説明

水質浄化方法

【課題】排水その他の汚染水の浄化処理の化学的な全体設計を行うことができる水質浄化方法を提供しようとするもの。
【解決手段】汚染水1の汚れ指標を設定汚れ指標2で除して処理系3内のフィードバック倍率を算出し、汚染水1とフィードバック水4の混合時の汚れ指標をそれぞれの水量を勘案して算出し、前記混合時の汚れ指標の算出値から設定汚れ指標2を減じて必要低減量を算出することにより汚染水を浄化するようにした。この水質浄化方法によると、汚染水の汚れ指標(例えば1000ppm)を設定汚れ指標(例えば5ppm)で除して処理系内のフィードバック倍率(例えば200倍)を算出し、汚染水とフィードバック水の混合時の汚れ指標(例えば10ppm)をそれぞれの水量を勘案して算出するようにしたので、生物処理の活性汚泥のような微生物の機嫌任せではない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排水、雨水その他の汚染水の水質浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理方法について次のような文献があった(特許文献1)。
すなわち、近年、環境基準ないし水質基準は益々厳しくなる傾向にあり、放流水についても高度に浄化することが望まれている。一方で、水不足解消の目的から、各種の排水を回収して再利用するためにも、高度な水処理技術の開発が望まれている。
このような状況において、RO膜分離処理は水中の不純物(イオン類、有機物、微粒子など)を効果的に除去することが可能であることから、近年、多くの分野で使用されるようになってきた。例えば、半導体製造プロセスから排出されるアセトン、イソプロピルアルコールなどを含む高濃度TOCあるいは低濃度TOC含有排水を回収して再利用する場合、これをまず生物処理してTOC成分を除去し生物処理水をRO膜処理して浄化する方法が広く採用されている、というものである。
しかし、生物処理の活性汚泥では微生物の機嫌任せな面があるという問題があった。
【特許文献1】特開2007−253073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこでこの発明は、排水その他の汚染水の浄化処理の化学的な全体設計を行うことができる水質浄化方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の水質浄化方法は、汚染水の汚れ指標を設定汚れ指標で除して処理系内のフィードバック倍率を算出し、汚染水とフィードバック水の混合時の汚れ指標をそれぞれの水量を勘案して算出し、前記混合時の汚れ指標の算出値から設定汚れ指標を減じて必要低減量を算出することにより汚染水を浄化するようにしたことを特徴とする。
前記汚染水として各種の工業排水、生活排水、食品工場や飲食店の洗浄排水、雨水などを例示することができる。前記汚染水の汚れ指標として、TOC(全有機炭素)やCOD(化学的酸素要求量)などを例示することができる。前記設定汚れ指標として、汚れ指標の目標値(後述)を例示することができる。
【0005】
ここで、前記フィードバック倍率の実際の調整に関し、(1)配管内の流量(ポンプ駆動によるLV値)を大きくする循環水量の増大(時間的要素に関連)や、(2)処理槽の容量(容積、大きさ、貯留量)の増大(空間的要素に関連、なお処理槽内は十分に攪拌して<酸化剤等を>均一に分散させることが好ましい)などによって対処することができる。
【0006】
この水質浄化方法によると、汚染水の汚れ指標(例えば1000ppm)を設定汚れ指標(例えば5ppm)で除して処理系内のフィードバック倍率(例えば200倍)を算出し、汚染水とフィードバック水の混合時の汚れ指標(例えば10ppm)をそれぞれの水量を勘案して算出するようにしたので、生物処理の活性汚泥のような微生物の機嫌任せではない。
汚染水とフィードバック水の混合時の汚れ指標の算出方法は、具体的には次のようになる。
{「汚染水の汚れ指標(例えば1000ppm)×その供給量」+「フィードバック水の汚れ指標(例えば5ppm)×フィードバック倍率(例えば200倍)を乗じたフィードバック水量」}÷「汚染水の供給量+フィードバック水量」≒汚染水とフィードバック水の混合時の汚れ指標(例えば約10ppm)
【0007】
すなわち、汚染水とフィードバック水の混合時の汚れ指標をそれぞれの水量を勘案して算出し、前記混合時の汚れ指標の算出値(例えば約10ppm)から設定汚れ汚れ指標(例えば5ppm)を減じて必要低減量(例えば約10−5=約5ppm)を算出することにより汚染水を浄化するようにしたので、処理のために必要な薬剤量等のランニング・コストを予め推測することができる。
このようにして浄化した汚染水は河川放流する他に、さらにUF膜、RO膜、イオン交換樹脂などを利用して清浄度を向上させて純水、超純水などとして再利用することができ、かけがえの無い貴重な水資源として有効活用することができる。
【0008】
(2) 前記設定汚れ指標が汚れ指標の目標値の半分となるようにフィードバック倍率を調整するようにしてもよい。
このように設定汚れ指標が「汚れ指標の目標値の半分」となるようにすると、処理系から排出する際の汚れ指標が目標値(例えば10ppm)の半分(例えば5ppm)となり、「汚染水の原水」と「フィードバック水(例えば5ppm)」とが合流した時点で汚れ指標の目標値(例えば10ppm)を、処理系でこの目標値(例えば10ppm)から浄化(例えば有効塩素含有水や次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を添加したり電気分解したりする)することになるので、処理後の系外への排出時には確実に目標値(例えば10ppm)を下回るようにすることができる。
【0009】
(3)前記汚れ指標の必要低減量の多寡に応じて処理系の残留塩素濃度を調整するようにしてもよい。
このように汚れ指標の必要低減量(例えば5ppm)の多寡に応じて処理系の残留塩素濃度(例えば1000ppm)を調整するようにすると、酸化剤の添加量を経済的に設定することができる。
【0010】
(4)有隔膜電気分解装置の陽極側で有効塩素を生成させ、この有効塩素により汚染水を浄化するようにしてもよい。
このように構成すると、次亜塩素酸ソーダなどの酸化剤の薬剤使用量を削減し、より安価な電解時の電気代として処理費用をコスト・ダウンすることができる。
【0011】
(5)前記汚染水を事前に凝集沈殿し、この沈降分を生石灰と混合して消石灰の分解温度以上で焼成するようにしてもよい。
ここで、前記消石灰の分解温度は580℃であり、この温度以上で焼成するようにする。このように構成すると、沈降分の主として有機物の汚泥を熱分解(有機物→CO2)させ気化させて脱水して減容化することができると共に、沈降分の水と反応して消石灰に変化していた生石灰を再生<Ca(OH)+(熱)→CaO+H2O>して再利用することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
生物処理の活性汚泥のような微生物の機嫌任せではないので、汚染水の浄化処理の化学的な全体設計を行うことができる水質浄化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、この実施形態の水質浄化方法は、汚染水1として排水(例えば1m/時)の汚れ指標(例えば1000ppm)を設定汚れ指標2(例えば5ppm)で除して処理系3内のフィードバック倍率(例えば1000÷5=200倍)を算出し、汚染水1とフィードバック水4(例えば1×200=200m/時)の混合時(原水調製槽)の汚れ指標をそれぞれの水量(1m/時と200m/時)を勘案して算出し(詳しくは後述)、前記混合時の汚れ指標の算出値(例えば約10ppm)から設定汚れ指標2(例えば5ppm)を減じて必要低減量(例えば約5ppm)を算出することにより、汚染水1を浄化(例えば、有効塩素含有水や次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を添加したり、電気分解したりする)するようにした。
前記汚染水1として各種の工業排水、生活排水、食品工場や飲食店の洗浄排水、雨水などを例示することができる。前記汚染水1の汚れ指標として、TOC(全有機炭素)やCOD(化学的酸素要求量)などを例示することができる。前記設定汚れ指標2として、汚れ指標の目標値(具体例は、後述の処理系3から排出時の汚れ指標の目標値の半分)を例示することができる。
【0014】
また、前記フィードバック倍率(例えば200倍)の実際の調整に関し、(1)配管内の流量(ポンプP駆動によるLV値)を大きくする循環水量の増大(時間的要素に関連)や、(2)処理槽の容量(容積、大きさ、貯留量)の増大(空間的要素に関連、なお処理槽内は十分に攪拌して酸化剤等を均一に分散させることが好ましい)などによって対処することができる。
この水質浄化方法によると、汚染水1の汚れ指標(例えば1000ppm)を設定汚れ指標2(例えば5ppm)で除して処理系3内のフィードバック倍率(例えば200倍)を算出し、汚染水1(例えば1m/時)とフィードバック水4(例えば200m/時)の混合時の汚れ指標(例えば約10ppm)をそれぞれの水量を勘案して算出するようにしたので、生物処理の活性汚泥のような微生物の機嫌任せではなく、汚染水1の浄化処理の化学的な全体設計を行うことができるという利点を有する。
【0015】
汚染水1とフィードバック水4の混合時の汚れ指標の算出方法は、具体的には次のようになる。
{「汚染水1の汚れ指標(例えば1000ppm)×その供給量(例えば1m/時)」+「フィードバック水4の汚れ指標(例えば5ppm)×フィードバック倍率(例えば200倍)を乗じたフィードバック水量(例えば1×200=200m/時)」}÷「汚染水1の供給量+フィードバック水量(例えば1+200=201m/時)」≒汚染水1とフィードバック水4の混合時の汚れ指標(例えば約10ppm)
ここから数値のみを抜き出すと(1000×1+5×200)÷(1+200)≒9.95≒10ppmということになり、その単位は{〔ppm〕×〔m/時〕}÷〔m/時〕=〔ppm〕ということになる。
【0016】
そして、汚染水1(例えば1m/時)とフィードバック水4(例えば200m/時)の混合時(例えば201m/時)の汚れ指標をそれぞれの水量を勘案して算出し、前記混合時の汚れ指標の算出値(例えば約10ppm)から設定汚れ汚れ指標(例えば5ppm)を減じて必要低減量(例えば約5ppm)を算出することにより汚染水1を浄化するようにしたので、処理のために必要な薬剤量を予め推測することができる。
このようにして浄化した汚染水1の処理水は河川放流する他に、さらにUF膜濾過装置、RO膜濾過装置、イオン交換樹脂(図示せず)などを利用して清浄度を向上させ、pH調整5して純水、超純水などとして再利用することができ、かけがえの無い貴重な水資源として有効活用することができる。
【0017】
(2) 前記設定汚れ指標2(例えば5ppm)が、処理系3から排出時の汚れ指標の目標値の半分となるようにフィードバック倍率を調整するようにした。
このように設定汚れ指標2(例えば5ppm)が「汚れ指標の目標値の半分」となるようにしたので、処理系3から排出する際の汚れ指標が目標値(例えば10ppm)の半分(例えば5ppm)となり、「汚染水1の原水」と「フィードバック水4」とが合流した時点で汚れ指標の目標値(例えば約10ppm)を、処理系3でこの目標値(例えば10ppm)から浄化(例えば、有効塩素含有水や次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を添加したり、電気分解したりする)して設定汚れ指標2(例えば5ppm)まで低減することになるので、処理後の系外への排出時には確実に目標値(例えば10ppm)を下回るようにすることができるという利点を有する。
【0018】
(3)前記汚れ指標の必要低減量の多寡に応じて処理系3の残留塩素濃度6を調整するようにした。
このように汚れ指標の必要低減量の多寡(例えばCODやTOCが約10ppm→5ppm)に応じて処理系3の残留塩素濃度6(例えば残塩1000ppm)を調整するようにしたので、市販の酸化剤(次亜塩素酸ソーダなど)の添加量等を一次関数的に経済的に設定することができるという利点を有する。
ここで、汚れ指標の設定汚れ指標2が小さく(例えばCODやTOCが10ppm以下)なるように全体設計を行うと、「汚れ指標の必要低減量(例えばCODやTOCが約10ppm→5ppm)」も小さくなり、処理系3(原水調製槽等)の残留塩素濃度が比較的に低濃度(例えば残塩1000ppm)でも処理を行うことが可能となり、汚染水の原水の濃度(CODやTOCが数千ppm以上という高濃度)に起因する処理上の困難性や制限(呪縛)を打ち破ることができるという利点を有する。
【0019】
また、設定汚れ指標2を小さく全体設計することに関しては、循環ポンプPの容量が大きなものを選定することによって対応することができる。すなわち、従来のように高濃度の残留塩素濃度の酸化剤(例えば6万ppmとか12万ppmの次亜塩素酸ソーダの浄化槽)によって浄化処理を行うことから、処理系3の循環流路(図中、原水調製槽からポンプPで引き出される反時計回りの“太線の矢印の流路”)の循環ポンプPの容量が大きなものを選定して処理を行うように発想を180度転換することにより、「次亜塩素酸ソーダ等の薬剤費用」を「循環ポンプのP駆動の電気代」へとコスト低減することが出来るという利点を有する。
具体的な処理方法としては、前記循環流路(図中、太線の矢印の流路)の循環流量(例えば200m/時)を、汚染水の処理系3への流入出量(例えば1m/時)のフィードバック倍数倍(例えば200倍)とすることができる。
【0020】
(4)有隔膜電気分解装置に食塩水(3〜5%)を供給して、その陽極側で有効塩素(Cl2やHOCl)を生成させ、この有効塩素を有する電解水(電解水貯留槽に貯留する)をフィードバック水4に混合(例えば点滴)することにより汚染水1を浄化するようにした。
このように構成したので、次亜塩素酸ソーダなどの市販の酸化剤の薬剤使用量を削減し、より安価な電気分解時の電気代として処理費用をコスト・ダウンすることができるという利点を有する。
ここで、図示の有隔膜電気分解装置のように、食塩水ではなく酸化剤貯留槽の酸化剤(次亜塩素酸ソーダ)を電気分解して有効塩素を生成させるようにすることもでき、こうすると活性度の高い次亜塩素酸ラジカル(ClO・)を生成させて汚れ成分を分解することができる。
【0021】
また、処理系3の循環流路のフィードバック水4の一部を有隔膜電気分解装置に供給するように構成し、このフィードバック水4の一部を電極による直接電解によって浄化してから汚染水1と混合せしめるようにすることもできる。
さらに、有隔膜電気分解装置で生成させた有効塩素を有する電解水(1)を、原水槽に導入して事前に汚れ成分を分解しておくようにすることもできる。また、UF膜濾過装置を通した清浄水(2)や、RO膜濾過装置を通した清浄水(3)を前記原水槽に導入して、予め汚れ成分の濃度を低減しておくようにすることもできる。これらにより、この水質浄化方法の処理系3における負荷を軽減して余裕を持たせた浄化運転を行えるようになる。
【0022】
(5)前記汚染水1を事前に凝集沈殿装置で凝集沈殿させ、この沈降分を汚泥脱水気化装置において生石灰と混合して消石灰の分解温度以上で焼成するようにした。
前記消石灰の分解温度は580℃であり、この温度以上で焼成するようにする。このように構成したので、沈降分の主として有機物の汚泥を熱分解させ気化(有機物→CO2)させて脱水して減容化することができると共に、沈降分の水と反応して消石灰に変化していた生石灰を再生<Ca(OH)+(熱)→CaO+H2O>して再利用することができるという利点を有する。
ここで、汚泥脱水気化装置における焼成時の排気はスクラバーで浄化して大気放出すると共に、前記スクラバー水は電解装置で浄化するようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0023】
汚染水の浄化処理の化学的な全体設計を行うことができることによって、種々の水質浄化方法の用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の水質浄化方法の処理系を含む排水処理装置の実施形態を説明するシステム・フロー図。
【符号の説明】
【0025】
1 汚染水
2 設定汚れ指標
3 処理系
4 フィードバック水
6 残留塩素濃度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染水1の汚れ指標を設定汚れ指標2で除して処理系3内のフィードバック倍率を算出し、汚染水1とフィードバック水4の混合時の汚れ指標をそれぞれの水量を勘案して算出し、前記混合時の汚れ指標の算出値から設定汚れ指標2を減じて必要低減量を算出することにより汚染水1を浄化するようにしたことを特徴とする水質浄化方法。
【請求項2】
前記設定汚れ指標2が汚れ指標の目標値の半分となるようにフィードバック倍率を調整するようにした請求項1記載の水質浄化方法。
【請求項3】
前記汚れ指標の必要低減量の多寡に応じて処理系3の残留塩素濃度6を調整するようにした請求項1又は2記載の水質浄化方法。
【請求項4】
有隔膜電気分解装置の陽極側で有効塩素を生成させ、この有効塩素により汚染水1を浄化するようにした請求項1乃至3のいずれかに記載の水質浄化方法。
【請求項5】
前記汚染水1を事前に凝集沈殿し、この沈降分を生石灰と混合して消石灰の分解温度以上で焼成するようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の水質浄化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−139630(P2012−139630A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293365(P2010−293365)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(399049981)株式会社オメガ (70)
【Fターム(参考)】