説明

水田作業機

【課題】使用者が機体操縦部から機体後方下方側を覗き込む等の煩わしさの無い状態で整地装置の状態を確認することができ、操作性の向上を図ることが可能な水田作業機を提供する。
【解決手段】機体と水田作業装置との間に横方向に沿う軸芯周りで回転駆動される整地ロータ50を備えた整地装置が備えられ、この整地装置が、整地作業を行う作業状態と作業を行わない非作業状態とに切り換え自在に構成され、整地ロータ50の整地深さを表示する表示装置Fと、整地装置が作業状態であれば表示装置Fを整地ロータ50の整地深さを表示する表示状態に切り換え、整地装置が非作業状態であれば表示装置Fを整地ロータ50の整地深さを表示しない非表示状態に切り換える制御装置Hとが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の後部にリンク機構を介して昇降自在に水田作業装置が備えられ、機体と前記水田作業装置との間に、機体横幅方向に沿う軸芯周りで回転駆動される整地ロータを備えた整地装置が備えられ、この整地装置が、整地作業を行う作業状態と作業を行わない非作業状態とに切り換え自在に構成されている水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記水田作業機は、機体の後部にリンク機構を介して水田作業装置を昇降自在に支持し、整地装置を水田作業装置と機体との間に昇降自在に備えて、整地装置により田面を整地しながら水田作業装置による水田作業を行うことができるようにしたものである。
【0003】
このような水田作業機において、従来では、次のように構成されたものがあった。
すなわち、水田作業装置として田面に苗を植えつける苗植付装置が機体に対して昇降自在に備えられ、整地装置が苗植付装置に備えられて、苗植付装置に対する整地ロータの高さを電動モータの駆動により上下に変更自在に構成され、そして、電動モータを制御する制御装置と、田面に対する整地ロータの設定高さを人為的に設定操作可能なダイヤル式の整地設定スイッチとが備えられ、制御装置が、苗植付装置にて苗の植え付け作業を実行しているときには、整地設定スイッチの設定情報に基づいて整地ロータの高さを設定された高さに変更すべく電動モータを制御し、苗植付装置が苗の植え付け作業を実行していないとき、例えば、畦際で旋回走行するために苗植付装置を大きく田面から上昇させているようなときには、整地ロータを苗植付装置に対して最も上昇した退避位置に位置させるように電動モータを制御するように構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ちなみに、特許文献1に示すものでは、整地ロータの高さを設定された高さに変更すべく電動モータにて制御されている状態が前記作業状態に対応し、整地ロータを退避位置に位置させている状態が前記非作業状態に対応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−291146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、苗植付装置が苗の植え付け作業を実行していないときには、上述したように整地ロータが退避位置に位置するように制御される状態、つまり、整地装置が非作業状態に切り換えられているのであるが、使用者は、機体操縦部にて機体前方側を見ながら操縦しており、そのような操縦操作に気を取られて、整地ロータが退避位置に位置するように制御されることを忘れてしまうことがあり、そのようなときは、機体操縦部から機体後方の苗植付装置の下方側箇所を覗き込んで、整地装置が非作業状態であるか否かを確認することが行われていた。
【0007】
本発明の目的は、使用者が機体操縦部から機体後方下方側を覗き込む等の煩わしさの無い状態で整地装置の状態を確認することができ、操作性の向上を図ることが可能な水田作業機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る水田作業機は、機体の後部にリンク機構を介して昇降自在に水田作業装置が備えられ、機体と前記水田作業装置との間に、機体横幅方向に沿う軸芯周りで回転駆動される整地ロータを備えた整地装置が備えられ、この整地装置が、整地作業を行う作業状態と作業を行わない非作業状態とに切り換え自在に構成されているものであって、その第1特徴構成は、前記整地装置が前記整地ロータの田面に対する整地深さを変更調整自在に構成され、前記整地ロータの整地深さを表示する表示手段と、前記整地装置が前記作業状態であれば、前記表示手段を前記整地ロータの整地深さを表示する表示状態に切り換え、前記整地装置が前記非作業状態であれば、前記表示手段を前記整地ロータの整地深さを表示しない非表示状態に切り換える制御手段とが備えられている点にある。
【0009】
第1特徴構成によれば、整地ロータの整地深さを表示する表示手段と、表示手段の作動状態を制御する制御手段とが設けられて、制御手段は、整地装置が作業状態であれば、表示手段を整地ロータの整地深さを表示する表示状態に切り換え、整地装置が非作業状態であれば、表示手段を整地ロータの整地深さを表示しない非表示状態に切り換えることになる。
【0010】
つまり、整地装置が作業状態であれば、表示手段が整地ロータの整地深さを表示する表示状態に切り換えられるから、機体を操縦する使用者は、表示手段の表示内容から現在の整地ロータの整地深さがどの程度であるかを確認することができる。又、整地装置が非作業状態であれば、表示手段が整地ロータの整地深さを表示しない非表示状態に切り換えられるから、機体を操縦する使用者が機体の後方側を目視することなく、表示手段の表示内容から、整地装置が非作業状態に切り換えられていることを容易に確認することができる。従って、操作性の向上を図ることが可能な水田作業機を提供できるに至った。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記整地装置が、前記水田作業装置の昇降に伴って連動して昇降するように構成され、前記制御手段が、前記水田作業装置が機体に対する昇降範囲の上昇側に操作されると、前記整地装置を前記非作業状態に切り換えるように構成されている点にある。
【0012】
第2特徴構成によれば、水田作業装置が畦際等において大きく上昇して機体に対する昇降範囲の上昇側に操作された場合には、それに伴って整地装置も大きく上昇することになるが、そのときは整地装置は非作業状態に切り換えられることになる。
【0013】
そして、整地装置が非作業状態であれば、表示手段が整地ロータの整地深さを表示しない非表示状態に切り換えられるから、機体を操縦する使用者が機体の後方側を目視しなくても、表示手段の表示内容から、整地装置が非作業状態に切り換えられていることを容易に確認することができる。
【0014】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記整地装置の作動の入り切りを指令する手動操作式の作動状態切換手段が備えられ、前記制御手段が、前記作動状態切換手段により前記整地装置の作動の入りが指令されている場合には、前記整地装置を前記作業状態と前記非作業状態とに切り換え、前記作動状態切換手段により前記整地装置の作動の切りが指令されている場合には、前記整地装置を前記非作業状態に維持し且つ前記表示手段を前記非表示状態に切り換えるように構成されている点にある。
【0015】
第3特徴構成によれば、手動操作式の作動状態切換手段により整地装置の作動の入りが指令されている場合には、制御手段は、整地装置を作業状態と非作業状態とに切り換えるのであり、整地装置が作業状態であれば表示手段を表示状態に切り換え、整地装置が非作業状態であれば表示手段を非表示状態に切り換えるものであるから、機体操縦部にて操縦している使用者が機体後方下方側を覗き込む等の煩わしさの無い状態で、整地装置の状態を確認することができる。
【0016】
又、作動状態切換手段により整地装置の作動の切りが指令されている場合には、制御手段は、整地装置を前記非作業状態に維持し且つ表示手段を非表示状態に切り換えるので、機体操縦部にて操縦している使用者が機体後方下方側を覗き込む等の煩わしさの無い状態で、整地装置が非作業状態に切り換えられていることを容易に確認することができる。
【0017】
このように手動操作式の作動状態切換手段により整地装置の作動の入り切りを指令するので、必要なときにのみ整地装置を使用することができて使い勝手のよいものとなる。又、整地装置を使用するときには、表示手段の表示内容から整地装置が作業状態に切り換えられているのか非作業状態に切り換えられているのかを容易に確認することができ、機体操縦部にて操縦している使用者が機体後方下方側を覗き込む等の煩わしさの無い状態で整地装置の状態を確認することができる。
【0018】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記表示手段が、機体前部の操縦部パネルに備えられている点にある。
【0019】
第4特徴構成によれば、表示手段が機体前部の操縦部パネルに備えられているから、操縦部にて機体前方を見ながら操縦している使用者は、機体後方側を振り返ることなく表示手段の表示内容を目視することができ、表示手段の表示内容から整地装置が作業状態に切り換えられているのか非作業状態に切り換えられているのかを容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】乗用型水田作業機の全体を示す側面図である。
【図2】水田作業装置を示す側面図である。
【図3】水田作業装置を示す正面図である。
【図4】水田作業装置の駆動構造を示す平面図である。
【図5】接地フロート及び整地ロータの支持構造を示す平面図である。
【図6】(a)は、整地ロータを下降操作した状態を示す側面図、(b)は、整地ロータを上昇操作した状態を示す側面図である。
【図7】制御ブロック図である。
【図8】表示装置を示す平面図である。
【図9】(a)は、植付け作業中における表示装置の表示状態を示す図、(b)は、旋回走行中における表示装置の表示状態を示す図である。
【図10】設定傾斜角度の設定状態における表示装置の表示状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る水田作業機の実施形態を水田作業機としての乗用型田植機に適用した場合について図面に基づいて説明する。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る乗用型田植機は、左右一対の操向操作及び駆動自在な前車輪1,1、及び左右一対の駆動自在な後車輪2,2が装備された機体としての自走式の走行機体を備え、この走行機体の車体フレーム3の後部にリンク機構4を介して連結された水田作業装置としての苗植付装置10を備え、走行機体の車体後部に設けた肥料タンク21が装備された施肥装置20を備えて構成してある。
【0023】
走行機体は、車体前部に設けたエンジン5、ミッションケース6、左右一対の前車輪1,1を支持する前輪駆動ケース7、左右一対の後車輪2,2を支持する後輪駆動ケース8を備え、エンジン5が出力した駆動力をミッションケース6の内部に位置する走行トランスミッション(図示せず)を介して前輪駆動ケース7及び後輪駆動ケース8に伝達して左右一対の前車輪1,1及び左右一対の後車輪2,2を駆動して走行する。走行機体は運転座席9aが装備された機体操縦部9を備えている。
【0024】
リンク機構4は、上下のリンク4a,4bを備えた平行四連リンクにて構成され、油圧シリンダ31によって車体フレーム3に対して上下に揺動操作されることにより、苗植付装置10をこれの下部に車体横方向に並んで位置する3個の接地フロート11,12が田面Gに接地した下降作業位置と、各接地フロート11,12が田面Gから高く上昇した上昇非作業位置とに昇降操作する。
【0025】
苗植付装置10を下降作業位置に下降させて走行機体を走行させると、苗植付装置10は、エンジン5からの駆動力によって駆動されて、苗植付装置10の後部に車体横方向に並んで位置する8個の苗植付機構13(図4参照)によって田面Gに苗植え付けを行なう。
【0026】
図1に示すように、施肥装置20は、肥料タンク21を備える他、この肥料タンク21の下部に連設された繰出し部22、この繰出し部22の肥料排出部に送風口が連通された電動ブロワ23を備えて構成されている。繰出し部22は、車体横方向に並ぶ8個の肥料排出口を備えており、各肥料排出口は、苗植付装置10の下部に車体横方向に並んで位置する8個の作溝器24(図2参照)のうちの対応する一つに肥料供給ホース25を介して接続されている。繰出し部22は、エンジン5からの動力によって駆動される。
施肥装置20には、肥料タンク21内の肥料が残り少なくなると、そのことを検出する肥料切れセンサS1が備えられ、肥料供給経路中には肥料が詰まったことを検出する肥料詰まりセンサS2が備えられている(図7参照)。
【0027】
苗植付装置10について説明する。
図2に示すように、苗植付装置10は、車体横向きの角形の鋼管材でなるメインフレーム14aを備えて構成されたフレーム14により、8個の苗植付機構13、3個の接地フロート11、12、苗載せ台15等を支持する状態で備えて構成されている。
【0028】
図4に示すように、苗植付装置10のフレーム14は、前記メインフレーム14aを備える他、このメインフレーム14aの車体横方向での中央部に取り付けたフィードケース16を備え、メインフレーム14aから車体後方向きに延出された四つの植付け駆動ケース17を備えて構成してある。四つの植付け駆動ケース17は、車体横方向に所定間隔を隔てて並んでいる。
【0029】
各苗植付機構13は、各植付け駆動ケース17の後端部の両横側に一つずつ位置するように配置され、対応する植付け駆動ケース17の後端部に回転駆動自在に支持されている。各苗植付機構13は、植付け駆動ケース17に回転支軸13aを介して回転駆動自在に支持された回転ロータ13b、及び回転ロータ13bの両端部に回転駆動自在に設けた植付けアーム13cを備えている。
【0030】
各苗植付機構13は、駆動されると、各植付けアーム13cに設けてある植付爪13dの先端が回転軌跡を描いて苗載せ台15の下端部と田面Gとの間を上下に往復移動し、一方の植付けアーム13cの植付爪13dと他方の植付けアーム13cの植付爪13dとによって交互に、苗載せ台15に載置されたマット状苗の下端部から一株分のブロック苗を取り出し、このブロック苗を田面Gに持ち込んで植え付けるという苗植え運動を行なう。
苗植付装置10には、苗載せ台15上の載置苗が残り少なくなるとそのことを検知する苗切れセンサS3(図7参照)が備えられている。
【0031】
又、図1〜図5では図を判り易くするために省略しているが、図7に示すように、苗植付装置10の左右両側部には、次回の植え付け作業行程における中心線を圃場に描くための回転式のマーカー52が電動モータ53の作動により外方に突出する作用姿勢と機体内方側に引退する引退姿勢とに切り換え自在に設けられている。
【0032】
エンジン5の動力が、ミッションケース6内部の変速装置を介して、前車輪1及び後車輪2に伝達される一方、電動モータ57aにより入り切り自在な植付クラッチ57(図7参照)及びPTO軸54(図1参照)を介してフィードケース16に入力され、その駆動力がフィードケース16から伝動軸33(図4参照)を介して各条クラッチ87を介して植付け駆動ケース17の入力軸17aに伝達され、この入力軸17aの駆動力が伝動チェーン34を介して回転支軸13aに伝達され、各苗植付機構13が駆動される。又、エンジン5の動力が電動モータ58aにより入り切り自在な施肥クラッチ58(図7参照)を介して施肥装置20の繰出し部22に伝達される。
【0033】
図5に示すように、各接地フロート11,12は、後端側の上部に設けた取付けブラケット11a,12aを備えている。各接地フロート11,12の取付けブラケット11a,12aは、車体横向きの一本のフロート支軸36から車体後方向きに延出した左右一対の支持アーム37,37に軸芯Pまわりに回転自在に支持されている。フロート支軸36は、苗植付装置10のフレーム14に対して図示しないブラケットを介して回転自在に支持されている。
【0034】
したがって、各接地フロート11,12は、苗植付装置10のフレーム14に対して軸芯Pまわりに各別に揺動昇降するように支持されている。各接地フロート11,12の前端側は、苗植付装置10のフレーム14にリンク機構(図示せず)を介して昇降自在に連結されており、苗植付装置10が上昇非作業位置に上昇された場合、フレーム14から大きく垂れ下がらないようにリンク機構によって吊下げ支持される。
【0035】
図5に示すように、前記フロート支軸36は、これの車体横方向での中間部から苗載せ台15の裏面側に向けて一体回転自在に延出された植付深さ調節レバー40を備えている。この植付深さ調節レバー40をフロート支軸36の軸芯まわりにレバーガイド41のガイド溝に沿わせて揺動調節することにより、フロート支軸36がフレーム14に対して回転して各支持アーム37を上下に揺動操作し、各接地フロート11,12の後端側のフレーム14に対する取り付け高さを変更できる。
そして、植付深さ調節レバー40をレバーガイド41に設けてある位置決め凹入部に係入させることにより、植付深さ調節レバー40が調節位置にレバーガイド41によって係止されてフロート支軸36を固定し、各接地フロート11,12の後端側を変更した取り付け高さに接地フロート11,12に作用する接地反力に抗して維持できる。
【0036】
つまり、植付深さ調節レバー40をフロート支軸36の軸芯まわりに揺動調節してレバーガイド41によって係止させることにより、各接地フロート11,12によって設定される苗植付装置10の対地高さを変更設定でき、8個の苗植付機構13による植付深さを植付深さ調節レバー40の操作位置に対応した植付け深さにすることができる。
【0037】
次に、苗植付装置10について自動昇降制御を行うため構成について説明する。
図7に示すように、横軸芯P周りに中央の接地フロート12の後部が上下に揺動自在に支持アーム37に支持され、この接地フロート12の高さを検出するポテンショメータ42が備えられており、機体の進行に伴って接地フロート12が田面Gに接地追従しながら、ポテンショメータ42の検出値により苗植付装置10に対する中央の接地フロート9の高さ、言い換えると、田面Gからの苗植付装置10の高さを検出することができる。
【0038】
又、油圧シリンダ31に作動油を給排操作する制御弁44が備えられており、制御弁44により油圧シリンダ31に作動油が供給されると、油圧シリンダ31が収縮作動して苗植付装置10が上昇し、制御弁44により油圧シリンダ31から作動油が排出されると、油圧シリンダ31が伸長作動して苗植付装置10が下降するように構成されている。
【0039】
そして、ポテンショメータ42の検出値がマイクロコンピュータを備えて構成される制御手段としての制御装置Hに入力され、制御装置Hは、ポテンショメータ42の検出値が昇降用設定値に維持されるように、制御弁44を操作して油圧シリンダ31を伸縮作動させる。このことにより、苗植付装置10が田面Gから設定高さに維持されることになる。このような制御装置Hによる制御動作が自動昇降制御に相当する。
【0040】
制御装置Hは、植付深さ調節レバー40を操作することにより、接地フロート12の支点位置がフレーム14に対して上下変更操作されて植付け深さが変更調整されると、その変更操作に伴って昇降用設定値を補正するように構成されている。
【0041】
つまり、フロート支軸36の操作位置を基に、植付深さ調節レバー40によって設定される植付け深さを検出する設定植付深さ検出センサ45が設けられ、この設定植付深さ検出センサ45の検出結果に基づいて、制御装置Hが昇降用設定値を補正するのである。この設定植付深さ検出センサ45はフロート支軸36に連係された回転ポテンショメータによって構成されている。
【0042】
図7に示す制御感度設定器49は、制御装置Hによる苗植付装置10の自動昇降制御の制御感度を鈍感側や敏感側に変更調節するものである。すなわち、接地フロート12の支点位置に対して昇降用設定値を高めに設定すると、接地フロート12に対する田面Gからの接地圧が小さくなり制御感度が鈍感になる。昇降用設定値を高めに設定すると、接地フロート12に対する田面Gからの接地圧が大きくなり制御感度が敏感になる。
【0043】
尚、走行機体に対するリンク機構4の昇降角度を検出するポテンショメータ88が備えられて、ポテンショメータ88の検出値が制御装置Hに入力されており、走行機体に対するリンク機構4の角度を検出することにより、走行機体に対する苗植付装置10の高さを検出することができるようになっている。
【0044】
次に、苗植付装置10の自動ローリング制御を行うための構成について説明する。
フィードケース16がリンク機構4の後部下部の前後軸芯P1周りにローリング自在に支持されている。つまり、苗植付装置10がリンク機構4の後部下部の前後軸芯P1周りにローリング自在に支持されている。又、フィードケース16に傾斜センサ48が固定されて、水平面(田面G)に対する苗植付装置10の左右方向の傾斜角度が傾斜センサ48(図3参照)によって検出されており、図7に示すように、傾斜センサ48の検出値が制御装置Hに入力されている。
【0045】
又、図3に示すように、リンク機構4の後部上部に、走行機体に対する苗植付装置10の左右傾斜姿勢を変更操作自在なローリング機構46が備えられている。このローリング機構46は、左右方向に押し引き操作される一対のワイヤ46a、ワイヤ46aを押し引き駆動するギヤ機構(図示せず)及び電動モータ46bを備えて構成されている。ローリング機構46のワイヤ46aと苗植付装置10側のフレームの左右側部とが接続されている。
【0046】
制御装置Hは、傾斜センサ48により検出される水平面に対する苗植付装置10の左右方向の傾斜角度が設定傾斜角度になるようにワイヤ46aを押し引き操作するように電動モータ46bを制御するよう構成されている。このことにより苗植付装置10が自動的に設定傾斜角度に維持されることになる。そして、このような制御装置Hによる制御動作が自動ローリング制御に相当する。
【0047】
前記設定傾斜角度は、操縦部パネル62に備えられた手動操作式の設定傾斜角変更スイッチ63により変更調整することができる。図7に示すように、この設定傾斜角変更スイッチ63は、夫々押し操作式に構成された左傾斜スイッチ63Lと右傾斜スイッチ63Rとで構成され、左傾斜スイッチ63Lを操作すると設定傾斜角が左傾斜側に変化し、右傾斜スイッチ63Rを操作すると設定傾斜角が右傾斜側に変化するように構成されている。
【0048】
ところで、この乗用型田植機では、ある1つの作業行程での植え付け作業が終了して、畦際で旋回したのちに、次行程での植え付け作業を開始する旋回走行を行うときに、左右の後車輪2の内の旋回内側に位置するものの伝動状態を遮断して自由に回転できる状態とし、制御装置Hが、自由回転状態の後車輪2の回転数の検出情報に基づいて、操向角度並びに走行距離を求めて、次回の作業行程での始端位置に至ったことを自動的に判断するようにして、植付作業を自動で開始するようにした旋回終了位置判別制御を実行するように構成されている。
【0049】
旋回終了位置判別制御について、簡単に説明を加えると、前車輪1の操向角度が決まると、走行機体の旋回中心が右及び左の後輪の車軸の延長線に位置していると判断して、前車輪1及び後車輪2のホイルベース(右及び左の前車輪1の車軸と右及び左の後車輪2の車軸との間隔)と、右及び左の前車輪1の直進位置からの操向角度とに基づいて、走行機体の旋回中心が検出され、さらに、走行機体の左右中央と機体の旋回中心との距離が機体の旋回半径として検出される。
このように走行機体の旋回中心及び旋回半径が検出された状態において、旋回中心側の後車輪2の回転数により走行距離が検出され、走行機体の旋回中心及び旋回半径と機体の走行距離とに基づいて走行機体の移動角度が検出される。
そして、走行機体の旋回半径及び移動角度により、植え付け用の作業行程の走行機体の進行方向に沿う走行機体の位置が検出され、その位置が旋回開始位置と同じ位置になると、次回の作業行程での始端位置に至ったものとして、植付作業を自動で開始するのである。
【0050】
図1及び図2に示すように、走行機体と苗植付装置10との間に、機体横幅方向に沿う軸芯周りで回転駆動される整地ロータ50を備えた整地装置Bが備えられている。
図3に示すように、整地ロータ50は中央の接地フロート12の左右両側に位置させる状態で設けられている。
図4に示すように、左側及び右側の整地ロータ50は、整地ロータ50の回転支軸51の一端部と植付け伝動ケース17とにわたって連結した伝動ケース61、整地ロータ50の回転支軸51の他端部及び中間部とメインフレーム14aとにわたって連結した支持手段70を介して苗植付装置10のフレーム14に支持されている。
【0051】
図6に示すように、左側及び右側の整地ロータ50の後方にロータカバー85を設けてあり、各ロータカバー85は、整地ロータ50の外周囲に沿うように成形された湾曲形の鉄板によって構成してある。各ロータカバー85は、整地ロータ50によって跳ね上げられた泥土を接地フロート11などに掛からないように受け止めて田面Gに落下させる。各ロータカバー85は、整地ロータ50と共に昇降操作される。
【0052】
左側及び右側の整地ロータ50は、フィードケース16に伝達された駆動力によって、回転支軸51の車体横向きの軸芯Xまわりに回転駆動される。
【0053】
図3及び図6に示すように、左側及び右側の整地ロータ50を支持する各支持手段70は、整地ロータ50の回転支軸51を軸支部71aで回転自在に支持する軸支リンク71を備え、この軸支リンク71に一端側が連結ピン72aを介して相対回転自在に連結した中間リンク72を備え、この中間リンク72の他端側に遊端側が連結ピン73aを介して相対回転自在に連結された揺動リンク73を備え、中間リンク72の中間部に遊端側が連結ピン74aを介して相対回転自在に連結された操作リンク74を備えている。
揺動リンク73の基端側は、メインフレーム14aに固定されたステー75の支持部75aの上端側に枢支ピン73bを介して回転自在に支持されている。
【0054】
そして、一つの操作リンク74に扇形ギヤ77を一体回転自在に備えさせ、この扇形ギヤ77に出力ギヤ78aが噛み合っている電動モータで成る昇降モータ78をステー75に支持させてある。この昇降モータ78により、出力ギヤ78aによって扇形ギヤ77を連動軸76の軸芯まわりに上昇側あるいは下降側に回転操作して、操作リンク74を上昇側や下降側に揺動操作することができるように構成されている。
【0055】
図7に示すように、苗植付装置10が作業位置に位置している状態において、整地ロータ50が田面Gの上方の退避位置A3及びその退避位置A3よりも下方側に設定されている作業位置A4にわたり昇降モータ78により整地ロータ50を昇降することができる。作業位置A4には、上側(整地深さの浅い側)に作業上限位置A4Uが設定され、下側 (整地深さの深い側)に作業下限位置A4Dが設定されており、整地ロータ50の位置をこれらの範囲内で変更調整することができる。
【0056】
整地ロータ50が作業位置A4にある状態が、整地装置Bが作業状態であることに対応し、整地ロータ50が退避位置A3にある状態が、整地装置Bが非作業状態であることに対応する。
【0057】
つまり、図3に示すように、左側及び右側の整地ロータ50を支持する各支持手段70の夫々における操作リンク74は車体横向きの連動軸76に連結され、昇降モータ78がこの連動軸76を回転駆動することで、操作リンク74を上昇側や下降側に揺動操作し、整地ロータ50を昇降することができる。連動軸76は車体横幅方向に延びる状態で設けられ、1つの昇降モータ78により、左側及び右側の整地ロータ50を同時に昇降させることができるように構成されている。
【0058】
前記連動軸76にはロータ位置検出センサ80が備えられ、このロータ位置検出センサ80は、連動軸76に回転操作軸が連動された回転ポテンショメータによって構成してあり、連動軸76の回転位置を基に左側及び右側の整地ロータ50の苗植付装置10のフレーム14に対する車体上下方向での位置を検出し、この検出結果を制御装置Hに出力する。
【0059】
図7に示すように、機体操縦部9の操縦部パネル62の近傍には、整地ロータ50が作業範囲にあるときの設定整地深さを設定する整地深さ設定器81が備えられ、この整地深さ設定器81は、夫々押し操作式に構成される設定整地深さを浅い側に変更するアップスイッチ81Uと、設定整地深さを深い側に変更するダウンスイッチ81Dの2個のスイッチにて構成されている。現在設定されている設定整地深さは後で詳述する液晶表示式の表示装置Fに表示される。
【0060】
制御装置Hは、設定植付深さ検出センサ45及びロータ位置検出センサ80による検出結果、整地深さ設定器81による設定整地深さに基づいて、左側及び右側の整地ロータ50が接地センサフロート12のフレーム14に対する高さの変更にかかわらず設定整地深さを維持するように昇降モータ78の作動を制御するように構成されている。
【0061】
したがって、植付深さ調節レバー40を操作して接地フロート12の苗植付装置10のフレーム14に対する高さを変更調節しても、左側及び右側の整地ロータ50の昇降調節が行なわれ、左側及び右側の整地ロータ50は、整地深さ設定器81によって設定された設定整地深さを維持してこの設定整地深さで整地作用を行なう。
【0062】
そして、機体操縦部9の操縦部パネル62に、各種の情報を表示する本発明の表示手段に対応する表示装置Fが設けられている。
図8に示すように、表示装置Fは、横幅方向の中央部には、液晶表示パネルを用いた情報表示部F1が備えられ、その情報表示部F1の左右両側には、作業に伴って使用者に報知すべき各種の報知情報を表示するようになっている。すなわち、情報表示部F1の右側には、苗切れセンサS3にて苗載せ台15上に苗残量が少なくなったことが検出されると点灯する苗切れ表示部F2、肥料切れセンサS1にて肥料タンク21内の肥料が残り少なくなったことが検出されると点灯する肥料切れ表示部F3、肥料詰まりセンサS2にて肥料供給経路内で詰まりが発生していることが検出されると点灯する肥料詰まり表示部F4、植付クラッチ57が切れていると点灯する植付クラッチ表示部F5が備えられている。
【0063】
又、情報表示部F1の左側には、エンジン5における油圧系統の異常を表示する油圧異常表示部F8、バッテリーの電圧が低下していることを表示するバッテリー切れ表示部F7、エンジン5の各種の異常を表示するエンジン異常表示部F6、電動モータ86によって複数の植付伝動ケース17に対する動力を各別に断続可能な各条クラッチ87(図7参照)が切状態であることを表示する各条クラッチ表示部F9が備えられている。
【0064】
情報表示部F1の下側には、左右のマーカー52の左右どちらが作用状態になっているかを表示するマーカ表示部F10が備えられている。
【0065】
上記したような各種の報知情報を表示する表示部において、緊急性の高いもの(苗切れ表示部F2、肥料切れ表示部F3、肥料詰まり表示部F4、バッテリー切れ表示部F7、エンジン異常表示部F6)は、例えば赤色で表示し、それほど緊急性が高くないもの(植付クラッチ表示部F5、各条クラッチ表示部9、マーカ表示部F10)は、例えば黄色で色分けして表示するように構成されている。
【0066】
前記情報表示部F1には、左側に燃料の残量を表示する燃料残量表示部90が備えられ、右側にエンジン冷却水の温度を表示する温度表示部91が備えられている。又、中央の下側には、累計稼動時間(アワーメータ)を表示したり、エンジン回転数を表示する数値表示部92、その数値表示部92の上側には,数値表示部92にて表示しているのがアワーメータであるかことを示すアワーメータ指示部93、数値表示部92にて表示しているのがエンジン回転数であることを示すエンジン回転数指示部94が備えられている。
数値表示部92の上側であってエンジン回転数指示部94の左側には、旋回終了位置判別制御を実行している状態であれば点灯し、旋回終了位置判別制御を実行していなければ消灯する旋回用自動制御表示部95が備えられている。
【0067】
旋回終了位置判別制御を実行している状態であるか否かを報知するものとして、表示装置Fにおける旋回用自動制御表示部95の他に、走行機体の機体前部に備えられたセンターマスコットMの先端部に備えられた表示ランプ(図示せず)にて表示するようになっている。但し、このセンターマスコットMの表示は、旋回終了位置判別制御を実行している状態であれば点滅表示するようにして操作者が視認し易いようにしている。
【0068】
尚、旋回終了位置判別制御を実行している状態であるか否かを報知する構成として、旋回用自動制御表示部95の表示内容(点灯表示及び消灯)と、センターマスコットMの表示内容(点滅表示及び消灯)と異ならせるものに代えて、旋回用自動制御表示部95の表示内容とセンターマスコットMの表示内容とを同じものに構成してもよい。
又、表示内容を異ならせる場合、及び、表示内容を同じものにする場合のいずれであっても、例えば、旋回終了位置判別制御を実行しているときの表示として、点灯表示と点滅表示とを組み合わせて使用したり、あるいは、点滅表示の点滅の周期を異ならせて使用する等、種々の形態で表示させることができる。
【0069】
前記数値表示部92は、電源が投入されるとアワーメータを表示し、エンジン5が始動するとエンジン回転数を表示するように表示状態が制御されるが、数値表示部92は、上記したような自動ローリング制御における設定傾斜角度を設定するときの表示としても利用するようになっている。
【0070】
つまり、数値表示部92は単に数字を表示するのではなく、アルファベット及び矢印を表示することができるようになっており、例えば、設定傾斜角度を設定するときは、例えば、図10に示すように、最左側にて「M」を表示して、右傾斜スイッチ63Rが押されると左側から2番目で「→」を表示し、左傾斜スイッチ63Lが押されると、左側から2番目で「←」を表示して、設定傾斜角を合せて表示する。
【0071】
そして、数値表示部92による設定傾斜角度を設定するための表示動作は、右傾斜スイッチ63R又は左傾斜スイッチ63Lが押し操作されたときにのみ行われ、角度設定操作が終了して設定時間が経過すると、エンジン回転数表示に自動的に戻るように表示状態が制御されるように構成されている。
【0072】
燃料残量表示部90と数値表示部92との間に、整地ロータ50に対する設定整地深さを表示する設定整地深さ表示部96が備えられている。この設定整地深さ表示部96は、整地ロータ50についての表示であることを示すロータ表示96Aと5段階の深さを5個の黒丸によりレベル表示する深さ表示96Bとを備える。
【0073】
この設定整地深さ表示部96は、整地深さ設定器81を操作して設定整地深さが変更設定されると、その操作に伴って、深さ表示96Bの5個の黒丸のうちの対応するものを表示して(図9参照)、5段階の深さのうちのいずれかの段数であることを表示する。
【0074】
制御装置Hは、整地装置Bが作業状態であれば、表示装置Fを整地ロータ50の整地深さを表示する表示状態に切り換え、整地装置Bが非作業状態であれば、表示装置Fにて整地ロータ50の整地深さを表示しない非表示状態に切り換えるように構成されている。そして、苗植付装置10が走行機体に対する昇降範囲の上昇側に操作されると、整地装置Bを非作業状態に切り換えるように構成されている。
【0075】
又、図7に示すように、整地装置Bの作動の入り切りを指令する手動操作式の作動状態切換手段としての整地入切スイッチ97が備えられている。
そして、制御装置Hは、整地入切スイッチ97により整地装置Bの作動の入りが指令されている場合には、整地装置Bを作業状態と非作業状態とに切り換え(整地装置Bの作業状態及び非作業状態への切り換えを許容し)、整地入切スイッチ97により整地装置Bの作動の切りが指令されている場合には、整地装置Bを非作業状態に維持し(整地装置Bの作業状態への切り換えを阻止し)且つ表示装置Fにて整地ロータ50の整地深さを表示しない非表示状態に切り換えるよう構成されている。
【0076】
制御装置Hは、走行機体に備えられる機体側制御部H1と苗植付装置10に備えられる作業機設定部H2とからなり、機体側制御部H1と作業機制御部H2とは、夫々、各別に
異なるマイクロコンピュータにて構成され、それらは周知の通信技術であるCAN(Controller Area Network)通信を行うように構成されている。そして、作業機制御部H2は、種々の検出センサの検出情報を管理して機体側制御部H1に送信したり、機体側制御部H1からの指令に基づいて種々の電動モータの制御を行うのであり、単独で制御を行うことはなく、主たる制御は機体側制御部H1にて行うことになる。
【0077】
このようにCAN通信による制御を行うようにしたので、機体側制御部H1と作業機制御部H2との間の通信は2本の電線で行うことになり接続構造が簡単なものとなって、苗植付装置10を走行機体から着脱させる場合に、電線の接続分離作業が行い易いものになる。
【0078】
図7に示すように、操縦ハンドル18の下側の右横側に作業状態切換用の操作レバー98が備えられ、使用者はこの操作レバー98を操作することにより作業状態を切り換える構成となっている。操作レバー98は中立位置Nから上方の第1上昇位置U1、第2上昇位置U2,下方の第1下降位置D1、第2下降位置D2、後方の右マーカー位置R及び前方の左マーカー位置Lの十字方向に操作自在に構成されて、中立位置Nに復帰付勢されており、操作レバー98の操作位置が制御装置Hに入力されている。
【0079】
制御装置Hは、操作レバー98の指令に基づいて次のような制御動作を実行することになる。尚、この制御では、旋回終了位置判別制御は実行せずに、操作レバー98の指令に基づいて制御を実行する場合について説明する。又、整地入切スイッチ97は入状態に操作されているものとする。
【0080】
例えば、畦際で旋回走行するような場合に、操作レバー98が中立位置Nから一旦第2上昇位置U2に操作されると、植付クラッチ57及び施肥クラッチ58を遮断状態に操作して、自動昇降制御及び自動ローリング制御を停止し、制御弁44を供給位置に操作して油圧シリンダ31を収縮作動させて苗植付装置10を上昇させる。このとき、苗植付装置10が上限位置に達したことがポテンショメータ88により検出されると、制御弁44を中立位置に操作して油圧シリンダ31を停止させる。尚、操作レバー98は第2上昇位置U2に操作されたのち、操作者が手を離すと、中立位置Nに自動で復帰することになる。
【0081】
又、操作レバー98が中立位置Nから一旦第2上昇位置U2に操作されると、整地ロータ50が自動的に格納位置A3になるように昇降モータ78を制御する。この状態が整地装置Bが非作業状態であることに対応する。
このとき、図9(b)に示すように、表示装置Fにて整地ロータ50の整地深さを表示しない非表示状態に自動的に切り換える。このとき、設定整地深さ表示部96のロータ表示96Aと深さ表示96Bとを共に消灯して表示しない状態になる。
【0082】
従って、制御装置Hは、苗植付装置10が走行機体に対する昇降範囲の上昇側に操作されると、整地装置Bを非作業状態に自動的に切り換えるように構成されている。
【0083】
旋回走行が終了して、操作レバー98を第2下降位置D2に操作すると(第2下降位置D2に操作して中立位置Nに復帰すると)、制御弁44を排出位置に操作して油圧シリンダ31を伸長作動させて苗植付装置10を下降させる。そして、中央の接地フロート12が田面Gに接地すると、自動昇降制御及び自動ローリング制御を開始して、苗植付装置10が田面Gに接地して停止した状態となる。この状態では、整地ロータ50は未だ格納位置A3に維持されている。
【0084】
操作レバー98を第2下降位置D2に操作して中立位置Nに復帰した後、苗の植え付け開始位置まで走行したのち、操作レバー98を再び第2下降位置D2に操作すると、自動昇降制御及び自動ローリング制御が作動した状態で、植付クラッチ57及び施肥クラッチ58を自動的に伝動状態に切り換える。又、整地ロータ50を自動的に格納位置A3から設定整地深さに対応する作業位置になるように昇降モータ78を制御する。この状態が整地装置Bが作業状態であることに対応する。
このとき、図9(a)に示すように、表示装置Fの表示状態を整地ロータ50の整地深さを表示する表示状態に自動的に切り換える。
【0085】
操作レバー98を右マーカー位置Rに操作すると(右マーカー位置Rに操作して中立位置Nに復帰すると)、電動モータ53により右のマーカー52が作用姿勢に操作され、操作レバー98を左マーカー位置Lに操作すると(左マーカー位置Lに操作して中立位置Nに操作すると)、電動モータ53により左のマーカー52が作用姿勢に操作されるが、操作者は、植え付け作業において、次回の作業行程に対応する側のマーカー52を作用姿勢に操作することになる。
【0086】
そして、自動昇降制御及び自動ローリング制御が停止し、植付クラッチ57及び施肥クラッチ58が遮断状態に操作されている状態で、操作レバー98を第1上昇位置U1に操作すると、操作レバー98を第1上昇位置U1に維持している間は、制御弁44を供給位置に操作して油圧シリンダ31を収縮作動させて、苗植付装置10を上昇させる。その後、操作者が手を離して操作レバー98が中立位置Nに復帰すると、制御弁44を中立位置に操作して苗植付装置10の上昇を停止させる。従って、苗植付装置10を任意の位置まで上昇させることができる。
【0087】
又、自動昇降制御が停止し、植付クラッチ57及び施肥クラッチ58が遮断状態に操作されている状態で、操作レバー98を第1下降位置D1に操作すると、操作レバー98を第1下降位置D1に維持している間は、制御弁44を排出位置に操作して油圧シリンダ31を伸長作動させて苗植付装置10を下降させる。その後、操作者が手を離して操作レバー98が中立位置Nに復帰すると、制御弁44を中立位置に操作して苗植付装置10の下降を停止させる。従って、苗植付装置10を任意の位置まで下降させることができる。
【0088】
上記した動作説明では、整地入切スイッチ97は入状態に操作されている場合について説明したが、整地入切スイッチ97により整地装置Bの作動の切りが指令されている場合には、苗植付装置10の作業状況にかかわらず整地ロータ50は退避位置A3(非作業状態)に維持され、且つ、表示装置Fを整地ロータ50の整地深さを表示しない非表示状態に自動的に切り換えてその非表示状態を継続することになる。
【0089】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、水田作業装置として苗植付装置10を例示したが、これに代えて、ペースト状の肥料を田面に供給する施肥装置、直播装置、薬剤散布装置及び米ぬか散布装置等を備えてもよい。
【0090】
(2)上記実施形態では、整地装置Bが水田作業装置(苗植付装置10)に備えられるものを例示したが、整地装置53を水田作業装置(苗植付装置10)に支持するのではなく、走行機体の車体フレーム3の後部にリンク機構を介して昇降自在に整地装置Bを支持するように構成してもよい。
【0091】
(3)上記実施形態では、整地ロータ50を格納位置A3と作業位置A4とにわたり高さ調整自在に構成して、整地ロータ50が格納位置A3であれば整地装置Bが非作業状態であると判別されるようにしたが、このような構成に代えて、整地ロータ50を回転駆動するための動力を断続自在なロータ用のクラッチ(図示せず)を備えて、このロータ用のクラッチが切状態であれば整地装置Bが非作業状態であると判別されるようにしてもよい。
【0092】
(4)上記実施形態では、表示装置Fの設定整地深さ表示部96を非表示状態とするにあたり、設定整地深さ表示部96のロータ表示96Aと深さ表示96Bとを共に消灯するようにしたが、深さ表示96Bだけを消灯させるようにしてもよい。
【0093】
(5)上記実施形態では、表示装置Fが機体前部の操縦部パネル62に備えられるものと例示したが、操縦ハンドル18の中央部に備えるようにしたり、運転座席9aの横側に位置する状態でアームレストを備えて、そのアームレストに表示装置Fを設けるようにしてもよい。
【0094】
(6)上記実施形態では、制御装置Hが、夫々各別にマイクロコンピュータを備えた機体側制御部H1と作業機側制御部H2とをCAN通信する状態で備えたものを例示したが、制御装置Hは、1つのマイクロコンピュータにて構成されるものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、苗植え付け作業や直播作業等の水田作業を行う水田作業装置と整地作業を行う整地装置とを備えた水田作業機に適用できる。
【符号の説明】
【0096】
4 リンク機構
10 水田作業装置
50 整地ロータ
62 操縦部パネル
97 作動状態切換手段
B 整地装置
H 制御手段
F 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の後部にリンク機構を介して昇降自在に水田作業装置が備えられ、機体と前記水田作業装置との間に、機体横幅方向に沿う軸芯周りで回転駆動される整地ロータを備えた整地装置が備えられ、この整地装置が、整地作業を行う作業状態と作業を行わない非作業状態とに切り換え自在に構成されている水田作業機であって、
前記整地装置が前記整地ロータの田面に対する整地深さを変更調整自在に構成され、
前記整地ロータの整地深さを表示する表示手段と、
前記整地装置が前記作業状態であれば、前記表示手段を前記整地ロータの整地深さを表示する表示状態に切り換え、前記整地装置が前記非作業状態であれば、前記表示手段を前記整地ロータの整地深さを表示しない非表示状態に切り換える制御手段とが備えられている水田作業機。
【請求項2】
前記整地装置が、前記水田作業装置の昇降に伴って連動して昇降するように構成され、
前記制御手段が、前記水田作業装置が機体に対する昇降範囲の上昇側に操作されると、前記整地装置を前記非作業状態に切り換えるように構成されている請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】
前記整地装置の作動の入り切りを指令する手動操作式の作動状態切換手段が備えられ、
前記制御手段が、
前記作動状態切換手段により前記整地装置の作動の入りが指令されている場合には、前記整地装置を前記作業状態と前記非作業状態とに切り換え、前記作動状態切換手段により前記整地装置の作動の切りが指令されている場合には、前記整地装置を前記非作業状態に維持し且つ前記表示手段を前記非表示状態に切り換えるように構成されている請求項1又は2記載の水田作業機。
【請求項4】
前記表示手段が、機体前部の操縦部パネルに備えられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−200156(P2011−200156A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69881(P2010−69881)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】