説明

水電解システム

【課題】水電解装置から酸素排出系に設けられる水貯留装置を介して外部に連続して連通する水素経路が形成されることを、簡単な構成で、確実に阻止することを可能にする。
【解決手段】水電解システム10は、純水を電気分解することによって高圧水素を製造する水電解装置12と、前記水電解装置12から排出される前記酸素及び余剰の水を分離し、前記水を貯留する水貯留装置14と、前記水貯留装置14に貯留される前記水を、前記水電解装置12に循環させる水循環装置16と、前記水貯留装置14に市水から生成された純水を供給する水供給装置18とを備える。戻り配管80の一端部には、水電解装置12から排出される酸素及び余剰の水をタンク部78内に導入する導入口80aが設けられ、この導入口80aは、前記タンク部78内に貯留される水の中で、常時、開口する位置に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側に給電体が設けられ、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させるとともに、カソード側に水素を発生させる水電解装置と、前記水電解装置から排出される前記酸素及び余剰の水を分離し、前記水を貯留する水貯留装置とを備える水電解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、アノード側電極に燃料ガス(主に水素を含有するガス、例えば、水素ガス)が供給される一方、カソード側電極に酸化剤ガス(主に酸素を含有するガス、例えば、空気)が供給されることにより、直流の電気エネルギを得ている。
【0003】
一般的に、燃料ガスである水素ガスを製造するために、水電解装置が採用されている。この水電解装置は、水を分解して水素(及び酸素)を発生させるため、固体高分子電解質膜(イオン交換膜)を用いている。固体高分子電解質膜の両面には、電極触媒層が設けられて電解質膜・電極構造体が構成されるとともに、前記電解質膜・電極構造体の両側には、給電体を配設してユニットが構成されている。すなわち、ユニットは、実質的には、上記の燃料電池と同様に構成されている。
【0004】
そこで、複数のユニットが積層された状態で、積層方向両端に電圧が付与されるとともに、アノード側給電体に水が供給される。このため、電解質膜・電極構造体のアノード側では、水が分解されて水素イオン(プロトン)が生成され、この水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、電子と結合して水素が製造される。一方、アノード側では、水素イオン(プロトン)と共に生成された酸素が、余剰の水を伴ってユニットから排出される。
【0005】
この種の水電解システムとして、例えば、特許文献1に開示された水素貯蔵発電システムが知られている。この水素貯蔵発電システムは、図11に示すように、2台の水電解装置1を備えるとともに、前記水電解装置1には、純水を供給する純水供給管2が取り付けられている。純水供給管2は、酸素と純水のタンク3に蓄えられた純水を、各水電解装置1のアノードに供給している。
【0006】
水電解装置1のアノードで発生した酸素は、浮力により酸素と純水のタンク3に導かれている。酸素と純水のタンク3内の酸素の圧力は、圧力制御バルブ4aにより所定の圧力以下に維持される一方、前記酸素と純水のタンク3内の酸素は、バルブ4bを介して外部に取り出されている。
【0007】
水電解装置1のカソードで発生した水素は、水素ドレインタンク5に純水とともに送られ、純水と分離されている。水素ドレインタンク5内の水素の圧力は、圧力制御バルブ6aにより所定の圧力以下に維持される一方、前記水素は、バルブ6bを介して外部に取り出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−68095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、水電解システムでは、部品の劣化や故障等に起因して、カソード側の水素が、固体高分子電解質膜を通ってアノード側に漏れる場合がある。従って、酸素と純水のタンク3には、酸素及び純水の他に水素が導入されるおそれがある。これにより、バルブ4bが開放されると、酸素と純水のタンク3内の酸素及び水素が外部に導かれ、外部から前記酸素と純水のタンク3を介して水電解装置1に連続して連通する水素経路が形成されるという問題がある。
【0010】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、簡単な構成で、水電解装置から酸素排出系に設けられる水貯留装置を介して外部に連続して連通する水素経路が形成されることを確実に阻止することが可能な水電解システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電解質膜の両側に給電体が設けられ、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させるとともに、カソード側に水素を発生させる水電解装置と、前記水電解装置から排出される前記酸素及び余剰の水を分離し、前記水を貯留する水貯留装置とを備える水電解システムに関するものである。
【0012】
水貯留装置は、水を貯留するタンク部と、水電解装置から排出される酸素及び余剰の水を前記タンク部内に導入する導入口とを設けるとともに、前記導入口は、前記タンク部内に貯留される前記水の中で、常時、開口する位置に設定されている。
【0013】
また、この水電解システムは、水貯留装置に貯留される水を、水電解装置に循環させる水循環装置を備えることが好ましい。
【0014】
さらに、この水電解システムは、水貯留装置に水を供給する水供給装置を備え、前記水貯留装置は、タンク部内の水位が設定高さであるか否かを検出する水位検出部を設けるとともに、前記水位検出部の検出信号に基づいて、前記水供給装置から前記水貯留装置への前記水の供給を制御することが好ましい。
【0015】
さらにまた、水貯留装置は、タンク部内の水位が下限設定高さであるか否かを検出する下限水位検出部を設けるとともに、前記下限水位検出部の検出信号に基づいて、水電解装置の運転を停止することが好ましい。
【0016】
また、水貯留装置は、タンク部内に配設される隔壁部材を備え、前記隔壁部材の上端部は、前記タンク部内の上限設定高さよりも上方に突出することが好ましい。
【0017】
さらに、タンク部は、水循環装置を介して水電解装置に水を戻すための水戻し口と、分離された気体成分を排出するための排気口とを設けるとともに、隔壁部材の下部側には、前記水戻し口に連通する下部開口部が形成される一方、前記隔壁部材の上部には、前記排気口に連通する上部開口部が形成されることが好ましい。
【0018】
さらにまた、隔壁部材は、複数枚設けられることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、電解質膜の両側に給電体が設けられ、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させるとともに、カソード側に水素を発生させる水電解装置と、前記水電解装置から排出される前記酸素及び余剰の水を分離し、前記水を貯留する水貯留装置と、前記水貯留装置に貯留される前記水を、前記水電解装置に循環供給する水循環装置とを備える水電解システムに関するものである。
【0020】
水貯留装置は、水を貯留するタンク部と、水電解装置から排出される酸素及び余剰の水を前記タンク部内に導入する導入口と、前記タンク部内の前記水を、水循環装置を介して前記水電解装置に戻す水戻し口とを設けるとともに、前記導入口は、前記水戻し口よりも下方に設定されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、水電解装置から排出される酸素及び余剰の水をタンク部内に導入する導入口は、前記タンク部内に貯留される前記水の中で、常時、開口する位置に設定されている。このため、水電解装置から酸素及び余剰の水に伴ってタンク部内に水素が導入されても、前記水電解装置から酸素排出系を介して外部に連続して連通する水素経路が形成されることを、簡単な構成で、確実に阻止することが可能になる。
【0022】
さらに、本発明によれば、水電解装置から排出される酸素及び余剰の水をタンク部内に導入する導入口は、前記タンク部内の水を、水循環装置を介して前記水電解装置に戻す水戻し口よりも下方に設定されている。従って、導入口は、タンク部内で、常時、水面下に配置されている。これにより、水電解装置から酸素排出系を介して外部に連続して連通する水素経路が形成されることを、簡単な構成で、確実に阻止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図2】前記水電解システムを構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図6】本発明の第5の実施形態に係る水電解システムの要部説明図である。
【図7】本発明の第6の実施形態に係る水電解システムの要部説明図である。
【図8】本発明の第7の実施形態に係る水電解システムの要部説明図である。
【図9】本発明の第8の実施形態に係る水電解システムの要部説明図である。
【図10】本発明の第9の実施形態に係る水電解システムの要部説明図である。
【図11】特許文献1に開示された水素貯蔵発電システムの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る水電解システム10は、水(純水)を電気分解することによって酸素及び高圧水素(常圧よりも高圧)を製造する水電解装置12と、前記水電解装置12から排出される前記酸素及び余剰の水を分離し、前記水を貯留する水貯留装置14と、前記水貯留装置14に貯留される前記水を、前記水電解装置12に循環させる水循環装置16と、前記水貯留装置14に市水から生成された純水を供給する水供給装置18と、前記水電解装置12から導出される前記高圧水素に含まれる水分を除去する気液分離器20と、前記気液分離器20から供給される水素に含まれる水分を吸着して除去する水素除湿器22と、コントローラ(制御部)23とを備える。
【0025】
水電解装置12は、高圧水素製造装置を構成しているが、常圧水素を製造する常圧水素製造装置を構成してもよい。なお、常圧水素とは、生成される酸素と水素とが等圧である場合を含む。
【0026】
水電解装置12は、複数の単位セル24が積層される。単位セル24の積層方向一端には、ターミナルプレート26a、絶縁プレート28a及びエンドプレート30aが外方に向かって、順次、配設される。単位セル24の積層方向他端には、同様にターミナルプレート26b、絶縁プレート28b及びエンドプレート30bが外方に向かって、順次、配設される。エンドプレート30a、30b間は、一体的に締め付け保持される。
【0027】
ターミナルプレート26a、26bの側部には、端子部34a、34bが外方に突出して設けられる。端子部34a、34bは、配線36a、36bを介して電源38に電気的に接続される。陽極(アノード)側である端子部34aは、電源38のプラス極に接続される一方、陰極(カソード)側である端子部34bは、前記電源38のマイナス極に接続される。
【0028】
図2に示すように、単位セル24は、円盤状の電解質膜・電極構造体42と、この電解質膜・電極構造体42を挟持するアノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46とを備える。アノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46は、円盤状を有するとともに、例えば、カーボン部材等で構成され、又は、鋼板、ステンレス鋼板、チタン板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板をプレス成形して、あるいは切削加工した後に防食用の表面処理を施して構成される。
【0029】
電解質膜・電極構造体42は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜48と、前記固体高分子電解質膜48の両面に設けられるアノード側給電体50及びカソード側給電体52とを備える。
【0030】
固体高分子電解質膜48の両面には、アノード電極触媒層50a及びカソード電極触媒層52aが形成される。アノード電極触媒層50aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層52aは、例えば、白金触媒を使用する。
【0031】
アノード側給電体50及びカソード側給電体52は、例えば、球状アトマイズチタン粉末の焼結体(多孔質導電体)により構成される。アノード側給電体50及びカソード側給電体52は、研削加工後にエッチング処理される平滑表面部を設けるとともに、空隙率が10%〜50%、より好ましくは、20%〜40%の範囲内に設定される。
【0032】
単位セル24の外周縁部には、積層方向に互いに連通して、水(純水)を供給するための水供給連通孔56と、反応により生成された酸素及び未反応の水(混合流体)を排出するための排出連通孔58と、反応により生成された水素を流すための水素連通孔60とが設けられる。
【0033】
アノード側セパレータ44の電解質膜・電極構造体42に向かう面44aには、水供給連通孔56に連通する供給通路62aと、排出連通孔58に連通する排出通路62bとが設けられる。面44aには、供給通路62a及び排出通路62bに連通する第1流路64が設けられる。この第1流路64は、アノード側給電体50の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。
【0034】
カソード側セパレータ46の電解質膜・電極構造体42に向かう面46aには、水素連通孔60に連通する排出通路66が設けられる。面46aには、排出通路66に連通する第2流路68が形成される。この第2流路68は、カソード側給電体52の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。
【0035】
アノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46の外周端部を周回して、シール部材70a、70bが一体化される。このシール部材70a、70bには、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。
【0036】
図1に示すように、水循環装置16は、水電解装置12の水供給連通孔56に連通する循環配管72を備え、この循環配管72は、循環ポンプ74及びイオン交換器76を配置して水貯留装置14を構成するタンク部78の底部に接続される。
【0037】
タンク部78の上部には、戻り配管80の一端部が連通するとともに、前記戻り配管80の他端は、水電解装置12の排出連通孔58に連通する。戻り配管80の一端部には、水電解装置12から排出される酸素及び余剰の水をタンク部78内に導入する導入口80aが設けられ、この導入口80aは、前記タンク部78内に貯留される水の中で、常時、開口する位置に設定される。
【0038】
タンク部78には、前記タンク部78内の水位WSが設定高さであるか否かを検出する水位検出部、例えば、水位検出センサ82a〜82dが設けられる。水位検出センサ82a〜82dの検出信号は、コントローラ23に入力される。
【0039】
水位検出センサ82aは、水位WSが設定下方位置(L)に低下したか否かを検出し、水位検出センサ82bは、前記水位WSが設定上方位置(H)に上昇したか否かを検出し、水位検出センサ(下限水位検出部)82cは、前記水位WSが下限設定高さ(LL)に低下したか否かを検出し、水位検出センサ82dは、前記水位WSが上限設定高さ(HH)に上昇したか否かを検出する。
【0040】
タンク部78には、水供給装置18に接続された純水供給配管84と、前記タンク部78で純水から分離された酸素を排出するための酸素排気配管86とが連結される。
【0041】
水電解装置12の水素連通孔60には、高圧水素配管88の一端が接続され、この高圧水素配管88の他端が気液分離器20に接続される。気液分離器20で水分が除去された高圧水素は、水素除湿器22によって除湿され、ドライ水素配管90にドライ水素が供給される。気液分離器20の下部には、ドレン配管92が接続され、前記ドレン配管92には、排水用バルブ94が配設される。
【0042】
このように構成される水電解システム10の動作について、以下に説明する。
【0043】
先ず、水電解システム10の始動時には、水供給装置18を介して市水から生成された純水が、水貯留装置14を構成するタンク部78に供給される。
【0044】
水循環装置16では、循環ポンプ74の作用下に、タンク部78内の水が循環配管72を介して水電解装置12の水供給連通孔56に供給される。一方、ターミナルプレート26a、26bの端子部34a、34bには、電気的に接続されている電源38を介して電圧が付与される。
【0045】
このため、図2に示すように、各単位セル24では、水供給連通孔56からアノード側セパレータ44の第1流路64に水が供給され、この水がアノード側給電体50内に沿って移動する。
【0046】
従って、水は、アノード電極触媒層50aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜48を透過してカソード電極触媒層52a側に移動し、電子と結合して水素が得られる。
【0047】
これにより、カソード側セパレータ46とカソード側給電体52との間に形成される第2流路68に沿って水素が流動する。この水素は、水供給連通孔56よりも高圧に維持されており、水素連通孔60を流れて水電解装置12の外部に取り出し可能となる。
【0048】
一方、第1流路64には、反応により生成した酸素と、未反応の水とが流動しており、これらの混合流体が排出連通孔58に沿って水循環装置16の戻り配管80に排出される(図1参照)。この未反応ガスの水及び酸素は、タンク部78に導入されて分離された後、水は、循環ポンプ74を介して循環配管72からイオン交換器76を通って水供給連通孔56に導入される。水から分離された酸素は、酸素排気配管86から外部に排出される。
【0049】
水電解装置12内に生成された水素は、高圧水素配管88を介して気液分離器20に送られる。この気液分離器20では、水素に含まれる水蒸気が、この水素から分離される一方、前記水素は、水素除湿器22を介して除湿された後、ドライ水素配管90に導入される。
【0050】
この場合、水素が生成される第2流路68は、酸素が生成される第1流路64よりも高圧に設定されている。このため、第2流路68に生成された水素は、固体高分子電解質膜48を透過して第1流路64に移動し易い。第1流路64に移動した水素は、未反応の水及び酸素に伴って戻り配管80に排出され、タンク部78内に導入される。
【0051】
その際、第1の実施形態では、戻り配管80の一端部に設けられる導入口80aが、タンク部78内に貯留される水の中で、常時、開口している。従って、導入口80aは、常時、水位WSより下方に位置している。
【0052】
これにより、水電解装置12から酸素及び余剰の水に伴ってタンク部78内に水素が導入されても、前記水電解装置12から酸素排出系、すなわち、戻り配管80、タンク部78の内部空間及び酸素排気配管86を介して外部に連続して連通する水素経路が形成されることを、簡単な構成で、確実に阻止することが可能になるという効果が得られる。
【0053】
さらに、第1の実施形態では、タンク部78は、前記タンク部78内の水位WSが設定高さであるか否かを検出するために、水位検出センサ82a〜82dを備えている。
【0054】
具体的には、水位検出センサ82aは、水位WSが設定下方位置(L)に低下したか否かを検出する。コントローラ23は、水位WSが設定下方位置(L)に低下したと判断した際には、水供給装置18からタンク部78に純水の供給を指示する。一方、水位検出センサ82bは、水位WSが設定上方位置(H)に上昇したか否かを検出する。コントローラ23は、水位WSが設定上方位置(H)に上昇したと判断した際には、水供給装置18からタンク部78への純水の供給を停止させる。
【0055】
また、水位検出センサ82cは、水位WSが下限設定高さ(LL)に低下したか否かを検出する。コントローラ23は、水位WSが下限設定高さ(LL)まで低下したと判断した際には、システム異常として水電解システム10を停止させる。一方、水位検出センサ82dは、水位WSが上限設定高さ(HH)に上昇したか否かを検出する。コントローラ23は、水位WSが上限設定高さ(HH)まで上昇したと判断した際には、システム異常として水電解システム10を停止させる。
【0056】
これにより、水電解システム10は、良好な状態で、所望の水電解処理を効率的に遂行することが可能になる。
【0057】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る水電解システム100の概略構成説明図である。
【0058】
なお、第1の実施形態に係る水電解システム10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3の実施形態以降においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0059】
水電解システム100は、水貯留装置102を備えるとともに、前記水貯留装置102を構成するタンク部104の底部には、戻り配管80の一端部に設けられている導入口80aが開放される。
【0060】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る水電解システム110の概略構成説明図である。
【0061】
水電解システム110は、水貯留装置112を備えるとともに、前記水貯留装置112を構成するタンク部114の側部には、戻り配管80の一端部に設けられている導入口80aが開放される。
【0062】
このように構成される第2及び第3の実施形態では、導入口80aが、常時、水位WSより下方に位置しており、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0063】
図5は、本発明の第4の実施形態に係る水電解システム120の概略構成説明図である。
【0064】
水電解システム120は、水貯留装置122を備えるとともに、前記水貯留装置122を構成するタンク部124の底部には、戻り配管80の一端部に設けられている導入口80aが開放される。タンク部124の側部には、循環配管72の水戻し口72aが設けられる。タンク部124内には、戻り配管80の導入口80aから前記タンク部124内に導入された酸素(及び水素)が、水戻し口72aから吸引されることを阻止するために、仕切り板126が配設される。
【0065】
このように構成される第4の実施形態では、水電解装置12から排出される酸素及び余剰の水をタンク部124内に導入する導入口80aは、前記タンク部124内の水を、前記水電解装置12に戻す水戻し口72aよりも下方に設定されている。
【0066】
これにより、導入口80aは、タンク部124内で、常時、水位WSより下方に配置されている。このため、水電解装置12から酸素排出系を介して外部に連続して連通する水素経路が形成されることを、簡単な構成で、確実に阻止することが可能になる等、上記の第1〜第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
図6は、本発明の第5の実施形態に係る水電解システム130の要部説明図である。
【0068】
水電解システム130は、水貯留装置132を備えるとともに、前記水貯留装置132を構成するタンク部134の底部には、戻り配管80の導入口80aと、循環配管72の水戻し口72aとが開放される。タンク部134内には、隔壁部材136が配設される。
【0069】
隔壁部材136は、板状を有するとともに、タンク部134内で、上限設定高さ(HH)よりも上方に突出している。隔壁部材136の下部側には、水戻し口72aに連通する下部開口部138が形成される一方、前記隔壁部材136の上部側には、酸素排気配管86の排気口86aに連通する上部開口部140が形成される。この上部開口部140は、隔壁部材136自体に孔部等を形成することにより設けてもよく、また、前記隔壁部材136の上部とタンク部124の天板部との間に形成してもよい。
【0070】
このように構成される第5の実施形態では、戻り配管80を介して未反応の水及び酸素(水素を含む)がタンク部134内に導入口80aから導入される際、水中の気体(酸素及び水素)の影響により液面が不安定となり易い。
【0071】
その際、タンク部134内には、隔壁部材136が設けられており、水位検出センサ82a〜82dが設けられている側の液面が揺れることを確実に防止することができる。これにより、水位検出センサ82a〜82dによる検出液面位置、すなわち、水位WSの誤検出を可及的に阻止することが可能になるという効果が得られる。
【0072】
なお、導入口80aからタンク部134内に導入された気体成分は、隔壁部材136の上部側に形成されている上部開口部140から排気口86aを介して、酸素排気配管86に排出される。一方、導入口80aからタンク部134内に導入された水は、隔壁部材136の下部に形成される下部開口部138から水位検出センサ82a〜82d側に供給される。
【0073】
ここで、隔壁部材136の上部位置は、上限設定高さ(HH)よりも上方に突出している。従って、上部開口部140を介して導入口80a側から水が溢れ出ることを確実に阻止することができる。
【0074】
図7は、本発明の第6の実施形態に係る水電解システム150の要部説明図である。
【0075】
水電解システム150は、水貯留装置152を備えるとともに、前記水貯留装置152を構成するタンク部154内には、複数枚、例えば、2枚の隔壁部材136、156が配設される。
【0076】
隔壁部材136、156は、互いに略平行に配置されるとともに、前記隔壁部材156は、タンク部154の天板部に接し且つ前記タンク部154の底部から所定の距離だけ上方に離間して配置される。隔壁部材156の上部には、気体成分を排気口86aから酸素排気配管86に排出するため、上部開口部158が形成される。
【0077】
このように構成される第6の実施形態では、タンク部154内が2枚の隔壁部材136、156によって、3つの領域160a、160b及び160cに区画されている。このため、戻り配管80の導入口80aからタンク部154内に戻される水及び酸素は、先ず、第1の領域160aに導入されて気液分離が行われる。
【0078】
次いで、分離された気体成分は、隔壁部材136の上部から隔壁部材156の上部開口部158を通って、排気口86aに排出される。一方、水は、第1の領域160aから下部開口部138を通って第2の領域160bに移動した後、隔壁部材156の下方を通って第3の領域160cに供給される。
【0079】
従って、第1の領域160aに供給される水中の気体成分により、液面の揺れが惹起されても、第2の領域160bでは、液面の揺れが低減され、さらに第3の領域160cでは、この液面の揺れが可及的に阻止されるという効果が得られる。しかも、隔壁部材136の上部から第2の領域160bに水が溢れ出しても、隔壁部材156による液面揺れ防止機能によって、第3の領域160cでは、液面の揺れを惹起することがない。
【0080】
なお、第6の実施形態では、導入口80aがタンク部154の底部に開口しているが、これに限定されるものではない。例えば、導入口80aは、タンク部154の側部下端縁部に開口してもよい(図7中、2点鎖線参照)。一方、循環配管72の水戻し口72aは、タンク部154の底部に開口しているが、例えば、図5に示すように、前記タンク部154の側部下端縁部に開口してもよい。
【0081】
図8は、本発明の第7の実施形態に係る水電解システム170の要部説明図である。
【0082】
水電解システム170は、水貯留装置172を備えるとともに、前記水貯留装置172を構成するタンク部174内には、隔壁部材176a、176bが配設される。隔壁部材176a、176bは、戻り配管80の導入口80aを挟んで設けられるとともに、それぞれの上部には、蓋部材178が一体に配置される。隔壁部材176aの上部側には、上部開口部180aが形成される一方、隔壁部材176bの下部側には、下部開口部180bが形成される。
【0083】
このように構成される第7の実施形態では、戻り配管80の導入口80aが、一対の隔壁部材176a、176b間に開口しており、前記隔壁部材176a、176b間に発生する液面の揺れが、タンク部174内の他の部分に影響を及ぼすことはない。
【0084】
しかも、隔壁部材176a、176bの上部には、蓋部材178が配設されており、前記隔壁部材176a、176bの外部に水の飛散を惹起することはない。これにより、第7の実施形態は、上記の第5及び第6の実施形態と同様の効果が得られる。
【0085】
図9は、本発明の第8の実施形態に係る水電解システム190の要部説明図である。
【0086】
水電解システム190は、水貯留装置192を備えるとともに、前記水貯留装置192を構成するタンク部194内には、一対の隔壁部材196a、196bが配設される。隔壁部材196a、196bは、上板部196cにより一体に構成されており、これらにより形成される空間内には、戻り配管80の導入口80aが開口する。隔壁部材196aの上部側に上部開口部198aが形成される一方、隔壁部材196bの下部側に下部開口部198bが形成される。
【0087】
図10は、本発明の第9の実施形態に係る水電解システム200の要部説明図である。
【0088】
水電解システム200は、水貯留装置202を備えるとともに、前記水貯留装置202を構成するタンク部204内には、2枚の隔壁部材206、208が配設される。戻り配管80の導入口80aは、隔壁部材206、208間に開口されるとともに、前記隔壁部材208の下部に下部開口部210が形成される。隔壁部材206、208の上部側には、開放されており、タンク部204の天板部との間に上部開口部212が形成される。
【0089】
このように構成される第8及び第9の実施形態では、実質的に図8に示す第7の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0090】
10、100、110、120、130、150、170、190、200…水電解システム
12…水電解装置
14、102、112、122、132、152、172、192、202…水貯留装置
16…水循環装置 18…水供給装置
20…気液分離器 23…コントローラ
24…単位セル 38…電源
42…電解質膜・電極構造体 44…アノード側セパレータ
46…カソード側セパレータ 48…固体高分子電解質膜
50…アノード側給電体 52…カソード側給電体
56…水供給連通孔 58…排出連通孔
60…水素連通孔 64、68…流路
72…循環配管 74…循環ポンプ
76…イオン交換器
78、104、114、124、134、154、174、194、204…タンク部
80…戻り配管 80a…導入口
82a〜82d…水位検出センサ 84…純水供給配管
86…酸素排気配管 88…高圧水素配管
136、156、176a、176b、196a、196b、206、208…隔壁部材
138、180b、198b、210…下部開口部
140、158、180a、198a、212…上部開口部
178…蓋部材 196c…上板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側に給電体が設けられ、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させるとともに、カソード側に水素を発生させる水電解装置と、
前記水電解装置から排出される前記酸素及び余剰の水を気液分離し、前記水を貯留する水貯留装置と、
を備える水電解システムであって、
前記水貯留装置は、前記水を貯留するタンク部と、
前記水電解装置から排出される前記酸素及び前記余剰の水を前記タンク部内に導入する導入口と、
を設けるとともに、
前記導入口は、前記タンク部内に貯留される前記水の中で、常時、開口する位置に設定されることを特徴とする水電解システム。
【請求項2】
請求項1記載の水電解システムにおいて、前記水貯留装置に貯留される前記水を、前記水電解装置に循環させる水循環装置を備えることを特徴とする水電解システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水電解システムにおいて、前記水貯留装置に前記水を供給する水供給装置を備え、
前記水貯留装置は、前記タンク部内の水位が設定高さであるか否かを検出する水位検出部を設けるとともに、
前記水位検出部の検出信号に基づいて、前記水供給装置から前記水貯留装置への前記水の供給を制御することを特徴とする水電解システム。
【請求項4】
請求項2又は3記載の水電解システムにおいて、前記水貯留装置は、前記タンク部内の水位が下限設定高さであるか否かを検出する下限水位検出部を設けるとともに、
前記下限水位検出部の検出信号に基づいて、前記水電解装置の運転を停止することを特徴とする水電解システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の水電解システムにおいて、前記水貯留装置は、前記タンク部内に配設される隔壁部材を備え、
前記隔壁部材の上端部は、前記タンク部内の上限設定高さよりも上方に突出することを特徴とする水電解システム。
【請求項6】
請求項5記載の水電解システムにおいて、前記タンク部は、前記水循環装置を介して前記水電解装置に前記水を戻すための水戻し口と、
分離された気体成分を排出するための排気口と、
を設けるとともに、
前記隔壁部材の下部側には、前記水戻し口に連通する下部開口部が形成される一方、前記隔壁部材の上部には、前記排気口に連通する上部開口部が形成されることを特徴とする水電解システム。
【請求項7】
請求項5又は6記載の水電解システムにおいて、前記隔壁部材は、複数枚設けられることを特徴とする水電解システム。
【請求項8】
電解質膜の両側に給電体が設けられ、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させるとともに、カソード側に水素を発生させる水電解装置と、
前記水電解装置から排出される前記酸素及び余剰の水を気液分離し、前記水を貯留する水貯留装置と、
前記水貯留装置に貯留される前記水を、前記水電解装置に循環供給する水循環装置と、
を備える水電解システムであって、
前記水貯留装置は、前記水を貯留するタンク部と、
前記水電解装置から排出される前記酸素及び前記余剰の水を前記タンク部内に導入する導入口と、
前記タンク部内の前記水を、前記水循環装置を介して前記水電解装置に戻す水戻し口と、
を設けるとともに、
前記導入口は、前記水戻し口よりも下方に設定されることを特徴とする水電解システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−236087(P2010−236087A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13024(P2010−13024)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】