説明

水素貯蔵材料

本発明は、基本的にリチウム及びマグネシウムの水素化物により構成された水素貯蔵材料であって、該水素貯蔵材料が、一般式:LiMgを有し、(i)xが、0.17〜0.93の範囲であり、(ii)yが、0.07〜0.83の範囲であり、及び(iii)nが、(x+2y)以下であり、ただし、(a)x=y;(b)x=2yまたは(c)2x=yである場合に、nが、(x+2y)ではない、水素貯蔵材料を提供する。また、該水素貯蔵材料の製造方法、及び水素を可逆的にまたは不可逆的に貯蔵するためのその使用が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素貯蔵材料に関する。本発明は、該材料の製造方法、可逆的若しくは不可逆的に水素を貯蔵するためのこのような材料の使用、及び水素貯蔵材料を使用し水素を可逆的に脱離及び/または吸収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属水素化物中の水素の貯蔵は、化学吸収に基づいており、すなわち、分子水素(H)は貯蔵されないが、水素が金属と反応し、金属水素化物を形成する。これが、低温または高圧を必要としないという点において、金属水素化物の形での水素の貯蔵が、例えば、液体または圧縮状態での水素の貯蔵よりも有利である。
【0003】
高い陽性のs−ブロック元素の水素化合物が、不揮発性であり、非導電性であり、通常は水素化物(H)アニオンを含む結晶性固体である。これらの特性、及びその構造が、塩の(塩様の)水素化物としてのそれらの分類をもたらす。2成分系の第一族金属水素化物が、塩化ナトリウムの結晶構造を共有する(アニオンの面心立方格子配列であり、カチオンが8面体のホールを占有する)。水素化リチウム(LiH)が、12.5wt%の水素を含むが、10Pa(1bar)の平衡圧に対して910℃を必要とする。その安定性のため、LiHが、実用的な水素貯蔵材料と考えられていない。
【0004】
水素化マグネシウム(MgH)が、ルチルの結晶構造を共有する(歪んだ六方最密アニオン格子であり、カチオンが、8面体のホールの半分を占有する)。主に、その高い水素含有量(7.6wt%)及び低い製造コストのため、水素化マグネシウムが、水素貯蔵のために最も研究された材料の一つである。しかしながら、その遅い水素吸収/脱離速度及び10Pa(1bar)H圧力で約300℃である高い解離温度が、その実用的な適用を制限する。
【0005】
1987年に、Ashbyら(非特許文献1)は、有機リチウムまたは混合有機リチウム/マグネシウム化合物をLiAlHと混合することにより、化合物LiMgH,LiMg及びLiMgHを調製し、X線回折によって特徴付けた。
【0006】
比較的少ない理論的研究が、LiMgHについて存在している:Liら(非特許文献2)は、格子面間隔及び電子構造を計算し、LiMgHが、絶縁体であることを報告した。Khowashら(非特許文献3)は、凝集エネルギー及び電子密度を計算した。Vajeestonら(非特許文献4)は、LiMgHについて最も安定な配置が、三方晶系LiTaO−型構造であることを予測した。また、彼らは、この化合物の形成エネルギーを考慮し、LiMgHを合成し、または安定化するための手段を提案した。提案された経路は、水素雰囲気における元素リチウム及びマグネシウムからのものである。
【0007】
Gotoら(非特許文献5)は、アンビル−型装置を使用し、典型的には、973Kで2−5GPaである高圧下で、LiMgを調製した。この水素化物が、基本的な立方晶構造を示す。
【0008】
1960年11月22日に公開された特許文献1では、航空機構造等に使用するための高温で強度を保持するマグネシウム合金材料が開示されている。これらの合金は、結晶性の水素化リチウム−マグネシウム合金に基づいており、実質的に全てのリチウムが、基本的にマグネシウムマトリックス中に分散した微粉化した水素化リチウムの安定性強化沈殿物に変わるまで、水素雰囲気中で、リチウム−マグネシウム合金を加熱することにより製造される。水素化リチウムが680℃で安定であるため、このアニーリングプロセスが、マグネシウム合金に対して硬化効果を与える結晶性構造を促進させ、これが、高温に至るまで安定である。従って、特許文献1が、水素化リチウムの安定性を活用することにより、高温でその強度を保持するマグネシウムの合金を提供する。特許文献1の組成物が(それにその強度を与える)結晶性であるが、水素化リチウムが安定であるため、この組成物は、可逆的に水素を貯蔵するために適切ではない。
【0009】
特許文献2では、最密六方結晶格子を有するマグネシウムを、体心立方格子を有するリチウムと合金化することにより調製された体心立方格子結晶構造を有する水素貯蔵材料が開示されている。結果として得られる合金が、体心立方格子を有する限り、水素原子による占有が可能な4面体位置が存在する。しかしながら、水素吸収を可能にするために、少なくともマグネシウム−リチウム系の表面において、ニッケル、ニッケル合金、パラジウム、パラジウム合金、希土類水素貯蔵合金、及びチタン水素貯蔵合金等の水素解離物質を組み込むことが必要である。これらの付加的な金属成分が、水素分子を、水素原子に解離し、その吸収を可能にし、水素解離材料が十分に存在していない場合には、少量のみの水素の吸収が観察される。
【0010】
特許文献3では、一般式Mg1−xの広範囲のマグネシウム−ベースの水素貯蔵合金が開示されており、ここで、Mが、Li、Na、K、Rb、Ca、Sr、Ba、Sc、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、及びPbから構成される群から選択された少なくとも一つであってよく、x=0.04〜0.8であり、y=0.2〜2である。様々な実施例が提供されるが、単純なマグネシウム−リチウム系が説明されていない。さらに、水素脱離のための温度及び/または吸蔵開始温度の低減の所望の目標が、付加的な元素または化合物を組み込むことにより達成される。X線回折データが与えられる試料は、水素貯蔵材料が、基本的に結晶性であることを示す。
【0011】
当技術分野において、低い水素の取り込み、低いリリース温度及び緩やかな再水素化条件下で、水素の可逆的貯蔵を可能にする水素貯蔵材料が未だに必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第2961359号明細書
【特許文献2】特開2003−073765号公報
【特許文献3】特開2008−190004号公報
【特許文献4】国際公開第2005/035820号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Ashbyら、Inorg.Chem.,1978,17,322−326
【非特許文献2】Liら、Phys.Rev.B,1991,44,6030−6036
【非特許文献3】Khowashら、Phys.Rev.B,1997,55,1454−1458
【非特許文献4】Vajeestonら、JALCOM,2008,450,327−337
【非特許文献5】Gotoら、JALCOM,404−406,2005,448−452
【非特許文献6】Guerinら、J.Comb.Chem.2008,10,37−43
【非特許文献7】Guerinら、J.Comb.Chem.2006,8,66−73
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
ここで、基本的にLi及びMgの水素化物により構成された水素貯蔵材料が、調整されうることが明らかとなっている。緩やかな条件下で、これらの材料が、可逆的に脱水素化され及び再水素化されうる。
【0015】
従って、一態様において、本発明が、基本的にリチウム及びマグネシウムの水素化物により構成された水素貯蔵材料であって、該水素貯蔵材料が、一般式:
LiMg
を有し、
(i)xが、0.17〜0.93の範囲であり、
(ii)yが、0.07〜0.83の範囲であり、及び
(iii)nが、(x+2y)以下であり、
ただし、(a)x=y;(b)x=2yまたは(c)2x=yである場合に、nが、(x+2y)ではない水素貯蔵材料を提供する。
【0016】
他の態様において、本発明が、基本的にリチウム及びマグネシウムの水素化物により構成された水素貯蔵材料の調製方法であって、前記水素貯蔵材料が、一般式:
LiMg
を有し、
(i)xが、0.17〜0.93の範囲であり、
(ii)yが、0.07〜0.83の範囲であり、及び
(iii)nが、(x+2y)以下であり、
金属Li及び/またはその水素化物と、金属Mg及び/またはその水素化物と、を接触させ、リチウム及びマグネシウムの水素化物を形成するステップを含む水素貯蔵材料の調製方法を提供する。
【0017】
他の態様において、本発明が、基本的にリチウム及びマグネシウムの水素化物により構成された水素貯蔵材料の調製方法であって、前記水素貯蔵材料が、一般式:
LiMg
を有し、
(i)xが、0.17〜0.93の範囲であり、
(ii)yが、0.07〜0.83の範囲であり、及び
(iii)nが、(x+2y)以下であり、
一つ以上の原料からLi及びMgを蒸発させるステップと、水素源の存在下で、適当な基板上に蒸発したLi及びMgを蒸着するステップと、を含む水素貯蔵材料の調製方法を提供する。
【0018】
さらなる態様において、本発明は、基本的にリチウム及びマグネシウムの水素化物により構成された水素貯蔵材料の使用であって、可逆的にまたは不可逆的に水素を貯蔵するために、前記水素貯蔵材料が、一般式:
LiMg
を有し、
(i)xが、0.17〜0.93の範囲であり、
(ii)yが、0.07〜0.83の範囲であり、及び
(iii)nが、(x+2y)以下である、水素貯蔵材料の使用を提供する。
【0019】
またさらなる態様において、本発明は、基本的にリチウム及びマグネシウムの水素化物により構成された水素貯蔵材料を使用する水素を吸収する方法であって、前記水素貯蔵材料が、一般式:
LiMg
を有し、
(i)xが、0.17〜0.93の範囲であり、
(ii)yが、0.07〜0.83の範囲であり、及び
(iii)nが、(x+2y)以下であり、
前記水素貯蔵材料と、水素含有ガスと、を接触させるステップを含む、水素を吸収する方法を提供する。
【0020】
またさらなる態様において、本発明は、基本的にリチウム及びマグネシウムの水素化物により構成された水素貯蔵材料から水素含有ガスを得る方法であって、前記水素貯蔵材料が、一般式:
LiMg
を有し、
(i)xが、0.17〜0.93の範囲であり、
(ii)yが、0.07〜0.83の範囲であり、及び
(iii)nが、(x+2y)以下であり、
水素ガス及び少なくとも部分的に脱水素化された水素貯蔵材料を得るために、前記水素貯蔵材料から水素を脱離させるステップを含む、水素含有ガスを得る方法を提供する。
【0021】
またさらなる態様において、本発明は、基本的にリチウム及びマグネシウムの水素化物により構成された水素貯蔵材料を使用し水素を可逆的に脱離させる及び/または吸収する方法であって、前記水素貯蔵材料が、一般式:
LiMg
を有し、
(i)xが、0.17〜0.93の範囲であり、
(ii)yが、0.07〜0.83の範囲であり、及び
(iii)nが、(x+2y)以下であり、
前記方法が、
a)水素ガス及び部分的に脱水素化された水素貯蔵材料を得るために、前記水素貯蔵材料から水素を脱離させることにより前記水素貯蔵材料を脱水素化するステップであって、脱離が監視され、終了時にnが少なくとも0.1(x+2y)であるように、脱離を終了させる、ステップと、
b)可逆的に水素を貯蔵し、少なくとも部分的に再水素化された水素貯蔵材料を得るために、前記部分的に脱水素化された水素貯蔵材料と、水素含有ガスと、を接触させることにより、前記部分的に脱水素化された水素貯蔵材料を水素化するステップと、
を含む、水素を可逆的に脱離させる及び/または吸収する方法を提供する。
【0022】
またさらなる態様において、本発明は、水素−燃焼エンジンに燃料を供給する方法であって、本発明の方法に従い、水素貯蔵材料から水素を脱離させるステップと、前記水素−燃焼エンジンの入口に脱離された水素を供給するステップと、を含む、方法を提供する。
【0023】
本発明のこれらの態様及び他の態様が、以下において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】リチウム容量に応じてプロットされた本発明のLi−Mg水素貯蔵材料の開始温度を説明するものである。
【図2】リチウム容量に応じてプロットされた本発明のLi−Mg水素貯蔵材料の重量当たりの能力(gravimetric capacity)を説明するものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、基本的に、リチウム及びマグネシウムの水素化物から構成された水素貯蔵材料を提供し、該材料が、一般式:
LiMg
を有し、ここで、(i)xが、0.17〜0.93の範囲であり;(ii)yが、0.07〜0.83の範囲であり;(iii)nが、(x+2y)以下であり;ただし、(a)x=y;(b)x=2yまたは(c)2x=yである場合に、nが、(x+2y)ではない。
【0026】
上記一般式において、xが、0.17〜0.93の範囲であり、yが、0.07〜0.83の範囲である。好ましくは、金属原子の50%以上が、Li原子であり、すなわち、xが、0.5〜0.93の範囲であり;より好ましくは、xが、0.6〜0.8の範囲であり;さらに好ましくは、xが、0.7〜0.8の範囲であり;いっそうさらに好ましくは、xが、0.74〜0.78の範囲である。好ましくは、yが、0.07〜0.5の範囲であり;より好ましくは、yが、0.2〜0.4の範囲であり;さらに好ましくは、yが、0.2〜0.3の範囲であり;いっそうさらに好ましくは、yが、0.22〜0.26の範囲である。貯蔵材料の重量当たりのその高い水素貯蔵密度のため、増大した量のLiを含む組成物が、高い重量当たりの水素量を貯蔵しうる。
【0027】
好ましくは、xが、0.5〜0.93の範囲であり、yが、0.07〜0.5の範囲であり;より好ましくは、xが、0.6〜0.8の範囲であり、yが、0.2〜0.4の範囲であり;さらに好ましくは、xが、0.7〜0.8の範囲であり、yが、0.2〜0.3の範囲であり;さらにいっそう好ましくは、xが、0.74〜0.78の範囲であり、yが、0.22〜0.26の範囲である。
【0028】
当然のことながら、微量の他の金属原子が、本発明による水素貯蔵材料中に存在しうる;しかしながら、このような微量の他の金属が、水素貯蔵材料の水素貯蔵挙動に影響を及ぼさない。このような微量の他の金属原子が、例えば、水素貯蔵材料の調製中に導入された不純物または別個の成分中の不純物によるものでありうる。このような微量の他の金属原子が、Li、Mgまたはこれらの両方と置換されうる。典型的には、第2族金属原子または二価遷移金属原子が、水素貯蔵材料の構造内のMgと置換されうる;他の第1族金属原子または一価遷移金属原子が、Liと置換されうる。
【0029】
この点において、“基本的にリチウム及びマグネシウムの水素化物から構成される”との表現は、水素貯蔵材料中のリチウム及びマグネシウム原子の総量が、材料中の金属原子の総量のモルパーセントとして表すと、少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらに好ましくは少なくとも99%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.5%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.7%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.8%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.9%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.95%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.97%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.98%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.99%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.995%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.997%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.998%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.999%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.9995%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.9997%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.9998%、さらにいっそう好ましくは少なくとも99.9999%、最も好ましくは100%であることを意味する。
【0030】
本発明による、上記式により表される水素貯蔵材料が、0.2〜13.3の、好ましくは1.5〜4の、より好ましくは2.33〜4の、最も好ましくは2.85〜3.55の範囲のモル比(x/y)のLi及びMgを含む。Li及びMgの好ましいモル比が、最も高い水素の重量当たりの能力を提供する。
【0031】
上記式による水素貯蔵材料が、水素も含む。当然のことながら、水素量は、水素貯蔵材料が、完全に水素化されるかまたは部分的に水素化されるかによって決まる。
【0032】
nが0である場合、水素が、水素貯蔵材料中に存在しない。典型的には、水素不存在下で調製されたような水素貯蔵材料の場合にのみ、nが0である。しかしながら、本発明によると、水素のバックグラウンド雰囲気下で、水素貯蔵材料が調製されることが好ましく、材料が、いくらからの水素を含み、nが0より大きい。
【0033】
好ましくは、nが、少なくとも0.1(x+2y)である。さらに好ましくは、nが、少なくとも0.3(x+2y)である。さらにいっそう好ましくは、nが、少なくとも0.5(x+2y)である。材料が好ましい割合の水素を含む場合に、本発明による材料の可逆的な水素貯蔵特性が最も有効であることが明らかになっている。
【0034】
好ましくは、nが、0.99(x+2y)以下である。さらに好ましくは、nが、0.95(x+2y)以下である。さらにいっそう好ましくは、nが、0.9(x+2y)以下である。
【0035】
好ましくは、nが、0.1(x+2y)〜0.99(x+2y)の範囲である。さらに好ましくは、nが、0.3(x+2y)〜0.95(x+2y)の範囲である。さらにいっそう好ましくは、nが、0.5(x+2y)〜0.9(x+2y)の範囲である。
【0036】
適切には、水素貯蔵材料が、1.18〜11.66wt.%の、好ましくは3.53〜11.19wt.%の、さらに好ましくは5.89〜10.6wt.%の水素を含む。材料が好ましい割合の水素を含む場合に、本発明による材料の可逆的な水素貯蔵特性が最も有効であることが明らかになっている。
【0037】
本発明による水素貯蔵材料が、LiHまたはMgHと比較して著しく低い対応する水素化物の水素脱離の開始温度を示す。本願明細書における“水素脱離の開始温度”との表現は、水素脱離が観察される最も低い温度に対するものである。
【0038】
本発明による水素貯蔵材料が、水素に対する高い貯蔵能力を提供する一方、比較的低い温度での貯蔵材料からの水素の回収を可能にする。
【0039】
本願明細書における“脱水素化”との表現は、水素貯蔵材料からの水素の脱離に対するものである。“水素化”または“再水素化”との表現は、水素貯蔵材料による水素の吸収に対するものである。
【0040】
好ましい態様において、水素貯蔵材料の少なくとも一部、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらにいっそう好ましくは95%が、非晶質である。本願明細書における“非晶質”との表現は、非−結晶構造、すなわち、材料の少なくとも一部が、不規則な、非−結晶構造を有することに対するものである。本願明細書における非−結晶構造との表現は、X線回折(XRD)分析において、結晶質のピークが確認できない構造に対するものである。
【0041】
上記のように、特定の理論に縛られることを望むものではないが、結晶材料と比較してその改善された拡散特性のため、非晶質または非−結晶構造が好ましいと考えられる:特に、理論に縛られることを望むものではないが、規則的な結晶構造を欠くことにより、水素原子またはイオンが、構造を通してより自由に移動することが可能となりうると考えられる。
【0042】
金属Li及び/またはその水素化物を、金属Mg及び/またはその水素化物と接触させることにより、本発明による水素貯蔵材料が調製され、リチウム及びマグネシウムの水素化物が形成されうる。好ましくは、金属Li及びMgまたはLi及びMgの金属間化合物をよく混合することにより、本発明による水素貯蔵材料が調製されうる。任意に、Li、Mg及び/またはLi及びMgの金属間化合物が、各々水素化物の形態である。本方法が、水素源の存在下で実施される。この方法において、水素源が、例えば、水素分子含有ガス(好ましくは、以下に説明され例示されるような不活性雰囲気下)を含んでよく、及び/または、これらが開始材料として使用される場合に、金属水素化物中で結合されてよい。
【0043】
水素貯蔵材料を構成する成分が、不活性雰囲気下で、すなわち、真空下または他の反応性ガスまたは水素以外の蒸気成分を含まない雰囲気下で、よく混合されてよい。例えば、一つ以上の成分の酸化を防ぐために、雰囲気が、酸素を含まないべきである。適当な不活性雰囲気の例が、窒素、アルゴン及びこれらの混合物を含む。
【0044】
本発明による水素貯蔵材料を調製する好ましい方法が、原料からLi及びMgを蒸発させるステップと、水素源の存在下で蒸発させたLi及びMgを適当な基板上に堆積させるステップとを含む。この方法において、水素源が、例えば、水素分子含有ガス(好ましくは、上記において説明され例示されるような不活性雰囲気下)、または、水素原子を生成することが可能なプラズマ放電源を含んでよい。この方法により、上記の有利な特性を有する非晶質材料の調製が可能となる。
【0045】
典型的には、超高真空システム下で上記の蒸着方法が実施される。好ましくは、上記の蒸着方法が、5×10−9Pa〜1×10−6Paの範囲の、さらに好ましくは、1×10−7Pa〜5×10−6Paの範囲の、基準圧で実施される。一つの特定の実施例において、上記の蒸着方法が、1.3×10−6Paの基準圧で実施される。
【0046】
典型的には、蒸着が、5×10−6Pa〜5×10−3Paの範囲の、さらに好ましくは、1×10−5Pa〜1×10−3Paの範囲の、バックグラウンド水素圧下で実施される。一つの特定の実施例において、上記の蒸着方法が、6.9×10−4Paのバックグラウンド水素圧下で実施される。
【0047】
典型的には、上記の蒸着方法が、0〜500℃の、好ましくは10〜300℃の、さらに好ましくは20〜100℃の範囲の温度で、基板上で実施される。
【0048】
高スループット物理的気相成長法(HT−PVD)方式により、本発明による金属水素化物の直接的な合成が可能となる。典型的には、原子の原料が、分子線エピタキシャル(MBE)源である。適切には、蒸着材料の組成範囲を制御するために、“ウェッジ(wedge)”シャッターが使用される。この方法が、非特許文献6、非特許文献7、及び特許文献4においてさらに詳細に説明されており、その開示が、参照により本願明細書に組み込まれる。
【0049】
また、本発明は、可逆的にまたは不可逆的に水素を貯蔵するための本発明による水素貯蔵材料の使用に関する。例えば、水素貯蔵タンクまたは水素電池中に水素を貯蔵するために、本発明による水素貯蔵材料が、単独で、または他の材料と組み合わせて使用されてよい。
【0050】
本発明による水素貯蔵材料と、好ましくは水素ガスである水素含有ガスとを接触させることにより、水素が、水素貯蔵材料中に貯蔵される。適切には、好ましくは、0.1〜5Mpaの範囲である、さらに好ましくは、0.5〜1.5Mpaの範囲である、高圧下で、材料が、水素含有ガスと接触される。水素貯蔵材料が水素含有ガスと接触される温度が、任意の適当な温度であってよく、典型的には10℃以上であり、好ましくは、10〜150℃の範囲であり、さらに好ましくは、15〜50℃の範囲である。適切には、室温で、水素貯蔵材料が、水素含有ガスと接触される。
【0051】
水素貯蔵材料を十分に水素化するために必要な任意の時間の間、水素貯蔵材料が、水素含有ガスと接触される。適切には、1〜24時間の間、さらに好ましくは5〜10時間の間、材料が、水素含有ガスと接触される。
【0052】
本発明による少なくとも部分的に水素化された水素貯蔵材料から、水素を脱離または引き抜くことにより、水素含有ガスが得られうる。脱離の結果として、部分的に脱水素化された水素貯蔵材料が得られる。
【0053】
適切には、脱離が監視され、終了時にnが少なくとも0.1(x+2y)であるように、換言すると、材料が、存在する水素(全水素がイオン結合していると仮定する)の最大理論量の少なくとも10%を保持するように、脱離が終了される。好ましくは、脱離が監視され、終了時にnが少なくとも0.3(x+2y)であるように、脱離が終了される。さらに好ましくは、脱離が監視され、終了時にnが少なくとも0.5(x+2y)であるように、脱離が終了される。以下においてさらに詳細に説明するように、水素貯蔵材料中に最小量の水素を保持することで、水素化及び脱水素化プロセスが、可逆的に実行されることが可能となる。
【0054】
唯一の金属元素としてLiまたはMgのいずれかを含む水素貯蔵材料と比較して、十分に緩やかな温度条件下で、本発明による水素貯蔵材料から水素を脱離しうることは、本発明の利点である。その結果として、低い温度で水素貯蔵材料から水素が得られうる。
【0055】
水素化物の正確な組成及び所望の平衡圧に応じて、好ましくは、20〜600℃、好ましくは、200〜400℃、さらに好ましくは、250〜350℃の範囲である著しく高い温度に、及び好ましくは平衡圧以下である適当な圧力に、それを曝すことにより、少なくとも部分的に水素化された材料が、脱水素化されうる。適切には、平衡圧が、0.05〜5MPa、さらに好ましくは、0.05〜2MPa、さらに好ましくは、0.05〜1MPaの範囲である。
【0056】
しかしながら、本発明による水素貯蔵材料を可逆的に脱水素化及び再水素化することが出来るためには、最小量の水素が、得られた部分的に脱水素化された水素貯蔵材料中に保持されなければならないことが明らかとなっている。従って、本発明による水素貯蔵材料を使用する、可逆的に水素を脱離及び/または吸収する方法において、脱離が監視され、終了時にnが少なくとも0.1(x+2y)であるように、換言すると、材料が、存在する水素(全水素がイオン結合していると仮定する)の最大理論量の少なくとも10%を保持するように、脱離が終了される。好ましくは、脱離が監視され、終了時にnが少なくとも0.3(x+2y)であるように、脱離が終了される。さらに好ましくは、脱離が監視され、終了時にnが少なくとも0.5(x+2y)であるように、脱離が終了される。特定の理論に縛れることを望むものではないが、水素貯蔵材料から除去される水素量を制限することにより、元素Li及びMgの形成が、少なくとも部分的に防止されると、現在考えられている。脱水素化の間に形成される元素Li及びMg以外の中間生成物が、再水素化の影響をうけやすいと考えられる。
【0057】
本発明による水素貯蔵材料が、例えば、LiHまたはMgHと比較して、十分に緩やかな条件下で水素化または再水素化されうることは、本発明の利点である。
【0058】
(実施例)
以下の非制限的な実施例により、本発明が説明される。
【0059】
(試料調製)
非特許文献6、非特許文献7及び特許文献4に説明されているような“ウェッジ”成長法を使用し、薄膜試料が調製された。
【0060】
特注の超高真空システム(1.3×10−6Pa)内で、薄膜を構成するリチウム及びマグネシウムが、シリコンウェハー(例えば、Nova Electronic Materials Ltd)上に堆積された。水素(例えば、AirProducts,N5.5)のバックグラウンド圧力(6.9×10−4Pa)で、水素化物試料が調製された。リチウム(例えば、Sigma Aldrich,99.9%)を、823Kで蒸発させた。マグネシウム(例えば、Alfa Aesaer,99.98%)を、712Kで蒸発させた。レーザーアブレーションシステムを用いた誘導結合プラズマ質量分光法を使用し、組成分析が実施された。
【0061】
(実施例1:材料特性化)
16.7〜49.1の2シータの積分範囲にわたってgeneral area detector(GADS)を使用し、3600sの間に積分されたCuKα放射線(λCu=1.541nm)を使用し、Bruker D8 回折計を使用し、X線回折(XRD)によって、試料が分析された。ソースアーム(source arm)が、11°に設定され、検出器が25°であり、約1mmのスポットサイズを与えた。いずれの酸化を防ぐために、XRDの前に、試料が、非晶質二酸化シリコン膜(約100nm)で覆われた。
【0062】
XRDスペクトルにおいて、XRDピークは、確認されなかった。これは、検出可能な量の結晶材料が形成されず、調製された材料が、基本的に非晶質であることを意味する。
【0063】
(実施例2:脱水素化測定)
薄膜材料ライブラリから、温度脱離実験を実施するために、リチウム及びマグネシウム薄膜が、マイクロエレクトロメカニカル(MEMS)デバイスのアレイ上に堆積された。昇温脱離が、高真空チャンバ(5×10−7Pa)内で23℃s−1の速度で実施された。試料から20mmに位置された四重極質量分析計を使用し、水素分圧が、測定された。
【0064】
本発明による、すなわち、0.17<x<0.93、0.07<y<0.83及び0.2<x/y<13.3である水素貯蔵材料の代表の試料の水素脱離挙動が、上記の方法を使用して決定された。
【0065】
図1が、Li−Mg二元水素化物系に対する水素開始温度(リチウム容量に応じてプロットされた)を示す。比較のため、分解温度が、LiHに対して993Kであり、MgHに対して603Kである。
【0066】
本発明による全ての水素貯蔵材料が、著しく低い水素脱離開始温度を示す。17〜93at%の間で変化するリチウム容量の(図1に)示されたデータ内で、この開始温度が、リチウム容量の増加に比較的依存しないことが認められた。
【0067】
貯蔵材料に対する最適な組成を決定するために、開始温度に加え、重量当たりの能力が考慮され、図2に与えられた(重量当たりの能力が、リチウム容量に応じてプロットされた)。図2において、グレーの点が、最も近い5%に対する平均であり;黒い点が、実験から得られたものであり;白いものが、密度汎関数理論(DFT)計算から得られたものである。図示されたエラーバーが、1標準偏差である。
【0068】
DFT予測された固溶体の重量当たりの能力が、本発明において観察される能力と一致する(図2)。最も高い水素貯蔵能力(10.6wt.%)が、Li0.76Mg0.24の組成を有する水素貯蔵材料に対して得られた。
【0069】
(実施例3:脱水素化及び再水素化実験)
実施例1において特徴付けられた試料が、さらなる水素の取り込みが観察されなくなるまで、水素化された。第二ステップにおいて、高真空チャンバ内で、23Ks−1の速度で昇温脱離を実施することにより、水素化試料が、脱水素化された。試料から20mmに位置された四重極質量分析計を使用し、水素分圧が、測定された。300℃の温度で、脱水素化が、中断され、23℃s−1の速度で室温まで冷却された。この段階において、水素貯蔵材料が、未だ、約8wt.%の水素を含んでいた。
【0070】
第三ステップにおいて、室温条件下(23℃)で、8時間の間、10barの圧力で、試料を水素ガスと接触させることにより、得られた部分的に脱水素化された試料が再水素化された。
【0071】
最終ステップにおいて、可逆的に再−吸収されることが可能である水素量を決定するために、初期の試料に対して使用されたものと同じ温度プログラムに従い、第三ステップから得られた少なくとも部分的に再水素化された試料が、再び脱水素化された。初期の試料から第二ステップにおいて脱離された水素の最大50%が、部分的に脱水素化された水素貯蔵材料内に可逆的に再吸収されたことが観察された。これは、本発明による水素貯蔵材料が、可逆的に水素を貯蔵できることを示す。
【0072】
上記明細書において言及された全ての刊行物が、参照により本願明細書に組み込まれる。本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、説明された本発明の方法及びシステムの様々な修正及び変更が、当業者には明らかであろう。本発明が、特定の好ましい実施形態に関連して説明されたが、特許請求の範囲に記載するような本発明が、このような特定の実施形態に不当に制限されるべきではないことが理解されるべきである。実際には、化学及び材料科学または関連する分野における当業者には明らかである、本発明を実施するために説明されたモードの様々な修正が、特許請求の範囲に記載の発明の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本的にリチウム及びマグネシウムの水素化物により構成された可逆的に水素を貯蔵するための水素貯蔵材料であって、該水素貯蔵材料が、一般式:
LiMg
を有し、
(i)xが、0.17〜0.93の範囲であり、
(ii)yが、0.07〜0.83の範囲であり、及び
(iii)nが、(x+2y)以下であり、
(a)x=y;(b)x=2yまたは(c)2x=yである場合に、nが、(x+2y)ではないことを特徴とする水素貯蔵材料。
【請求項2】
xが、0.5〜0.93の範囲であり、yが、0.07〜0.5の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵材料。
【請求項3】
xが、0.6〜0.8の範囲であり、yが、0.2〜0.4の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の水素貯蔵材料。
【請求項4】
xが、0.7〜0.8の範囲であり、yが、0.2〜0.3の範囲であることを特徴とする請求項3に記載の水素貯蔵材料。
【請求項5】
x/yのモル比が、1.5〜4の範囲であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の水素貯蔵材料。
【請求項6】
nが、0.1(x+2y)〜0.99(x+2y)の範囲であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の水素貯蔵材料。
【請求項7】
nが、0.3(x+2y)〜0.95(x+2y)の範囲であることを特徴とする請求項6に記載の水素貯蔵材料。
【請求項8】
nが、0.5(x+2y)〜0.9(x+2y)の範囲であることを特徴とする請求項8に記載の水素貯蔵材料。
【請求項9】
基本的にリチウム及びマグネシウムの水素化物により構成された水素貯蔵材料の調製方法であって、前記水素貯蔵材料が、一般式:
LiMg
を有し、
(i)xが、0.17〜0.93の範囲であり、
(ii)yが、0.07〜0.83の範囲であり、及び
(iii)nが、(x+2y)以下であり、
金属Li及び/またはその水素化物と、金属Mg及び/またはその水素化物と、を接触させ、リチウム及びマグネシウムの水素化物を形成するステップを含むことを特徴とする水素貯蔵材料の調製方法。
【請求項10】
基本的にリチウム及びマグネシウムの水素化物により構成された水素貯蔵材料の調製方法であって、前記水素貯蔵材料が、一般式:
LiMg
を有し、
(i)xが、0.17〜0.93の範囲であり、
(ii)yが、0.07〜0.83の範囲であり、及び
(iii)nが、(x+2y)以下であり、
一つ以上の原料からLi及びMgを蒸発させるステップと、水素源の存在下で、適当な基板上に蒸発したLi及びMgを蒸着するステップと、を含むことを特徴とする水素貯蔵材料の調製方法。
【請求項11】
前記水素源が、水素分子含有ガスを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水素源が、水素原子を生成することが可能なプラズマ放電源を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
蒸着が、5×10−9Pa〜1×10−6Paの範囲の基準圧で実施されることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
蒸着が、1×10−7Pa〜5×10−6Paの範囲の基準圧で実施されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
蒸着が、5×10−6Pa〜5×10−3Paの範囲のバックグラウンド水素圧下で実施されることを特徴とする請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
蒸着が、1×10−5Pa〜1×10−3Paの範囲のバックグラウンド水素圧下で実施されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
基本的にリチウム及びマグネシウムの水素化物により構成された水素貯蔵材料の使用であって、可逆的に水素を貯蔵するために、前記水素貯蔵材料が、一般式:
LiMg
を有し、
(i)xが、0.17〜0.93の範囲であり、
(ii)yが、0.07〜0.83の範囲であり、及び
(iii)nが、(x+2y)以下であることを特徴とする水素貯蔵材料の使用。
【請求項18】
基本的にリチウム及びマグネシウムの水素化物により構成された水素貯蔵材料を使用する水素を可逆的に吸収する方法であって、前記水素貯蔵材料が、一般式:
LiMg
を有し、
(i)xが、0.17〜0.93の範囲であり、
(ii)yが、0.07〜0.83の範囲であり、及び
(iii)nが、(x+2y)以下であり、
前記水素貯蔵材料と、水素含有ガスと、を接触させるステップを含むことを特徴とする、水素を可逆的に吸収する方法。
【請求項19】
前記水素含有ガスが、0.1〜5MPaの圧力下にあることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記水素含有ガスが、0.5〜1.5MPaの圧力下にあることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
温度が、10〜150℃の範囲であることを特徴とする請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
温度が、15〜50℃の範囲であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
1〜24時間の間、前記水素貯蔵材料と、前記水素含有ガスとを接触させることを特徴とする請求項18から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
5〜10時間の間、前記水素貯蔵材料と、前記水素含有ガスとを接触させることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
基本的にリチウム及びマグネシウムの水素化物により構成された水素貯蔵材料から水素含有ガスを得る方法であって、前記水素貯蔵材料が、一般式:
LiMg
を有し、
(i)xが、0.17〜0.93の範囲であり、
(ii)yが、0.07〜0.83の範囲であり、及び
(iii)nが、(x+2y)以下であり、
水素ガス及び少なくとも部分的に脱水素化された水素貯蔵材料を得るために、前記水素貯蔵材料から水素を脱離させるステップを含むことを特徴とする、水素含有ガスを得る方法。
【請求項26】
脱離が監視され、終了時にnが少なくとも0.1(x+2y)であるように、脱離を終了させることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
脱離が監視され、終了時にnが少なくとも0.3(x+2y)であるように、脱離を終了させることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
脱離が監視され、終了時にnが少なくとも0.5(x+2y)であるように、脱離を終了させることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
基本的にリチウム及びマグネシウムの水素化物により構成された水素貯蔵材料を使用し水素を可逆的に脱離させる及び/または吸収する方法であって、前記水素貯蔵材料が、一般式:
LiMg
を有し、
(i)xが、0.17〜0.93の範囲であり、
(ii)yが、0.07〜0.83の範囲であり、及び
(iii)nが、(x+2y)以下であり、
前記方法が、
a)水素ガス及び部分的に脱水素化された水素貯蔵材料を得るために、前記水素貯蔵材料から水素を脱離させることにより前記水素貯蔵材料を脱水素化するステップであって、脱離が監視され、終了時にnが少なくとも0.1(x+2y)であるように、脱離を終了させる、ステップと、
b)可逆的に水素を貯蔵し、少なくとも部分的に再水素化された水素貯蔵材料を得るために、前記部分的に脱水素化された水素貯蔵材料と、水素含有ガスと、を接触させることにより、前記部分的に脱水素化された水素貯蔵材料を水素化するステップと、
を含むことを特徴とする、水素を可逆的に脱離させる及び/または吸収する方法。
【請求項30】
脱離が監視され、終了時にnが少なくとも0.3(x+2y)であるように、脱離を終了させることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
脱離が監視され、終了時にnが少なくとも0.5(x+2y)であるように、脱離を終了させることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
水素−燃焼エンジンに燃料を供給する方法であって、請求項25から31のいずれか一項に記載の方法に従い、水素貯蔵材料から水素を脱離させるステップと、前記水素−燃焼エンジンの入口に脱離された水素を供給するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項1から8のいずれか一項に記載の水素貯蔵材料を含む水素電池。
【請求項34】
請求項1から8のいずれか一項に記載の水素貯蔵材料を含む水素貯蔵タンク。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−500932(P2013−500932A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523373(P2012−523373)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001374
【国際公開番号】WO2011/015803
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(508106091)イリカ テクノロジーズ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】