説明

水酸化インジウム及び水酸化インジウムを含む化合物の製造方法

【課題】電解法により水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を製造するに際し、アノードの表面に水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物が付着するのを抑制し、かつカソードの表面にインジウム、又は、インジウム合金が電着することを防止し、生産性の低下や品質の低下を抑制する方法を提供する。
【解決手段】電解槽の中にカソード板と原料となるインジウム、又は、インジウム合金のアノード板とを、間隔を置いて交互に配列し、該カソード板とアノード板の間であり、かつ各カソード板とアノード板の一方の側縁の近傍位置に、カソード板とアノード板の他方の側縁に向かって電解液を供給するノズルを配置し、このノズルの開口部より流出させた電解液を、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させ、水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を電解液中に析出させる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主としてITO膜を形成するスパッタリング用ITOターゲットの製造に使用する酸化インジウム、又は、酸化インジウムを含む化合物の粉末の原料となる水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ITO(インジウム−錫を主成分とする複合酸化物)膜は液晶ディスプレーを中心とする表示デバイスの透明電極(膜)として広く使用されている。このITO膜を形成する方法として、真空蒸着法やスパッタリング法など、一般に物理蒸着法と言われている手段によって行われるのが普通である。特に、操作性や膜の安定性からマグネトロンスパッタリング法を用いて形成することが多い。
【0003】
スパッタリング法による膜の形成は、陰極に設置したターゲットにArイオンなどの正イオンを物理的に衝突させ、その衝突エネルギーでターゲットを構成する材料を放出させて、対面している陽極側の基板にターゲット材料とほぼ同組成の膜を積層することによって行われる。
スパッタリング法による被覆法は処理時間や供給電力等を調節することによって、安定した成膜速度でオングストローム単位の薄い膜から数十μmの厚い膜まで形成できるという特徴を有している。
【0004】
一般に、ITO焼結体ターゲットは、酸化インジウムと酸化スズを粉砕混合し、得られた混合粉を成形、焼結することにより製造されている。酸化インジウムと酸化スズとの粉砕混合には、ボールミル、V型混合機、あるいはリボン型混合機による乾式又は湿式混合が行われている。
【0005】
ITO焼結体ターゲットの原料となる酸化インジウム粉末は、水酸化インジウムを仮焼することにより製造することができる。この水酸化インジウムを製造する方法の代表的な公知技術が特許文献1に開示されている。この特許文献1の方法は、インジウムを陽極として電解することにより水酸化インジウムを製造するもので、これを仮焼して酸化インジウム粉末を得ている。なお、この特許文献1は、改称により出願人名が相違しているが、本出願人による出願である。
【0006】
酸化インジウムの製造方法として、中和法も考えられる。しかしながら、特許文献1にも記載されているように、次の問題があるので、電解法が有効である。
a) 得られる酸化インジウム粉末は諸特性(平均粒径,見掛密度等)のバラツキが大きく、これが酸化インジウム系の表示材料,蛍光体等の“品質バラツキの低減”或いは“高品質化”の阻害要因となっている。
b) 製造条件(液温,反応速度等)を一定に制御することが必ずしも容易でなく、これを安定させるために設備コストが上昇する。
c) 従来とは特性の異なる粉末を要求された場合に、この要求への柔軟な対応ができない。
d) 装置が比較的大掛かりとなり、そのため製造条件を一定に制御しようとすると、かなりの労力を要する上、増産への対応が必ずしも容易とは言えない。
e) 中和廃液(例えば硝酸アンモニウム)がその都度発生するのでその処理が必要であり、これがランニングコストを高める。
【0007】
次に、電解による水酸化インジウムの製造の代表例を示す。
硝酸アンモニウム(NHNO)、濃度:0.2〜5mol/L、pH:4〜10、温度:10〜50°Cの水溶液中において、インジウムを陽極(アノード)として、電流密度100〜1800A/mで通電して電解を行う。そして、電解槽底の沈積物をろ過、洗浄及び乾燥し、水酸化インジウムを得る。
この水酸化インジウムを原料として、酸化インジウムを製造する場合には、1100°C程度の温度で焙焼すれば良い。これによって、平均粒径1〜5μmの酸化インジウム粉末を得ることができる。
【0008】
上記の水酸化インジウムの電解に際しては、電解槽の中に、陽極(アノード)としてインジウム板を、陰極(カソード)には通常ステンレス板を配置し、この間に電解液を流して電解を行う。しかし、アノードの表面には生成した水酸化インジウムが付着し、カソードの表面にはインジウムが電着し、樹枝(デンドライト)状に伸びて、アノードとカソードがショートして、長時間電解ができないという問題が生じた。
【0009】
従来技術を調べると、次のような特許文献が開示されている。
特許文献2は、酸化インジウム粉末の製造方法であり、インジウムを陽極として、電解液中に水酸化インジウム沈殿を懸濁させた状態に攪拌して電解するものである。具体的には、攪拌を行わない場合には、電解槽の液面付近におけるpHは8.5程度であるが槽底付近のpHは3.2程度、電解液を攪拌することにより液面付近と槽底付近の電解液が混合され、pHが均一化されるというものである。
【0010】
撹拌は電解によって生じた水酸化インジウムの沈殿が電解液中に懸濁した状態になる程度としている。これより撹拌の程度が弱いと電解液のpHを均一化する効果が不十分になる。通常の電解では電解液を静流の状態にして行うのが普通であり、槽底のスライムが巻き上がるような撹拌は行わないが、本発明の電解工程では沈殿が懸濁する程度まで積極的に電解液を撹拌して電解を行うことを特徴とするものである。
電解液の液温40〜80°C(50〜70°C)、硝酸アンモニウムまたは塩化アンモニウムを電解液として使用する。電解液中の試薬濃度1〜3mol/L、電圧2〜4V、電流密度200〜900A/m(700A/m程度)、極間25m/m〜50m/m、カソードの材質はカーボンでも良いが通常はインジウム板を用いる。仮焼は、通常空気中で700〜1100°C(800〜950°C程度)としている。
【0011】
特許文献3には、酸化インジウム−酸化スズ粉末の製造方法が記載され、インジウムとスズとを別個の陽極として同時に電解(PR式のパルス通電)する技術が開示されている。電解液は、NHNOを使用し、濃度0.2〜5mol/L、pH4〜9.5、浴温0〜50°C、電流密度100〜1800A/m、で電解することが開示されている。これによって得た粉末を1100°Cで焙焼し、平均粒径20μm、見掛密度1.7g/cmのITO粉末を製造するものである。SnO含有割合10wt%、焼結体密度6.70g/cmや4.78g/cmのITOターゲットを得るものである。
【0012】
特許文献4には、ITOターゲットの製造方法として、水酸化インジウムを電解法により製造することが開示されている。具体的には、インジウムを陽極として電解することにより生じた水酸化インジウムを洗浄し純水に分散させる方法である。電解液である硝酸アンモニウムは、コスト及び純度維持の点で申し分ないのであるが、電極表面に不導体であるメタスズ酸が析出するため、連続的に電解を行うことができないと記載されている。水酸化インジウムの粒子径10μm以下、10〜80wt%の水酸化インジウムを分散させた分散溶液を使用し、水酸化インジウム分散溶液とメタスズ酸分散溶液とを混合したスラリーのpHは5以上9以下とすることが記載されている。
【0013】
特許文献5には、電解製錬における電解液の濃度を均質化する方法及び電解槽が記載され、電解槽の端部に給液ポケットが配置され、そこから陽極板と陰極板に向かって給液する際に、給液ポケットは上と下に、開口部があり、上部開口部から給液し、下部開口部から新たな電解液を給液すると共に、該給液ポケットの上側の側面に孔部を設け、そこからも陽極板と陰極板に向かって給液するようにして、電解液の濃度を均一化する方法が開示されている。この場合は、陽極板と陰極板に向かって、垂直方向の給液になっている。
【0014】
特許文献6には、電解精製又は電解採取用電解槽が開示され、給液側内壁に多数の給液孔を設け、排液側内壁に同様な多数の排液孔を設けて、アノードとカソード間に液流を直進させる構造の電解槽が記載されている。
【0015】
以上の公知文献には、水酸化インジウムの電解に際して、アノードの表面に、生成した水酸化インジウムが付着すること、カソードの表面にはインジウムが電着し、樹枝(デンドライト)状に伸びて、アノードとカソードがショートするという問題が生ずるという認識は一切開示されておらず、またこれを解決するための具体的方法の開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第2829556号公報
【特許文献2】特開平10−204669号公報
【特許文献3】特許第2736492号公報
【特許文献4】特開2001−303239号公報
【特許文献5】特開2007−204779号公報
【特許文献6】実開平3−89166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、電解により水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を製造する場合に発生する問題、すなわち電解槽の中に、陽極(アノード)としてインジウム、又は、インジウム合金板と、陰極(カソード)板とを配置し、この間に電解液を流して電解を行う際に、アノードの表面に、生成した水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物が付着し、カソードの表面にはインジウム、又は、インジウム合金が電着し、樹枝(デンドライト)状に伸びて、アノードとカソードがショートするという問題の原因を究明すると同時に、これを解決するための具体的な方策を提起し、生産性の低下や品質の低下を抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の方法を提供するものである。
1)水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を電解法により製造する装置であって、電解槽の中にカソード板と原料となるインジウム、又は、インジウム合金のアノード板とを、間隔を置いて交互に配列し、該カソード板とアノード板の間であり、かつ各カソード板とアノード板の間の一方の側縁近傍位置に、カソード板とアノード板の他方の側縁に向かって電解液を供給するノズルを配置し、このノズル開口部より流出させた電解液を、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させ、水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を電解液中に析出させることを特徴とする水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の電解製造装置。
【0019】
2)カソード板が、ステンレス板又はチタン板であることを特徴とする上記1)記載の水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の電解製造装置。
3)各カソード板とアノード板の間の、一方の側縁から他方の側縁に向かって電解液を供給するノズルを、1又は複数個配置し、このノズルの開口部より流出させた電解液を、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させ、水酸化インジウム又は水酸化インジウムを含む化合物を電解液中に析出させることを特徴とする請求項1又は2記載の水酸化インジウム又は水酸化インジウムを含む化合物の電解製造装置。
4)電解液中に析出した水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を取り出す装置、該水酸化物を濃縮し、固形分濃縮液と固形分希薄液に分離する装置、該固形分希薄液を前記電解液供給ノズルに分配する装置を有することを特徴とする上記1)〜3)のいずれか一項に記載の水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の電解製造装置。
5)前記固形分濃縮液を濾過し、この濾液を前記電解液供給ノズルに分配する装置と、濾過した固形物を乾燥して水酸化インジウム粉末、又は、水酸化インジウムを含む化合物粉末の製造装置を備えることを特徴とする上記4)記載の水酸化インジウム粉末、又は、水酸化インジウムを含む化合物粉末の電解製造装置。
【0020】
6)電解により水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を製造する方法であって、電解槽の中にカソード板と原料となるインジウム、又は、インジウム合金のアノード板とを、間隔を置いて交互に配列し、該カソード板とアノード板の間であり、かつ各カソード板とアノード板の一方の側縁の近傍位置に、カソード板とアノード板の他方の側縁に向かって電解液を供給するノズルを配置し、このノズルより流出させた電解液の液流を調節して、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させ、水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を電解液中に析出させることを特徴とする電解による水酸化インジウム又は水酸化インジウムを含む化合物の製造方法。
【0021】
7)カソード板としてステンレス板又はチタン板を用いて電解することを特徴とする上記6)記載の電解による水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の製造方法。
8)各カソード板とアノード板の間の、一方の側縁から他方の側縁に向かって電解液を供給するノズルを、1又は複数個配置し、このノズルの開口部より流出させた電解液のそれぞれの液流を調節して、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させ、水酸化インジウム又は水酸化インジウムを含む化合物を電解液中に析出させることを特徴とする上記6)又は7)記載の電解による水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の製造方法。
9)電解液中に析出した水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を取り出す工程、該水酸化物を濃縮し、固形分濃縮液と固形分希薄液に分離する工程、該固形分希薄液を前記電解液供給ノズルに分配する工程を、さらに有することを特徴とする上記6)〜8)のいずれか一項に記載の電解による水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の製造方法。
10)前記固形分濃縮液を濾過し、この濾液を前記電解液供給ノズルに分配する工程と、濾過した固形物を乾燥して水酸化インジウム粉末、又は、水酸化インジウムを含む化合物粉末とする工程を有することを特徴とする上記9)記載の電解による水酸化インジウム粉末、又は、水酸化インジウムを含む化合物粉末の製造方法。
【0022】
11)電解液の供給速度が、電流値、電解面積、時間あたり、0.01〜100.0 L・m2/A・分になるように電解液を流すことを特徴とする上記6)〜10)記載の水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
電解により水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を製造する際に、アノードの表面に水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を付着させず、またカソードの表面にインジウム、又は、インジウム合金を電着させずに、電解液を回流させ、効率的に水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を製造し、これによって生産性を向上させることができる優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】インジウムから水酸化インジウムを製造する電解工程のフローを示す図である。
【図2】電解槽にアノード(陽極)板とカソード(陰極)板を、間隔を置いて配置し、電解液を供給するノズルの供給口を、電解槽の上部に配置し、電解液を電解槽に供給する従来の電解装置の概略説明図である。
【図3】電解槽にアノード(陽極)板とカソード(陰極)板を、間隔を置いて配置すると共に、電解液を供給するノズルの供給口を、電解槽の中の下側であり、かつ各カソード板とアノード板の間の、一方の側縁に配置して、電解槽の中で電解液を回流させる電解装置の概略説明図である。
【図4】図3の装置を用いた場合の、液流を模式的に示した図である。
【図5】電解槽にアノード(陽極)板とカソード(陰極)板を、間隔を置いて配置すると共に、電解液を供給する2段のノズルの供給口を、電解槽の中の下側と上側であり、かつ各カソード板とアノード板の間の、一方の側縁に配置して、電解槽の中で電解液を回流させる電解装置の概略説明図である。
【図6】図5の装置を用いた場合の、液流を模式的に示した図である。
【図7】図6に対して、上部のノズルの位置を変えた装置を用いた場合の、液流を模式的に示した図である。
【図8】電解槽にアノード(陽極)板とカソード(陰極)板を、間隔を置いて配置し、電解液を供給する3段のノズルの供給口を、電解槽の中の下側、中段位置、上側であり、各カソード板とアノード板の間の、一方の側縁に配置して、電解槽の中で電解液を回流させる電解装置の概略説明図である。
【図9】図8の装置を用いた場合の、液流を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
インジウム(In)から水酸化インジウム(In(OH))を製造する電解工程のフローを図1に示す。この図1に示すように、原料となるインジウムを鋳造してインジウムからなるアノード板を製造し、これを電解槽に配置する。
電解槽には、ステンレス板又はチタン板からなるカソード板を交互に平行に複数枚配置する。電解槽には、電解液を供給する。電解液には、硝酸アンモニウム水溶液(NHNO)を用いる。なお、電解液については、特に指定されるものではなく、硝酸系水溶液、硫酸系水溶液、塩酸系水溶液或いはその他の電解質等の何れを用いても良いものの、コストや製品の純度維持の面から硝酸アンモニウム水溶液が好ましいと言える。
【0026】
以下の説明では、インジウム(In)から水酸化インジウム(In(OH))を製造する例を示すが、インジウム合金のアノードを使用して水酸化インジウムを含む化合物を製造する場合にも、同様に適用できる。インジウム合金の代表例は、ITOに使用するインジウム錫合金やインジウム亜鉛合金がある。これらに他の元素を添加した合金などがあり、本願発明の代表例として示すインジウム(In)から水酸化インジウム(In(OH))を製造する例と、同様の現象を生ずる場合の、全てに適用できる。
添加元素としては、上記の錫(Sn)、亜鉛(Zn)以外に、銅(Cu)、銀(Ag)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、ビスマス(Bi)、タリウム(Tl)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、カドミウム(Cd)等が挙げることができる。電解の際に、これらの添加元素の多くは、インジウムと同様に水酸化物となるが、添加元素の酸化物若しくは添加元素の単体若しくは合金又はこれらの混合物として存在する場合もある。本願発明は、水酸化インジウムに含まれる、これらの化合物(混合物を含む)の全てを含むものである。
【0027】
電解により、インジウムが溶解し、水酸化インジウムの微細粒子が電解液中に析出する。この電解液中に析出した水酸化インジウムを取り出し、これを濃縮して固形分濃縮液と固形分希薄液に分離する。固形分濃縮液は、濾過、乾燥して、水酸化インジウム粉末を得る。一方、固形分希薄液については、電解液に回流し、液調節をして再利用する。また、前記固形分濃縮液を濾過した濾液についても、電解液に回流し、液調節を行って再利用する。
【0028】
ここで問題となるのは、電解を行う際に、電解槽の中のインジウムからなるアノード板の表面に、生成した水酸化インジウムが付着し、またカソード板の表面にはインジウムが電着し、電解を継続できないという問題があった。
このインジウムは、樹枝(デンドライト)状に伸びて、アノードとカソードがショートするという問題も発生した。このような問題は、生産効率を上げるために電解電流密度を上げると、水酸化インジウムの付着やインジウムの電着が顕著に発生した。カソード板への水酸化インジウムの付着やアノード板へのインジウムの電着は、それほど強固なものではないが、その付着量が多くなると、次第に剥がれ難くなる傾向を持つものであった。
このため、電解の初期において、アノード板とカソード板の各間で、電解液を回流させ、電解液の回流により、カソードへの水酸化インジウムの付着やアノードへのインジウムの電着を阻止する方法(テスト)を行った。
【0029】
図2を用いて従来の電解装置を説明する。この図2に示す左側が電解槽の上面図であり、右側がアノード板とカソード板の中間位置での側面図である。図2に示すように、電解槽の中にアノード(陽極)板とカソード(陰極)板を、10〜500mmと間隔を置いて配置し、電解液を供給するノズルの供給口を、電解槽上部に配置する。
そして、図2の右側の図の矢印で示す方向に、電解液を電解槽の中に供給する。供給電解液の流れの強さ(電解液供給速度)は、0.5 L・m2/A・分とした。この電解液の流れの強さ(電解液供給速度)は、アノード、又は、カソードのいずれか一方の電流密度(A/dm又はA/m)に対する流速(L/分)を表す。以下、電解液の流れの強さ(電解液供給速度)を表す場合は、同様の意味で使用する。
【0030】
この従来の電解液の供給方法では、カソード板への水酸化インジウムの付着やアノード板へのインジウムの電着が発生した。電解液の流れの強さ(電解液供給速度)を上記よりも大きくしても、同様な結果となった。
このカソード板への水酸化インジウムの付着やアノード板へのインジウムの電着の発生を抑制するために、液流の方向を調節することを考え、いくつかの実験を行った。
【0031】
この水酸化インジウムの電解製造装置の概略説明図を、図3に示す。図3の左側が上方から見た概略説明図(上面図)であり、右側がアノード板とカソード板の中間位置での側面の概略説明図である。ノズルの配置以外は、図2に示す構造と同一である。
そして、図3の右側の図の矢印で示す方向に、電解液を回流させた。この電解液の流れの強さ(電解液供給速度)は、0.01〜100.0 L・m2/A・分とした。図3に示すように、液流を各アノード、カソード間の下から中央に旋回する流れになった。
【0032】
なお、電解液供給速度が0.01L・m2/A・分より低いと、回流方式でも、上記の問題点を解決できなかった。100.0L・m2/A・分より高いと、液の循環速度が速くなり、液が乱流となり、アノード表面のインジウムが粗大粒のまま剥離、脱落したり、生成した水酸化物の形状が非常に微細となり、使用不可能であった。この電解液の流れの強さ(電解液供給速度)は、好ましくは0.1〜10.0 L・m2/A・分とするのが良い。
【0033】
図3の液流の制御の結果から分かったことは、図3に示すようなノズルを用いると、カソード板への水酸化インジウムの付着やアノード板へのインジウムの電着が消失した。この原因を究明するために、電解槽内の電解液を調べ、確認したところ、図4の液流の模式図に示すように、カソード板とアノード板の中央部に十分な電解液の流れが生じていることが分かった。
【0034】
この結果、本発明の回流の方法は、極めて効果的であり、簡単な装置の改良で、アノード板への水酸化インジウムの付着やカソード板へのインジウムの電着の発生を効果的に抑制することができ、この付着や電着は、カソード板とアノード板の全ての面で発生は認められなかった。
【0035】
以上から、各カソード板とアノード板の間に、一方の側縁から他方の側縁に向かって電解液を供給し、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させることが、カソード板への水酸化インジウムの付着やアノード板へのインジウムの電着を抑制する有効な手段であり、本発明は、上記のような実験結果に基づくものである。
【0036】
すなわち、電解槽の中にカソード板と原料となるインジウムのアノード板とを、10〜500mmの間隔を置いて交互に配列し、該カソード板とアノード板の間であり、かつ各カソード板とアノード板の一方の側縁の近傍位置に、カソード板とアノード板の他方の側縁に向かって電解液を供給するノズルを配置し、このノズルの開口部より流出させた電解液を、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させ、水酸化インジウムを電解液中に析出させることが有効であることが分かった。
なお、電解液を供給するノズルの径(口径)については、電解槽の大きさ、各カソード板とアノード板の間隔の大きさ、電解液の供給量、ノズルの配置と個数等によって、適宜調節する。したがって、ノズルの径(口径)は、特に制限を受けるものではない。
【0037】
本発明においては、カソード板として、ステンレス板、又はチタン板を使用することが有効であるが、電解液を汚染しない限りは、他の材料であっても良い。
カソード板とアノード板の間については、広い間隙とすることもできるが、このような場合には、液流を増やすことも可能である。すなわち、カソード板とアノード板の間の他方の側縁に向かって電解液を供給するノズルとして、電解液を供給する1又は複数個のノズルを配置し、このノズルの開口部より流出させた電解液を、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させ、水酸化インジウムを電解液中に析出させることができる。
【0038】
電解液中に析出した水酸化インジウムを取り出す装置、該水酸化物を濃縮し、固形分濃縮液と固形分希薄液に分離する装置、該固形分希薄液を前記電解液供給ノズルに分配する装置を設置し、また前記固形分濃縮液を濾過し、この濾液を前記電解液供給ノズルに分配する装置と、濾過した固形物を乾燥して水酸化インジウム粉末とする水酸化インジウム粉末製造装置を有する電解製造装置とすることもできる。
固液分離装置、濾過装置、濾液分配装置、粉末製造装置等は、製造装置のコスト低減のために、本発明の電解装置に随伴させて設置することもできる。本願発明はこれらを包含する。
【0039】
下部ノズル、上部ノズル、又は中間ノズルの開口部より流出させた電解液の液流を調節し、それぞれの液流が、カソード板とアノード板間で、各カソード板とアノード板の一方の側縁から他方の側縁に向かって、弧を描くように回流させる(旋回させる)ことが有効である。この場合、電解液の回流は、各カソード板とアノード板の間に均一に流れ、その流れの一部が、カソード板とアノード板の表面に衝接することが必要であると考えられる。しかしながら、カソード板とアノード板の間でカソード板とアノード板の表面全体に回流できれば、その回流の方向は特に制限する必要はないと言える。
【実施例】
【0040】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲内で、実施例以外の態様あるいは変形を全て包含するものである。
【0041】
(実施例1)
上記図3に示すような装置を用いて、電解により水酸化インジウムを析出させた。具体的には、電解槽の中に、1000mm×700mm×5mmtのステンレス製カソード板11枚と原料となる1000mm×700mm×50mmtのインジウムからなるアノード板10枚とを交互に10組配列し、該カソード板とアノード板の間を50mmとり、かつ各カソード板とアノード板の間の一方の側縁の下端近傍位置(液面から1000mmの位置)に、カソード板とアノード板の他方の側縁に向かって電解液を供給するノズルを配置した。
【0042】
そして、図3の右側の図の矢印で示す方向に、電解液を回流させ、このノズルの開口部より流出させた電解液を、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させ、水酸化インジウムを電解液中に析出させた。この電解液の流れの強さ(電解液供給速度)は、0.1L・m2/A(アンペア)・分とした。図3に示すように、液流が下から上方に旋回する流れとなった。
【0043】
図3に示すような回流の方向によって、カソード板とアノード板の間に電解液の流れの空白部分が発生することがなく、全体的に均一に回流(旋回流)が生じていることが分かった。この結果、このアノード板への水酸化インジウムの付着やカソード板へのインジウムの電着が抑制できた。カソード板とアノード板の全ての面で発生は認められなかった。
なお、この場合アノードにインジウムを使用し、電解により水酸化インジウムを析出させた例を示したが、インジウム―スズなどのインジウム合金を使用してインジウム水酸化物を含む化合物を析出させた場合にも、同様の現象が得られた。以下の実施例においても同様であった。
【0044】
(実施例2)
実施例1と同様な方法で、この電解液の流れの強さ(電解液供給速度)を、10 L・m2/A・分とした。この場合、実施例1と同様に、このカソード板への水酸化インジウムの付着やアノード板へのインジウムの電着が抑制できた。カソード板とアノード板の全ての面で発生は認められなかった。
【0045】
(実施例3)
実施例1と同様な方法で、この電解液の流れの強さ(電解液供給速度)を、0.01 L・m2/A・分とした。この場合、カソード板への水酸化インジウムの付着やアノード板へのインジウムの電着が一部起きたが、使用できないことはなかった。
【0046】
(実施例4)
実施例1と同様な方法で、この電解液の流れの強さ(電解液供給速度)を、50 L・m2/A・分とした。この場合、アノードからインジウム粗大粒が、わずかに剥離したが、使用可能であった。
【0047】
(実施例5)
実施例1と同様な方法で、この電解液の流れの強さ(電解液供給速度)を、100 L・m2/A・分とした。この場合、アノードにインジウム粗大粒が一部剥離し、さらには微細な水酸化物(1100°Cで焙焼後の平均粒径が0.5μm以下)が、僅かに発生した。しかし、これ自体は大きな問題ではなく、使用可能であった。
【0048】
(実施例6)
図5に示すような装置を用いて、電解により水酸化インジウムを析出させた。具体的には、実施例1と同様のアノード、カソードを用いて、該カソード板とアノード板の間であり、かつ各カソード板とアノード板の間の一方の側縁の下端近傍位置(液面から1000mmの位置)と液面から155mmの位置に、カソード板とアノード板の他方の側縁に向かって電解液を供給する下部ノズルと上部ノズルを配置した。
【0049】
そして、図5の右側の図の矢印で示す方向に、2種の電解液を回流させ、この下部ノズルと上部ノズルの開口部より流出させた電解液を、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させ、水酸化インジウムを電解液中に析出させた。この電解液の流れの強さ(電解液供給速度)は、10 L・m2/A・分とした。図5に示すように、液流を上から中央に旋回する流れと、下から中央に旋回する流れの、2種の流れとなった。
【0050】
図5に示すような回流の方向によって、カソード板とアノード板の特定の場所に電解液の流れの空白部分が発生することがなく、全体的に均一に回流(旋回流)が生じていることが分かった。実施例1との主な相違は、液面から155mmの位置に上部ノズルを設けた点である。この結果、このカソード板への水酸化インジウムの付着やアノード板へのインジウムの電着が抑制できた。カソード板とアノード板の全ての面で発生は認められなかった。
【0051】
なお、図7の液流の模式図に示すように、実施例2と同様に、2段に配置したノズルを使用し、上段のノズルを液面から322mmの位置に配置して、実施例2と同じ実験を行ったところ、実施例2と同様な結果が得られた。
【0052】
(実施例7)
図8に示すような装置を用いて、電解により水酸化インジウムを析出させた。具体的には、実施例1と同様のアノード、カソードを用いて、該カソード板とアノード板の間であり、かつ各カソード板とアノード板の一方の側縁の下端近傍位置(液面から1000mmの位置)と液面から322mmの位置と上端近傍位置(液面から155mmの位置)に、カソード板とアノード板の他方の側縁に向かって電解液を供給する下部ノズルと中間ノズルと上部ノズルを配置した。
【0053】
そして、図8の右側の矢印で示す方向に、3種の電解液を回流させ、この下部ノズルと中間ノズルと上部ノズルの開口部より流出させた電解液を、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させ、水酸化インジウムを電解液中に析出させた。この電解液の流れの強さ(電解液供給速度)は、10 L・m2/A・分とした。上部ノズルからの液流を上から下に旋回する流れと、中間ノズルからの上下に分岐して旋回する流れと、下部ノズルからの下から上に旋回する流れの、3種の流れとなった。
【0054】
図8に示すような回流の方向によって、カソード板とアノード板の中央部に電解液の流れの空白部分が発生することがなく、全体的に均一に回流(旋回流)が生じていることが分かった。実施例2との主な相違は、中間ノズルの開口部を液面から322mmの位置に配置した点であるが、この場合でも、このカソード板への水酸化インジウムの付着やアノード板へのインジウムの電着が抑制できた。カソード板とアノード板の全ての面で発生は認められなかった。
【0055】
(比較例1)
図2に示すような装置を用いて、電解槽の片側液面上から電解液を導入し、電解により水酸化インジウムを析出させた。具体的には、実施例1と同様のアノード、カソードを用いた。この電解液の電解液供給速度は、0.5 L・m2/A・分とした。この結果、このアノード板へ水酸化インジウムが多量に付着し、またカソード板へのインジウムの電着もあり、電解が困難となった。
【0056】
(比較例2)
図2に示すような装置を用いて、電解液供給速度を、10 L・m2/A・分として電解を行った。この結果、アノード板へ水酸化インジウムが付着し、カソード板へインジウムの電着が発生した。この付着や電着は、主としてカソード板とアノード板のほぼ中央部と下部で発生した。電解液の流れの強さ(電解液供給速度)を上記よりも大きくしても、同様な結果となった。
【0057】
(比較例3)
電解装置を用いて、図2とは対照的に電解槽の片側の底1箇所から電解液を導入し、電解により水酸化インジウムを析出させた。この場合、各カソード板とアノード板の間にノズルを配置し、これらの板の間に電解液を回流させるのではなく、単に図2と同様に、電解槽の底の部分(1か所)から、電解液を供給した場合である。電解液供給速度を、0.5L・m2/A・分とした。
【0058】
この結果、アノード板へ水酸化インジウムが付着し、カソード板へインジウムの電着が発生した。この付着や電着は、主としてカソード板とアノード板のほぼ中央部で発生した。電解液の流れの強さ(電解液供給速度)を上記よりも大きくしても、同様な結果となった。
【0059】
(比較例4)
実施例1と同条件で、電解液供給速度を、0.009L・m2/A・分とした。この結果、アノード板へ水酸化インジウムが多量に付着し、カソード板へインジウムが電着し、アノードとカソードがショートしてしまい、電解を続けることが困難となった。この付着や電着は、主としてカソード板とアノード板のほぼ中央部で発生した。
【0060】
(比較例5)
実施例1と同条件で、電解液供給速度を、110L・m2/A・分とした。この結果、アノード板への水酸化インジウムの付着やカソード板へのインジウムの電着はなかったが、アノードからインジウム粗大粒の剥離が多量におこり、さらには微細な水酸化物(1100°Cで焙焼後の平均粒径が0.5μm以下)が多量に発生し、使用できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
電解により水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を製造する方法であって、電解槽の中にカソード板と原料となるインジウム、又は、インジウム合金のアノード板とを、間隔を置いて交互に配列し、該カソード板とアノード板の間であり、かつ各カソード板とアノード板の一方の側縁の近傍位置に、カソード板とアノード板の他方の側縁に向かって電解液を供給するノズルを配置し、このノズルの開口部より流出させた電解液の液流を調節して、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させ、水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を電解液中に析出させることを特徴とする電解による水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の製造方法。電解法により水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を製造するに際し、アノードの表面に水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物が付着するのを抑制し、かつカソードの表面にインジウム又はインジウム合金が生成するのを防止し、これによって生産性の低下を抑制することができる優れた効果を有するので、ITO膜を形成するスパッタリング用ITOターゲットの製造に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を電解法により製造する装置であって、電解槽の中にカソード板と原料となるインジウム、又は、インジウム合金のアノード板とを、間隔を置いて交互に配列し、該カソード板とアノード板の間であり、かつ各カソード板とアノード板の一方の側縁の近傍位置に、カソード板とアノード板の他方の側縁に向かって電解液を供給するノズルを配置し、このノズルの開口部より流出させた電解液を、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させ、水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を電解液中に析出させることを特徴とする水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の電解製造装置。
【請求項2】
カソード板が、ステンレス板又はチタン板であることを特徴とする請求項1記載の水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の電解製造装置。
【請求項3】
各カソード板とアノード板の間の、一方の側縁から他方の側縁に向かって電解液を供給するノズルを、1又は複数個配置し、このノズルの開口部より流出させた電解液を、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させ、水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を電解液中に析出させることを特徴とする請求項1又は2記載の水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の電解製造装置。
【請求項4】
電解液中に析出した水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を取り出す装置、該水酸化物を濃縮し、固形分濃縮液と固形分希薄液に分離する装置、該固形分希薄液を前記電解液供給ノズルに分配する装置を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の電解製造装置。
【請求項5】
前記固形分濃縮液を濾過し、この濾液を前記電解液供給ノズルに分配する装置と、濾過した固形物を乾燥して水酸化インジウム粉末、又は、水酸化インジウムを含む化合物粉末の製造装置を備えることを特徴とする請求項4記載の水酸化インジウム粉末の電解製造装置。
【請求項6】
電解により水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を製造する方法であって、電解槽の中にカソード板と原料となるインジウム、又は、インジウム合金のアノード板とを、間隔を置いて交互に配列し、該カソード板とアノード板の間であり、かつ各カソード板とアノード板の一方の側縁の下端近傍位置に、カソード板とアノード板の他方の側縁に向かって電解液を供給するノズルを配置し、このノズルの開口部より流出させた電解液の液流を調節して、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させ、水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を電解液中に析出させることを特徴とする電解による水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の製造方法。
【請求項7】
カソード板としてステンレス板又はチタン板を用いて電解することを特徴とする請求項6記載の電解による水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の製造方法。
【請求項8】
各カソード板とアノード板の間の、一方の側縁から他方の側縁に向かって電解液を供給するノズルを、1又は複数個配置し、このノズルの開口部より流出させた電解液のそれぞれの液流を調節して、電解槽中の各カソード板とアノード板の間で回流させ、水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を電解液中に析出させることを特徴とする請求項6又は7記載の電解による水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の製造方法。
【請求項9】
電解液中に析出した水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物を取り出す工程、該水酸化物を濃縮し、固形分濃縮液と固形分希薄液に分離する工程、該固形分希薄液を前記電解液供給ノズルに分配する工程を、さらに有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の電解による水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の製造方法。
【請求項10】
前記固形分濃縮液を濾過し、この濾液を前記電解液供給ノズルに分配する工程と、濾過した固形物を乾燥して水酸化インジウム粉末、又は、水酸化インジウムを含む化合物粉末とする工程を有することを特徴とする請求項9記載の電解による水酸化インジウム粉末、又は、水酸化インジウムを含む化合物粉末の製造方法。
【請求項11】
電解液の供給速度が、電流値、電解面積、時間あたり、0.01〜100.0 L・m2/A・分になるように電解液を流すことを特徴とする請求項6〜10記載の水酸化インジウム、又は、水酸化インジウムを含む化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−36074(P2013−36074A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171893(P2011−171893)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】