説明

永久磁石式渦電流加熱装置

【課題】自然の流体運動エネルギーを利用する永久磁石式渦電流加熱装置について、低コストでエネルギー利用効率の高い加熱を実現するとともに、加熱能力を容易に制御できるようにする。
【解決手段】自然の流体運動エネルギーを所定の駆動力採取手段で採取・変換した回転駆動力により、複数の永久磁石213,214が所定の配置で設けられて外側に磁場を形成する磁極面21bを備えた回転体21を回転させることにより、磁極面21bに対し所定間隔で対向する対向面20bを有して導電材料からなる蓋体22及び流体加熱路210を備えた加熱体20に渦電流及びジュール熱を発生させ、流体加熱路210中を流れる流体を加熱して送出する永久磁石式渦電流加熱装置2Aにおいて、その磁極面21bを回転体21基端側で回転軸線Xに対し直角な平面とし、流体加熱路210を対向面20に沿った渦巻き状の平面曲線を形成してなるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然界に存在するエネルギーを熱エネルギーに変換して流体を加熱する渦電流加熱装置に関し、殊に、風力、水力、波力等の流体運動エネルギーを利用して高効率かつ低コストで水等の流体を加熱して給湯・暖房等を行うための永久磁石式渦電流加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の燃焼に伴う地球温暖化ガスの増加が問題となっている近年では、太陽光、風力、水力、波力等の自然エネルギーを利用する技術の開発が活発化しており、従来から行われている太陽光を利用した給湯システムや発電システムに加え、風力や水力等、自然の流体運動エネルギーを利用して発電を行う技術が多数開発されている。
【0003】
しかし、給湯や暖房等の加熱を目的とする場合には、風等の流体運動エネルギーをいったん電力に変換してから電気的加熱手段で加熱することになり、また、自然由来の駆動力が不安定であることから装置の強度確保や蓄電手段も必要となるため、全体として設備コストが嵩む結果となる。また、発電〜蓄電〜加熱の各過程でロスが生じるためエネルギー利用効率も低くなり、さらに装置が複雑であるために故障・破損等の頻度が高いため、メンテナンスの手間とコストも嵩みやすくなるという問題もある。
【0004】
この問題に対し、風車または水車等の駆動力採取手段により回転する円柱状のロータ外周に、極性を交互に変えて周方向に永久磁石を配置してなる磁極面を設け、その周りに所定の間隔で加熱体を対向して設け磁極面に対向する面側を磁性板で構成して、磁極面を回転させることで磁性板に渦電流を発生させながら、加熱体内側の通水室の水をジュール熱で加熱するものとして、給湯等に使用する永久磁石式の渦電流加熱装置が実登第3016066号公報に提案されている。
【0005】
このように、風力や水力等、自然由来の流体運動エネルギーで渦電流を発生させながら加熱体に直接的に熱を発生させて水を加熱するようにしたことで、流体運動エネルギーを電力に変換してから加熱する場合と比べて、簡易な構成でイニシャルコストを低廉に抑えながら自然エネルギーを従来よりも高い効率で利用することが可能となる。
【0006】
一方、本願発明者らは、先に特開2005−174801号公報において、図5に示すような永久磁石式の渦電流加熱装置2Cを提案している。これは、ロータ21C外周の磁極面に配置する永久磁石を、ロータ回転軸方向と直交する平面での断面形状が略長方形の第1の永久磁石214と、ロータ回転軸方向と直交する平面での断面形状がくさび形状である第2の永久磁石215とが、ロータ21Cの円周方向に1つおきに交互に並ぶように配置されながら図のような磁化方向とされ、かつ、ロータ21C外周側に設けた加熱体20Cに付設した流体通路211を、ロータ回転軸であるシャフト30と中心軸線が一致するコイル状(弦巻状)に形成した点を特徴としている。
【0007】
永久磁石式の渦電流加熱装置において、磁極面の永久磁石を前記のような構成・配置としたことで、磁力線の立ち上がりを大きくして渦電流による加熱効率を向上させることができ、また、ロータ外周面側に設けた加熱体の流体加熱路の形状をコイル状としたことで、水を加熱する流程が長くなって効率的かつ連続的な加熱が実現されることから、さらにエネルギー効率が高く有用性の高いものとなった。
【0008】
しかしながら、これらの渦電流加熱装置では永久磁石を配置したロータが円柱状とされており、その周りを円筒状の加熱体で覆う構成であるために、装置が全体として嵩張りやすいものとなる。これに加え、自然由来の不安定な駆動力を利用している関係で加熱能力の制御が容易ではなく、例えば風等の流体運動エネルギーが強くなりすぎた場合には、加熱体が過剰に高温化して装置の故障・破損の畏れが生じることになる。
【0009】
また、後者の渦電流加熱装置2Cでは、永久磁石を前述のような特殊な形状としたことにより加熱効率は高くなるものの、汎用品の磁石が使用できないためにコスト高となりやすく、また、コイル状の流体加熱路は構成が複雑であることから加熱体20Cの作成が容易ではなく、さらに、複雑な流体加熱通路の漏水や目詰まりを回避するためにメンテナンスの手間・コストが過大となりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実登第3016066号公報
【特許文献2】特開2005−174801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、自然の流体運動エネルギーを利用する永久磁石式渦電流加熱装置について、低コストでエネルギー利用効率の高い加熱を実現するとともに、加熱能力を容易に制御できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明は、自然の流体運動エネルギーを所定の駆動力採取手段で採取・変換した回転駆動力により、複数の永久磁石が所定の配置で設けられて外側に磁場を形成する磁極面を備えた回転体を回転させることにより、磁極面に対し所定間隔で対向する対向面を有して導電材料及び流体加熱路を備えた加熱体に渦電流及びジュール熱を発生させ、流体加熱路中を流れる流体を加熱して送出する永久磁石式渦電流加熱装置において、その磁極面が回転体の基端側でその回転軸線に対し直角な平面とされ、流体加熱路が対向面から所定深さ位置で対向面に沿って渦巻き状の平面曲線を形成していることを特徴とするものとした。
【0013】
このように、磁極面を回転体の回転軸線に対し直角な平面とし、流体加熱路を対向面に沿った渦巻き状の平面曲線としたことで、回転体及び流体加熱路を含む加熱体を各々平面的な構成にして全体的に嵩張らないものにすることができ、かつ、磁極面に配置する永久磁石を特別な形状にする必要がなくなって回転体を低コストで作成できることに加え、流体加熱路も平面的となり加熱体が比較的容易に作成できるため、製造コストが低廉に抑えられ簡易な構成でメンテナンスの手間・コストがかかりにくいものとなる。
【0014】
この場合、その磁極面は回転体の回転軸線に対し中心が一致した円形の平面とされ、対向面がこの磁極面に対し平行な平面とされており、かつ、流体加熱路による渦巻き状の平面曲線が、回転軸線の延長線に対し直角かつ中心が一致しているものとすれば、より効率的な加熱が行えるとともに一層コンパクトなものとすることができる。
【0015】
また、上述した永久磁石式渦電流加熱装置において、その加熱体には対向面と磁極面の間隔を変更させるための間隔変更手段が付設されているものとすれば、自然由来の回転駆動力の変動状況に応じて間隔を適宜変更することで渦電流の発生量を変更し加熱能力を容易に調整できるものとなって、効率的かつ安全な流体の加熱が行えるものとなり、この場合、その永久磁石式渦電流加熱装置には加熱体による加熱能力の変動を連続的に検知する電子的制御手段が設けられており、この電子的制御手段が間隔変更手段を駆動操作して加熱能力を自動制御することを特徴としたものとすれば、自動的に加熱能力が調整されて安全かつ効率的に流体の加熱を行えるものとなる。
【0016】
さらに、上述した永久磁石式渦電流加熱装置において、その加熱体は、これを構成する加熱体本体部の流体加熱路形成面から所定深さで溝を彫って渦巻き状の平面曲線を形成するとともに、その溝を設けた流体加熱路形成面に導電材料からなる蓋板を密着状態で被せて溝の開放面側を塞いでなるものとすれば、比較的簡易な手順で容易に流体加熱路が形成されるとともに、そのメンテナンスが容易なものとなり、この場合、その流体加熱路は、渦巻き状の平面曲線外周側から流体を導入し、加熱された流体を中心側から送出するものとすれば、渦巻き状の流体加熱路では外周側が中心側よりも加熱力が高くなるのに対し、中心側で過剰な加熱されることを回避しながら効率的な加熱を行いやすいものとなる。
【0017】
さらにまた、上述した永久磁石式渦電流加熱装置において、その磁極面に配置された複数の永久磁石は、その露出した端面側が磁極面の回転方向に沿って交互に異なる極性とされながら複数の同心円を形成するように配置されたものとすれば、渦電流がより発生しやすくなり一層効率的な加熱を行えるものとなる。
【0018】
加えて、上述した永久磁石式渦電流加熱装置において、その駆動力採取手段と回転体を接続している動力伝達経路の途中に、蓄電手段に電気的に接続された発電機兼電動モータが機械的に接続可能な状態で配設されており、所定の接続切替手段により、駆動力採取手段と回転体が直結した状態、駆動力採取手段と発電機としての発電機兼電動モータが接続した状態、回転体と電動モータとしての発電機兼電動モータが接続した状態、の間で切替え可能とされていることを特徴としたものとすれば、回転駆動力の大きさに応じて動力伝達経路を切替えることで、自然の流体運動エネルギーが不安定であっても安定的な流体の加熱を行いやすいものとなる。
【0019】
また加えて、上述した永久磁石式渦電流加熱装置は、その加熱対象である流体が水であって、給湯用または暖房用または冷暖房用として使用されることを特徴としたものとすれば、少ないコストと手間で安定的な給湯機能または暖房機能または冷暖房機能を発揮するものとなり、或いは、その加熱対象である流体が空気であって暖房用として使用されることを特徴としたものとした場合でも、少ないコストと手間で優れた暖房機能を発揮できるものとなる。
【発明の効果】
【0020】
回転体の磁極面を回転軸線に直角な平面とし、磁極面に対向する対向面に沿って渦巻き状の平面曲線を形成してなる流体加熱路を設けた本発明によると、低コストでエネルギー利用効率の高い加熱を実現するとともに、加熱能力を容易に制御することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明における第1の実施の形態の永久磁石式渦電流加熱装置を配設した給湯システムの配置図。
【図2】図1の永久磁石式渦電流加熱装置の詳細を示す側面図。
【図3】本発明における第2の実施の形態の永久磁石式渦電流加熱装置を配設した給湯システムの配置図。
【図4】(A),(B),(C)は、本発明の永久磁石式渦電流加熱装置に接続される駆動力採取手段の例を示す斜視図。
【図5】従来例の永久磁石式渦電流加熱装置を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。尚、本発明においては、永久磁石式渦電流加熱装置のシャフトの回転軸線の方向を基準として駆動力採取手段側を先端側とし、その反対側(加熱体側)を基端側とする。
【0023】
図1は、本発明における第1の実施の形態である永久磁石式の渦電流加熱装置2Aを配設した給湯システム1Aの配置図を示している。この渦電流加熱装置2Aは、自然の流体運動エネルギーの一つである風力を利用するものであり、駆動力採取手段としてプロペラ(風車)5Aを用いながら、その回転駆動力で磁極面21bを備えた回転体21を回転させることにより、磁極面21bに近接配置した加熱体20の対向面20b側に渦電流及びジュール熱を発生させて流体加熱路210内を流れる水を加熱して送出するものである。
【0024】
また、この給湯システム1Aでは、渦電流加熱装置2Aで加熱した水(温水)を送出管7bで送ってタンク3にいったん貯留してから給湯管7cで送出して給湯に使用するようになっており、タンク3の底部側で温度が低下した水は導入管7aにより渦電流加熱装置2Aに導入され、給湯に使用されて水位が下がった分だけタンク3に給水されるようになっている。
【0025】
駆動力採取手段であるプロペラ5Aと回転体21を連結しているシャフト25の途中には、発電機26Aが配設されており、シャフト25が回転駆動することにより発電して、後述する電子制御ユニット10A、回転体21との間隔を変更するために加熱体20に付設した間隔変更手段であるスライダ24、温水をタンク3に圧送するポンプ4に電力を供給するようになっている。
【0026】
渦電流加熱装置2Aの回転体21は、プロペラ5A中心から延設したシャフト25の中心軸線に一致する回転軸線Xに対し、直角かつ中心軸線の一致した円盤状とされ、その基端側が平面状の磁極面21bを形成している。一方、加熱体20も回転軸線Xの延長線に対し直角かつ中心軸線の一致した円盤状とされ、その先端側が回転体21の磁極面21bに対し平行な平面となっている点を特徴としている。
【0027】
このように、回転軸線X(その延長線を含む)に対し、円盤状の回転体21と加熱体20とが、中心軸線を一致させながら互いに対向する面を直角にして配置されたことにより、従来例において回転体が外周側を磁極面とした円柱状のロータとされ流体加熱路を備えた加熱体がロータを囲む筒状とされて、装置が全体として嵩張っていたのに対し、本実施の形態では図示したように比較的簡易な構成で全体として嵩張らない状態で実施できるようになっている。
【0028】
図2は、図1の渦電流加熱装置2Aの詳細を説明するための側面図を示しており、回転体21基端側の磁極面21bの正面図、及びこれに対向する対向面20bを構成する導電材料からなる蓋板22を外した状態とした流体加熱路210を設けた流体加熱路形成面200aの正面図を、各々引き出し矢印で指し示している。
【0029】
円形状の平面とされた磁極面21bは、円柱状でその高さ方向に磁化され露出面側がS極となる複数の永久磁石212と露出面側がN極となる複数の永久磁石213を、回転体21の回転方向に沿って交互に異なる極性となるように並べながら複数の同心円を構成するように埋設して平面状としたものである。
【0030】
一方、流体加熱路210は、円盤状部材である加熱体本体部20aの蓋板22を密着させる平面状の流体加熱路形成面200aに、磁極面21bに対し平行になるように回転軸線Xの延長線に対し直角かつ中心の一致した渦巻き状(蚊取り線香状)の平面曲線を形成するように溝を彫ってなるものである。
【0031】
このように、比較的簡易な構成で従来例ほど嵩張らない本実施の形態の渦電流加熱装置2Aは、自然の流体運動エネルギーを受けたプロペラ5Aでシャフト25を回転駆動させて、円盤状の回転体21をその中心軸線を回転軸線にして回転させ、その基端側の磁極面21bがレコード盤のように回転することにより、これと所定距離を置いて対向配置された加熱体20の対向面20bを構成する導電材料製の蓋板22に渦電流を発生させるとともにジュール熱を生じさせ、これに付設している平面的な渦巻き状とされた流体加熱路210中を流れる水を効率的に加熱するものである。
【0032】
また、本実施の形態の渦電流加熱装置2Aにおいては、円盤状の加熱体20の対向面20bと磁極面21bとの距離(間隔)は、加熱体20に付設した間隔変更手段であるスライダ24を操作することにより変更可能となっている。このスライダ24は、渦電流加熱装置電子2Aに付設されている電子制御ユニット10Aで駆動操作されるステップモータ24aと、このステップモータ24aから延出されたボルト状の回動軸24bと、この回動軸24bの回動によりナット状の部材を介して上下動する支持アーム24cと、この支持アーム24cを挿通してその動作を上下方向にガイドするガイドバー24dとからなる。
【0033】
そして、温度センサ11,12でタンク3内の水温と加熱直後の水温を検知するとともにシャフト25の途中に設けた発電機26Aの発電量を検知している電子制御ユニット10Aが、これらの検知データを基に、風力の強さに基づく加熱能力及び現在の水温状態に応じて、スライダ24を駆動操作しながら磁極面21bと対向面20bとの距離を自動的に調整し、最適な加熱能力となるように自動制御を行っており、渦電流による効率的な加熱を実現可能としている。
【0034】
また、流体加熱路210は、上述したように円盤状の部材からなる加熱体本体部20a先端側の平滑な流体加熱路形成面200aに、表面から所定深さで溝を彫り込んで外径が磁極面21bの外径とほぼ一致した渦巻き状の平面曲線を形成する流路となるように設けた後、その上から導電材料からなる蓋板22を密着・固定して溝の開放面側を内外液密的に塞ぐことにより形成されている。
【0035】
従って、図5に示した従来例のようにロータ21Cの外周側に弦巻状に流体加熱路211を設ける場合と比べて、加熱体20を極めて容易に製作可能として製作コストを低廉なものとしている。また、流体加熱路210を前述のように簡易な平面的な構成としたことにより、腐食等による漏水の畏れも最小限に抑えられ、蓋板22をボルト等で着脱可能な状態とすることにより、蓋板22を外せば流体加熱路210を容易に清掃できるため、例えば湯垢の堆積が問題となりやすい24時間風呂の湯温維持等にも適したものとなる。さらに、この流体加熱路210では、対向する磁極面21bの回転速度が外周側は速く中心側は遅くなる関係で、その加熱能力が外周側は高く中心側は低くなるため、その外周側から水を導入して中心側からタンク3に送るようにしてあり、中心側で過剰に水温が上昇するのを回避しながら効率的な加熱を行いやすいものとしている。
【0036】
尚、温水を貯留するタンク3を内外断熱性に優れた素材で作成して、最適な湯温が長時間に亘って維持されるようにすれば、風が強く大きな回転駆動力・加熱能力が得られる時間帯でタンク3内貯留水量の量・温度を充分に上げておくことにより、風が弱く充分な回転駆動力が得られない時間帯においても、良好な給湯機能を発揮するものとなる。
【0037】
図3は、本発明における第2の実施の形態である、渦電流加熱装置2Bを配設した給湯システム1Bの配置図を示している。本実施の形態も前述の給湯システム1Aと基本構成がほぼ共通しているが、その渦電流加熱装置2Bは、発電機兼電動モータ26Bが、回転体21に回転駆動力を伝達するシャフト25に対し接続切替手段としてのギヤボックス28を介して動力の接続状態と非接続状態との間で切替可能に設けられており、かつ、蓄電手段としてのバッテリ29が設けられて、これに発電機兼電動モータ26Bが電気的に接続されている点を特徴としている。
【0038】
即ち、ギヤボックス28及び発電機兼電動モータ26Bは、渦電流加熱装置2Bに付設された電子制御ユニット10Bにより制御されて、プロペラ5A側と回転体21が接続した状態、プロペラ5A側と発電機としての発電機兼電動モータ26Bが接続した状態、回転体21側と電動モータとしての発電機兼電動モータ26Bが接続した状態、との間で自動的に切替えられるようになっている。
【0039】
これにより、例えばタンク3に充分な温度・量の温水が溜まっている状況で豊富な風力が得られる場合には、プロペラ5Aによる回転駆動力は回転体21に伝えずに発電機としての発電機兼電動モータ26Bに接続してバッテリ29を充電し、タンク3に充分な温度・量の温水が溜まっていない状況で充分な風力が得られない場合には、電動モータとしての電機兼電動モータ26Bを回転体21に接続して、バッテリ29に蓄えた電力で電機兼電動モータ26Bを駆動させて必要な加熱を行うことができる。
【0040】
一方、適度な風力が得られる状況でバッテリ29の蓄電量が充分な場合において加熱が必要なケースでは、プロペラ5Aと回転体21を直結させて加熱を行うこともできる。このように、自然力に依存して不安定となりやすい回転駆動力の状況に応じて、動力伝達経路を適宜切替えることにより、風力がめまぐるしく変動するような場合であっても、安全且つ安定的な加熱を行いながら良好な給湯機能が維持されやすいものとなる。
【0041】
尚、タンク3に充分な温度・量の温水が溜まっている状況で豊富な風力が得られる場合において、バッテリ29も充分に充電されている場合は、発電機としての発電機兼電動モータ26Bを駆動させて発電した電力を電力会社に売電するか、或いは、回転体21は回転させるが加熱体20との距離を離して加熱させないように、適宜電子制御ユニット10Bが制御を行うようにすればよい。
【0042】
図4(A),(B),(C)は、上述した第1の実施の形態と第2の実施の形態の渦電流加熱装置2A,2Bに共通して、そのシャフト25に装着する駆動力採取手段の変更例を示すものである。図(A)は、垂直軸風車5Bであり、前述したプロペラ5Aが風向きの変化に対応しにくかったのに対し、そのままでも総ての方角から吹く風に対応できる点を特徴としている。
【0043】
また、図(B)は、回転駆動軸に対し直角方向の水流で回転する水車5Cであり、図(C)は回転駆動軸に沿った水流で回転するスクリュー5Dを示しているが、これらは渦電流加熱装置が川や用水路等の水流に近い位置にある場合にその水力を利用するものであって、風力と比べて比較的安定した回転駆動力が得られる点を特徴としており、複数本のシャフトをユニバーサルジョイント250のような接続手段で角度を変えながら接続して使用することで、水流の位置・方向に合わせながら駆動力を採取することができる。
【0044】
尚、上述した実施の形態においては、水を加熱して給湯に使用する場合を説明したが、本発明はこの目的に限定されるものではなく、例えば水を加熱することで暖房に使用することもでき、温水を使用して冷房を行うこともできる。また、同様の構成で水の代わりに空気を加熱して、屋内や温室の暖房にも使用することも可能である。
【0045】
以上、述べたように、自然の流体運動エネルギーを利用する永久磁石式渦電流加熱装置について、本発明により、低コストでエネルギー利用効率の高い加熱を実現できるとともに、加熱能力を容易に制御できるようになった。
【符号の説明】
【0046】
1A,1B 給湯システム、2A,2B 渦電流加熱装置、3 タンク、4 ポンプ、5A プロペラ、5B 垂直軸風車、5C 水車、5D スクリュー、7a 導入管、7b 送出管、7c 給湯管、10A,10B 電子制御ユニット、11,12 温度センサ、20 加熱体、20a 加熱体本体部、20b 対向面、21 回転体、21a 回転体本体部、21b 磁極面、22 蓋板、24 スライダ、25 シャフト、26A 発電機、26B 発電機兼電動モータ、28 ギヤボックス、29 バッテリ、200a 流体加熱路形成面、210 流体加熱路、212,213 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然の流体運動エネルギーを所定の駆動力採取手段で採取・変換した回転駆動力により、複数の永久磁石が所定の配置で設けられて外側に磁場を形成する磁極面を備えた回転体を回転させることにより、前記磁極面に対し所定間隔で対向する対向面を有して導電材料及び流体加熱路を備えた加熱体に渦電流及びジュール熱を発生させ、前記流体加熱路中を流れる流体を加熱して送出する永久磁石式渦電流加熱装置において、前記磁極面が前記回転体の基端側で該回転体の回転軸線に対し直角な平面とされ、前記流体加熱路が前記対向面から所定深さ位置で該対向面に沿った渦巻き状の平面曲線を形成している、ことを特徴とする永久磁石式渦電流加熱装置。
【請求項2】
前記磁極面は、前記回転体の回転軸線に対し中心が一致した円形の平面とされ、前記対向面が前記磁極面に対し平行な平面とされており、かつ、前記流体加熱路による渦巻き状の平面曲線が、前記回転軸線の延長線に対し直角かつ中心が一致している、ことを特徴とする請求項1に記載した永久磁石式渦電流加熱装置。
【請求項3】
前記加熱体に前記対向面と前記磁極面の間隔を変更させるための間隔変更手段が付設されている、ことを特徴とした請求項1または2に記載した永久磁石式渦電流加熱装置。
【請求項4】
前記加熱体による加熱能力の変動を連続的に検知する電子的制御手段を有し、該電子制御手段が前記間隔変更手段を駆動操作して加熱能力を自動制御する、ことを特徴とする請求項3に記載した永久磁石式渦電流加熱装置。
【請求項5】
前記加熱体は、該加熱体を構成する加熱体本体部の流体加熱路形成面から所定深さで溝を彫って渦巻き状の平面曲線を形成するとともに、前記溝を設けた前記流体加熱路形成面に前記導電材料からなる蓋板を密着状態で被せて前記溝の開放面側を塞いでなる、ことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載した永久磁石式渦電流加熱装置。
【請求項6】
前記流体加熱路は、前記渦巻き状の平面曲線外周側から流体を導入し、加熱された前記流体を中心側から送出することを特徴とする、請求項5に記載した永久磁石式渦電流加熱装置。
【請求項7】
前記磁極面に配置された複数の永久磁石は、その露出した端側が前記磁極面の回転方向に沿って交互に異なる極性とされながら複数の同心円を形成するように配置されている、ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6に記載した永久磁石式渦電流加熱装置。
【請求項8】
前記駆動力採取手段と前記回転体を接続している動力伝達経路の途中に、蓄電手段に電気的に接続された発電機兼電動モータが機械的に接続可能な状態で配設されており、所定の接続切替手段により、前記駆動力採取手段と前記回転体が直結した状態、前記駆動力採取手段と発電機としての前記発電機兼電動モータが接続した状態、前記回転体と電動モータとしての前記発電機兼電動モータが接続した状態、の間で切替え可能とされていることを特徴とする、請求項1,2,3,4,5,6または7に記載した永久磁石式渦電流加熱装置。
【請求項9】
加熱対象である前記流体が水であって給湯用または暖房用または冷暖房用として使用される、ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7または8に記載した永久磁石式渦電流加熱装置。
【請求項10】
加熱対象である前記流体が空気であって暖房用として使用される、ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7または8に記載した永久磁石式渦電流加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−104223(P2012−104223A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91622(P2009−91622)
【出願日】平成21年4月4日(2009.4.4)
【出願人】(509098364)株式会社CREW研究所 (3)
【Fターム(参考)】