説明

水系ポリウレタン分散体、およびそれを用いたソフトフィール塗料用水系分散体組成物

【課題】塗膜硬度、柔軟性、耐酸性、耐アルカリ性、耐アルコール性、耐油性、耐磨耗性などの物性バランスに優れ、かつソフトで、天然皮革様な手触り感のある塗膜を形成可能にするソフトフィール塗料用水系分散体組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記(a)、(b)、(c)を構成成分として含有し、かつポリウレタン主鎖の末端基がOH基であることを特徴とする水系ポリウレタン分散体組成物。(a)1分子中に2つ以上のイソシアネート基を含有する有機ポリイソシアネート化合物。(b)下記式(1)及び(2)の繰り返し単位からなり、(1)と(2)の割合が(1)/(2)=80/20〜20/80(モル比)であり、末端基が水酸基であることを特徴とする脂肪族ポリカーボネートジオール。




(c)カルボキシル基および/またはスルホン基含有ポリオールもしくはその塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するポリカーボネートジオールから得られたポリウレタン主鎖の末端基がOH基である水系ポリウレタン分散体と該水系ポリウレタン分散体及び水系ポリイソシアネート分散体からなるソフトフィール塗料用水系分散体組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン樹脂は、合成皮革、人工皮革、接着剤、家具用塗料、自動車塗料等の幅広い領域で使用されており、イソシアネートと反応させるポリオール成分としてポリエーテルやポリエステルが用いられてきた。しかしながら、近年、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、耐黴性、耐油性等、樹脂の耐性への要求の高度化、さらには、手触り感覚がソフトで、天然皮革様なソフトフィール塗料への要求が高まってきている。従来の水系ポリウレタンの製法としては、溶媒中でNCO末端基を有するプレポリマーを作製し、水への乳化と同時に鎖伸張剤を用いて高分子化し、溶媒を除去することにより水系ポリウレタン分散体を得ていた。しかし、耐性を向上させるには、架橋剤を用いての架橋構造の導入が必要であるが、ポリウレタンの一次分子量が長いため、ハイレベルの耐性要求とソフトフィール感を両立させるには困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、塗膜硬度、柔軟性、耐酸性、耐アルカリ性、耐アルコール性、耐油性、耐磨耗性などの物性バランスに優れ、かつソフトで、天然皮革様な手触り感のある塗膜を形成可能にするソフトフィール塗料用水系分散体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するポリカーボネートジオールから得られたポリウレタン主鎖の末端基がOH基である水系ポリウレタン分散体と水系ポリイソシアネート分散体を組み合わせることにより、ソフトで、天然皮革様な手触り感があり、かつ塗膜耐性とのバランスに優れたソフトフィール塗料が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0005】
即ち、本発明は、下記の態様を含むものである。
(1)(A)水系ポリウレタン分散体が、下記の(a)、(b)並びに(c)の成分を反応させて得られたポリウレタンを含有し、該ポリウレタン主鎖の末端基がOH基であることを特徴とする水系ポリウレタン分散体。
(a)1分子中に2つ以上のイソシアネート基を含有する有機ポリイソシアネート化合物。
(b)下記式(1)及び(2)の繰り返し単位からなり、(1)と(2)の割合が(1)/(2)=80/20〜20/80(モル比)であり、末端基が水酸基である脂肪族ポリカーボネートジオール。
【化1】

【化2】

(c)カルボキシル基及び/又はスルホン基含有ポリオールもしくはその塩。
【0006】
(2)(A)上記(1)記載の水系ポリウレタン分散体、及び(B)水系ポリイソシアネート分散体を必須成分として含有することを特徴とするソフトフィール塗料用水系分散体組成物。
(3)上記(1)記載の(a)有機ポリイソシアネート化合物が、脂肪族及び/又は脂環族有機ジイソシアネート化合物であることを特徴とする上記(2)に記載のソフトフィール塗料用水系分散体組成物。
(4)上記(1)記載の水系ポリウレタン分散体に含有されるOH末端基を有するポリウレタン主鎖の数平均分子量が800〜50000の範囲にあることを特徴とする上記(2)又は(3)に記載のソフトフィール塗料用水系分散体組成物。
(5)水系ポリイソシアネート分散体が、自己乳化性の水系ポリイソシアネート分散体であることを特徴とする上記(2)〜(4)のいずれかに1項に記載のソフトフィール塗料用水系分散体組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の特定の構造を有するポリカーボネートジオールから得られたポリウレタン主鎖の末端基がOH基である水系ポリウレタン分散体と水系ポリイソシアネート分散体より得られるソフトフィール塗料用水系分散体組成物を用いることにより、塗膜硬度、柔軟性、耐酸性、耐アルカリ性、耐アルコール性、耐油性、耐磨耗性などの物性バランスに優れ、ソフトで、天然皮革様な手触り感のあるソフトフィール塗膜を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に述べる。
本発明の水系ポリウレタン分散体の製造に用いる有機ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジイソシアネートシクロヘキサン、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−(または2,6−)ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などの芳香族、脂肪族、脂環族系有機ジイソシアネート、あるいはこれらのビュレット体、イソシアヌレート体等の多官能イソシアネート基を含有する多量体、あるいはこれらのイソシアネートの単独または混合物が挙げられる。
特に耐候性の点から、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ドデカンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂肪族及び/又は脂環族ジイソシアネートが好ましい。
【0009】
次に、通常の水系ポリウレタン分散体の製造に用いるポリカーボネートジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2,3−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等ジオールからなるポリカーボネートジオールが挙げられる。
しかしながら、本発明者等は、各種ポリカーボネートジオールを本発明の用途に用いることを検討した結果、上記(b)で特定した構造を有するポリカーボネートジオールから得られたポリウレタン主鎖の末端基がOH基である水系ポリウレタン分散体と水系ポリイソシアネート分散体を組み合わせることにより、ソフトで、天然皮革様な手触り感があり、塗膜耐性とのバランスに優れたソフトフィール塗料が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、(b)で特定した構造を有するポリカーボネートジオールは、下記式(1)および(2)の繰り返し単位からなり、(1)と(2)の割合が(1)/(2)=80/20〜20/80(モル比)であり、末端基が水酸基であることを特徴とする脂肪族ポリカーボネートジオールである。
【化3】

【化4】

【0011】
本発明で用いるポリカーボネートジオールは、Schell著、Polymer Review第9巻、第9〜20頁(1964年)に記載された種々の方法により、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから合成される共重合ポリカーボネートジオールである。該ポリカーボネートジオールを構成する上記式(1)と(2)で示される繰り返し単位のの共重合比における(1)の割合が(1)/(2)=80/20(モル比)を超えると、得られる塗膜のソフト感が損なわれるので好ましくない。また、該ポリカーボネートジオールを構成する繰り返し単位の共重合比における(1)の割合が(5)/(6)=20/80(モル比)未満においても得られる塗膜のソフト感が損なわれるばかりでなく、耐油性、耐摩耗性も悪化するので好ましくない。より好ましいポリカーボネートジオールを構成する繰り返し単位である(1)と(2)の割合は(1)/(2)=70/30〜30/70(モル比)、さらに好ましくは(1)/(2)=60/40〜40/60(モル比)の範囲である。
【0012】
本発明に用いるポリカーボネートジオールは、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから合成される共重合ポリカーボネートジオールであるが、その特徴を阻害しない範囲で、その他の低分子量ジオールを共重合成分として含有することができる。具体的に使用できるその他のジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2,3−ブタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられるが、それらのジオールの割合は、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールを含む全モノマージオールに占める割合として、40重量%未満、好ましくは20重量%未満、さらに好ましくは10重量%未満である。
【0013】
本発明における、ポリカーボネートジオールの数平均分子量は500〜10000、好ましくは1000〜5000、さらに好ましくは1500〜3000の範囲である。数平均分子量が500未満になると、塗膜の柔軟性が低下し、ソフト感が著しく損なわれる可能性がある。また、数平均分子量が10000を超えると、高分子主鎖の末端基がOH基であるポリウレタンの製造時のイソシアネートとの反応が遅くなり、製造に長時間を要するばかりではなく、得られる該ポリウレタンの粘度が高くなり、水への分散が難しくなるので好ましくない。
本発明に用いられるポリカーボネートジオールのポリマー末端は、実質的にすべてヒドロキシル基であることが望ましい。
【0014】
本発明においては、1,5−ペンタンジオールと、1,6−ヘキサンジオールの他に、1分子に3個以上のヒドロキシル基を有する化合物、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、グリセリン等を少量用いることにより、一分子中の平均水酸基数が2以上に多官能化されたポリカーボネートポリオール及び高分子主鎖の末端基がOH基であるポリウレタンの製造時に、2官能ポリカーボネートジオールに加えてトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、グリセリン等の3官能ポリオールモノマーを共重合して得られる1分子中の平均OH基数が2以上である高分子主鎖の末端基がOH基であるポリウレタンも含まれる。
【0015】
さらに、本発明に用いる(c)カルボキシル基及び/又はスルホン基含有ポリオールもしくはその塩は、高分子主鎖の末端基がOH基である水系ポリウレタンを水中に自己乳化させること、及び水系ポリウレタン分散体の分散安定性を付与することを目的として、カルボキシレート基またはスルホネート基導入のために使用される成分である。カルボキシル基含有ポリオールとしては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸などが挙げられる。また、スルホン基含有ポリオールとしては、例えば、スルホン酸ジオール{3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸}およびスルファミン酸ジオール{N,N−ビス(2−ヒドロキシルキル)スルファミン酸}およびそのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらのカルボキシル基及び/又はスルホン基含有ポリオールの塩としては、例えば、アンモニウム塩、アミン塩[炭素数1〜12の1級アミン(1級モノアミン、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンおよびオクチルアミン)塩、2級モノアミン(ジメチルアミン、ジエチルアミンおよびジブチルアミン)塩、3級モノアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミントリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンおよびN,N−ジメチルエタノールアミン等の脂肪族3級モノアミン;N−メチルピペリジンおよびN−メチルモルホリン等の複素環式3級モノアミン;ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン;およびN−ジメチルアニリン等の芳香環含有3級モノアミン)塩]、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムおよびリチウムカチオン)塩、ならびにこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0016】
塩のうち好ましいものは、アミン塩、さらに好ましいものは脂肪族3級モノアミン塩であり、特に好ましいものはトリエチルアミン塩である。
該ポリオールが塩ではなく、カルボキシル基及び/又はスルホン基含有ポリオールの場合は、中和剤を使用してカルボキシル基及び/又はスルホン基を中和してカルボキシレート基及び/又はスルホネート基とすることができる。
中和剤としては、前記の対イオンとして挙げたカチオンを形成するアルカリ性化合物が挙げられる。例えば、アンモニア、アミン[炭素数1〜12の1級アミン(1級モノアミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンおよびオクチルアミン)、2級モノアミン(ジメチルアミン、ジエチルアミンおよびジブチルアミン)、3級モノアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミントリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンおよびN,N−ジメチルエタノールアミン等の脂肪族3級モノアミン;N−メチルピペリジンおよびN−メチルモルホリン等の複素環式3級モノアミン;ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン;およびN−ジメチルアニリン等の芳香環含有3級モノアミン)]、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムおよびリチウムカチオン)、アルカリ金属水酸化物、ならびにこれらの2種以上の併用が挙げられる。
これらのうち好ましいものはアミンであり、さらに好ましいものは脂肪族3級モノアミンであり、特に好ましいものはトリエチルアミンである。
【0017】
当然のことながら、適当な界面活性剤、例えば、高級脂肪酸、樹脂酸、酸性脂肪アルコール、硫酸エステル、スルフォン酸高級アルキル、スルフォン酸アルキルアリール、スルフォン化ひまし油、スルフォコハク酸エステル等に代表されるアニオン性界面活性剤、あるいはエチレンオキサイドと長鎖脂肪アルコールまたはフェノール類との公知の反応生成物に代表されるノニオン性界面活性剤等を併用して乳化安定性を保持してもよい。これらのうち好ましい界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤である。
また、ウレタン化反応においては反応を促進させるため、必要に応じて、通常のウレタン反応に使用される触媒を使用してもよい。触媒には、アミン触媒、例えば、トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミンなど;錫系触媒、例えば、ジブチル錫ジラウリレート、ジオクチル錫ジラウリレートおよびオクチル酸錫;チタン系触媒、例えばテトラブチルチタネート等が挙げられる。
【0018】
本発明による高分子主鎖の末端基がOH基である水系ポリウレタン分散体の製造方法は、例えば、以下のような方法により得られる。
分子内に活性水素含有基を含まない有機溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等)の存在下または非存在下で、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を含有する有機ポリイソシアネート(a)と特定構造を有するポリカーボネートジオール(b)並びにカルボキシル基及び/又はスルホン基含有ポリオールもしくはその塩(c)とを、(NCO基/OH基)当量比が、0.5〜0.99の範囲でワンショット法または多段法により、ウレタン化反応させて、高分子主鎖の末端基がOH基であるポリウレタンを合成し、必要に応じて、該ポリウレタンを中和剤で中和した後、得られた該反応液を強攪拌しているところに水を滴下する、滴下終了後引き続いて溶媒を除去することによりOH基末端水性ポリウレタン分散体が得られる。また、得られた該反応液を水中に攪拌しながら添加し溶媒を除去してOH基末端水系ポリウレタン分散体を得ることも可能である。高分子主査の末端基がOH基であるポリウレタンの水への分散方法は、最終的に得られる水系ポリウレタン分散体の粒径と粒径分布を制御しやすいように、適宜選択すればよい。
【0019】
(NCO基/OH基)当量比が0.5を下回ると得られる高分子主鎖の末端基がOH基であるポリウレタンの分子量が小さすぎて、安定な水分散体が得られない場合があり、得られたとしても、該OH基末端水系ポリウレタン分散体と水系ポリイソシアネート分散体を構成成分とするソフトフィール塗料組成物が形成する皮膜の柔軟性が不足しソフトな手触りが得られない。また、(NCO基/OH基)当量比が0.99を上回ると得られる高分子主鎖の末端基がOH基であるポリウレタンの分子量が大きくなりすぎて、系の粘度が上昇し、取り扱いが困難となり、好ましくない。そういった観点から、本発明の高分子主鎖の末端基がOH基であるポリウレタンの数平均分子量は800〜50000の範囲が好ましい。カルボキシル基及び/又はスルホン基含有ポリオールの使用量は、ポリウレタン樹脂の重量に対してカルボキシル基及び/又はスルホン基が0.01〜10重量%含有するのが好ましい。さらに好ましくは0.1〜7重量%であり、特に好ましくは0.5〜5重量%の範囲である。カルボキシル基及び/又はスルホン基が0.01重量%を下回ると、十分なエマルジョン安定性が得られず、好ましくない。また、10重量%を越えると、得られる皮膜の耐水性が不十分になる。
また、カルボキシル基及び/又はスルホン基含有ポリオール(c)を含まずに、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を含有する有機ポリイソシアネート(a)と特定構造を有するポリカーボネートジオール(b)だけを用いて、前記方法と同様にしてNCO末端プレポリマーとし、これにカルボキシル基及び/又はスルホン基含有ポリオール(c)を最終的な(NCO基/OH基)当量比が0.5〜0.99の範囲となるように用いて反応させる方法もある。
【0020】
さらに、本発明で使用する水系ポリイソシアネート分散体(B)は1分子中に2つ以上のイソシアネート基を含有する有機ポリイソシアネートから得られる疎水性ポリイソシアネートにノニオン性親水基含有化合物を導入した親水性ポリイソシアネートに対して、イオン性界面活性剤を混合させることにより得られる水分散安定性に優れた自己乳化性ポリイソシアネートや、疎水性ポリイソシアネート、オキシエチレン基を有する親水性ポリイソシアネート及びイソシアネート基に対して不活性な溶剤からなる水分散性ポリイソシアネート組成物、あるいは有機ジイソシアネートから得られる疎水性ポリイソシアネートにオキシム系、活性メチレン系、フェノール系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、アミン系、イミン系、重亜硫酸塩系、ピラゾール系、トリアゾール系等のブロック剤と水分散性を付与するに必要なノニオン性親水基を有する化合物、例えば片末端に活性水素を有し、かつ、ポリエチレンオキサイド鎖を有する化合物またはイオン性親水基を有する化合物、例えばヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシスルホン酸等を反応させることにより得られるブロックド水系ポリイソシアネート分散体が挙げられる。
【0021】
該水系ポリイソシアネート分散体(B)の構成成分である、前述した如きの有機ジイソシアネートを1種類あるいは2種類以上を用いて得られる疎水性ポリイソシアネートとしては、分子内にビュウレット、イソシアヌレート、ウレタン、ウレトジオン、アロファネート等の構造を有するものが挙げられる。ビュウレット構造を有するものは接着性に優れており、イソシアヌレート構造を有するものは耐候性に優れており、長い側鎖を有するアルコール化合物を用いたウレタン構造を有するものは弾性及び伸展性に優れており、ウレトジオン構造あるいはアロファネート構造を有するものは低粘度であるという特徴を有している。
疎水性ポリイソシアネートを親水化するのに用いる化合物としては、活性水素含有基を有するポリオキシエチレン化合物が挙げられる。水分散安定性を考慮した場合、特に好ましいのはポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。
【0022】
さらに、水分散安定性を向上させるのに用いるイオン性界面活性剤のうち、アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム、アルキルジサルフェートナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォネートナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、アルキルピリジニウムブロマイド、イミダゾリニウムラウレート等が挙げられる。
片末端に活性水素を有しイオン性親水基を有する化合物としては、前述した如きのカルボキシル基及び/又はスルホン基含有ポリオールもしくはその塩(c)が挙げられる。
【0023】
ブロック化剤としては、以下の系の化合物が挙げられる。
オキシム系; ホルムアルデヒドオキシム、アセトアルデヒドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等。
活性メチレン系; マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジ2−エチルヘキシル、マロン酸メチルn−ブチル、マロン酸エチルn−ブチル、マロン酸メチルsec−ブチル、マロン酸エチルsec−ブチル、マロン酸メチルt−ブチル、マロン酸エチルt−ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルエチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t−ブチルフェニル、イソプロピリデンマロネート等)、アセト酢酸エステル(アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニル等)。
【0024】
フェノール系;フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール等。
メルカプタン系;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等。
酸アミド系;アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等。
酸イミド系;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等。
イミダゾール系;イミダゾール、2−メチルイミダゾール等。
尿素系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素等。
アミン系;ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール等。
イミン系;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等。
重亜硫酸塩系;重亜硫酸ソーダ等。
ピラゾール系;ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等。
トリアゾール系;1,2,4−トリアゾール等。
上記のうち、オキシム系、活性メチレン系、ピラゾール系が好ましく、具体的な好ましい例としては、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、マロン酸ジエステル、アセト酢酸エステル、ピラゾール等が挙げられる。特に、低温硬化性の点からは、マロン酸ジエステル、アセト酢酸エステル、ピラゾール混合系が好ましく、より好ましくはマロン酸ジエステル、アセト酢酸混合系、更に好ましくはマロン酸ジエステルが好ましい。マロン酸ジエステルの中では、工業的入手の容易さ等からマロン酸ジエチルが好ましい。
【0025】
本発明で用いる水系ポリイソシアネート分散体(B)としては、旭化成ケミカルズ社製のデュラネートWB40−100、デュラネートWB40−80D、大日本インキ化学社製のバーノックDNW−5000、バーノックDNW−5010、バーノックDNW−5100、バーノックDNW−5200、バーノックDNW−6000、バイエル社製のBayhydur−VP LS2032、Bayhydur−VP2050、ローディア社製のRhodocoatWT2102等が挙げられる。
水系ポリウレタン分散体(A)と水系ポリイソシアナート分散体(B)との配合比は、塗膜性能の点からOH/NCO=2/1〜1/3(当量比)、より好ましくはOH/NCO=1/0.8〜1/2(当量比)である。OH基1当量に対してNCO基が0.5当量未満では十分な耐性を有する塗膜物性が得られず、3当量を超えると塗膜の耐熱性等に問題が出る可能性があり好ましくない。
【0026】
本発明のソフトフィール塗料組成物には、各種用途に応じて、硬化促進剤(触媒)、充填剤、難燃剤、染料、有機または無機顔料、離型剤、流動性調整剤、可塑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤、溶剤等を添加することができる。
硬化促進剤としては、例えば、モノアミンであるトリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアミンであるテトラメチルエチレンジアミン、その他トリアミン、環状アミン、ジメチルエタノールアミンのようなアルコールアミン、エーテルアミン等が挙げられる。金属触媒としては、例えば、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、酢酸カルシウム、オクチル酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、ビスマスネオデカノエート、ビスマスオキシカーボネート、ビスマス2−エチルヘキサノエート、オクチル酸亜鉛、亜鉛ネオデカノエート、ホスフィン、ホスホリン等、一般的に用いられるものが使用できる。
【0027】
充填剤や顔料としては、織布、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアミド繊維、雲母、カオリン、ベントナイト、金属粉、アゾ顔料、カーボンブラック、クレー、シリカ、タルク、石膏、アルミナ白、炭酸バリウム、樹脂微粒子等の一般的に用いられているものが使用できる。中でも当該目的とするソフトな感触を得るためには樹脂微粒子がより好ましい。
光沢調整のために、シリカ等の艶消し剤を併用してもよい。艶消し剤の具体例としては、AcemattHKシリーズ、AcemattOKシリーズ、AcemattTSシリーズ(いずれもDegussa社製)等が挙げられる。
離型剤や流動性調整剤、レベリング剤としては、シリコーン、エアロジル、ワックス、ステアリン酸塩、BYK−331(BYKケミカル社製)のようなポリシロキサン等が用いられる。
【0028】
本発明に用いられる添加剤としては、少なくとも酸化防止剤、光安定剤及び熱安定剤が用いられることが望ましい。これらの酸化防止剤としては、燐酸、亜燐酸の脂肪族、芳香族またはアルキル其置換芳香族エステルや次亜燐酸誘導体、フェニルスルフォン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;フェノール系誘導体、特にヒンダードフェノール化合物、チョエーテル系、ジチオ酸塩系;メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオン酸エステル等のイオウを含む化合物;スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物を用いることができる。
これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のソフトフィール塗料用水系分散体組成物の塗装方法としては、(A)及び(B)各々の成分を塗装直前に混合した後、スプレー、ロール、はけ等で基材に塗布する方法が用いられる。(A)及び(B)各々の成分を予め混合しておき、塗布する方法も可能である。後者においては、硬化剤を用いる場合は、硬化剤を使用直前に添加する方法が好ましい。
本発明のソフトフィール塗料用水系分散体組成物は、家電製品、OA製品、自動車内装部品、皮革の表面処理等に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0029】
以下実施例などを用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例などによって何ら限定されるものではない。以下の実施例および比較例における、塗膜物性の評価は、以下の試験方法に従って実施した。
<試験方法>
1.塗膜硬度
Double-Pendulum Damping試験法を用いた。ガラス板(標準板)で、振り子の振れ角度が5°から2°に減衰するまでの時間を440±6秒(t0)に設定した。また、ガラス板上に塗膜を作製し、塗膜上での振り子の振れ角度が5°から2°に減衰するまでの時間(t1)を測定した。塗膜硬度評価結果は、塗膜硬度(X)=(t1)/(t0)で表した。数値は大きいほど塗膜表面が硬い。
2.耐磨耗性
JIS−K−5600−5−8の方法に準じ、テーバー型磨耗試験機を用い測定した。磨耗試験前の重量と磨耗試験(500回転)後の塗膜板の重量変化を測定し表記した。
【0030】
3.ソフト感
塗膜板表面を手で触った時の感触により、ソフト感を評価した。判定結果は以下の表記で表した。
○ : 良好なソフト感
△ : 比較的良好なソフト感
× : ソフトとは感じられない
4.耐酸性
温度20℃条件下で、0.1Nの硫酸水溶液に、塗布板を24時間浸漬後、膜の表面状態を目視判定し、下記の基準で評価した。
◎ : 変化なし
○ : ほとんど変化なし
△ : 一部劣化あり
× : 著しい劣化あり
【0031】
5.耐アルコール性
温度20℃の条件下で、50%のエタノール水溶液に、塗布板を4時間浸漬後、膜の表面状態を目視判定し、前項4.の基準で評価した。
6.耐アルカリ性
温度55℃の条件下で、0.1NのNaOH水溶液に、塗布板を2時間浸漬後、膜の表面状態を目視判定し、前項4.の基準で評価した。
7.耐油性
温度20℃の条件下で、オレイン酸を塗布板上に0.1g付着させ、4時間後、膜の表面状態を目視判定し、前項4.の基準で評価した。
【0032】
〔合成例1〕
メチルエチルケトン(MEK)75gにポリカーボネートジオール1(C5,6−PCDL−1:1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールを50/50のモル比で共重合して得られたポリカーボネートジオールで、数平均分子量1958)100g、30gのMEKに溶解したジメチロールプロパン(DMPA)3.43gを2.59gのトリエチルアミン(TEA)で中和した溶液、イソホロンジイソシアネート(IPDI)11.37gを、N2ガスでシールした還流冷却器、温度計および攪拌装置を有する反応器にいれ、80℃にて8時間かけて、未反応のNCO基がなくなるまでウレタン化反応を行い、OH基末端のポリウレタン溶液を得た。該OH基末端のポリウレタン溶液を40℃に設定し、250rpmで攪拌しておき、そこに280gの蒸留水を20分で滴下してOH基末端のポリウレタン分散液を得た。さらに該分散液を80℃に昇温して、3時間かけてMEKを除去し、OH基末端のポリウレタンエマルジョン−1(PUD−1)を作製した。得られたポリウレタンの数平均分子量は7800であった。
該合成例における各原料のモル比は、下記の如くである。
IPDI/PCDL/DMPA/TEA=2/2/1/1(モル比)
【0033】
〔合成例2〕
ポリカーボネートジオール−1に変えて、ポリカーボネートジオール−2(C5,6−PCDL−2:1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールを50/50のモル比で共重合して得られたポリカーボネートジオールで、数平均分子量1000)を用いた以外は、合成例1と同様にして、OH基末端のポリウレタンエマルジョン−2(PUD−2)を得た。
該合成例における各原料のモル比は、下記の如くである。得られたポリウレタンの数平均分子量は4700であった。
IPDI/PCDL/DMPA/TEA=2/2/1/1(モル比)
【0034】
〔合成例3〕
ポリカーボネートジオール−1に変えて、ポリカーボネートジオール−3(C5,6−PCDL−3:1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールを50/50のモル比で共重合して得られたポリカーボネートジオールで、数平均分子量800)を用いた以外は、合成例1と同様にして、OH基末端のポリウレタンエマルジョン−3(PUD−3)を得た。得られたポリウレタンの数平均分子量は4100であった。
該合成例における各原料のモル比は、下記の如くである。
IPDI/PCDL/DMPA/TEA=2/2/1/1(モル比)
〔合成例4〕
IPDI/PCDL/DMPA/TEA=8/7/2/2(モル比)に変えた以外は、合成例1と同様にして、OH基末端のポリウレタンエマルジョン−4(PUD−4)を得た。得られたポリウレタンの数平均分子量は25000であった。
【0035】
〔合成例5〕
メチルエチルケトン(MEK)75gにポリカーボネートジオール1(C5,6−PCDL−1:1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールを50/50のモル比で共重合して得られたポリカーボネートジオールで、数平均分子量1958)100g、30gのMEKに溶解したジメチロールプロパン(DMPA)3.43gを2.59gのトリエチルアミン(TEA)で中和した溶液、イソホロンジイソシアネート(IPDI)11.37gを、N2ガスでシールした還流冷却器、温度計および攪拌装置を有する反応器にいれ、80℃にて8時間かけて、未反応のNCO基がなくなるまでウレタン化反応を行い、OH基末端を有するポリウレタン溶液を得た。該OH基末端を有するポリウレタン溶液を40℃に設定した560gの蒸留水に、攪拌しながら徐々に20分かけて滴下し、OH基末端を有するポリウレタン分散液を得た。さらに該分散液を80℃に昇温して、3時間かけてMEKを除去し、OH基末端のポリウレタンエマルジョン−5(PUD−5)を作製した。得られたポリウレタンの数平均分子量は7800であった。
該合成例における各原料のモル比は、下記の如くである。
IPDI/PCDL/DMPA/TEA=2/2/1/1(モル比)
【0036】
[実施例1]
合成例1で得られたPUD−1に水系ポリイソシアネート分散体として、旭化成ケミカルズ社製のデュラネートWB40−100を用いて、NCO/OH=1.50(モル比)の割合で混合し、ソフトフィール塗料用組成物を作製した。
該塗料用組成物をガラス板に塗布し、80℃で30分乾燥した後、120℃で90分キュアリングして、厚さ25mμの膜を得た。
得られた被膜を用いて各物性を測定した。その結果を表1に示す。
[実施例2]
合成例2で得られたPUD−2に水系ポリイソシアネート分散体として、旭化成ケミカルズ社製のデュラネートWB40−100を用いて、NCO/OH=1.50(モル比)の割合で混合し、ソフトフィール塗料用組成物を作製した。
該塗料用組成物をガラス板に塗布し、80℃で30分乾燥した後、120℃で90分キュアリングして、厚さ25mμの膜を得た。
得られた被膜を用いて各物性を測定した。その結果を表1に示す。
【0037】
[実施例3]
合成例3で得られたPUD−3に水系ポリイソシアネート分散体として、旭化成ケミカルズ社製のデュラネートWB40−100を用いて、NCO/OH=1.50(モル比)の割合で混合し、ソフトフィール塗料用組成物を作製した。
該塗料用組成物をガラス板に塗布し、80℃で30分乾燥した後、120℃で90分キュアリングして、厚さ25mμの膜を得た。
得られた被膜を用いて各物性を測定した。その結果を表1に示す。
[実施例4]
合成例4で得られたPUD−4に水系ポリイソシアネート分散体として、旭化成ケミカルズ社製のデュラネートWB40−100を用いて、NCO/OH=1.50(モル比)の割合で混合し、ソフトフィール塗料用組成物を作製した。
該塗料用組成物をガラス板に塗布し、80℃で30分乾燥した後、120℃で90分キュアリングして、厚さ25mμの膜を得た。
得られた被膜を用いて各物性を測定した。その結果を表1に示す。
【0038】
[実施例5]
合成例1で得られたPUD−1に水系ポリイソシアネート分散体として、旭化成ケミカルズ社製のデュラネートWT20−100を用いて、NCO/OH=1.50(モル比)の割合で混合し、ソフトフィール塗料用組成物を作製した。
該塗料用組成物をガラス板に塗布し、80℃で30分乾燥した後、120℃で90分キュアリングして、厚さ25mμの膜を得た。
得られた被膜を用いて各物性を測定した。その結果を表1に示す。
[実施例6]
合成例5で得られたPUD−5に水系ポリイソシアネート分散体として、旭化成ケミカルズ社製のデュラネートWB40−100を用いて、NCO/OH=1.50(モル比)の割合で混合し、ソフトフィール塗料用組成物を作製した。
該塗料用組成物をガラス板に塗布し、80℃で30分乾燥した後、120℃で90分キュアリングして、厚さ25mμの膜を得た。
得られた被膜を用いて各物性を測定した。その結果を表1に示す。
【0039】
[比較例1]
PUD−1に変えて、ポリカーボネートジオールとして、1,6−ヘキサンジオールのホモポリマー(C6−PCDL)である東亜合成社製カルボジオールD−2000を用いた以外は、合成例1と同様にして得られた、OH基末端のポリウレタンエマルジョン(PUD−6)に水系ポリイソシアネート分散体として、旭化成ケミカルズ社製のデュラネートWB40−100を用いて、NCO/OH=1.50(モル比)の割合で混合し、塗料用組成物を作製した。
該塗料用組成物をガラス板に塗布し、80℃で30分乾燥した後、120℃で90分キュアリングして、厚さ25mμの膜を得た。
得られた被膜を用いて各物性を測定した。その結果を表1に示す。
【0040】
[比較例1]
PUD−2に変えて、ポリカーボネートジオールとして、C6−PCDLである東亜合成社製カルボジオールD−1000を用いた以外は、合成例1と同様にして得られた、OH基末端のポリウレタンエマルジョン(PUD−7)に水系ポリイソシアネート分散体として、旭化成ケミカルズ社製のデュラネートWB40−100を用いて、NCO/OH=1.50(モル比)の割合で混合し、塗料用組成物を作製した。
該塗料用組成物をガラス板に塗布し、80℃で30分乾燥した後、120℃で90分キュアリングして、厚さ25mμの膜を得た。
得られた被膜を用いて各物性を測定した。その結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のソフトフィール塗料用水系分散体組成物は、家電製品、OA製品、自動車内装部品、皮革の表面処理等に好ましく用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水系ポリウレタン分散体が、下記(a)、(b)並びに(c)の成分を反応させて得られたポリウレタンを含有し、かつ該ポリウレタン主鎖の末端基がOH基であることを特徴とする水系ポリウレタン分散体。
(a)1分子中に2つ以上のイソシアネート基を含有する有機ポリイソシアネート化合物。
(b)下記式(1)及び(2)の繰り返し単位からなり、(1)と(2)の割合が(1)/(2)=80/20〜20/80(モル比)であり、末端基が水酸基である脂肪族ポリカーボネートジオール。
【化1】

【化2】

(c)カルボキシル基及び/又はスルホン基含有ポリオールもしくはその塩。
【請求項2】
(A)請求項1記載の水系ポリウレタン分散体、及び(B)水系ポリイソシアネート分散体を必須成分として含有することを特徴とするソフトフィール塗料用水系分散体組成物。
【請求項3】
請求項1記載の(a)有機ポリイソシアネート化合物が、脂肪族及び/又は脂環族有機ジイソシアネート化合物であることを特徴とする請求項2に記載のソフトフィール塗料用水系分散体組成物。
【請求項4】
請求項1記載の水系ポリウレタン分散体に含有されるOH末端基を有するポリウレタン主鎖の数平均分子量が800〜50000の範囲にあることを特徴とする請求項2又は3に記載のソフトフィール塗料用水系分散体組成物。
【請求項5】
水系ポリイソシアネート分散体が、自己乳化性水系ポリイソシアネート分散体であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のソフトフィール塗料用水系分散体組成物。

【公開番号】特開2008−303284(P2008−303284A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151160(P2007−151160)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】