説明

水素製造用のヨウ化水素の精製装置及びその精製方法、水素製造用のヨウ化水素の濃縮装置及びその濃縮方法

【課題】水素製造効率を向上させることのできる水素製造用のヨウ化水素の精製装置及びその精製方法、水素製造用のヨウ化水素の濃縮装置及びその濃縮方法を提供する。
【解決手段】水素製造用のヨウ化水素の精製装置が、ヨウ素、二酸化硫黄、及び水を熱化学的に分解してヨウ化水素及び硫酸を生成する反応手段と、前記反応手段で生成されたヨウ化水素及び硫酸を、ヨウ化水素及び不純物の硫酸を含む原液と、硫酸とに分離する分離手段と、荷電モザイク膜と、前記分離手段から排出された前記原液を前記荷電モザイク膜の一方の面に接触させて、前記荷電モザイク膜に選択的に透過される前記ヨウ化水素を前記原液中から脱塩させる脱塩室と、透析液を前記荷電モザイク膜の他方の面に接触させて、前記荷電モザイク膜に選択的に透過された前記ヨウ化水素を前記透析液に移行させる透析液室と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造用のヨウ化水素の精製装置及びその精製方法、水素製造用のヨウ化水素の濃縮装置及びその濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水を原料とした水素製造方法として熱化学水素製造プロセスであるSI法(またはIS法、Iodine−Sulfur法、ヨウ素と硫酸を内部循環しながら、水を熱化学的に分解して水素を製造する方法)が知られている。このSI法は、発電所等から得られた熱を供給することにより、主に3つの工程(ブンゼン反応工程、ヨウ化水素濃縮分解工程、硫酸濃縮分解工程)を経て水を水素と酸素へ変換するものである。ブンゼン反応工程においては、水、ヨウ素、二酸化硫黄をヨウ化水素、硫酸に変化させる。ヨウ化水素濃縮分解工程では、ヨウ化水素を水素及びヨウ素に変え、硫酸濃縮分解工程では、硫酸を酸素、水、二酸化硫黄に変える。ヨウ素、水、二酸化硫黄はブンゼン反応工程へリサイクルされ、水素と酸素を取り出すことができる。
このようにして製造されるSI法による水素の製造技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−306621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、ブンゼン反応で生成するヨウ化水素水溶液(ヨウ化水素酸)と硫酸は均一混合物として生成するが、多量のヨウ素を後に投入すると、ヨウ素はヨウ化水素水溶液に溶解する。そのため、ポリヨウ化水素酸(ポリヨウ化水素酸とは、ヨウ化水素水溶液にヨウ素が溶解している水溶液)の密度は、硫酸の密度よりも大きくなり、ポリヨウ化水素酸と硫酸とを比重分離することができる。この比重分離により分離されたポリヨウ化水素酸には硫酸が少量(通常1〜4%程度)混入している。この不純物の硫酸はヨウ化水素と式(1)、(2)で示す反応をし、ブンゼン反応により生成したヨウ化水素を消費するため、ポリヨウ化水素酸中の不純物の硫酸は水素製造効率を低下させることが判った。
SO+8HI→4I+4HO+HS ……(1)
SO+6HI→3I+4HO+S ……(2)
また、ヨウ化水素水溶液やポリヨウ化水素酸は共沸現象を生じるために、一般的な蒸留では純度の高いヨウ化水素ガスを回収することがでず、水素製造効率を低下させるという問題もある。
【0004】
上記に鑑み、本発明は、水素製造効率を向上させることのできる水素製造用のヨウ化水素の精製装置及びその精製方法、水素製造用のヨウ化水素の濃縮装置及びその濃縮方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る水素製造用のヨウ化水素の精製装置は、ヨウ素、二酸化硫黄、及び水を熱化学的に分解してヨウ化水素及び硫酸を生成する反応手段と、前記反応手段で生成されたヨウ化水素及び硫酸を、ヨウ化水素及び不純物の硫酸を含む原液と、硫酸とに分離する分離手段と、荷電モザイク膜と、前記分離手段から排出された前記原液を前記荷電モザイク膜の一方の面に接触させて、前記荷電モザイク膜に選択的に透過される前記ヨウ化水素を前記原液中から脱塩させる脱塩室と、透析液を前記荷電モザイク膜の他方の面に接触させて、前記荷電モザイク膜に選択的に透過された前記ヨウ化水素を前記透析液に移行させる透析液室と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、水素製造効率を向上させることのできる水素製造用のヨウ化水素の精製装置及びその精製方法、水素製造用のヨウ化水素の濃縮装置及びその濃縮方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。本発明はこれらの実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るヨウ化水素の精製装置1の構成および流体の流れを概略的に示す図である。
【0009】
図1に示すように、本実施形態のヨウ化水素の精製装置1は、反応・分離器2と、SO供給ライン3aと、HO供給ライン3bと、I供給ライン3cと、HSO移送ライン3dと、排気ライン3eと、背圧弁4、9、12と、圧力計5と、透析部6と、原液側移送ライン7a、7bと、ポンプ8、11と、精製側移送ライン10a、10bと、ヒータ13、15と、温度調節器14、16と、差圧計17と、精製ヨウ化水素容器18と、蒸留器送液ライン19とを備えている。
【0010】
反応・分離器2は、ヨウ素(I)と二酸化硫黄(SO)と水(HO)とをブンゼン反応させて、硫酸(HSO)とヨウ化水素(HI)を生成させる反応手段としての機能と、ブンゼン反応により生成した硫酸とポリヨウ化水素酸(ポリヨウ化水素酸とは、ヨウ化水素水溶液にヨウ素が溶解している水溶液)とを比重差により分離する分離手段としての機能を有する。
なお、本実施の形態では、反応・分離器2を同一の容器としているが、反応器と分離器を別々に配置して、反応器でブンゼン反応をさせた後、分離器で分離してもよい。
【0011】
SO供給ライン3aは、二酸化硫黄(SO)を反応・分離器2に供給するラインであり、HO供給ライン3bは、水(HO)を反応・分離器2に供給するラインであり、I供給ライン3cは、ヨウ素(I)を反応・分離器2に供給するラインである。
SO移送ライン3dは、反応・分離器2において硫酸とポリヨウ化水素酸とに比重分離された軽液としての硫酸(HSO)を、反応・分離器2から抜き取り、硫酸濃縮器に送るラインである。
排気ライン3eは、反応・分離器2に供給された未反応ガス(SO等)を、反応・分離器2から排気するラインである。
圧力計5は、反応・分離器2内の圧力を確認するものである。
【0012】
透析部6は、荷電モザイク膜20と脱塩室21と透析液室22とを備え、荷電モザイク膜20によって、脱塩室21と透析液室22とに仕切られている。本実施の形態では、透析部6は、荷電モザイク膜20に対する溶質の透過速度の差を利用してヨウ化水素水溶液を精製する。
荷電モザイク膜20は、カチオン性重合体成分、及びアニオン性重合体成分からなるカチオン性、及びアニオン性のイオンチャンネルが、互いに相接し、かつ膜の表裏面間を貫通していることにより塩透析性を発現する公知の荷電膜であり、非電解質成分の透過性に比べ電解質成分の透過性が大きい。
反応・分離器2において生成、分離されたポリヨウ化水素酸である原液中には、ヨウ化水素のほか、ヨウ素や、不純物として通常1〜4%の硫酸が含まれていが、荷電モザイク膜20は、これらのうちヨウ化水素を選択的に透過する。本実施の形態では、荷電モザイク膜20として、硫酸に比べてヨウ化水素の透過性能が大きく、ヨウ化水素を選択的に透過するものを用いている。荷電モザイク膜20は破損防止のために耐食性の材料で片面または両面が覆われていることが好ましい。
【0013】
荷電モザイク膜によるヨウ化水素の脱塩の駆動力は、荷電モザイク膜によって仕切られている原液と透析液との塩の濃度差、及び/又は脱塩室21と透析液室22との圧力差である。
【0014】
脱塩室21は、原液を荷電モザイク膜20の一方の面に接触させて、荷電モザイク膜20に選択的に透過されるヨウ化水素をポリヨウ化水素酸である原液中から脱塩させるものである。
透析液室22は、荷電モザイク膜20の他方の面に透析液を接触させて、荷電モザイク膜20に選択的に透過されたヨウ化水素を透析液に移行させるものである。本実施の形態では、透析液として例えば純水を用いることができる。
【0015】
原液側移送ライン7aは、反応・分離器2の出口と脱塩室21の入口とを接続するラインであり、原液側移送ライン7bは、脱塩室21の出口と反応・分離器2の入口とを接続するラインである。原液側移送ライン7a、7bは、反応・分離器2とともに、脱塩室21に接続される循環経路を形成している。
ポンプ8は、原液側移送ライン7aを介して脱塩室21と接続され、原液の流れを形成するものである。
背圧弁9は、原液側移送ライン7bに取り付けられており、背圧弁9の上流側すなわち脱塩室21の圧力を一定に保つものである。
ポンプ8と背圧弁9は、脱塩室21に供給する原液を加圧する加圧手段を構成している。
【0016】
精製側移送ライン10aは、精製ヨウ化水素容器18の出口と透析液室22の入口とを接続するラインであり、精製側移送ライン10bは、透析液室22の出口と精製ヨウ化水素容器18の入口とを接続するラインである。精製側移送ライン10a、10bは、精製ヨウ化水素容器18とともに、透析液室22に接続される循環経路を形成している。
ポンプ11は、精製側移送ライン10aを介して透析液室22と接続され、透析液の流れを形成するものである。
背圧弁12は、精製側移送ライン10bに取り付けられており、背圧弁12の上流側すなわち透析液室22の圧力を一定に保つものである。
ポンプ11と背圧弁12は、透析液室22に供給する透析液を加圧する加圧手段を構成している。
【0017】
ヒータ13は脱塩室21内の原液を加熱する加熱手段として機能し、温度調節器14はヒータ13を制御して加熱温度を調節する温度制御手段として機能する。ヒータ15は透析液室22内の透析液を加熱する加熱手段として機能し、温度調節器16はヒータ15を制御して加熱温度を調節する温度制御手段として機能する。
差圧計17は、脱塩室21と透析液室22との圧力の差を確認するものである。
【0018】
精製ヨウ化水素容器18は、精製側移送ライン10a、10b間に配置され、精製されたヨウ化水素水溶液を収容することができる。
蒸留器送液ライン19は、精製されたヨウ化水素水溶液を、精製ヨウ化水素容器18から抜き取り、蒸留器に送るラインである。
【0019】
反応・分離器2に、SO供給ライン3aから二酸化硫黄を、HO供給ライン3bから水を、I供給ライン3cからヨウ素をそれぞれ供給し、ブンゼン反応と呼ばれる熱化学反応をさせ、ヨウ化水素及び硫酸を生成する。ヨウ素を過剰に供給することで比重の相違によりポリヨウ化水素酸と硫酸とに分離される。なお、本実施の形態では、反応・分離器2を同一の容器としているが、反応器と分離器を連絡して別々に配置し、反応器でのブンゼン反応後に分離器で分離してもよい。
分離された硫酸は、HSO移送ライン3dにより、硫酸濃縮器に送られる。SO等の未反応ガスは背圧弁4を通り排気ライン3eにより排気される。
【0020】
ポリヨウ化水素酸は、ポンプ8により加圧され原液側移送ライン7aを通って、透析部6の脱塩室21に送られる。ポリヨウ化水素酸である原液と、後述する透析液室22に送られた透析液とは、透析部6において荷電モザイク膜20を介して接触する際、原液中のヨウ化水素が荷電モザイク膜20により選択的に透過され、透析液に移行し、精製されたヨウ化水素水溶液が得られる。原液は、荷電モザイク膜20と接触した後、背圧弁9、原液側移送ライン7bを通って反応・分離器2に戻り、再び原液側移送ライン7aを通って脱塩室21に至る経路で循環され、次第にヨウ化水素が透析液に選択的に移行していく。
なお、原液の移送が容易となるため、圧力計5により確認して、反応・分離器2内の圧力を脱塩室21内よりも低い圧力にすることが好ましい。
脱塩室21と透析液室22の差圧は差圧計17により確認できる。脱塩室21と透析液室22の差圧(脱塩室21の圧力−透析液室22の圧力)は特に制限されないが、通常1〜9MPaの範囲から選ばれる。
【0021】
精製ヨウ化水素容器18内に収容された透析液は、ポンプ11により加圧され精製側移送ライン10aを通って、透析部6の透析液室22に送られ、背圧弁12、精製側移送ライン10bを通って精製ヨウ化水素容器18に戻り、再び精製側移送ライン10aを通って透析液室22に至る経路で循環される。このようにして、荷電モザイク膜20を介して次第にヨウ化水素が原液から透析液に選択的に移行し、精製されたヨウ化水素水溶液が得られる。
精製されたヨウ化水素水溶液は蒸留器送液ライン19により蒸留器へ送られる。
【0022】
なお、脱塩室21内の原液は、温度調節器14により制御されたヒータ13によって設定温度に保たれる。透析液室22内の透析液は、温度調節器16により制御されたヒータ15によって設定温度に保たれる。脱塩室21内の原液、及び透析液室22内の透析液の温度は、通常0〜130℃の範囲から選ばれる。
【0023】
本実施形態のヨウ化水素の精製装置1によれば、原液中から透析液中にヨウ化水素を選択的に移行させることができるので、精製されたヨウ化水素水溶液を得ることが可能であり、これにより水素の製造効率を向上させることができる。SI法による水素の製造に際して、ブンゼン反応により生成し、分離されたポリヨウ化水素酸中には硫酸が少量(通常1〜4%程度)混入している。この不純物の硫酸はヨウ化水素と反応式(1)、(2)で示す反応をし、ブンゼン反応により生成されたヨウ化水素を消費するため、ポリヨウ化水素酸中の不純物の硫酸は水素製造効率を低下させる原因となっている。
SO+8HI→4I+4HO+HS ……(1)
SO+6HI→3I+4HO+S ……(2)
ヨウ化水素の精製装置1によれば、ポリヨウ化水素酸中に含まれる不純物の硫酸を除去することができるので、水素の製造効率を向上させることが可能である。
【0024】
また、ヨウ化水素の精製装置1によれば、ヒータ13、15及び温度調節器14、16により透析部6内の原液及び透析液をそれぞれ加熱することができるので、ヨウ化水素の拡散係数を増大させ、ヨウ化水素水溶液の精製を促進することが可能である。
【0025】
また、ヨウ化水素の精製装置1によれば、荷電モザイク膜の一方の面にポリヨウ化水素酸である原液を、他方の面に透析液をそれぞれ循環させ、フローさせている。そのため、荷電モザイク膜の境界面を更新することができるので、原液と透析液のヨウ化水素濃度の差が大きい状態で両者を接触させることができ、ヨウ化水素が効率的に移動し、ヨウ化水素水溶液を効率的に精製することが可能である。
【0026】
また、ヨウ化水素の精製装置1は、荷電モザイク膜を用いて脱塩しているため、電気透析のように塩類のイオン量に対応する電気エネルギーを必要とせず、ランニングコストが安く、経済的である等の利点を有している。
【0027】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係るヨウ化水素の濃縮装置25の構成および流体の流れを概略的に示す図であり、図1に共通する部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0028】
図2に示すように、本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置25は、反応・分離器2と、SO供給ライン3aと、HO供給ライン3bと、I供給ライン3cと、HSO移送ライン3dと、排気ライン3eと、透析部6と、差圧計17と、原液移送ライン26と、バルブ27、32、38、40と、原液側タンク28と、原液側移送ライン29a、29bと、ポンプ30、35と、背圧弁31、36と、濃縮側タンク33と、濃縮側移送ライン34a、34bと、蒸留器送液ライン37と、原液戻しライン39と、透析液移送ライン41とを備えている。
【0029】
本実施の形態では、脱塩処理前において原液(ポリヨウ化水素酸)と実質的に同じ組成の透析液(ポリヨウ化水素酸)を使用し、ヨウ化水素の透過性が大きい荷電モザイク膜20を用いて、透析しヨウ化水素を濃縮している。本実施の形態では、脱塩室21と透析液室22との圧力差を、ヨウ化水素が荷電モザイク膜20を透過する駆動力としている。
【0030】
原液移送ライン26は、反応・分離器2で生成・分離されたポリヨウ化水素酸を原液側タンク28に供給するラインである。
原液側タンク28は、原液移送ライン26と接続され、反応・分離器2で生成、分離されたポリヨウ化水素酸である原液を収容することができる。また、原液側タンク28は、原液側移送ライン29a、29b間に配置されている。
【0031】
原液側移送ライン29aは、原液側タンク28の出口と脱塩室21の入口とを接続するラインであり、原液側移送ライン29bは、脱塩室21の出口と原液側タンク28の入口とを接続するラインである。原液側移送ライン29a、29bは、原液側タンク28とともに、脱塩室21に接続される循環経路を形成している。
ポンプ30は、原液側移送ライン29aを介して脱塩室21と接続され、原液の流れを形成するものである。
背圧弁31は、原液側移送ライン29bに取り付けられており、背圧弁31の上流側すなわち脱塩室21の圧力を一定に保つものである。
ポンプ30と背圧弁31は、脱塩室21に供給する原液を加圧する加圧手段を構成している。
【0032】
透析液移送ライン41は、反応・分離器2で生成・分離されたポリヨウ化水素酸を濃縮側タンク33に供給するラインである。
濃縮側タンク33は、反応・分離器2と接続され、反応・分離器2で生成、分離されたポリヨウ化水素酸を透析液として収容することができる。また、濃縮側タンク33は、濃縮側移送ライン34a、34b間に配置され、ヨウ化水素が濃縮されたポリヨウ化水素酸を収容することができる。
【0033】
濃縮側移送ライン34aは、濃縮側タンク33の出口と透析液室22の入口とを接続するラインであり、濃縮側移送ライン34bは、透析液室22の出口と濃縮側タンク33の入口とを接続するラインである。濃縮側移送ライン34a、34bは、濃縮側タンク33とともに、透析液室22に接続される循環経路を形成している。本実施の形態では、透析液として、反応・分離器2から供給され、脱塩処理前において原液と実質的に同じ組成のポリヨウ化水素酸を用いている。
ポンプ35は、濃縮側移送ライン34aを介して透析液室22と接続され、透析液の流れを形成するものである。
背圧弁36は、濃縮側移送ライン34bに取り付けられており、背圧弁36の上流側すなわち透析液室22の圧力を一定に保つものである。
ポンプ35と背圧弁36は、透析液室22に供給する透析液を加圧する加圧手段を構成している。
【0034】
蒸留器送液ライン37は、ヨウ化水素の濃縮されたポリヨウ化水素酸(透析液)を、濃縮側タンク33から抜き取り、蒸留器に送るラインである。
原液戻しライン39は、ヨウ化水素が脱塩された原液を原液側タンク28から反応・分離器2に戻すことができるラインである。
【0035】
反応・分離器2に、SO供給ライン3aから二酸化硫黄を、HO供給ライン3bから水を、I供給ライン3cからヨウ素をそれぞれ供給し、ブンゼン反応と呼ばれる熱化学反応をさせ、ヨウ化水素及び硫酸を生成する。ヨウ素を過剰に供給することで比重の相違によりポリヨウ化水素酸と硫酸とに分離される。なお、本実施の形態では、反応・分離器2を同一の容器としているが、反応器と分離器を連絡して別々に配置し、反応器でのブンゼン反応後に分離器で分離してもよい。
分離された硫酸は、HSO移送ライン3dにより、硫酸濃縮器に送られる。SO等の未反応ガスは背圧弁4を通り排気ライン3eにより排気される。
【0036】
反応・分離器2中において分離されたポリヨウ化水素酸は、バルブ27を通って原液側タンク28に移送される。原液側タンク28中のポリヨウ化水素酸(原液)は、ポンプ30により加圧され原液側移送ライン30aを通って、透析部6の脱塩室21に送られる。ポリヨウ化水素酸である原液と、後述する透析液室22に送られたポリヨウ化水素酸である透析液とは、透析部6において荷電モザイク膜20を介して接触する。脱塩室21と透析液室22との差圧を駆動力として、原液中のヨウ化水素が荷電モザイク膜20を透過して、透析液に移行し、ヨウ化水素の濃縮されたポリヨウ化水素酸(透析液)が得られる。原液は、荷電モザイク膜20と接触した後、背圧弁31、原液側移送ライン29bを通って原液側タンク28に戻り、再び原液側移送ライン29aを通って脱塩室21に至る経路で循環され、次第に原液中のヨウ化水素が透析液に移行していく。
【0037】
また、反応・分離器2中において分離されたポリヨウ化水素酸は、バルブ32を通って濃縮側タンク33に移送される。濃縮側タンク33に収容されたポリヨウ化水素酸(透析液)は、ポンプ35により加圧され濃縮側移送ライン34aを通って、透析部6の透析液室22に送られ、背圧弁36、濃縮側移送ライン34bを通って濃縮側タンク33に戻り、再び濃縮側移送ライン34aを通って透析液室22に至る経路で循環されている。このようにして、荷電モザイク膜20を介して次第にヨウ化水素が原液から透析液に移行し、ヨウ化水素の濃縮された透析液が得られる。
【0038】
ここで、脱塩室21と透析液室22の差圧は差圧計17により確認できる。透析液室22の圧力が、脱塩室21の圧力より低くなるように背圧弁31、36で制御する。脱塩室21と透析液室22の差圧(脱塩室21の圧力−透析液室22の圧力)は、原液及び透析液中のヨウ化水素の初期濃度(透析(脱塩)処理前の濃度)等によっても異なるが、通常1〜9MPaであることが好ましい。1MPa未満であると、ヨウ化水素の濃縮が不十分となるおそれがあり、9MPaを超えると、荷電モザイク膜20が破損するおそれがある。
【0039】
ヨウ化水素の濃縮された透析液は、濃縮側タンク33から蒸留器送液ライン37によりバルブ38を通って、蒸留器へ送られる。
原液側タンク28中のヨウ化水素が脱塩された原液は、原液戻しライン39によりバルブ40を通って、反応・分離器2へ送ることができる。
【0040】
本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置25によれば、圧力透析により原液中から透析液中にヨウ化水素を移行させることができるので、ヨウ化水素の濃縮された透析液を得ることが可能であり、SI法による水素の製造効率を向上させることができる。ヨウ化水素水溶液やポリヨウ化水素酸は共沸現象を生じるので、一般的な蒸留では純度の高いヨウ化水素ガスを回収することがでず、水素製造効率を低下させる。このため、高純度のヨウ化水素を得るには、共沸濃度(HI:56〜57wt%)以上に濃縮して蒸留を行う必要がある。
【0041】
また、ヨウ化水素の濃縮装置25によれば、荷電モザイク膜20の一方の面にポリヨウ化水素酸である原液を、他方の面にポリヨウ化水素酸である透析液をそれぞれ循環させ、フローさせている。そのため、荷電モザイク膜20の境界面が更新されるため、ヨウ化水素が効率的に移動でき、ヨウ化水素の濃縮されたポリヨウ化水素酸(透析液)を効率的に得ることが可能である。
【0042】
また、ヨウ化水素の濃縮装置25は、荷電モザイク膜20を用いて脱塩しているため、電気透析のように塩類のイオン量に対応する電気エネルギーを必要とせず、ランニングコストが安く、経済的である等の利点を有している。
【0043】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態に係るヨウ化水素の濃縮装置45の構成および流体の流れを概略的に示す図であり、図2に共通する部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0044】
図3に示すように、本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置45は、反応・分離器2と、SO供給ライン3aと、HO供給ライン3bと、I供給ライン3cと、HSO移送ライン3dと、排気ライン3eと、透析部6、6aと、差圧計17、17aと、原液移送ライン26と、バルブ27、32、46、47、49、50、52と、原液側タンク28、28aと、原液側移送ライン29a、29b、29c、29dと、ポンプ30、30a、35、35aと、背圧弁31、31a、36、36aと、濃縮側タンク33、33aと、濃縮側移送ライン34a、34b、34c、34dと、透析液移送ライン41と、二段目原液移送ライン48と、二段目透析液移送ライン51と、蒸留器送液ライン53とを備えている。
【0045】
本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置45は、荷電モザイク膜20と脱塩室21と透析液室22とで構成される透析部6と、荷電モザイク膜20aと脱塩室21aと透析液室22aとで構成される透析部6aとを直列に二段に配置した点で、第2の実施形態とは相違している。すなわち、本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置45は透析部6、6aを直列に多段に配置しているため、第2の実施形態でのヨウ化水素の濃縮装置25と比べて、1つの透析部6、6a当たりの荷電モザイク膜20、20a間の差圧を小さくできるので荷電モザイク膜20、20aの破損を有効に防止することができる。また、第2の実施形態でのヨウ化水素の濃縮装置25と比べて、ヨウ化水素をさらに高濃度に濃縮をすることも可能である。なお、本実施の形態では、透析部6と透析部6aとは、同一の構造のものを用いている。
【0046】
二段目原液移送ライン48は、濃縮側タンク33に収容された、一段目の透析部6でヨウ化水素の濃縮されたポリヨウ化水素酸を、原液側タンク28aに供給するラインである。
原液側タンク28aは、二段目原液移送ライン48と接続され、一段目の透析部6でヨウ化水素が濃縮されたポリヨウ化水素酸を、二段目での原液として収容することができる。また、原液側タンク28aは、原液側移送ライン29c、29d間に配置されている。
【0047】
原液側移送ライン29cは、原液側タンク28aの出口と脱塩室21aの入口とを接続するラインであり、原液側移送ライン29dは、脱塩室21aの出口と原液側タンク28aの入口とを接続するラインである。原液側移送ライン29c、29dは、原液側タンク28aとともに、脱塩室21aに接続される循環経路を形成している。本実施の形態では、二段目の透析部6aで用いる原液として、一段目の透析部6での透析により得られた、ヨウ化水素が濃縮されたポリヨウ化水素酸を使用している。
ポンプ30aは、原液側移送ライン29cを介して脱塩室21aと接続され、原液の流れを形成するものである。
背圧弁31aは、原液側移送ライン29dに取り付けられており、背圧弁31aの上流側すなわち脱塩室21aの圧力を一定に保つものである。
ポンプ30aと背圧弁31aは、脱塩室21aに供給する原液を加圧する加圧手段を構成している。
【0048】
二段目透析液移送ライン51は、濃縮側タンク33に収容された、一段目の透析部6でヨウ化水素の濃縮されたポリヨウ化水素酸を、濃縮側タンク33aに供給するラインである。
濃縮側タンク33aは、濃縮側タンク33と接続され、一段目の透析部6でヨウ化水素が濃縮されたポリヨウ化水素酸を二段目での透析液として収容することができる。また、濃縮側タンク33aは、濃縮側移送ライン34c、34d間に配置され、二段目の透析部6aでヨウ化水素が濃縮されたポリヨウ化水素酸を収容することができる。
【0049】
濃縮側移送ライン34cは、濃縮側タンク33aの出口と透析液室22aの入口とを接続するラインであり、濃縮側移送ライン34dは、透析液室22aの出口と濃縮側タンク33aの入口とを接続するラインである。濃縮側移送ライン34c、34dは、濃縮側タンク33aとともに、透析液室22aに接続される循環経路を形成している。本実施の形態では、二段目の透析部6aで用いる透析液として、一段目の透析部6での透析により得られた、ヨウ化水素が濃縮されたポリヨウ化水素酸を使用している。
ポンプ35aは、濃縮側移送ライン34cを介して透析液室22aと接続され、透析液の流れを形成するものである。
背圧弁36aは、濃縮側移送ライン34dに取り付けられており、背圧弁36aの上流側すなわち透析液室22aの圧力を一定に保つものである。
ポンプ35aと背圧弁36aは、透析液室22aに供給する透析液を加圧する加圧手段を構成している。
【0050】
蒸留器送液ライン53は、透析部6aにおいてヨウ化水素の濃縮されたポリヨウ化水素酸を、濃縮側タンク33aから抜き取り、蒸留器に送るラインである。
なお、透析部の段数は、図3に示す2段(透析部6、6a)に限定されず、2以上の任意の段数にすることができる。
【0051】
一段目の透析部6においてヨウ化水素が濃縮され、濃縮側タンク33に収容されたポリヨウ化水素酸は、バルブ47を通って二段目原液移送ライン48により原液側タンク28aに移送される。原液側タンク28a中のポリヨウ化水素酸(二段目での原液、以下原液と称する)は、ポンプ30aにより加圧され原液側移送ライン30cを通って、透析部6aの脱塩室21aに送られる。原液と、後述する透析液室22aに送られたポリヨウ化水素酸である透析液とは、透析部6aにおいて荷電モザイク膜20aを介して接触する。脱塩室21aと透析液室22aとの差圧を駆動力として、原液中のヨウ化水素が荷電モザイク膜20aを透過して、透析液中に移行し、ヨウ化水素の濃縮されたポリヨウ化水素酸が得られる。原液は、荷電モザイク膜20aと接触した後、背圧弁31a、原液側移送ライン29dを通って原液側タンク28aに戻り、再び原液側移送ライン29cを通って脱塩室21aに至る経路で循環され、次第に原液中のヨウ化水素が透析液中に移行していく。
【0052】
また、一段目の透析部6においてヨウ化水素が濃縮され、濃縮側タンク33に収容されたポリヨウ化水素酸は、バルブ50を通って二段目透析液移送ライン51により濃縮側タンク33aに移送される。濃縮側タンク33aに収容されたポリヨウ化水素酸(二段目での透析液、以下透析液と称する)は、ポンプ35aにより加圧され濃縮側移送ライン34cを通って、透析部6aの透析液室22aに送られ、背圧弁36a、濃縮側移送ライン34dを通って濃縮側タンク33aに戻り、再び濃縮側移送ライン34cを通って透析液室22aに至る経路で循環されている。このようにして、荷電モザイク膜20aを介して次第にヨウ化水素が原液中から透析液中に移行し、ヨウ化水素の濃縮された透析液が得られる。
【0053】
ここで、脱塩室21aと透析液室22aの差圧は差圧計17aにより確認できる。透析液室22aの圧力が、脱塩室21aの圧力より低くなるように背圧弁31a、36aで制御する。
脱塩室21と透析液室22の差圧(脱塩室21の圧力−透析液室22の圧力)や、脱塩室21aと透析液室22aの差圧(脱塩室21aの圧力−透析液室22aの圧力)は、原液及び透析液中のヨウ化水素の初期濃度(透析処理前の濃度)等によっても異なるが、通常、それぞれ1〜9MPaであることが好ましい。1MPa未満であると、ヨウ化水素の濃縮が不十分となるおそれがあり、9MPaを超えると、荷電モザイク膜20が破損するおそれがあるからである。
【0054】
透析部6aによってヨウ化水素の濃縮された透析液は、濃縮側タンク33aから蒸留器送液ライン53によりバルブ52を通って、蒸留器へ送られる。
原液側タンク28、28a中のヨウ化水素が脱塩された原液は、バルブ46、49を通って、それぞれ排出される。
【0055】
以上のように、本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置45においても、荷電モザイク膜20、20aと脱塩室21、21aと透析液室22、22aとで構成される透析部6、6aを有している。また、本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置45は、脱塩室21に接続される循環経路(29a、29b、28)、透析液室22に接続される循環経路(34a、34b、33)、脱塩室21aに接続される循環経路(29c、29d、28a)、透析液室22aに接続される循環経路(34c、34d、33a)を有している。そのため、第2の実施形態のヨウ化水素の濃縮装置25と同様な効果を得ることができる。
【0056】
ヨウ化水素の濃縮装置25と同様な効果に加えて、本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置45は、透析部6、6aを直列に多段に配置している。そのため、第2の実施形態でのヨウ化水素の濃縮装置25と比べて、1つの透析部6、6a当たりの荷電モザイク膜20、20a間の差圧を小さくできるので荷電モザイク膜20、20aの破損を有効に防止することができる。また、本実施形態でのヨウ化水素の濃縮装置45における荷電モザイク膜20、20a間の差圧の合計を、第2の実施形態でのヨウ化水素の濃縮装置25における荷電モザイク膜20の差圧よりも大きくすることにより、ヨウ化水素をさらに高濃度に濃縮することも可能である。
【0057】
(第4の実施形態)
図4は、本発明の第4の実施形態に係るヨウ化水素の濃縮装置55の構成および流体の流れを概略的に示す図であり、図2に共通する部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0058】
図4に示すように、本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置55は、反応・分離器2と、SO供給ライン3aと、HO供給ライン3bと、I供給ライン3cと、HSO移送ライン3dと、排気ライン3eと、逆浸透膜73と希釈室74と脱水室75とで構成される逆浸透膜部56と、差圧計17と、希釈液移送ライン57と、バルブ58、64、70、72と、希釈側タンク59と、希釈側移送ライン60a、60b、原液移送ライン63と、濃縮側タンク65と濃縮側移送ライン66a、66bと、ポンプ61、67と、背圧弁62、68と、蒸留器送液ライン69と、希釈液戻しライン71と、を備えている。
本実施の形態では、逆浸透膜73を用いて原液中の水(溶剤)を選択的に透過させて、水が透過された残りの原液中のヨウ化水素を濃縮している。
【0059】
逆浸透膜部56は、逆浸透膜73と希釈室74と脱水室75とを備え、逆浸透膜73によって、希釈室74と脱水室75とに仕切られている。
逆浸透膜73は、溶剤は透過するが、溶剤内に溶解されている溶質は透過し難い性質を有する。本実施の形態のように、水溶液の場合には、逆浸透膜73は水溶液中の水を選択的に透過するため、水が透過された残液は濃縮される。
逆浸透膜73は、耐食性の観点から、例えば炭素膜等を用いることが好ましい。
逆浸透膜73の孔径は、1Å〜10Åが好ましい。孔径が1Å未満であると、水の透過速度が極端に低下するおそれがあり、10Åを超えるとヨウ化水素の濃縮率が低下するおそれがある。
【0060】
希釈室74は、希釈液を逆浸透膜73の一方の面に接触させて、逆浸透膜73に選択的に透過される水を原液中から希釈水中に移行させるものである。
脱水室75は、原液を逆浸透膜73の他方の面に接触させて、選択的に原液中の水を逆浸透膜73に透過させるものである。
本実施の形態では、逆浸透膜73による処理前の原液及び希釈液は、分離・濃縮器2により生成、分離された、実質的に同じ組成のポリヨウ化水素酸を使用している。なお、希釈液は特に限定されるものではないが、浸透圧を小さくして逆浸透膜73間の差圧を小さくできるため、原液と希釈液の濃度差が小さいものが好ましく、本実施の形態で使用した、原液と実質的に同じ組成のポリヨウ化水素酸のように、原液と同じものがさらに好ましい。
【0061】
希釈液移送ライン57は、反応・分離器2で生成・分離されたポリヨウ化水素酸を希釈側タンク59に供給するラインである。
希釈側タンク59は、希釈液移送ライン57と接続され、反応・分離器2で生成、分離されたポリヨウ化水素酸を希釈液として収容することができる。また、希釈側タンク59は、希釈側移送ライン60a、60b間に配置されている。
【0062】
希釈側移送ライン60aは、希釈側タンク59の出口と希釈室74の入口とを接続するラインであり、希釈側移送ライン60bは、希釈室74の出口と希釈側タンク59の入口とを接続するラインである。希釈側移送ライン60a、60bは、希釈側タンク59とともに、希釈室74に接続される循環経路を形成している。
ポンプ61は、希釈側移送ライン60aを介して希釈室74と接続され、希釈液の流れを形成するものである。
背圧弁62は、希釈側移送ライン60bに取り付けられており、背圧弁62の上流側すなわち希釈室74の圧力を一定に保つものである。
ポンプ61と背圧弁62は、希釈室74に供給する希釈液を加圧する加圧手段を構成している。
【0063】
原液移送ライン63は、反応・分離器2で生成・分離されたポリヨウ化水素酸を濃縮側タンク65に供給するラインである。
濃縮側タンク65は、反応・分離器2と接続され、反応・分離器2で生成、分離されたポリヨウ化水素酸を原液として収容することができる。また、濃縮側タンク65は、濃縮側移送ライン66a、66b間に配置され、逆浸透膜73と接触してヨウ化水素が濃縮された原液を収容することができる。
【0064】
濃縮側移送ライン66aは、濃縮側タンク65の出口と脱水室75の入口とを接続するラインであり、濃縮側移送ライン66bは、脱水室75の出口と濃縮側タンク65の入口とを接続するラインである。濃縮側移送ライン66a、66bは、濃縮側タンク65とともに、脱水室75に接続される循環経路を形成している。
ポンプ67は、濃縮側移送ライン66aを介して脱水室75と接続され、原液の流れを形成するものである。
背圧弁68は、濃縮側移送ライン66bに取り付けられており、背圧弁68の上流側すなわち脱水室75の圧力を一定に保つものである。
ポンプ67と背圧弁68は、脱水室75に供給する原液を加圧する加圧手段を構成している。
【0065】
蒸留器送液ライン69は、ヨウ化水素の濃縮された原液を、濃縮側タンク65から抜き取り、蒸留器に送るラインである。
希釈液戻しライン71は、原液中の水が逆浸透膜73を透過して流入することにより希釈された希釈液を、希釈側タンク59から反応・分離器2に戻すことができるラインである。
【0066】
反応・分離器2に、SO供給ライン3aから二酸化硫黄を、HO供給ライン3bから水を、I供給ライン3cからヨウ素をそれぞれ供給し、ブンゼン反応と呼ばれる熱化学反応をさせ、ヨウ化水素及び硫酸を生成する。ヨウ素を過剰に供給することで比重の相違によりポリヨウ化水素酸と硫酸とに分離する。なお、本実施の形態では、反応・分離器2を同一の容器としているが、反応器と分離器を連絡して別々に配置し、反応器でのブンゼン反応後に分離器で分離してもよい。
硫酸は、HSO移送ライン3dにより、硫酸濃縮器に送られる。SO等の未反応ガスは背圧弁4を通り排気ライン3eにより排気される。
【0067】
反応・分離器2中において分離されたポリヨウ化水素酸は、希釈液移送ライン57によりバルブ58を通って希釈側タンク59に移送される。希釈側タンク59中のポリヨウ化水素酸(希釈液)は、ポンプ61により加圧され希釈側移送ライン60aを通って、逆浸透膜部56の希釈室74に送られる。ポリヨウ化水素酸である希釈液と、後述する脱水室75に送られたポリヨウ化水素酸である原液とは、逆浸透膜部56において逆浸透膜73を介して接触する。希釈室74と脱水室75との差圧を駆動力として、原液中の水が逆浸透膜73を透過して、希釈液に移行し、ヨウ化水素の濃縮された原液が得られる。希釈液は、逆浸透膜73と接触した後、背圧弁62、希釈側移送ライン60bを通って希釈側タンク59に戻り、再び希釈側移送ライン60aを通って逆浸透膜部56に至る経路で循環され、次第に原液中の水が希釈液に移行していく。
【0068】
また、反応・分離器2中において分離されたポリヨウ化水素酸は、原液移送ライン63によりバルブ64を通って濃縮側タンク65に移送される。濃縮側タンク65に収容されたポリヨウ化水素酸(原液)は、ポンプ67により加圧され濃縮側移送ライン66aを通って、逆浸透膜部56の脱水室75に送られ、背圧弁68、濃縮側移送ライン66bを通って濃縮側タンク65に戻り、再び濃縮側移送ライン66aを通って逆浸透膜部56に至る経路で循環されている。このようにして、逆浸透膜73を介して次第に水が原液中から希釈液中に移行し、ヨウ化水素の濃縮された原液が得られる。
【0069】
ここで、希釈室74と脱水室75の差圧は差圧計17により確認できる。希釈室74の圧力が、脱水室75の圧力より低くなるように背圧弁62、68で制御する。
逆浸透法により濃縮する場合、浸透圧は下記(3)式で与えられる。
π=1.12×(T+273)×Σmi …(3)
π:浸透圧(psi)
T:水温(℃)
Σmi:溶解物質の総mol濃度
例えば温度Tが20℃の場合に、(3)式より求められたヨウ化水素の濃度と浸透圧の関係を表1に示す。表1から明らかなように、例えば、ヨウ化水素水溶液を共沸濃度(57%)から87%まで濃縮する場合には、浸透圧の差は9.1MPaとなっている。したがって、逆浸透膜73間の差圧(脱水室75の圧力−希釈室74の圧力)を9.1MPaより大きくすることにより原液中のヨウ化水素を87%まで濃縮することができる。
【0070】
【表1】

【0071】
ヨウ化水素の濃縮された原液は、濃縮側タンク65から蒸留器送液ライン69によりバルブ70を通って、蒸留器へ送られる。
希釈側タンク59中の原液の水が移行した希釈液は、希釈液戻しライン72によりバルブ71を通って、反応・分離器2へ送ることができる。
【0072】
本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置55によれば、逆浸透膜73を用いた逆浸透法により原液中から希釈液中に水を移行させることができるので、ヨウ化水素の濃縮された原液を得ることが可能であり、SI法による水素の製造効率を向上させることができる。ヨウ化水素水溶液やポリヨウ化水素酸は共沸現象を生じるので、一般的な蒸留では純度の高いヨウ化水素ガスを回収することがでず、水素製造効率を低下させる。このため、高純度のヨウ化水素を得るには、共沸濃度(HI:56〜57wt%)以上で蒸留を行う必要があるからである。
【0073】
また、ヨウ化水素の濃縮装置55によれば、逆浸透膜73の一方の面に希釈液を、他方の面に透析液をそれぞれ循環させ、フローさせている。そのため、逆浸透膜73の境界面が更新されるため、水が効率的に移動でき、ヨウ化水素の濃縮されたポリヨウ化水素酸を効率的に得ることが可能である。
【0074】
また、ヨウ化水素の濃縮装置55は、逆浸透膜73を用いて脱水しているため、電気透析のように塩類のイオン量に対応する電気エネルギーを必要とせず、ランニングコストが安く、経済的である等の利点を有している。
【0075】
(第5の実施形態)
図5は、本発明の第5の実施形態に係るヨウ化水素の濃縮装置80の構成および流体の流れを概略的に示す図であり、図4に共通する部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0076】
図5に示すように、本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置80は、反応・分離器2と、SO供給ライン3aと、HO供給ライン3bと、I供給ライン3cと、HSO移送ライン3dと、排気ライン3eと、逆浸透膜部56、56aと、差圧計17、17bと、希釈液移送ライン57と、バルブ58、81、82、84、85、87と、希釈側タンク59、59aと、希釈側移送ライン60a〜60dと、原液移送ライン63、ポンプ61、61a、67、67aと、背圧弁62、62a、68、68aと、濃縮側タンク65、65aと、濃縮側移送ライン66a〜66dと、二段目希釈液移送ライン83と、二段目原液移送ライン86と、蒸留器送液ライン88とを備えている。
【0077】
本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置80は、逆浸透膜73と希釈室74と脱水室75とで構成される逆浸透膜部56と、逆浸透膜73aと希釈室74aと脱水室75aとで構成される逆浸透膜部56aとを直列に二段に配置した点で、第4の実施形態とは相違している。すなわち、本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置80は逆浸透膜部56、56aを直列に二段に配置しているため、第4の実施形態でのヨウ化水素の濃縮装置55と比べて、1つの逆浸透膜部56、56a当たりの逆浸透膜73、73a間の差圧を小さくできるので、浸透圧よりも低い圧力でヨウ化水素を濃縮し、逆浸透膜73、73aの破損を有効に防止することができる。なお、本実施の形態では、逆浸透膜部56と逆浸透膜部56aとは、同一の構造のものを用いている。
【0078】
二段目希釈液移送ライン83は、濃縮側タンク65に収容された、一段目の逆浸透膜部56でヨウ化水素の濃縮されたポリヨウ化水素酸を、希釈側タンク59aに供給するラインである。
希釈側タンク59aは、二段目希釈液移送ライン83と接続され、一段目の逆浸透膜部56でヨウ化水素が濃縮されたポリヨウ化水素酸を、二段目での希釈液として収容することができる。また、希釈側タンク59aは、希釈側移送ライン60c、60d間に配置されている。
【0079】
希釈側移送ライン60cは、希釈側タンク59aの出口と希釈室74aの入口とを接続するラインであり、希釈側移送ライン60dは、希釈室74aの出口と希釈側タンク59aの入口とを接続するラインである。希釈側移送ライン60c、60dは、希釈側タンク59aとともに、希釈室74aに接続される循環経路を形成している。本実施の形態では、二段目の逆浸透膜部56aで用いる希釈液として、一段目の逆浸透膜部56での処理により得られた、ヨウ化水素が濃縮されたポリヨウ化水素酸(ヨウ化水素が濃縮された一段目での原液)を使用している。
ポンプ61aは、希釈側移送ライン60cを介して希釈室74aと接続され、希釈液の流れを形成するものである。
背圧弁62aは、希釈側移送ライン60dに取り付けられており、背圧弁62aの上流側すなわち希釈室74aの圧力を一定に保つものである。
ポンプ61aと背圧弁62aは、希釈室74aに供給する希釈液を加圧する加圧手段を構成している。
【0080】
二段目原液移送ライン86は、濃縮側タンク65に収容された、一段目の逆浸透膜部56でヨウ化水素の濃縮されたポリヨウ化水素酸を、濃縮側タンク65aに供給するラインである。
濃縮側タンク65aは、濃縮側タンク65と接続され、一段目の逆浸透膜部56でヨウ化水素が濃縮されたポリヨウ化水素酸を、二段目での原液として収容することができる。また、濃縮側タンク65aは、濃縮側移送ライン66c、66d間に配置され、二段目の逆浸透膜部56aでヨウ化水素が濃縮されたポリヨウ化水素酸を収容することができる。
【0081】
濃縮側移送ライン66cは、濃縮側タンク65aの出口と脱水室75aの入口とを接続するラインであり、濃縮側移送ライン66dは、脱水室75aの出口と濃縮側タンク65aの入口とを接続するラインである。濃縮側移送ライン66c、66dは、濃縮側タンク65aとともに、脱水室75aに接続される循環経路を形成している。本実施の形態では、二段目の逆浸透膜部56aで用いる原液として、一段目の逆浸透膜部56での処理により得られた、ヨウ化水素が濃縮されたポリヨウ化水素酸(ヨウ化水素が濃縮された一段目での原液)を使用している。
ポンプ67aは、濃縮側移送ライン66cを介して脱水室75aと接続され、原液の流れを形成するものである。
背圧弁68aは、濃縮側移送ライン66dに取り付けられており、背圧弁68aの上流側すなわち脱水室75aの圧力を一定に保つものである。
ポンプ67aと背圧弁68aは、脱水室75aに供給する原液を加圧する加圧手段を構成している。
【0082】
蒸留器送液ライン88は、逆浸透膜部56aでの処理によりヨウ化水素が濃縮されたポリヨウ化水素酸を、濃縮側タンク65aから抜き取り、蒸留器に送るラインである。
なお、逆浸透膜部の段数は、図5に示す2段(逆浸透膜部56、56a)に限定されず、2以上の任意の段数にすることができる。
【0083】
一段目の逆浸透膜部56での処理によりヨウ化水素が濃縮され、濃縮側タンク65に収容されたポリヨウ化水素酸は、バルブ82を通って二段目希釈液移送ライン83により希釈側タンク59aに移送される。希釈側タンク59a中のポリヨウ化水素酸(二段目での希釈液、以下希釈液と称する)は、ポンプ61aにより加圧され希釈側移送ライン60cを通って、逆浸透膜部56aの希釈室73aに送られる。希釈液と、後述する脱水室75aに送られた原液とは、逆浸透膜部56aにおいて逆浸透膜74aを介して接触する。脱水室75aと希釈室74aとの差圧を駆動力として、原液中の水が逆浸透膜73aを透過して、希釈液に移行し、ヨウ化水素の濃縮されたポリヨウ化水素酸が得られる。原液は、逆浸透膜73aと接触した後、背圧弁62a、希釈側移送ライン60dを通って希釈側タンク59aに戻り、再び希釈側移送ライン60cを通って希釈室73aに至る経路で循環され、次第に原液中の水が希釈液に移行していく。
【0084】
また、一段目の逆浸透膜部56においてヨウ化水素が濃縮され、濃縮側タンク65に収容されたポリヨウ化水素酸は、バルブ85を通って二段目原液移送ライン86により濃縮側タンク65aに移送される。濃縮側タンク65aに収容されたポリヨウ化水素酸(二段目での原液、以下原液と称する)は、ポンプ67aにより加圧され濃縮側移送ライン66cを通って、逆浸透膜部56aの脱水室75aに送られ、背圧弁68a、濃縮側移送ライン66dを通って濃縮側タンク65aに戻り、再び濃縮側移送ライン66cを通って脱水室75aに至る経路で循環されている。このようにして、逆浸透膜73aを介して次第に水が原液中から透析液中に移行し、ヨウ化水素の濃縮された原液が得られる。
【0085】
ここで、希釈室74aと脱水室75aの差圧は差圧計17bにより確認できる。希釈室74aの圧力が、脱水室75aの圧力より低くなるように背圧弁62a、68aで制御する。
【0086】
逆浸透膜部56aによってヨウ化水素の濃縮された原液は、濃縮側タンク65aから蒸留器送液ライン88によりバルブ87を通って、蒸留器へ送られる。
希釈側タンク59、59a中の原液の水が移行して希釈された希釈液は、バルブ81、84を通って、それぞれ排出される。
【0087】
以上のように、本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置80においても、逆浸透膜73、73aと希釈室74、74aと脱水室75、75aとで構成される逆浸透膜部56、56aを有している。また、本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置80は、希釈室74に接続される循環経路(60a、60b、59)、脱水室75に接続される循環経路(66a、66b、75)、希釈室74aに接続される循環経路(60c、60d、59a)、脱水室75aに接続される循環経路(66c、66d、65a)を有している。そのため、本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置80は、第4の実施形態のヨウ化水素の濃縮装置55と同様な効果を得ることができる。
【0088】
ヨウ化水素の濃縮装置55と同様な効果に加えて、本実施形態のヨウ化水素の濃縮装置80は、逆浸透膜部56、56aを直列に多段に配置している。そのため、第4の実施形態でのヨウ化水素の濃縮装置55と比べて、1つの逆浸透膜73、73a当たりの逆浸透膜73、73a間の差圧を小さくして、浸透圧よりも低い圧力でヨウ化水素を濃縮できるので、逆浸透膜73、73aの破損を有効に防止することができる。
【実施例】
【0089】
次に、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1のヨウ化水素の精製装置1を用いて、荷電モザイク膜20によるヨウ化水素の精製処理を行った。有効膜面積1cmの荷電モザイク膜20(大日精化工業社製、商品名モザイク荷電膜)を用いた。原液として、ヨウ化水素が0.359mol、ヨウ素が0.266mol、硫酸が0.067mol含まれている水溶液を0.05L使用し、透析液には、純水を0.05L使用した。原液の流速を0.007L/分、透析液の流速を0.007L/分とし、脱塩室21と透析液室22との圧力差を10kPaとした。図6は、ヨウ化水素の精製装置1により透析した場合における、原液中の硫酸の全モル数、及び透析液中の硫酸の全モル数の経時変化を示す図である。図7は、ヨウ化水素の精製装置1により透析した場合における、原液中のヨウ化水素の全モル数、及び透析液中のヨウ化水素の全モル数の経時変化を示す図である。図8は、ヨウ化水素の精製装置1により透析した場合における、原液中のヨウ素の全モル数、及び透析液中のヨウ素の全モル数の経時変化を示す図である。
【0090】
図6、7、8から明らかなように、原液から透析液への移動速度は、硫酸及びヨウ素が遅く、ヨウ化水素が速い。特に、不純物の硫酸はほぼ完全に除去されており、ヨウ化水素が精製されていることが確認できた。
【0091】
(実施例2)
図2のヨウ化水素の濃縮装置25を用いて、荷電モザイク膜20によるヨウ化水素の濃縮処理を行った。有効膜面積12.6cmの荷電モザイク膜20(大日精化工業社製、商品名モザイク荷電膜)を用いた。原液(ポリヨウ化水素酸)と透析液(ポリヨウ化水素酸)は実質的に同一の組成の水溶液を使用し、ヨウ化水素濃度4.23×10−3mol/L、ヨウ素濃度0.33×10−3mol/Lであった。原液の流速を0.007L/分、透析液の流速を0.007L/分とし、脱塩室21と透析液室22との圧力差を560kPaとし、透析時間は、8時間であった。図9は、ヨウ化水素の濃縮装置25により圧力透析をした場合における、原液中のヨウ化水素濃度、及び透析液中のヨウ化水素濃度を示す図である。
【0092】
図9から明らかなように、圧力透析により原液のヨウ化水素濃度は低くなり、透析液のヨウ化水素濃度は高くなっている。原液中のヨウ化水素が、荷電モザイク膜20を透過して透析液中に移行し、ヨウ化水素が濃縮されていることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るヨウ化水素の精製装置の構成および流体の流れを概略的に示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るヨウ化水素の濃縮装置の構成および流体の流れを概略的に示す図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るヨウ化水素の濃縮装置の構成および流体の流れを概略的に示す図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係るヨウ化水素の濃縮装置の構成および流体の流れを概略的に示す図である。
【図5】本発明の第5の実施形態に係るヨウ化水素の濃縮装置の構成および流体の流れを概略的に示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るヨウ化水素の精製装置により透析した場合における、原液中の硫酸の全モル数、及び透析液中の硫酸の全モル数の経時変化を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るヨウ化水素の精製装置により透析した場合における、原液中のヨウ化水素の全モル数、及び透析液中のヨウ化水素の全モル数の経時変化を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るヨウ化水素の精製装置により透析した場合における、原液中のヨウ素の全モル数、及び透析液中のヨウ素の全モル数の経時変化を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るヨウ化水素の濃縮装置により圧力透析をした場合における、原液中のヨウ化水素濃度、及び透析液中のヨウ化水素濃度を示す図である。
【符号の説明】
【0094】
1…ヨウ化水素の精製装置、2…反応・分離器、3a…SO供給ライン、3b…HO供給ライン、3c…I供給ライン、3d…HSO移送ライン、3e…排気ライン、4,9,12,31,31a,36,36a,62,62a,68,68a…背圧弁、5…圧力計、6,6a…透析部、7a,7b…原液移送ライン、8,11,30,30a,35,35a,61,61a,67,67a…ポンプ、10a,10b…精製側移送ライン、13,15…ヒータ、14,16…温度調節器、17,17a,17b…差圧計、18…精製ヨウ化水素容器、19,39,53,69,88…蒸留器送液ライン、20,20a…荷電モザイク膜、21,21a…脱塩室、22,22a…透析液室、25,45,55,80…ヨウ化水素の濃縮装置、26…原液移送ライン、27,32,38,40,46,47,49,50,52,58,64,70,72,81,82,84,85,87…バルブ、28、28a…原液側タンク、29a〜29d…原液側移送ライン、33,33a…濃縮側タンク、34a〜34d…濃縮側移送ライン、48…二段目原液移送ライン、51…二段目透析液移送ライン、56,56a…逆浸透膜部、57…希釈液移送ライン、59,59a…希釈側タンク、60a〜60d…希釈側移送ライン、63…原液移送ライン、65,65a…濃縮側タンク、66a〜66d…濃縮側移送ライン、71…希釈液戻しライン、73…逆浸透膜、74…希釈室、75…脱水室、83…二段目希釈液移送ライン、86…二段目原液移送ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素、二酸化硫黄、及び水を熱化学的に分解してヨウ化水素及び硫酸を生成する反応手段と、
前記反応手段で生成されたヨウ化水素及び硫酸を、ヨウ化水素及び不純物の硫酸を含む原液と、硫酸とに分離する分離手段と、
荷電モザイク膜と、
前記分離手段から排出された前記原液を前記荷電モザイク膜の一方の面に接触させて、前記荷電モザイク膜に選択的に透過される前記ヨウ化水素を前記原液中から脱塩させる脱塩室と、
透析液を前記荷電モザイク膜の他方の面に接触させて、前記荷電モザイク膜に選択的に透過された前記ヨウ化水素を前記透析液に移行させる透析液室と、
を具備することを特徴とする水素製造用のヨウ化水素の精製装置。
【請求項2】
前記脱塩室内の前記原液を加熱する第1の加熱手段と、
前記第1の加熱手段を制御する第1の温度制御手段と、
前記透析液室内の前記透析液を加熱する第2の加熱手段と、
前記第2の加熱手段を制御する第2の温度制御手段と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の水素製造用のヨウ化水素の精製装置。
【請求項3】
前記脱塩室に接続され、前記脱塩室内の前記原液を循環させるための第1の循環経路と、
前記第1の循環経路及び前記脱塩室内に前記原液を循環させる第1のポンプと、
前記透析液室に接続され、前記透析液室内の前記透析液を循環させるための第2の循環経路と、
前記第2の循環経路及び前記透析液室内に前記透析液を循環させる第2のポンプと、
をさらに具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の水素製造用のヨウ化水素の精製装置。
【請求項4】
ヨウ素、二酸化硫黄、及び水を熱化学的に分解してヨウ化水素及び硫酸を生成する反応手段と、
前記反応手段で生成されたヨウ化水素及び硫酸を、ヨウ化水素を含む原液と、硫酸とに分離する分離手段と、
荷電モザイク膜と、
前記分離手段から排出された前記原液を前記荷電モザイク膜の一方の面に接触させて、前記荷電モザイク膜に透過される前記ヨウ化水素を前記原液中から脱塩させる脱塩室と、
前記脱塩前においてヨウ化水素の濃度が前記原液と実質的に等しい透析液を、前記荷電モザイク膜の他方の面に接触させて、前記荷電モザイク膜に透過された前記ヨウ化水素を前記透析液に移行させる透析液室と、
前記透析液室内よりも前記脱塩室内の圧力を高める加圧手段と、
を具備することを特徴とする水素製造用のヨウ化水素の濃縮装置。
【請求項5】
前記脱塩室に接続され、前記脱塩室内の前記原液を循環させるための第1の循環経路と、
前記透析液室に接続され、前記透析液室内の前記透析液を循環させるための第2の循環経路と、
前記第2の循環経路及び前記透析液室内に前記透析液を循環させる第1のポンプと、
をさらに具備し、
前記加圧手段が、前記第1の循環経路及び前記脱塩室内に前記原液を循環させる第2のポンプを有することを特徴とする請求項4に記載の水素製造用のヨウ化水素の濃縮装置。
【請求項6】
前記荷電モザイク膜と前記脱塩室と前記透析液室とで構成される透析部を、直列に複数配置し、
前段の透析部の前記透析液室から排出される前記ヨウ化水素が濃縮された透析液の流路が、次の段の透析部の前記脱塩室及び前記透析液室にそれぞれ連通していることを特徴とする請求項4又は5に記載の水素製造用のヨウ化水素の濃縮装置。
【請求項7】
ヨウ素、二酸化硫黄、及び水を熱化学的に分解してヨウ化水素及び硫酸を生成する反応手段と、
前記反応手段で生成されたヨウ化水素及び硫酸を、ヨウ化水素を含む原液と、硫酸とに分離する分離手段と、
逆浸透膜と、
前記分離手段から排出された前記原液を前記逆浸透膜の一方の面に接触させて、前記逆浸透膜に水を浸透させて原液を脱水させる脱水室と、
希釈液を前記逆浸透膜の他方の面に接触させて、前記逆浸透膜を浸透した前記水を前記希釈液に移行させる希釈室と、
前記希釈室内よりも前記脱水室内の圧力を高める加圧手段と、
を具備することを特徴とする水素製造用のヨウ化水素の濃縮装置。
【請求項8】
前記脱水室に接続され、前記脱水室内の前記原液を循環させるための第1の循環経路と、
前記希釈室に接続され、前記希釈室内の前記希釈液を循環させるための第2の循環経路と、
前記第2の循環経路及び前記希釈室内に前記希釈液を循環させる第1のポンプと、
をさらに具備し、
前記加圧手段が、前記第1の循環経路及び前記脱水室内に前記原液を循環させる第2のポンプを有することを特徴とする請求項7に記載の水素製造用のヨウ化水素の濃縮装置。
【請求項9】
前記逆浸透膜が炭素膜であることを特徴とする請求項7又は8に記載の水素製造用のヨウ化水素の濃縮装置。
【請求項10】
前記逆浸透膜と前記脱水室と前記希釈室とで構成される逆浸透膜部を、直列に複数配置し、
前段の逆浸透膜部の前記脱水室から排出される前記ヨウ化水素の濃縮された原液の流路が、次の段の逆浸透膜部の前記脱水室に連通していることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の水素製造用のヨウ化水素の濃縮装置。
【請求項11】
ヨウ素、二酸化硫黄、及び水を熱化学的に分解してヨウ化水素及び硫酸を生成するブンゼン反応工程と、
前記ブンゼン反応工程で生成されたヨウ化水素及び硫酸を、ヨウ化水素及び不純物の硫酸を含む原液と、硫酸とに分離する分離工程と、
荷電モザイク膜の一方の面に前記分離工程で分離された前記原液を接触させ、前記荷電モザイク膜の他方の面に透析液を接触させ、前記原液中の前記ヨウ化水素を選択的に前記透析液に移行させる精製工程と、
を有することを特徴とする水素製造用のヨウ化水素の精製方法。
【請求項12】
ヨウ素、二酸化硫黄、及び水を熱化学的に分解してヨウ化水素及び硫酸を生成するブンゼン反応工程と、
前記ブンゼン反応工程で生成されたヨウ化水素及び硫酸を、ヨウ化水素を含む原液と、硫酸とに分離する分離工程と、
荷電モザイク膜の一方の面に前記分離工程で分離された前記原液を接触させ、前記荷電モザイク膜の他方の面に、濃縮処理前においてヨウ化水素の濃度が前記原液と実質的に等しい透析液を接触させ、かつ前記原液の圧力を前記透析液の圧力よりも高くして、前記原液中の前記ヨウ化水素を前記透析液中に移行させる濃縮工程と、
を有することを特徴とする水素製造用のヨウ化水素の濃縮方法。
【請求項13】
ヨウ素、二酸化硫黄、及び水を熱化学的に分解してヨウ化水素及び硫酸を生成するブンゼン反応工程と、
前記ブンゼン反応工程で生成されたヨウ化水素及び硫酸を、ヨウ化水素を含む原液と、硫酸とに分離する分離工程と、
逆浸透膜の一方の面に前記分離工程で分離された前記原液を接触させ、前記逆浸透膜の他方の面に希釈液を接触させ、かつ前記原液の圧力を前記希釈液の圧力よりも高くして、前記原液中の水を前記希釈液に移行させる濃縮工程と、
を有することを特徴とする水素製造用のヨウ化水素の濃縮方法。
【請求項14】
前記逆浸透膜が炭素膜であることを特徴とする請求項13に記載の水素製造用のヨウ化水素の濃縮方法。
【請求項15】
前記逆浸透膜を備える逆浸透膜部を直列に複数配置し、
前段の逆浸透膜部から排出される前記ヨウ化水素の濃縮された原液を、次段の逆浸透膜部の逆浸透膜の一方の面に接触させ、他方の面に希釈液を接触させ、かつ前記濃縮された原液の圧力を前記希釈液の圧力よりも高くして、さらにヨウ化水素を濃縮することを特徴とする請求項13又は14に記載の水素製造用のヨウ化水素の濃縮方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−37666(P2008−37666A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210533(P2006−210533)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】