説明

水道メータ用無線機

【課題】湿気による電子回路部等の故障若しくは誤動作を防止できる水道メータ用無線機を提供する。
【解決手段】回路基板アッシー3が収納されたハウジングHは、箱状の上ケース5と下蓋6とから成り、下蓋6の外周部は上ケース5に超音波溶着により一体に接合して固着されている。下蓋6の孔12にはケーブル2を貫通させて、回路基板アッシー3の電子回路部に接続する。又、下蓋ケース6内には、ケーブル2の一部が通過する区画室Sを形成すると共に、区画室Sに合成樹脂Pを注入・硬化して密閉状態に封止する。更に、区画室Sを通過するケーブル2の一定領域の外被を剥ぎ取ることで、ハウジングH内への湿気の浸入を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道メータ用無線機に関するものであり、特に、水道水の使用量等を無線にて検針できる水道メータ用無線機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、此種水道メータ用無線機はケーブルを介して水道メータに接続され、外部の自動検針器等に対して水道水の積算値データ等を無線通信にて検針できるように構成されている。
【0003】
前記無線機は、電子回路部等が搭載された回路基板組立体と、該回路基板組立体が収納されたハウジングと、前記回路基板組立体側の電子回路部等と水道メータ側とを接続するケーブルとを備えている(水道メータ用無線機に関して、例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−81970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の水道メータ用無線機は、一般に湿気の高い環境下に設置されるため、ハウジングの外側にてケーブルの外被表面に大気中の湿気(水滴を含む)が付着して、該外被の内部に浸透する。そして、該ケーブルの外被に浸透した湿気は、ケーブルの外被を伝わってハウジング内に浸入する
【0005】
又、前記ハウジングの下面に開口部を形成し、該下面開口部に下蓋を嵌着固定した場合は、下蓋の嵌着部から湿気がハウジング内に浸入するおそれがある。
【0006】
このように、従来の水道メータ用無線機はハウジング内に湿気が浸入し、該浸入した湿気の一部は回路基板組立体の電子回路部等の電子部品に到達する。その結果、湿気によって電子回路部等が障害を受けて、水道メータ用無線機に故障若しくは誤動作が発生するという問題があった。
【0007】
そこで、電子回路部等への湿気の浸入による水道メータ用無線機の故障若しくは誤動作を防止するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、電子回路部等が搭載された回路基板組立体と、該回路基板組立体が収納されたハウジングと、該ハウジングの一側壁部を貫通して前記電子回路部に一端部が接続され、且つ、他端部が水道メータ側に接続されたケーブルとを備えて成る水道メータ用無線機において、前記ハウジング内に前記ケーブルの所定領域を包囲するように区画室を形成すると共に、該区画室内に合成樹脂を注入・硬化させることにより、該区画室を密閉状態に封止して成る水道メータ用無線機を提供する。
【0009】
この構成によれば、ケーブルの所定領域を包囲する区画室内に合成樹脂を注入・硬化することにより、該区画室は完全な密閉状態に封止される。したがって、該区画室内のケーブルは、合成樹脂にて密封状態に閉鎖される。その結果、湿気がケーブルを介して回路基板組立体側に浸入しようとしても、該湿気の浸入は合成樹脂による密封シール部にて阻止される。
【0010】
請求項2記載の発明は、上記ハウジングは、下面開口部を有する合成樹脂製の上ケースと、該上ケースの下面開口部にシールリングを介して装着固定された合成樹脂製の下蓋とから成り、該下蓋の外周部は前記上ケースの開口外縁部に超音波溶着にて固定されている請求項1記載の水道メータ用無線機を提供する。
【0011】
この構成によれば、下蓋の外周部は上ケースの下面開口部に超音波溶着して一体に接合固定され、該超音波溶着部はシール機能を発揮する。又、超音波溶着の際、下蓋と上ケース間に介装したシールリングが弾性的に圧縮変形された状態になるため、シールリングによるシール作用が高まる。
【0012】
請求項3記載の発明は、上記合成樹脂により封止された上記ケーブルの一部領域は、外被を有しない裸線によって形成されている請求項1記載の水道メータ用無線機を提供する。
【0013】
この構成によれば、合成樹脂で密封される区画室内において、ケーブルの一部領域は、外被を有しない裸線であるため、該裸線に対する合成樹脂の密着性が増大する。又、ケーブルの裸線の箇所で外被が無くなるので、該外被を介する湿気の浸入が遮断される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明は、回路基板組立体への湿気の浸入を阻止できるので、湿気による水道メータ用無線機の故障若しくは誤動作を防止することができる。
【0015】
請求項2記載の発明は、下蓋と上ケースを一体化する超音波溶着部においてシール機能を発揮でき、更に、下蓋と上ケース間に介装したシールリングのシール作用が高まるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、超音波溶着部とシールリング介装部の双方における二重のシール構造によって湿気の浸入を確実に防止することができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、上記区画室内において、合成樹脂の密着シール性が増大し、且つ、ケーブルの外被が消失するので、請求項1記載の発明の効果に加えて、合成樹脂による密封シール効果と湿気の浸入経路(外被)の遮断効果を相乗的に発揮でき、回路基板組立体側への湿気の浸入をより完全に阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、電子回路部等への湿気の浸入による水道メータ用無線機の故障若しくは誤動作を防止するという目的を達成するため、電子回路部等が搭載された回路基板組立体と、該回路基板組立体が収納されたハウジングと、該ハウジングの一側壁部を貫通して前記電子回路部に一端部が接続され、且つ、他端部が水道メータ側に接続されたケーブルとを備えて成る水道メータ用無線機において、前記ハウジング内に前記ケーブルの所定領域を包囲するように区画室を形成すると共に、該区画室内に合成樹脂を注入・硬化させることにより、該区画室を密閉状態に封止することによって実現した。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施の形態を図1乃至図8に従って詳述する。図1は本実施例に係る水道メータ用無線機を示す平面図、図2は図1のA−A線に沿う断面図であり、更に、図3、図4及び図5は夫々前記無線機の側面図、斜視図及び拡大断面図、図6は一実施例に係る回路基板アッシーを固定する前の下蓋を説明する斜視図、図7は一実施例に係る回路基板アッシーを固定した後の下蓋を説明する斜視図、図8は一実施例に係る水道メータ用無線機の側面断面図である。
【0019】
本実施例では、回路基板組立体及び電池が収納されたハウジングは、下面開口部を有する上ケースと、該上ケースの下面開口部に超音波溶着にて固定された下蓋(ケーブルが貫通する下側壁部)とから形成され、更に、該下蓋の上面側に形成した区画室にはケーブル(一部は裸線)が通過すると共に、該区画室に合成樹脂が注入・硬化されている。これにより、湿気浸入媒体が途中で無くなることと相まって、合成樹脂による密封シール性能が格段にアップする。
【0020】
図1乃至図4において、水道メータ用無線機1はケーブル2を介して水道メータ(図示せず)に接続され、外部の自動検針器等に対して水道使用量等のデータを無線通信できるように構成されている。
【0021】
前記無線機1は合成樹脂製のハウジングHを備え、該ハウジングH内には、電子回路部(図示せず)を搭載した回路基板組立体(以下、「回路基板アッシー」という。)3と、該回路基板アッシー3に電源を供給する電池4とが収納されている。本実施例に係るハウジングHは、下面開口部を有する縦長の上ケース5と、該上ケース5の下面開口部に接合固定された下蓋6とから構成されている。また、上ケース5内における上部側には、図8に示すように、回路基板アッシー3の上端部3aを差し込み方式にて保持固定するための基板差込部7が設けられている。本実施例では、該基板差込部7は、回路基板アッシー3の厚さ方向の一側、他側(図8において左側、右側)に夫々配設された一側固定部材7A、他側固定部材(図2では左右一対)7B,7Bにより形成されている。これにより、回路基板アッシー3の上端部3aを基板差込部7に下方から差し込み方式にて組み付けることができる。尚、回路基板アッシー3の上端部3aを保持固定するための手段は、図示例に限定されないことは言うまでもない。
【0022】
図5は、下蓋6と上ケース5の嵌合構造の一例を示す詳細図である。同図に示すように、下蓋6の外周縁部と上ケース5の下面開口部とは、断面L型の段差状接合部位にて相互に固定されている。又、該下蓋6と上ケース5間の下段側接合部には、ゴム製のシールリング8が介装されている。
【0023】
前記下蓋6と上ケース5の上段側接合部は凹凸係合するように形成され、且つ、該凹凸係合部9は超音波溶着により一体化されている。又、下蓋6の上面における上記回路基板アッシー3と対応する箇所には、該回路基板アッシー3の下端部を軽圧入して固定するための係合用溝部(又は凹部)6Aが設けられている。図示例では、溝部6Aは、下蓋6上面に立設した一対の起立部材6B,6Cの間に形成され、該一対の起立部材6B,6Cは回路基板アッシー3の幅方向Wと同一方向に延伸している。特に、起立部材6Cの幅寸法は回路基板アッシー3の幅寸法と対応し、且つ、該起立部材6Cの幅方向両端部は回路基板アッシー3の幅方向両端面に当接できるように略L状に形成されている。したがって、回路基板アッシー3は、その下端部を溝部6Aに軽圧入すると移動不能に固定される(図7参照)。
【0024】
更に、下蓋6は下面中央部に筒状部6Bが突設され、且つ、該下蓋6の上面中央部には区画室Sを形成するための壁部10が形成されている。又、該区画室Sの下底部には円筒状の凹所11が設けられ、更に、該凹所11の下底部にはケーブル貫通用の孔12が開穿されている。
【0025】
下蓋6の孔12には、ケーブル2が上方向へ貫通してハウジングH内に引き込まれ、更に、区画室内10を通過して延在している。このケーブル2の先端部は、回路基板アッシー3の電子回路部に半田付けされている。
【0026】
尚、回路基板アッシー3と孔12の間にはゴム製のケーブルリング13が介装され、回路基板アッシー3と孔12間から湿気がハウジングH内に浸入しないように構成されている。
【0027】
図5の構成例では、ケーブル2は前記凹所11内において2本の芯部2A,2Aに分離するように形成され、更に、該芯部2A,2Aの外被は一定領域に亘り剥ぎ取られている。このため、該芯部2A,2Aの一定領域は外被の無い裸線(導線)14により形成されている。
【0028】
さらに、区画室S内には合成樹脂Pが注入・硬化され、該合成樹脂Pにより区画室Sは完全な密閉状態に封止されている。このため、外部の湿気がケーブル2の外被に付着・浸透して上ケース5内に浸入しようとしても、合成樹脂Pによる密封シール作用により湿気の浸入が阻止される。尚、ケーブル2の他端部と水道メータの連結部についても、上記同様に、合成樹脂による密封シール構造が施され、水道メータ内への湿気の浸入が阻止されている。
【0029】
次に、本実施例に係る水道メータ用無線機1のハウジングHの組み立て手順の一例について詳述する。まず、下蓋6に形成された孔12にケーブルリング13を組み込み、該ケーブルリング13の中にケーブル2の先端部を下方から押し込むように挿通させて、下蓋6の上面側にケーブル2の先端部を引き込む。
【0030】
この後、ケーブル2の先端部を回路基板アッシー3の電子回路部に半田付けする。次いで、回路基板アッシー3の下端部を下蓋6の溝部6Aに軽圧入して固定する。
【0031】
而して、区画室S及び凹所11内に合成樹脂Pを注入・硬化することにより、該区画室S及び凹所11が完全な密閉状態に封止閉鎖される。このあと、下蓋6の周縁部上面にシールリング8を敷設し、この状態で下蓋6の外周部を上ケース5の下面開口部に係合して組み込む。
【0032】
下蓋6を上ケース5に組み込む際は、回路基板アッシー3の上端部3aを上ケース5側の基板差込部7に下方から差し込む。これにより、回路基板アッシー3が上ケース5内に収納固定される。最後に、上ケース5の下面開口部と下蓋6外周縁部との凹凸係合部(接合部)9を超音波溶着にて一体化する。
【0033】
以上説明したように、本実施例によれば、ハウジングH内にケーブル2の一部が通過する区画室Sを形成し、該区画室S内に合成樹脂Pを注入・硬化することにより、該区画室Sを完全な密閉状態に封止するように構成したので、区画室Sにおいてケーブル2は、合成樹脂Pにより包囲されて密封シールされる。
【0034】
従って、ハウジングHの外側でケーブル2の外被に湿気が付着・浸透し、該付着・浸透した湿気がケーブル2を介してハウジングH内に浸入しようとしても、区画室S内の密封シール構造によって湿気の浸入が阻止される。斯くして、湿気に起因して回路基板アッシー3の電子回路部等に悪影響を及ぼすおそれがないので、水道メータ用無線機1の故障若しくは誤動作を確実に防止することができる。
【0035】
又、下蓋6の外周部と上ケース5の下面開口部との接合部を超音波溶着にて一体化させることにより、超音波溶着部は合成樹脂の溶融硬化によって高いシール機能を発揮するだけでなく、シールリング8も高いシール作用を奏する。即ち、超音波溶着の際に、下蓋6と上ケース5間に介装したシールリング8が弾性的な圧縮状態に潰れるため、該シールリング8による封止作用が著しく向上する。
【0036】
従って、下蓋6の外周部において、超音波溶着部とシールリング8により二重の密閉封止構造が形成されるので、ハウジングH内への湿気の浸入をより効果的に阻止することができる。
【0037】
さらに、区画室S内においてケーブル2の外被を一部領域に亘り剥ぎ取ったことにより、合成樹脂Pは外被の無い小径の裸線14をモールドするので、合成樹脂Pの密着シール性能が更に増大する。
【0038】
又、湿気の浸入媒体となるケーブル2の外被は、裸線14の箇所で除去されているので、該裸線14の箇所にて湿気の浸入経路が完全に消失する。従って、合成樹脂Pによる密封シール効果と相まって、回路基板アッシー3側への湿気の浸入を一層確実に阻止することができる。
【0039】
尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る一実施例を示し、水道メータ用無線機の平面図。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】一実施例に係る水道メータ用無線機の側面図。
【図4】一実施例に係る水道メータ用無線機の斜視図。
【図5】一実施例に係る水道メータ用無線機のケーブル接続部分を説明する要部拡大断面図。
【図6】一実施例に係る回路基板アッシーを固定する前の下蓋を説明する斜視図。
【図7】一実施例に係る回路基板アッシーを固定した後の下蓋を説明する斜視図。
【図8】一実施例に係る水道メータ用無線機の側面断面図。
【符号の説明】
【0041】
1 水道メータ用無線機
2 ケーブル
3 回路基板アッシー(回路基板組立体)
4 電池
5 上ケース(ハウジング本体)
6 下蓋(下ケース)
7 基板差込部
8 シールリング
9 凹凸係合部(超音波溶部)
10 壁部
11 凹所(区画室の一部)
12 孔
13 ケーブルリング
14 裸線(導線)
P 合成樹脂
H ハウジング
S 区画室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路部等が搭載された回路基板組立体と、該回路基板組立体が収納されたハウジングと、該ハウジングの一側壁部を貫通して前記電子回路部に一端部が接続され、且つ、他端部が水道メータ側に接続されたケーブルとを備えて成る水道メータ用無線機において、
前記ハウジング内に前記ケーブルの所定領域を包囲するように区画室を形成すると共に、該区画室内に合成樹脂を注入・硬化させることにより、該区画室を密閉状態に封止したことを特徴とする水道メータ用無線機。
【請求項2】
上記ハウジングは、下面開口部を有する合成樹脂製の上ケースと、該上ケースの下面開口部にシールリングを介して装着固定された合成樹脂製の下蓋とから成り、
該下蓋の外周部は前記上ケースの開口外縁部に超音波溶着にて固定されていることを特徴とする請求項1記載の水道メータ用無線機。
【請求項3】
上記合成樹脂により封止された上記ケーブルの一部領域は、外被を有しない裸線によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の水道メータ用無線機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−215959(P2008−215959A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51947(P2007−51947)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(591085422)高畑精工株式会社 (16)
【Fターム(参考)】