説明

水車式発電装置における水車機構

【課題】水車の羽根板が、回転に伴って水面上に出る際、並びに、水上に出た後に受ける負荷を減少させることにより、出力軸の回転効率の減少を極力防止し得る、水車式発電装置における水車機構を提供することを課題とする。
【解決手段】発電機8に回転駆動力を出力するための出力軸2を備えた軸筒1と、軸筒1の周側面に取り付けられる複数の羽根板3と、出力軸2を軸支するスタンド5とから成り、羽根板3は、出力軸2対して傾けて固定されたヒンジ4を介し、軸筒1の周側面の羽根板取付面から所定角度までの間、自由に回動し得るように軸筒1の周側面に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水車式発電装置における水車機構に関するものであり、より詳細には、非常にシンプルな構成で手軽に設置でき、しかも非常に効率よく発電を行うことを可能にする水車式発電装置における水車機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
川の流れを利用して水車を回すことにより得られる動力によって発電を行う、小型でシンプルな構成の水車式発電装置は、従来より種々のものが提案されている(例えば、特開平9−41350号公報、特開2006−132344号公報、特開2010−163978号公報、実用新案登録第3165106号公報等)。
【0003】
これらの装置においては、水流を受ける水車は、その回転軸(出力軸)より下の部分が水中に没するようにして設置され、水車の羽根板は、その回転駆動源である受圧面に受ける水流圧を無駄なく受けられるように、水の流れ方向に対して直交状態に配置される。その場合、水車の羽根は、下方垂直状態から上方に回転していくに従って、受ける水流圧が次第に減少していく一方、水面上に出ようとして受ける水圧、並びに、水上に出た後に羽根板上に残存する水の重量が負荷となり、この負荷により、回転駆動源となる水流圧が減殺されるため、出力軸の回転効率が落ちるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−41350号公報
【特許文献2】特開2006−132344号公報
【特許文献3】特開2010−163978号公報
【特許文献4】実用新案登録第3165106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の簡易な構造の水車式水力発電機の場合は、水車の羽根が水の流れ方向に対して直交状態に配置される結果、水面上に出ようとして受ける水圧、並びに、水上に出た後に羽根板上に残存する水の重量が負荷となって、出力軸の回転効率が落ちるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、そのような問題のない、即ち、水車の羽根板が、回転に伴って水面上に出る際、並びに、水上に出た後に受ける負荷を減少させることにより、出力軸の回転効率の減少を極力防止し得る、水車式発電装置における水車機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、発電機に回転駆動力を出力するための出力軸を備えた軸筒と、前記軸筒の周側面に取り付けられる複数の羽根板と、前記出力軸を軸支するスタンドとから成り、前記羽根板は、前記出力軸に対して傾けて固定されたヒンジを介し、前記軸筒周側面の前記羽根板取付面から所定角度までの間、自由に回動し得るように前記軸筒の周側面に取り付けられていることを特徴とする水車式発電装置における水車機構である。
【0008】
一実施形態においては、1本の前記出力軸に前記羽根板を備えた軸筒が複数並設される。また、一実施形態においては、前記出力軸に前記羽根板を備えた軸筒が2つ配設され、前記各軸筒に設置される前記羽根板が、互いに下り傾斜状態にて対向するように設置される。また、一方の側の前記軸筒の羽根板と他方の側の前記軸筒の羽根板とが、回転方向に少しずれるように配置されることがある。
【0009】
更に一実施形態においては、上記水車機構のいずれかを複数、互いに連係動作するように流れ方向に沿って配置して構成される。その場合の連係動作は、前記出力軸にスプロケット又はプーリを設置し、前記スプロケット又はプーリにチェーン又はベルトを巻き掛けることにより行わせる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述したとおりであって、羽根板が、出力軸に対して傾けて固定されたヒンジを介し、軸筒周側面の羽根板取付面から所定角度までの間、自由に回動し得るように軸筒の周側面に取り付けられているため、水面から出ようとする際に受ける水圧を、その羽根板の傾斜面においてまともに受けることなくかわすことができるので、水からの抜けがよくなり、また、水上に出るに伴い、直ちに自重で下方に回動することと相俟って、羽根板上の水が滞留することなく直ちに流れ落ちる。かくして、出力を減殺することになる羽根板に対する負荷が減少するため、出力軸からの出力効率が向上するという効果がある。
【0011】
また、本発明に係る水車式発電装置における水車機構は、簡易な構成にして上記作用効果を奏するため、安価にて各所に手軽に設置でき、例えば、鉄道信号回路その他のバッテリー充電用、夜間のLED照明用、農園の保護管理用、その他種々の用途向けの小規模発電用として活用し得る、非常に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る水車機構の一実施形態の構成を示す正面図である。
【図2】本発明に係る水車機構の一実施形態の構成を示す側面図である。
【図3】本発明に係る水車機構の一実施形態の作用を示す概略側面図である。
【図4】本発明に係る水車機構の一実施形態の使用状態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る水車機構の他の実施形態の構成を示す平面図である。
【図6】本発明に係る水車機構の他の実施形態の構成を示す側面図である。
【図7】本発明に係る水車機構の更に他の実施形態の構成を示す平面図である。
【図8】本発明に係る水車機構の更に他の実施形態の構成を示す平面図及びその場合におけるチェーンの巻き掛け方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面に依拠して説明する。図1及び図2は、本発明に係る水車式発電装置における水車機構の基本的構成を示すもので、それは、発電機8に回転駆動力を出力するための出力軸2を備えた軸筒1と、軸筒1の周側面に取り付けられる複数の羽根板3と、出力軸2を軸支するスタンド5とから成り、羽根板3は、軸筒1の周側面に出力軸2に対して傾けて固定されたヒンジ4を介して軸筒1の周側面に取り付けられる。羽根板3は、通例、金属製又は強化樹脂製とされる。
【0014】
軸筒1は円柱形状であってもよいが、通例、羽根板3の取り付けを容易にするために角柱形状とされ、羽根板3はその平坦な各周側面にヒンジ4を介して取り付けられる。図示した例では軸筒1は六角形状であるので、羽根板3は6枚設置されている。ヒンジ4は、出力軸2に対して所望角度α傾斜させて固定される(図1参照)。ヒンジ4は、羽根板3の回動角度を規制する。例えば、羽根板3はヒンジ4の作用で、その軸筒1周側面の羽根板取付面に対して略平行な状態から100度程度までの間、自由に回動し得るように支持される。そして、羽根板3は、水流圧を受けている間、その最大回動可能角度まで回動した状態を保持するように支持される(図3参照)。
【0015】
スタンド5は、軸筒1の両側に突出する出力軸2の端部を軸支するもので、水中又は陸上に立設される。スタンド5は、高さ調整可能であることが好ましい。出力軸2は、その一端又は両端が、陸上に配置される発電機8の入力軸に連結される。
【0016】
上記構成の水車機構は、その出力軸2を水中又は陸上に立設したスタンド5に軸支させ、軸筒1が水面上に位置するようにして設置する(図4参照)。そして、出力軸2を発電機8の入力軸に連結する。かくして、羽根板3が流圧を受けることにより出力軸2が回転し、連結されている発電機8の入力軸を回転駆動して発電を行わせる。
【0017】
この本発明に係る水車機構の場合、羽根板3は、出力軸2に対して角度α傾斜した状態に設置され、また、それが取り付けられる軸筒1の取付平面に対して略平行な状態から100度程度までの間で、自由に回動し得るようにヒンジ4により支持されている。従って、各羽根板3は、軸筒1の回転に伴って水中に没しようとする際、自重で下方に回動し(図3(B)において符号Fを付した仮想線の羽根板3参照)、水中に没すると、流圧を受けて直ちに最大回動可能角度回動した状態となり(図3(B)において符号Fを付した実線の羽根板3参照)、その状態のまま流圧を受けて回転し続ける。
【0018】
そして、羽根板3の回転が進むと、その受圧面において受ける流圧が次第に減少していく状態の中で、それにかかる水圧に打ち勝って水面から出ようとする。しかるに、羽根板3は、その際水平状態ではなく傾斜状態となっているので、水面から出ようとする際に受ける水圧を、まともに受けることなくその傾斜面に沿ってかわすことができるので、水からの抜けが、抵抗なくスムーズに進行する。また、羽根板3は、水上に出た後も傾斜状態を維持し、且つ、水上に出るに伴い直ちに自重で下方に回動することと相俟って、その上の水は直ちに流れ落ちて貯まることがなく、羽根板3の上方への回転の抵抗となることはない。
【0019】
このように本発明に係る水車機構の場合は、出力軸2の回転に対して抵抗となってその出力効率を低下させる、上方への回転に対する抵抗が少ないために、出力効率がよいのである。なお、羽根板3は水中においても水の流れに対して垂直ではなく傾斜した状態となるため、羽根板が水の流れに対して垂直状態となっている従来の場合に比較して受圧効率は落ちるが、上記負荷の減少による出力効率の向上によるメリットの方が大となる。
【0020】
図5乃至7は、上記構成の水車機構を複数用いる実施形態を示すものである。図5、図6に示す実施形態は、上記構成の水車機構を2つ、互いに連係動作するように流れ方向に沿って前後に配置するものである。例えば、互いに連係動作させるために、各出力軸2にスプロケット6が固定され、スプロケット6間にチェーン7が巻き掛けられる。スプロケット6とチェーン7の代わりに、ベルトとプーリ等の巻き掛け伝動手段を用いることとしてもよい。
【0021】
この実施形態の場合は、通例、一方の出力軸2からのみ出力するようにされ、発電機8はその一方の出力軸2にのみ連結される。この場合は、2つの水車機構の回転駆動力が、1本の出力軸2に相乗的に作用することになる。
【0022】
図7に示す実施形態は、1本の出力軸2に2つの軸筒1を配設した水車機構に関するものである。また、図7においては、この実施形態の発展例として、1本の出力軸2に2つの軸筒1を配設した水車機構を、上記実施形態におけるように、互いに連係動作するように流れ方向に沿って配置する構成が示されている。この場合の各軸筒1に設置される羽根板3は、互いに下り傾斜状態にて対向するように設置し、また、一方の側の羽根板3と他方の側の羽根板3とが、回転方向に少しずれるようにすることが好ましい。そのようにした場合は、一方の側の羽根板3に当たり、その傾斜に沿って流れる水流が他方の側の羽根板3に向けて誘導され、他方の側の羽根板3を付勢するように作用することになるので、一層出力効率が増大する。
【0023】
図8に示す実施形態は、図7に示す実施形態におけるように、1本の出力軸2に2つの軸筒1を配設した水車機構を、互いに連係動作するように流れ方向に沿って3連配置したものである。この場合、中間に位置する水車機構のスプロケット6は、それに対するチェーン7の掛け方により、前後のスプロケットと同一方向に回転し、あるいは、逆方向に回転するようになる。
【0024】
上記図5乃至8に示す実施形態の場合における作用効果は、基本的には図1乃至4に示す水車機構が単独の実施形態の場合と変わりはないが、複数の水車機構の相乗的効果により、単独の場合よりも出力効率が増大することは言うまでもない。
【0025】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【0026】
即ち、上記のとおり本発明に係る水車機構は、シンプルな構成で安価にて供給でき、例えば、鉄道信号回路その他のバッテリー充電用、夜間のLED照明用、農園の保護管理用、その他種々の用途向けの小規模発電用として手軽に設置活用し得るものとすることを第一義とするが、その発展的形態として、全体を大型サイズに構成して船舶のスクリュー後部に配置し、スクリューの推進から発生する反力を利用したり、潮流を利用したりする使用方法も可能なものである。
【符号の説明】
【0027】
1 軸筒
2 出力軸
3 羽根板
4 ヒンジ
5 スタンド
6 スプロケット
7 チェーン
8 発電機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機に回転駆動力を出力するための出力軸を備えた軸筒と、前記軸筒の周側面に取り付けられる複数の羽根板と、前記出力軸を軸支するスタンドとから成り、前記羽根板は、前記出力軸に対して傾けて固定されたヒンジを介し、前記軸筒周側面の前記羽根板取付面から所定角度までの間、自由に回動し得るように前記軸筒の周側面に取り付けられていることを特徴とする水車式発電装置における水車機構。
【請求項2】
前記出力軸に前記羽根板を備えた軸筒を複数並設した、請求項1に記載の水車式発電装置における水車機構。
【請求項3】
前記出力軸に前記羽根板を備えた軸筒を2つ配設し、前記各軸筒に設置される前記羽根板は、互いに下り傾斜状態にて対向するように設置した、請求項1又は2に記載の水車式発電装置における水車機構。
【請求項4】
一方の側の前記軸筒の羽根板と他方の側の前記軸筒の羽根板とが、回転方向に少しずれるように配置されている、請求項3に記載の水車式発電装置における水車機構。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の水車機構を複数、互いに連係動作するように流れ方向に沿って配置して成る、水車式発電装置における水車機構。
【請求項6】
前記出力軸にスプロケット又はプーリを設置し、前記スプロケット又はプーリにチェーン又はベルトを巻き掛けることにより前記連係動作を行わせる、請求項5に記載の水車式発電装置における水車機構。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−225182(P2012−225182A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91012(P2011−91012)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(594183831)伊岳商事株式会社 (15)
【Fターム(参考)】