説明

水素製造装置に用いられる電気透析器

【課題】 ヨウ化水素水溶液による腐食に耐えうる電気透析器を提供する。
【解決手段】 ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成するブンゼン反応装置と、ブンゼン反応装置によって得られたヨウ化水素水溶液を濃縮した後にヨウ化水素を分解し、製品としての水素とブンゼン反応装置へ供給するヨウ素とを得るヨウ化水素濃縮分解装置と、ブンゼン反応装置によって得られた硫酸水溶液を濃縮した後に硫酸を分解し、酸素とブンゼン反応装置へ供給する二酸化硫黄とを得る硫酸濃縮分解装置とを備えた水素製造装置に用いられ、ヨウ化水素濃縮分解装置に設けられた、ヨウ化水素水溶液を濃縮する電気透析器32において、ヨウ化水素水溶液に接する電極部41には、耐酸性材料が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ素および二酸化硫黄を用いて水を熱分解することにより水素を製造する水素製造装置に用いられる電気透析器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水を熱分解することによって水素を製造する方法として、IS(Iodine Sulfur)法が知られている(特許文献1参照)。IS法は、以下の3つの工程から構成されている。
(i)ブンゼン反応工程
ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成する。
(ii)ヨウ化水素濃縮分解工程
ブンゼン反応工程によって得られたヨウ化水素水溶液を濃縮した後に、ヨウ化水素を分解し、製品としての水素とブンゼン反応工程へ供給するヨウ素とを得る。
(iii)硫酸濃縮分解工程
ブンゼン反応装置によって得られた硫酸水溶液を濃縮した後に、硫酸を分解し、酸素とブンゼン反応工程へ供給する二酸化硫黄とを得る。この工程で得られる二酸化硫黄は、硫酸の分解により生成する三酸化硫黄をさらに三酸化硫黄分解工程によって分解することにより得られる。
上記(i)〜(iii)の3つの工程はそれぞれが接続され、閉サイクルとされている。
【0003】
ヨウ化水素濃縮分解工程におけるヨウ化水素水溶液の濃縮方法としては、多段フラッシュ法や蒸留法が提案されており、これら以外には、蒸留法に電気透析器を組み合わせた濃縮方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】K. Onuki et al, "Thermochemical Hydrogen Production byIodine-Sulfur Cycle", BOOK OF ABSTRACTS, The Hydrogen Planet, June 9-13,2002, 14th World Hydrogen Energy Conference, Montreal, Quebec, Canada, SessionC1.4, Novel Hydrogen Production I, (fig.5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、電気透析器に流入するヨウ化水素水溶液は、強い酸性を示し、当該水溶液に接する電極部が腐食するおそれがある。電極部の腐食が進行すると、電気透析器の性能が劣化してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ヨウ化水素水溶液による腐食に耐えうる電気透析器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の電気透析器は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる水素製造装置に用いられる電気透析器は、ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成するブンゼン反応装置と、前記ブンゼン反応装置によって得られたヨウ化水素水溶液を濃縮した後にヨウ化水素を分解し、製品としての水素と前記ブンゼン反応装置へ供給するヨウ素とを得るヨウ化水素濃縮分解装置と、前記ブンゼン反応装置によって得られた硫酸水溶液を濃縮した後に硫酸を分解し、酸素と前記ブンゼン反応装置へ供給する二酸化硫黄とを得る硫酸濃縮分解装置と、を備えた水素製造装置に用いられ、前記ヨウ化水素濃縮分解装置に設けられた、ヨウ化水素水溶液を濃縮する電気透析器において、ヨウ化水素水溶液に接する電極部には、耐酸性材料が設けられていることを特徴とする。
【0008】
ヨウ化水素水溶液に接する電極部を耐酸性材料として、強酸であるヨウ化水素水溶液に耐えうるようにした。これにより、電極部の腐食を防止することができる。
【0009】
前記耐酸性材料としては、シリコンカーバイド(SiC)、チタン(Ti)、フェロシリコン(SiFe)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びニオブ(Nb)から選ばれる1種または2種以上の材料から構成することが好ましい。
なお、上記耐酸性材料のうち、ヨウ化水素水溶液の耐食性、コストや入手の容易性の観点から、シリコンカーバイド(SiC)が好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、強酸であるヨウ化水素水溶液に接する電極部に耐酸性材料を用いることとしたので、電極部の腐食を低減することができる。これにより、電気透析器の性能劣化を回避できるとともに、寿命を長期化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、水素製造装置1の概略構成が示されている。
水素製造装置1は、原料である水を熱分解によって分解し、製品である水素(さらには酸素)を製造するものである。水素製造装置1は、IS(Iodine Sulfur)法を採用しており、ブンゼン反応装置2と、ヨウ化水素濃縮分解装置3と、硫酸濃縮分解装置4とを備えている。
【0012】
ヨウ化水素濃縮分解装置3および硫酸濃縮分解装置4へ供給される熱源としては、図示しない高温ガス炉の核熱が用いられる。すなわち、中間熱交換器10を介して得られる二次ヘリウムガスの顕熱を利用する。
中間熱交換器10は、高温ガス炉の核熱によって高温とされた一次ヘリウムガスと、水素製造装置1側に熱を与える二次ヘリウムガスとの間で熱交換を行わせるものである。中間熱交換器10には、一次ヘリウムガスが流れる一次側配管10aと、二次ヘリウムガスが流れる二次側配管10bとが接続されている。二次側配管10bを流れる二次ヘリウムガスは、中間熱交換器10において約880℃まで加熱され、その圧力は約4MPaとされる。
中間熱交換器10において加熱された二次ヘリウムガスは、後述する三酸化硫黄分解器17、硫酸分解器15及びヨウ化水素分解器11との間で熱交換を行う。
【0013】
ブンゼン反応装置2は、ブンゼン反応器5と、二相分離器7とを備えている。
ブンゼン反応器5には、原料である水(HO)と、ヨウ化水素濃縮分解装置3から供給されるヨウ素(I)と、硫酸濃縮分解装置4から供給される二酸化硫黄(SO)が供給される。ブンゼン反応器5では、例えば0.1MPa(ゲージ圧),100℃の条件下で、下式によるブンゼン反応が行われ、ヨウ化水素水溶液および硫酸水溶液が生成される。なお、ブンゼン反応は発熱反応であるため、外部からエネルギーが投入されることはない。
SO(g)+I(L)+2HO→HSO(aq)+2HI(aq) ・・・(1)
二相分離器7では、ブンゼン反応器5において得られた硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を分離する。二相分離器7内は、例えば0.1MPa(ゲージ圧),100℃の条件とされる。二相分離器7において分離されたヨウ化水素水溶液および硫酸水溶液は、それぞれ、ヨウ化水素濃縮分解装置3および硫酸濃縮分解装置4へと導かれる。
【0014】
ヨウ化水素濃縮分解装置3は、ヨウ化水素濃縮器9と、ヨウ化水素分解器11とを備えている。
ヨウ化水素精製濃縮器9は、例えば1MPa(ゲージ圧),100〜234℃の条件下で、ヨウ化水素水溶液を濃縮する。ヨウ化水素は、ヨウ化水素濃縮器9において気化され、ヨウ化水素分解器11へと導かれる。ヨウ化水素濃縮器9には、濃縮過程に必要な熱エネルギーが投入される。
【0015】
ヨウ化水素分解器11は、例えば1MPa(ゲージ圧),450℃の条件下で、下式によるヨウ化水素の分解を行う。
2HI(g)→H(g)+I(g) ・・・(2)
上記ヨウ化水素分解反応は吸熱反応とされ、したがって、熱エネルギーが投入される。つまり、中間熱交換器10において加熱された二次ヘリウムガスが流通するガス配管13との熱交換によって(2)式のヨウ化水素分解反応が進行する。
ヨウ化水素分解器11において分解された水素は、製品として取り出される。また、ヨウ化水素分解器11において分解されたヨウ素は、ブンゼン反応器5へと導かれる。未反応のヨウ化水素は、ヨウ化水素濃縮器9へと返送される。
【0016】
硫酸濃縮分解装置4は、硫酸濃縮器14と、硫酸分解器15と、三酸化硫黄分解器17とを備えている。
硫酸濃縮器14は、例えば0.1MPa(ゲージ圧),100〜391℃の条件下で、硫酸を精製するとともに、硫酸水溶液を濃縮する。硫酸濃縮器14には、濃縮過程に必要な熱エネルギーが投入される。硫酸濃縮器14において硫酸水溶液から分離された水は、ブンゼン反応器5へと送られる。硫酸濃縮器14において濃縮された硫酸(液体)は、硫酸分解器15へと導かれる。
【0017】
硫酸分解器15は、例えば2MPa(ゲージ圧),391〜527℃の条件下で、下式による硫酸の分解を行う。
SO(L)→H0(g)+SO(g) ・・・(3)
上記硫酸分解反応は吸熱反応とされ、したがって、熱エネルギーが投入される。つまり、中間熱交換器10において加熱された二次ヘリウムガスが流通するガス配管19との熱交換によって(3)式の硫酸分解反応が進行する。
硫酸分解器15において分解された三酸化硫黄と水蒸気は、三酸化硫黄分解器17へと導かれる。
【0018】
三酸化硫黄分解器17は、例えば2MPa(ゲージ圧),527〜850℃の条件下で、下式による三酸化硫黄の分解を行う。
SO(g)→SO(g)+1/2O(g) ・・・(4)
上記三酸化硫黄分解反応は吸熱反応とされ、したがって、熱エネルギーが投入される。つまり、中間熱交換器10において加熱された二次ヘリウムガスが流通するガス配管20との熱交換によって(4)式の三酸化硫黄分解反応が進行する。図1に示されているように、三酸化硫黄分解器17には最も高い温度を導くために、中間熱交換器10において加熱された二次ヘリウムガスは最初に三酸化硫黄分解器17に導かれるようになっている。三酸化硫黄分解器17において熱交換を終えた二次ヘリウムガスは、硫酸分解器15及びヨウ化水素分解器11において熱交換を行う。
三酸化硫黄分解器17において生成した酸素は、製品として系外に取り出される。また、三酸化硫黄分解器17において生成した二酸化硫黄は、少量の水蒸気とともに、ブンゼン反応器5へと導かれる。
【0019】
このように、本実施形態にかかる水素製造装置1によれば、原料として水をブンゼン反応装置2へ投入することにより、製品としての水素がヨウ化水素濃縮分解装置3から、酸素が硫酸濃縮分解装置4から得ることができる。
【0020】
図2には、ヨウ化水素濃縮分解装置3のヨウ化水素濃縮器9が示されている。
ヨウ化水素精製濃縮器9は、ブンゼン反応装置2から供給されたヨウ化水素水溶液を濃縮する電気透析器32と、この電気透析器32の下流側に配置された蒸留塔34とを主として備えている。
【0021】
電気透析器32の上流側には、昇圧ポンプ36が配置されている。この昇圧ポンプ36は、ブンゼン反応装置2から供給されたヨウ化水素水溶液を約1.1MPa(ゲージ圧)まで昇圧させる。この昇圧ポンプ36によって昇圧されたヨウ化水素水溶液は、電気透析器32へと送られる。
なお、ブンゼン反応装置2から供給されたヨウ化水素水溶液には、ブンゼン反応装置2において未反応とされたヨウ素(I)も含まれている。
【0022】
電気透析器32には、希ヨウ化水素水溶液室32aと濃ヨウ化水素水溶液室32bとを区画する電気透析膜32cが設けられている。電気透析膜32cは、陽イオン(具体的には水素イオン)を透過する陽イオン交換膜となっている。陽イオン交換膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系の固体高分子イオン交換膜であるナフィオン膜(「ナフィオン」はデュポン株式会社の登録商標)が用いられる。電気透析膜32cの厚さは、例えば100μm程度とされる。
電気透析膜32cの両側には電極(図示せず)が配置されており、これら電極間に所定の電圧が与えられる。具体的には、希ヨウ化水素水溶液室32a側には正の電位が、濃ヨウ化水素水溶液室32b側には負の電位が加えられるようになっている。なお、電気透析器32の具体的構成については後述する。
ブンゼン反応装置2から供給されるヨウ化水素水溶液は、希ヨウ化水素水溶液室32aおよび濃ヨウ化水素水溶液室32bのそれぞれに供給される。希ヨウ化水素水溶液室32aに供給されたヨウ化水素水溶液は、正の電位が与えられているので、ヨウ化水素を構成するヨウ素イオンがヨウ素となる(2I→I)。このときに放出される水素イオンは、電気透析膜32cを通り、濃ヨウ化水素水溶液室32bへと導かれる。これにより、希ヨウ化水素水溶液室32aでは希ヨウ化水素水溶液が生成される。
【0023】
濃ヨウ化水素水溶液室32bには負の電位が与えられているので、濃ヨウ化水素水溶液室32bへと導かれた水素イオンは、ヨウ化水素水溶液中のヨウ素(I)と反応してヨウ化水素を生成する。これにより、濃ヨウ化水素水溶液室32bには濃ヨウ化水素水溶液が生成される。
このように、電気透析器32によって、ブンゼン反応装置2から供給されたヨウ化水素水溶液は、濃ヨウ化水素水溶液室32bにおいて、共沸濃度である23wt%を超える濃度(例えば26wt%)まで濃縮される。
【0024】
希ヨウ化水素水溶液室32aにおける希ヨウ化水素水溶液は、生成されたヨウ素を利用するため、ブンゼン反応装置2へ送られる。
【0025】
電気透析器32によって共沸濃度を超えて濃縮されたヨウ化水素水溶液は、蒸留塔34へと導かれる。蒸留塔34では、蒸留法によってヨウ化水素水溶液がさらに濃縮される。第2蒸留34の下方に配置されたリボイラ34aの熱源は、例えばヨウ化水素濃縮分解装置3や硫酸濃縮分解装置4といった水素製造装置1自身の排熱が用いられる。
蒸留塔34によって濃縮されたヨウ化水素(ガス)は、蒸留塔34の上方から取り出され、コンデンサ34bによって凝縮される。凝縮されたヨウ化水素水溶液は、気液分離器34cにおいて気体を分離した後に、ヨウ化水素分解器11へと送られる。気液分離器34cによって分離された気体は、第2蒸留塔34へと返送される。このように、ヨウ化水素水溶液は、第2蒸留塔34によって、共沸濃度を超えたさらに高い濃度まで濃縮される。
第2蒸留塔34によって分離され、低濃度となったヨウ化水素水溶液は、第2蒸留塔34の下方から取り出され、電気透析器32への上流側へと返送される。
【0026】
次に、上述の電気透析器32の具体的構成について説明する。
図3には、電気透析器32を構成する1つのスタック組立体32aが示されている。電気透析器32は、このスタック組立体32aを複数備えたものとされる。
同図(a)に示されているように、積層された複数のセル40が両端のエンドフランジ42に狭持された状態で固定されている。ずなわち、2つのエンドフランジ42にわたって挿入された締め付けボルト44と、この締め付けボルト44の先端に螺合されたナット46とによって、2つのエンドフランジ42が接近方向に締め付けられる。
【0027】
積層されたセル40とエンドフランジ42との間には、セル40側から、ブスバー48及びヘッダ容器50がそれぞれ介挿されている。ブスバー48は、図示しない外部電源と接続されており、一方が正極、他方が負極とされている。ヘッダ容器50は、一方が電気透析後の濃ヨウ化水素水溶液を集合させ、他方が電気透析後の希ヨウ化水溶液を集合させるものとなっている。各ヘッダ容器50には流出口50aが設けられ、この流出口50aから外部へと電気透析後のヨウ化水素水溶液が取り出される。
また、同図(b)に示すように、スタック組立体32aには、電気透析前のヨウ化水素水溶液を内部に導くためのヨウ化水素流入口52と、隣のスタック(又は外部)へと電気透析前のヨウ化水素水溶液を導くためのヨウ化水素水溶液流出口54とが設けられている。
【0028】
図4には、セル40の詳細が示されている。同図(a)は、側断面を示し、(b)は(a)の側断面に直交する横断面を示す。同図には、1つの電気透析膜32cと、この電気透析膜32cの両側に配置された2つの電極部41とから構成された1単位が示されている。この一単位がセル40となり、このセル40が積層方向に連続することによって、スタックが構成される。
【0029】
同図に示されているように、電気透析膜32cの両側に、給電体55が配置されている。これら給電体55の両側には、流路板57が設けられている。給電体55及び流路板57によって電極部41が構成されている。
給電体55は、導電性を有している。具体的には、タンタル(Ta)やチタン(Ti)等の発泡体が用いられる。給電体55の厚さは、例えば1mm程度とされる。
流路板57は、導電性を有するとともに、強酸であるヨウ化水素水溶液に対して耐食性を有している。具体的には、シリコンカーバイド(SiC)が用いられる。流路板57の厚さは、例えば10mm程度とされる。流路板57には、ヨウ化水素水溶液を流通させるための溝部が各所に形成されている。
【0030】
同図(a)に示されているように、流路板57には、厚さ方向(すなわちセル40の積層方向)に第1流路57a及び第2流路57bが形成されている。第1流路57aは流路板57を鉛直に立てた状態でみた場合の上方に配置され、第2流路57bは流路板57を鉛直に立てた状態で見た場合の下方に配置されている。
流路板57の給電体55に接する面には、第1ヘッダ57c及び第2ヘッダ57dが形成されている。これらヘッダ57c,dは、流路板57の幅方向(同図(a)の紙面垂直方向,同図(b)の上下方向)に延在している。第1ヘッダ57cは流路板57を鉛直に立てた状態でみた場合の上方に配置され、第2ヘッダ57dは流路板57を鉛直に立てた状態で見た場合の下方に配置されている。
さらに、流路板57の給電体55に接する面には、第1ヘッダ57cと第2ヘッダ57dとを接続するように上下方向に形成された第3流路57eが形成されている。第3流路57eは、同図(b)に示されているように、流路板57の幅方向に平行に配列された複数の流路から構成されている。この第3流路57eが、図2に示した希ヨウ化水素水溶液室32aと濃ヨウ化水溶液室32bに相当する。
【0031】
上記構成により、ヨウ化水素水溶液は次のように流れる。
電気透析前のヨウ化水素水溶液は、第1流路57aを通り、第1ヘッダ57cへ流入した後、複数の第3流路57eに分配されて給電体55に接した状態で流れる。このように給電体55に接して第3流路57eを流過する間に、電気透析膜32cを介して陽イオンの交換が行われ、電気透析膜32cの一側の第3流路57eではヨウ化水素水溶液が濃縮されて濃ヨウ化水素水溶液が生成され、電気透析膜32cの他側の第3流路57eでは希釈された希ヨウ化水素水溶液が生成される。濃縮または希釈されたヨウ化水素水溶液は、第2ヘッダ57dにて集合させられた後、第2流路57bを通って外部へと導かれる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
ヨウ化水素水溶液に接する電極部である流路板57及び給電体55には、耐酸性材料であるシリコンカーバイドやタンタル、チタンを用いることとした。これにより、電極部の腐食を防止することができ、結果として電気透析器の性能劣化を回避できるとともに、寿命を長期化することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、圧力や温度の条件を具体的に示したが、これらはあくまでも一例であって、本発明がこれらの数値に限定されるものではない。
また、耐酸性材料としてシリコンカーバイドやタンタル、チタンを用いることとしたが、フェロシリコン(SiFe)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)等を用いることとしてもよい。
また、本実施形態のように給電体55や流路板57の全体を耐酸性材料とする必要はなく、ヨウ化水素水溶液に接する部位(第1流路57a、第2流路57b、第3流路57e、第1ヘッダ57c及び第2ヘッダ57dを構成する壁部)にのみ耐酸性材料を用いることとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態にかかる水素製造装置を示した概略構成図である。
【図2】図1のヨウ化水素精製濃縮器を示した構成図である。
【図3】電気透析器を示した図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】電気透析器のセルを示した図であり、(a)は側断面図、(b)は横断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 水素製造装置
2 ブンゼン反応装置
3 ヨウ化水素濃縮分解装置
4 硫酸濃縮分解装置
9 ヨウ化水素濃縮器
32 電気透析器
32c 電気透析膜
34 蒸留塔
41 電極部
55 給電体(電極部)
57 流路板(電極部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素、二酸化硫黄および水から硫酸水溶液およびヨウ化水素水溶液を生成するブンゼン反応装置と、
前記ブンゼン反応装置によって得られたヨウ化水素水溶液を濃縮した後にヨウ化水素を分解し、製品としての水素と前記ブンゼン反応装置へ供給するヨウ素とを得るヨウ化水素濃縮分解装置と、
前記ブンゼン反応装置によって得られた硫酸水溶液を濃縮した後に硫酸を分解し、酸素と前記ブンゼン反応装置へ供給する二酸化硫黄とを得る硫酸濃縮分解装置と、を備えた水素製造装置に用いられ、
前記ヨウ化水素濃縮分解装置に設けられた、ヨウ化水素水溶液を濃縮する電気透析器において、
ヨウ化水素水溶液に接する電極部には、耐酸性材料が設けられていることを特徴とする電気透析器。
【請求項2】
前記耐酸性材料は、シリコンカーバイド(SiC)、チタン(Ti)、フェロシリコン(SiFe)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びニオブ(Nb)から選ばれる1種または2種以上の材料から構成されていることを特徴とする請求項1記載の電気透析器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−203212(P2007−203212A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25736(P2006−25736)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】