説明

水素製造装置

【課題】炭化水素系燃料を水蒸気改質する水素製造装置において、水素の収率および純度の向上を目的として改質反応用の触媒と副生成する二酸化炭素を吸収除去する吸収材を混在させる改質反応炉を提供する。
【解決手段】枕型圧力容器内にルーバー101壁で仕切られた多数の充填層を設け、その中に水蒸気改質用触媒201と二酸化炭素吸収材301を交互に充填し燃料ガスをクロスフローさせることで水蒸気改質と二酸化炭素吸収を交互に行うとともに改質反応用熱源となる高温燃焼ガスあるいは酸素をルーバー101内に通すことで必要伝熱面積の確保あるいは必要酸化熱を確保する。また夫々の充填層に充填物取り出し口を設け個々に充填物の取替えを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気改質反応を利用した水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素系燃料(以下原料ガスという)から水蒸気改質反応によって水素を製造する水素製造装置において改質反応炉内に水蒸気改質反応触媒と二酸化炭素吸収材を一定割合で混在させ水素の収率の向上を図る方法が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−24566公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
水蒸気改質反応はその反応平衡から750℃〜900℃の温度を必要としさらに吸熱反応のため205KJ/molの熱を加える必要があり水素製造用の水蒸気改質炉の反応管は耐熱性の制約から加熱用燃焼ガス温度と反応温度に大きな温度差を取ることができないという理由から充填触媒容積に対する伝熱面積を大きくとる必要があるため水蒸気改質炉内に多数の伝熱管とそれに付帯する多数のバーナーを取り付けたものが一般的であり触媒と吸収材を混合させて充填量を増大させる場合は伝熱が悪くなる分伝熱面積も増大させる必要が出てくるという課題がある。
【0004】
また、触媒の劣化に比べ吸収材の劣化の方が早く触媒と吸収材を混在させた場合、吸収性能を維持するためには吸収材の寿命にあわせて触媒とともに取り替える必要があり、抜き出した触媒と吸収材を振り分けて触媒を再利用するにしても手間と時間がかかるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、触媒と吸収材夫々をルーバー壁で仕切って充填し、燃料ガス入口に対し触媒充填層、吸収材充填層、触媒充填層、吸収材充填層と交互に充填層を形成させ、水蒸気を含む原料ガスがルーバーおよび各充填層を通過する間に改質反応および吸収反応を繰り返えすことにより高収率で純度の高い水素が製造できるようにする。
【0006】
請求項2の発明は、内径の異なる耐熱管を夫々2分割し両端を耐熱板で塞ぎ二分割管の隙間を高温燃焼ガスが通過できるようにしたルーバーを積み重ねて必要伝熱面積を確保し、触媒と吸収材が混合することのない充填層を形成させて当該ルーバー内に高温燃焼ガスを通すことにより水素製造時は原料ガスの昇温と反応熱を供給し、吸収材の再生時には吸収材の脱離熱を供給する。
【0007】
請求項3の発明は、原料ガスおよび充填物を加熱する高温燃焼ガスの熱回収率を改善させるためのもので、改質炉出口においてもなお高温の燃焼ガスを二つあるバーナーの一つに交互に取り入れて高温ガスの顕熱を蓄熱して回収する蓄熱再生バーナーを使用する。蓄熱再生バーナーの欠点は、二つのバーナーを切り替えて使用するため燃焼ガス温度が変動することであるけれどもこの温度変化はルーバー伝熱管において緩和されるため実用上問題なくこの高温燃焼ガス発生用に蓄熱再生バーナーを使用することによりシステム全体の熱効率の向上を図ることが出来る。
【0008】
請求項4の発明は、吸収材の破過するまでの時間と吸収材の再生に要する時間に極端な時間差がある場合例えばその比率が2対1に近い場合は前記水蒸気改質炉を3基設置してバルブ操作により常時2基を水素製造に他の1基を吸収材再生に使用することで効率よく操業できるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本願発明により、熱効率の良い水素収率の高い水素製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本願発明の水素製造装置に関する実施の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために説明するものであり、特に指定しない限り、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0011】
図1は、水蒸気改質炉100の内部構造を示す断面図で耐熱合金製のルーバー101を耐熱鋼板製枕型圧力容器の側壁102の上下方向に充填物がこぼれないピッチで積み上げ側壁102を貫通して当該側壁102に溶接取り付ける。
充填層厚さは夫々の充填物の容積に比例させ、原料ガス入口側より順次触媒、吸収材、触媒、吸収材の充填層を形成させ夫々の充填層の下部には触媒201の抜き出しノズル104および吸収材301の抜き出しノズル105を、上部には触媒投入ノズル106および吸収材投入ノズル107を取り付ける。
側壁102から突き出たルーバー101は燃焼ガス入口ヘッダー108、燃焼ガス中間ヘダー109および燃焼ガス出口ヘッダー110に取り付けられる。
【0012】
図2は、ルーバー101の断面を示しており、内径の異なる耐熱鋼管を二つ割し、両端に耐熱鋼板を溶接取り付けて高温燃焼ガスが通ってもガス漏れのないようにする。
【0013】
図3は、蓄熱再生バーナー400を使用した水素発生装置の概念図であり蓄熱再生バーナー400で発生した高温燃焼ガスは水蒸気改質炉100の燃焼ガス入口ヘッダー106に送られ、その顕熱を水蒸気改質反応熱として使用した後、燃焼ガス出口ヘッダー108を通って蓄熱再生バーナー400に循環し熱回収された後大気に放出される。
【0014】
図4は、2基の水蒸気改質炉の内1基は水素発生運転他の1基は吸収材再生運転を行っている時のバルブの開閉状態を示している。
【実施例2】
【0015】
図1に示す水蒸気改質炉100の内部に配列されたルーバー101内に酸素を通し当該ルーバー下部にあけた孔より改質反応に必要な熱量に見合った原料ガスを燃焼させる酸素量を供給しこの燃焼により発生した二酸化炭素も改質反応で生成した二酸化炭素とともに吸収材に吸収させることで水素濃度を下げることなく高純度の水素を製造する。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本願発明により、改質反応、吸収反応を交互に行うことにより高収率の純度の高い水素を製造できるとともに劣化した吸収材の取替えが容易なしかも熱効率のよい水素製造装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】水蒸気改質炉の内部構造を示す全体図である。
【図2】ルーバーの断面図である。
【図3】蓄熱再生バーナーを付帯した水素発生装置のシステム全体を示す概念図である。
【図4】水蒸気改質炉前後の主要バルブの開閉状態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0018】
100 水蒸気改質炉 101 ルーバー
102 側壁 103 隔壁
104 触媒出口ノズル 105 吸収材出口ノズル
106 触媒入口ノズル 107 吸収材入口ノズル
108 燃焼ガス入口ヘッダー 109 燃焼ガス中間ヘッダー
110 燃焼ガス出口ヘッダー 201 触媒
301 吸収材 400 蓄熱再生バーナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系燃料から改質反応により水素を製造する水蒸気改質炉において、改質用触媒と前記改質反応により副生成される二酸化炭素を吸収するセラミックス系吸収材をルーバー壁で仕切られた空間に夫々別々に充填することにより複数の充填層を形成させ、前記炭化水素系燃料がルーバーを通って各充填層をクロスフローする間に改質反応と二酸化炭素吸収反応を交互に繰り返すことを特徴とする水素製造方法。
【請求項2】
前記炭化水素系燃料および前記改質用触媒を改質反応温度まで加熱するための高温燃焼ガスを触媒と吸収材を仕切るルーバー内に通すことによりルーバーを加熱用伝熱管としての役務をもたせることを特徴とする請求項1記載の水素製造方法。
【請求項3】
前記ルーバーを介して触媒および吸収材を加熱した後の高温燃焼ガスを循環利用する蓄熱式再生バーナーにより加熱用の高温燃焼ガス発生させ、炭化水素系燃料の予熱には水素を主成分とする生成ガスの顕熱を、水蒸気の予熱には回収二酸化炭素の顕熱を利用することを特徴とする請求項1記載の水素製造設備。
【請求項4】
触媒と吸収材を交互に充填し改質反応と吸収反応を交互に繰り返す前記水蒸気改質炉を複数基設置し、バルブ切り替えにより少なくとも1基の水蒸気改質炉は破過した吸収材を高温燃焼ガスの一部を使用して加熱再生し、他の水蒸気改質炉で高温燃焼ガスを熱源とした改質反応水素を発生させることを特徴とする請求項1記載の水素製造方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−83740(P2010−83740A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257952(P2008−257952)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(302070534)有限会社アイエンジ (12)
【出願人】(592263115)富士工機株式会社 (8)
【Fターム(参考)】