説明

水道施設の残圧利用発電装置

【課題】計測機器による構造の複雑化を来すことなく減圧量を常に的確に制御することのできる水道施設の残圧利用発電装置を提供する。
【解決手段】水車11の回転角速度を角速度検出部14によって検出し、角速度検出部14によって検出された角速度と水車11の特性との関係から水車11の推定流量を算出し、水車11による減圧量が目標減圧量になるように推定流量Qに基づいてインバータ13による発電機12のトルクを制御するようにしたので、流水から水圧や流量を検出することなく目標減圧量になるように発電機12を制御することができ、圧力計や流量計等の計測機器が不要となる。これにより、構造の簡素化と低コスト化を図ることができるので、水道施設の余剰圧力を利用可能な発電装置10の普及に貢献することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道施設の配水管路に設置され、配水管路の水道水を減圧しながら発電する水道施設の残圧利用発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水道施設においては、ダム湖等の水源から浄水場を経て一般家庭や各種施設等の需要家に配水しているが、需要家に十分に水道水が行き届くように高圧力で配水している。この場合、需要家に配水される水は高圧力では使用することができないため、需要家に配水される手前で減圧弁を用いて減圧している。しかしながら、この減圧による余剰圧力は有効に利用されていないため、送水圧が持つエネルギーの大半が損失されているのが現状である。
【0003】
また、減圧時の余剰圧力を発電に利用するようにしたものとして、減圧弁に代えて水力発電機を設け、発電機の発電負荷による水車の回転抵抗よって水車の下流側を減圧するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−22745号公報
【特許文献2】特開2002−242813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述のように発電機の水車によって配水管路の水道水を減圧する場合、減圧量が所定の目標減圧量になるように発電機を制御しているが、貯水池の水位の変化や上流側の圧送ポンプの吐出圧の変動等により発電機の上流側の水圧が変化したり、或いは需要家の水道使用状況により発電機の下流側の水圧が変化するため、このような水圧の変化に応じて発電機を制御する必要がある。そこで、従来では、水車の上流側と下流側にそれぞれ圧力計や流量計を設け、目標減圧量になるように発電機をフィードバック制御している。
【0006】
しかしながら、水車の上流側と下流側にそれぞれ圧力計や流量計を設ける場合、これらの計測機器により装置の構造が複雑になり、コストの増加を来すという問題点があった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、計測機器による構造の複雑化を来すことなく減圧量を常に的確に制御することのできる水道施設の残圧利用発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、水道水が流通する配水管路に設けられた水車と、水車の回転によって発電する発電機とを備え、発電機の発電負荷による水車の回転抵抗よって水車の下流側を減圧するようにした水道施設の残圧利用発電装置において、前記水車の回転角速度を検出する角速度検出手段と、角速度検出手段によって検出された角速度と水車の特性との関係から水車の推定流量を算出し、水車による減圧量が目標減圧量になるように前記推定流量に基づいて発電機のトルクを制御する制御手段とを備えている。
【0009】
これにより、角速度検出手段によって検出された水車の角速度と水車の特性との関係から算出した推定流量に基づいて、水車による減圧量が目標減圧量になるように発電機のトルクが制御されることから、流水から水圧や流量を検出することなく目標減圧量になるように発電機を制御することができる。
【0010】
また、本発明は前記目的を達成するために、水道水が流通する配水管路に設けられた水車と、水車の回転によって発電する発電機とを備え、発電機の発電負荷による水車の回転抵抗よって水車の下流側を減圧するようにした水道施設の残圧利用発電装置において、前記水車の回転角速度を検出する角速度検出手段と、角速度検出手段によって検出された角速度と水車の特性との関係から水車の推定流量を算出し、水車の流量が目標流量になるように前記推定流量に基づいて発電機のトルクを制御する制御手段とを備えている。
【0011】
これにより、角速度検出手段によって検出された水車の角速度と水車の特性との関係から算出した推定流量に基づいて、水車の流量が目標流量になるように発電機のトルクが制御されることから、流水から水圧や流量を検出することなく目標流量になるように発電機を制御することができる。
【0012】
また、本発明は前記目的を達成するために、水道水が流通する配水管路に設けられた水車と、水車の回転によって発電する発電機とを備え、発電機の発電負荷による水車の回転抵抗よって水車の下流側を減圧するようにした水道施設の残圧利用発電装置において、前記水車の回転角速度を検出する角速度検出手段と、角速度検出手段によって検出された角速度と水車の特性との関係から水車の推定流量を算出し、水車による減圧量が目標減圧量になるように前記推定流量に基づいて水車の回転角速度を制御する制御手段とを備えている。
【0013】
これにより、角速度検出手段によって検出された水車の角速度と水車の特性との関係から算出した推定流量に基づいて、水車による減圧量が目標減圧量になるように発電機の角速度が制御されることから、流水から水圧や流量を検出することなく目標減圧量になるように発電機を制御することができる。
【0014】
また、本発明は前記目的を達成するために、水道水が流通する配水管路に設けられた水車と、水車の回転によって発電する発電機とを備え、発電機の発電負荷による水車の回転抵抗よって水車の下流側を減圧するようにした水道施設の残圧利用発電装置において、前記水車の回転角速度を検出する角速度検出手段と、角速度検出手段によって検出された角速度と水車の特性との関係から水車の推定流量を算出し、水車の流量が目標流量になるように前記推定流量に基づいて水車の回転角速度を制御する制御手段とを備えている。
【0015】
これにより、角速度検出手段によって検出された水車の角速度と水車の特性との関係から算出した推定流量に基づいて、水車の流量が目標流量になるように発電機の角速度が制御されることから、流水から水圧や流量を検出することなく目標流量になるように発電機を制御することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、流水から水圧や流量を検出することなく発電機を制御することができるので、圧力計や流量計等の計測機器が不要となる。これにより、構造の簡素化と低コスト化を図ることができるので、水道施設の余剰圧力を利用可能な発電装置の普及に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す水道施設の概略図
【図2】発電装置の構成図
【図3】制御部の動作を示すフローチャート
【図4】制御系を示すブロック線図
【図5】水車特性曲線を示す線図
【図6】水車効率曲線を示す線図
【図7】本発明の第2の実施形態に係る制御部の動作を示すフローチャート
【図8】制御系を示すブロック線図
【図9】本発明の第3の実施形態に係る制御部の動作を示すフローチャート
【図10】制御系を示すブロック線図
【図11】本発明の第4の実施形態に係る制御部の動作を示すフローチャート
【図12】制御系を示すブロック線図
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1乃至図6は本発明の第1の実施形態を示すもので、水道施設の配水管路の水道水を減圧しながら発電する発電装置に関するものである。
【0019】
同図に示す水道施設は、ダム湖等の水源1から浄水場2及び貯水池3を経て一般家庭や各種施設等の需要家4に配水するもので、需要家4に十分に水道水が行き届くようにポンプ5によって高圧力で配水するようになっている。この場合、貯水池3と需要家4との間の配水管路6には、需要家4に配水される水道水を減圧するための発電装置10が設けられ、発電装置10で発電された電力は所定の電力利用先7に供給されるようになっている。
【0020】
本実施形態の発電装置10は、配水管路6に設けられた水車11と、水車11の回転によって発電する発電機12と、発電機12に任意のトルクを付与可能なインバータ13と、水車11の回転角速度を検出する角速度検出部14と、水車11による減圧量が目標減圧量になるようにインバータ13のトルクを制御する制御部15とを備えている。
【0021】
水車11は、例えば周知のフランシス形ポンプ逆転水車からなり、配水管路6を流通する水によって回転するようになっている。
【0022】
発電機12は、例えば商用周波数の交流電力を発生する周知の同期発電機からなり、水車11と一体に回転するようになっている。
【0023】
インバータ13は、発電機12で発電された電力を電力利用先7に供給するとともに、水車11の回転抵抗となるトルクを制御可能に構成されている。
【0024】
角速度検出部14は、インバータ13の電圧角速度または電流角速度から水車11の回転角速度を検出するように構成されている。
【0025】
制御部15は、マイクロコンピュータによって構成され、後述するプログラムによってインバータ13へのトルク指令値を制御するようになっている。
【0026】
以上のように構成された発電装置10においては、配水管路6を流通する水道水によって水車11が回転し、インバータ13による発電機12の発電負荷(水車11の回転抵抗)によって水車11の下流側が減圧されるとともに、発電機12で発電された電力がインバータ13を介して電力利用先7に供給される。その際、減圧量(水車11の上流側と下流側との圧力差)が所定の目標減圧量になるように、インバータ13による発電機12のトルクが制御部15によって制御される。
【0027】
ここで、制御部15の動作について、図3のフローチャートを参照して説明する。まず、角速度検出部14によって水車11の回転角速度ωを検出し(S1)、回転角速度ωと水車11の特性との関係に基づいて、トルク指令値Tref と回転角速度ωから水車11の流量Qを推定する(S2)。次に、目標減圧量Href を実現するためのトルク指令値Tref を推定流量Qから算出するとともに(S3)、推定流量Qから減圧量Hを推定する(S4)。続いて、推定減圧量Hと目標減圧量Href との差分をとり、減圧量のフィードバック項(PI制御項)をトルク指令値Tref に加えるとともに(S5)、所定の目標角速度ωref と角速度ωとの差分をとり、角速度のフィードバック項(P制御項)をトルク指令値Tref に加える(S6)。そして、このトルク指令値Tref をインバータ13に出力し(S7)、所定時間経過後(S8)、前記ステップS1に戻ってステップS1〜S8の動作を繰り返す。
【0028】
また、制御部15は、図4のブロック線図に示すように、流量推定器16、トルク指令値設定器17、減圧量推定器18、第1の比較器19、第2の比較器20、第1の加算器21及び第2の加算器22を備えている。流量推定器16は、水車11の特性と回転角速度ωとの関係から推定流量Qを算出するようになっており、水車11の特性は予め実験等によって得られる。トルク指令値設定器17は、水車11の効率特性に基づく関数を用いて推定流量Qと目標減圧量Href からトルク指令値Tref を算出するようになっている。減圧量推定器18は水車11の性能に基づく関数を用いて推定流量Qから推定減圧量Hを算出するようになっている。第1の比較器19は目標減圧量Href と推定減圧量Hとの偏差を求めるようになっており、その偏差はPI要素23によって比例積分演算された後、第1の加算器21によってトルク指令値Tref に加算される。また、第2の比較器20は目標角速度ωref と角速度ωとの偏差を求めるようになっており、その偏差はP要素24によって比例演算された後、第2の加算器22によってトルク指令値Tref に加算される。この場合、目標角速度ωref には、定格速度または効率最大角度が設定される。
【0029】
ここで、前記推定流量Qと推定減圧量Hの算出方法について説明する。まず、推定流量Qの算出には、前述したように水車の特性を用いるので、以下のように実験により水車特性と水車効率を求める。
【0030】
この実験では、計算式に用いる変数π1 ,π2 を式(1)(2)のように定義し、通水により回転する水車の角速度ω[rad/s]、損失水頭h[m]、流量Q[m3 /s]を測定することにより、図5に示すように変数π1 ,π2 による水車特性曲線を作成する。尚、d[m]は水車(羽根車)の直径、g[m/s2 ]は重力定数である。
【0031】
π1 =Q/ωd3 …(1)
π2 =gh/d2ω2 …(2)
次に、インバータにトルク指令値を与えた後、バルブで流量を調整しながら回転数を目標の数値にそろえ、回転する水車の角速度ω、減圧量H、流量Q、トルク指令値、発電電流を測定し、図6に示すように水車と発電機の効率と変数π1 による水車効率曲線を作成する。
【0032】
また、流水が持つエネルギーと水車が行う仕事の関係式は、エネルギー保存の法則より、以下の式(3) で表される。ここで、ηは水車のエネルギー効率(0≦η≦1)、ρ[kg/m3 ]は水の密度、T[N/m]は水車(発電機)のトルクである。
【0033】
η(Q)ρghQ=Tω …(3)
そして、式(3) と、図5の水車特性曲線を近似して得られる関数と、図6の水車効率曲線を近似して得られる関数とを用い、変数π1 ,π2 についての方程式を導き、これを解いてπ1 ,π2 を求めることにより、以下の式(4)(5)により推定流量Qと推定減圧量Hを算出する。
【0034】
Q=ωd3π1 …(4)
h=d2ω2π2 /g …(5)
次に、前記トルク指令値Tref の設定方法について説明する。トルク指令値Tref は、前述したように水車11の効率特性に基づく関数を用いて推定流量Qから算出するとともに、減圧量Hのフィードバック項と角速度ωのフィードバック項を加算することにより、以下の式(6) から求められる。
【0035】
ref =η(Q)ρgQHref/ω
+GH(s)(Href−H)
+Gω(s)(ωref−ω) …(6)
ここで、右辺第1項は前記式(3) より導かれる。右辺第2項は、減圧量Hのフィードバック項(PI制御項)であり、GH(s)はそのフィードバックコントローラである。また、右辺第3項は、角速度ωのフィードバック項(P制御項)であり、Gω(s)はそのフィードバックコントローラである。
【0036】
このように、本実施形態によれば、水道水が流通する配水管路6に設けられた水車11と、水車11の回転によって発電する発電機12とを備え、発電機12の発電負荷による水車11の回転抵抗よって水車11の下流側を減圧するようにしたので、減圧による余剰圧力を電力に変換して電力利用先7で有効に利用することができる。例えば、電力利用先7としては、通常は街路灯等の補助電源として利用することができるが、災害や発電設備の事故、或いは電力不足による停電時には、一般家庭や各種施設等に電力を供給することも可能である。その際、一部の地域で停電している場合には、その地域に設置されている発電装置10の電力を利用するだけでなく、近隣の他の地域の発電装置10の電力を停電地域に送電するようにすれば、より効果的に停電時の有効利用を図ることができる。
【0037】
また、本実施形態では、水車11の回転角速度ωを角速度検出部14によって検出し、角速度検出部14によって検出された角速度ωと水車11の特性との関係から水車11の推定流量Qを算出し、水車11による減圧量Hが目標減圧量Href になるように推定流量Qに基づいてインバータ13による発電機12のトルクを制御するようにしたので、流水から水圧や流量を検出することなく目標減圧量になるように発電機12を制御することができ、圧力計や流量計等の計測機器が不要となる。これにより、構造の簡素化と低コスト化を図ることができるので、水道施設の余剰圧力を利用可能な発電装置10の普及に貢献することができる。
【0038】
更に、水車11の回転角速度ωに基づいて推定流量Qを算出するようにしているので、水車11の回転数に依存することなくトルクを制御することができ、流量の変化により回転数が変動する環境下においても流量と減圧量との関係を的確に求めることができる。
【0039】
また、推定流量Qから算出した推定減圧量Hと目標減圧量Href との差分をPI要素23によって比例積分演算してトルク指令値Tref に加算するようにしたので、目標減圧量に追従するための適切なトルク指令を与えることができる。
【0040】
更に、角速度検出部14によって検出された回転角速度ωと所定の目標角速度ωref との差分をP要素24によって比例演算してトルク指令値Tref に加算するようにしたので、水車11の回転数を安定させることができる。
【0041】
また、発電機12にインバータ13によってトルクを付与するようにしたので、発電機12で発電した電力をインバータ13を介して電力利用先7に出力することができ、実用化に際して極めて有利である。
【0042】
この場合、インバータ13から水車11の回転角速度ωを検出するようにしたので、角速度を検出するための専用の計測機器を必要とせず、構造の簡素化を図る上で極めて有利である。
【0043】
図7及び図8は本発明の第2の実施形態を示すもので、前記実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0044】
前記第1の実施形態では、インバータ13によって発電機12のトルクを制御することにより、減圧量を制御するようにしたものを示したが、本実施形態では、インバータ13によって発電機12のトルクを制御することにより、水車11の流量を制御するようにしている。
【0045】
本実施形態の制御部15は、図7のフローチャートに示すように、まず、角速度検出部14によって水車11の回転角速度ωを検出し(S10)、回転角速度ωと水車11の特性との関係に基づいて、トルク指令値Tref と回転角速度ωから水車11の流量Qを推定する(S11)。次に、推定流量Qから減圧量Hを推定するとともに(S12)、目標流量Qref を実現するためのトルク指令値Tref を推定減圧量Hから算出する(S13)。続いて、推定流量Qと目標流量Qref との差分をとり、流量のフィードバック項(PI制御項)をトルク指令値Tref に加えるとともに(S14)、所定の目標角速度ωref と角速度ωとの差分をとり、角速度のフィードバック項(P制御項)をトルク指令値Tref に加える(S15)。そして、このトルク指令値Tref をインバータ13に出力し(S16)、所定時間経過後(S17)、前記ステップS10に戻ってステップS10〜S17の動作を繰り返す。
【0046】
また、本実施形態の制御部15は、図8のブロック線図に示すように、流量推定器16、トルク指令値設定器17、減圧量推定器18、第1の比較器19、第2の比較器20、第1の加算器21及び第2の加算器22を備えている。流量推定器16は、水車11の特性と回転角速度ωとの関係から推定流量Qを算出するようになっており、水車11の特性は予め実験等によって得られる。減圧量推定器18は水車11の性能に基づく関数を用いて推定流量Qから推定減圧量Hを算出するようになっている。トルク指令値設定器17は、水車11の効率特性に基づく関数を用いて推定減圧量Hと目標流量Qref からトルク指令値Tref を算出するようになっている。第1の比較器19は目標流量Qref と推定流量Qとの偏差を求めるようになっており、その偏差はPI要素23によって比例積分演算された後、第1の加算器21によってトルク指令値Tref に加算される。また、第2の比較器20は目標角速度ωref と角速度ωとの偏差を求めるようになっており、その偏差はP要素24によって比例演算された後、第2の加算器22によってトルク指令値Tref に加算される。この場合、目標角速度ωref には、定格速度または効率最大角度が設定される。
【0047】
次に、前記トルク指令値Tref の設定方法について説明する。トルク指令値Tref は、前述したように水車11の効率特性に基づく関数を用いて推定流量Qから算出するとともに、流量Qのフィードバック項と角速度ωのフィードバック項を加算することにより、以下の式(7) から求められる。
【0048】
ref =η(Q)ρghQref/ω
+GQ(s)(Qref−Q)
+Gω(s)(ωref−ω) …(7)
ここで、右辺第1項は前記式(3) より導かれる。右辺第2項は、流量Qのフィードバック項(PI制御項)であり、GQ(s)はそのフィードバックコントローラである。また、右辺第3項は、角速度ωのフィードバック項(P制御項)であり、Gω(s)はそのフィードバックコントローラである。尚、推定流量Qの算出方法は、第1の実施形態と同様である。
【0049】
このように、本実施形態によれば、水車11の回転角速度ωを角速度検出部14によって検出し、角速度検出部14によって検出された角速度ωと水車11の特性との関係から水車11の推定流量Qを算出し、水車11の流量Qが目標流量Qref になるように推定流量Qに基づいてインバータ13による発電機12のトルクを制御するようにしたので、前記実施形態と同様、流水から水圧や流量を検出することなく目標流量になるように発電機12を制御することができ、圧力計や流量計等の計測機器が不要となる。尚、その他の効果は、前記実施形態と同様である。
【0050】
図9及び図10は本発明の第3の実施形態を示すもので、前記実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0051】
前記第1及び第2の実施形態では、発電機12のトルクを制御可能なインバータ13を用いたが、本実施形態のインバータ13は発電機12の回転角速度を制御可能に構成されている。即ち、前記第1及び第2の実施形態では、インバータ13によって発電機12のトルクを制御することにより、減圧量または流量を制御するようにしたものを示したが、本実施形態では、インバータ13によって発電機12の回転角速度を制御することにより、減圧量を制御するようにしている。
【0052】
本実施形態の制御部15は、図9のフローチャートに示すように、まず、角速度検出部14によって水車11の回転角速度ωを検出し(S20)、回転角速度ωと水車11の特性との関係に基づいて、発電機トルクTと回転角速度ωから水車11の流量Qを推定する(S21)。次に、目標減圧量Href を実現するための角速度指令値ωref を推定流量Qから算出するとともに(S22)、推定流量Qから減圧量Hを推定する(S23)。続いて、推定減圧量Hと目標減圧量Href との差分をとり、減圧量のフィードバック項(PI制御項)を角速度指令値ωref に加える(S24)。そして、この角速度指令値ωref をインバータ13に出力し(S25)、所定時間経過後(S26)、前記ステップS20に戻ってステップS20〜S26の動作を繰り返す。
【0053】
また、本実施形態の制御部15は、図10のブロック線図に示すように、流量推定器16、角速度指令値設定器25、減圧量推定器18、比較器26及び加算器27を備えている。流量推定器16は、回転角速度ωと水車11の特性との関係に基づいて、発電機トルクTと回転角速度ωから推定流量Qを算出するようになっており、水車11の特性は予め実験等によって得られる。角速度指令値設定器25は、水車11の効率特性に基づく関数を用いて推定流量Qと目標減圧量Href から角速度指令値ωref を算出するようになっている。減圧量推定器18は水車11の性能に基づく関数を用いて推定流量Qから推定減圧量Hを算出するようになっている。比較器26は目標減圧量Href と推定減圧量Hとの偏差を求めるようになっており、その偏差はPI要素23によって比例積分演算された後、加算器27によって角速度指令値ωref に加算される。
【0054】
次に、前記角速度指令値ωref の設定方法について説明する。角速度指令値ωref は、前述したように水車11の効率特性に基づく関数を用いて推定流量Qから算出するとともに、減圧量Hのフィードバック項を加算することにより、以下の式(8) から求められる。
【0055】
ωref =η(Q)ρgQHref/T
+GH(s)(Href−H) …(8)
ここで、右辺第1項は前記式(3) より導かれる。右辺第2項は、減圧量Hのフィードバック項(PI制御項)であり、GH(s)はそのフィードバックコントローラである。尚、推定流量Qと推定減圧量Hの算出方法は、第1の実施形態と同様である。
【0056】
このように、本実施形態によれば、水車11の回転角速度ωを角速度検出部14によって検出し、角速度検出部14によって検出された角速度ωと水車11の特性との関係から水車11の推定流量Qを算出し、水車11による減圧量Hが目標減圧量Href になるように推定流量Qに基づいてインバータ13による発電機12の角速度を制御するようにしたので、前記実施形態と同様、流水から水圧や流量を検出することなく目標減圧量になるように発電機12を制御することができ、圧力計や流量計等の計測機器が不要となる。尚、その他の効果は、前記実施形態と同様である。
【0057】
図11及び図12は本発明の第4の実施形態を示すもので、前記実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0058】
前記第1及び第2の実施形態では、発電機12のトルクを制御可能なインバータ13を用いたが、本実施形態のインバータ13は発電機12の回転角速度を制御可能に構成されている。即ち、前記第1及び第2の実施形態では、インバータ13によって発電機12のトルクを制御することにより、減圧量または流量を制御するようにしたものを示したが、本実施形態では、インバータ13によって発電機12の回転角速度を制御することにより、流量を制御するようにしている。
【0059】
本実施形態の制御部15は、図11のフローチャートに示すように、まず、角速度検出部14によって水車11の回転角速度ωを検出し(S30)、回転角速度ωと水車11の特性との関係に基づいて、発電機トルクTと回転角速度ωから水車11の流量Qを推定する(S31)。次に、推定流量Qから減圧量Hを推定するとともに(S32)、目標流量Qref を実現するための角速度指令値ωref を推定減圧量Hから算出する(S33)。続いて、推定流量Qと目標流量Qref との差分をとり、流量のフィードバック項(PI制御項)を角速度指令値ωref に加える(S34)。そして、この角速度指令値ωref をインバータ13に出力し(S35)、所定時間経過後(S36)、前記ステップS30に戻ってステップS30〜S36の動作を繰り返す。
【0060】
また、本実施形態の制御部15は、図12のブロック線図に示すように、流量推定器16、減圧量推定器18、角速度指令値設定器25、比較器26及び加算器27を備えている。流量推定器16は、回転角速度ωと水車11の特性との関係に基づいて、発電機トルクTと回転角速度ωから推定流量Qを算出するようになっており、水車11の特性は予め実験等によって得られる。減圧量推定器18は水車11の性能に基づく関数を用いて推定流量Qから推定減圧量Hを算出するようになっている。角速度指令値設定器25は、水車11の効率特性に基づく関数を用いて推定減圧量Hと目標流量Qref から角速度指令値ωref を算出するようになっている。比較器26は目標流量Qref と推定流量Qとの偏差を求めるようになっており、その偏差はPI要素23によって比例積分演算された後、加算器27によって角速度指令値ωref に加算される。
【0061】
次に、前記角速度指令値ωref の設定方法について説明する。角速度指令値ωref は、前述したように水車11の効率特性に基づく関数を用いて推定流量Qから算出するとともに、流量Qのフィードバック項を加算することにより、以下の式(9) から求められる。
【0062】
ωref =η(Q)ρghQref/T
+GQ(s)(Qref−Q) …(9)
ここで、右辺第1項は前記式(3) より導かれる。右辺第2項は、流量Qのフィードバック項(PI制御項)であり、GH(s)はそのフィードバックコントローラである。尚、推定流量Qの算出方法は、第1の実施形態と同様である。
【0063】
このように、本実施形態によれば、水車11の回転角速度ωを角速度検出部14によって検出し、角速度検出部14によって検出された角速度ωと水車11の特性との関係から水車11の推定流量Qを算出し、水車11の流量Qが目標流量Qref になるように推定流量Qに基づいてインバータ13による発電機12の角速度を制御するようにしたので、前記実施形態と同様、流水から水圧や流量を検出することなく目標流量になるように発電機12を制御することができ、圧力計や流量計等の計測機器が不要となる。尚、その他の効果は、前記実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0064】
10…発電装置、11…水車、12…発電機、13…インバータ、14…角速度検出部、15…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道水が流通する配水管路に設けられた水車と、水車の回転によって発電する発電機とを備え、発電機の発電負荷による水車の回転抵抗よって水車の下流側を減圧するようにした水道施設の残圧利用発電装置において、
前記水車の回転角速度を検出する角速度検出手段と、
角速度検出手段によって検出された角速度と水車の特性との関係から水車の推定流量を算出し、水車による減圧量が目標減圧量になるように前記推定流量に基づいて発電機のトルクを制御する制御手段とを備えた
ことを特徴とする水道施設の残圧利用発電装置。
【請求項2】
前記制御手段を、前記推定流量から算出した推定減圧量と目標減圧量との差分を比例積分演算してトルク指令値に加算するように構成した
ことを特徴とする請求項1記載の水道施設の残圧利用発電装置。
【請求項3】
水道水が流通する配水管路に設けられた水車と、水車の回転によって発電する発電機とを備え、発電機の発電負荷による水車の回転抵抗よって水車の下流側を減圧するようにした水道施設の残圧利用発電装置において、
前記水車の回転角速度を検出する角速度検出手段と、
角速度検出手段によって検出された角速度と水車の特性との関係から水車の推定流量を算出し、水車の流量が目標流量になるように前記推定流量に基づいて発電機のトルクを制御する制御手段とを備えた
ことを特徴とする水道施設の残圧利用発電装置。
【請求項4】
前記制御手段を、前記推定流量と目標流量との差分を比例積分演算してトルク指令値に加算するように構成した
ことを特徴とする請求項3記載の水道施設の残圧利用発電装置。
【請求項5】
前記制御手段を、角速度検出手段によって検出された角速度と所定の目標角速度との差分を比例演算してトルク指令値に加算するように構成した
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の水道施設の残圧利用発電装置。
【請求項6】
水道水が流通する配水管路に設けられた水車と、水車の回転によって発電する発電機とを備え、発電機の発電負荷による水車の回転抵抗よって水車の下流側を減圧するようにした水道施設の残圧利用発電装置において、
前記水車の回転角速度を検出する角速度検出手段と、
角速度検出手段によって検出された角速度と水車の特性との関係から水車の推定流量を算出し、水車による減圧量が目標減圧量になるように前記推定流量に基づいて水車の回転角速度を制御する制御手段とを備えた
ことを特徴とする水道施設の残圧利用発電装置。
【請求項7】
前記制御手段を、前記推定流量から算出した推定減圧量と目標減圧量との差分を比例積分演算して角速度指令値に加算するように構成した
ことを特徴とする請求項6記載の水道施設の残圧利用発電装置。
【請求項8】
水道水が流通する配水管路に設けられた水車と、水車の回転によって発電する発電機とを備え、発電機の発電負荷による水車の回転抵抗よって水車の下流側を減圧するようにした水道施設の残圧利用発電装置において、
前記水車の回転角速度を検出する角速度検出手段と、
角速度検出手段によって検出された角速度と水車の特性との関係から水車の推定流量を算出し、水車の流量が目標流量になるように前記推定流量に基づいて水車の回転角速度を制御する制御手段とを備えた
ことを特徴とする水道施設の残圧利用発電装置。
【請求項9】
前記制御手段を、前記推定流量と目標流量との差分を比例積分演算して角速度指令値に加算するように構成した
ことを特徴とする請求項8記載の水道施設の残圧利用発電装置。
【請求項10】
前記発電機に水車の回転抵抗となる発電負荷を付与するインバータを備えた
ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の水道施設の残圧利用発電装置。
【請求項11】
前記角速度検出手段をインバータから水車の回転角速度を検出するように構成した
ことを特徴とする請求項10記載の水道施設の残圧利用発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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