説明

水硬性組成物及びこれらのモルタルと硬化体

【課題】 本発明は、金属と接触させて施工しても、水硬性組成物と接触する金属表面に錆の発生を抑制又は遅延させることができ、硬化物の強度の向上した水硬性組成物を提供することを目的とした。
【解決手段】 本発明の第一は、アルミナセメント30〜50質量%、ポルトランドセメント25〜45質量%及び石膏23〜27質量%(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量%である。)の水硬性成分を含むことを特徴とする水硬性組成物、及びこのモルタル、硬化物を提供することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木・建築分野に使用される防錆性に優れる水硬性組成物であり、金属表面に錆の発生を抑制又は遅延させることに優れる水硬性組成物及びこれらのモルタル及び硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アルミナセメント、ポルトランドセメント、石膏、高炉スラグからなる水硬性成分と、リチウム塩とホウ酸化合物よりなる凝結調整剤と、減水剤と、増粘剤とからなる組成物が開示されている。
特許文献2には、アルミナセメント、ポルトランドセメント、石膏、高炉スラグからなる水硬性成分と、減水剤と、増粘剤とからなる組成物が開示されている。
特許文献3には、セメント、ポゾラン物質、ブレーン値6000cm/g〜15000cm/gの石こう類、石灰類、アルミナセメント、凝結遅延剤及び速硬性改善剤からなる組成物であることを特徴とする一粉型超速硬性セメント組成物が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−211961号公報
【特許文献2】特開2000−302519号公報
【特許文献3】特開平11−217253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建築や土木などでは、モルタルなどを用いて施工する場合、モルタルと接触する金属表面に錆が発生する場合がある。錆の発生により金属の腐食が起きるため耐久性に問題が生じる可能性が考えられる。
本発明は、金属と接触させて施工しても、水硬性組成物と接触する金属の錆の発生を抑制又は遅延させることができ、硬化物の強度を向上させた水硬性組成物を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一は、アルミナセメント35〜50質量部、ポルトランドセメント25〜42質量部及び石膏23〜27質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)の水硬性成分を含むことを特徴とする水硬性組成物を提供することである。
【0006】
本発明の第二は、本発明の第一の水硬性組成物と水とを混練して得られるモルタルを提供することである。
本発明の第三は、本発明の第一の水硬性組成物と水との配合物を硬化させて得られる硬化物を提供することである。
【0007】
本発明の水硬性組成物の好ましい態様を以下に示す。好ましい態様は複数組み合わせることができる。
1)水硬性成分が、アルミナセメント35〜48質量部、ポルトランドセメント27〜41質量部及び石膏23.5〜27質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)の3成分を含むこと、さらにアルミナセメント40〜42質量部、ポルトランドセメント33〜36質量部及び石膏24〜26質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)の水硬性成分を含むこと。
2)水硬性組成物は、無機成分を含むこと、さらに無機成分は水硬性成分100質量部に対して、30〜350質量部を含むこと。
3)水硬性組成物は、水硬性成分100質量部に対して、細骨材60〜300質量部を含むこと。
4)水硬性組成物は、減水剤を含むこと、さらに水硬性成分100質量部に対して、減水剤0.01〜1.0質量部を含むこと。
5)水硬性組成物は、増粘剤を含むこと、さらに水硬性成分100質量部に対して、増粘剤0.05〜1質量部を含むこと。
6)水硬性組成物は、凝結調整剤を含むこと、さらに凝結調整剤は、オキシカルボン酸及びこれらのアルカリ金属塩(但し、リチウムを除く)から選ばれる少なくとも1種の成分を含む凝結遅延剤と、リチウム塩から選ばれる少なくとも1種の成分を含む凝結促進剤との両方を含むこと。
7)水硬性組成物は、消泡剤を含むこと。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、金属又は金属メッキと接触させて施工しても、水硬性組成物と接触する金属又は金属メッキ表面に錆の発生を抑制又は遅延させることができ防錆性に優れ、硬化物の強度に優れる水硬性組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
水硬性成分は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の3成分である。
水硬性組成物において、水硬性成分はアルミナセメント35〜50質量部、ポルトランドセメント25〜42質量部及び石膏23〜27質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)であり、
好ましくは水硬性成分はアルミナセメント35〜48質量部、ポルトランドセメント27〜41質量部及び石膏23.5〜27質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)であり、
さらに好ましくは水硬性成分はアルミナセメント35〜46質量部、ポルトランドセメント29〜41質量部及び石膏23.5〜26.5質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)であり、
より好ましくは水硬性成分はアルミナセメント36〜44質量部、ポルトランドセメント31〜39質量部及び石膏24〜26.5質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)であり、
特に好ましくは水硬性成分はアルミナセメント40〜42質量部、ポルトランドセメント33〜36質量部及び石膏24〜26質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)である。
水硬性成分において、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の3成分の上記の配合組成は、防錆性に優れ、硬化物の強度に優れる。
【0010】
アルミナセメントは、潜在的に急硬性を有しており、硬化後は耐化学薬品性、耐火性に優れた硬化体を与える。また、潜在水硬性を有する高炉スラグの存在により、その欠点である硬化体強度の経時的な低下も抑制される。アルミナセメントは鉱物組成が異なるものが数種知られ市販されており、何れも主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であるが、強度の面からは、CA成分が多く且つCAF等の少量成分が少ないアルミナセメントが好ましい。
【0011】
ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメントなどを用いることができる。水硬性成分としてポルトランドセメントを用いることにより、コスト低減に効果が認められ好ましい。
ポルトランドセメントは、ポルトランドセメントと無機成分との混合物である高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどの混合セメントを用いることができる。
【0012】
石膏は、無水、半水等の各石膏がその種を問わず1種又は2種以上の混合物として使用できる。石膏は急硬性であり、また、硬化後の寸法安定性保持成分として働くものである。特に石膏は、ブレーン比表面積が4000cm/g以上、好ましくは7800cm/g以上を用いることにより強度が向上する。
【0013】
本発明の水硬性組成物は、必要に応じて無機成分を本発明の特性を損なわない範囲で含むことができる。
無機成分としては、高炉スラグなどのスラグ、シリカフューム、シリカダスト、フライアッシュなどを用いることができる。
本発明の水硬性組成物において、無機成分は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは30〜350質量部、さらに好ましくは40〜250質量部、より好ましくは50〜200質量部、特に好ましくは60〜150質量部を含むことができる。
【0014】
特に無機成分としては、高炉スラグが好ましく、乾燥収縮による硬化体の耐クラック性を高めるだけでなく、アルミナセメントの硬化体強度を向上させる効果も有している。
高炉スラグは、JIS・A−6206に規定されるブレーン比表面積3000cm/g以上のものを用いることができる。
【0015】
本発明の水硬性組成物は、生石灰、消石灰、仮焼ドロマイトなどの石灰類を含んでもよいし、或いは含まなくても良い。
【0016】
本発明の水硬性組成物は、必要に応じてさらに細骨材を本発明の特性を損なわない範囲で含むことができる。
本発明の水硬性組成物は、細骨材を水硬性成分100質量部に対して、好ましくは60〜300質量部、さらに好ましくは90〜275質量部、より好ましくは120〜250質量部、特に好ましくは150〜220質量部含むことが好ましい。
【0017】
細骨材としては、粒径2mm以下の骨材、好ましくは粒径0.1〜2mmの骨材、さらに好ましくは粒径0.15〜1.5mmの骨材、特に好ましくは0.2〜1mmの骨材を主成分としている。
細骨材としては、珪砂、川砂、海砂、アルミナクリンカー、シリカ粉、粘土鉱物、廃FCC触媒、石灰石などの無機質材、ウレタン砕、EVAフォーム、発砲樹脂などの樹脂粉砕物などを用いることができる。
特に細骨材としては、珪砂、川砂、海砂、廃FCC触媒、石英粉末、アルミナクリンカーなどが好ましく用いることが出来る。
細骨材の粒径は、JIS・Z−8801で規定される呼び寸法の異なる数個のふるいを用いて測定する。
特に細骨材は、FCC触媒及び/又は珪砂とを含むことが好ましく、FCC触媒0〜30質量部及び珪砂は70〜100質量部、さらに好ましくはFCC触媒を1〜20質量部及び珪砂は80〜99質量部、特に好ましくはFCC触媒を2〜10質量部及び珪砂は90〜98質量部を併用することが好ましい。
FCC触媒は、市販のFCC触媒、使用済みのFCC廃触媒などを用いることが出来る。FCCとは、触媒と原料油が流動床雰囲気で接触分解する過程の総称であり、FCC触媒は、低品位の重質原料油からガソリンやLCOを分留する過程で、分子量の大きな残油の分解やV、Niなどのメタルトラップ剤として使用されるものである。
【0018】
本発明の水硬性組成物は、必要に応じてさらに減水剤及び/又は増粘剤を本発明の特性を損なわない範囲で含むことができ、減水剤及び/又は増粘剤は、水硬性成分100質量部に対して、減水剤が0.01〜1質量部、増粘剤が0.05〜1質量部の範囲で含むことが好ましい。
【0019】
本発明の水硬性組成物は、必要に応じてさらに消泡剤を本発明の特性を損なわない範囲で含むことができ、消泡剤は、水硬性成分100質量部に対し、消泡剤2質量部以下を含むことが好ましい。
【0020】
減水剤は、ナフタレン系、メラミン系、ポリカルボン酸系などを用いることが出来、併用する増粘剤との最適な組合わせとなるのは、ポリカルボン酸系が好ましい。
減水剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、水硬性成分100質量部に対して0.01〜1質量部、さらに0.02〜0.5質量部、特に0.05〜0.3質量部が好ましい。
【0021】
増粘剤は、セルロース系、蛋白質系、ラテックス系、および水溶性ポリマー系などを用いることが出来、特にセルロース系などを用いることが出来る。
増粘剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、水硬性成分100質量部に対して0.05〜1質量部、さらに0.1〜0.75質量部、特に0.2〜0.5質量部含むことが好ましい。増粘剤の添加量が多くなると、流動性の低下を招く恐れがあり好ましくない。
増粘剤及び消泡剤を併用して用いることは、骨材分離の抑制、気泡発生の抑制、硬化体表面の改善に好ましい効果を与えるために好ましい。
【0022】
消泡剤は、シリコン系、アルコール系、ポリエーテル系などの合成物質、石油精製由来の鉱物油系又は植物由来の天然物質鉱油系など、公知のものを用いることが出来る。
消泡剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、水硬性成分100質量部に対して、2質量部以下、さらに1質量部以下、特に0.2質量部以下が好ましい。消泡剤の添加量は、上記より多く添加する場合、消泡効果の向上がみとめられない場合がある。
【0023】
凝結調整剤は、用いる水硬性組成物に応じて、特性を損なわない範囲で適宜添加することができ、凝結促進剤(凝結又は硬化の促進を行う成分)及び/又は凝結遅延剤(凝結遅延を行う成分)の種類、添加量及び混合比率を適宜選択して、水硬性組成物に添加することにより、水硬性組成物の可使時間を調整することができると共に、硬化時間及び硬化速度も調整することができる。可使時間を調整することで、施工が非常に容易になるため好ましい。又、硬化時間及び硬化速度も調整することで、硬化時に発生するクラックや硬化後に発生する白華を防止できると共に、速硬性を与えることで早期開放か可能になるため好ましい。
本発明の水硬性組成物は、必要に応じてさらに凝結調整剤を本発明の特性を損なわない範囲で含むことができ、凝結調整剤は、水硬性成分100質量部に対し、凝結調整剤0.05〜5質量部を含むことが好ましい。
【0024】
凝結調整剤は、公知の凝結促進剤や凝結遅延剤を用いることができるが、凝結遅延剤としてオキシカルボン酸及びこれらのアルカリ金属塩(但し、リチウムを除く)から選ばれる少なくとも1種の成分を含む凝結調整剤を用いることが好ましく、また凝結促進剤としてリチウム塩から選ばれる少なくとも1種の成分を含む凝結調整剤を用いることが好ましい、さらに、速硬性と可使時間を共に確保し、仕上がり良好な硬化表面を得るためにオキシカルボン酸及びこれらのアルカリ金属塩(但し、リチウムを除く)から選ばれる少なくとも1種の成分とリチウム塩から選ばれる少なくとも1種の成分とを併用して含む凝結調整剤を用いることが好ましい。
【0025】
遅延剤としてのオキシカルボン酸及びこれらのアルカリ金属塩(但し、リチウムを除く)の例としては、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸や、これらのナトリウム塩又はカリウム塩を用いることが出来る。特に酒石酸ナトリウムは、効果、入手容易性の面から好ましい。
【0026】
促進剤としてのリチウム塩の一例として、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、亜硝酸リチウム、水酸化リチウムなどの無機リチウム塩や、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸リチウムなどの有機リチウム塩を用いることが出来る。特に炭酸リチウムは、効果、入手容易性、価格の面から好ましい。
又、リチウム塩としては、特性を妨げない粒径を用いることが好ましく、粒径は50μm以下、さらに30μm以下、特に10μm以下が好ましく、粒径が上記範囲より大きくなるとリチウム塩の溶解度が小さくなるために好ましくなく、特に顔料添加系では微細な多数の斑点として目立ち、美観を損なう場合がある。
凝結調整剤は、オキシカルボン酸及びこれらのアルカリ金属塩(但し、リチウムを除く)から選ばれる少なくとも1種の成分から成る遅延剤とリチウム塩から成る促進剤との合量が、水硬性成分100質量部に対して0.05〜5質量部、さらに0.1〜2質量部、特に0.30〜1質量部の範囲で添加することが好ましい。
凝結調整剤は、リチウム塩に対する遅延剤のモル比が、1〜50の範囲にするのが好ましく、モル比が1より小さいと、凝結が早すぎ、流動性が低下するため、可使時間が短くなりすぎて施工に支障を来たす場合があり好ましくなく、また、50より大きいと、速硬性が低下し、早期開放が困難になる場合があり好ましくない。
【0027】
凝結調整剤として、オキシカルボン酸及びこれらのアルカリ金属塩(但し、リチウムを除く)と、リチウム塩とを除く、その他の公知の促進剤及び公知の遅延剤としては、
促進剤の具体例として珪酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、蟻酸カルシウム、消石灰、生石灰などがあり、遅延剤の具体例として、重炭酸ナトリウム、リグニンスルホン酸、トリポリリン酸ナトリウムなどがある。公知の遅延剤としての重炭酸ナトリウムを併用添加することが、効果、入手容易性、価格の面から好ましい。
【0028】
本発明の水硬性組成物は、水硬性成分100質量部に対し、
無機成分が30〜350質量部、細骨材が60〜300質量部、減水剤が0.01〜1.0質量部、増粘剤0.05〜1質量部、凝結調整剤0.05〜5質量部及び消泡剤2質量部以下とから選ばれる成分を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0029】
本発明の水硬性組成物は、さらに特性を損なわない範囲で水を加えることにより、流動性及び流動保持性を有するモルタル又はセメントとして用いることができる。
本発明の水硬性組成物は、水を水硬性成分100質量部に対し、56〜120質量部、さらに72〜112質量部、特に88〜104質量部加えて用いることが好ましい。
本発明の水硬性組成物は、水を水硬性組成物100質量部に対し、14〜30質量部、さらに18〜28質量部、特に22〜26質量部加えて用いることが好ましい。
【0030】
本発明の水硬性組成物は、
(1)メッキをしていない炭素鋼などの鋼、鉄などの金属、
(2)公知のメッキ、例えば亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメッキ、アルミニウムメッキ、銅メッキなどのメッキをしている炭素鋼などの鋼、鉄などの金属と接触させて用いることが出来る。
メッキとしては、化学蒸着や物理蒸着などの気相成膜法、電気メッキ、無電解メッキや化学メッキなどの電気化学的成膜法、溶融メッキ、金属浸透などの公知のメッキを用いることが出来る。
【0031】
本発明の水硬性組成物は金属と接して施工する場合、その接する金属としては、公知の金属を用いることが出来、好ましくは鋼、鉄、アルミニウムなどが好ましい。鋼としては、鉄−炭素系を基本とする合金が好ましく、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼などが好ましい。
鋼としては、圧延されて用いられる鋼材が好ましい。
金属の形状は、特にどのような形状でも用いることが出来、板、シート、棒状、管状など、これらの加工物を用いることが出来る。
【0032】
本発明の水硬性組成物は、メッキが施された金属及び/又は金属と接触する部位に施工することができる。
本発明の水硬性組成物は、メッキが施された金属及び/又は金属に接触させて施工して、メッキが施された金属及び/又は金属と水硬性組成物の硬化物又は構造体を得ることが出来る。
本発明の水硬性組成物は、メッキが施された金属及び/又は金属と施工して、メッキが施された金属及び/又は金属を固定した水硬性組成物と金属の硬化物又は構造体を得ることが出来る。
【0033】
本発明の水硬性組成物は、メッキしていない金属面やメッキを施した金属面と接触する用途、メッキしていない金属面やメッキを施した金属を固定する用途に用いることができる。
本発明の水硬性組成物は、メッキしていない金属面やメッキを施した金属面と接触させて施工することができ、本発明の水硬性組成物と金属の施工物や構造体を得ることが出来る。
本発明の水硬性組成物は、メッキしていない金属やメッキを施した金属を固定した構造体を製造することができる。
【0034】
本発明の水硬性組成物の施工方法の一例を示す。
本発明の水硬性組成物を床下地材として使用する場合、メッキしていない金属やメッキを施した金属製の部材や壁下地材と接触させて施工することができ、本発明の水硬性組成物からなる床下地材とメッキしていない金属やメッキを施した金属製の部材や壁下地材との構造体を得ることが出来る。また、メッキしていない釘やメッキを施した釘を用いて、木枠を本発明の水硬性組成物に固定することが出来る。
【0035】
本発明の水硬性組成物を用いて金属を固定する場合、金属に水硬性組成物と水との混合物を、(1)流し込む方法、(2)塗布する方法、(3)吹き付ける方法などの公知の方法を用いることができる。
また、本発明の水硬性組成物と水との混合物に金属を挿入させて固定することができる。
【0036】
本発明の水硬性組成物は、学校、マンション、コンビニエンスストア、病院、ベランダ、屋上などの床下地材、壁下地材などに用いることが出来る。
本発明の水硬性組成物は、学校、マンション、コンビニエンスストア、病院、ベランダ、屋上などの床下地材、壁下地材などのセルフレベリング材に用いることが出来る。
本発明の水硬性組成物は、土木建築用などに用いることができる。
【0037】
本発明のアルミナセメント30〜50質量部、ポルトランドセメント25〜45質量部及び石膏23〜27質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の総量は、100質量部である。)の水硬性成分を含む水硬性組成物を、金属及び/又はメッキが施された物と接するように施工して、金属及び又はメッキが施された物と水硬性組成物の硬化物又は構造体を製造することができる。
【0038】
本発明の水硬性組成物は、曲げ強度が好ましくは3.8N/mm以上、さらに好ましくは3.9N/mm以上、より好ましくは4.0N/mm以上、特に好ましくは4.2N/mm以上であり、
圧縮強度が好ましくは17N/mm以上、さらに好ましくは18N/mm以上、より好ましくは19N/mm以上、特に好ましくは20N/mm以上の硬化物(24時間養生+6日追加養生)を得ることができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。但し、本発明は下記実施例により制限されるものでない。
【0040】
1.ブレーン比表面積の評価法:JIS・R−5201に規定されているブレーン空気透過装置を使用して測定する。
【0041】
[実施例1〜20]
(1)使用材料:以下の材料を使用した。
・アルミナセメント:ブレーン比表面積3,300cm/g、モノカルシウムアルミネート含有量45重量%(ラファージュアルミネート品)。
・ポルトランドセメント:早強ポルトランドセメント、ブレーン比表面積4,500cm/g(宇部三菱セメント(株)品)。
・石膏: II型無水石膏、ブレーン比表面積5340cm/g(セントラル硝子(株)品)。
・高炉スラグ:ブレーン比表面積4400cm/g(宇部三菱セメント(株)品)。
・FCC触媒:使用済みのFCC廃触媒を用い、比表面積100m/g(出光興産(株)品)。
・珪砂:6号珪砂(東海サンド(株)品)。
・リチウム塩:炭酸リチウム:UF300(本荘ケミカル(株)品)。
・遅延剤:酒石酸ナトリウム(扶桑化学工業(株)品)と重炭酸ナトリウム(東ソー(株)品)。
・減水剤:ポリカルボン酸系減水剤(花王(株)品)。
・増粘剤:メチルセルロース系増粘剤:マーポローズEMP−30(松本油脂製薬(株)品)。
・消泡剤:ポリエーテル系消泡剤:77−P(サンノプコ(株)品)。
【0042】
(2)水硬性組成物、スラリーの調製:
表2に示す配合の水硬性成分、細骨材、減水剤、増粘剤、凝結調整剤及び消泡剤(総量:1.5kg)より成る水硬性組成物を混合調整し、さらに所定量の水を加えて攪拌器(スリーワンモーター、Φ86mmタービン型羽使用、回転数650rpm)を用いて3分間混練して、スラリーを得る。スラリーの調整は、35℃の温度の恒温室で行い、水硬性組成物及び水の温度を35℃にしたものを使用する。水硬性成分は、表1に示す組成を用いる。
【0043】
(3)錆の評価:
上記(2)のスラリーを、直径50mm、高さ100mm〔壁面材質:低炭素鋼(側面の内面:すずメッキ処理)、底板材質:圧延鋼板(底部の内面:メッキ無し)〕の円筒形である(株)前田製作所製サミット缶に詰め、温度35℃、湿度65%の条件で7日間養生後、サミット缶からモルタル硬化体を取り出し、サミット缶内底面の錆の状態を目視にて観察し、結果を表3に示す。
錆評価(◎:錆無し、○:錆2mm未満、×:錆2mmから5mm未満、××:錆5mmから10mm未満、×××:錆10mm以上)
【0044】
(4)強度の評価(曲げ強度、圧縮強度):
JIS・R−5201に示される4×4×16cmの型枠に生成スラリー(35℃に調整)を型詰めして、温度35℃、湿度65%で24時間気中養生した後、脱型し、さらに同条件の気中にて所定期間(6日)追加養生して成型体を得る。成型体は、JIS・R−5201記載の方法に従い測定する。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
1.実施例1〜3は、比較例1〜3と較べ、曲げ強度及び圧縮強度が向上している。
2.実施例1〜3は、比較例4〜7と比べ、錆びの防止又は抑制する効果が優れている。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナセメント35〜50質量部、ポルトランドセメント25〜42質量部及び石膏23〜27質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)の水硬性成分を含むことを特徴とする水硬性組成物。
【請求項2】
アルミナセメント40〜42質量部、ポルトランドセメント33〜36質量部及び石膏24〜26質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)の水硬性成分を含むことを特徴とする水硬性組成物。
【請求項3】
水硬性組成物が、無機成分を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水硬性組成物。
【請求項4】
水硬性組成物は、水硬性成分100質量部に対して、無機成分を30〜350質量部を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水硬性組成物。
【請求項5】
石膏は、ブレーン比表面積が4000cm/g以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
【請求項6】
水硬性組成物が、水硬性成分100質量部に対して、細骨材60〜300質量部を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
【請求項7】
水硬性組成物が、減水剤及び増粘剤とを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
【請求項8】
水硬性組成物が、水硬性成分100質量部に対して、減水剤0.01〜1.0質量部及び増粘剤0.05〜1質量部を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
【請求項9】
水硬性組成物は、凝結調整剤を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
【請求項10】
水硬性組成物は、さらに凝結調整剤を含み、
凝結調整剤は、オキシカルボン酸及びこれらのアルカリ金属塩(但し、リチウムを除く)から選ばれる少なくとも1種の成分を含む凝結遅延剤と、リチウム塩から選ばれる少なくとも1種の成分を含む凝結促進剤であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の水硬性組成物。
【請求項11】
請求項1〜10に記載の水硬性組成物と水とを混練して得られるモルタル。
【請求項12】
請求項1〜10に記載の水硬性組成物と水との配合物を硬化させて得られる硬化物。


【公開番号】特開2006−265083(P2006−265083A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140273(P2005−140273)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】