇位置に操作されると(植付及び施肥クラッチ23,37が遮断状態に操作されると)、制御装置40により電動モータ73が操作されて、整地装置54が上方位置A3に上昇する。
【0056】
操作スイッチ80がOFF位置に操作されていると、昇降操作レバー53に関係なく(植付及び施肥クラッチ23,37の伝動及び遮断状態に関係なく)、制御装置40により電動モータ73が操作されて、整地装置54が上方位置A3に上昇する。例えば、センターフロート9及びサイドフロート10を田面Gに接地させた状態で、センターフロート9及びサイドフロート10により田面Gを整地しながら旋回する場合(スライディングターン)に対して、操作スイッチ80をOFF位置に操作することは有効である。
【0057】
[9]
次に、搬送ホース22について説明する。
図1,2,3,10に示すように、搬送ホース22は第1ホース部分22aと第2ホース部分22bとにより構成されている。搬送ホース22の第2ホース部分22bは半透明の硬質樹脂製(屈曲不可)で丸パイプ状に構成されており、搬送ホース22の第2ホース部分22bの下部が作溝器16に接続され、搬送ホース22の第2ホース部分22bの上部が支持フレーム28に固定されている。
【0058】
図1,2,3に示すように、搬送ホース22の第1ホース部分22aは半透明の樹脂製のジャバラ状で屈曲自在(可撓性)なホース状に構成されており、搬送ホース22の第1ホース部分22aの上部(前部)が繰り出し部14に接続され、搬送ホース22の第1ホース部分22aの下部(後部)が、搬送ホース22の第2ホース部分22bの上部に接続されている。
【0059】
図3及び図10に示すように、線材を折り曲げて2つのループ部を備えるように支持部材82が構成されて、支持部材82が支持アーム29に固定されており、中央側の2つの搬送ホース22の第1ホース部分22aが、支持部材82の右及び左のループ部に通されている。この場合、図2,3,4,10に示すように、中央側の2つの搬送ホース22の第1及び第2ホース部分22a,22bの接続部分が、操作ロッド78よりも下側に位置しており、中央側の2つの搬送ホース22の第1ホース部分22aが、操作ロッド78の前側(操作ロッド78と機体の後部との間)に位置している。
【0060】
図2,3,4に示すように、右及び左の2つの搬送ホース22の第1及び第2ホース部分22a,22bが、側面視(図2参照)で中央側の2つの搬送ホース22の第1及び第2ホース部分22a,22bと略同じ位置に配置されており、右及び左の2つの搬送ホース22の第1及び第2ホース部分22a,22bの前側(機体の後部側)に、右及び左の操作ロッド72が配置されている。
【0061】
図3及び図4に示すように、線材を折り曲げて1つのループ部を備えるように支持部材83が構成されて、支持部材83が支持フレーム28の右及び左側部に固定されており、右及び左の2つの搬送ホース22の第1ホース部分22aが、支持部材83の上部のループ部に通されている。これにより、右及び左の2つの搬送ホース22の第1ホース部分22aと右及び左の操作ロッド72との干渉が、支持部材83によって防止される。
【0062】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、作溝器16を整地装置54に備えるように構成してもよい。
図12及び図13に示すように、センターフロート9及びサイドフロート11に固定される作溝器16(図5参照)の位置に対応し、整地装置54において回転体62が取り外され、回転体62が取り外された駆動軸61の部分にリング部材84が固定されている。作溝器16にボス部16aが備えられ、作溝器16のボズ部16aが駆動軸61のリング部材84に相対回転自在に外嵌されて、作溝器16が整地装置54(駆動軸61)に支持されている。搬送ホース22の第2ホース部分22bの下部が作溝器16に接続されて、搬送ホース22の第2ホース部分22bにより作溝器16の回り止めが行われている。
【0063】
これにより、前項[8]に記載のように、ダイヤル設定器79により整地設定高さA2(整地深さ)を低側(深側)及び高側(浅側)に調節することによって、作溝器16の田面Gへの入り込み深さ(肥料の供給深さ)を低側(深側)及び高側(浅側)に変更することができる。
【0064】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]において、電動モータ73及び減速機構74を廃止し、人為的に操作される昇降レバー(図示せず)を扇型ギヤ70に固定して、昇降レバーの操作により整地装置54を昇降するように構成してもよい。
【0065】
前述の[発明を実施するための最良の形態]〜[発明の実施の第2別形態]において、水田作業装置及び対地作業装置として、ペースト状の肥料を田面に供給する施肥装置、直播装置、薬剤散布装置及び米ぬか散布装置、溝切り器(不耕起田植用の溝)、溝切り器(排水用の溝)、シート敷設装置(ロール状に巻かれたシート(雑草防止用)を田面に展開させながら敷設する)を備えてもよい。対地作業装置を水田作業装置に支持するのではなく、機体の後部から延出されたリンク機構(図示せず)に対地作業装置を支持するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】苗植付装置及び整地装置の側面図
【図3】苗植付装置及び整地装置の正面図
【図4】苗植付装置及び整地装置の平面図
【図5】センターフロート及びサイドフロートの付近の平面図
【図6】センターフロート及び植付深さレバーの付近の側面図
【図7】センターフロートの前端部の左側部の付近の正面図
【図8】左の支持フレーム、電動モータ及び減速機構、扇型ギヤの付近の正面図
【図9】回転体及び円盤部材の斜視図
【図10】中央側の2つの搬送ホースの付近の側面図
【図11】苗植付装置と整地装置との連係状態を示す図
【図12】発明の実施の第1別形態における整地装置の平面図
【図13】発明の実施の第1別形態における作溝器の付近の縦断側面図
【符号の説明】
【0067】
5 水田作業装置
13 貯留部
14 繰り出し部
16 供給部
22 搬送ホース
54 対地作業装置
70,71,73,74,77,78 昇降機構
G 田面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の後部に水田作業装置を昇降自在に支持し、
前記水田作業装置と機体との間に対地作業装置を備えて、前記対地作業装置を昇降する昇降機構を水田作業装置の前側に備え、
農用供給体を貯留する貯留部と、前記貯留部の農用供給体を繰り出し部とを機体に備え、農用供給体を田面に供給する供給部を備えて、
前記繰り出し部と供給部とに亘って搬送ホースを接続し、前記搬送ホースを昇降機構の前側に配置してある水田作業機。
【請求項2】
前記供給部を対地作業装置に備えてある請求項1に記載の水田作業機。
【請求項1】
機体の後部に水田作業装置を昇降自在に支持し、
前記水田作業装置と機体との間に対地作業装置を備えて、前記対地作業装置を昇降する昇降機構を水田作業装置の前側に備え、
農用供給体を貯留する貯留部と、前記貯留部の農用供給体を繰り出し部とを機体に備え、農用供給体を田面に供給する供給部を備えて、
前記繰り出し部と供給部とに亘って搬送ホースを接続し、前記搬送ホースを昇降機構の前側に配置してある水田作業機。
【請求項2】
前記供給部を対地作業装置に備えてある請求項1に記載の水田作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−220248(P2008−220248A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62153(P2007−62153)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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