水田作業機
【課題】簡単な操作で、田面の土中に埋め込む状態で粉粒体を供給する状態と、田面の表面又はその近傍に供給する粉粒体を供給する状態とに切り換えることが可能となる水田作業機を提供する。
【解決手段】 走行機体の走行に伴って機体横幅方向に並ぶ複数の供給箇所において田面に粉粒体を供給する粉粒体供給装置が備えられ、粉粒体供給装置の複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置を、同時に、田面から設定深さ以上下方に入り込ませる低位置供給状態と、粉粒体供給経路の先端位置を田面から設定深さよりも浅い位置又は田面の上方近傍位置に位置させる高位置供給状態とに切り換え自在な供給位置調節機構KTが備えられている。
【解決手段】 走行機体の走行に伴って機体横幅方向に並ぶ複数の供給箇所において田面に粉粒体を供給する粉粒体供給装置が備えられ、粉粒体供給装置の複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置を、同時に、田面から設定深さ以上下方に入り込ませる低位置供給状態と、粉粒体供給経路の先端位置を田面から設定深さよりも浅い位置又は田面の上方近傍位置に位置させる高位置供給状態とに切り換え自在な供給位置調節機構KTが備えられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の走行に伴って機体横幅方向に並ぶ複数の供給箇所において田面に粉粒体を供給する粉粒体供給装置が備えられた水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記水田作業機は、粉粒体供給装置として、粉粒体の一例である肥料や薬剤を田面に供給する施肥装置を備えるもの、粉粒体の一例である種籾を田面に供給する直播装置を備えるもの、又、それらの施肥装置と直播装置とを共に備えるもの等がある。
【0003】
そして、この種の水田作業機において、従来では、粉粒体供給装置として施肥装置と直播装置とを共に備えるものにおいて、施肥装置における粉粒体供給経路としての肥料供給経路の先端位置、並びに、直播装置における粉粒体供給経路としての種籾供給経路の先端位置の夫々が、田面に対して一定深さとなる位置で固定されたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
説明を加えると、走行機体の後部に、施肥装置及び直播装置を備えており、施肥装置が、肥料供給経路の先端位置に田面に入り込み田面に供給用の溝を形成する作溝器を備えて構成され、又、直播装置も同様に、種籾供給経路の先端位置に田面に入り込み田面に供給用の溝を形成する作溝器を備えて構成され、支持フレームに支持されて田面の表面に沿って追従する接地フロートに、その接地フロートの接地面よりも下方に突出する状態で施肥装置及び直播装置夫々の作溝器が位置固定状態で取り付けられる構成となっていた。接地フロートは田面の表面に沿って追従するものであるから、その接地フロートに位置固定状態で取り付けられる作溝器の先端位置は田面に対して一定深さとなる位置で固定されることになる。
【0005】
要するに、従来では、粉粒体供給装置における粉粒体供給経路の先端位置が田面に対して一定深さとなる位置で固定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−315408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記粉粒体供給装置にて供給される粉粒体としては、田面より下方側に一定深さの泥土内に供給することが適している粉粒体だけでなく、田面の表面又は田面の泥土内の表面に近い箇所に供給することが適している粉粒体も存在する。
【0008】
説明を加えると、先ず、粉粒体として薬剤を供給する場合について説明する。
薬剤として、例えば、イモチ病等の病気に対して薬用効果を有する薬剤は一般に遅効性であり、田面より下方側に一定深さの泥土内に供給することにより良好な薬効効果を発揮させ易いものである。しかしながら、薬剤として、除草剤等のような即効性の薬剤であれば、田面より下方側に一定深さの泥土内ではなく、田面の表面又は表面に近い位置に供給する方が薬剤として良好に作用するものである。
【0009】
次に、粉粒体として種籾を供給する場合について説明する。
種籾としては、従来より、カルパコーティングされた種籾(カルパ種籾)が主に使用されていた。このカルパ種籾は、水に溶けると酸素を発生する薬剤が外面にコーティングされた種籾であり、田面内に埋められた種籾が窒息しないようにしたものである。つまり、このカルパ種籾を田面に供給するときには、上記したような従来構成の直播装置を用いて、田面より下方側に一定深さの泥土内に供給して埋めるようにすると、鳥等に種籾が食われることがない状態で種籾が窒息することなく良好に発芽させることが可能となる。
【0010】
又、最近では、上記したようなカルパ種籾とは別に、種籾に鉄粉がコーティングされた鉄コーティング種籾が利用されるようになっている。この鉄コーティング種籾は、カルパ種籾のように田面内に埋められた状態で酸素を発生するものではないから、カルパ種籾と同じように、従来構成の直播装置を用いて、田面より下方側に一定深さの泥土内に供給して埋めるようにすると、種籾が窒息してしまうおそれがある。そこで、このような鉄コーティング種籾は、種籾が呼吸することができるように、田面の表面又は表面に近い位置に供給する必要がある。
【0011】
しかし、上記従来構成では、粉粒体供給装置における粉粒体供給経路の先端位置が田面に対して一定深さとなる位置で固定されていたから、粉粒体として、肥料やカルパ種籾等のように、田面より下方側に一定深さの泥土内に供給することが適している粉粒体を供給する場合には好適に使用することができるが、粉粒体として、除草剤等のような薬剤や鉄コーティング種籾等のように、田面の表面に供給するような種類の粉粒体を供給することができないものとなる。
【0012】
そこで、粉粒体として、田面の表面又はその近傍に供給するような種類の粉粒体を供給する場合には、例えば、接地フロートに対する作溝器の取り付け位置を異ならせるように、接地フロートに対して作溝器等を付け替える必要があるが、粉粒体供給装置は、走行機体の走行に伴って機体横幅方向に並ぶ複数の供給箇所において田面に粉粒体を供給するものであるから、複数の供給箇所において夫々、作溝器等を取り替えるという煩わしい作業が必要となる。
【0013】
本発明の目的は、簡単な操作で、田面の土中に埋め込む状態で粉粒体を供給する状態と、田面の表面又はその近傍に供給する粉粒体を供給する状態とに切り換えることが可能となる水田作業機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る水田作業機は、走行機体の走行に伴って機体横幅方向に並ぶ複数の供給箇所において田面に粉粒体を供給する粉粒体供給装置が備えられたものであって、その第1特徴構成は、前記粉粒体供給装置の複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置を、同時に、田面から設定深さ以上下方に入り込ませる低位置供給状態と、田面から前記設定深さよりも浅い位置又は田面の上方近傍位置に位置させる高位置供給状態とに切り換え自在な供給位置調節機構が備えられている点にある。
【0015】
第1特徴構成によれば、供給位置調節機構を用いて、粉粒体供給装置の複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置を、同時に、田面から設定深さ以上下方に入り込ませる低位置供給状態と、田面から前記設定深さよりも浅い位置又は田面の上方近傍位置に位置させる高位置供給状態とに切り換えることができる。
【0016】
粉粒体として、例えば、泥土内に埋め込まれても種籾が窒息することがないカルパ種籾を田面に供給する場合には、供給位置調節機構にて低位置供給状態に切り換えることで、田面から設定深さ以上下方に入り込ませる位置に粉粒体を供給することができるから、鳥等に種籾が食われることがない状態で良好に発芽させることが可能な状態でカルパ種籾を田面に供給することができる。
【0017】
そして、粉粒体として、例えば、鉄コーティング種籾を田面に供給する場合には、供給位置調節機構にて高位置供給状態に切り換えることで、田面から前記設定深さよりも浅い位置又は田面の上方近傍位置に粉粒体を供給することができ、窒息することを回避させる状態で鉄コーティング種籾を田面に供給することができる。
【0018】
又、粉粒体として、例えば、肥料やイモチ病に対する薬剤等のような遅効性の薬剤を供給する場合には、供給位置調節機構にて低位置供給状態に切り換えることで、田面の泥土内に設定深さ以上に入り込んだ位置に粉粒体を供給することができるから、良好な生育効果を発揮させ易い状態で肥料を供給することができ、又、良好な薬効効果を発揮させ易い状態で薬剤を供給することができる。
【0019】
そして、粉粒体として、例えば、除草剤等の即効性の薬剤を田面に供給する場合には、供給位置調節機構にて高位置供給状態に切り換えることで、田面から前記設定深さよりも浅い位置又は田面の上方近傍位置に粉粒体を供給することができるから、薬剤として良好に作用する状態で田面の表面に供給することができる。
【0020】
しかも、供給位置調節機構は、複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置について、それらを同時に低位置供給状態と高位置供給状態とに切り換えることができるものであるから、複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置を各別に切り換える等の煩わしさがなく、簡単な操作で粉粒体供給経路の先端位置を変更することができる。
【0021】
従って、第1特徴構成によれば、簡単な操作で、田面の土中に埋め込む状態で粉粒体を供給する状態と、田面の表面又はその近傍に供給する粉粒体を供給する状態とに切り換えることが可能となる水田作業機を提供できるに至った。
【0022】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記供給位置調節機構が、前記低位置供給状態及び前記高位置供給状態の夫々において、複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを微調節可能に構成されている点にある。
【0023】
第2特徴構成によれば、低位置供給状態及び高位置供給状態の夫々において、複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを微調節することが可能であるから、例えば、圃場の泥土の硬さの違いがあったり、又、走行機体の走行速度が変化することがあっても、そのように作業状況の違いに応じて、変化した作業状況に適合した適切な位置になるように複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを調整することが可能となる。
【0024】
従って、第2特徴構成によれば、圃場の泥土の硬さの違いがあったり、走行機体の走行速度が変化する等の作業状況の違いに応じて適切な位置になるように、複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを調整することができ、良好な粉粒体供給作業を行うことができる。
【0025】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記粉粒体とは異なる種類の別種粉粒体を田面に供給する別種粉粒体用供給装置を備えて構成され、前記粉粒体供給装置及び前記別種粉粒体用供給装置の夫々が粉粒体供給経路の先端位置に田面に入り込み田面に粉粒体供給用の溝を形成する作溝器と、前記作溝器にて田面に形成した溝を埋め戻す覆土部材とを備えて構成され、前記別種粉粒体用供給装置の前記作溝器が前記粉粒体供給装置の前記作溝器よりも機体前方に位置をずらせた状態で設けられ、前記別種粉粒体用供給装置の前記作溝器に対応する前記覆土部材が、その作溝器の機体前後方向の後方側であって且つ機体横幅方向の一方側箇所に位置させた状態で設けられ、前記粉粒体供給装置の前記作溝器が、前記別種粉粒体用供給装置の前記作溝器の機体前後方向の後方側であって且つ機体横幅方向の他方側箇所に位置させた状態で設けられている点にある。
【0026】
第3特徴構成によれば、粉粒体とは異なる種類の別種粉粒体を田面に供給する別種粉粒体用供給装置を備えて構成されている。例えば、前記粉粒体として種籾を供給する場合であれば、別種粉粒体として肥料や薬剤等を供給する場合、又は、前記粉粒体として肥料や薬剤を供給する場合であれば、別種粉粒体として種籾を供給する場合等がある。
【0027】
そして、機体の進行に伴って別種粉粒体用供給装置の作溝器が泥を左右方向に押し退けながら田面に溝を形成することになるが、粉粒体供給装置の作溝器が、別種粉粒体用供給装置の作溝器の機体前後方向の後方側であって且つ機体横幅方向の他方側箇所に位置させた状態で設けられているから、粉粒体供給装置の作溝器は、別種粉粒体用供給装置の作溝器により田面に形成された溝に向かって溝の機体横幅方向の他方側から泥を押すことになり、別種粉粒体用供給装置の作溝器は覆土部材と同じような機能を備えることになる。
【0028】
一方、機体横幅方向の一方側箇所には、別種粉粒体用供給装置の作溝器に対応する覆土部材が設けられるから、別種粉粒体用供給装置の作溝器により田面に形成された溝に向かって溝の機体横幅方向の一方側から泥を押すことになる。つまり、別種粉粒体用供給装置の後方において左右方向の両側に覆土部材を備えた状態と同じような状態が得られる。
つまり、粉粒体供給装置の作溝器を覆土部材に兼用することができて、別種粉粒体用供給装置の後方において左右方向の両側に覆土部材を備える必要が少ない。
【0029】
従って、第3特徴構成によれば、粉粒体とそれとは異なる種類の別種粉粒体とを共に田面に供給することができるものでありながら、別種粉粒体用供給装置の作溝器により田面に溝を形成し、その溝に別種粉粒体を供給して田面内に埋めるように構成する場合、粉粒体供給装置の作溝器を覆土部材に兼用することができ、別種粉粒体用供給装置の作溝器の後方において左右方向の両側に覆土部材を備える必要が少なくなって、構造の簡素化及び低コスト化を図ることができた。
【0030】
本発明の第4特徴構成は、第3特徴構成に加えて、前記別種粉粒体用供給装置が、前記別種粉粒体として肥料又は薬剤を田面に供給するものであり、前記粉粒体供給装置が、前記粉粒体として種籾を田面に供給するものである点にある。
【0031】
第4特徴構成によれば、別種粉粒体用供給装置が肥料又は薬剤を田面に供給することになり、粉粒体供給装置が種籾を田面に供給することになる。つまり、肥料や薬剤と種籾とを同時に田面に供給することができる。
【0032】
従って、第4特徴構成によれば、覆土部材の兼用により構造の簡素化を図ることが可能でありながらも、肥料や薬剤を田面内に良好に埋め込むことが可能な状態で、肥料や薬剤と種籾とを同時に田面に供給することが可能となった。
【0033】
本発明の第5特徴構成は、第3特徴構成又は第4特徴構成に加えて、前記粉粒体供給装置における前記覆土部材の田面に対する作用高さを変更調整自在な覆土位置調節機構が備えられている点にある。
【0034】
第5特徴構成によれば、粉粒体供給装置における覆土部材の田面に対する作用高さを変更調整することができるから、田面の土中に埋め込む状態で粉粒体を供給する場合において、土の硬さが異なっている場合、あるいは、粉粒体供給経路の先端位置を変更調整したような場合等、作業状況の違いに応じて覆土部材の田面に対する作用高さを適切な高さに変更調整することが可能となる。
【0035】
従って、第5特徴構成によれば、作業状況の違いに応じて覆土部材の田面に対する作用高さを適切な高さに変更調整することが可能となり、粉粒体及び別種粉粒体の夫々について田面の土中に埋め込む状態で供給する場合において、別種粉粒体並びに粉粒体のいずれのものについても、田面内に良好に埋め込むことが可能な状態で田面に供給することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】乗用型直播機の全体側面図である。
【図2】乗用型直播機の全体平面図である。
【図3】施肥装置(ホッパー及び繰り出し部)の側面図である。
【図4】直播装置及び整地装置の側面図である。
【図5】施肥装置(ホッパー及び繰り出し部)の背面図である。
【図6】直播装置の背面図である。
【図7】直播装置の繰り出し部の付近の横断平面図である。
【図8】直播装置の種籾作溝器の付近の横断平面図である。
【図9】供給位置調節機構の側面図である。
【図10】供給位置調節機構の横断平面図である。
【図11】供給位置調節機構の分解斜視図である。
【図12】(a)は覆土位置調節機構の側面図、(b)は覆土深さ調節レバーの係止構造を示す平面図である。
【図13】覆土位置調節機構の平面図である。
【図14】センターフロートの付近の側面図である。
【図15】センターフロートの支持構造を示す分解斜視図である。
【図16】制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る水田作業機の実施形態を乗用型直播機に適用した場合について、図面に基づいて説明する。
【0038】
図1及び図2に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2により支持された走行機体の後部に、リンク機構3が昇降自在に支持され、リンク機構3を昇降操作する油圧シリンダ4が備えられており、リンク機構3に粉粒体供給装置としての直播装置5が支持されて、水田作業機としての乗用型直播機が構成されている。この乗用型直播機は、直播装置5に支持される状態で走行機体と直播装置5との間に整地装置37が備えられており、走行機体の後部に施肥装置20が支持されている。
【0039】
図1及び図3に示すように、走行機体は、右及び左の機体フレーム28が前後方向に配置されて、縦壁状の右及び左の縦壁フレーム29が右及び左の機体フレーム28の後部に連結されている。リンク機構3は、1本のトップリンク3a、2本のロアリンク3b、トップリンク3a及びロアリンク3bの後部に亘って接続された縦リンク3cにより構成されている。リンク機構3のトップリンク3a及び油圧シリンダ4が右及び左の支持板29に上部に上下揺動自在に支持され、リンク機構3のロアリンク3bが右及び左の機体フレーム28の後部に上下揺動自在に支持されている。
【0040】
次に、施肥装置20について説明する。
図1、図3及び図5に示すように、前記縦壁フレーム29に丸パイプ材をL字に屈曲させた支持フレーム30が連結され、支持フレーム30の上端の横軸芯P1周りに回転自在に支持された横フレーム31に、夫々2条分の施肥を行う繰り出し部15と、各繰り出し部15の上部に位置して粉粒状の肥料を貯留する4個のホッパー14とが夫々備えられてる。横フレーム31に連結されたフレーム35が前方に延出されて、フレーム35によりホッパー14の中間部が支持されており、フレーム35がバックル機構36を介して支持フレーム33に連結されている。
【0041】
図1に示すように、運転座席21の下側で右及び左の縦壁フレーム29の間にブロア16が備えられており、ブロア16から二股状に延出されたダクト32が繰り出し部15に接続されている。図6に示すように、中央の接地フロート(センターフロート)9に2個の肥料作溝器17、センターフロート9の両側に位置する接地フロート(サイドフロート)10に2個の肥料作溝器17、左右両端側の接地フロート(サイドフロート)11に1個の肥料作溝器17が備えられている。そして、前記各肥料作溝器17の機体後方側には、夫々、肥料作溝器17にて田面Gに形成した溝を埋め戻す施肥用の覆土部材88が設けられている。
【0042】
図1及び図2に示すように、繰り出し部15と肥料作溝器17とに亘って、可撓性を備えたホース18,19が接続されており、ホース18,19を接続する中間パイプ130(硬質樹脂製)が縦フレーム25,26(図6参照)に接続されて支持されている。
以上のようにホッパー14、繰り出し部15、ブロア16、ダクト32、肥料作溝器17、施肥用の覆土部材88、ホース18,19等により施肥装置20が構成されている。
【0043】
次に、肥料作溝器17について説明する。
図4に示すように、側面視で三角形状、平面視で先細り状(クサビ状)の溝切り部材84が、センターフロート9及びサイドフロート10,11の夫々に機体横幅方向に適宜間隔をあけて連結される状態で備えられ、この溝切り部材84は各フロート9,10,11の底面から下方に突出している。
【0044】
図4及び図8に示すように、平面視U字状に形成された肥料作溝器17が溝切り部材84の後部に連結されており、ゴム製でジャバラの筒状の接続部材85が肥料作溝器17の上部に取り付けられて、ホース19が接続部材85に挿入されている。
従って、肥料作溝器17の下端位置は、センターフロート9及びサイドフロート10,11の底面(田面G)に対して一定深さとなる位置で固定された状態となっている。
【0045】
次に、直播装置5の概要について説明する。
図6に示すように、直播装置5は、種籾を貯留する2条対応の4個のホッパー6、2条対応の4個の繰り出し部7、1個のブロア8が備えられており、センターフロート9及びサイドフロート10,11が左右方向に並べて備えられている。又、左右方向に所定間隔をおいて配置された8個の種籾作溝器12、種籾作溝器12にて田面Gに形成した溝を埋め戻す直播用の覆土部材88が備えられ、繰り出し部7と種籾作溝器12とに亘ってホース13が接続されている。
【0046】
直播装置5の後部には、田面Gに溝を形成する4個の溝形成部材99が機体横幅方向に間隔をあけて設けられている。この溝形成部材99は、田面Gに接地する作用状態と田面Gの上方に大きく上昇する退避状態とにわたり、横軸芯P5周りで上下揺動自在に支持されている。
【0047】
つまり、図4に示すように、位置固定状態並びに横軸芯P5周りで回動自在に支持された支点軸134に、機体横幅方向に間隔をあけて4本の支持アーム135が一体延設され、各支持アーム135の先端部に溝形成部材99が回動自在に支持されている。支点軸134に設けられたブラケット136と、直播装置5の機体前方側に備えられた操作レバー137とが連動連結され、この操作レバー137によって溝形成部材99の作用状態と退避状態との切り換え操作を行うように構成されている。溝形成部材99は、作用状態ではバネ138により下方に揺動付勢され、田面G上に排水用の溝を形成するように構成されている。
【0048】
図9に示すように、前記支点軸134は、後述するようにメインフレーム24に連結された5個のフロート支持フレーム48の後端部に連結されたブラケット48aに形成した軸受け部139aにて回動自在に支持されている。
【0049】
図1、図2、図6、図7に示すように、右及び左のマーカー22が直播装置5の右及び左部に備えられており、田面Gに接地して指標を形成する作用姿勢、及び田面Gから上方に離れた格納姿勢(図1、図6等参照)に操作自在に構成されている。右及び左のマーカー22は上下揺動自在に直播装置5に支持されたアーム部22aと、アーム部22aの先端部に自由回転自在に支持された回転体22bとを備えて構成されており、右及び左のマーカー22を作用姿勢及び格納姿勢に操作する電動モータ23が備えられている。
【0050】
次に、直播装置5の全体構造及び支持構造について説明する。
図6、図7、図8に示すように、角パイプ状の左右方向に向くメインフレーム24が備えられて、メインフレーム24の左右中央付近に2本の縦フレーム25が連結され、メインフレーム24の右及び左部に2本の縦フレーム26が連結されており、縦フレーム25,26の上下中間部に亘って左右方向に向く横フレーム27が連結されている。
【0051】
縦フレーム25,26の上部に亘って左右方向に向く横フレーム38が連結され、縦フレーム26の上部に前方に向く横フレーム39が連結されている。横フレーム39の前部に亘って左右方向に向く横フレーム40が連結されており、横フレーム38,40に亘って前後方向に向く横フレーム41が連結されている。
【0052】
縦フレーム25の下部に亘って左右方向に向く横フレーム42が連結され、横フレーム42とメインフレーム24とに亘って縦フレーム43が連結されており、ローリング用のボス部44がメインフレーム24及び縦フレーム43を貫通して連結されている。前後方向に向く支持軸(図示せず)がリンク機構3の縦リンク3cの下部に備えられており、ボス部44がリンク機構3の支持軸に回転自在(ローリング自在)に外嵌されている。
【0053】
縦フレーム89が横フレーム39に連結されて、前方から上方に向けて延出されている。縦フレーム89に連結されたフック89aが右及び左方(外方)に延出されている。図6及び図7に示すように、右の横フレーム39にアーム39aが連結されて、右方(外方)に延出されている。左の縦フレーム26にアーム26aが連結されて、ブロア8及び電動モータ45の下側を左方(外方)に延出されている。
【0054】
これにより、メインフレーム24等に直播装置5の全体が支持された構造となっており、直播装置5がリンク機構3の支持軸(ボス部44)の前後軸芯P2周りにローリング自在に支持され、リンク機構3により昇降自在に支持されている。
【0055】
次に、直播装置5における繰り出し部7及びホッパー6の支持構造について説明する。
図4に示すように、横フレーム38,40の間に位置するように、繰り出し部7が横フレーム38,40に連結されており、種籾を貯留する4個のホッパー6が繰り出し部7の上部に連結されて、4個のホッパー6が互いに連結されている。この場合、図2に示すように、4個のホッパー6の全体の横幅が、4個のホッパー14の全体の横幅と略同じものとなっており、左右方向において、4個のホッパー6の全体の右及び左端部と、4個のホッパー14の全体の右及び左端部とが略同じ位置に位置している(前後方向から目視して、4個のホッパー6の全体の右及び左端部と、4個のホッパー14の全体の右及び左端部とが略同じ位置に位置している)。
【0056】
図6に示すように、左の縦フレーム26にブロア8が連結されて、ブロア8の内部の回転羽根(図示せず)の回転軸芯が機体前後方向に向いた状態となっており、ブロア8を駆動する電動モータ45がブロア8の前部に連結され、下向きの吸気口46aを備えた吸気カバー46がブロア8の後部に連結されている。ブロア8からダクト47が延出されて、ダクト47が繰り出し部7に接続されており、繰り出し部7と種籾作溝器12とに亘ってホース13が接続されている。
右及び左のマーカー22を格納姿勢に操作した場合、右及び左のマーカー22を縦フレーム89のフック89aに掛けることにより、格納姿勢に保持することができる。
【0057】
次に、直播装置5において、センターフロート9及びサイドフロート10,11の支持構造について説明する。
図8、図14、図15に示すように、メインフレーム24の下部に5個のフロート支持フレーム48が連結されて後方に延出されており、フロート支持フレーム48の後端部に連結されたブラケット48aが下方に延出されている。
センターフロート9はブロー成型によって合成樹脂により形成されており、正面視でU字状の金属製の支持ブラケット82がセンターフロート9の後部に連結されている。支持ピン77が左右方向に向いて、フロート支持フレーム48のブラケット48aと支持ブラケット82とに亘り挿入されて取り付けられている。平面視でクランク状に折り曲げられたアーム79が、支持ピン77(横軸芯に相当)周りに上下揺動自在に支持されて前方に延出されており、センターフロート9の前部に連結された正面視L字状のブラケット9aと、アーム79の前部とがボルト122により連結されている。これにより、センターフロート9及びアーム79が、支持ピン77周りに上下揺動自在に支持されている。
【0058】
図14、図15に示すように、メインフレーム24においてセンターフロート9の上方に位置する部分に、フレーム49が連結されて後方に延出されており、ポテンショメータで構成された高さセンサー78がフレーム49に取り付けられている。高さセンサー78の検出アーム78aとアーム79の端部とに亘ってロッド80が接続され、高さセンサー78の検出アーム78aを下方に付勢するバネ81が取り付けられており、バネ81によりセンターフロート9の前部が下方に付勢されている。
サイドフロート10,11はブロー成型によって合成樹脂により形成されており、正面視でU字状の金属製の支持ブラケット83がサイドフロート10,11の後部に連結されている。
【0059】
直播装置5における種籾作溝器12は、肥料作溝器17と同様に、側面視で三角形状で且つ平面視で先細り状(クサビ状)の溝切り部材87が備えられ、平面視U字状に形成された種籾作溝器12が溝切り部材87の後部に連結されており、ゴム製でジャバラの筒状の接続部材85が種籾作溝器12の上部に取り付けられて、ホース13が接続部材85に挿入されている。
【0060】
図6、図7、図8に示すように、肥料作溝器17からセンターフロート9及びサイドフロート10の左右両側に施肥用の覆土部材88が連結されている。サイドフロート11の横幅方向外方側に施肥用の覆土部材88が連結されている。
施肥用の覆土部材88は板材を折り曲げて構成されており、センターフロート9(サイドフロート10,11)から右及び左の斜め後方に延出されて、覆土部材88の先端部が肥料作溝器17の後方に位置している。これにより、施肥用の覆土部材88が肥料作溝器17の後方から左右方向における種籾作溝器12とは反対側に位置する状態となっている。
【0061】
機体の進行に伴って、肥料作溝器17が田面Gに溝を形成しながら、肥料作溝器17から溝に肥料が供給されるのであり、種籾作溝器12にて形成される溝に種籾が供給される。機体の進行に伴って、肥料作溝器17により田面Gに形成された溝に向かって覆土部材88が泥を押し、肥料作溝器17により田面Gに形成された溝に向かって種籾作溝器12が泥を押すのであり、種籾作溝器12及び覆土部材88により押された泥によって肥料が田面G内に埋められる。
【0062】
種籾作溝器12の後方側には、その種籾作溝器12にて田面Gに形成された溝を埋め戻す直播用の覆土部材150が備えられている。この直播用の覆土部材150は施肥用の覆土部材88と同様に、板材を折り曲げて構成されており、種籾作溝器12にて田面Gに形成された溝に対して左右両側から泥を押すように構成されている。
【0063】
次に、直播装置5(繰り出し部7)及び施肥装置20(繰り出し部15)への伝動構造について説明する。
機体の前部に搭載されたエンジン50の動力がミッションケース51内部の変速装置、伝動軸52を介して右及び左の後輪2に伝達される。一方、ミッションケース51の変速動力が伝動軸55を介して繰り出し部7に伝達され、さらに繰り出し部15に伝達されている。繰り出し部7が駆動されて直播装置5にて種籾を供給する状態となり、且つ、繰り出し部15が駆動されて施肥装置20にて肥料を供給する状態となる。
【0064】
伝動構造について説明を加えると、図4に示すように、メインフレーム24の左右中央部に縦フレーム58が連結され、縦フレーム43,58に亘って前後方向に向くボス部59が連結されて、ボス部59に入力軸60が支持されており、伝動軸55が自在継手61を介して入力軸60に接続されている。ボス部59に伝動ケース62が連結され、伝動ケース62に伝動軸63が支持されており、入力軸60と伝動軸63とがベベルギヤにて咬合している。
【0065】
伝動軸63の回転運動によるロッド70の往復運動が、ワンウェイクラッチ69により回転運動に変換されて、駆動軸65が間欠的に回転駆動され、ホッパー6の種籾が繰り出し部7から所定量ずつ繰り出される。ブロア8からの高圧の風がダクト47を通ってホース13に供給されており、高圧の風により種籾がホース13を通って種籾作溝器12に供給され、種籾作溝器12により田面Gに形成された溝に種籾が供給される。
【0066】
図5に示すように、伝動軸56の端部にアーム56aが固定され、駆動軸65にワンウェイクラッチ69が外嵌されており、伝動軸56のアーム56aとワンウェイクラッチのアーム69aとに亘ってロッド70が接続されている。これにより、伝動軸56の回転運動によるロッド70の往復運動が、ワンウェイクラッチ69により回転運動に変換されて、駆動軸65が間欠的に回転駆動され、繰り出し部15の繰り出しロール64が間欠的に回転駆動され、ホッパー14の肥料が繰り出し部15から所定量ずつ繰り出される。ブロア16からの高圧の風がダクト32を通ってホース18,19に供給されており、高圧の風により肥料がホース18,19を通って肥料作溝器17に供給され、肥料作溝器17により田面Gに形成された溝に肥料が供給される。
【0067】
次に、整地装置37について説明する。
図4、図8に示すように、メインフレーム24の左端部に固定されたブラケット24bに支持ケース91がボルト連結されて、支持ケース91に伝動ケース92が左右方向の横軸芯P3周りに上下揺動自在に支持されている。又、メインフレーム24の右端部にブラケット24cが固定されており、このブラケット24cに対して左右方向の横軸芯P3周りに支持アーム93が上下揺動自在に支持されている。そして、伝動ケース92及び支持アーム93に亘って整地ロータ98が回転自在に支持されて整地装置37が構成されている。
【0068】
図8に示すように、入力軸60からの動力が伝動ケース62内の横向き伝動軸96に伝わり、その動力が伝動ケース92内に備えられた伝動チェーン(図示せず)を介して整地装置37に供給されるように構成されている。
【0069】
次に、整地装置37の昇降構造について説明する。
図4、図16に示すように、メインフレーム24においてリンク機構3の左側に隣接する部分に支持板113が連結されて、支持板113の左右方向の横軸芯P4周りに、扇型の昇降ギヤ114が上下揺動自在に支持されている。ボス部115が駆動軸94に相対回転自在に外嵌されて、ボス部115のアーム115aが昇降ギヤ114に接続されている。
【0070】
図16に示すように、支持板113にギヤ機構116が連結されて、ギヤ機構116のピニオンギヤ116aが昇降ギヤ114に咬合しており、ギヤ機構116を駆動する電動モータ117がギヤ機構116に連結されている。電動モータ117によりギヤ機構116のピニオンギヤ116aを駆動して、昇降ギヤ114を上下に揺動駆動することにより、整地装置37を横軸芯P3周りに昇降駆動することができる。左の縦フレーム26のアーム26aと支持フレーム107とに亘って、並びに、右の横フレーム39のアーム39aと支持フレーム107とに亘って、整地装置37を上方に付勢するバネ119が接続されており、電動モータ117による整地装置37の上昇駆動を助けている。
【0071】
支持板113に対する昇降ギヤ114の角度を検出するポテンショメータ118が支持板113に取り付けられて、ポテンショメータ118の検出値が制御装置100に入力されており、ポテンショメータ118の検出値により、直播装置5に対する整地装置37の高さを検出することができる。
【0072】
図16の整地深さ設定器132は、整地ロータ98の上下位置の目標位置である整地深さ設定値を設定するものであり、制御装置100は、ポテンショメータ118にて検出される直播装置5に対する整地装置37の高さが整地深さ設定値に対応する高さになるように電動モータ117を制御するように構成されている。ちなみに、整地深さ設定値を変更すると、整地ロータ98は第1作業位置A1〜第2作業位置A2との間の作業位置、及び、退避位置A3に調整されることになる。
【0073】
次に、直播装置5の自動昇降制御を行うための構成について説明する。
高さセンサー78(図16参照)の検出値(H1)が制御装置100に入力されている。機体の進行に伴ってセンターフロート9が田面Gに接地追従するのであり、高さセンサー78の検出値により直播装置5に対するセンターフロート9の高さを検出することによって、田面G(センターフロート9)から直播装置5までの高さを検出することができる。
【0074】
図16に示すように、油圧シリンダ4に作動油を給排操作する制御弁121が備えられており、制御装置100により制御弁121が操作される。制御弁121により油圧シリンダ4に作動油が供給されると、油圧シリンダ4が収縮作動して直播装置5が上昇し、制御弁121により油圧シリンダ4から作動油が排出されると、油圧シリンダ4が伸長作動して直播装置5が下降する。
【0075】
直播装置5に対するセンターフロート9の高さ(田面Gから直播装置5までの高さ)に基づいて、直播装置5が田面Gから設定高さに維持されるように、つまり、高さセンサー78の検出値が設定値に維持されるように制御弁121が操作され、油圧シリンダ4が伸縮作動して直播装置5が自動的に昇降する。制御装置100によるこのような制御動作が自動昇降制御に対応する。
【0076】
尚、走行機体に対するリンク機構3の昇降角度を検出するポテンショメータ124が備えられて、ポテンショメータ124の検出値が制御装置100に入力されており、走行機体に対するリンク機構3の角度を検出することにより、走行機体に対する直播装置5の高さを検出することができるようになっている。
【0077】
図15に示すように、アーム79に沿って平行(水平)に、4個の連結孔79aが形成されており、センターフロート9のブラケット9aに沿って斜めに、4個の連結孔9bが形成されている(後側の連結孔9bほど高い位置に位置している)。これにより、センターフロート9及びアーム79の中央の連結孔9b,79aを使用して、ボルト122によりセンターフロート9のブラケット9aとアーム79と連結すると、アーム79に対してセンターフロート9が平行な姿勢で連結される。
【0078】
センターフロート9及びアーム79の前側の連結孔9b,79aを使用して、ボルト122によりセンターフロート9のブラケット9aとアーム79と連結すると、アーム79に対してセンターフロート9が少し前上がり姿勢で連結される。これにより、田面Gへのセンターフロート9の接地面積が小さくなり、センターフロート9の田面Gへの接地追従感度すなわち自動昇降制御の感度が鈍感になる。この状態は、田面Gの水が比較的少なく、田面Gの泥が比較的硬い状態に対して適している。
【0079】
センターフロート9及びアーム79の後側の連結孔9b,79aを使用して、ボルト122によりセンターフロート9のブラケット9aとアーム79と連結すると、アーム79に対してセンターフロート9が少し前下がり姿勢で連結される。これにより、田面Gへのセンターフロート9の接地面積が大きくなり、センターフロート9の田面Gへの接地追従感度すなわち自動昇降制御の感度が敏感になる。この状態は、田面Gの水が比較的多く、田面Gの泥が比較的軟らかい状態に対して適している。
【0080】
図1、図16に示すように、運転座席21の右横側に備えられた昇降レバー123が、自動位置、上昇位置、中立位置、下降位置及び作業位置に操作及び保持自在に構成されており、昇降レバー123を上昇位置に操作すると、自動昇降制御を停止し、第1及び第2作業クラッチ53,54が遮断状態に操作され(直播装置5及び施肥装置20、整地装置37の停止状態)、右及び左のマーカー22が格納姿勢に操作されて、油圧シリンダ4が収縮作動して直播装置5が上昇する。昇降レバー123を上昇位置に操作した状態で、直播装置5が上限位置に達したことが角度センサー124により検出されると、油圧シリンダ4が自動的に停止する。
【0081】
昇降レバー123を下降位置に操作すると、油圧シリンダ4が伸長作動して直播装置5が下降する。センターフロート9が田面Gに接地すると制御装置100が自動昇降制御を実行して直播装置5が田面Gに接地して停止した状態となり、直播装置5が田面Gから設定高さに維持される。
【0082】
そして、昇降レバー123を中立位置に操作すると、油圧シリンダ4が停止するのであり、このように昇降レバー123を上昇位置、中立位置及び下降位置に操作することによって、直播装置5を任意の高さに上昇及び下降させて停止させることができる。
【0083】
昇降レバー123を作業位置に操作すると、右及び左のマーカー22が格納姿勢に操作された状態となり、制御装置100が自動昇降制御を実行し、第1及び第2作業クラッチ53,54が伝動状態に操作される。ちなみに、ミッションケース51の副変速装置(図示せず)の動力が第1作業クラッチ53及び伝動軸55を介して繰り出し部7に伝達されており、ミッションケース51の副変速装置の動力が、第2作業クラッチ54、伝動軸56及びロッド70を介して繰り出し部15に伝達されている。第1及び第2作業クラッチ53,54を伝動及び遮断状態に操作する電動モータ57が備えられている。
【0084】
これにより、直播装置5(繰り出し部7)及び施肥装置20(繰り出し部15)に動力が伝達されて、種籾及び肥料作溝器12,17により田面Gに形成された溝に種籾及び肥料が供給されるのであり、整地装置37に動力が伝達されて、整地部材98が回転駆動される。
【0085】
図16に示すように、操縦ハンドル74の下側の右横側に、中立位置Nから上方の上昇位置U、下方の下降位置D、後方の右マーカー位置R及び前方の左マーカー位置Lの十字方向に操作自在で且つ中立位置Nに付勢される状態で、操作レバー125が設けられている。
【0086】
昇降レバー123を自動位置に操作した状態において、操作レバー125を上昇位置Uに操作すると(上昇位置Uに操作したのち中立位置Nに復帰すると)、第1及び第2作業クラッチ53,54が遮断状態に操作され、油圧シリンダ4が収縮作動して直播装置5が上昇し、右及び左のマーカー22が格納姿勢に操作される。直播装置5が上限位置に達したことが角度センサー124により検出されると、油圧シリンダ4が自動的に停止する。
【0087】
操作レバー125を下降位置Dに操作すると(下降位置Dに操作したのち中立位置Nに復帰すると)、油圧シリンダ4が伸長作動して直播装置5が下降する。センターフロート9が田面Gに接地すると、自動昇降制御が作動する。
【0088】
操作レバー125を下降位置Dに操作した後に、操作レバー125を再び下降位置Dに操作すると、第1及び第2作業クラッチ53,54が伝動状態に操作される。
【0089】
角度センサー124により検出される直播装置5の高さが、事前に設定された所定高さよりも低い状態において、以下のような操作が行われる。
右(左)のマーカー22が格納姿勢に操作された状態において、操作レバー125を右マーカー位置R(左マーカー位置L)に第1設定時間(比較的短い時間)以上に亘って操作すると、右(左)のマーカー22が作用姿勢に操作される。
右(左)のマーカー22が作用姿勢に操作された状態において、操作レバー125を右マーカー位置R(左マーカー位置L)に第2設定時間(第1設定時間よりも長い時間)以上に亘って操作すると、右(左)のマーカー22が格納姿勢に操作される。
【0090】
直播装置5が上昇して、角度センサー124により検出される直播装置5の高さが、前述の事前に設定された所定高さよりも高くなると、作用姿勢の右及び左のマーカー22が格納姿勢に操作される。角度センサー124により検出される直播装置5の高さが、前述の事前に設定された所定高さよりも高い状態では、前述のように操作レバー125を右及び左マーカー位置R,Lに操作しても、これに関係なく右及び左のマーカー22が格納姿勢に維持される。
【0091】
そして、この乗用型直播機は、直播装置5の8個の供給箇所の夫々における種籾供給経路の先端位置を、同時に、田面Gから設定深さ以上下方に入り込ませる低位置供給状態と、田面Gから前記設定深さよりも浅い位置又は田面Gの上方近傍位置に位置させる高位置供給状態とに切り換え自在な供給位置調節機構KTが備えられている。この供給位置調節機構KTは、前記低位置供給状態及び前記高位置供給状態の夫々において、複数の供給箇所の夫々における種籾供給経路の先端位置の上下高さを微調節可能に構成されている。
【0092】
次に、供給位置調節機構KTについて説明する。
図9、図10、図11に示すように、左右両端側及び中央部の夫々のフロート支持フレーム48に固定された軸受け部材139bによって回動自在に支持される状態で、機体横幅方向略全幅にわたって延びる横向きの作溝器用の回転支軸140が設けられ、この作溝器用の回転支軸140から機体横幅方向に間隔をあけて一体的に8個の作溝器支持アーム141が延設され、各作溝器支持アーム141の先端部に夫々種籾作溝器12が取り付けられている。
【0093】
図7、図8、図9に示すように、最右側のフロート支持フレーム48の近傍において、作溝器用の回転支軸140に一体的に固定する状態で後方下方に向けて作溝器用操作アーム142を延設してあり、この作溝器用操作アーム142にピン固定板143をネジ固定してあり、ピン固定板143に設けられた係止ピン144がフロート支持フレーム48における断面コの字形の連結部48aに形成した上下一対のピン係合孔145A,145B(前後向き長孔)のいずれかに嵌め込み係合させて作溝器用の回動支軸140の自由回動を規制するように構成されている。
【0094】
図10、図11に示すように、係止ピン144が上方側に位置するピン係合孔145Aに挿通する状態でピン固定板143を作溝器用操作アーム142にネジ固定することにより、種籾作溝器12の先端位置(種籾供給経路の先端位置に相当)を田面Gの表面に近い位置又は田面Gよりも上方に位置させる高位置供給状態(図9(b)参照)に切り換えられ、係止ピン144が下方側に位置するピン係合孔145Bに挿通する状態でピン固定板143を作溝器用操作アーム142にネジ固定することにより、種籾作溝器12の先端位置を田面Gから設定深さ以上入り込ませる低位置供給状態(図9(a)参照)に切り換えられるように構成されている。
【0095】
作溝器用操作アーム142の握り部142bは、連結部48aの折り曲げ支持部48aAの開口を介して後方に延出されている。後側のネジ取付孔146のネジを取り外すと、作溝器用操作アーム142は折り曲げ支持部48aAの開口の上端に支持される。
【0096】
そして、ピン固定板143は前後2箇所で作溝器用操作アーム143にネジ止め固定するようになっており、作溝器用操作アーム143におけるネジ取付孔146は前後に1個ずつ形成されている。ピン固定板143の前方側のネジ取付孔147は1個であるが、ピン固定板143の後方側のネジ取付孔148は上下方向に位置を異ならせた状態で複数(具体的には5個、4個以下又は6個以上でもよい)形成されている。
【0097】
作溝器用操作アーム142には、作溝器用操作アーム142に対する係止ピン144の上下移動を許容する上下向きの長孔142aが形成されている。
【0098】
このように、ピン固定板143の後方側のネジ取付孔148が複数形成されていることから、係止ピン144が上方側に位置するピン係合孔145Aに挿通する状態でピン固定板143を作溝器用操作アーム142にネジ固定した高位置供給状態、及び、係止ピン144が下方側に位置するピン係合孔145Bに挿通する状態でピン固定板143を作溝器用操作アーム142にネジ固定した低位置供給状態の夫々において、作溝器用操作アーム142の握り部142bを一方の手で握って、他方の手でピン固定板143の後方側の複数のネジ取付孔148を変更させることで、ピン固定板143と作溝器用操作アーム142との相対的な上下位置が変化して、8個の種籾作溝器12の先端位置の上下高さを同時に5段階に簡単な操作で微調節することができるように構成されている。
このようにピン固定板143を付け替えて作溝器用操作アーム142に対する取り付け状態を変更させることにより、高位置供給状態と低位置供給状態とに切り換えることができるように構成されている。
【0099】
次に、粉粒体の種類に対応した具体的な使用方法について説明する。
種籾としてカルパ種籾を用いて播種する場合には、図9(a)に示すように、供給位置調節機構KTを前記低位置供給状態に切り換える。このことにより、種籾供給経路の先端位置が田面Gから設定深さ以上下方に入り込ませる状態となるので、鳥等に種籾が食われることがない状態でカルパ種籾を田面Gに供給することができる。
【0100】
供給位置調節機構KTは、低位置供給状態において、ピン固定板143の後方側をネジ止めするときに、5個のネジ取付孔148のうちのいずれかに位置を異ならせることにより、8個の種籾作溝器12の先端位置の上下高さを5段階に微調節することができる。
【0101】
種籾として鉄コーティング種籾を用いて播種する場合には、図9(b)に示すように、供給位置調節機構KTを前記高位置供給状態に切り換える。このことにより、種籾が田面Gの表面又はそれに近い箇所に供給されるから、窒息することを回避させる状態で鉄コーティング種籾を田面Gに供給することができる。
【0102】
この高位置供給状態においても、低位置供給状態と同様に、ピン固定板143の後方側を作溝器用操作アーム142にネジ止めするときに、5個のネジ取付孔148のうちのいずれかに位置を異ならせることにより、8個の種籾作溝器12の先端位置の上下高さを5段階に微調節することができる。
この場合、田面Gよりも少しだけ下方に位置している状態にも調整可能である。つまり、田面Gから下方への侵入深さとして5段階に調整することができる。そして、この状態では、8個の種籾作溝器12の先端位置を田面Gから前記設定深さよりも浅い位置又は田面Gの上方近傍位置に位置させることになる。
【0103】
又、直播用の覆土部材150の田面Gに対する作用高さを変更調整自在な覆土位置調節機構FTが備えられている。
この覆土位置調節機構FTは、図12、図13に示すように、作溝器用の回転支軸140の下方側に、その作溝器用の回転支軸140と同様に、左右両端側及び中央部の夫々のフロート支持フレーム48に固定された軸受け部材139bによって回動自在に支持される状態で、機体横幅方向略全幅にわたって延びる横向きの覆土部材用の回転支軸151が設けられ、この覆土部材用の回転支軸151から一体的に延設した8個の覆土部材支持アーム152の先端部に夫々、直播用の覆土部材150が取り付けられている。
【0104】
右から2つ目のフロート支持フレーム48の近傍において、覆土部材用の回転支軸151に一体的に固定する状態で後方に向けて覆土部材用の操作アーム153が延設され、この覆土部材用の操作アーム153に対して、長孔154と連係ピン155との係合によってL字状の揺動アーム156が連動連係されている。この揺動アーム156は支点ブラケット157により支点ピン157aにて回動自在に支持されており、この揺動アーム156の他端側に手動操作式の操作ワイヤ158のインナーワイヤ158aの一端が接続されている。操作ワイヤ158のインナーワイヤ158aの他端は、直播装置5の機体前方側に備えられた手動操作式の覆土深さ調節レバー159に連係されている。
【0105】
又、操作ワイヤ158のアウターワイヤ158bの一端を受けるアウターワイヤ受け具160に形成された係止部161と連係ピン155とにわたって張設したコイルバネ162により、揺動アーム156にて操作ワイヤ158を引き操作する方向、つまり、直播用の覆土部材150を上方側に移動付勢する方向に引張り付勢するように構成されている。一方、覆土深さ調節レバー159を調節用係止具163の複数の調節用の係止位置のいずれかに係止することで、コイルバネ162の付勢力に抗して位置保持することができるように構成され、この覆土深さ調節レバー159の位置を調節することで、直播用の覆土部材150の位置を複数段階に変更調節自在で且つ調節した位置で保持することができるよう構成されている。つまり、田面Gからの下方への侵入深さを7段階に調整することができる。
【0106】
前記揺動アーム156を回動自在に支持する支点ブラケット157は、左右両側の作溝器用操作アーム142同士に亘って架設連結されたアングル材のフレーム164に取り付けられ、又、アウターワイヤ受け具160も作溝器用操作アーム142に取り付けられており、種籾作溝器12の高さを変更すると、それに伴って、支点ブラケット157及びアウターワイヤ受け具160も連動して位置が変更するように構成されている。
【0107】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、粉粒体供給装置として直播装置5を備え、別種粉粒体供給装置として施肥装置20を備えて、施肥装置20における肥料供給経路の先端位置、つまり、肥料作溝器17の下端位置が田面Gに対して一定深さとなる位置で固定され、直播装置5における種籾供給経路の先端位置が低位置供給状態と高位置供給状態とに切り換え自在な構成としたが、このような構成に代えて、施肥装置20における肥料供給経路の先端位置も低位置供給状態と高位置供給状態とに切り換え自在な構成としてもよい。
【0108】
(2)上記実施形態では、前記供給位置調節機構KTが、前記低位置供給状態及び前記高位置供給状態において粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを常に同じ位置に調節する構成であってもよい。
【0109】
(3)上記実施形態では、別種粉粒体として肥料を田面Gに供給し、粉粒体として種籾を田面Gに供給するものを例示したが、別種粉粒体として種籾を田面Gに供給し、粉粒体として肥料を田面Gに供給するものでもよく、又、肥料に代えて薬剤を供給するものでもよい。
【0110】
(4)上記実施形態では、供給位置調節機構KTが、ピン固定板143を操作アーム142に対して付け替えることにより、種籾作溝器12の先端位置を低位置供給状態と高位置供給状態とに切り換えるようにしたが、このような構成に代えて、操縦部に備えられた操作具(図示せず)の指令に基づいて、アクチュエータの作動により、粉粒体供給経路の先端位置を低位置供給状態と高位置供給状態とに切り換え自在に構成するものでもよい。
【0111】
又、前記低位置供給状態及び前記高位置供給状態の夫々において、アクチュエータの作動により、複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを微調節することが可能な構成としてもよい。
【0112】
このようにアクチュエータにより上下高さを変更するように構成した場合に、自動昇降制御における制御感度の設定値と粉粒体供給経路の先端位置の微調節位置との相関関係を予め定めておき、制御感度の設定値に応じて粉粒体供給経路の先端位置の微調節位置を設定するようにしてもよい。
【0113】
圃場の表面の凹凸の状態や泥土の硬軟等の圃場の状況を検出する圃場状況検出手段を備えているものでは、その検出情報に基づいて、適切な粉粒体供給経路の先端位置の微調節位置を報知させるようにしてもよい。
【0114】
(5)上記実施形態では、種籾作溝器12の位置を変更することにより、粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを変更する構成として、例えば、作溝器12を用いる状態と、作溝器12を用いることなく粉粒体供給ホース13から直接に田面Gに粉粒体を供給する状態とに切り換えることによって、粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを変更する構成とする等、種々の供給形態で実施することができる。
【0115】
(6)上記実施形態では、直播装置5における覆土部材150の田面Gに対する作用高さを変更調整自在な覆土位置調節機構FTを備える構成としたが、このような覆土位置調節機構FTを備えない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、肥料、薬剤、種籾等の粉粒体を田面に供給するための水田作業機に適用できる。
【符号の説明】
【0117】
5 粉粒体供給装置
12,17 作溝器
20 別種粉粒体用供給装置
88,150 覆土部材
KT 供給位置調節機構
FT 覆土位置調節機構
G 田面
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の走行に伴って機体横幅方向に並ぶ複数の供給箇所において田面に粉粒体を供給する粉粒体供給装置が備えられた水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記水田作業機は、粉粒体供給装置として、粉粒体の一例である肥料や薬剤を田面に供給する施肥装置を備えるもの、粉粒体の一例である種籾を田面に供給する直播装置を備えるもの、又、それらの施肥装置と直播装置とを共に備えるもの等がある。
【0003】
そして、この種の水田作業機において、従来では、粉粒体供給装置として施肥装置と直播装置とを共に備えるものにおいて、施肥装置における粉粒体供給経路としての肥料供給経路の先端位置、並びに、直播装置における粉粒体供給経路としての種籾供給経路の先端位置の夫々が、田面に対して一定深さとなる位置で固定されたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
説明を加えると、走行機体の後部に、施肥装置及び直播装置を備えており、施肥装置が、肥料供給経路の先端位置に田面に入り込み田面に供給用の溝を形成する作溝器を備えて構成され、又、直播装置も同様に、種籾供給経路の先端位置に田面に入り込み田面に供給用の溝を形成する作溝器を備えて構成され、支持フレームに支持されて田面の表面に沿って追従する接地フロートに、その接地フロートの接地面よりも下方に突出する状態で施肥装置及び直播装置夫々の作溝器が位置固定状態で取り付けられる構成となっていた。接地フロートは田面の表面に沿って追従するものであるから、その接地フロートに位置固定状態で取り付けられる作溝器の先端位置は田面に対して一定深さとなる位置で固定されることになる。
【0005】
要するに、従来では、粉粒体供給装置における粉粒体供給経路の先端位置が田面に対して一定深さとなる位置で固定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−315408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記粉粒体供給装置にて供給される粉粒体としては、田面より下方側に一定深さの泥土内に供給することが適している粉粒体だけでなく、田面の表面又は田面の泥土内の表面に近い箇所に供給することが適している粉粒体も存在する。
【0008】
説明を加えると、先ず、粉粒体として薬剤を供給する場合について説明する。
薬剤として、例えば、イモチ病等の病気に対して薬用効果を有する薬剤は一般に遅効性であり、田面より下方側に一定深さの泥土内に供給することにより良好な薬効効果を発揮させ易いものである。しかしながら、薬剤として、除草剤等のような即効性の薬剤であれば、田面より下方側に一定深さの泥土内ではなく、田面の表面又は表面に近い位置に供給する方が薬剤として良好に作用するものである。
【0009】
次に、粉粒体として種籾を供給する場合について説明する。
種籾としては、従来より、カルパコーティングされた種籾(カルパ種籾)が主に使用されていた。このカルパ種籾は、水に溶けると酸素を発生する薬剤が外面にコーティングされた種籾であり、田面内に埋められた種籾が窒息しないようにしたものである。つまり、このカルパ種籾を田面に供給するときには、上記したような従来構成の直播装置を用いて、田面より下方側に一定深さの泥土内に供給して埋めるようにすると、鳥等に種籾が食われることがない状態で種籾が窒息することなく良好に発芽させることが可能となる。
【0010】
又、最近では、上記したようなカルパ種籾とは別に、種籾に鉄粉がコーティングされた鉄コーティング種籾が利用されるようになっている。この鉄コーティング種籾は、カルパ種籾のように田面内に埋められた状態で酸素を発生するものではないから、カルパ種籾と同じように、従来構成の直播装置を用いて、田面より下方側に一定深さの泥土内に供給して埋めるようにすると、種籾が窒息してしまうおそれがある。そこで、このような鉄コーティング種籾は、種籾が呼吸することができるように、田面の表面又は表面に近い位置に供給する必要がある。
【0011】
しかし、上記従来構成では、粉粒体供給装置における粉粒体供給経路の先端位置が田面に対して一定深さとなる位置で固定されていたから、粉粒体として、肥料やカルパ種籾等のように、田面より下方側に一定深さの泥土内に供給することが適している粉粒体を供給する場合には好適に使用することができるが、粉粒体として、除草剤等のような薬剤や鉄コーティング種籾等のように、田面の表面に供給するような種類の粉粒体を供給することができないものとなる。
【0012】
そこで、粉粒体として、田面の表面又はその近傍に供給するような種類の粉粒体を供給する場合には、例えば、接地フロートに対する作溝器の取り付け位置を異ならせるように、接地フロートに対して作溝器等を付け替える必要があるが、粉粒体供給装置は、走行機体の走行に伴って機体横幅方向に並ぶ複数の供給箇所において田面に粉粒体を供給するものであるから、複数の供給箇所において夫々、作溝器等を取り替えるという煩わしい作業が必要となる。
【0013】
本発明の目的は、簡単な操作で、田面の土中に埋め込む状態で粉粒体を供給する状態と、田面の表面又はその近傍に供給する粉粒体を供給する状態とに切り換えることが可能となる水田作業機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る水田作業機は、走行機体の走行に伴って機体横幅方向に並ぶ複数の供給箇所において田面に粉粒体を供給する粉粒体供給装置が備えられたものであって、その第1特徴構成は、前記粉粒体供給装置の複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置を、同時に、田面から設定深さ以上下方に入り込ませる低位置供給状態と、田面から前記設定深さよりも浅い位置又は田面の上方近傍位置に位置させる高位置供給状態とに切り換え自在な供給位置調節機構が備えられている点にある。
【0015】
第1特徴構成によれば、供給位置調節機構を用いて、粉粒体供給装置の複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置を、同時に、田面から設定深さ以上下方に入り込ませる低位置供給状態と、田面から前記設定深さよりも浅い位置又は田面の上方近傍位置に位置させる高位置供給状態とに切り換えることができる。
【0016】
粉粒体として、例えば、泥土内に埋め込まれても種籾が窒息することがないカルパ種籾を田面に供給する場合には、供給位置調節機構にて低位置供給状態に切り換えることで、田面から設定深さ以上下方に入り込ませる位置に粉粒体を供給することができるから、鳥等に種籾が食われることがない状態で良好に発芽させることが可能な状態でカルパ種籾を田面に供給することができる。
【0017】
そして、粉粒体として、例えば、鉄コーティング種籾を田面に供給する場合には、供給位置調節機構にて高位置供給状態に切り換えることで、田面から前記設定深さよりも浅い位置又は田面の上方近傍位置に粉粒体を供給することができ、窒息することを回避させる状態で鉄コーティング種籾を田面に供給することができる。
【0018】
又、粉粒体として、例えば、肥料やイモチ病に対する薬剤等のような遅効性の薬剤を供給する場合には、供給位置調節機構にて低位置供給状態に切り換えることで、田面の泥土内に設定深さ以上に入り込んだ位置に粉粒体を供給することができるから、良好な生育効果を発揮させ易い状態で肥料を供給することができ、又、良好な薬効効果を発揮させ易い状態で薬剤を供給することができる。
【0019】
そして、粉粒体として、例えば、除草剤等の即効性の薬剤を田面に供給する場合には、供給位置調節機構にて高位置供給状態に切り換えることで、田面から前記設定深さよりも浅い位置又は田面の上方近傍位置に粉粒体を供給することができるから、薬剤として良好に作用する状態で田面の表面に供給することができる。
【0020】
しかも、供給位置調節機構は、複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置について、それらを同時に低位置供給状態と高位置供給状態とに切り換えることができるものであるから、複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置を各別に切り換える等の煩わしさがなく、簡単な操作で粉粒体供給経路の先端位置を変更することができる。
【0021】
従って、第1特徴構成によれば、簡単な操作で、田面の土中に埋め込む状態で粉粒体を供給する状態と、田面の表面又はその近傍に供給する粉粒体を供給する状態とに切り換えることが可能となる水田作業機を提供できるに至った。
【0022】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記供給位置調節機構が、前記低位置供給状態及び前記高位置供給状態の夫々において、複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを微調節可能に構成されている点にある。
【0023】
第2特徴構成によれば、低位置供給状態及び高位置供給状態の夫々において、複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを微調節することが可能であるから、例えば、圃場の泥土の硬さの違いがあったり、又、走行機体の走行速度が変化することがあっても、そのように作業状況の違いに応じて、変化した作業状況に適合した適切な位置になるように複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを調整することが可能となる。
【0024】
従って、第2特徴構成によれば、圃場の泥土の硬さの違いがあったり、走行機体の走行速度が変化する等の作業状況の違いに応じて適切な位置になるように、複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを調整することができ、良好な粉粒体供給作業を行うことができる。
【0025】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記粉粒体とは異なる種類の別種粉粒体を田面に供給する別種粉粒体用供給装置を備えて構成され、前記粉粒体供給装置及び前記別種粉粒体用供給装置の夫々が粉粒体供給経路の先端位置に田面に入り込み田面に粉粒体供給用の溝を形成する作溝器と、前記作溝器にて田面に形成した溝を埋め戻す覆土部材とを備えて構成され、前記別種粉粒体用供給装置の前記作溝器が前記粉粒体供給装置の前記作溝器よりも機体前方に位置をずらせた状態で設けられ、前記別種粉粒体用供給装置の前記作溝器に対応する前記覆土部材が、その作溝器の機体前後方向の後方側であって且つ機体横幅方向の一方側箇所に位置させた状態で設けられ、前記粉粒体供給装置の前記作溝器が、前記別種粉粒体用供給装置の前記作溝器の機体前後方向の後方側であって且つ機体横幅方向の他方側箇所に位置させた状態で設けられている点にある。
【0026】
第3特徴構成によれば、粉粒体とは異なる種類の別種粉粒体を田面に供給する別種粉粒体用供給装置を備えて構成されている。例えば、前記粉粒体として種籾を供給する場合であれば、別種粉粒体として肥料や薬剤等を供給する場合、又は、前記粉粒体として肥料や薬剤を供給する場合であれば、別種粉粒体として種籾を供給する場合等がある。
【0027】
そして、機体の進行に伴って別種粉粒体用供給装置の作溝器が泥を左右方向に押し退けながら田面に溝を形成することになるが、粉粒体供給装置の作溝器が、別種粉粒体用供給装置の作溝器の機体前後方向の後方側であって且つ機体横幅方向の他方側箇所に位置させた状態で設けられているから、粉粒体供給装置の作溝器は、別種粉粒体用供給装置の作溝器により田面に形成された溝に向かって溝の機体横幅方向の他方側から泥を押すことになり、別種粉粒体用供給装置の作溝器は覆土部材と同じような機能を備えることになる。
【0028】
一方、機体横幅方向の一方側箇所には、別種粉粒体用供給装置の作溝器に対応する覆土部材が設けられるから、別種粉粒体用供給装置の作溝器により田面に形成された溝に向かって溝の機体横幅方向の一方側から泥を押すことになる。つまり、別種粉粒体用供給装置の後方において左右方向の両側に覆土部材を備えた状態と同じような状態が得られる。
つまり、粉粒体供給装置の作溝器を覆土部材に兼用することができて、別種粉粒体用供給装置の後方において左右方向の両側に覆土部材を備える必要が少ない。
【0029】
従って、第3特徴構成によれば、粉粒体とそれとは異なる種類の別種粉粒体とを共に田面に供給することができるものでありながら、別種粉粒体用供給装置の作溝器により田面に溝を形成し、その溝に別種粉粒体を供給して田面内に埋めるように構成する場合、粉粒体供給装置の作溝器を覆土部材に兼用することができ、別種粉粒体用供給装置の作溝器の後方において左右方向の両側に覆土部材を備える必要が少なくなって、構造の簡素化及び低コスト化を図ることができた。
【0030】
本発明の第4特徴構成は、第3特徴構成に加えて、前記別種粉粒体用供給装置が、前記別種粉粒体として肥料又は薬剤を田面に供給するものであり、前記粉粒体供給装置が、前記粉粒体として種籾を田面に供給するものである点にある。
【0031】
第4特徴構成によれば、別種粉粒体用供給装置が肥料又は薬剤を田面に供給することになり、粉粒体供給装置が種籾を田面に供給することになる。つまり、肥料や薬剤と種籾とを同時に田面に供給することができる。
【0032】
従って、第4特徴構成によれば、覆土部材の兼用により構造の簡素化を図ることが可能でありながらも、肥料や薬剤を田面内に良好に埋め込むことが可能な状態で、肥料や薬剤と種籾とを同時に田面に供給することが可能となった。
【0033】
本発明の第5特徴構成は、第3特徴構成又は第4特徴構成に加えて、前記粉粒体供給装置における前記覆土部材の田面に対する作用高さを変更調整自在な覆土位置調節機構が備えられている点にある。
【0034】
第5特徴構成によれば、粉粒体供給装置における覆土部材の田面に対する作用高さを変更調整することができるから、田面の土中に埋め込む状態で粉粒体を供給する場合において、土の硬さが異なっている場合、あるいは、粉粒体供給経路の先端位置を変更調整したような場合等、作業状況の違いに応じて覆土部材の田面に対する作用高さを適切な高さに変更調整することが可能となる。
【0035】
従って、第5特徴構成によれば、作業状況の違いに応じて覆土部材の田面に対する作用高さを適切な高さに変更調整することが可能となり、粉粒体及び別種粉粒体の夫々について田面の土中に埋め込む状態で供給する場合において、別種粉粒体並びに粉粒体のいずれのものについても、田面内に良好に埋め込むことが可能な状態で田面に供給することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】乗用型直播機の全体側面図である。
【図2】乗用型直播機の全体平面図である。
【図3】施肥装置(ホッパー及び繰り出し部)の側面図である。
【図4】直播装置及び整地装置の側面図である。
【図5】施肥装置(ホッパー及び繰り出し部)の背面図である。
【図6】直播装置の背面図である。
【図7】直播装置の繰り出し部の付近の横断平面図である。
【図8】直播装置の種籾作溝器の付近の横断平面図である。
【図9】供給位置調節機構の側面図である。
【図10】供給位置調節機構の横断平面図である。
【図11】供給位置調節機構の分解斜視図である。
【図12】(a)は覆土位置調節機構の側面図、(b)は覆土深さ調節レバーの係止構造を示す平面図である。
【図13】覆土位置調節機構の平面図である。
【図14】センターフロートの付近の側面図である。
【図15】センターフロートの支持構造を示す分解斜視図である。
【図16】制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る水田作業機の実施形態を乗用型直播機に適用した場合について、図面に基づいて説明する。
【0038】
図1及び図2に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2により支持された走行機体の後部に、リンク機構3が昇降自在に支持され、リンク機構3を昇降操作する油圧シリンダ4が備えられており、リンク機構3に粉粒体供給装置としての直播装置5が支持されて、水田作業機としての乗用型直播機が構成されている。この乗用型直播機は、直播装置5に支持される状態で走行機体と直播装置5との間に整地装置37が備えられており、走行機体の後部に施肥装置20が支持されている。
【0039】
図1及び図3に示すように、走行機体は、右及び左の機体フレーム28が前後方向に配置されて、縦壁状の右及び左の縦壁フレーム29が右及び左の機体フレーム28の後部に連結されている。リンク機構3は、1本のトップリンク3a、2本のロアリンク3b、トップリンク3a及びロアリンク3bの後部に亘って接続された縦リンク3cにより構成されている。リンク機構3のトップリンク3a及び油圧シリンダ4が右及び左の支持板29に上部に上下揺動自在に支持され、リンク機構3のロアリンク3bが右及び左の機体フレーム28の後部に上下揺動自在に支持されている。
【0040】
次に、施肥装置20について説明する。
図1、図3及び図5に示すように、前記縦壁フレーム29に丸パイプ材をL字に屈曲させた支持フレーム30が連結され、支持フレーム30の上端の横軸芯P1周りに回転自在に支持された横フレーム31に、夫々2条分の施肥を行う繰り出し部15と、各繰り出し部15の上部に位置して粉粒状の肥料を貯留する4個のホッパー14とが夫々備えられてる。横フレーム31に連結されたフレーム35が前方に延出されて、フレーム35によりホッパー14の中間部が支持されており、フレーム35がバックル機構36を介して支持フレーム33に連結されている。
【0041】
図1に示すように、運転座席21の下側で右及び左の縦壁フレーム29の間にブロア16が備えられており、ブロア16から二股状に延出されたダクト32が繰り出し部15に接続されている。図6に示すように、中央の接地フロート(センターフロート)9に2個の肥料作溝器17、センターフロート9の両側に位置する接地フロート(サイドフロート)10に2個の肥料作溝器17、左右両端側の接地フロート(サイドフロート)11に1個の肥料作溝器17が備えられている。そして、前記各肥料作溝器17の機体後方側には、夫々、肥料作溝器17にて田面Gに形成した溝を埋め戻す施肥用の覆土部材88が設けられている。
【0042】
図1及び図2に示すように、繰り出し部15と肥料作溝器17とに亘って、可撓性を備えたホース18,19が接続されており、ホース18,19を接続する中間パイプ130(硬質樹脂製)が縦フレーム25,26(図6参照)に接続されて支持されている。
以上のようにホッパー14、繰り出し部15、ブロア16、ダクト32、肥料作溝器17、施肥用の覆土部材88、ホース18,19等により施肥装置20が構成されている。
【0043】
次に、肥料作溝器17について説明する。
図4に示すように、側面視で三角形状、平面視で先細り状(クサビ状)の溝切り部材84が、センターフロート9及びサイドフロート10,11の夫々に機体横幅方向に適宜間隔をあけて連結される状態で備えられ、この溝切り部材84は各フロート9,10,11の底面から下方に突出している。
【0044】
図4及び図8に示すように、平面視U字状に形成された肥料作溝器17が溝切り部材84の後部に連結されており、ゴム製でジャバラの筒状の接続部材85が肥料作溝器17の上部に取り付けられて、ホース19が接続部材85に挿入されている。
従って、肥料作溝器17の下端位置は、センターフロート9及びサイドフロート10,11の底面(田面G)に対して一定深さとなる位置で固定された状態となっている。
【0045】
次に、直播装置5の概要について説明する。
図6に示すように、直播装置5は、種籾を貯留する2条対応の4個のホッパー6、2条対応の4個の繰り出し部7、1個のブロア8が備えられており、センターフロート9及びサイドフロート10,11が左右方向に並べて備えられている。又、左右方向に所定間隔をおいて配置された8個の種籾作溝器12、種籾作溝器12にて田面Gに形成した溝を埋め戻す直播用の覆土部材88が備えられ、繰り出し部7と種籾作溝器12とに亘ってホース13が接続されている。
【0046】
直播装置5の後部には、田面Gに溝を形成する4個の溝形成部材99が機体横幅方向に間隔をあけて設けられている。この溝形成部材99は、田面Gに接地する作用状態と田面Gの上方に大きく上昇する退避状態とにわたり、横軸芯P5周りで上下揺動自在に支持されている。
【0047】
つまり、図4に示すように、位置固定状態並びに横軸芯P5周りで回動自在に支持された支点軸134に、機体横幅方向に間隔をあけて4本の支持アーム135が一体延設され、各支持アーム135の先端部に溝形成部材99が回動自在に支持されている。支点軸134に設けられたブラケット136と、直播装置5の機体前方側に備えられた操作レバー137とが連動連結され、この操作レバー137によって溝形成部材99の作用状態と退避状態との切り換え操作を行うように構成されている。溝形成部材99は、作用状態ではバネ138により下方に揺動付勢され、田面G上に排水用の溝を形成するように構成されている。
【0048】
図9に示すように、前記支点軸134は、後述するようにメインフレーム24に連結された5個のフロート支持フレーム48の後端部に連結されたブラケット48aに形成した軸受け部139aにて回動自在に支持されている。
【0049】
図1、図2、図6、図7に示すように、右及び左のマーカー22が直播装置5の右及び左部に備えられており、田面Gに接地して指標を形成する作用姿勢、及び田面Gから上方に離れた格納姿勢(図1、図6等参照)に操作自在に構成されている。右及び左のマーカー22は上下揺動自在に直播装置5に支持されたアーム部22aと、アーム部22aの先端部に自由回転自在に支持された回転体22bとを備えて構成されており、右及び左のマーカー22を作用姿勢及び格納姿勢に操作する電動モータ23が備えられている。
【0050】
次に、直播装置5の全体構造及び支持構造について説明する。
図6、図7、図8に示すように、角パイプ状の左右方向に向くメインフレーム24が備えられて、メインフレーム24の左右中央付近に2本の縦フレーム25が連結され、メインフレーム24の右及び左部に2本の縦フレーム26が連結されており、縦フレーム25,26の上下中間部に亘って左右方向に向く横フレーム27が連結されている。
【0051】
縦フレーム25,26の上部に亘って左右方向に向く横フレーム38が連結され、縦フレーム26の上部に前方に向く横フレーム39が連結されている。横フレーム39の前部に亘って左右方向に向く横フレーム40が連結されており、横フレーム38,40に亘って前後方向に向く横フレーム41が連結されている。
【0052】
縦フレーム25の下部に亘って左右方向に向く横フレーム42が連結され、横フレーム42とメインフレーム24とに亘って縦フレーム43が連結されており、ローリング用のボス部44がメインフレーム24及び縦フレーム43を貫通して連結されている。前後方向に向く支持軸(図示せず)がリンク機構3の縦リンク3cの下部に備えられており、ボス部44がリンク機構3の支持軸に回転自在(ローリング自在)に外嵌されている。
【0053】
縦フレーム89が横フレーム39に連結されて、前方から上方に向けて延出されている。縦フレーム89に連結されたフック89aが右及び左方(外方)に延出されている。図6及び図7に示すように、右の横フレーム39にアーム39aが連結されて、右方(外方)に延出されている。左の縦フレーム26にアーム26aが連結されて、ブロア8及び電動モータ45の下側を左方(外方)に延出されている。
【0054】
これにより、メインフレーム24等に直播装置5の全体が支持された構造となっており、直播装置5がリンク機構3の支持軸(ボス部44)の前後軸芯P2周りにローリング自在に支持され、リンク機構3により昇降自在に支持されている。
【0055】
次に、直播装置5における繰り出し部7及びホッパー6の支持構造について説明する。
図4に示すように、横フレーム38,40の間に位置するように、繰り出し部7が横フレーム38,40に連結されており、種籾を貯留する4個のホッパー6が繰り出し部7の上部に連結されて、4個のホッパー6が互いに連結されている。この場合、図2に示すように、4個のホッパー6の全体の横幅が、4個のホッパー14の全体の横幅と略同じものとなっており、左右方向において、4個のホッパー6の全体の右及び左端部と、4個のホッパー14の全体の右及び左端部とが略同じ位置に位置している(前後方向から目視して、4個のホッパー6の全体の右及び左端部と、4個のホッパー14の全体の右及び左端部とが略同じ位置に位置している)。
【0056】
図6に示すように、左の縦フレーム26にブロア8が連結されて、ブロア8の内部の回転羽根(図示せず)の回転軸芯が機体前後方向に向いた状態となっており、ブロア8を駆動する電動モータ45がブロア8の前部に連結され、下向きの吸気口46aを備えた吸気カバー46がブロア8の後部に連結されている。ブロア8からダクト47が延出されて、ダクト47が繰り出し部7に接続されており、繰り出し部7と種籾作溝器12とに亘ってホース13が接続されている。
右及び左のマーカー22を格納姿勢に操作した場合、右及び左のマーカー22を縦フレーム89のフック89aに掛けることにより、格納姿勢に保持することができる。
【0057】
次に、直播装置5において、センターフロート9及びサイドフロート10,11の支持構造について説明する。
図8、図14、図15に示すように、メインフレーム24の下部に5個のフロート支持フレーム48が連結されて後方に延出されており、フロート支持フレーム48の後端部に連結されたブラケット48aが下方に延出されている。
センターフロート9はブロー成型によって合成樹脂により形成されており、正面視でU字状の金属製の支持ブラケット82がセンターフロート9の後部に連結されている。支持ピン77が左右方向に向いて、フロート支持フレーム48のブラケット48aと支持ブラケット82とに亘り挿入されて取り付けられている。平面視でクランク状に折り曲げられたアーム79が、支持ピン77(横軸芯に相当)周りに上下揺動自在に支持されて前方に延出されており、センターフロート9の前部に連結された正面視L字状のブラケット9aと、アーム79の前部とがボルト122により連結されている。これにより、センターフロート9及びアーム79が、支持ピン77周りに上下揺動自在に支持されている。
【0058】
図14、図15に示すように、メインフレーム24においてセンターフロート9の上方に位置する部分に、フレーム49が連結されて後方に延出されており、ポテンショメータで構成された高さセンサー78がフレーム49に取り付けられている。高さセンサー78の検出アーム78aとアーム79の端部とに亘ってロッド80が接続され、高さセンサー78の検出アーム78aを下方に付勢するバネ81が取り付けられており、バネ81によりセンターフロート9の前部が下方に付勢されている。
サイドフロート10,11はブロー成型によって合成樹脂により形成されており、正面視でU字状の金属製の支持ブラケット83がサイドフロート10,11の後部に連結されている。
【0059】
直播装置5における種籾作溝器12は、肥料作溝器17と同様に、側面視で三角形状で且つ平面視で先細り状(クサビ状)の溝切り部材87が備えられ、平面視U字状に形成された種籾作溝器12が溝切り部材87の後部に連結されており、ゴム製でジャバラの筒状の接続部材85が種籾作溝器12の上部に取り付けられて、ホース13が接続部材85に挿入されている。
【0060】
図6、図7、図8に示すように、肥料作溝器17からセンターフロート9及びサイドフロート10の左右両側に施肥用の覆土部材88が連結されている。サイドフロート11の横幅方向外方側に施肥用の覆土部材88が連結されている。
施肥用の覆土部材88は板材を折り曲げて構成されており、センターフロート9(サイドフロート10,11)から右及び左の斜め後方に延出されて、覆土部材88の先端部が肥料作溝器17の後方に位置している。これにより、施肥用の覆土部材88が肥料作溝器17の後方から左右方向における種籾作溝器12とは反対側に位置する状態となっている。
【0061】
機体の進行に伴って、肥料作溝器17が田面Gに溝を形成しながら、肥料作溝器17から溝に肥料が供給されるのであり、種籾作溝器12にて形成される溝に種籾が供給される。機体の進行に伴って、肥料作溝器17により田面Gに形成された溝に向かって覆土部材88が泥を押し、肥料作溝器17により田面Gに形成された溝に向かって種籾作溝器12が泥を押すのであり、種籾作溝器12及び覆土部材88により押された泥によって肥料が田面G内に埋められる。
【0062】
種籾作溝器12の後方側には、その種籾作溝器12にて田面Gに形成された溝を埋め戻す直播用の覆土部材150が備えられている。この直播用の覆土部材150は施肥用の覆土部材88と同様に、板材を折り曲げて構成されており、種籾作溝器12にて田面Gに形成された溝に対して左右両側から泥を押すように構成されている。
【0063】
次に、直播装置5(繰り出し部7)及び施肥装置20(繰り出し部15)への伝動構造について説明する。
機体の前部に搭載されたエンジン50の動力がミッションケース51内部の変速装置、伝動軸52を介して右及び左の後輪2に伝達される。一方、ミッションケース51の変速動力が伝動軸55を介して繰り出し部7に伝達され、さらに繰り出し部15に伝達されている。繰り出し部7が駆動されて直播装置5にて種籾を供給する状態となり、且つ、繰り出し部15が駆動されて施肥装置20にて肥料を供給する状態となる。
【0064】
伝動構造について説明を加えると、図4に示すように、メインフレーム24の左右中央部に縦フレーム58が連結され、縦フレーム43,58に亘って前後方向に向くボス部59が連結されて、ボス部59に入力軸60が支持されており、伝動軸55が自在継手61を介して入力軸60に接続されている。ボス部59に伝動ケース62が連結され、伝動ケース62に伝動軸63が支持されており、入力軸60と伝動軸63とがベベルギヤにて咬合している。
【0065】
伝動軸63の回転運動によるロッド70の往復運動が、ワンウェイクラッチ69により回転運動に変換されて、駆動軸65が間欠的に回転駆動され、ホッパー6の種籾が繰り出し部7から所定量ずつ繰り出される。ブロア8からの高圧の風がダクト47を通ってホース13に供給されており、高圧の風により種籾がホース13を通って種籾作溝器12に供給され、種籾作溝器12により田面Gに形成された溝に種籾が供給される。
【0066】
図5に示すように、伝動軸56の端部にアーム56aが固定され、駆動軸65にワンウェイクラッチ69が外嵌されており、伝動軸56のアーム56aとワンウェイクラッチのアーム69aとに亘ってロッド70が接続されている。これにより、伝動軸56の回転運動によるロッド70の往復運動が、ワンウェイクラッチ69により回転運動に変換されて、駆動軸65が間欠的に回転駆動され、繰り出し部15の繰り出しロール64が間欠的に回転駆動され、ホッパー14の肥料が繰り出し部15から所定量ずつ繰り出される。ブロア16からの高圧の風がダクト32を通ってホース18,19に供給されており、高圧の風により肥料がホース18,19を通って肥料作溝器17に供給され、肥料作溝器17により田面Gに形成された溝に肥料が供給される。
【0067】
次に、整地装置37について説明する。
図4、図8に示すように、メインフレーム24の左端部に固定されたブラケット24bに支持ケース91がボルト連結されて、支持ケース91に伝動ケース92が左右方向の横軸芯P3周りに上下揺動自在に支持されている。又、メインフレーム24の右端部にブラケット24cが固定されており、このブラケット24cに対して左右方向の横軸芯P3周りに支持アーム93が上下揺動自在に支持されている。そして、伝動ケース92及び支持アーム93に亘って整地ロータ98が回転自在に支持されて整地装置37が構成されている。
【0068】
図8に示すように、入力軸60からの動力が伝動ケース62内の横向き伝動軸96に伝わり、その動力が伝動ケース92内に備えられた伝動チェーン(図示せず)を介して整地装置37に供給されるように構成されている。
【0069】
次に、整地装置37の昇降構造について説明する。
図4、図16に示すように、メインフレーム24においてリンク機構3の左側に隣接する部分に支持板113が連結されて、支持板113の左右方向の横軸芯P4周りに、扇型の昇降ギヤ114が上下揺動自在に支持されている。ボス部115が駆動軸94に相対回転自在に外嵌されて、ボス部115のアーム115aが昇降ギヤ114に接続されている。
【0070】
図16に示すように、支持板113にギヤ機構116が連結されて、ギヤ機構116のピニオンギヤ116aが昇降ギヤ114に咬合しており、ギヤ機構116を駆動する電動モータ117がギヤ機構116に連結されている。電動モータ117によりギヤ機構116のピニオンギヤ116aを駆動して、昇降ギヤ114を上下に揺動駆動することにより、整地装置37を横軸芯P3周りに昇降駆動することができる。左の縦フレーム26のアーム26aと支持フレーム107とに亘って、並びに、右の横フレーム39のアーム39aと支持フレーム107とに亘って、整地装置37を上方に付勢するバネ119が接続されており、電動モータ117による整地装置37の上昇駆動を助けている。
【0071】
支持板113に対する昇降ギヤ114の角度を検出するポテンショメータ118が支持板113に取り付けられて、ポテンショメータ118の検出値が制御装置100に入力されており、ポテンショメータ118の検出値により、直播装置5に対する整地装置37の高さを検出することができる。
【0072】
図16の整地深さ設定器132は、整地ロータ98の上下位置の目標位置である整地深さ設定値を設定するものであり、制御装置100は、ポテンショメータ118にて検出される直播装置5に対する整地装置37の高さが整地深さ設定値に対応する高さになるように電動モータ117を制御するように構成されている。ちなみに、整地深さ設定値を変更すると、整地ロータ98は第1作業位置A1〜第2作業位置A2との間の作業位置、及び、退避位置A3に調整されることになる。
【0073】
次に、直播装置5の自動昇降制御を行うための構成について説明する。
高さセンサー78(図16参照)の検出値(H1)が制御装置100に入力されている。機体の進行に伴ってセンターフロート9が田面Gに接地追従するのであり、高さセンサー78の検出値により直播装置5に対するセンターフロート9の高さを検出することによって、田面G(センターフロート9)から直播装置5までの高さを検出することができる。
【0074】
図16に示すように、油圧シリンダ4に作動油を給排操作する制御弁121が備えられており、制御装置100により制御弁121が操作される。制御弁121により油圧シリンダ4に作動油が供給されると、油圧シリンダ4が収縮作動して直播装置5が上昇し、制御弁121により油圧シリンダ4から作動油が排出されると、油圧シリンダ4が伸長作動して直播装置5が下降する。
【0075】
直播装置5に対するセンターフロート9の高さ(田面Gから直播装置5までの高さ)に基づいて、直播装置5が田面Gから設定高さに維持されるように、つまり、高さセンサー78の検出値が設定値に維持されるように制御弁121が操作され、油圧シリンダ4が伸縮作動して直播装置5が自動的に昇降する。制御装置100によるこのような制御動作が自動昇降制御に対応する。
【0076】
尚、走行機体に対するリンク機構3の昇降角度を検出するポテンショメータ124が備えられて、ポテンショメータ124の検出値が制御装置100に入力されており、走行機体に対するリンク機構3の角度を検出することにより、走行機体に対する直播装置5の高さを検出することができるようになっている。
【0077】
図15に示すように、アーム79に沿って平行(水平)に、4個の連結孔79aが形成されており、センターフロート9のブラケット9aに沿って斜めに、4個の連結孔9bが形成されている(後側の連結孔9bほど高い位置に位置している)。これにより、センターフロート9及びアーム79の中央の連結孔9b,79aを使用して、ボルト122によりセンターフロート9のブラケット9aとアーム79と連結すると、アーム79に対してセンターフロート9が平行な姿勢で連結される。
【0078】
センターフロート9及びアーム79の前側の連結孔9b,79aを使用して、ボルト122によりセンターフロート9のブラケット9aとアーム79と連結すると、アーム79に対してセンターフロート9が少し前上がり姿勢で連結される。これにより、田面Gへのセンターフロート9の接地面積が小さくなり、センターフロート9の田面Gへの接地追従感度すなわち自動昇降制御の感度が鈍感になる。この状態は、田面Gの水が比較的少なく、田面Gの泥が比較的硬い状態に対して適している。
【0079】
センターフロート9及びアーム79の後側の連結孔9b,79aを使用して、ボルト122によりセンターフロート9のブラケット9aとアーム79と連結すると、アーム79に対してセンターフロート9が少し前下がり姿勢で連結される。これにより、田面Gへのセンターフロート9の接地面積が大きくなり、センターフロート9の田面Gへの接地追従感度すなわち自動昇降制御の感度が敏感になる。この状態は、田面Gの水が比較的多く、田面Gの泥が比較的軟らかい状態に対して適している。
【0080】
図1、図16に示すように、運転座席21の右横側に備えられた昇降レバー123が、自動位置、上昇位置、中立位置、下降位置及び作業位置に操作及び保持自在に構成されており、昇降レバー123を上昇位置に操作すると、自動昇降制御を停止し、第1及び第2作業クラッチ53,54が遮断状態に操作され(直播装置5及び施肥装置20、整地装置37の停止状態)、右及び左のマーカー22が格納姿勢に操作されて、油圧シリンダ4が収縮作動して直播装置5が上昇する。昇降レバー123を上昇位置に操作した状態で、直播装置5が上限位置に達したことが角度センサー124により検出されると、油圧シリンダ4が自動的に停止する。
【0081】
昇降レバー123を下降位置に操作すると、油圧シリンダ4が伸長作動して直播装置5が下降する。センターフロート9が田面Gに接地すると制御装置100が自動昇降制御を実行して直播装置5が田面Gに接地して停止した状態となり、直播装置5が田面Gから設定高さに維持される。
【0082】
そして、昇降レバー123を中立位置に操作すると、油圧シリンダ4が停止するのであり、このように昇降レバー123を上昇位置、中立位置及び下降位置に操作することによって、直播装置5を任意の高さに上昇及び下降させて停止させることができる。
【0083】
昇降レバー123を作業位置に操作すると、右及び左のマーカー22が格納姿勢に操作された状態となり、制御装置100が自動昇降制御を実行し、第1及び第2作業クラッチ53,54が伝動状態に操作される。ちなみに、ミッションケース51の副変速装置(図示せず)の動力が第1作業クラッチ53及び伝動軸55を介して繰り出し部7に伝達されており、ミッションケース51の副変速装置の動力が、第2作業クラッチ54、伝動軸56及びロッド70を介して繰り出し部15に伝達されている。第1及び第2作業クラッチ53,54を伝動及び遮断状態に操作する電動モータ57が備えられている。
【0084】
これにより、直播装置5(繰り出し部7)及び施肥装置20(繰り出し部15)に動力が伝達されて、種籾及び肥料作溝器12,17により田面Gに形成された溝に種籾及び肥料が供給されるのであり、整地装置37に動力が伝達されて、整地部材98が回転駆動される。
【0085】
図16に示すように、操縦ハンドル74の下側の右横側に、中立位置Nから上方の上昇位置U、下方の下降位置D、後方の右マーカー位置R及び前方の左マーカー位置Lの十字方向に操作自在で且つ中立位置Nに付勢される状態で、操作レバー125が設けられている。
【0086】
昇降レバー123を自動位置に操作した状態において、操作レバー125を上昇位置Uに操作すると(上昇位置Uに操作したのち中立位置Nに復帰すると)、第1及び第2作業クラッチ53,54が遮断状態に操作され、油圧シリンダ4が収縮作動して直播装置5が上昇し、右及び左のマーカー22が格納姿勢に操作される。直播装置5が上限位置に達したことが角度センサー124により検出されると、油圧シリンダ4が自動的に停止する。
【0087】
操作レバー125を下降位置Dに操作すると(下降位置Dに操作したのち中立位置Nに復帰すると)、油圧シリンダ4が伸長作動して直播装置5が下降する。センターフロート9が田面Gに接地すると、自動昇降制御が作動する。
【0088】
操作レバー125を下降位置Dに操作した後に、操作レバー125を再び下降位置Dに操作すると、第1及び第2作業クラッチ53,54が伝動状態に操作される。
【0089】
角度センサー124により検出される直播装置5の高さが、事前に設定された所定高さよりも低い状態において、以下のような操作が行われる。
右(左)のマーカー22が格納姿勢に操作された状態において、操作レバー125を右マーカー位置R(左マーカー位置L)に第1設定時間(比較的短い時間)以上に亘って操作すると、右(左)のマーカー22が作用姿勢に操作される。
右(左)のマーカー22が作用姿勢に操作された状態において、操作レバー125を右マーカー位置R(左マーカー位置L)に第2設定時間(第1設定時間よりも長い時間)以上に亘って操作すると、右(左)のマーカー22が格納姿勢に操作される。
【0090】
直播装置5が上昇して、角度センサー124により検出される直播装置5の高さが、前述の事前に設定された所定高さよりも高くなると、作用姿勢の右及び左のマーカー22が格納姿勢に操作される。角度センサー124により検出される直播装置5の高さが、前述の事前に設定された所定高さよりも高い状態では、前述のように操作レバー125を右及び左マーカー位置R,Lに操作しても、これに関係なく右及び左のマーカー22が格納姿勢に維持される。
【0091】
そして、この乗用型直播機は、直播装置5の8個の供給箇所の夫々における種籾供給経路の先端位置を、同時に、田面Gから設定深さ以上下方に入り込ませる低位置供給状態と、田面Gから前記設定深さよりも浅い位置又は田面Gの上方近傍位置に位置させる高位置供給状態とに切り換え自在な供給位置調節機構KTが備えられている。この供給位置調節機構KTは、前記低位置供給状態及び前記高位置供給状態の夫々において、複数の供給箇所の夫々における種籾供給経路の先端位置の上下高さを微調節可能に構成されている。
【0092】
次に、供給位置調節機構KTについて説明する。
図9、図10、図11に示すように、左右両端側及び中央部の夫々のフロート支持フレーム48に固定された軸受け部材139bによって回動自在に支持される状態で、機体横幅方向略全幅にわたって延びる横向きの作溝器用の回転支軸140が設けられ、この作溝器用の回転支軸140から機体横幅方向に間隔をあけて一体的に8個の作溝器支持アーム141が延設され、各作溝器支持アーム141の先端部に夫々種籾作溝器12が取り付けられている。
【0093】
図7、図8、図9に示すように、最右側のフロート支持フレーム48の近傍において、作溝器用の回転支軸140に一体的に固定する状態で後方下方に向けて作溝器用操作アーム142を延設してあり、この作溝器用操作アーム142にピン固定板143をネジ固定してあり、ピン固定板143に設けられた係止ピン144がフロート支持フレーム48における断面コの字形の連結部48aに形成した上下一対のピン係合孔145A,145B(前後向き長孔)のいずれかに嵌め込み係合させて作溝器用の回動支軸140の自由回動を規制するように構成されている。
【0094】
図10、図11に示すように、係止ピン144が上方側に位置するピン係合孔145Aに挿通する状態でピン固定板143を作溝器用操作アーム142にネジ固定することにより、種籾作溝器12の先端位置(種籾供給経路の先端位置に相当)を田面Gの表面に近い位置又は田面Gよりも上方に位置させる高位置供給状態(図9(b)参照)に切り換えられ、係止ピン144が下方側に位置するピン係合孔145Bに挿通する状態でピン固定板143を作溝器用操作アーム142にネジ固定することにより、種籾作溝器12の先端位置を田面Gから設定深さ以上入り込ませる低位置供給状態(図9(a)参照)に切り換えられるように構成されている。
【0095】
作溝器用操作アーム142の握り部142bは、連結部48aの折り曲げ支持部48aAの開口を介して後方に延出されている。後側のネジ取付孔146のネジを取り外すと、作溝器用操作アーム142は折り曲げ支持部48aAの開口の上端に支持される。
【0096】
そして、ピン固定板143は前後2箇所で作溝器用操作アーム143にネジ止め固定するようになっており、作溝器用操作アーム143におけるネジ取付孔146は前後に1個ずつ形成されている。ピン固定板143の前方側のネジ取付孔147は1個であるが、ピン固定板143の後方側のネジ取付孔148は上下方向に位置を異ならせた状態で複数(具体的には5個、4個以下又は6個以上でもよい)形成されている。
【0097】
作溝器用操作アーム142には、作溝器用操作アーム142に対する係止ピン144の上下移動を許容する上下向きの長孔142aが形成されている。
【0098】
このように、ピン固定板143の後方側のネジ取付孔148が複数形成されていることから、係止ピン144が上方側に位置するピン係合孔145Aに挿通する状態でピン固定板143を作溝器用操作アーム142にネジ固定した高位置供給状態、及び、係止ピン144が下方側に位置するピン係合孔145Bに挿通する状態でピン固定板143を作溝器用操作アーム142にネジ固定した低位置供給状態の夫々において、作溝器用操作アーム142の握り部142bを一方の手で握って、他方の手でピン固定板143の後方側の複数のネジ取付孔148を変更させることで、ピン固定板143と作溝器用操作アーム142との相対的な上下位置が変化して、8個の種籾作溝器12の先端位置の上下高さを同時に5段階に簡単な操作で微調節することができるように構成されている。
このようにピン固定板143を付け替えて作溝器用操作アーム142に対する取り付け状態を変更させることにより、高位置供給状態と低位置供給状態とに切り換えることができるように構成されている。
【0099】
次に、粉粒体の種類に対応した具体的な使用方法について説明する。
種籾としてカルパ種籾を用いて播種する場合には、図9(a)に示すように、供給位置調節機構KTを前記低位置供給状態に切り換える。このことにより、種籾供給経路の先端位置が田面Gから設定深さ以上下方に入り込ませる状態となるので、鳥等に種籾が食われることがない状態でカルパ種籾を田面Gに供給することができる。
【0100】
供給位置調節機構KTは、低位置供給状態において、ピン固定板143の後方側をネジ止めするときに、5個のネジ取付孔148のうちのいずれかに位置を異ならせることにより、8個の種籾作溝器12の先端位置の上下高さを5段階に微調節することができる。
【0101】
種籾として鉄コーティング種籾を用いて播種する場合には、図9(b)に示すように、供給位置調節機構KTを前記高位置供給状態に切り換える。このことにより、種籾が田面Gの表面又はそれに近い箇所に供給されるから、窒息することを回避させる状態で鉄コーティング種籾を田面Gに供給することができる。
【0102】
この高位置供給状態においても、低位置供給状態と同様に、ピン固定板143の後方側を作溝器用操作アーム142にネジ止めするときに、5個のネジ取付孔148のうちのいずれかに位置を異ならせることにより、8個の種籾作溝器12の先端位置の上下高さを5段階に微調節することができる。
この場合、田面Gよりも少しだけ下方に位置している状態にも調整可能である。つまり、田面Gから下方への侵入深さとして5段階に調整することができる。そして、この状態では、8個の種籾作溝器12の先端位置を田面Gから前記設定深さよりも浅い位置又は田面Gの上方近傍位置に位置させることになる。
【0103】
又、直播用の覆土部材150の田面Gに対する作用高さを変更調整自在な覆土位置調節機構FTが備えられている。
この覆土位置調節機構FTは、図12、図13に示すように、作溝器用の回転支軸140の下方側に、その作溝器用の回転支軸140と同様に、左右両端側及び中央部の夫々のフロート支持フレーム48に固定された軸受け部材139bによって回動自在に支持される状態で、機体横幅方向略全幅にわたって延びる横向きの覆土部材用の回転支軸151が設けられ、この覆土部材用の回転支軸151から一体的に延設した8個の覆土部材支持アーム152の先端部に夫々、直播用の覆土部材150が取り付けられている。
【0104】
右から2つ目のフロート支持フレーム48の近傍において、覆土部材用の回転支軸151に一体的に固定する状態で後方に向けて覆土部材用の操作アーム153が延設され、この覆土部材用の操作アーム153に対して、長孔154と連係ピン155との係合によってL字状の揺動アーム156が連動連係されている。この揺動アーム156は支点ブラケット157により支点ピン157aにて回動自在に支持されており、この揺動アーム156の他端側に手動操作式の操作ワイヤ158のインナーワイヤ158aの一端が接続されている。操作ワイヤ158のインナーワイヤ158aの他端は、直播装置5の機体前方側に備えられた手動操作式の覆土深さ調節レバー159に連係されている。
【0105】
又、操作ワイヤ158のアウターワイヤ158bの一端を受けるアウターワイヤ受け具160に形成された係止部161と連係ピン155とにわたって張設したコイルバネ162により、揺動アーム156にて操作ワイヤ158を引き操作する方向、つまり、直播用の覆土部材150を上方側に移動付勢する方向に引張り付勢するように構成されている。一方、覆土深さ調節レバー159を調節用係止具163の複数の調節用の係止位置のいずれかに係止することで、コイルバネ162の付勢力に抗して位置保持することができるように構成され、この覆土深さ調節レバー159の位置を調節することで、直播用の覆土部材150の位置を複数段階に変更調節自在で且つ調節した位置で保持することができるよう構成されている。つまり、田面Gからの下方への侵入深さを7段階に調整することができる。
【0106】
前記揺動アーム156を回動自在に支持する支点ブラケット157は、左右両側の作溝器用操作アーム142同士に亘って架設連結されたアングル材のフレーム164に取り付けられ、又、アウターワイヤ受け具160も作溝器用操作アーム142に取り付けられており、種籾作溝器12の高さを変更すると、それに伴って、支点ブラケット157及びアウターワイヤ受け具160も連動して位置が変更するように構成されている。
【0107】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、粉粒体供給装置として直播装置5を備え、別種粉粒体供給装置として施肥装置20を備えて、施肥装置20における肥料供給経路の先端位置、つまり、肥料作溝器17の下端位置が田面Gに対して一定深さとなる位置で固定され、直播装置5における種籾供給経路の先端位置が低位置供給状態と高位置供給状態とに切り換え自在な構成としたが、このような構成に代えて、施肥装置20における肥料供給経路の先端位置も低位置供給状態と高位置供給状態とに切り換え自在な構成としてもよい。
【0108】
(2)上記実施形態では、前記供給位置調節機構KTが、前記低位置供給状態及び前記高位置供給状態において粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを常に同じ位置に調節する構成であってもよい。
【0109】
(3)上記実施形態では、別種粉粒体として肥料を田面Gに供給し、粉粒体として種籾を田面Gに供給するものを例示したが、別種粉粒体として種籾を田面Gに供給し、粉粒体として肥料を田面Gに供給するものでもよく、又、肥料に代えて薬剤を供給するものでもよい。
【0110】
(4)上記実施形態では、供給位置調節機構KTが、ピン固定板143を操作アーム142に対して付け替えることにより、種籾作溝器12の先端位置を低位置供給状態と高位置供給状態とに切り換えるようにしたが、このような構成に代えて、操縦部に備えられた操作具(図示せず)の指令に基づいて、アクチュエータの作動により、粉粒体供給経路の先端位置を低位置供給状態と高位置供給状態とに切り換え自在に構成するものでもよい。
【0111】
又、前記低位置供給状態及び前記高位置供給状態の夫々において、アクチュエータの作動により、複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを微調節することが可能な構成としてもよい。
【0112】
このようにアクチュエータにより上下高さを変更するように構成した場合に、自動昇降制御における制御感度の設定値と粉粒体供給経路の先端位置の微調節位置との相関関係を予め定めておき、制御感度の設定値に応じて粉粒体供給経路の先端位置の微調節位置を設定するようにしてもよい。
【0113】
圃場の表面の凹凸の状態や泥土の硬軟等の圃場の状況を検出する圃場状況検出手段を備えているものでは、その検出情報に基づいて、適切な粉粒体供給経路の先端位置の微調節位置を報知させるようにしてもよい。
【0114】
(5)上記実施形態では、種籾作溝器12の位置を変更することにより、粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを変更する構成として、例えば、作溝器12を用いる状態と、作溝器12を用いることなく粉粒体供給ホース13から直接に田面Gに粉粒体を供給する状態とに切り換えることによって、粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを変更する構成とする等、種々の供給形態で実施することができる。
【0115】
(6)上記実施形態では、直播装置5における覆土部材150の田面Gに対する作用高さを変更調整自在な覆土位置調節機構FTを備える構成としたが、このような覆土位置調節機構FTを備えない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、肥料、薬剤、種籾等の粉粒体を田面に供給するための水田作業機に適用できる。
【符号の説明】
【0117】
5 粉粒体供給装置
12,17 作溝器
20 別種粉粒体用供給装置
88,150 覆土部材
KT 供給位置調節機構
FT 覆土位置調節機構
G 田面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の走行に伴って機体横幅方向に並ぶ複数の供給箇所において田面に粉粒体を供給する粉粒体供給装置が備えられた水田作業機であって、
前記粉粒体供給装置の複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置を、同時に、田面から設定深さ以上下方に入り込ませる低位置供給状態と、前記粉粒体供給経路の先端位置を田面から前記設定深さよりも浅い位置又は田面の上方近傍位置に位置させる高位置供給状態とに切り換え自在な供給位置調節機構が備えられている水田作業機。
【請求項2】
前記供給位置調節機構が、前記低位置供給状態及び前記高位置供給状態の夫々において、複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを微調節可能に構成されている請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】
前記粉粒体とは異なる種類の別種粉粒体を田面に供給する別種粉粒体用供給装置を備えて構成され、
前記粉粒体供給装置及び前記別種粉粒体用供給装置の夫々が粉粒体供給経路の先端位置に田面に入り込み田面に粉粒体供給用の溝を形成する作溝器と、前記作溝器にて田面に形成した溝を埋め戻す覆土部材とを備えて構成され、
前記別種粉粒体用供給装置の前記作溝器が前記粉粒体供給装置の前記作溝器よりも機体前方に位置をずらせた状態で設けられ、
前記別種粉粒体用供給装置の前記作溝器に対応する前記覆土部材が、その作溝器の機体前後方向の後方側であって且つ機体横幅方向の一方側箇所に位置させた状態で設けられ、
前記粉粒体供給装置の前記作溝器が、前記別種粉粒体用供給装置の前記作溝器の機体前後方向の後方側であって且つ機体横幅方向の他方側箇所に位置させた状態で設けられている請求項1又は2記載の水田作業機。
【請求項4】
前記別種粉粒体用供給装置が、前記別種粉粒体として肥料又は薬剤を田面に供給するものであり、前記粉粒体供給装置が、前記粉粒体として種籾を田面に供給するものである請求項3記載の水田作業機。
【請求項5】
前記粉粒体供給装置における前記覆土部材の田面に対する作用高さを変更調整自在な覆土位置調節機構が備えられている請求項3又は4記載の水田作業機。
【請求項1】
走行機体の走行に伴って機体横幅方向に並ぶ複数の供給箇所において田面に粉粒体を供給する粉粒体供給装置が備えられた水田作業機であって、
前記粉粒体供給装置の複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置を、同時に、田面から設定深さ以上下方に入り込ませる低位置供給状態と、前記粉粒体供給経路の先端位置を田面から前記設定深さよりも浅い位置又は田面の上方近傍位置に位置させる高位置供給状態とに切り換え自在な供給位置調節機構が備えられている水田作業機。
【請求項2】
前記供給位置調節機構が、前記低位置供給状態及び前記高位置供給状態の夫々において、複数の供給箇所の夫々における粉粒体供給経路の先端位置の上下高さを微調節可能に構成されている請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】
前記粉粒体とは異なる種類の別種粉粒体を田面に供給する別種粉粒体用供給装置を備えて構成され、
前記粉粒体供給装置及び前記別種粉粒体用供給装置の夫々が粉粒体供給経路の先端位置に田面に入り込み田面に粉粒体供給用の溝を形成する作溝器と、前記作溝器にて田面に形成した溝を埋め戻す覆土部材とを備えて構成され、
前記別種粉粒体用供給装置の前記作溝器が前記粉粒体供給装置の前記作溝器よりも機体前方に位置をずらせた状態で設けられ、
前記別種粉粒体用供給装置の前記作溝器に対応する前記覆土部材が、その作溝器の機体前後方向の後方側であって且つ機体横幅方向の一方側箇所に位置させた状態で設けられ、
前記粉粒体供給装置の前記作溝器が、前記別種粉粒体用供給装置の前記作溝器の機体前後方向の後方側であって且つ機体横幅方向の他方側箇所に位置させた状態で設けられている請求項1又は2記載の水田作業機。
【請求項4】
前記別種粉粒体用供給装置が、前記別種粉粒体として肥料又は薬剤を田面に供給するものであり、前記粉粒体供給装置が、前記粉粒体として種籾を田面に供給するものである請求項3記載の水田作業機。
【請求項5】
前記粉粒体供給装置における前記覆土部材の田面に対する作用高さを変更調整自在な覆土位置調節機構が備えられている請求項3又は4記載の水田作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−211952(P2011−211952A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83065(P2010−83065)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(599118768)株式会社斎藤農機製作所 (47)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(599118768)株式会社斎藤農機製作所 (47)
【Fターム(参考)】
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