説明

水系表面処理組成物

【課題】アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又はそれらのめっき体の防錆用水系表面処理組成物を提供すること。
【解決手段】チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するチタン複合組成物に、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)を反応及び/又は混合させてなる防錆用水系表面処理組成物、並びに、上記水系表面処理組成物を使用して防錆されていることを特徴とする、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又はそれらのめっき体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又はそれらのめっき体の表面に対して用いる水系表面処理組成物に関し、更に詳細には、チタン化合物オリゴマーを原料とする水系の表面処理組成物であって、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又はそれらのめっき体に対して、防錆性能等を向上させる表面処理組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防錆の分野において、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又はそれらのめっき体等に対する防錆性能の付与に関しては、様々な分野で検討がされており、高い防錆性能を有するものが求められている。特に、アルミニウムに関しては、アルミサッシ等の建築材料や、冷房機器中のアルミフィン等に使用されており、水の付着等によって生ずる錆の発生を抑制するために、高い防錆性能を有する鋼板が求められている。
【0003】
アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又はそれらのめっき体の防錆性能を向上するために、クロム酸、重クロム酸又はその塩類を成分とした6価クロムを含有する処理液を使用するクロメート処理が施すことが一般的に用いられている。このクロメート処理は、耐食性に優れており、かつ比較的簡単に処理できることから経済的な処理方法である。
【0004】
しかし、クロメート処理は、公害規制物質である6価クロムを使用するものであり、近年の地球規模の環境保護意識の高まりに伴って、リサイクル社会の構築や廃棄物処理の問題の解決が必要であるといった社会的背景より、6価クロムの利用、排出の削減に取り組む動きが活発化している。また、近年の環境汚染の防止を目的として、有機溶剤を極力減じた無溶剤型や水系の塗料や表面処理組成物の開発が広く求められている。
【0005】
従来のアルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又はそれらのめっき体等の防錆性を高めるためには、やはり6価クロム系の防錆顔料を使用する方法があるが、先に述べたように、6価クロムは環境面で問題がある。また、その他の方法としては、有機樹脂とシランカップリング剤、又は、コロイダルシリカとリチウムシリケートを配合した処理液に浸漬し、処理液を塗布することにより被膜を形成する方法や有機樹脂にタンニン酸等の多価フェノールカルボン酸とシランカップリング剤を形成する方法、有機樹脂とシランカップリング剤を配合した処理液により被膜を形成する方法等がある。
【0006】
しかしながら、これらの方法、すなわちウレタン系やアクリル系等の有機樹脂を使用した場合、防錆性が十分でなかったり、タンニン酸を用いた場合では、タンニン酸に由来する着色を生じたりするといった問題点があった。
【0007】
【特許文献1】特開2000−045078号公報
【特許文献2】特開平10−209971号公報
【特許文献3】特開平8−325760号公報
【特許文献4】特開平10−209972号公報
【特許文献5】特開平11−106945号公報
【特許文献6】特開2000−319787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又はそれらのめっき体の表面に対して、塗布、焼成等することによって、著しく防錆性能等を高めることのできる水系表面処理組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、チタン化合物オリゴマーとアミン化合物とグリコール化合物とを反応させた化学構造又はそれらを混合させた組成を有するチタン複合組成物に、特定のシリコン化合物を反応又は混合させてなる化学構造や組成を有するものが、水系化合物として存在し、すなわち水溶性であり、水に溶解又は分散されたかかる表面処理組成物を、塗布、焼成等することにより、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20質量%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又はそれらのめっき体の表面に対する防錆性能等が著しく向上することを見出して本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するチタン複合組成物に、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するものであり、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20質量%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又は、それらのめっき体の表面に対して用いるものであることを特徴とする水系表面処理組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、アルミニウム、「亜鉛を含まないか20質量%未満含有する、アルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又は、それらのめっき体の表面に対して、上記の水系表面処理組成物を使用して製膜してなることを特徴とする防錆被膜を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記の水系表面処理組成物を使用して防錆されていることを特徴とする、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又は、それらのめっき体を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水系表面処理組成物によれば、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又は、それらのめっき体に対して、緻密性の高い、チタン化合物とケイ素化合物の膜を形成することができ、そのため、外気からの水蒸気等の進入を防ぎ、防錆性能を高めることができる。また、本発明の水系表面処理組成物は、濡れ性、製膜性、密着性、表面改質性等に優れるため、より具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金又はマグネシウム合金といった濡れにくい被着体に対して、良好な濡れ性を発揮し、密着性が良い被膜を簡単に製膜できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0015】
[チタン複合組成物]
本発明の水系表面処理組成物は、少なくとも、「チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)」を、反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するチタン複合組成物に、「分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)」を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するものである。
【0016】
[[チタン化合物オリゴマー(a)]]
チタン化合物オリゴマー(a)は特に限定はないが、「下記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、下記式(1)で表されるチタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物」が縮合した構造を有するものが好ましい。
【0017】
【化1】

[式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示す。]
【0018】
縮合前の出発物質である「式(1)で表されるチタンアルコキシド」は、上記式(1)中のR〜Rが、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基であるものであるが、それぞれ独立に炭素数1〜8個のアルキル基であるものが好ましく、それぞれ独立に炭素数1〜5個のアルキル基であるものが特に好ましい。
【0019】
「式(1)で表されるチタンアルコキシド」としては、具体的には例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、ジイソプロポキシジn−ブトキシチタン、ジtert−ブトキシジイソプロポキシチタン、テトラtert−ブトキシチタン、テトライソオクトキシチタン、テトラステアロキシチタン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0020】
縮合前の出発物質としては、上記した「式(1)で表されるチタンアルコキシド」の他に、「式(1)で表されるチタンアルコキシド」にキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物も好ましいものとして挙げられる。かかるキレート化剤としては特に限定はないが、β−ジケトン、β−ケトエステル、多価アルコール、アルカノールアミン及びオキシカルボン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが、チタン化合物の加水分解等に対する安定性を向上する点で好ましい。
【0021】
β−ジケトン化合物としては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、例えば具体的には、2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、ジベンゾイルメタン、テノイルトリフルオロアセトン、1,3−シクロヘキサンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0022】
β−ケトエステルとしては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、例えば具体的には、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、メチルピバロイルアセテート、メチルイソブチロイルアセテート、カプロイル酢酸メチル、ラウロイル酢酸メチル等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0023】
多価アルコールとしては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ペンタンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0024】
アルカノールアミンとしては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−tert−ブチルエタノールアミン、N−tert−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0025】
オキシカルボン酸としては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0026】
上記「式(1)で表されるチタンアルコキシド」、又は「該チタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物」が縮合することによってチタン化合物オリゴマー(a)が得られる。ここで縮合させる方法としては特に限定はないが、該チタンアルコキシド又は該チタンキレート化合物を、アルコール溶液中で水を反応させることにより行う方法、又は、アルコール溶液中で後述のアミン化合物(b)と水が共存している状態で反応させる方法が好ましい。
【0027】
縮合させてオリゴマー化するために用いる水の量については、チタンアルコキシド及び/又はチタンキレート化合物の合計量1モルに対し、すなわちチタン原子1モルに対して、水のモル数が0.2〜2モルであることが、水に対する安定性、製膜性、塗布性等の点で好ましく、0.3〜1.7モルであることがより好ましく、0.5〜1.6モルであることが特に好ましく、1.0〜1.5モルであることが更に好ましい。
【0028】
なお、上記は、本発明におけるチタン化合物オリゴマー(a)の製造方法を限定しているものではなく、該チタン化合物オリゴマー(a)の縮合度等の化学構造を、縮合方法等の製造方法によって特定しているものである。該チタン化合物オリゴマー(a)は、2次元的又は3次元的な化学構造を有する場合があるため、その化学構造は製造方法によってしか特定できないためであり、従って、異なる製造方法で製造された同様の化学構造を有するチタン化合物オリゴマー(a)も本発明においては用いられる。
【0029】
該チタン化合物オリゴマー(a)を組成式で表わすと、チタン原子2モルに対して、反応する水のモル数がxモルのとき、下記式(2)で表わされるチタン化合物オリゴマー(a)が、通常、縮合によって得られる。
TiOx/2(OR)4−x (2)
[式(2)中、Rは、式(1)におけるR〜Rの何れかを表す。]
【0030】
チタン原子1モルに対して、水1モルを反応させた場合、すなわち、チタン原子2モルに対して水2モルを反応させた場合、x=2であるので、式(2)は、
TiO(OR) (3)となり、
チタン原子1モルに対して、水1.5モルを反応させた場合、すなわち、チタン原子2モルに対して水3モルを反応させた場合、x=3であるので、式(2)は、
TiO3/2(OR) (4)となる。
【0031】
前記した「縮合させてオリゴマー化するために用いる好ましい水の量」に対応するxの値を式(2)に代入して得られた組成式を有するものが、チタン化合物オリゴマー(a)の縮合度としては好ましい。
【0032】
本発明におけるチタン化合物オリゴマー(a)は、オリゴマーであれば特に限定はないが、平均で、1.1〜20量体が好ましく、2〜15量体がより好ましく、4〜13量体が特に好ましく、5〜12量体が更に好ましい。水に対する安定性、製膜性、塗布性等の点で、縮合度は大きいものの方が好ましい。上記式(3)は、原理的には1次元的に無限の縮合度を有するものを表すが、製造される実際のチタン化合物オリゴマー(a)は有限の縮合度を有する。本発明におけるチタン化合物オリゴマー(a)は、原理的には無限の縮合度を有するような水の量を用いて製造される化学構造を有するものが更に好ましい。
【0033】
縮合時には、アルコール等の溶剤を用い、該チタンアルコキシド又は該チタンキレート化合物をアルコール溶液とし、場合により還流等の熱処理を経由し、チタン化合物オリゴマー(a)を得てもよい。このとき用いられるアルコールとしては特に限定はないが、前記式(1)中のアルキル基R〜Rを有する1価アルコールが、チタン化合物オリゴマー(a)の反応性を変化させない点で好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0034】
かかるアルコールの使用量は特に限定はないが、縮合してオリゴマー化するために用いる水の量を、水と該アルコールの合計量に対して0.5〜20質量%の濃度になるように該アルコールを用いて希釈することが、薬液の白濁や白色沈殿物の発生を抑制する点で好ましく、0.7〜15質量%の濃度になるように希釈することがより好ましく、1.0〜10質量%の濃度になるように希釈することが特に好ましい。
【0035】
上記縮合は、チタンアルコキシド又はチタンキレート化合物を、アミン化合物(b)の存在下で、かつアルコール溶液中で水を反応することにより行われたものも、薬液の白濁や白色沈殿物の発生をより抑制しやすい点で好ましい。この時に使用されるアミン化合物(b)としては、後述の、チタン化合物オリゴマー(a)に反応及び/又は混合させてチタン複合組成物を調製する際に使用されるアミン化合物(b)と同じであっても異なっていてもよい。
【0036】
チタン化合物オリゴマー(a)は、上記したチタン化合物オリゴマーに、更にキレート化剤を配位させてなる構造を有するものであることも好ましい。すなわち、前記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、それにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物が縮合した構造を有するものに、更にキレート化剤を配位させてなる構造を有するものも好ましい。すなわち、縮合前及び/又は縮合後に、キレート化剤を反応させた構造のものは、チタン化合物オリゴマー(a)の加水分解等に対する安定性を高める点で好ましい。
【0037】
縮合後に用いるキレート化剤としては特に限定はないが、前記したキレート化剤が好適に使用できる。特に好ましくは、β−ジケトン、β−ケトエステル又はアルカノールアミンである。
【0038】
[[アミン化合物(b)]]
チタン複合組成物を得るための、上記チタン化合物オリゴマー(a)と反応及び/又は混合させるアミン化合物(b)については特に限定はないが、置換非置換の脂肪族アミン又は第四級アンモニウム水酸化物であることが、チタンオリゴマー化合物(a)の加水分解等に対する安定性を向上させ、水溶化させる点で好ましい。
【0039】
「置換非置換の脂肪族アミン」における置換基としては、アルコール性水酸基が好ましい。置換の脂肪族アミンとしてはアルカノールアミンが特に好ましい。
【0040】
非置換の脂肪族アミンとしては、具体的には例えば、脂肪族アルキルアミンであるメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、アミルアミン、sec−アミルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン;脂肪族環状アミンであるピペリジン、ピロリジン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0041】
アルカノールアミンとしては、具体的には例えば、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−tert−ブチルエタノールアミン、N−tert−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0042】
第四級アンモニウム水酸化物としては、具体的には例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0043】
[[グリコール化合物(c)]]
チタン複合組成物を得るための、上記チタン化合物オリゴマー(a)と反応及び/又は混合させるグリコール化合物(c)としては特に限定はないが、隣り合った炭素原子にそれぞれ水酸基を有するグリコール化合物が好ましく、具体的には例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ペンタンジオール、グリセリン等が挙げられる。中でも、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール又は2,3−ブタンジオールが、チタンオリゴマー化合物の加水分解等に対する安定性の向上、水溶化する点で特に好ましい。
【0044】
グリコール化合物(c)を用いることによって、チタンオリゴマー化合物(a)の加水分解等に対する安定性を向上させ、水溶化させることができる。
【0045】
[[チタン複合組成物における各成分の比率]]
「チタン化合物オリゴマー(a)」と「アミン化合物(b)」と「グリコール化合物(c)」の使用割合は特に限定はないが、(b)と(a)のモル比は、(b)/(a)=0.1/10〜10/0.1が好ましく、(b)/(a)=0.3/10〜10/0.3がより好ましく、0.5/10〜10/0.5が特に好ましい。(a)と(b)の合計量に対して(a)が少なすぎると、架橋性、製膜性、接着性等を低下させる原因となり、一方、(a)が多すぎると、水に対する溶解性や加水分解する等の安定性が不足する場合がある。
【0046】
(c)と(a)のモル比は、(c)/(a)=0.1/10〜10/0.1が好ましく、(c)/(a)=0.5/10〜10/0.5がより好ましく、1/10〜10/1が特に好ましい。(a)と(c)の合計量に対して(a)が少なすぎると、架橋性、製膜性、接着性等を低下させる原因となり、一方、(a)が多すぎると、水に対する溶解性や加水分解する等の安定性が不足する場合がある。
【0047】
チタン複合組成物中の、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)の反応によって得られる構造を有する化合物(以下、「化合物A」と略記する)の化学構造については、前記製造方法で得られる構造を有するものであればよく、特定の製造方法で製造されたものには限定されない。
【0048】
化合物Aの化学構造としては、チタン化合物オリゴマー(a)が、アミン化合物(b)及びグリコール(c)によって反応し、チタン化合物オリゴマーのグリコールキレートや、アミノ基がチタンに配位した構造が好ましい。特に、チタン化合物オリゴマー(a)の末端であるアルコキシル基と、アミン化合物(b)及び/又はグリコール化合物(c)とが反応し、キレート化した構造やアミン化合物に存在するアミノ基やグリコール化合物に存在する水酸基がチタン原子に配位した構造が好ましい。
【0049】
本発明におけるチタン複合組成物は、上記化合物A、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及び/又はグリコール(c)を含有する。チタン複合組成物は、チタン化合物オリゴマー(a)に対し、アミン化合物(b)とグリコール化合物(c)とを室温で混合させた組成を有するものであってもよいし、チタン化合物オリゴマー(a)に対し、アミン化合物(b)とグリコール化合物(c)とを加熱還流させて得られる組成を有するものであってもよい。上記「混合させた組成」には、全量反応が進まず未反応のまま残ったものが混合している場合も、一部のみが反応した場合も含まれる。
【0050】
本発明におけるチタン複合組成物は、上記方法で得られる組成のものであれば特に限定はないが、以下の8形態が好ましい。
(1)化合物A;
(2)化合物A及びチタン化合物オリゴマー(a)の混合物;
(3)化合物A及びアミン化合物(b)の混合物;
(4)化合物A及びグリコール化合物(c)の混合物;
(5)化合物A、チタン化合物オリゴマー(a)及びグリコール化合物(c)の混合物;(6)化合物A、チタン化合物オリゴマー(a)及びアミン化合物(b)の混合物;
(7)化合物A、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)の混合物;
(8)チタン化合物オリゴマー(a)とアミン化合物(b)とグリコール化合物(c)の混合物;
このうち、形態(1)及び形態(8)が、前記した本発明の効果を好適に得られる点で好ましい。
【0051】
[シリコン化合物(d)]
本発明の水系表面処理組成物は、上記チタン複合組成物に、更に「分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)」(以下、「シリコン化合物(d)」と略記する)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するものである。
【0052】
シリコン化合物(d)としては特に限定はないが、シランカップリング剤や、ケイ素原子に4個のアルコキシ基が結合したシリコン化合物等が、製膜性を高める点で好ましい。このうち、アミノ基、メルカプト基又はエポキシ基を含有するものが、更に、製膜性を高める点で好ましい。また、ケイ素原子にアルキル基が直接結合した構造を有するものも製膜性を高める点で好ましい。このときのアルキル基としてはメチル基が好ましい。また、上記化合物の部分加水分解縮合物も好適に使用できる。
【0053】
シリコン化合物(d)としては、具体的には例えば、モノメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラノルマルプロポキシシラン、γ−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシシラン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0054】
前記したチタン複合組成物に、シリコン化合物(d)を併用し、水系チタンオリゴマー組成物を得る場合は、該チタン複合組成物にシリコン化合物(d)を反応及び/又は混合させることによって得られる構造を有するものであることが好ましい。ここで、反応方法は特に限定はないが、チタン複合組成物とシリコン化合物(d)を混合した後、使用した溶剤の沸点にて還流して反応を進行させることが好ましい。なお、配合の順序に規定はない。
【0055】
前記チタン複合組成物と上記シリコン化合物(d)との使用割合は特に限定はないが、チタン複合組成物とシリコン化合物(d)の質量比が、0.1/10〜10/0.1であることが好ましく、0.5/10〜10/0.5であることがより好ましく、1/10〜10/1であることが特に好ましい。チタン複合組成物とシリコン化合物(d)の合計量に対してチタン複合組成物が少なすぎると、製膜性を低下させる原因となり、一方、チタン複合組成物が多すぎると、製膜性を低下させ、加水分解性等の安定性が不足する場合がある。
【0056】
本発明の水系表面処理組成物の製造方法は、上記した製造方法で製造されたものには限定されず、上記した製造方法で製造される化学構造と組成とを有する組成物であれば、製造方法が異なっていても本発明に含まれる。ただ、本発明の水系チタンオリゴマー組成物は、上記した製造方法で製造されたものが好ましい。すなわち、少なくとも、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)を反応及び/又は混合させることが、チタン複合組成物の製造方法、水系チタンオリゴマー組成物の製造方法として好ましい。また、チタン複合組成物に、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)を反応及び/又は混合させることが、水系チタンオリゴマー組成物の製造方法として好ましい。
【0057】
本発明において「水系表面処理組成物」は、少なくとも流通段階では、該表面処理組成物で表面を処理したものの上に、離型剤、シーリング剤、接着剤、コーティング剤等を更に設けることをせず、本発明の表面処理組成物で処理した層が最表面となるように用いられることが好ましい。その場合、本発明の「表面処理組成物」とは、上記のように定義される。具体的には、本発明の水系表面処理組成物は、防錆剤、防汚剤、撥水剤等として金属の最表面に適用されることが好ましい。
【0058】
本発明の水系表面処理組成物中の、成分(a)の含有割合は特に限定はないが、表面処理剤100質量部中に成分(a)が0.1〜50質量部が含有されていることが好ましく、0.5〜40質量部の含有がより好ましく、0.7〜35質量部の含有が特に好ましく、1.0〜30質量部の含有が更に好ましい。
【0059】
本発明の水系表面処理組成物は、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20質量%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又はそれらのめっき体の表面に対して用いられる。アルミニウム単独、又は(アルミニウムを50質量%以上含有する合金、若しくはマグネシウムを50質量%以上含有する合金)であって、かつ亜鉛を含まないか20質量%未満含有する合金、又は、それらのめっき体の表面に対して用いられることが特に好ましい。なお、上記した、「アルミニウム、『亜鉛を含まないか、20%以下含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金』又はそれらのめっき体」の中には、本発明の水系表面処理組成物が適用される表面が自然酸化等により、その金属酸化物で被われているものも含まれる。また、「合金」において、合金を形成するその他の金属については特に限定されない。また、「めっき体」における被めっき体も特に限定されない。
【0060】
本発明の水系表面処理組成物には、更に、水又は有機溶剤が配合されていてもよいアルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又は、めっき体等の被着体に塗布する場合は、必要に応じて、水又は有機溶剤を用いて希釈して塗布を行うことができる。希釈を行う際には、特に限定はないが、各種被着体に対しての濡れ性を考慮して、水単独ではなくアルコールを使用又は併用してもよい。好ましいアルコールとして具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール等が挙げられる。被着材へのぬれ性、塗布液の安定性を考慮して、単独又は2種類以上混合して用いることができる。有機溶剤を使用せず、水で希釈し塗布することが作業環境の点で特に好ましい。
【0061】
本発明の水系表面処理組成物に、必要に応じて防錆効果を高めるために、更に他の防錆剤を併用することができる。具体的には、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノエチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール等のトリアゾール化合物;ピロリン酸、オルトリン酸、フィチン酸、メタリン酸、三リン酸、等のリン酸類、リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム等のリン酸塩類;オルトモリブデン酸塩、パラモリブデン酸塩、メタモリブデン酸塩等のモリブデン化合物類;5価バナジウム化合物、4価バナジウム化合物等のバナジウム化合物;カルボヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物等が挙げられる。これら他の防錆剤を使用する際には、特に限定はしないが、本発明の水系表面処理組成物100質量部中に0.1〜50質量部の範囲で使用することが好ましく、混合又は反応させて用いることができる。
【0062】
本発明の水系表面処理組成物を、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、等の被着体に塗布する場合の塗布量は特に限定はないが、乾燥後の塗布量として0.01〜5g/mが好ましく、0.05〜3g/mがより好ましく、0.1〜2g/mが特に好ましい。
【0063】
塗布した後に、焼成することも、防錆効果を高める点で好ましい。焼成条件は特に限定はないが、焼成温度50℃〜500℃が好ましく、100℃〜400℃が特に好ましく、焼成時間10秒〜2時間が好ましく、30秒〜1時間が特に好ましい。
【0064】
本発明の水系表面処理組成物は、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、等の防錆性能を高めるために、その表面を処理するために用いられることが好ましい。すなわち、これらの表面の防錆用に本発明の水系表面処理組成物を用いることが好ましい。本発明の水系表面処理組成物を使用して製膜してなる防錆被膜は、これらの表面の防錆性能を高めることができる。
【0065】
本発明の水系表面処理組成物は、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又はそれらのめっき体の表面に適用する。対象物はこれらであれば特に制限はなく使用できるが、具体的には例えば、純アルミニウム(JIS A1000系)等のアルミニウム金属;アルミニウム−銅系合金(JIS A2000系)、アルミニウム−マグネシウム−マンガン系合金(JIS A3000系)、アルミニウム−シリカ系合金(JIS A4000系)、アルミニウム−マグネシウム系合金(JIS A5000系)、アルミニウム−マグネシウム−シリカ系合金(JIS A6000系)、アルミニウム−銅−マグネシウム−亜鉛系合金(JIS H7000)、マグネシウム−亜鉛−アルミニウム系合金、マグネシウム−マンガン系合金、マグネシウム−アルミニウム系合金(ATSM 100A系)等の亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金;又はこれらの金属や合金を使用しためっき体、溶融アルミニウムのめっき体(JIS G3314)等のアルミニウム被膜が形成されためっき体等が挙げられる。
【0066】
本発明の水系表面処理組成物を使用して防錆されている、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又はそれらのめっき体は、過酷な条件でも防錆性能を維持できる。
【0067】
本発明の表面処理組成物が、優れた防錆効果を示す作用・原理は明らかではなく、本発明は以下の作用・原理の範囲に限定されるものではないが、以下のことが考えられる。すなわち、チタンオリゴマー化合物を使用することにより、製膜される膜が緻密化されることが考えられ、また、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)を併用することによって、基材である金属板との接着性を高めていると考えられる。これらの事象より、水蒸気等の錆を発生させる原因物質が金属板に直接接触する可能性が低くなり、防錆性能が高まるからと考えられる。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0069】
製造例1
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)を2−プロパノール50.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)と2−プロパノール50.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌して「チタン化合物オリゴマー(a)A」を得た。次に、N,N−ジメチルモノエタノールアミン8.9g(0.10モル)を添加後、1時間攪拌した後、1,2−プロパンジオール30.4g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物A」を得た。
【0070】
製造例2
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)を2−プロパノール50.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)と2−プロパノール50.0gとN−n−ブチルエタノールアミン5.9g(0.05モル)の混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌して「チタン化合物オリゴマー(a)B」を得た。次に、グリセリン36.8g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物B」を得た。
【0071】
製造例3
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)を2−プロパノール50.0gに溶解させた後、水0.9g(0.05モル)と2−プロパノール50.0gとN,N−ジメチルモノエタノールアミン4.5g(0.05モル)の混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌して「チタン化合物オリゴマー(a)C」を得た。次に、1時間攪拌した後、1,2−ブタンジオール36.0g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物C」を得た。
【0072】
製造例4
テトラn−ブトキシチタン34.0g(0.10モル)を1−ブタノール30.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)と1−ブタノール60.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌して「チタン化合物オリゴマー(a)D」を得た。次に、N,N−ジメチルモノエタノールアミン8.9g(0.10モル)を添加後、1時間攪拌した後、2,3−ブタンジオール36.0g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物D」を得た。
【0073】
製造例5
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)に対する水の量を、水2.2g(0.12モル)とした以外は、製造例4と同様の方法で、「チタン化合物オリゴマー(a)E」及び「チタン複合組成物E」を得た。
【0074】
製造例6
ジイソプロポキシビスアセチルアセトナートチタン36.4g(0.1モル)を2−プロパノール50.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)と2−プロパノール100.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌し、更に1時間還流して「チタン化合物オリゴマー(a)F」を得た。次に、トリエチルアミン5.1g(0.05モル)を添加後、1時間攪拌した後、1,2−プロパンジオール30.4g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物F」を得た。
【0075】
製造例7
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)を2−プロパノール50.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)と2−プロパノール50.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌して「チタン化合物オリゴマー(a)G」を得た。次に、N,N−ジメチルモノエタノールアミン8.9g(0.10モル)を添加後、1時間攪拌した後、1,2−プロパンジオール30.4g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流した。その後、更にモノメチルトリメトキシランを13.6g(0.10モル)を添加し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物G」を得た。
【0076】
製造例8
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)に、N,N−ジメチルモノエタノールアミン8.9g(0.10モル)を添加した。添加後、1時間攪拌した。更に、1,2−プロパンジオール30.4g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し「チタン化合物a」を得た。
【0077】
製造例9
テトラn−ブトキシチタン34.0g(0.10モル)に、トリエチルアミン5.1g(0.05モル)を添加後、1時間攪拌した。その後、1,2−プロパンジオール30.4g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し「チタン化合物b」を得た。
【0078】
製造例10
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.1モル)に、トリエチルアミン10.1g(0.1モル)を30分かけて添加した。続いて、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシランを52.9g(0.2モル)を加え、その後、1,2−エタンジオールを49.6g(0.8モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し「チタン化合物c」を得た。
【0079】
実施例1
製造例1で製造したチタン複合組成物Aを49.0質量部(0.03モル)、及びテトラエトキシシラン6質量部(0.03モル)を混合後、水25.0質量部、2−プロパノール20.0質量部を加えて水系表面処理組成物を得た。テトラエトキシシラン6質量部(0.03モル)のうち、一部はチタン複合組成物Aと反応し、一部は未反応で混合されていた。
【0080】
実施例2〜31、比較例1〜12
実施例1において、「チタン複合組成物A」、「分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)」を、表1に記載の種類と量に代え、実施例1において、テトラエトキシシランを混合後に溶剤として加えた「水25.0質量部」及び「2−プロパノール20.0質量部」に代えて、表1に記載のアルコールの種類と量を加えた以外は、実施例1と同様にして、水系表面処理組成物を得た。用いたシリコン化合物(d)の一部はチタン複合組成物Aと反応し、一部は未反応で混合されていた。また、比較例8〜12として、表1に記載の表面処理組成物を用意した。なお、表1の中の数値は質量%を示す。
【0081】
【表1】

【0082】
比較例13
製造例1〜7において、チタン化合物オリゴマー(a)に、アミン化合物(b)のみを反応及び/又は混合させずに、それ以外は製造例1〜7と同様に調製したものは、全て白色のスラリー状態になってしまった。従って、水系のチタン複合組成物として得られなかったため、以下の評価は行わなかった。
【0083】
比較例14
製造例1〜7において、チタン化合物オリゴマー(a)にグリコール化合物(c)のみを反応及び/又は混合させずに、それ以外は製造例1〜7と同様に調製したものは、全て不安定で水系化ができなかった。従って、水系のチタン複合組成物として得られなかったため、以下の評価は行わなかった。
【0084】
評価例1
[防錆性能評価]
実施例1〜31、比較例1〜12の表面処理組成物を、表2記載の溶剤でそれぞれ5倍に希釈した後、厚さ0.6mmのアルミニウム板(JIS A1101)、厚さ0.6mmのアルミニウム−マグネシウム合金(JIS A5005)、厚さ0.6mmの溶融アルミニウムのめっき体(JIS G3314)、及び、厚さ0.6mmのマグネシウム合金(JIS H4201)に、それぞれ、バーコーターNo.4で塗布した。その後、200℃にて60秒乾燥した。乾燥後、50g/Lの塩化ナトリウム水溶液に7日間浸漬した後、常温にて乾燥し、錆の発生の状態を目視にて観察し、錆が発生しているものを「×」、錆の発生が無いものを「◎」として評価した。結果を表2に示す。表2の中の数値は質量%を示す。
【0085】
【表2】

【0086】
実施例1〜31の水系表面処理組成物で各被着体の表面を処理した場合、評価した何れの被着体に対しても、優れた防錆効果が認められた。一方、チタン化合物a〜cから得られた水系表面処理組成物で各被着体の表面を処理した場合、評価した何れの被着体に対しても、防錆効果が認められなかった(比較例1〜6)。また、チタン化合物オリゴマー(a)にシリコン化合物(d)を反応(混合)させないものも、評価した何れの被着体に対しても、防錆効果が認められなかった(比較例7)。また、シランカップリング剤を用いて表面処理をした比較例8〜12は、良好な防錆効果を示さなかった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の水系表面処理組成物は、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又は、それらのめっき体等の被着体に対し、濡れ性、製膜性、防錆性等を著しく向上させることができるため、防錆等を必要とする産業分野に広く利用されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するチタン複合組成物に、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するものであり、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又は、それらのめっき体の表面に対して用いるものであることを特徴とする水系表面処理組成物。
【請求項2】
該チタン化合物オリゴマー(a)が、下記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、下記式(1)で表されるチタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物、が縮合した構造を有するものである請求項1記載の水系表面処理組成物。
【化1】

[式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示す。]
【請求項3】
該チタン化合物オリゴマー(a)が、下記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、下記式(1)で表されるチタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物が縮合した構造を有するものに、更にキレート化剤を配位させてなる構造を有するものである請求項1記載の水系表面処理組成物。
【化2】

[式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示す。]
【請求項4】
上記縮合が、チタンアルコキシド又はチタンキレート化合物を、アルコール溶液中で水を反応させることにより行われたものである請求項2又は請求項3記載の水系表面処理組成物。
【請求項5】
上記縮合が、チタンアルコキシド及び/又はチタンキレート化合物1モルに対し、アルコール溶液中で、水0.2〜2モルを反応させることにより行われたものである請求項2ないし請求項4の何れかの請求項記載の水系表面処理組成物。
【請求項6】
上記縮合が、チタンアルコキシド又はチタンキレート化合物をアミン化合物(b)の存在下でかつアルコール溶液中で水を反応することにより行われたものである請求項2ないし請求項5の何れかの請求項記載の水系表面処理組成物。
【請求項7】
該アミン化合物(b)が、置換若しくは非置換の脂肪族アミン又は第四級アンモニウム水酸化物である請求項1ないし請求項6の何れかの請求項記載の水系表面処理組成物。
【請求項8】
該グリコール化合物(c)が、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール及び2,3−ブタンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1ないし請求項7の何れかの請求項記載の水系表面処理組成物。
【請求項9】
該キレート化剤が、β−ジケトン、β−ケトエステル、多価アルコール、アルカノールアミン及びオキシカルボン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項2ないし請求項8の何れかの請求項記載の水系表面処理組成物。
【請求項10】
式(1)中のR〜Rが、それぞれ独立に炭素数1〜8個のアルキル基である請求項2ないし請求項9の何れかの請求項記載の水系表面処理組成物。
【請求項11】
分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)が、ケイ素原子にアルキル基が直接結合した構造を有するものである請求項2ないし請求項10の何れかの請求項記載の水系表面処理組成物。
【請求項12】
分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)が、アミノ基、メルカプト基又はエポキシ基を含有するものである請求項2ないし請求項11の何れかの請求項記載の水系表面処理組成物。
【請求項13】
アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又は、それらのめっき体の表面に対して、請求項1ないし請求項12の何れかの請求項記載の水系表面処理組成物を使用して製膜してなることを特徴とする防錆被膜。
【請求項14】
請求項1ないし請求項12の何れかの請求項記載の水系表面処理組成物を使用して防錆されていることを特徴とする、アルミニウム、「亜鉛を含まないか、20%未満含有するアルミニウム若しくはマグネシウム合金」、又はそれらのめっき体。

【公開番号】特開2009−185235(P2009−185235A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28661(P2008−28661)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000188939)マツモトファインケミカル株式会社 (26)
【Fターム(参考)】