説明

水素生成装置

【課題】ヒータ異常による触媒の高温劣化を防止することができ、燃料電池の運転に最適な水素を安定に供給する水素生成装置を提供する。
【解決手段】原料と水蒸気との改質反応により水素含有ガスを生成させる改質部20と、改質部20後の水素含有ガス中の一酸化炭素と水蒸気とを反応させる変成触媒を有する変成部25と、変成部25の変成温度を検出する変成温度検出部17と、変成部25を加熱するヒータ24と、運転制御部16と、を少なくとも備え、運転制御部16は、変成温度検出部17で検出される変成温度に基づいて、ヒータ24の動作を制御するとともに、変成温度検出部17で検出される変成温度に基づいて、ヒータ24の動作が適正かどうかを判断する水素生成装置1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化石原料等から一酸化炭素濃度の低い水素含有ガスを生成する水素生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の代替エネルギー源の有力候補として水素が注目されているが、その生成コスト、貯蔵および運搬などについて様々な問題があり、特に民生用としては一般的には利用されていない。水素の利用を早期に実現するためには、既存の産業基盤(インフラストラクチャー)を利用し、必要な場所で必要な量の水素を生成することが有力な手段となる。例えば、中小規模のオンサイト型燃料電池には都市ガスを原料として用い、また燃料電池自動車にはメタノールを原料として用い、触媒反応を利用した水蒸気改質方法、部分酸化方法、または両者を組み合わせたオートサーマル法などでの水素を生成することが考えられる。しかし、改質反応は高温で進行するため、水素以外の副生成物として一酸化炭素(以下、「CO」という)や二酸化炭素が生成する。生成した水素を燃料電池に供給するとき、特に高分子電解質型燃料電池においては、副生成物であるCOが燃料電池の電極を被毒してその性能を著しく劣化させてしまう。そのため、水素に含まれるCOの濃度を20ppm程度にまで低減しておく必要がある。これに対して、水素生成装置は、改質反応を行う改質部に加えて、改質部の下流に変成反応を行う変成部、さらに最終的にCO濃度を20ppm程度にまで低減する選択酸化部を具備し、各部が具備する触媒を良好な活性を有する温度に制御することで20ppm以下のCO濃度を実現し、純度の高い水素の燃料電池への供給を可能としている。具体的な温度は、触媒の種類などによって異なるが、通常は改質部では約700℃、変成部では約300℃、選択酸化部では約200℃とすることが一般的である。
【0003】
ところで、停止状態の燃料電池を早期に発電状態に移行するためには、改質部、変成部、選択酸化部を短時間で最適な温度に上昇させる必要がある。そこで、変成部の近傍にはヒータなどの加熱源が設置されている。しかし、変成部の触媒(以下、「変成触媒」という)は高温雰囲気にさらされるとその性能を著しく劣化させてしまうため、所定温度以下に制御することが重要である。そこで、変成触媒を所定温度以下に制御する例が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−217203号公報
【特許文献2】特開2007−269541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の水素生成装置によれば、COシフト部の入口に改質ガス通路が連結され、改質ガス通路内にCOシフト部を加熱するヒータがあり、ヒータより下流のCOシフト部の入口までの何れかの部位の温度を検出する温度センサの検出温度に基づいてヒータの動作を制御する。この構成により、COシフト部を加熱するヒータからの熱が、改質ガス通路やCOシフト部のケースを介してCOシフト部内の触媒に伝導するので、COシフト部内の触媒を直接加熱するのを防止でき、触媒の高温劣化を防止することができる。しかしながら、上記従来の構成では、ヒータあるいはヒータへの供給電圧等に異常が生じ、正常時に比べてヒータの発熱量が高くなった場合、制御温度に対してオーバーシュートによる温度上昇幅が大きくなり、触媒の高温劣化の可能性があった。
【0006】
また、特許文献2の水素生成装置によれば、COシフト部を加熱するヒータの温度が所定温度までしか昇温しないようにヒータのワット密度が所定範囲内に設定されているので、ヒータの過昇温を防止でき、触媒の劣化を防止することができる。しかしながら、上記従来の構成でも同様に、ヒータあるいはヒータへの供給電圧等に異常が生じ、正常時に比べてヒータの発熱量が高くなった場合、ヒータの温度が所定温度よりも高くなり、触媒の高温劣化の可能性があった。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、ヒータ異常による触媒の高温劣化を防止する水素生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決するために、本発明の水素生成装置では、原料と水蒸気との改質反応により水素含有ガスを生成させる改質部と、改質部後の水素含有ガス中の一酸化炭素と水蒸気とを反応させる変成触媒を有する変成部と、変成部の変成温度を検出する変成温度検出部と、変成部を加熱するヒータと、運転制御部と、を少なくとも備え、運転制御部は、変成温度検出部で検出される変成温度に基づいて、ヒータの動作を制御するとともに、変成温度検出部で検出される変成温度に基づいて、ヒータの動作が適正かどうかを判断する構成を有する。
【0009】
この構成により、ヒータの動作が適正かどうかを変成温度検出部で検出される変成温度で判断し、ヒータを最適に制御できる。その結果、ヒータ異常による触媒の高温劣化を防止することができ、燃料電池の運転に最適な水素を安定に供給する水素生成装置を実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヒータの動作が適正かどうかを変成温度検出部で検出される変成温度で判断し、ヒータを最適に制御できるとともに、ヒータの故障検出確率が向上し、信頼性に優れた水素生成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における水素生成装置および燃料電池発電システムの概略構成図
【図2】本発明の実施の形態1における水素生成装置の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、原料と水蒸気との改質反応により水素含有ガスを生成させる改質部と、改質部後の水素含有ガス中の一酸化炭素と水蒸気とを反応させる変成触媒を有する変成部と、変成部の変成温度を検出する変成温度検出部と、変成部を加熱するヒータと、運転制御部と、を少なくとも備え、運転制御部は、変成温度検出部で検出される変成温度に基づいて、ヒータの動作を制御するとともに、変成温度検出部で検出される変成温度に基づいて、ヒータの動作が適正かどうかを判断する構成を有する水素生成装置である。
【0013】
この構成により、ヒータの動作が適正かどうかを変成温度検出部で検出される変成温度で判断し、ヒータを最適に制御できる。その結果、ヒータ異常による触媒の高温劣化を防止することができ、燃料電池の運転に最適な水素を安定に供給する水素生成装置を実現できる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、運転制御部は、変成温度検出部で検出される変成温度が予め設定される閾値外であることを検出することで、ヒータの動作が異常と判断し
て制御する。この構成により、ヒータの動作異常を短期間で判断して水素生成装置を制御できる。
【0015】
第3の発明は、原料と水蒸気との改質反応により水素含有ガスを生成させる改質部と、改質部後の水素含有ガス中の一酸化炭素と水蒸気とを反応させる変成触媒を有する変成部と、変成部の変成温度を検出する変成温度検出部と、変成部後の水素含有ガス中の一酸化炭素を酸化反応させる選択酸化触媒を有する選択酸化部と、選択酸化部の選択酸化温度を検出する選択酸化温度検出部と、変成部を加熱するヒータと、運転制御部と、を少なくとも備え、運転制御部は、変成温度検出部で検出される変成温度に基づいて、ヒータの動作を制御するとともに、選択酸化温度検出部で検出される選択酸化温度に基づいて、ヒータの動作が適正かどうかを判断する構成を有する水素生成装置である。
【0016】
この構成により、ヒータの動作が適正かどうかを選択酸化温度検出部で検出される選択酸化温度で判断し、ヒータを最適に制御できる。その結果、ヒータ異常による触媒の高温劣化を防止することができ、燃料電池の運転に最適な水素を安定に供給する水素生成装置を実現できる。
【0017】
第4の発明は、第3の発明において、運転制御部は、選択酸化温度検出部で検出される選択酸化温度が予め設定される閾値外であることを検出することで、ヒータの動作が異常と判断して制御する。この構成により、ヒータの動作異常を短期間で判断して水素生成装置を制御できる。
【0018】
第5の発明は、原料と水蒸気との改質反応により水素含有ガスを生成させる改質部と、改質部後の水素含有ガス中の一酸化炭素と水蒸気とを反応させる変成触媒を有する変成部と、変成部の変成温度を検出する変成温度検出部と、変成部後の水素含有ガス中の一酸化炭素を酸化反応させる選択酸化触媒を有する選択酸化部と、選択酸化部の選択酸化温度を検出する選択酸化温度検出部と、変成部を加熱するヒータと、運転制御部と、を少なくとも備え、運転制御部は、変成温度検出部で検出される変成温度に基づいて、ヒータの動作を制御するとともに、変成温度検出部で検出される変成温度、および選択酸化温度検出部で検出される選択酸化温度に基づいて、ヒータの動作が適正かどうかを判断する構成を有する水素生成装置である。
【0019】
この構成により、ヒータの動作が適正かどうかを変成温度検出部で検出される変成温度と選択酸化温度検出部で検出される選択酸化温度で判断し、ヒータを最適に制御できる。その結果、さらにヒータ異常による触媒の高温劣化を防止することができ、燃料電池の運転に最適な水素を安定に供給する水素生成装置を実現できる。
【0020】
第6の発明は、第5の発明において、運転制御部は、変成温度検出部で検出される変成温度と選択酸化温度検出部で検出される選択酸化温度が予め設定される閾値外であることを検出することで、ヒータの動作が異常と判断して制御する。この構成により、さらにヒータの動作異常を短期間で判断して水素生成装置を制御できる。
【0021】
第7の発明は、第1または第3または第5の発明のいずれかにおいて、ヒータは、さらに、選択酸化部を同時に加熱する。この構成により、ヒータの動作が適正かどうかを変成温度検出部で検出される変成温度と選択酸化温度検出部で検出される選択酸化温度のいずれか一方、あるいは両方で判断し、ヒータを最適に制御できる。その結果、ヒータ異常による触媒の高温劣化を防止することができ、燃料電池の運転に最適な水素を安定に供給する水素生成装置を実現できる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の
形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
まず、以下に本発明の実施の形態1における水素生成装置、および燃料電池発電システムの構成について、詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態1における水素生成装置1、および燃料電池発電システム100を示す概略構成図である。
【0025】
図1に示すように、燃料電池発電システム100は、水素含有ガスを生成させる水素生成装置1と、水素生成装置1から供給された水素含有ガスを用いて発電を行う燃料電池8と、水素生成装置1から燃料電池8へ水素含有ガスを供給する水素ガス供給経路12と、燃料電池8で排出される水素含有ガス(アノードオフガス)を水素生成装置1の燃焼部2に供給するオフガス経路14と、燃焼ガス供給経路15とを備えている。
【0026】
そして、オフガス経路14には、水素生成装置1から水素含有ガスの供給を封止する封止部9が設けられ、封止部9は水素生成装置バイパス経路11と燃料電池バイパス経路13に接続されている。また、水素ガス供給経路12には、水素生成装置1から水素含有ガスの供給を封止する封止部9Aが設けられ、封止部9Aは燃料電池バイパス経路13に接続されている。ここで、封止部9、9Aは、複数の電磁弁を組み合わせた構成(詳細説明は省略する)からなり、水素ガス供給経路12、水素生成装置バイパス経路11および燃料電池バイパス経路13から供給されるガスの流通を切り替える切替機能も備えている。
【0027】
燃料電池8の他の構成は、一般的な固体高分子型の燃料電池と同等であるので詳細な説明は省略する。
【0028】
また、水素生成装置1は、水を供給する水供給部3と、炭化水素系の原料に含まれる硫黄成分を吸着して除去する脱硫部5と、原料と水とを用いて水素含有ガスを生成させる改質部20と、原料の流量を制御する原料供給部4と、原料供給部4や水供給部3の動作を少なくとも制御する運転制御部16とを備えている。なお、脱硫部5に供給される炭化水素系の原料は、炭化水素などの少なくとも炭素および水素元素から構成される有機化合物を含む原料であればよく、例えばメタンを主成分とする都市ガス、天然ガス、LPGなどである。
【0029】
そして、図1に示すように、本実施の形態では、原料の供給源として、例えば都市ガスのガスインフラライン6を用い、そのガスインフラライン6が脱硫部5に接続されている。なお、脱硫部5は、上流側および下流側に配置された脱硫接続部7に着脱可能な形状を有し、脱硫部5の硫黄成分に対する吸着量が飽和して吸着特性が低下した場合に、新しい脱硫部5と交換できる構成となっている。このとき、脱硫部5には、都市ガス中の付臭成分である硫黄化合物を吸着させる、ゼオライト系吸着除去剤が充填されている。
【0030】
また、脱硫接続部7は、原料の流通を制御する、例えば電磁弁で構成される弁機能も有している。なお、脱硫部5は、水添脱硫(水素化脱硫)を用いた構成としてもよい。
【0031】
また、水供給部3は、流量調節機能を有するポンプを有している。
【0032】
また、原料供給部4は、脱硫部5と水素生成装置1とを接続する原料供給経路10に配置され、水素生成装置1に供給される原料の流量を制御することによって、ガスインフラライン6から脱硫部5に供給される原料の流量を制御している。なお、原料供給部4は、脱硫部5に供給される原料の流量を制御できればよく、脱硫部5の上流側に配置してもよ
い。本実施の形態では、原料供給部4はブースターポンプを有し、例えば入力する電流パルスや入力電力などを制御することにより、脱硫部5に供給される原料の流量を調節できる。
【0033】
また、運転制御部16は、水素生成装置1の運転動作を制御する制御部で、原料供給部4から水素生成装置1に供給される原料の供給量、水供給部3から水素生成装置1に供給される水の供給量などの制御および脱硫接続部7や封止部9の動作の制御を行う。さらに、以下で詳細に説明するように、変成温度検出部17で検出される変成温度に基づいて、ヒータ24の動作を制御するとともに、変成温度検出部17で検出される変成温度、および選択酸化温度検出部22で検出される選択酸化温度に基づいて、ヒータ24の動作が適正かどうかを判断し、ヒータ24を最適に制御する。
【0034】
また、運転制御部16は、燃料電池8の運転動作も制御するが、詳細な説明は省略する。なお、運転制御部16は、例えば半導体メモリーやCPUなどにより構成される。そして、水素生成装置の運転動作シーケンス、原料積算流量など運転情報などを記憶し、状況に応じた適切な動作条件を演算し、かつ、水供給部3や原料供給部4などの運転に必要な動作条件を指令する。
【0035】
以下に、本発明の実施の形態1の水素生成装置について、図面を用いて詳細に説明する。図2は、本発明の実施の形態1における水素生成装置を示す要部断面図である。
【0036】
図2に示すように、水素生成装置1は、改質部20と、変成部25と、選択酸化部26を少なくとも備えている。水蒸気発生部23は、水供給部3から供給される水を蒸発させて水蒸気を生成するとともに、原料と水蒸気の混合ガスを予熱する。そして、改質部20は、原料と水蒸気との改質反応を進行させる。そして、変成部25は、改質部20で生成した水素含有ガス中の一酸化炭素と水蒸気とを変成反応させて、水素含有ガスの一酸化炭素濃度を低減させる。さらに、選択酸化部26は、変成部25を通過した後の水素含有ガス中に残留する一酸化炭素を、空気供給部19から変成部25を通過した後の水素含有ガスに供給される空気を用いて、主に酸化させて除去する。
【0037】
このとき、改質部20には、例えばRu系の改質触媒、変成部25には、例えばCu−Zn系の変成触媒、選択酸化部26には、例えばRu系の選択酸化触媒を有している。
【0038】
また、水素生成装置1は、改質部20における改質触媒(あるいは水素含有ガス)の温度を検出する改質温度検出部21、変成部25における変成触媒の温度を検出する変成温度検出部17、選択酸化部26における選択酸化触媒の温度を検出する選択酸化温度検出部22を備えている。また、変成部25の近傍には、変成触媒を加熱するためのヒータ24を備えている。
【0039】
さらに、水素生成装置1は、改質部20における改質反応に必要な反応熱を供給するための、例えば燃焼ガスを燃焼させるバーナなどからなる燃焼部2を備えている。このとき、燃焼部2で燃焼させる燃焼ガスは、燃焼ガス供給経路15を介して燃焼部2に供給される。また、燃焼部2に燃料用空気を供給する、例えば燃焼ファンなどの燃焼空気供給部18を備えている。
【0040】
そして、水素生成装置で生成された水素含有ガスは、図1に示す水素ガス供給経路12を介して燃料電池8に供給される。
【0041】
次に、水素生成装置1、および燃料電池発電システム100の運転動作について、具体的に説明する。
【0042】
以下では、水素生成装置1、および燃料電池発電システム100の起動から発電へ移行するまでの運転動作を、水素生成装置1の動作を中心に説明する。
【0043】
まず、停止状態から水素生成装置1を起動させる場合、運転制御部16からの指令により、原料供給部4から水素生成装置バイパス経路11、封止部9、燃焼ガス供給経路15を経由して、原料が燃焼部2に供給される。そして、燃焼部2で原料が燃焼することにより、水素生成装置1の加熱が開始する。また、同時にヒータ24を動作し、変成部25の加熱を開始する。ここで、ヒータ24は、変成温度検出部17で検出される変成温度が所定温度になるよう制御する。また、水素生成装置1に原料供給経路10を経由して原料が供給され、さらに、改質部20、変成部25、選択酸化部26の各部温度が、水蒸気が凝縮しない温度域に到達すると、水供給部3により水が供給され、水と原料との改質反応が開始する。本実施の形態では、原料としてメタンを主成分とする都市ガス(13A)を例に説明する。このとき、水供給部3から水は、都市ガスの平均分子式中の炭素原子数1モルに対して水蒸気が3モル(スチームカーボン比(S/C)で3)程度となるように制御して供給される。これにより、水素生成装置1では、改質部20で水蒸気改質反応、変成部25で変成反応、さらに空気供給部19から空気が供給され、選択酸化部26で一酸化炭素の選択酸化反応が進行し、水素含有ガスが生成する。
【0044】
そして、生成された水素含有ガスの一酸化炭素濃度が、所定濃度(例えば、ドライガスベースで20ppm以下)に減少するまで、封止部9、燃料電池バイパス経路13を経由して、循環して燃焼部2に供給される。このとき、運転制御部16は、改質温度検出部21で検出される反応温度に基づいて、改質部20、変成部25、選択酸化部26が各反応に適した温度になるように、燃焼部2の燃焼を制御する。
【0045】
また、水素生成装置1に供給された原料が燃焼部2に供給され、バーナでの燃焼状態が安定化した後は、水素生成装置バイパス経路11からの原料の供給を停止する。
【0046】
次に、水素生成装置1で生成された水素含有ガスの一酸化炭素の濃度を所定濃度まで減少させた後、封止部9を動作させ、水素ガス供給経路12を経由して、運転に最適な水素含有ガスを燃料電池8に供給する。このとき、運転制御部16は、原料供給部4の動作を制御することにより、原料の供給量を調整して燃料電池8に供給する。これにより、燃料電池8で水素含有ガス中の水素と酸素含有ガス中の酸素とが反応し、定常的な発電動作が開始する。なお、ヒータ24の制御は、発電移行と同時に停止する。
【0047】
次に、以下に、本実施の形態の発明のポイントである、ヒータ24の動作が適正かどうかを判断する変成温度検出部17で検出される変成温度、および選択酸化温度検出部22で検出される選択酸化温度の挙動について、詳細に説明する。
【0048】
まず、ヒータ24の動作が正しく、精度よく制御される場合には問題ないが、何らかの原因でヒータ24が異常な発熱量を出力した場合、信頼性や起動エネルギーの上昇、あるいは起動時間の延長などの問題を生じる。そのため、ヒータ24の動作が適正かどうか判断することが重要となる。
【0049】
本実施の形態の水素生成装置1では、変成温度検出部17で検出される変成温度、および選択酸化温度検出部22で検出される選択酸化温度に基づいて、ヒータ24の動作が適正かどうかを判断するものである。
【0050】
以下に、ヒータ24の具体的な動作、作用について説明する。
【0051】
まず、ヒータ24の発熱量が通常より高くなった場合、変成部25への加熱量が増加し、変成温度検出部17で検出される温度は上昇する。次に、ヒータ24からの増加した熱が、外筒27を介して熱伝導で選択酸化部26へ伝わるため選択酸化部26の温度は上昇する。また、温度上昇した変成部25で熱を受けた水素含有ガスが下流にある選択酸化部26を通過するため、さらに選択酸化部26の温度は上昇し、選択酸化温度検出部22で検出される温度は上昇する。したがって、起動時の所定時間に対する変成温度、および選択酸化温度は、通常起動時の温度より上昇する。
【0052】
一方、ヒータ24の発熱量が通常より低くなった場合、あるいは、ヒータ24の断線などにより、発熱しなかった場合、変成部25への加熱量が減少し、変成温度検出部17で検出される温度は下降する。次に、ヒータ24からの減少した熱が、外筒27を介して熱伝導で選択酸化部26へ伝わるため選択酸化部26の温度は下降する。また、温度下降した変成部25で熱を受けた水素含有ガスが下流にある選択酸化部26を通過するため、さらに選択酸化部26の温度は下降し、選択酸化温度検出部22で検出される温度は下降する。したがって、起動時の所定時間に対する変成温度、および選択酸化温度は、通常起動時の温度より下降する。
【0053】
つまり、起動時の所定時間に対する変成温度、および選択酸化温度を、通常起動時の温度と比較することにより、ヒータ24の動作が適正かどうかを判断できる。
【0054】
また、ヒータ24の発熱量が通常より高くなったと判断した場合、起動時の所定時間に対する変成温度、および選択酸化温度が通常起動時の温度になるよう、ヒータ24への供給電圧を低く制御すればよい。なお、ヒータ24の発熱量が低くなったと判断した場合には、その逆の動作で制御すればよい。
【0055】
なお、本実施の形態では、ヒータ24の動作が適正かどうかを、変成温度検出部17で検出される変成温度、および選択酸化温度検出部22で検出される選択酸化温度の変化を運転制御部16で判断し制御する例で説明したが、これに限られない。例えば、ヒータ24の動作に応じて、予め所定時間に対する変成温度検出部17で検出される変成温度に変成温度閾値、および選択酸化温度検出部22で検出される選択酸化温度に選択酸化温度閾値を設けて制御してもよい。具体的には、運転制御部16は、起動時の所定時間に対する変成温度と選択酸化温度が、変成温度度閾値と選択酸化温度閾値を上回る場合、ヒータ24の動作が適正でなく、適正動作範囲外と判断し、水素生成装置1、および燃料電池発電システム100の運転を停止させる制御をする。ここで、変成温度度閾値と選択酸化温度閾値は、例えば、水素生成装置1で、変成触媒、選択酸化触媒が高温劣化する、あるいは起動エネルギーが上昇するときの、ヒータ24の動作と、変成温度、選択酸化温度との関係を上限閾値、起動時間が長くなるときの、ヒータ24の動作と、変成温度、選択酸化温度との関係を下限閾値と、予め測定して設定されるものである。
【0056】
なお、上記実施の形態1では、変成温度検出部17、および選択酸化温度検出部22を含む構成の水素生成装置1を例に説明したが、これに限られず、ヒータ24の動作が適正かどうかを判断する少なくとも変成温度検出部17、あるいは選択酸化温度検出部22いずれかを有する構成を適宜選択して構成してもよいことはいうまでもない。
【0057】
また、上記実施の形態1では、ヒータ24は、変成部25を加熱する構成の水素生成装置1を例に説明したが、これに限られず、少なくとも変成部25が加熱される構成であればよく、さらに選択酸化部26を加熱する構成としてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態1では、選択酸化部26を設けた例で説明したが、変成部25で原料の一酸化炭素の濃度を燃料電池8の動作に支障のない程度まで低減できる場合には、
特に設けなくてもよい。これにより、水素生成装置1の構成や運転制御部の簡略化が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、高い信頼性が要望される水素生成装置、および燃料電池発電システムの技術分野に有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 水素生成装置
2 燃焼部
3 水供給部
4 原料供給部
5 脱硫部
6 ガスインフラライン
7 脱硫接続部
8 燃料電池
9,9A 封止部
10 原料供給経路
11 水素生成装置バイパス経路
12 水素ガス供給経路
13 燃料電池バイパス経路
14 オフガス経路
15 燃焼ガス供給経路
16 運転制御部
17 変成温度検出部
18 燃焼空気供給部
19 空気供給部
20 改質部
21 改質温度検出部
22 選択酸化温度検出部
23 水蒸気発生部
24 ヒータ
25 変成部
26 選択酸化部
27 外筒
100 燃料電池発電システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料と水蒸気との改質反応により水素含有ガスを生成させる改質部と、前記改質部後の水素含有ガス中の一酸化炭素と水蒸気とを反応させる変成触媒を有する変成部と、前記変成部の変成温度を検出する変成温度検出部と、前記変成部を加熱するヒータと、運転制御部と、を少なくとも備え、前記運転制御部は、前記変成温度検出部で検出される変成温度に基づいて、前記ヒータの動作を制御するとともに、前記変成温度検出部で検出される変成温度に基づいて、前記ヒータの動作が適正かどうかを判断する水素生成装置。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記変成温度検出部で検出される変成温度が予め設定される閾値外であることを検出することで、前記ヒータの動作が異常と判断する請求項1に記載の水素生成装置。
【請求項3】
原料と水蒸気との改質反応により水素含有ガスを生成させる改質部と、前記改質部後の水素含有ガス中の一酸化炭素と水蒸気とを反応させる変成触媒を有する変成部と、前記変成部の変成温度を検出する変成温度検出部と、前記変成部後の水素含有ガス中の一酸化炭素を酸化反応させる選択酸化触媒を有する選択酸化部と、前記選択酸化部の選択酸化温度を検出する選択酸化温度検出部と、前記変成部を加熱するヒータと、運転制御部と、を少なくとも備え、前記運転制御部は、前記変成温度検出部で検出される変成温度に基づいて、前記ヒータの動作を制御するとともに、前記選択酸化温度検出部で検出される選択酸化温度に基づいて、前記ヒータの動作が適正かどうかを判断する水素生成装置。
【請求項4】
前記運転制御部は、前記選択酸化温度検出部で検出される選択酸化温度が予め設定される閾値外であることを検出することで、前記ヒータの動作が異常と判断する請求項3に記載の水素生成装置。
【請求項5】
原料と水蒸気との改質反応により水素含有ガスを生成させる改質部と、前記改質部後の水素含有ガス中の一酸化炭素と水蒸気とを反応させる変成触媒を有する変成部と、前記変成部の変成温度を検出する変成温度検出部と、前記変成部後の水素含有ガス中の一酸化炭素を酸化反応させる選択酸化触媒を有する選択酸化部と、前記選択酸化部の選択酸化温度を検出する選択酸化温度検出部と、前記変成部を加熱するヒータと、運転制御部と、を少なくとも備え、前記運転制御部は、前記変成温度検出部で検出される変成温度に基づいて、前記ヒータの動作を制御するとともに、前記変成温度検出部で検出される変成温度、および前記選択酸化温度検出部で検出される選択酸化温度に基づいて、前記ヒータの動作が適正かどうかを判断する水素生成装置。
【請求項6】
前記運転制御部は、前記変成温度検出部で検出される変成温度、および前記選択酸化温度検出部で検出される選択酸化温度が予め設定される閾値外であることを検出することで、前記ヒータの動作が異常と判断する請求項5に記載の水素生成装置。
【請求項7】
前記ヒータは、さらに、前記選択酸化部を同時に加熱する請求項1または3または5に記載の水素生成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−275118(P2010−275118A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126084(P2009−126084)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】