説明

汎用タグアッセイ

本発明開示は、検出プローブを持つ汎用検出子が、標的に対応する識別子タグを持つタグ付き分子と共にインキュベートされ、相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションが、アッセイ対象物中に、対応する標的が存在することを示すという、汎用タグアッセイのための方法および組成物を提供する。特に、本発明開示は、標的ヌクレオチド配列に対応する識別子タグを持つタグ付き分子を生成させる標的依存的操作によって、試料中の標的ヌクレオチド配列を検出するための方法および組成物を提供する。この方法では、検出プローブを持つ汎用検出子と共にタグ付き分子をインキュベートすることによって、相補的な検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションが可能になり、それによって、各識別子タグに対応する標的ヌクレオチド配列の存在が示される。好ましい実施形態には、一塩基多型(SNP)、対立遺伝子変異体、およびスプライス変異体を含む変異体配列を検出するための汎用タグアッセイの使用が含まれる。好ましい実施形態には、さらに、汎用検出子(好ましくは金電極または炭素電極を持つ汎用チップ)上に固定化された検出プローブへのタグ付きDNAまたはRNA分子のハイブリダイゼーションを検出するためのルテニウムアンペロメトリーの使用が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的に対応する識別子タグを持つタグ付き分子が、検出プローブを持つ汎用検出子と共にインキュベートされ、相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションが、アッセイ対象である試料中に、対応する標的が存在することを示すという、汎用タグアッセイに関する。特に本発明は、標的依存的なプロセスを使って、標的ヌクレオチド配列に対応する識別子タグを持つタグ付き分子を生成させることにより、試料中の標的ヌクレオチド配列を検出することに関し、この際、タグ付き分子は検出プローブを持つ汎用検出子と共にインキュベートされ、相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションが測定される。好ましい実施形態には、たとえば、一塩基多型(SNP)、対立遺伝子変異体およびスプライス変異体などの変異体配列を検出するための、上記汎用タグアッセイの使用が含まれる。また、好ましい実施形態には、さらに、汎用検出子(好ましくは金電極または炭素電極)上に固定化された検出プローブへのタグ付きDNA分子またはタグ付きRNA分子のハイブリダイゼーションを検出するための、ルテニウムアンペロメトリーの使用も含まれる。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一部分が相補的ヌクレオチド配列である他のポリヌクレオチドへの、ワトソン-クリック塩基対形成による、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、多種多様な研究用途、医学的用途、および工業的用途に役立つ基本的プロセスである。標的配列を含有するポリヌクレオチドへのプローブのハイブリダイゼーションを検出することは、遺伝子発現解析、DNA配列決定、およびゲノム解析に役立つ。具体的な用途には、たとえば、Sambrookら「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」第2版(Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク、1989)、KellerおよびManak「DNA Probes」第2版(Stockton Press、ニューヨーク、1993)、Milliganら,1993,J Med Chem,36:1923-1937、Drmanacら,1993.Science,260:1649-1652、Bains,1993,J DNA Seq Map,4:143-150に記載されているように、診断アッセイにおける疾患関連ポリヌクレオチドの同定、試料中の新規標的ポリヌクレオチドのスクリーニング、ポリヌクレオチド混合物中の特定標的ポリヌクレオチドの同定、変異体配列の同定、遺伝子タイピング、特定標的ポリヌクレオチドの増幅、および不適切に発現される遺伝子の治療的遮断などがある。
【0003】
各固定化プローブが支持体に機能的に接続され、固定化プローブへのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出することができるようになっている固定化プローブは、標的ヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドの検出に有用である。最も一般的には、DNAプローブを使って、そのプローブ配列に相補的な標的ヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドが検出される。固定化プローブ用の支持体は、しばしば「チップ」と呼ばれる平坦な表面であってもよいし、支持体はビーズまたは他の粒子の表面であってもよい。プローブは、通常、既知の配置またはアレイで固定化され、それが、塩基対形成規則に基づいて既知および未知ポリヌクレオチドをマッチングさせるための媒体になる。プローブアレイを使って同定される未知試料を同定するプロセスは、好ましくは、自動化される。アイデンティティがわかっている多数の固定化プローブを有するマイクロアレイを使って相補的結合を決定することにより、遺伝子発現および遺伝子発見の大規模並列研究が可能になる。たとえば、1個のDNAチップを使った実験により、研究者は、何千もの遺伝子に関する情報を同時に得ることができる。たとえば、Hashimotoらは、少なくとも1つのプローブが、検出すべき標的遺伝子に相補的ヌクレオチド配列を有し、各プローブは電極の表面または光ファイバーの先端に固定化され、二本鎖核酸に結合する能力を持つ電気的または光学的に活性な物質を使って、相補的な固定化プローブへの標的遺伝子のハイブリダイゼーションが検出されるようになっている、固定化一本鎖プローブのアレイを開示している(米国特許第5,776,672号および第5,972,692号)。
【0004】
〔汎用チップ〕
一部の状況において、チップ技術の短所は、検出すべき特定の配列に対して相補的になるように設計された一組の固定化プローブを使って、検出すべき配列に合わせた専用のチップを製造しなければならないという点である。単一の生物に特異的なチップは大きな製造投資を必要とし、そのチップは、狭く限定された試料範囲にしか使用することができない。これに対して、「汎用チップ」または「汎用アレイ」は、プローブが生物特異的な配列または産物を標的としていないので、生物非依存的である。遺伝子発現解析にしばしば用いられる特定の組織、生理学的条件または発生段階に特異的なチップも同様に、限られた試料範囲に使用するために、かなりの製造投資を必要とする。汎用チップは、関心組織、生理学的条件または発生段階の研究に対する、制約のないアプローチを提供する。ポリヌクレオチド検出用の汎用チップを使用することにより、製造品質管理を改善することができる。
【0005】
汎用チップ設計に対する1つのアプローチでは、長さが5、6、7、8、9、10ヌクレオチドまたはそれ以上であるオリゴヌクレオチドの考えうる配列を全て含んでいる一組のオリゴヌクレオチドプローブを、チップ表面に取り付ける。これらのアレイに必要なプローブは、簡単な組合せアルゴリズムを使って設計することができる。このチップは、DNA、cDNA、RNAまたは他のハイブリダイズ可能な物質を含みうる混合物と共にインキュベートされ、配列がわかっている各プローブへのハイブリダイゼーションが測定される。しかし、そのようなアレイの特異性は損なわれる可能性がある。なぜなら、配列が相違するとストリンジェントなハイブリダイゼーションのための要件も相違しうるからである。また、そのような汎用アレイではフレームシフトに起因する偽陽性が防止されない。たとえば、6ヌクレオチド長のプローブを持つ汎用アレイでは、ある試料ポリヌクレオチド中の最後の4ヌクレオチドが、ある6ヌクレオチドプローブの相補的な最後の4ヌクレオチドにハイブリダイズするが、同じ試料ポリヌクレオチドは、その6ヌクレオチドプローブ配列全体にはハイブリダイズしないということが起こりうる。
【0006】
Suyamaら(2000,Curr Comp Mol Biol 7:12-13)は、試料の遺伝子発現プロファイリング用の汎用チップシステムを開示している。このチップシステムでは、プローブへの転写物の結合に代えて、「DNAコンピューティング」を利用する。SuyamaらのDNAコンピューティングシステムは、汎用チップ上の一組の汎用固定化プローブへの、コード化アダプターの結合を測定することにより、どの転写物が存在するかを、間接的に決定する。試料中に存在する転写物の一領域に相補的な領域を持つコード化アダプターだけが、汎用チップ上のプローブに結合する能力を持つアダプターを生成させるその後の操作および加工ステップを受けることになる。
【0007】
〔タグ〕
汎用チップの製造に対するもう一つのアプローチでは、標的ポリヌクレオチド中に自然には存在しない一組のタグ配列を使用し、これらのタグが汎用チップ上の相補的プローブに結合する。そのような用途を持つタグは、時には「アドレスタグ」または「ジップコード」と呼ばれたり、標的を同定するための「バーコード」に類似しているとみなされたりする。そして、検出、同定、追跡、選別、回収、その他の操作は、標的ポリヌクレオチドの配列ではなく、タグ配列に対して行われる。オリゴヌクレオチドタグは、ポリヌクレオチドに共有結合させるか、ポリヌクレオチド中に組み込むことができる。少なくとも2つのドメイン(プローブに相補的なタグ配列を有するドメインと、標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部に相補的な配列を有するドメイン)を持つためにリンカーとして機能する別個のオリゴヌクレチドのハイブリダイゼーションにより、タグは、あるポリヌクレオチドと関連づけられた状態になりうる。オリゴヌクレオチドタグを使用するシステムは、複雑な混合物中の個々の分子を操作し同定するための手段として、たとえば、標的ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを検出するための手段として、または薬物候補を求めてゲノムライブラリー、cDNAライブラリー、またはコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする際の補助手段などとして、提案されている。BrennerおよびLerner,1992,Proc Natl Acad Sci,89:5381-5383、Alper,1994,Science,264:1399-1401、Needelsら,1993,Proc Nat Acad Sci,90:10700-10704。
【0008】
〔偽シグナル〕
タグ付きポリヌクレオチドの有用性は、あるタグと、表面に固定化されたその相補的プローブとの間で達成される特異的ハイブリダイゼーションの成功に大きく依存する。オリゴヌクレオチドタグによるポリヌクレオチドの同定を成功させるには、偽陽性シグナルおよび偽陰性シグナルの数を最小限に抑えなければならない。残念なことに、偽シグナルは珍しくない。なぜなら、塩基対形成および塩基スタッキングの自由エネルギーは、二重鎖構造または三重鎖構造をとっているヌクレオチド配列間で、広範囲にわたって変動しうるからである。たとえば、もう一つの二重鎖と比べてグアノシン-シトシン(G-C)対の数が相違しているタグ-プローブ二重鎖は、ハイブリダイゼーションのためのストリンジェンシー要件も相違するだろう。また、スタッキングエネルギーが相違するので、アデノシン(A)とチミジン(T)の反復配列がその相補鎖に結合しているものからなるタグ-プローブ二重鎖は、GとCの反復配列がミスマッチを含む部分的に相補的な標的に結合しているものからなる同じ長さの二重鎖より、安定性が低いということもありうる。
【0009】
偽シグナルは上述の「フレームシフト」によっても生成しうる。この問題は、その相補的タグに対して見当ずれ(フレームシフト)を起こしたプローブが、そのコドンのそれぞれについて1つ以上のミスマッチを持つ二重鎖を与えて、不安定な二重鎖になることを保証する「コンマレス(comma-less)」コードを使用することによって、対処されてきた。
【0010】
偽シグナルに関わる上記の問題を考慮して、十分なタグレパートリーを提供するが、それと同時に、自然の塩基対形成および塩基スタッキング自由エネルギー差を変化させるために特殊な試薬を使用したり、コンマレスコード用のエンコードシステムを苦心して作ったりしなくても、偽陽性シグナルおよび偽陰性シグナルの発生が最小限に抑えられるような、オリゴヌクレオチドに基づくさまざまなタグ付けシステムが、研究者によって開発されている。そのようなタグ付けシステムは、たとえば、コンビナトリアル化合物ライブラリーの構築および使用、DNAの大規模マッピングおよび配列決定、遺伝子による同定、および医学的診断など、多くの分野に応用される。
【0011】
Brennerらは、ポリヌクレオチド断片の末端に反応性部分を介してタグを取り付ける「汎用」チップシステムを開示している。このシステムでは、あるタグとそれとは別のタグに対する相補鎖との間に形成されるミスマッチ二重鎖またはミスマッチ三重鎖はいずれも、その安定性が、そのタグとそれ自身の相補鎖との間に形成される完全にマッチした二重鎖よりもはるかに低くなるような配列を有する多サブユニットオリゴヌクレチドタグを設計することによって、偽シグナルが避けられる。米国特許第5,604,097号、第5,654,413号、第5,846,719号、第5,863,722号、第6,140,489号、第6,150,516号、第6,172,214号、第6,172,218号、第6,352,828号、第6,235,475号。Morrisら(米国特許第6,458,530号、EP0799897)は、細胞およびウイルスを含む組成物を標識し追跡すること、ならびに細胞およびウイルス表現型の解析を容易にすることを目的とする、タグおよび相補的プローブのアレイの使用を開示している。
【0012】
これに代わる方法では、多成分タグ付けシステムであって、タグがポリヌクレオチドに取り付けられるではなく、所定のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを適合させ、インデックス化し、かつ/または検出するためにポリヌクレオチドにハイブリダイズさせる別個の成分上に、タグが見いだされるシステムを使用する。米国特許第6,261,782号ならびにその関連特許および関連出願(Lizardiら)に開示されている方法では、核酸切断試薬を使って「付着末端」を生成させ、種々の付着末端に相補的な末端を持つアダプター-インデクサー(adapter-indexer)オリゴヌクレオチドを試料に加えることで、切断されたポリヌクレオチド断片を何組かにインデックス化し、アダプター-インデクサーの付着末端に相補的な付着末端を持つライゲーター-ディテクター(ligator-detector)オリゴヌクレオチドを加え、試料全体を複数の検出子プローブとハイブリダイズさせ、ライゲーター-ディテクターを検出子プローブに共有結合させ、最後に、検出子プローブへのライゲーター-ディテクターの連結を検出することによって、試料中の標的ポリヌクレオチドを選別し同定することができる。
【0013】
汎用アレイ中の固定化捕捉プローブにハイブリダイズするドメインと標的を含有する分析物にハイブリダイズするドメインとを持つ二官能性リンカーを使用するもう一つの多成分システムが、Balchらによって米国特許第6,331,441号に開示されている。Balchらは、標的配列と、捕捉プローブに相補的なユニーク汎用配列との両方を含有するアンプリコン(amplicons)を生成させるための、標的ポリヌクレオチドの増幅も開示しており、このユニーク汎用配列は、PCRプライマーまたはLCRプライマーによって導入することができる(米国特許第6,331,441号)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本開示は、汎用タグアッセイを使って試料中の標的を検出するための方法および組成物を提供する。ここに開示し特許請求する汎用タグアッセイは、特殊な条件または特殊な試薬を使用しなくても偽シグナルが有利に最少化される汎用タグアッセイに使用するための、タグおよびプローブならびに汎用検出子を提供する。本発明の汎用タグアッセイでは、標的に対応する識別子タグを持つタグ付き分子を生成させ、タグ付き分子を、検出プローブを持つ汎用検出子と共にインキュベートし、相補的な検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションを測定すること(ここに、識別子タグとその相補的検出プローブとのハイブリダイゼーションは、その識別子タグに対応する標的の存在を示す)によって、標的が検出される。
【0015】
ここに開示する汎用タグアッセイは、a)アッセイ対象である各標的に対して少なくとも1つのタグが識別子タグとして役立ち、しかも各タグは汎用検出子中に相補的検出プローブを持つように選択される、一組の、最小限にしかクロスハイブリダイズしないタグおよびプローブ、b)アッセイ対象である試料から生成するタグ付き分子(ある標的用の識別子タグを含有するタグ付き分子は、その標的が試料中に存在する場合にしか生成しない)、およびc)汎用検出子上の相補的検出プローブへのタグのハイブリダイゼーションを検出することができるような形で検出手段に連結された検出プローブを持つ汎用検出子などを含むが、これらに限定されるわけではない。ここに開示する汎用タグアッセイでは、識別子タグとその相補的検出プローブとのハイブリダイゼーションの検出が、アッセイ対象である試料中に、対応する標的が存在することを示す。タグ付き分子は、ある標的のコピーまたは相補体とその標的用の識別子タグとを含有するタグ付き標的であることができる。もう一つの選択肢として、タグ付き分子は、ある標的用の識別子タグ分子を含有するが、その標的のコピーまたは相補体を含有しないものであってもよい。タグ付き分子は標的依存的な増幅法を使って生成させるか、標的の増幅を使用しない標的依存的な方法によって生成させるか、複数の方法を組み合わせて生成させることができる。
【0016】
ここに記載するいくつかの方法によれば、標的ヌクレオチド配列に呼応して少なくとも1つのタグ付き分子を標的依存的に生成させ、タグ付き分子を、少なくとも1つの検出プローブを持つ汎用検出子と共にインキュベートし、相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションを測定することによって、試料中の標的ヌクレオチド配列の存在を検出することができる。タグ付き分子は、標的ヌクレオチド配列のコピーまたは相補体とその標的ヌクレオチド配列用の識別子タグとを含有するタグ付き標的であることができる。もう一つの選択肢として、タグ付き分子は、ある特定標的配列用の識別子タグ分子を含有するが、その標的ヌクレオチド配列のコピーまたは相補体を含有しないものであってもよい。タグ付き分子は、検出手段に連結された検出プローブを持つ汎用検出子と共にインキュベートされ、汎用検出子上の相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションは、当該試料中に、対応する標的ヌクレオチド配列が存在することを示すシグナルを生成する。
【0017】
汎用検出子は、表面、薄膜または粒子に取り付けられた検出プローブを含み、その検出プローブは、相補的プローブへのタグのハイブリダイゼーションを検出することができるように検出手段に連結される。検出プローブは固定されたアレイとして固定化するか、検出プローブの位置を変えることができるような方法で、表面、薄膜または粒子に取り付けることができる。ビーズなどの粒子1粒に1つ以上の検出プローブを連結することができる。検出プローブは、共有結合、イオン結合または静電相互作用によって表面、薄膜または粒子に取り付けることができ、その取付は可逆的であることができる。もう一つの選択肢として、検出プローブは、溶解状態にある検出手段に、相補的プローブへのタグのハイブリダイゼーションを検出することができるような形で連結することもできる。
【0018】
好ましくは、本発明の汎用タグアッセイは、相補的検出プローブへのタグのハイブリダイゼーションを測定することができるように、検出手段を含む支持体に固定化された検出プローブを含む汎用チップを提供する。相補的検出プローブへのタグのハイブリダイゼーションを測定するための検出手段は、電気化学的手段、蛍光的手段、比色的手段、放射測定的手段または磁気的手段であることができる。特に、本発明の汎用タグアッセイは、基板に取り付けられた電極に連結されている検出プローブのアレイを提供し、オリゴヌクレオチド検出プローブへのオリゴヌクレオチドタグのハイブリダイゼーションは、電気化学的方法によって検出される。より好ましくは、金電極または炭素電極を使用して、検出プローブへのタグ結合を検出する。さらに好ましくは、金電極または炭素電極に固定化された検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションを、ルテニウムアンペロメトリーによって検出する。電極をアビジンで被覆し、そのアビジンに、ビオチン標識オリゴヌクレオチドを結合させることができる。もう一つの選択肢として、電極を別のタンパク質で被覆し、そのタンパク質に、電極を被覆しているタンパク質に結合する部分で誘導体化されたオリゴヌクレオチドを結合させることもできる。
【0019】
本発明の一態様は、試料中の標的ヌクレオチド配列を検出する方法であって、以下のステップを含みうる(ただし以下のステップに限定されない)方法を提供する:a)標的ヌクレオチド配列を含有するテンプレートを取得するステップ、b)テンプレートを増幅することにより、標的ヌクレオチド配列の少なくとも1つのコピーまたは相補体と、標的ヌクレオチド配列用の識別子タグとして選択された少なくとも1つのタグ配列とを有する少なくとも1つのタグ付き分子を生成させるステップ、d)少なくとも1つのタグ付き分子を、検出手段に連結された検出プローブを持つ汎用検出子と共にインキュベートするステップ、e)汎用検出子上の相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションを検出するステップ。ここに開示する汎用タグアッセイによれば、汎用検出子上の相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションの検出は、アッセイ対象である試料中に、対応する標的ヌクレオチド配列が存在することを示す。もう一つの態様は、試料中の複数の標的ヌクレオチド配列を検出する方法であって、各標的ヌクレオチド配列が相異なる識別子タグを持つ方法を提供する。
【0020】
本発明の一態様は、試料中の標的ヌクレオチド配列を検出する方法であって、以下のステップを含みうる(ただし以下のステップに限定されない)方法を提供する:a)標的ヌクレオチド配列を含有するテンプレートを取得するステップ、b)テンプレートを増幅することにより、標的ヌクレオチド配列の少なくとも1つのコピーまたは相補体と、標的ヌクレオチド配列用の識別子タグとして選択された少なくとも1つのタグ配列と、増幅産物のトリミングに関与する配列を含む随意の追加外来ヌクレオチド配列とを有する、少なくとも1つのタグ付き分子を生成させるステップ、c)増幅産物をトリミングすることにより、標的ヌクレオチド配列用の識別子タグとして選択されたタグ配列を含有する少なくとも1つのタグ付き分子を生成させるステップ、d)少なくとも1つのタグ付き分子を、タグ配列を見つける能力を持つ汎用検出子と共にインキュベートするステップ、およびe)汎用検出子上の相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションを検出するステップ。ここに開示する汎用タグアッセイによれば、汎用検出子上の相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションの検出は、アッセイ対象である試料中に、対応する標的ヌクレオチド配列が存在することを示す。もう一つの態様は、試料中の複数の標的ヌクレオチド配列を検出する方法であって、各標的ヌクレオチド配列が相異なる識別子タグを持つ方法を提供する。
【0021】
本発明のもう一つの態様は、試料中の標的ヌクレオチド配列を検出する方法であって、以下のステップを含みうる(ただし以下のステップに限定されない)方法を提供する:a)標的ヌクレオチド配列を含有するテンプレートを取得するステップ、b)テンプレートを増幅することにより、標的ヌクレオチド配列用の識別子タグとして選択された少なくとも1つのタグ配列を有し、任意で、標的ヌクレオチド配列の少なくとも1つのコピーまたは相補体、ならびに増幅産物のトリミングに関与する配列を含む追加外来ヌクレオチド配列を有する、少なくとも1つのタグ付き分子を生成させるステップ、c)増幅産物をトリミングすることにより、標的ヌクレオチド配列用の識別子タグを含有し、かつ標的ヌクレオチド配列のコピーまたは相補体を含有しない、少なくとも1つのタグ付き分子を生成させるステップ、d)少なくとも1つのタグ付き分子を、検出手段に連結された一組の検出プローブを持つ汎用検出子と共にインキュベートするステップ、e)汎用検出子上の相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションを検出するステップ。ここに開示する汎用タグアッセイによれば、汎用検出子上の相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションの検出は、その試料中に対応する標的ヌクレオチド配列が存在することを示す。もう一つの態様は、試料中の複数の標的ヌクレオチド配列を検出する方法であって、各標的ヌクレオチド配列が相異なる識別子タグを持つ方法を提供する。
【0022】
本発明のさらにもう一つの目的は、ここに開示する汎用タグアッセイでの使用に適した一組の相補的タグおよびプローブ、好ましくは一組の、最小限にしかクロスハイブリダイズしないタグおよびプローブであって、全てのタグ-プローブ二重鎖が同じまたは類似する融解温度およびスタッキングエネルギーを持つものを提供する。もう一つの目的は、一組のタグであって、その組内の各タグは、汎用検出子中に、検出手段に連結された相補的検出プローブを持ち、その結果として、あるタグとその相補的検出プローブとのハイブリダイゼーションが、試料中に、対応する標的が存在することを高い信頼性で示すだけでなく、あるタグとその相補的検出プローブとのハイブリダイゼーションの不在が、試料中に、対応する標的が存在しないことを高い信頼性で示すことになるものを提供する。好ましくは、試薬の品質、ハイブリダイゼーション条件および他のパラメータに関する内部対照として役立つタグおよびプローブを含めることによって、汎用タグアッセイの信頼性を向上させる。
【0023】
ここに開示する標的ヌクレオチド配列検出方法の一態様によれば、増幅ステップには、適切なテンプレートのローリングサークル(RC)増幅を使用することができる。RC増幅を使用する実施形態では、増幅産物が、標的ヌクレオチド配列のコピーと、検出プローブにハイブリダイズする能力を持つ相異なる識別子タグ配列とを含有することになるように、標的ヌクレオチド配列を含有するテンプレートを増幅するために用いるRCプローブが、標的ヌクレオチド配列に相補的な配列の一部を含み、かつその標的ヌクレオチド配列用の識別子タグに相補的な配列も含む。好ましくは、RC増幅の産物は、標的ヌクレオチド配列にもタグ配列にも見いだされない追加外来配列(これは、たとえば、増幅産物のトリミングに関与する配列、プライマー結合に関与する配列、またはポリメラーゼプロモーターの形成に関与する配列などを含みうるが、これらに限るわけではない)を含有する。もう一つの選択肢として、ヌクレオチド配列のコピーまたは相補体に対してRC増幅を行ってもよい。本発明の諸態様では、RC増幅を線形モードまたは非線形モードで行うことができる。好ましい実施形態では、線形モードでのRC増幅により、一本鎖増幅産物が得られる。もう一つの好ましい実施形態では、増幅産物の一部に相補的な少なくとも1つの追加プライマーを用いる非線形モードまたは指数モードでのRC増幅により、二本鎖増幅産物、好ましくは高分岐増幅産物が得られる。RC増幅のテンプレートはDNAでもRNAでもよく、たとえば、ゲノムDNA、cDNA、PCR産物、LCR産物を含むライゲーション産物、RC増幅産物、合成DNA、mRNA、rRNA、RC転写産物、または合成RNAなどがあげられるが、これらに限るわけではない。一本鎖テンプレートは、二本鎖DNAを変性させることによって(好ましくは二本鎖DNAを変性させて、少なくとも1つの標的ヌクレオチド配列を含有する標的鎖から一本鎖テンプレートを生成させることによって)取得することができる。二本鎖DNAは、ゲノムDNA、cDNA、PCR産物、またはLCR産物を含むライゲーション産物であることができる。
【0024】
本発明のもう一つの態様によれば、RC増幅を使って、標的ヌクレオチド配列のコピーまたは相補体を含有するPCR産物またはLCR産物を増幅する。ある実施形態では、標的ヌクレオチド配列の相補体を含有するPCR産物を、標的ヌクレオチド配列のコピーとその標的ヌクレオチド配列用の識別子タグに相補的な配列とを有するRCプローブを使って、増幅産物が標的ヌクレオチド配列の少なくとも1つの相補体と検出プローブにハイブリダイズする能力を持つ識別子タグとを含有するように、増幅する。任意で、RC増幅産物をトリミングする。
【0025】
本発明のもう一つの態様によれば、標的配列の増幅を2回以上行う。標的ヌクレオチド配列の増幅には、リガーゼ連鎖反応(LCR)、非酵素的ライゲーション、またはPCRを使用することができる。LCR産物、非酵素的ライゲーション産物およびPCR産物は、それ以降の増幅ステップ(好ましくはRC増幅ステップ)で増幅することができる。
【0026】
標的ヌクレオチド配列のLCRまたは非酵素的ライゲーション増幅は以下のステップを含みうるが、これらに限るわけではない:a)必要なら、少なくとも1つの標的ヌクレオチド配列を有する一本鎖テンプレートを取得するステップ、b)テンプレートを、複数のオリゴヌクレオチドライゲーションプライマーと接触させるステップ、この際、少なくとも1対のライゲーションプライマーは、テンプレート中の少なくとも1つの標的ヌクレオチド配列に、当該ライゲーションプライマー対の一方の5'末端が当該ライゲーションプライマー対の他方の3'末端に隣接してハイブリダイズするような形でハイブリダイズするように、設計される、c)テンプレート上の標的ヌクレオチド配列への、少なくとも1対のライゲーションプライマーの隣接ハイブリダイゼーションと、隣接ハイブリダイズしたライゲーションプライマー対のライゲーションとを促進して、標的ヌクレオチド配列に相補的な配列を含む少なくとも1つのライゲーション産物を形成させるような条件下で、テンプレートおよびライゲーションプライマーをインキュベートするステップ、d)ライゲーション産物をテンプレートから解離させるステップ、e)所望により、ハイブリダイゼーションおよびライゲーションステップを繰り返すステップ、f)以降の増幅ステップに使用するためにライゲーション産物を回収するステップ。ある実施形態では、標的ヌクレオチド配列を指数的に増幅させるために、温度サイクリングを使って、ライゲーション反応(好ましくはLCR)を繰り返す。
【0027】
好ましい実施形態では、標的鎖上の標的ヌクレオチド配列に相補的な配列を含む各ライゲーションプライマーが、標的ヌクレオチド配列のコピーと識別子タグ配列の相補体とを含有する線状の環化可能なRCパッドロック(padlock)プローブの「骨格(backbone)」の一部分に相補的な外来ヌクレオチド配列も含む。そのような実施形態では、線状のRCパッドロックプローブは、標的ヌクレオチド配列の一領域に対応する3'配列と、標的ヌクレオチド配列の一領域に対応する5'配列とを持ち、その3'配列と5'配列は、標的ヌクレオチド配列に対応する配列を含有しない「骨格」領域によって隔てられている。ライゲーション産物は、RCパッドロックプローブの骨格の一部に相補的な5'および3'外来ヌクレオチド配列を含み、RCパッドロックプローブの骨格の一部に相補的なその配列は、標的ヌクレオチド配列に相補的な配列の隣に位置する。次に、RCパッドロックプローブの5'末端がRCパッドロックプローブの3'末端に隣接し、その5'末端と3'末端とがライゲートされて環状RCパッドロックプローブを形成するように、ライゲーション産物へのRCパッドロックプローブのハイブリダイゼーションが促進される条件下で、ライゲーション産物を少なくとも1つの線状RCパッドロックプローブと共にインキュベートする。RCパッドロックプローブとライゲーション産物とによって形成された複合体に、ライゲーション産物を重合プライマーとして利用するRCパッドロックプローブのRC増幅が起こりうる条件下で、DNAポリメラーゼを加える。この実施形態では、増幅産物は、標的ヌクレオチド配列に相補的な配列と標的ヌクレオチド配列に対応する識別子タグ配列とを含むRCプローブ配列のコピーを複数含有する一本鎖DNA分子である。この増幅産物は、汎用タグアッセイにおけるタグ付き分子として使用することができる。任意で、増幅産物は追加の外来ヌクレオチド配列を含有してもよい。増幅産物は、修飾ヌクレオチド、アドレサブルリガンド(addresasble ligand)、または他の修飾を含みうる。もう一つの実施形態では、増幅産物は、汎用タグアッセイ用の小さいタグ分子を得るための増幅産物の増幅後トリミングに関与する少なくとも1つの追加外来ヌクレオチド配列を含む。増幅産物は、たとえば、二重鎖増幅産物を生成させることなどを目的とする、さらなる増幅ステップのためのプライマー結合部位も含有しうる。増幅産物はさらに、プロモーター領域(好ましくはポリメラーゼ用のプロモーター領域)の形成に関与する配列も含みうる。
【0028】
本発明のもう一つの態様によれば、標的にも識別子タグにも見いだされない追加外来ヌクレオチド配列を増幅ステップ中に導入することができ、そのような外来ヌクレオチド配列は、増幅産物のトリミングに関与する配列を含みうる。ある実施形態では、外来ヌクレオチド配列が、ヘアピン構造を形成する自己相補的配列を含有しうる。ヘアピン構造を形成するこれらの自己相補的配列は、トリミングステップに関与する制限酵素の制限酵素認識部位を少なくとも1ヶ所は含有することができ、適切な制限酵素には、EcoRIなどのII型制限酵素や、FokIなどのIIS型制限酵素が含まれる。もう一つの実施形態では、増幅ステップ中に導入される外来ヌクレオチド配列が制限酵素認識部位の一方の鎖をコードし、少なくとも1つの補助オリゴヌクレオチドを添加すると、二本鎖制限酵素認識部位が形成される。適切な制限酵素には、EcoRIなどのII型制限酵素や、FokIなどのIIS型制限酵素が含まれる。
【0029】
本発明のもう一つの態様によれば、タグ配列の標識ヌクレオチド配列には見いだされない追加外来ヌクレオチド配列を増幅ステップ中に導入することができ、そのような外来配列は、増幅産物にポリメラーゼが結合するためのプロモーター領域の形成に関与する配列を含みうる。好ましい実施形態では、二本鎖増幅産物が、DNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼ(好ましくはT7 RNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ、ファイ29(φ29)DNAポリメラーゼ)のためのプロモーターをコードする外来ヌクレオチド配列を含む。
【0030】
本発明のもう一つの態様によれば、ライゲーション反応を使って、試料中に存在する標的ヌクレオチド配列の変異体配列または多型配列を同定する。この変異体配列は一塩基多型(SNP)であることができる。あるいは、変異体配列は、標的ヌクレオチド配列の突然変異体もしくは対立遺伝子型、またはスプライス変異体を表す。好ましい実施形態では、標的ヌクレオチド配列の変異体配列に相補的な配列を有する複数の線状RCパッドロックプローブを使って増幅ステップが行われ、各線状RCプローブは単一の変異体配列に相補的であり、各プローブはその変異体配列用の識別子タグの相補体を含む。試料中に存在する変異体配列に相補的なRCパッドロックプローブだけが変異体配列にハイブリダイズし、ライゲートされて、汎用タグアッセイと共に使用されるタグ付き分子を生成させるのに適した環化RCパッドロックプローブを形成するように、試料をこの複数の線状RCパッドロックプローブと共に、RCパッドロックプローブのハイブリダイゼーションとライゲーションに適した条件下でインキュベートする。検出子プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションは、どの変異体配列が存在したかを示す。なぜなら、試料中に存在する変異体配列に相補的なRCプローブだけが環化され、増幅されて、検出プローブに結合する能力を持つ識別子タグを生成させたからである。
【0031】
もう一つの態様によれば、複数の上記線状RCパッドロックプローブを使って、同じ標的ヌクレオチド配列または相違する標的ヌクレオチド配列の複数の変異体配列を単一の反応で検出することができ、各線状RCパッドロックプローブは単一の変異体配列に相補的な配列とその変異体配列用の識別子タグの相補体とを含む。相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションは、アッセイ対象である試料中にどの変異体配列が存在するかを示す。なぜなら、試料中に存在する変異体配列に相補的なRCプローブだけが環化され、増幅されて、相補的な検出プローブに結合する能力を持つ識別子タグを含有するタグ付き分子を生成させたからである。
【0032】
もう一つの選択肢として、試料中に存在する変異体配列または多型配列を同定するために、プライマーのライゲーションを使用することもできる。ライゲーションはLCRまたは非酵素的ライゲーションを使って行うことができる。試料を、標的ヌクレオチド配列の変異体配列に相補的な配列を有するライゲーションプライマーと共に、ハイブリダイゼーションおよびライゲーションに適した条件下でインキュベートすると、標的鎖テンプレート中に存在する変異体配列に相補的なライゲーションプライマーだけがテンプレートにハイブリダイズし、テンプレート中に存在する変異体標的ヌクレオチド配列に相補的な配列を有するライゲーション産物を少なくとも1つは形成させることになる。もう一つの好ましい実施形態では、どのライゲーション産物も、変異体標的ヌクレオチド配列の一部に相補的な配列の隣(3'側および5'側)に位置する外来ヌクレオチド配列を含むように、上記一組のライゲーションプライマーが、外来配列を有するプライマーを含む。複数の上記ライゲーションプライマーを使用して、同じ標的ヌクレオチド配列または相違する標的ヌクレオチド配列の複数の変異体配列を単一の反応で検出することができ、変異体配列に相補的な配列を有するライゲーションプライマーだけが、その変異体配列に相補的なライゲーション産物をもたらすことになる。ここに開示する汎用タグアッセイで使用するのに適したタグ付き分子を生成させるために、変異体配列に相補的な配列を有するライゲーション産物を増幅することができる。任意で、標的ヌクレオチド配列のコピーまたは相補体を含有するPCR産物に対して、ライゲーション反応を行うことができる。
【0033】
もう一つの好ましい実施形態では、変異体配列に相補的なライゲーションプライマーが外来配列も含有する。ある実施形態では、変異体配列の場所に対して3'側(「下流」)にある標的配列の領域に相補的なプライマーの5'末端が識別子タグ配列を含有し、変異体配列の場所に対して5'側(「上流」)にある標的配列の領域に相補的なプライマーの3'末端がRNAポリメラーゼプロモーター配列を含有する。これらの2つのプライマーは、それぞれ、タグ配列プライマーおよびプロモーター配列プライマーと呼ばれる。ライゲーション産物は、アッセイ対象である試料中に存在する変異体配列に相補的な1対のプライマーのライゲーションによって形成される。このライゲーション産物は、識別子タグ、変異体配列に相補的な配列、およびRNAポリメラーゼプロモーターの一方の鎖を有する。そのプロモーター配列に相補的な補助オリゴヌクレオチドを添加すれば、RNA転写を開始させることができる。ライゲーションによって標的配列の両半分の接合が起こった場合にのみ、タグ配列の転写が起こる。標的はゲノムDNA、RNA、またはPCR、LCRもしくはRC増幅などの方法によって増幅された標的のコピーであることができる。好ましい実施形態では、プロモーターライゲーションプライマーとタグライゲーションプライマーのライゲーション効率が向上するように、たとえば、ビオチン捕捉もしくはハイブリダイゼーション捕捉によって、または選択的エキソヌクレアーゼ消化によって、標的に相補的な鎖が除去される。複数の上記ライゲーションプライマーを使用して、同じ標的ヌクレオチド配列または相違する標的ヌクレオチド配列の複数の変異体配列を単一の反応で検出することができ、この場合、変異体配列に相補的な配列を持つライゲーションプライマーだけが、その変異体配列に相補的なライゲーション産物を生成させることになる。ライゲーション産物の転写により、識別子タグを含有するタグ付きRNA分子が生成する。相補的検出プローブへのRNA識別タグのハイブリダイゼーションは、アッセイ対象である試料中にどの変異体配列が存在するかを示す。これに代わる実施形態として、プロモーター-タグライゲーションは、LCR増幅によって引き起こすこともでき、この場合、タグライゲーションプライマー中の標的配列に相補的なLCRプライマーは、タグ配列の相補体を含有しない。
【0034】
本発明のもう一つの態様は、識別特徴として役立つように選択された標的ヌクレオチド配列を検出することによって、生物または個体を同定する方法に向けられる。生物または個体は以下のステップの一部または全部を使って同定される:a)その生物または個体に由来する試料(少なくとも1つの標的ヌクレオチド配列を有するテンプレートを含有するもの)を取得するステップ、b)タグ付き分子を標的依存的に生成させるステップ、c)任意で、タグ付き分子をトリミングして、より小さいタグ付き分子を生成させるステップ、d)タグ付き分子を、検出手段に連結された検出プローブのアレイを持つ汎用検出子と共にインキュベートするステップ、およびe)相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションを検出するステップ。ある実施形態では、識別子タグとその相補的検出プローブとのハイブリダイゼーションによって、生物または個体が同定される。この場合、標的に対応する識別子タグを含有するタグ付き分子が生成したのは、アッセイ対象である試料中に標的が存在したからである。もう一つの実施形態では、アッセイ対象である試料中に、対応する標的が存在することを高い信頼性で示す識別子タグとその相補的検出プローブとのハイブリダイゼーションによるだけでなく、アッセイ対象である試料中に、対応する標的が存在しないことを高い信頼性で示す識別子タグとその相補的検出プローブとのハイブリダイゼーションの不在によっても、生物または個体を同定することができる。好ましくは、ハイブリダイゼーションまたはハイブリダイゼーションの欠如に基づく結果の信頼性を高めるために、少なくとも1つの内部対照を各アッセイに含める。より好ましくは、複数の内部対照を含める。汎用タグアッセイを使って、ある個体または生物中の複数の標的をアッセイすることができる。汎用タグアッセイを使って、複数の個体または生物を同定することができる。
【0035】
番号付けした以下の項で本発明のいくつかの態様を説明する。
【0036】
第1項:本発明の一態様は、試料中の標的ヌクレオチド配列を検出する方法であって、
【0037】
a)前記標的ヌクレオチド配列用の識別子として選択された少なくとも1つの識別子タグを含む少なくとも1つのタグ付き分子を生成させること(前記識別子タグは、前記識別子タグに対応する前記標的ヌクレオチド配列が前記試料中に存在する場合にのみ生成する)、
【0038】
b)前記少なくとも1つのタグ付き分子を、前記識別子タグに相補的な少なくとも1つの検出プローブを持つ汎用検出子と共にインキュベートすること、および
【0039】
c)前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションを測定すること、
を含み、
【0040】
前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションは、前記試料中に、前記識別子タグに対応する前記標的ヌクレオチド配列が存在することを示す方法である。
【0041】
第1項の方法のうち、一部の形態では、少なくとも1つのタグ付き分子が、さらに、前記標的ヌクレオチド配列のコピーまたは相補体を含む。
【0042】
第1項の方法のうち、一部の形態では、汎用検出子が、前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションを前記のとおり測定するための検出手段に連結された検出プローブを含む。たとえば、検出手段は電気化学的手段、蛍光的手段、比色的手段、放射測定的手段または磁気的手段であることができる。一部の実施形態では、検出手段は電気化学的手段である。一部の実施形態では、検出手段に連結された前記検出プローブが、表面、薄膜または粒子に取り付けられる。たとえば、一部の実施形態では、前記検出プローブが、前記表面、薄膜または粒子に、共有結合、イオン結合、静電的相互作用、または吸着によって取り付けられる。一部の実施形態では、検出プローブがビーズなどの粒子に取り付けられる。一部の実施形態では、検出プローブが、複数の粒子に取り付けられる。一部の実施形態では、汎用検出子は、検出手段に連結された検出プローブのアレイを含み、前記アレイは基板に取り付けられた電極を含む。一部の実施形態では、電極が金または炭素である。一部の実施形態では、電極が金である。一部の実施形態では、この方法はさらに、前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションを、ルテニウムアンペロメトリーによって測定することを含む。一部の実施態様では、電極がタンパク質で被覆され、そのタンパク質には、前記電極を被覆する前記タンパク質を結合する部分で誘導体化されたオリゴヌクレチドを結合させることができる。たとえば、一部の実施形態では、電極をアビジンで被覆して、前記電極にビオチン標識オリゴヌクレオチドを結合させることができるようにする。
【0043】
第2項:本発明の実施形態の一つは、試料中の標的ヌクレオチド配列を検出する方法であって、
【0044】
a)前記標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含むテンプレートを取得すること、
【0045】
b)前記テンプレートを増幅することにより、前記標的ヌクレオチド配列用の識別子として選択された少なくとも1つの識別子タグを含む少なくとも1つのタグ付き分子を生成させること、
【0046】
c)前記少なくとも1つののタグ付き分子を、検出手段に連結された検出プローブを含む汎用検出子と共にインキュベートすること(前記検出プローブは、前記識別子タグに相補的な検出プローブを少なくとも1つは含む)、
【0047】
d)前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションを検出すること、
を含み、
【0048】
任意の前記相補的検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションは、アッセイ対象である試料中に、対応する標的ヌクレオチド配列が存在することを示す方法である。
【0049】
第2項の方法の一実施形態では、前記複数の標的ヌクレオチド配列中の各標的ヌクレオチド配列が、相異なる識別子タグを持ち、相補的検出プローブへの各前記相異なる識別子タグのハイブリダイゼーションが、対応する標的ヌクレオチド配列の存在を示すようになっている。
【0050】
第2項の方法の一実施形態では、前記少なくとも1つのタグ付き分子が、前記識別子タグにも前記標的ヌクレオチド配列にも見いだされない外来ヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、前記外来配列がタグ付き分子のトリミングに関与する配列であり、前記方法はさらに、前記少なくとも1つのタグ付き分子をトリミングすることにより、少なくとも1つの、より小さいタグ付き分子を生成させることを含む。
【0051】
第2項の方法の一実施形態では、前記テンプレートの前記増幅が、
【0052】
a)標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含む前記テンプレートに相補的な配列を含み、かつ前記標的ヌクレオチド配列用の識別子として選択された前記識別子タグに相補的な配列も含む、ローリングサークル(RC)プローブを用意するステップ、
【0053】
b)前記RCプローブを前記テンプレートと共に、前記RCプローブが前記テンプレート上の相補的配列にハイブリダイズすることになるような条件下でインキュベートするステップ、
【0054】
c)ポリメラーゼ酵素を、前記ポリメラーゼが前記RCプローブを複製して、前記識別子タグおよび前記標的ヌクレオチド配列またはその相補体の反復コピーを持つタグ付き分子を含む少なくとも1つの増幅産物を生成させるような条件下で、提供するステップ、
【0055】
d)前記増幅産物を、検出手段に連結された検出プローブを含む汎用検出子と共に、インキュベートするステップ(前記検出プローブは、前記識別子タグに相補的な検出プローブを少なくとも1つは含む)、および
【0056】
e)前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの、前記増幅産物中の任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションを検出するステップ、
を含むローリングサークル(RC)増幅を含み、
【0057】
任意の前記相補的検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションは、アッセイ対象である試料中に、対応する標的ヌクレオチド配列が存在することを示す。一部の実施形態では、ステップa)で用意される前記RCプローブが、環状RCプローブである。一部の実施形態では、ステップa)で用意されるRCプローブが線状であり、ステップb)はさらに、前記RCプローブの3'末端と前記RCプローブの5'末端とが前記テンプレート上の連続した相補的配列に隣接してハイブリダイズし、前記3'末端と前記5'末端とがライゲートされて環状RCパッドロックプローブを形成するような条件下で、前記RCプローブを前記テンプレートと共にインキュベートすることを含む。一部の実施形態では、前記テンプレートがDNAまたはRNAである。一部の実施形態では、前記少なくとも1つの増幅産物が、さらに、前記識別子タグにも、標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含む前記テンプレートにも見いだされない外来配列を含む。たとえば、一部の実施形態では、前記外来配列が、前記増幅産物へのプライマー結合、前記増幅産物におけるポリメラーゼプロモーターの形成、または前記増幅産物のトリミングに関与する。一部の実施形態では、前記増幅産物のトリミングに関与する前記外来配列が、ヘアピン構造を形成する自己相補的配列を含む。たとえば、一部の実施形態では、ヘアピン構造を形成する前記自己相補的配列が、前記トリミングに関与する制限酵素の制限酵素認識部位を少なくとも1つは含む。一部の実施形態では、前記少なくとも1つの外来ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの補助オリゴヌクレオチドを添加した時に、前記トリミングに関与する制限酵素の制限酵素認識部位を少なくとも1つは形成する配列を含む。
【0058】
第2項の方法の一部の実施形態では、前記テンプレートの前記増幅が、
【0059】
a)前記標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含む前記テンプレートの一部分に相補的な配列の3'部分を有する第1ライゲーションプライマーと、標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含む前記テンプレートの連続した一部分に相補的な配列の5'部分を有する第2ライゲーションプライマーとを含み、かつ少なくとも1つのライゲーションプライマーはさらに前記標的ヌクレオチド配列用の識別子として選択された識別子タグを含む、少なくとも1対のライゲーションプライマーを用意すること、
【0060】
b)前記第1ライゲーションプライマーの前記3'末端が前記第2ライゲーションプライマーの前記5'末端に隣接してハイブリダイズする形で、前記第1および第2ライゲーションプライマーが前記テンプレートにハイブリダイズすることとなるような条件下で、前記少なくとも1対のライゲーションプライマーを前記テンプレートと共にインキュベートすること、
【0061】
c)前記第1ライゲーションプライマーの前記3'末端を、前記第2ライゲーションプライマーの前記5'末端にライゲートすることにより、タグ付き分子を含むライゲーション産物を生成させること(前記タグ付き分子は、前記標的ヌクレオチド配列のコピーまたは相補体を含み、かつ前記標的ヌクレオチド配列に対応する識別子タグを少なくとも1つは含む)、
【0062】
d)前記ライゲーション産物を、検出手段に連結された検出プローブを含む汎用検出子と接触させること(前記検出プローブは、前記識別子タグに相補的な検出プローブを少なくとも1つは含む)、および
【0063】
e)前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの、前記ライゲーション産物中の任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションを検出すること、
を含む、ライゲーションによる増幅(ligation-mediated amplification)を含み、
【0064】
任意の前記の相補的検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションは、アッセイ対象である試料中に、対応する標的ヌクレオチド配列が存在することを示す。一部の実施形態では、前記テンプレートが標的ヌクレオチド配列を含み、前記第1ライゲーションプライマーが前記標的ヌクレオチド配列の一部分に相補的な配列を含むと共に、前記第2ライゲーションプライマーが前記標的ヌクレオチド配列の連続した一部分に相補的な配列を含むようになっていて、その結果、前記第1ライゲーションプライマーと前記第2ライゲーションプライマーとはテンプレートの連続した部分にハイブリダイズし、ライゲートされて、識別子タグと前記標的ヌクレオチド配列に相補的な配列とを含むライゲーション産物を生成する。一部の実施形態では、前記テンプレートが標的ヌクレオチド配列の相補体を含み、前記第1ライゲーションプライマーが前記標的配列の一部分を含むと共に、前記第2ライゲーションプライマーが前記標的ヌクレオチド配列の連続した一部分を含むようになっていて、その結果、前記第1ライゲーションプライマーと前記第2ライゲーションプライマーとはテンプレートの連続した部分にハイブリダイズし、ライゲートされて、識別子タグと前記標的ヌクレオチド配列とを含むライゲーション産物を生成する。一部の実施形態では、前記第2ライゲーションプライマーの前記5'末端への前記第1ライゲーションプライマーの前記第3'末端の前記ライゲーションが、酵素的手段によって行われる。一部の実施形態では、前記酵素的手段がリガーゼである。一部の実施態様では、前記第2ライゲーションプライマーの前記5'末端への前記第1ライゲーションプライマーの前記3'末端の前記ライゲーションが、非酵素的手段によって行われる。一部の実施形態では、前記インキュベーションおよびライゲーションステップが、前記標的ヌクレオチド配列を増幅するために、温度サイクリングを使って繰り返される。一部の実施形態では、本方法は、複数のライゲーションプライマー対を用意することを含み、前記複数の対のうち少なくとも1つの前記ライゲーションプライマー対は、前記複数の標的ヌクレオチド配列の各標的ヌクレオチド配列に相補的であり、さらに、各前記対のうち少なくとも一方のライゲーションプライマーは前記標的ヌクレオチド配列用の識別子として役立つように選択された識別子タグを含む。一部の実施形態では、本方法は、前記標的ヌクレオチド配列の少なくとも1つの変異体配列を検出することを含む。たとえば、一部の実施形態では、前記少なくとも1つの変異体配列が一塩基多型(SNP)、対立遺伝子変異体、またはスプライス変異体である。一部の実施態様では、前記少なくとも1つの変異体配列がSNPである。
【0065】
第3項:本発明の一態様は、以下の操作を含む、試料中の標的ヌクレオチド配列を検出する方法である:
【0066】
a)前記標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含むテンプレートを取得すること、
【0067】
b)前記テンプレートの一部分に相補的な配列の3'部分を有する第1ライゲーションプライマーと、前記テンプレートの連続した部分に相補的な配列の5'部分を有する第2ライゲーションプライマーとを含む、少なくとも1対のライゲーションプライマーであって、前記ライゲーションプライマー対の各ライゲーションプライマーが、さらに、前記テンプレートに相補的でない外来配列を含むものを用意すること、
【0068】
c)前記第1ライゲーションプライマーの前記3'末端が前記第2ライゲーションプライマーの前記5'末端に隣接してハイブリダイズする形で、前記第1および第2ライゲーションプライマーが前記テンプレートにハイブリダイズすることになるような条件下で、前記少なくとも1対のライゲーションプライマーを前記テンプレートと共にインキュベートすること、
【0069】
d)前記第1ライゲーションプライマーの前記3'末端を、前記第2ライゲーションプライマーの前記5'末端にライゲートすることにより、前記標的ヌクレオチド配列のコピーまたは相補体を含み、かつ前記テンプレートに相補的でない外来3'および5'配列も含むライゲーション産物を生成させること、
【0070】
e)前記ライゲーション産物に相補的な配列を含み、かつ前記標的ヌクレオチド配列用の識別子として役立つように選択された識別子タグに相補的な配列も含むローリングサークル(RC)プローブ(前記ライゲーション産物に相補的な前記配列は、前記標的ヌクレオチド配列またはその相補体に相補的な配列を含み、その隣に前記ライゲーション産物の前記外来配列に相補的な配列を持つ)を用意すること、
【0071】
f)前記RCプローブが前記ライゲーション産物にハイブリダイズすることになるような条件下で、前記RCプローブを前記ライゲーション産物と共にインキュベートすること、
【0072】
g)ポリメラーゼ酵素を、前記ポリメラーゼが前記RCプローブを複製して、タグ付き分子を含む少なくとも1つの増幅産物(前記タグ付き分子は、前記識別子タグの反復コピーおよび前記標的ヌクレオチド配列またはその相補体の反復コピーを含む)を生成させるような条件下で、提供すること、
【0073】
h)各前記増幅産物を、検出手段に連結された検出プローブを含む汎用検出子と共にインキュベートすること(前記検出プローブは、前記識別子タグに相補的な検出プローブを少なくとも1つは含む)、および
【0074】
i)前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの、前記増幅産物中の任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションを検出すること、
【0075】
ここに、任意の前記相補的検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションは、アッセイ対象である試料中に、対応する標的ヌクレオチド配列が存在することを示す。
【0076】
第3項の方法の一部の実施形態では、ステップe)で用意される前記RCプローブが環状RCプローブである。
【0077】
第3項の方法の一部の実施形態では、ステップe)で用意される前記RCプローブが線状であり、ステップf)はさらに、前記RCプローブの3'末端と前記RCプローブの5'末端とが前記テンプレート上の連続した相補的配列に隣接してハイブリダイズし、前記線状RCプローブの前記3'末端と前記5'末端とがライゲートされて環状RCパッドロックプローブを形成するような条件下で、前記RCプローブを、前記標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含む前記ライゲーション産物と共にインキュベートすることを含む。
【0078】
第3項の方法の一部の実施形態では、前記少なくとも1つの増幅産物が、さらに、前記ライゲーション産物には見いだされない外来配列を含む。たとえば、一部の実施形態では、前記外来配列が、前記増幅産物へのプライマー結合、前記増幅産物におけるポリメラーゼプロモーターの形成、または前記増幅産物のトリミングに関与する。一部の実施形態では、前記増幅産物のトリミングに関与する前記外来配列が、ヘアピン構造を形成する自己相補的配列を含む。たとえば、一部の実施形態では、ヘアピン構造を形成する前記自己相補的配列が、前記トリミングステップに関与する制限酵素の制限酵素認識部位を少なくとも1つは含む。一部の実施形態では、前記少なくとも1つの外来ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの補助オリゴヌクレオチドを添加した時に、前記トリミングステップに関与する制限酵素の制限酵素認識部位を少なくとも1つは形成する配列を含む。
【0079】
第4項:本発明の一態様は、以下を各項目を含む、汎用タグアッセイである:
【0080】
a)一組の、最小限にしかクロスハイブリダイズしないタグおよびプローブであって、少なくとも1つのタグが、アッセイ対象である試料中の標的用の識別子タグとして役立ち、各前記識別子タグは前記組内に少なくとも1つの相補的検出プローブを持つように選択されたもの、
【0081】
b)少なくとも1つの前記識別子タグを含む少なくとも1つのタグ付き分子(前記識別子タグは、前記識別子タグに対応する前記標的が、アッセイ対象である前記試料中に存在する場合にのみ生成する)、および
【0082】
c)任意の前記相補的検出プローブへの前記任意の識別子タグのハイブリダイゼーションを測定することができるように検出手段に連結された少なくとも1つの前記検出プローブを含む汎用検出子、
【0083】
ここに、任意の前記相補的検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションの測定は、アッセイ対象である前記試料中に、前記識別子タグに対応する前記標的が存在することを示す。
【0084】
第4項の方法の一実施形態では、前記少なくとも1つのタグ付き分子が、ある標的用の識別子タグを含み、かつ前記標的のコピーまたは相補体も含む。
【0085】
第4項の方法の一実施形態では、前記少なくとも1つのタグ付き分子が、ある標的用の識別子タグ分子を含み、かつ前記標的のコピーまたは相補体を含有しない。
【0086】
第5項:本発明の一態様は、請求項48の汎用タグアッセイでの使用に適した一組の相補的タグおよびプローブであり、前記の組は、最小限にしかクロスハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドを含み、前記相補的タグおよびプローブによって形成される全ての二重鎖は、ほぼ同じ融解温度およびスタッキングエネルギーを持つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0087】
本発明開示は、汎用タグアッセイを使って試料中の標的を検出するための方法および組成物を提供する。さらに、汎用タグアッセイおよび汎用タグアッセイ用キットも提供する。本開示は、既知の標的に対応する識別子タグに相補的な検出プローブ(検出プローブは、既知の標的に対応する識別子タグのハイブリダイゼーションを測定するための検出手段に連結されている)を持つ汎用検出子を使って、試料中の標的を検出するための方法および組成物を提供する。ここに開示する汎用タグアッセイでは、識別子タグを持つタグ付き分子が、検出手段に連結された検出プローブを持つ汎用検出子と共にインキュベートされ、特定の検出子タグとその相補的検出プローブとのハイブリダイゼーションは、アッセイ対象である試料中に、対応する標的が存在することを示す。ここに開示し特許請求する汎用タグアッセイでは、標的依存的な手法を使ってタグ付き分子を生成させるので、有利なことに、特殊な条件または特殊な試薬類を使用しなくても、正確度が増加すると共に、偽シグナルが最小限に抑えられる。本汎用タグアッセイは、多種多様な試料のアッセイに容易に使用することができる。本汎用タグアッセイは、単一の容器で行うことができ、容易に自動化することができる。
【0088】
本明細書で使用する用語「標的」は、特定用途における関心ポリヌクレオチド、ポリペプチド、小有機分子、または他の分子を指す。「標的」という用語は、ある分子(たとえば、ポリヌクレオチド配列)がコードしている情報、ポリヌクレオチドの配列によって決定される二次構造、ポリヌクレオチドの配列によって決定されるハイブリダイゼーション挙動、ポリペプチドのアミノ酸配列、ポリペプチドのアミノ酸配列によって決定される二次構造または三次構造、ポリペプチドのアミノ酸配列によって決定される物理的特性、ポリペプチドの配列によって決定されるリガンド結合部位、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列中に見いだされる相同性または系統に関する情報、小分子の分子構造によって決定されるその小分子の新規な特性、および特定用途に役立つ他の任意の情報も意味しうる。
【0089】
「標的ヌクレオチド配列」は、特定用途における関心ヌクレオチド配列である。一般に標的ヌクレオチド配列は、時には「標的ポリヌクレオチド」ともいうポリヌクレオチドのヌクレオチド配列の一部分であるが、ヌクレオチド配列が関心標的である場合には、「標的ポリヌクレオチド」という用語の代わりに「標的ヌクレオチド配列」という用語を使用する。本発明の汎用タグアッセイが、試料中の標的ポリヌクレオチドの存在を、そのこに含まれている標的ヌクレオチド配列を検出することによって検出することは、当業者には理解されるだろう。どの特定用途についても、標的ヌクレオチド配列は、特定用途における関心標的を同定するのに十分な情報を含有するヌクレオチド配列であることは、当業者には理解されるだろう。複数の標的をアッセイ対象とする実施形態では、それら複数の標的のそれぞれについて、標的ヌクレオチド配列は、長さが同じであっても相違してもよい。
【0090】
説明に役立つある実施形態では、ある遺伝子が、2つの変異体配列を有する一塩基多型(SNP)を持ち、各変異体配列が既知の表現型と関連している。そのような実施形態では、適切な標的ヌクレオチド配列は、ある個体から採取した試料中にどのSNP変異体配列が存在するかを高い信頼性で確認するのに十分な情報容量を持つヌクレオチド配列であるだろう。たとえば、ある10ヌクレオチド標的ヌクレオチド配列は、その個体のゲノム全体のコピーを含有する試料中に、関心SNPのどの変異体が存在するかを高い信頼性で確認するのに十分な情報量を持ちうる。すなわち、その10ヌクレオチド標的ヌクレオチド配列は、ゲノム全体のバックグラウンドに対して、関心SNPを高い信頼性で同定することができる。そのような場合は「標的」をさまざまに定義することができる。たとえば、標的は関心SNP変異体配列であることができ、その場合、標的は標的ヌクレオチド配列よりも小さい。もう一つの選択肢として、標的は、関心SNPを持つ遺伝子、またはその遺伝子に関して特定のSNP遺伝子型を持つ個体、または関心SNPに関連する表現型を持つ個体などであると考えることもできる。標的をどのように定義するかに関わらず、標的ヌクレオチド配列が、特定の実施形態で関心標的を高い信頼性で同定するのに十分な情報量を持つように選択され、必要最小限を超える追加の情報も含みうることは、当業者には理解されるだろう。
【0091】
「タグ付き分子」は特定標的用の識別子タグを含有し、任意で、標的のコピーまたは相補体も含有しうる。タグ付き分子は追加配列を含有しうる。タグ付き分子は、以下のように汎用検出子と相互作用する分子である:識別子タグを含有するタグ付き分子は、検出プローブを持つ汎用検出子と共にインキュベートされ、タグ付き分子中の識別子タグが汎用検出子の相補的検出プローブにハイブリダイズする。タグ付き分子は、ある識別子タグに対応する標的が試料中に存在する場合にのみ、その識別子タグを含有するタグ付き分子が生成するような形で、標的依存的プロセスによって生成する。好ましくは「識別子タグ」は、「タグ配列」または「識別子タグ配列」と呼ばれる既知のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドである。タグ付き分子は、標的のコピーまたは相補体とその標的用の識別子タグとを含有する「タグ付き標的」であることができる。もう一つの選択肢として、タグ付き分子は、ある特定標的用の識別子タグを含有し、対応する標的のコピーまたは相補体を含有しなくてもよい。識別子タグだけを持ち、標的のコピーまたは相補体を持たないタグ付き分子は、識別子タグだけを持つタグ付き分子が放出されるように、さまざまな標的依存的プロセスの産物を切断することによって、生成させることができる。もう一つの選択肢として、識別子タグだけを持ち、標的のコピーまたは相補体を持たないタグ付き分子を、識別子タグのコピーだけを生成する標的依存的プロセスによって生成させることもできる。ある実施形態では、標的ヌクレオチド配列を増幅し、少なくとも1コピーの標的と少なくとも1つの識別子タグとを持つタグ付き増幅産物をトリミングすることにより、識別子タグだけを含有する、より小さいタグ付き分子を生成させる。別の一実施形態では、プライマーまたはプローブの標的依存的結合によってタグ付き産物を生成させ、それをトリミングして、識別子タグを遊離させることができる。汎用タグアッセイでの使用に適した識別子タグは、対応する標的が検査対象である試料中に存在する場合にのみ生成する。したがって、識別子タグを含有し、かつ標的のコピーまたは相補体を含有しないタグ付き分子は、アッセイ対象である試料中に、対応する標的が存在することを示すのに十分である。
【0092】
汎用タグアッセイの汎用検出子と共に使用するのに適したタグ付き分子中の識別子タグは、DNAまたはRNAオリゴヌクレオチドであることができ、修飾塩基、非天然塩基、およびラベルを含みうる。一般的には、タグ付き分子は(長さに応じて)オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであり、これは修飾塩基または非天然塩基を含んでもよく、さらに、特定用途に適したラベル、リガンドまたは他の物質および修飾を含んでもよい。汎用検出子と共に使用するためのタグ付き分子は、任意の適切なテンプレート(たとえば、ゲノムDNA、cDNA、PCR産物、LCR産物、RC増幅産物、合成DNA、他の形態のDNA、mRNA、rRNA、合成RNA、および他の形態のRNAなど、ただしこれらに限らない)から生成させることができる。有利なことに、識別子タグと、相補的検出プローブを持つ汎用検出子とを使用すれば、分析対象である生物または組織に依存しない汎用タグアッセイが得られる。各識別子タグと、その識別子タグを識別子とする標的ヌクレオチド配列との間には1対1の対応があり、各識別子タグとその検出プローブとのハイブリダイゼーションは特異的であるので、複数の標的ヌクレオチド配列を同時に検出することができる。
【0093】
〔A.タグおよびプローブ〕
本発明の一態様は、ここに開示する方法および組成物にしたがって使用される一組のタグおよびプローブを提供する。本発明の汎用検出子と共に使用される検出プローブは、標的用の識別子として役立つ相補的タグに向けられる。同様に、標的用の識別子として役立つタグは、本発明の汎用検出子と共に用いられる相補的検出プローブに向けられる。タグと、汎用検出子上のその相補的検出プローブとのハイブリダイゼーションは、そのタグによって同定されることがわかっている対応する標的の存在を示すシグナルを生成する。したがって、以下のように本発明のタグおよびプローブを使って、試料を、関心標的の存在について検査することができる:a)各タグが1つの標的用の識別子タグとして役立つように、タグを選択する、b)検査対象である試料が、そのタグを識別子タグとする特定の標的を含有する場合にのみ、相補的検出プローブにハイブリダイズする能力を持つタグが生成する、そしてc)試料中に対応する標的が存在する結果として生成したタグだけが、汎用検出子上で検出プローブにハイブリダイズし、シグナルを生成する。
【0094】
特定の用途に識別子タグとして使用される各タグが、その用途で使用される汎用検出子上に相補的検出プローブを持つように、一組のタグおよびプローブが選択されることは、当業者には理解されるだろう。特定の応用で使用されていないタグに相補的な検出プローブを含む一組の検出プローブを使って汎用タグアッセイを実施できることも、当業者には理解されるだろう。たとえば、多種多様な用途に使用される1000個の検出プローブからなる固定アレイを持つ汎用検出子を有利に製造し、その汎用検出子を使った特定の用途では、試料を検査するのに50〜100個の識別子タグしか使用しないということもありうる。
【0095】
あるタグとその相補的検出プローブとのハイブリダイゼーションの測定が、試料中に、対応する標的が存在することを高い信頼性で示すだけでなく、あるタグとその相補的検出プローブとのハイブリダイゼーションの不在も、対応する標的が試料中に存在しないことを高い信頼性で示すことができると理解される。好ましくは、1つまたは複数の内部標準から予想どおりの結果を高い信頼性で取得することにより、タグハイブリダイゼーションシグナルの存在または不在を示す結果の信頼性が裏付けられるように、少なくとも1つの内部対照を汎用タグアッセイに含める。アッセイの信頼性および堅牢性を増すために、複数の内部対照を使用してもよい。
【0096】
タグ/プローブセットは、較正、品質管理、および実験間の比較に使用しうる対照配列を含むことができる。対照配列は、試料中に存在すると予想される不変配列または「ハウスキーピング」配列を含むことができ、タグ付き分子を生成しうる。所望であれば、2個以上の相異なるタグを同じ標的用の識別子タグとして役立つように選択することによって、アッセイの堅牢性を強化することもできる。有利なことに、同じ標的に対応する全ての識別子タグがそれらの相補的検出プローブにハイブリダイズすることにより、アッセイ対象である試料における標的の存在が、より高い信頼性で示される。同様に、同じ標的に対応する識別子タグがいずれも、それらの相補的タグにハイブリダイズしないならば(特に、他の内部対照が、反応条件が適切であることを示す陽性ハイブリダイゼーションシグナルを与えるならば)、そのようなシグナルは、アッセイ対象である試料中にその標的が存在しないことを、より高い信頼性で示す。わずかな数の識別子タグだけが結合するような中間的な結果は、試薬類または反応条件を検討すべきであるというシグナルとして役立つだろう。
【0097】
本明細書で使用する用語「タグ」は、一般的には、プローブに結合する能力を持つ分子を指し、この「タグ」には、標的分子に取り付けられたタグ分子、標的分子に取り付けられていないタグ分子、コンピュータ可読形式で表されたタグ、およびここに開示するタグの概念が包含されうる。本明細書で使用する用語「タグ配列」は、オリゴヌクレオチドタグのヌクレオチド配列を指し、この「タグ配列」または「識別子タグ配列」は、ヌクレオチド列を記述するか、またはそのヌクレオチド列の特性を表す情報列を記述することができ、そのような情報列は、所望の特性を持つ一組のタグを設計または選択するためのプログラムの一部として操作することができる。また、この情報列はコンピュータ可読形式であることが好ましい。本発明において、「識別子タグ」は、特定の標的にとって相異なる識別子として役立つように選択されたタグである。本明細書で使用する用語「識別子タグ」は、相補的検出プローブに結合するオリゴヌクレオチドを指すためにも、識別子タグのヌクレオチド配列を指すためにも用いられる。「識別子タグの相補体」という用語は、識別子タグのヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを構成するヌクレオチド列を指すことができ、その相補体のヌクレオチド配列(情報列)を指すこともできる。
【0098】
本明細書で使用する用語「検出プローブ」は、一般に、タグに結合する能力を持つ分子を指し、この「検出プローブ」は、支持体に固定化されたプローブ分子、支持体に固定化されていないプローブ分子、コンピュータ可読形式で表されたプローブ、およびここに開示する検出プローブの概念を包含しうる。より具体的に述べると、本明細書で使用する用語「プローブ配列」は、オリゴヌクレオチドプローブのヌクレオチド配列を指し、この「プローブ配列」は、ある配列を構成している物理的ヌクレオチド列を記述するか、またはそのヌクレオチド列の特性を表す情報列を記述することができ、そのような情報例は、所望の特性を持つ一組のプローブを設計または選択するためのプログラムの一部として操作することができる。また、この情報列はコンピュータ可読形式であることが好ましい。「検出プローブ」という用語は、本明細書では一般に、その検出プローブへのタグのハイブリダイゼーションを測定するための検出手段に連結されたタグ相補的プローブを指すために用いられる。検出プローブは、好ましくは、検出手段を含む支持体に固定化される。そのような支持体として、たとえば、表面、薄膜または粒子をあげることができるが、これらに限るわけではない。ここに、表面は、固定化プローブのアレイを搭載するのに適していて、かつ検出手段の少なくとも1成分を持っている、「チップ」表面であることが好ましい。また、粒子は、検出手段の少なくとも1成分を持っているビーズであることが好ましい。「検出プローブ」は、ハイブリダイゼーションを検出するための検出手段に連結されたタグ相補的プローブの計算モデルを指すこともできる。本明細書では、「検出プローブ」という用語を特に、検出プローブと、やはり「プローブ」という用語で呼ばれる他の成分、たとえば、RCプローブおよびRCパッドロックプローブなどとを、識別するために使用する場合がある。
【0099】
本発明の一態様によれば、一組のタグ配列およびプローブ配列は、あるタグ配列を有するタグが、正確な相補体である配列を有するプローブにだけハイブリダイズし、どのタグも、その正確な相補体ではないその組内の他のプローブとはハイブリダイズしないように選択される。そのような一組を、ここでは「最小限にしかクロスハイブリダイズしない一組」という。最小限にしかクロスハイブリダイズしない一組のタグ配列およびプローブ配列は、その相補性ゆえに、タグ配列またはプローブ配列に基づいて選択することができると理解される。好ましくは、全てのプローブ/タグ二重鎖が類似する融解温度を持つように、ある組内の全てのタグ配列は、同じまたは実質的に同じG-C含量を持つように選択される。好ましくは、タグ配列は、全てのプローブ/タグ二重鎖が類似するスタッキングエネルギーを持つように選択される。有利なことに、そのような一組は、望ましい選択性レベルを持つタグ-プローブハイブリダイゼーション反応をもたらすだろう。より一層好ましくは、そのような選択的ハイブリダイゼーション反応を、中等度のストリンジェンシー条件下で行うことができる。
【0100】
当業者は、与えられた実施形態に適したタグ(およびプローブ)配列の長さを決定することができる。タグ配列およびプローブ配列の長さは、好ましくは、試料を検査するために用いられるタグ/プローブセットのサイズによって決定される。一般に、試料を検査するために用いられるタグ/プローブセットのサイズは、必要とされる複雑度を決定し、タグ/プローブの長さは複雑さの重要な決定因子である。一般的には、試料中の被験標的の推定数が、その実施形態に必要なタグ/プローブセットのサイズを決定することになる。汎用チップシステムでの使用に適した一組のタグおよびプローブは、与えられた実施形態に関するハイブリダイゼーション基準を全てのタグおよびプローブが満たす限り、異なる長さのタグおよびプローブを含んでもよい。検出すべき標的が約100個以下である低密度アレイを使う実施形態の場合、10、11、12、13、14、15、16、17または18ヌクレオチドの長さを持つタグを利用することができる。低密度アレイ用のタグ配列は、好ましくは、15ヌクレオチド長である。所望であれば、18ヌクレオチドより長いタグを低密度アレイに使用してもよい。検出すべき標的配列が数百個または数千個である高密度アレイを使う実施形態の場合、与えられた実施形態に関するハイブリダイゼーション基準を満たす十分に大きい一組のタグおよびプローブを得るには、タグ配列およびプローブ配列が15ヌクレオチドを超える長さを持つ必要があるだろう。
【0101】
最小限にしかクロスハイブリダイズしないタグおよびプローブの組を作製するためのアルゴリズムは、当技術分野では知られている。所望の特性を持つ一組のタグおよびプローブは、以下のとおり、一連のタグ選択ステップの一部または全部をたどることによって、得ることができる:a)選択した長さを持つ考えうる全てのタグ配列および/または選択したハイブリダイゼーション特性を持つ考えうる全てのタグ配列を決定すること、b)全てのタグはそのタグ配列列中の少なくとも2つのヌクレオチドが相違し、その結果、どのタグもミスマッチ数が2つ未満である非相補的プローブにハイブリダイズするということはできなくなるように、タグ配列を選択すること、c)所望であれば、さまざまな位置のミスマッチが持つ相対的不安定化効果に基づいて、選択を改良すること、d)タグを検出するために使用される相補的プローブ内に二次構造が存在しないように、タグ配列を選択すること、e)タグに相補的なプローブ同士がたがいにハイブリダイズしないように、タグを選択すること、f)全てのタグが同じ長さである場合は、全てのタグが実質的に同じ、好ましくは完全に同じ、全塩基組成(すなわち同じA+T対G+C比)を持ち、したがって全てのタグ/プローブ対が同じ融解温度を持つように、タグを選択すること、g)タグの長さが異なる場合は、全てのタグ/プローブ対が同じ融解温度を持つことを可能にするA+T対G+C比を持つタグを選択すること。特定の実施形態に適した所望の特性を持つ一組のタグおよびプローブを得るには、ここにあげなかった追加ステップも適当な場合がある。
【0102】
上にあげたような選択ステップは、当該技術分野で認められている種々の方法で行うことができる。特定の用途に使用するためのタグ/プローブセットの設計に対するアプローチには、タグおよびプローブの挙動をモデル化するための計算的「インシリコ(in silico)」アプローチ、またはポリヌクレオチドなどの生体分子を使ってタグおよびプローブの選別を達成する実験的「インビトロ(in vitro)」アプローチ、またはそれらのアプローチの組合せが含まれる。
【0103】
計算的アプローチを使用することができ、このアプローチでは、計算アルゴリズムが生物学的分子のモデルとして役立つ。そのようなアプローチとアルゴリズムは当技術分野では知られている。たとえば、コンピュータにインストールされたコンピュータプログラムを使って、関連する計算および比較を行い、望ましい一組の選択ステップを遂行し、適切な一組の配列タグを生成させることができる。一連の選択ステップをタグ/プローブセットの設計に応用する方法は、たとえば、Morrisら(米国特許第6,458,530号およびEP 0799897)が開示しているように(この場合は、タグ候補のプールを生成し、一連のペアワイズ比較を行って一定の選択基準を満たす最終的な一組のタグを得る)、当技術分野に見いだすことができる。(局所的に)最適化された集団を生成させるための遺伝子アルゴリズムなどのオープンエンドな計算的アプローチを使用することができる。
【0104】
好ましい実施形態では、G(グアノシン)塩基を欠く電気的に連結された検出プローブ配列のアレイを含む。この場合は、当技術分野で知られる酸化還元検出法を使って検出プローブに結合したタグ付き分子(Gを含有するもの)中のG酸化を検出することによって、タグ付きDNAまたはRNA分子のハイブリダイゼーションを電気化学的に検出することができる。汎用タグアッセイで使用される汎用チップが含む。たとえば、タグ付き分子中のG酸化は、米国特許第5,871,918号に開示されているように遷移金属錯体(好ましくはルテニウム錯体)を使って、検出することができる。有利なことに、レドックス不活性な検出プローブ(たとえば、Gを欠くプローブ)を使用することにより、バックグラウンド酸化シグナルを伴わずに、汎用検出子上のプローブ密度を高くすることができる。
【0105】
〔B.汎用検出子〕
本発明の目的は、識別子タグに相補的な検出プローブを持つ汎用検出子であって、検出プローブが検出手段に連結され、識別子タグと相補的検出プローブとの相互作用が、検査対象である試料における標的の存在または不在を示す汎用検出子を提供する。汎用検出子は、好ましくは、検出プローブのアレイを持つ。「アレイ」とは、既知の配置を持つプローブの集合体であり、ここに開示する「検出プローブのアレイ」は、タグとプローブとを対応させる規則(このタグとプローブとを対応させる規則は、各実施形態に固有の規則である)に基づいて試料中の標的の存在を検出するための媒体になる。検出プローブのアレイとは、一般的には、支持体に固定化されたプローブのアレイであって、各位置にある各検出プローブの配列(アイデンティティ)がわかっているものを指す。もう一つの選択肢として、検出プローブのアレイとは、固定化されておらず、表面上を移動することができる一組の検出プローブを指すこともでき、また、ビーズなどの1個以上の粒子に連結された一組の検出プローブを指すこともできる。検出プローブにハイブリダイズした識別子タグを検出するプロセスは、好ましくは、自動化される。大規模並列遺伝子発現および遺伝発見研究には、アイデンティティがわかっている多数の検出プローブが固定化されているマイクロアレイを使用することができる。プローブへのタグのハイブリダイゼーションを測定するための検出手段は、蛍光的手段、比色的手段、放射測定的手段、電気的手段、または電気化学的手段を含めて、種々知られている。
【0106】
本発明のさらなる目的は「汎用チップ」を提供する。この「汎用チップ」という用語は、一般的には、上述のように選択された検出プローブのアレイを持つ支持体を指し、それら検出プローブは検出手段に連結されており、さらに、プローブへのタグのハイブリダイゼーションを検出することができる。好ましい実施形態では、検出手段が、既知の配置で「汎用チップ」に固定化された検出プローブへのタグのハイブリダイゼーションの電気化学的な検出を利用する。そのようなアレイ中の各位置にある各検出プローブの配列はわかっているので、ある検出プローブにハイブリダイズした相補的識別子タグの配列は自動的にわかり、したがってそのタグに対応する標的の存在も自動的にわかる。
【0107】
オリゴヌクレオチドアレイを作製する方法は、たとえば、米国特許第例5,412,087号、第5,143,854号または第5,384,261号に開示されているように、種々知られているので、既知の方法の全てを説明したり、列挙したりすることはしない。本発明の目的の一つは、検出プローブへのタグのハイブリダイゼーションを検出するための電気的接触面または電極として機能する支持体に取り付けられた検出プローブを持つ汎用検出子を提供する。オリゴヌクレオチドを電気的接触面に取り付ける方法は、たとえば、米国特許第5,312,527号、第5,776,672号、第5,972,692号、第6,200,761号または第6,221,586号のいずれにも開示されているように、よく知られている。
【0108】
製造プロセスでは、他の多くの代替材料および代替プロセスを使用することができる。基板はガラスまたは他のセラミック材料であることができ、最下部の二酸化ケイ素は窒化ケイ素、他の手段で沈着させた二酸化ケイ素、または他のポリマー材料で置き換えることができ、導電層は白金、パラジウム、ロジウム、炭素組成物、酸化物または半導体などの任意の適当な材料であることができる。アンペロメトリーによる測定には、測定を容易にするために、作用電極、対電極、および基準電極からなる3電極系か、作用電極および対/基準電極からなる2電極系が必要である。作用電極は、一定した表面、関心レドックス種からの再現性のある応答、および測定に要求される電位範囲で低いバックグラウンド電流を提供すべきである。作用電極は任意の適切な導電性材料であることができ、好ましくは金および白金などの貴金属、またはグラファイト、ガラス状炭素および炭素ペーストを含む様々な形態の導電性炭素材料である。3電極系の場合、基準電極は通常、銀または銀/塩化銀であり、対電極は任意の適切な材料、たとえば、貴金属、銅、および亜鉛などの他の金属、金属酸化物または炭素組成物などで製造することができる。もう一つの選択肢として、基板への電極材料のスクリーン印刷によって導電層を作製することもできる。スクリーン印刷では、通例、電極材料(炭素または金の微粉末など)の有機スラリーまたは無機スラリーをシルクスクリーン越しに基板上に調製する。電極材料スラリーは、加熱によって、または風乾によって、表面に固定することができる。電極は、たとえば、金、炭素、白金、パラジウム、インジウムスズ酸化物など、任意の適切な導電性材料であることができる。検出プローブの固定化を強化するために、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン(neutravidin)などの材料または他のポリマーで電極表面を被覆すると有利な場合が多い。取り付ける方法には、受動吸着および共有結合が含まれる。
【0109】
導電層に金を選択した場合は、その層を、蒸着、スパッタリング、または電気メッキによって形成させることができる。低温酸化物層は、スピンオン誘電体材料または他のポリマー材料、たとえば、ポリイミドまたはパリレンなどで置き換えることができる。試薬との接続および電気的接続は、チップの同じ面または隣接面で行うこともできるが、反対面で行う構成が好ましい。当業者には理解されるだろうが、材料、温度、時間、および寸法を変更しても、実質的に同じ特性および機能性を持つ検出子(好ましくはチップ)を製造することができる。当業者は材料、温度、時間、および寸法を変更して、どの特定実施形態についても、その実施形態にとって望ましい特性を持つチップを製造することができる。
【0110】
好ましい実施形態では、米国特許出願第10/121,240号に開示されているように、検出プローブは、シリコン基板に取り付けられた2つの二酸化ケイ素絶縁体層の間に挟まれた電極のアレイを持つ支持体に固定化され、支持層はシリコン基板の反対側にあり、チップはシリコン基板が上面に、そして支持層が下面になるように配置される。好ましくは金電極を使用する。もう一つの選択肢として、グラファイト、ガラス状炭素、および炭素ペーストなどの炭素電極を使用することもできる。この好ましい実施形態では、検出プローブが固定化される作用電極の表面へのアクセスは、シリコン基板およびチップの上面にある絶縁体の上層に開いた窓を通して行われる。下面の窓(支持体および絶縁体の下層を貫いてエッチングされたもの)は、対(または検出)電極および基準電極へのアクセスを可能にする。金電極の場合は、チップ中の2タイプの電極を、絶縁層内の沈着金配線によって、または当技術分野で知られる他の方法によって、選択的に相互接続される。作用電極、基準電極、および対電極へのアクセスにより、当技術分野で標準的な技術(たとえば、アンペロメトリーによる測定)をチップを使用して行うことを可能にする完全な回路を形成させることができる。電気化学的に活性な物質が検出プローブおよびタグ配列との会合によって存在する場合は、作用電極に印加される電極電位が、検出プローブに結合したタグ配列の量に比例する電流をもたらすことになる。
【0111】
〈B.1.検出手段/検出成分:相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションの測定〉
本発明のもう一つの態様は、検出プローブへのタグのハイブリダイゼーションを測定するための検出手段または検出成分を提供する。ある実施形態では、DNAハイブリダイゼーションを、電気化学的方法によって検出する。この電気化学的方法には、一般に、一本鎖DNA検出プローブのレドックス挙動を、二本鎖DNAと比較して観察することが含まれる。たとえば、標的核酸の検出にはボルタンメトリー配列選択的センサーを使用することができる。この場合は、たとえば、米国特許第5,312,527号に開示されているように、二本鎖核酸をレドックス活性錯体と接触させる。錯体は二本鎖DNAに非特異的に結合する。錯体自体はボルタンメトリーシグナルを与えるレドックス活性化合物なので、錯体は酵素を添加しなければ触媒的には機能しない。もう一つの選択肢として、米国特許第4,840,893号に開示されているように、リガンドと抗リガンドの間の競合的結合事象を電気化学的に検出する核酸の電気化学的アッセイを使用することもできる。
【0112】
もう一つの実施形態では、電気化学的方法によってRNAハイブリダイゼーションを検出する。この電気化学的方法には、一般に、一本鎖DNA検出プローブのレドックス挙動を、DNA検出プローブへのRNAタグのハイブリダイゼーションによって形成されるDNA/RNA二重鎖と比較して観察することが含まれる。
【0113】
プローブ分子もしくはタグ分子またはその両方が少なくとも1つの酸化可能塩基を含有する場合、タグとプローブのハイブリダイゼーションは、酸化還元反応で少なくとも1つの酸化可能塩基を酸化する能力を持つ遷移金属錯体を使って、遷移金属錯体と酸化可能塩基の間の酸化還元反応を引き起こす条件下で検出することができる。ハイブリダイゼーションを示す酸化還元反応は、米国特許第5,871,981号に開示されているように、酸化された各塩基からの電子移動を測定することによって検出される。
【0114】
好ましい実施形態として、金電極または他の電極に固定化されたDNA検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションは、Steeleら(1998,Anal. Chem 70:4670-4677)が開示した方法を使って行うことができる。好ましくは、核酸に影響を及ぼさない直接反応による電気化学的検出が可能な、2、3または4個の正電荷を持つ多価イオンを使用する。この好ましい実施形態では、核酸が二重らせん型であるか一本鎖型であるかとは無関係に、これらのイオンが核酸リン酸エステルに静電的に結合する。各検出プローブ部位で行われる電子移動測定に基づいて、ハイブリダイズした識別子タグDNAの存在または不在が、各検出プローブについて決定される。検査対象である試料は、当業者に知られている任意の適切な方法で、オリゴヌクレオチド検出プローブと接触させることができる。たとえば、標的ヌクレオチド配列の存在について検査されるDNA試料が溶液状態にあり、オリゴヌクレオチド検出プローブが固体支持体上に固定化されている場合は、オリゴヌクレオチド検出プローブが固定化されている固体支持体を、DNA試料を含有する溶液に浸漬することによって、DNA試料をオリゴヌクレオチド検出プローブと接触させることができる。核酸を静電的に結合し、かつその酸化または還元を適当な電圧レジームで電気化学的に検出しうる適切な遷移金属錯体には、Ru(NH3)63+、Ru(NH3)5ピリジン3+、および当業者が決定しうる他の遷移金属錯体が含まれる。
【0115】
本発明のもう一つの態様によれば、たとえば、米国特許第5,871,918号に開示されているように、オリゴヌクレオチド検出プローブ配列を、レドックス不活性になるように、または極めて低いレドックス活性を持つように、設計することができる。ある実施形態では、G(グアノシン)塩基を含有しないように、オリゴヌクレオチドプローブ配列を設計する。これにより、米国特許第5,871,918号に開示されているとおり、プローブ相補体にハイブリダイズしている識別子タグを持つタグ付き分子中のG酸化を検出することによって、タグ付きDNA分子のハイブリダイゼーションを電気化学的に検出することが可能になる。有利なことに、レドックス不活性なプローブを使用することにより、バックグラウンド酸化シグナルを伴わずに、汎用検出子上のプローブ密度を高くすることができる。
【0116】
酸化還元反応の発生は、当業者に知られている任意の適切な手段にしたがって検出することができる。たとえば、酸化還元反応は、酸化還元反応の発生を示す電子シグナルの変化を検出電極を使って観察することにより、検出することができる。適切な基準電極も当技術分野では知られており、たとえば、銀電極、銀/塩化銀電極などが含まれる。酸化還元反応に付随する電子シグナルは、酸化還元反応の発生に付随するファラデー電流または総電荷の測定による、ハイブリダイズしたタグの存在または不在の決定を可能にする。電流は、電極と密接な関係にある正荷電レドックスイオンの存在に依存し、その存在は電極にハイブリダイズした核酸リン酸エステルの量に依存する。電子シグナルは、サイクリックボルタンメトリー、ノーマルパルスボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、クロノアンペロメトリー、および矩形波ボルタンメトリーを含む任意の電気化学的方法に特有のものであることができる。ハイブリダイズしたDNAの量は、出発状態で電極に結合しているプローブおよび他の分子に特有な電流または総電荷を、ハイブリダイゼーション反応後に測定される電流または総電荷から差し引くことによって、決定することができる。
【0117】
上述したアンペロメトリーによる方法の他にも、当技術分野で周知の方法を使って、検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションを検出できることは理解されるだろう。そのような方法には、たとえば、標識核酸プローブを用いるハイブリダイゼーション法、抗体に基づく検出、および酵素的検出などがあるが、これらに限るわけではない。たとえば、一部の実施形態では、識別子タグを持つ核酸中にシグナルタグを含めることができる。本明細書にいう「シグナルタグ」とは、検出可能なシグナルプローブに相補的な核酸配列を意味する。識別子タグが検出プローブに結合すると、シグナルタグ配列も検出子上に存在することになる。シグナルタグに相補的なシグナルプローブは、32Pまたは33Pで内部標識または末端標識することによって作製することができる。あるいは、発光分子または他の非放射性ラベルを使用して、標識シグナルプローブを作製することもできる。シグナルタグ配列への標識シグナルプローブのハイブリダイゼーションは、オートラジオグラフィーを使って検出することができる。もう一つの実施形態では、化学修飾を含むシグナルプローブが、抗体を使って検出しうる化学修飾を含む核酸である。たとえば、シグナルプローブをフルオレセインで標識し、そのフルオレセインを、抗フルオレセイン抗体を使って検出することができる。さらに別の実施形態では、セイヨウワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどの酵素を、シグナルプローブに直接連結することができる。
【0118】
当技術分野では上記核酸ハイブリダイゼーション検出法の数多くの変法がよく知られていることは、理解されるだろう。したがって、そのような検出方法が、上に記載されていなくても、本発明の範囲に十分含まれることは、当業者には理解されるだろう。
【0119】
〔C.タグ付き分子の製造〕
本発明のもう一つの態様は、識別子タグを含有するタグ付き分子が標的の存在下でのみ生成するという標的依存的プロセスによって生成するタグ付き分子を提供する。有利なことに、本発明のタグ/プローブセットおよび汎用検出子は、タグ付き分子を設計し検出するための便利で資源効率の高い材料および方法を提供すると共に、タグ付き分子の標的依存的な生成は、偽陽性シグナルの可能性をかなり減少させるか、または全く排除する。好ましい実施形態では、標的ヌクレオチド配列を含有するテンプレートの操作によって、識別子タグを含有するタグ付き分子を生成させる。標的ヌクレオチド配列を含有するテンプレートの増幅によって、その標的ヌクレオチド配列に対応する識別子タグを含有するタグ付き分子を生成させることができる。標的依存的なプローブまたはプライマー結合によっても、標的に対応する識別子タグを含有するタグ付き分子を生成させることができる。
【0120】
本明細書にいう「テンプレート」とは、少なくとも1つの標的ヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドの全部または一部を指す。上述したように「標的ヌクレオチド配列」とは、ある特定用途における関心ヌクレオチド配列を指す。本明細書にいう「外来ヌクレオチド配列」とは、タグ付き分子の調製中に導入される配列を指す。識別子タグ配列または標的ヌクレオチド配列(またはそのコピー、相補体もしくは一部分)の存在は、本明細書では明確に言及され、「外来ヌクレオチド配列」または「追加外来ヌクレオチド配列」とは一般に、標的ヌクレオチド配列および識別子タグ配列中には見いだされないヌクレオチド配列を指す。外来ヌクレオチド配列が試料中またはその試料を採取した生物中に通常に見いだされる配列を含む場合、その外来ヌクレオチド配列は、標的ヌクレオチド配列のコピー元となった元のテンプレートには見いだされない配置で見いだされるだろう。好ましくは、外来ヌクレオチド配列は、汎用タグアッセイでの使用に適したタグ付き分子の生成に関与する標的依存的プロセスに用いられるプライマーまたはプローブによって導入される。
【0121】
本明細書にいう「補助オリゴヌクレオチド」は、一本鎖ポリヌクレオチドを、その一本鎖ポリヌクレオチド上の配列の一部分に相補的な補助オリゴヌクレオチドと共にインキュベートすることによって、二本鎖DNAもしくはRNAまたはDNA/RNAヘテロ二重鎖である領域を生成させるために用いることができる、オリゴヌクレオチド(好ましくはDNAまたはRNA)である。補助ヌクレオチドは、局所的な二本鎖DNA、RNAまたはDNA/RNA領域を作って、一本鎖ポリヌクレオチドの切断を可能にする制限消化部位を生成させるために、またはポリメラーゼ結合および一本鎖ポリヌクレオチドの複写を可能にするポリメラーゼプロモーターを生成させるために、使用することができる。補助オリゴヌクレオチドは、重合プライマー(たとえば、ローリングサークル(RC)増幅用の重合プライマーなど)として機能することができる。好ましい実施形態では、補助オリゴヌクレオチドは、標的ヌクレオチド配列と識別子タグとを含む一本鎖増幅産物の1つ以上の部分に相補的であって、制限酵素部位を生じるDNA二重鎖領域を形成し、その制限酵素部位を利用して一本鎖増幅産物をトリミングすることによって、より小さいタグ付き分子を生成させることができる。トリミングされた一本鎖産物をプライマーおよび補助オリゴヌクレオチドから分離することができるように、補助オリゴヌクレオチドおよびプライマーは、化学修飾を含有してもよい。好ましい実施形態では、その化学修飾が、リガンドを含有する分子の回収を可能にするアドレサブルリガンドである。より好ましい実施形態では、そのアドレサブルリガンドがビオチン残基である。
【0122】
本発明のもう一つの態様によれば、テンプレートは、増幅に適した任意のポリヌクレオチドであることができ、ここにテンプレートは、増幅されるべき標的ヌクレオチド配列を少なくとも1つは含有する。適切なテンプレートには、DNA分子およびRNA分子が含まれ、修飾塩基を持つポリヌクレオチドを含めることもできる。好ましくは、テンプレートは、ゲノムDNA分子、cDNA分子、PCR産物、LCR産物、合成(合成された)DNA分子、他の形態のDNA、mRNA分子、rRNA分子、合成(合成された)RNA分子、または他の形態のRNAである。ここに開示する方法、特にローリングサークル(RC)増幅を使うと、RNAをDNAに逆転写せずに、RNAテンプレートを直接増幅することができる。必要であれば、二本鎖DNAを変性させて一本鎖テンプレート(好ましくは、少なくとも1つの標的ヌクレオチド配列を含有する標的鎖と、標的ヌクレオチド配列の相補体を少なくとも1つは含有する相補標的鎖)を生成させることにより、一本鎖テンプレートを取得することができる。二本鎖DNAはゲノムDNAであってもよい。
【0123】
〈C.1.テンプレートの増幅〉
ここに開示する発明の一態様によれば、汎用タグアッセイでの使用に適したタグ付き分子の生成には、周知の方法を使ったテンプレートの増幅による、少なくとも1つの標的ヌクレオチド配列と少なくとも1つの識別子タグとを含む増幅産物の生成が含まれる。任意で、増幅産物は、増幅産物の増幅後操作に関与する追加外来ヌクレオチド配列であって、増幅ステップそのものには顕著な影響を持たないものを含有する。適切なテンプレートには、DNA分子およびRNA分子、たとえば、ゲノムDNA、cDNA、およびmRNAなどが含まれる。任意の適切な増幅方法で、線形増幅モードまたは指数(非線形)増幅モードを使用することができ、モードの選択は、特定実施形態の状況に応じて当業者が行う。増幅方法には、たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびローリングサークル(RC)増幅を使ったポリヌクレオチドテンプレートの増幅などがあるが、これらに限るわけではない。
【0124】
本発明の一態様は、試料中の標的ヌクレオチド配列を検出するための増幅依存的な方法であって、以下のステップを含む(ただし以下のステップに限定されない)方法を提供する:a)標的ヌクレオチド配列を有するテンプレートを取得するステップ、b)テンプレートを増幅することにより、標的ヌクレオチド配列の少なくとも1つのコピーと標的ヌクレオチド配列用の少なくとも1つの識別子タグとを含む、少なくとも1つのタグ付き分子を生成させるステップ、c)少なくとも1つのタグ付き分子を、検出手段に連結された検出プローブを持つ汎用検出子と共にインキュベートするステップ、c)汎用検出子上の相補的検出プローブへの検出子タグのハイブリダイゼーションを検出するステップ。ステップb)の増幅産物は、標的ヌクレオチド配列と標的ヌクレオチド配列用の少なくとも1つの識別子タグとの複数反復コピーを持ち、汎用タグアッセイに適したタグ付き分子として機能することができる。あるいは、ステップb)の増幅産物は、増幅産物のトリミングに関与する追加外来ヌクレオチド配列を持ち、増幅産物は、汎用タグアッセイでの使用に適した、より小さいタグ付き分子が少なくとも1つは生成するようにトリミングされる。ある実施形態では、トリミング済みの各タグ付き分子が、1コピーの標的とその標的用の識別子タグとを含有する。別の実施形態では、トリミング済みの各標的分子は識別子タグを含有するが、その識別子タグに対応する標的のコピーは持たない。トリミング済みのタグ分子は追加配列を含有しうる。この方法によれば、汎用検出子上の相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションの検出は、試料中に標的ヌクレオチド配列が存在することを示す。もう一つの態様は、試料中の複数の標的ヌクレオチド配列を検出する方法であって、各標的ヌクレオチド配列が相異なる識別子タグを持つ方法を提供する。
【0125】
〔ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使った増幅〕
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるテンプレート増幅では、DNA分子の所定の領域の相補鎖が耐熱性DNAポリメラーゼによって同時に合成されるプライマー伸長反応を何巡か複数回使用する。プライマー伸長反応を何巡も繰り返している間に、新たに合成されたDNA鎖の数は指数的に増加し、20〜30反応サイクル後には、最初のテンプレートが数千倍または数百万倍に複製されうる。たとえば、DieffenbachおよびDveksler編「PCR Primer: A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1995)、Mullisらの特許(たとえば、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号および第4,800,159号)および科学刊行物(たとえば、Mullisら,1987,Methods in Enzymology,155:335-350)ならびに米国特許出願第10/138,067号などといった文献には、さまざまなタイプおよびモードのPCRを実行する方法が、詳細に説明されている。
【0126】
簡単に述べると、PCRは以下に述べる一連のステップを踏んで進行する。この手法の最初のステップでは、二本鎖テンプレートを単離し、熱(好ましくは約90〜約95℃)を使って、その二本鎖DNAを一本鎖に分離する(変性ステップ)。一本鎖テンプレートの場合はこの最初の変性ステップが省略される。約55℃まで冷まして、プライマー(プライマーは標的ヌクレオチド配列の隣に位置する領域に結合するように設計される)をテンプレートの標的領域に付着させる(アニーリングステップ)。耐熱性DNAポリメラーゼ(たとえば、Taqポリメラーゼ)および遊離のヌクレオチドを加え、プライマー伸長によって、テンプレートの標的領域に相補的な新しいDNA断片を生成させることにより(伸長ステップ)、PCRの1サイクルを完了する。この変性、アニーリングおよび伸長のプロセスを何回も、好ましくはサーモサイクラーで繰り返す。各サイクルが終了すると、新たに合成された各DNA分子は次のサイクルのテンプレートとして働き、その結果、各テンプレート分子に由来する何百、何千、さらには何百万もの二本鎖増幅産物が蓄積される。
【0127】
マルチプレックスPCRでは、同じテンプレートの相異なる標的ヌクレオチド配列に特異的な複数のプライマー対を含むようにアッセイを変更することにより、複数の相異なる標的ヌクレオチド配列の同時増幅、および所望のヌクレオチド配列と所望の長さを持つ複数の相異なる一本鎖DNA分子の同時生成を可能にする。たとえば、テンプレートとしてある生物または個体のゲノムDNAを使用してマルチプレックスPCRを行うことができ、この場合、マルチプレックスPCRにより、複数の相異なる一本鎖DNA分子が生成するだろう。
【0128】
PCRは、増幅後の加工に適した二本鎖増幅産物を生成させる。PCR増幅産物は、たとえば、標的ヌクレオチド配列には見いだされない追加ヌクレオチド配列などの特徴を含有しうる。テンプレートの増幅に用いるプライマーは、標的ヌクレオチド配列中に見いだされない外来ヌクレオチド配列を導入することによって増幅産物中に特徴が導入されるように、設計することができる。そのような特徴には、たとえば、識別子タグ、制限消化部位、修飾ヌクレオチド、プロモーター配列、逆方向反復、化学修飾、アドレサブルリガンド、および増幅自体には顕著な影響を及ぼさずに増幅産物の増幅後操作を可能にする他の非テンプレート5'伸長物などがあるが、これらに限るわけではない。外来配列は、標的ヌクレオチド配列への結合に関与するプライマー配列の5'側(「上流」)にあることが好ましい。好ましい一実施形態では、プライマーが識別子タグを導入する。もう一つの実施形態では、プライマーが、制限酵素による増幅産物の認識、結合、および切断(「トリミング」)に関与する部位を導入する。
【0129】
〔ライゲーション反応を使った増幅〕
本発明のもう一つの態様によれば、ライゲーションプライマーをライゲーション反応で使用することにより、標的ヌクレオチド配列の少なくとも一部分に相補的なライゲーション産物を生成させる。ライゲーション産物は、種々の実施形態で、それ以降の加工または増幅ステップでの使用に適している。有利なことに、ライゲーション反応は標的依存的な弁別手段になる。ライゲーション反応は以下のステップを含むが、以下のステップに限定されるわけではない:a)少なくとも1つの標的ヌクレオチド配列を有する一本鎖テンプレートを取得するステップ、b)そのテンプレートを、複数のオリゴヌクレオチドライゲーションプライマーと接触させるステップ(少なくとも1対のライゲーションプライマーは、そのライゲーションプライマー対の一方の5'末端が、そのライゲーションプライマー対の他方の3'末端に隣接してハイブリダイズするような形で、テンプレート上の少なくとも1つの標的ヌクレオチド配列にハイブリダイズするように設計される)、c)テンプレート上の標的ヌクレオチド配列への少なくとも1対のライゲーションプライマーの隣接ハイブリダイゼーションと、隣接ハイブリダイズした任意のライゲーションプライマー対のライゲーションによる、標的ヌクレオチド配列に相補的な配列を含む少なくとも1つのライゲーション産物の形成とが促進されるような条件下で、テンプレートおよびライゲーションプライマーをインキュベートするステップ、d)ライゲーション産物をテンプレートから解離させるステップ、e)所望により、ハイブリダイゼーションおよびライゲーションステップを繰り返すステップ、ならびにf)以後の加工ステップまたは増幅ステップのためにライゲーション産物を回収するステップ。好ましくは、リガーゼ連鎖反応(LCR)での使用に適したライゲーションプライマーを使って、ライゲーション産物を生成させる。もう一つの選択肢として、非酵素的ライゲーション反応での使用に適したライゲーションプライマーを使って、たとえば、XuおよびKoolが記載したように(1999,Nuc Acids Res 27:875-881)、非酵素的手段でライゲーション産物を生成させることもできる。ある実施形態では、標的ヌクレオチド配列を指数的に増幅するために、温度サイクリングを使って、LCRが繰り返される。
【0130】
本明細書において「LCR産物」という用語は、酵素的ライゲーション、リガーゼ連鎖反応(LCR)によって生成したライゲーション産物だけでなく、非酵素的ライゲーションによって生成したライゲーション産物を包含するものとする。
【0131】
もう一つの実施形態では、少なくとも1コピーの標的ヌクレオチド配列を含有するPCR産物を、ここに説明するライゲーション反応のテンプレートとして使用する。任意で、PCR産物は、少なくとも1つのプライマーによって導入される少なくとも1つの外来ヌクレオチド配列を含有する。
【0132】
〔ローリングサークル法〕
本発明の一態様によれば、増幅、転写、標的弁別、および他の標的依存的ステップに、ローリングサークル(RC)法を使用することができる。図1は、RC法を使って本発明のタグ付き分子を生成させることを含む、試料中のSNPの検出を図解している。RC法を行うためのプロトコールは、特にKoolら(米国特許第5,714,320号、第6,368,802号および第6,096,880号)、Landegrenら(米国特許第5,871,921号)、Zhangら(米国特許第5,876,924号および第5,942,391号)ならびにLizardiら(Lizardiら,1998,Nature Genet 19:225-232、米国特許第5,854,033号、第6,124,120号、第6,143,495号、第6,183,960号、第6,210,884号、第6,280,949号、第6,287,824号、、および第6,344,329号)が開示しているように、当技術分野ではよく知られている。テンプレートから標的ヌクレオチド配列を増幅して所定の配列および長さを持つDNA分子を得るためのRC増幅の使用は、米国特許出願第10/138,067号および米国仮特許出願第60/404,195号に開示されている。有利なことに、RC増幅は、標的ヌクレオチド配列に対する高い特異性および選択性と低レベルな非特異的バックグランドシグナルとを持つ等温増幅法として行うことができる。さらに有利なことに、RC増幅中のライゲーションステップを操作することにより、変異体配列同士を弁別すること、たとえば、対立遺伝子弁別を行うこと、またはヌクレオチド配列の一塩基多型(SNP)、スプライス変異体、突然変異体もしくは対立遺伝子を同定することなどができる。
【0133】
RC法には環状RCプローブが必要である。簡単に述べると、RC法を実施する際の第1ステップは、線状RCプローブを生成させることである。この線状RCプローブは、環化させ、ライゲートすることによって、機能的な環状RCプローブを生成させることができるDNA分子またはRNA分子である。線状RCプローブまたは「プレサークル(precircle)」分子を構築するための材料および方法は、Koolらによって開示されている(米国特許第5,714,320号、第6,368,802号および第6,096,880号)。標的ヌクレオチド配列を含有するDNAテンプレートまたはRNAテンプレートを直接増幅するために、線状のRCプローブ(このRCプローブの3'末端および5'末端は、標的ヌクレオチド配列の一部分に相補的な配列を有する)を、好ましくは、標的ヌクレオチド配列を含有する変性テンプレートにハイブリダイズさせる。スペーサー領域または「骨格」領域は3'末端と5'末端の間にあり、これは、たとえば、重合プライマーの結合、識別子タグの生成、RCプローブの検出/捕捉、または増幅産物のトリミングなどといった他のステップに関与する配列を含みうる。ある実施形態では、3'末端および5'末端が標的に隣接してハイブリダイズし、それら2つの末端はライゲートされ、RC増幅に適した環化RCプローブを形成する。もう一つの実施形態では、線状分子の3'末端および5'末端を標的にハイブリダイズさせた時に、2つの相補領域間にギャップが生じ、そのギャップはプライマー伸長または補助ヌクレオチドによって埋められ、末端がライゲートされて、増幅に適した環化RCプローブが形成される。ライゲーションによるRCプローブの形成は、酵素的手段(たとえば、リガーゼ、好ましくはT4リガーゼ)を使って行うか、たとえば、XuおよびKool(1999,Nuc Acids Res 27:875-881)ならびにKool(米国特許第5,714,320号、第6,368,802号および第6,096,880号)が開示しているように、非酵素的プロトコールを使って行うことができる。
【0134】
RCプローブの標的依存的なハイブリダイゼーションおよびライゲーションは、たとえば、Landegrenらが米国特許第5,871,921号に記載しているように、プローブがカテネーション(catenation)によって標的にトポロジカルに接続されている「パッドロック」プローブ構成を持つプローブをもたらす。
【0135】
本発明の一態様は、標的ヌクレオチド配列に相補的な配列、およびその標的ヌクレオチド配列用の識別子タグの配列に相補的な配列を含有し、任意で、追加配列(これには増幅産物のトリミングに関与する配列、プライマー結合に関与する配列、プローブまたは産物の検出または捕捉に関与する配列、ポリメラーゼプロモーターの形成に関与する配列、および所望の構造特徴または情報特徴を与える他の配列が含まれうる)を含有する、RCプローブを提供する。
【0136】
各実施形態では、定義づけられた一組のタグおよびプローブが使用され、相異なる標的ヌクレオチド配列に向けられた各RCプローブに1つの識別子タグを関連づけることにより、各標的ヌクレオチド配列に相異なる識別子タグが与えられる。識別子タグ配列は、RCプローブの合成中に、当技術分野で既知の方法を使って組み込まれる。与えられた実施形態に対して、定義づけられたタグ/プローブセットは、その実施形態に要求される特性(たとえば、タグ/プローブ長、融解温度または複雑度など)を持つように選択される。一般的には、ある標的ヌクレオチド配列用の識別子として選択されるタグと、そのタグによって同定される標的との間に、関連性はない。一般に、選択したタグセットに含まれるタグはいずれも、どのタグをどの標的ヌクレオチド配列用の識別子タグとして選択したかを説明できる限り、RCプローブの生成に使用される任意のDNAに組み込むことができる。当業者は、与えられた実施形態について、その組内の任意のタグを任意のRCプローブ中の任意の標的ヌクレオチド配列と共に使用することができるかどうか、または特定のRCプローブ中に特定のタグを使用することが要求されるような制約が存在するかどうかを、決定することができる。任意の与えられた実施形態で使用される汎用検出子が、その実施形態で使用される識別子タグセットに相補的な検出プローブを含むこと、そしてその検出子がその実施形態では使用されないタグに相補的な検出プローブも含みうることは、当業者に理解されるだろう。
【0137】
ここに開示する方法によるRCプローブの増幅は、標的ヌクレオチド配列と識別子タグ配列とを含有する一本鎖増幅産物を生成させる鎖置換型DNAポリメラーゼによって触媒される。Koolら(米国特許第5,714,320号、第6,368,802号、および第6,096,880号)が開示しているように、RCプローブからのDNA産物のRC増幅を開始させるには、ポリメラーゼプライマーが必要である。RCプローブのコピーを複数含有する増幅産物は、汎用タグアッセイでの使用に適したタグ付き分子として使用するか、それをトリミングして、汎用タグアッセイでの使用に適した、より小さなタグ付き分子を生成させることができる。任意で、たとえば、Zhangら(米国特許第5,876,924号および第5,942,391号)ならびにLizardiら(Lizardiら,1998,Nature Genet 19:225-232、米国特許第5,854,033号、第6,124,120号、第6,143,495号、第6,183,960号、第6,210,884号、第6,280,949号、第6,287,824号、および第6,344,329号)に開示されているように、一本鎖増幅産物をさらに増幅して、二本鎖(好ましくは高分岐)増幅産物を生成させる。RNAポリメラーゼプロモーター領域を含有する二本鎖増幅産物は、DNA増幅産物の転写によるタグ付きRNA分子の生成を引き起こすために使用することができる。このポリメラーゼは、好ましくは、たとえば、Milliganら(1987,Nuc Acid Res 15:8783-8798)が開示したテンプレートを使用するT7 RNAポリメラーゼである。あるいは、T3もしくはSP6 RNAポリメラーゼまたは任意の適切なRNAポリメラーゼを、正しいプロモーター配列と共に使用することもできる。
【0138】
ここに記載する方法によれば、増幅産物の消化によるタグ付き分子の生成を可能にする認識可能部位を増幅産物が含有するように、RCプローブは、増幅産物の酵素消化に関与する部位の形成に関与する配列を含有しうる。たとえば、制限エンドヌクレアーゼなどによって増幅産物を結合し切断するための部位として役立つ二重鎖領域を形成させるには、補助オリゴヌクレオチドが必要な場合がある。RCプローブは、任意で、増幅産物の酵素消化によって生成する小さいタグ付き分子のさらなるトリミングに関与する追加配列を含んでもよい。一本鎖増幅産物の酵素消化によって生成したタグ付き分子のさらなるトリミングに関与する配列は、そのトリミングステップに関与する制限酵素の制限酵素認識部位を少なくとも1つは持つヘアピン構造を形成する自己相補的配列を含みうる。トリミングステップに関与する制限酵素は、好ましくは、EcoRIまたはFokIなどのII型またはIIS型制限酵素であることができる。トリミングに関与する配列は、少なくとも1つの補助オリゴヌクレオチドを添加した時に、そのトリミングステップに関与する制限酵素の制限酵素部位を少なくとも1つは形成する配列を含みうる。
【0139】
〔RNAテンプレートの増幅によるDNA分子の生成〕
本発明のもう一つの態様によれば、ここに開示し特許請求するRC増幅を使ってRNAテンプレートを増幅することにより、標的ヌクレオチド配列の相補体のコピーと、相異なる識別子タグとを含む、一本鎖タグ付きDNAまたはRNA増幅産物を生成させることができる。標的ヌクレオチド配列を含有するRNAテンプレートを逆転写することによって、cDNAを生成させ、それをここに説明したように増幅することができる。もう一つの選択肢として、たとえば、Kool(米国特許第5,714,320号、第6,368,802号、および第6,096,880号)が開示しているように、RCプローブとRNA依存性RNAポリメラーゼとを利用して、RNAテンプレートを直接増幅することもできる。
【0140】
〔ローリングサークル増幅のためのプライマーとしてのライゲーション産物の使用〕
好ましい実施形態では、標的ヌクレオチド配列の一部分に相補的な配列を含有する各ライゲーションプライマーが、標的ヌクレオチド配列のコピーとその標的ヌクレオチド配列用の識別子タグ配列の相補体とを含有するRCパッドロックプローブの骨格の一部分に相補的な外来ヌクレオチド配列も含有する。これらのプライマーによって形成されるライゲーション産物は、RCパッドロックプローブの骨格の一部分に相補的な5'および3'外来ヌクレオチド配列を隣に持つ標的ヌクレオチド配列に相補的な配列を含む。次に、線状RCパッドロックプローブの5'末端が線状RCパッドロックプローブの3'末端に隣接し、その5'末端および3'末端がライゲートされて環化したRCパッドロックプローブを形成することになるように、ライゲーション産物への線状RCパッドロックプローブのハイブリダイゼーションを促進する条件下で、ライゲーション産物を少なくとも1つの線状RCパッドロックプローブと共にインキュベートする。環化したRCパッドロックプローブとライゲーション産物とによって形成された複合体に、ライゲーション産物を重合プライマーとして使用するRCパッドロックプローブのRC増幅が可能になるような条件下で、DNAポリメラーゼを加える。
【0141】
この実施形態では、増幅産物は、RCプローブの複数反復コピーを含有する一本鎖DNA分子であり、たとえば、標的ヌクレオチド配列の相補体のコピー、識別子タグ配列のコピー、およびRCプローブ中に見いだされる任意の追加配列のコピーなど(ただしこれらに限らない)を含む。この増幅産物は、汎用タグアッセイでの使用に適したタグ付き分子である。この増幅産物は、修飾ヌクレオチド、アドレサブルリガンド、酵素消化部位、または他の修飾を含みうる。もう一つの実施形態では、増幅産物がさらに、増幅産物の増幅後トリミングによる、汎用タグアッセイでの使用に適した、より小さいタグ付き分子の生成に関与する外来ヌクレオチド配列を含有する。本発明のこの態様によれば、追加重合プライマーは必要ない。なぜなら、ライゲーション産物はRCパッドロックプローブに完全に相補的であり、したがってDNAポリメラーゼを反応混合物に加えれば、RC増幅用の重合プライマーとして役立つからである。
【0142】
もう一つの好ましい実施形態では、標的ヌクレオチド配列のコピーとその標的配列用の識別子タグの相補体とを有する環状RCプローブを、RCパッドロックプローブの骨格の一部分に相補的な5'および3'外来ヌクレオチド配列を隣に持つ標的ヌクレオチド配列に相補的なライゲーション産物と共にインキュベートする。ライゲーション産物は、環状RCプローブの相補領域にハイブリダイズし、DNAポリメラーゼを反応混合物に加えると、RC増幅の重合プライマーとして役立つ。RCプローブの増幅により、上述した汎用タグアッセイでの使用に適したタグ付き分子が生成する。
【0143】
〔増幅産物を使ったタグ付き分子の生成〕
本発明のもう一つの態様によれば、増幅産物をさらなる増幅ステップで使用することにより、汎用タグアッセイでの使用に適したタグ付き分子を生成させる。標的ヌクレオチド配列をPCRまたはLCRで増幅することにより、テンプレートとしての使用に適した第1増幅産物を生成させる。必要なら、二本鎖増幅産物を変性させることにより、一本鎖テンプレートを生成させる。標的ヌクレオチド配列の相補体を含有する一本鎖第1増幅産物を、標的ヌクレオチド配列のコピーとその標的ヌクレオチド配列用の識別子タグの相補体とを含有する線状RCプローブと共にインキュベートする。線状RCプローブは、標的依存的結合によって、第1増幅産物にカテネート(catenate)する。すなわち線状RCプローブは、第1増幅産物の中でも標的ヌクレオチド配列の相補体を含有する領域にハイブリダイズし、線状RCプローブの3'末端と5'末端とがライゲートされて、環化したRCプローブを形成する。第1増幅産物がRCプローブに完全には相補的でない場合は、DNAポリメラーゼを反応混合物に加えた時にRC増幅が起こるように、追加の重合プライマーを加えてもよい。RC増幅により、RCプローブの複数反復コピーを含有する第2増幅産物が生成する。これらの第2増幅産物は、汎用タグアッセイでの使用に適したタグ付き分子である。任意で、第2増幅産物をトリミングすることにより、汎用タグアッセイでの使用に適した、より小さいタグ付き分子を生成させる。この方法によって生成するタグ付き分子を汎用検出子と共にインキュベートし、相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションを測定する。この方法は、標的ヌクレオチド配列のコピーを含有する線状増幅産物と、標的ヌクレオチド配列の相補体を含有するRCプローブとを使って実施することもできることは、当業者には理解されるだろう。有利なことに、この方法は、パッドロックプローブを使ったRC増幅に伴うトポロジカルな制約を克服するために、温度を上げて行うことができる。Kuhnら,2002,Nuc Acids Res 30:574-580。
【0144】
ある実施形態では、PCRによって、標的ヌクレオチド配列のコピーを含有する二本鎖線状DNA分子を生成させる。そのPCR産物の一端は、PCRに用いるプライマーによって導入された、ビオチンなどのアドレサブルリガンド(addressable ligand)を含有する。線状増幅産物を変性させて、少なくとも1つの鎖がその一端にアドレサブルリガンドを含有する一本鎖PCR産物を生成させる。好ましい実施形態では、標的ヌクレオチド配列のコピーを持つビオチン化一本鎖PCR産物を、ストレプトアビジン被覆ビーズと共に、ビオチン化PCR産物がビーズに付着してビーズ-標的配列複合体を形成するような条件下で、インキュベートする。そのビーズ-標的配列複合体を、標的ヌクレオチド配列に相補的な配列をその3'末端および5'末端に含有すると共にその標的ヌクレオチド配列用の識別子タグの相補体を含有し、また必要に応じて、もしくは所望により、追加RCプローブ配列も含有する線状RCパッドロックプローブと共に、インキュベートする。RC線状プローブは、上述のように標的依存的に、3'末端と5'末端とが隣接して、ここに記載するようにライゲートされて、環化したRCパッドロックプローブを形成することができるような形で、ビーズ-標的配列複合体にハイブリダイズする。任意で、パッドロックプローブのRC増幅用の重合プライマーとして、追加プライマーを加えてもよい。これらのRC増幅産物は汎用タグアッセイでの使用に適したタグ付き分子であり、これをトリミングすることにより、汎用タグアッセイでの使用に適した、より小さいタグ付き分子を生成させることもできる。有利なことに、パッドロックプローブのRC増幅は65℃で、好ましくはBst DNAポリメラーゼ(New England Biolands,マサチューセッツ州ビバリー)を使って行うことができる。さらに有利なことに、RCパッドロックプローブは、最終的に、ビーズ-標的配列複合体から解離(「剥離(fall off)」)して、増幅され続けることができる。あるいは、カテネートしたRCパッドロックプローブをRNAポリメラーゼを使ってRC転写することにより、汎用タグアッセイでの使用に適したタグ付きRNA分子を生成させる。
【0145】
〈C.2.DNA増幅産物のトリミングによるタグ付き分子の生成〉
本発明の一態様では、増幅ステップ中に導入される外来ヌクレオチド配列が、増幅産物のトリミングによる、汎用タグアッセイでの使用に適した、より小さいタグ付き分子の生成に関与する配列を含みうる。増幅産物のトリミングによる、より小さいタグ付き分子の生成は、本発明の実施にとって必要ではなく、どのような場合にトリミングステップが望ましくなりうるかを、当業者は決定することができる。増幅産物をトリミングするための方法および組成物は、米国特許出願第10/138,067号および米国仮特許出願第60/404,195号に開示されている。ある実施形態では、外来ヌクレオチド配列が、ヘアピン構造を形成する自己相補的配列を含有しうる。ヘアピン構造を形成するこれらの自己相補的配列は、トリミングステップに関与する制限酵素の制限酵素部位を少なくとも1つは含有することができ、好適な制限酵素としては、EcoRIなどのII型制限酵素、またはFokIなどのIIS型制限酵素があげられる。もう一つの実施形態では、外来ヌクレオチド配列が、制限酵素による増幅産物のトリミングに関与する配列を含むことができ、この場合、外来配列は制限酵素認識部位の一方の鎖をコードし、二本鎖制限酵素認識部位は少なくとも1つの補助オリゴヌクレオチドが添加された時に形成される。好適な制限酵素としては、EcoRIなどのII型制限酵素、またはFokIなどのIIS型制限酵素があげられる。
【0146】
増幅産物をトリミングすることにより、少なくとも2タイプのタグ付き分子を形成させることができる。好ましい一実施形態では、トリミングによって生成するタグ付き分子が、標的のコピーまたは相補体および識別子タグを含むタグ付き標的分子である。もうひとつの好ましい実施形態では、トリミングによって生成するタグ付き分子が識別子タグを含み、標的のコピーまたは相補体を含まない。タグ付き分子は、追加配列、ラベル、化学修飾、および特定実施形態のために当業者が選択した他の特徴を含有しうる。タグ付き分子は汎用検出子と相互作用し、タグ付き分子中の識別子タグは、汎用検出子上の相補的検出タグにハイブリダイズする。試料中に対応する標的が存在することを示すのに十分な情報量を持っているのは、識別子タグである。
【0147】
好ましい実施形態では、二本鎖増幅産物をトリミングして、汎用検出子にハイブリダイズすることができるタグ付き分子を生成させることができる。好ましくは、ニッキングエンドヌクレアーゼを使って、タグ配列の隣に位置する部位を切断する。この場合、ニッキングエンドヌクレアーゼは、二本鎖DNA基質の一方のDNA鎖だけを切断する。エンドヌクレアーゼ認識配列はタグ配列のまわりに2回対称的に配置される。たとえば、N.BstNB Iの場合は、認識配列GAGTCを、各鎖上のタグ配列の開始点から4ヌクレオチド5'側(上流)に置く。このようなトリミング操作では、識別子タグを含有するタグ付き分子が放出されることになり、そのタグ付き分子は、1つ以上のニッキングエンドヌクレアーゼによって生成した「付着末端」を持つ。この実施形態での使用に適したニッキングエンドヌクレアーゼには、たとえば、N.BstNBI、N.BbvCIA、N.AlwI、N.BbvCIB(New England Biolabs,マサチューセッツ州ビバリー)などがあるが、これらに限るわけではない。有利なことに、付着末端を持つタグ付き分子は、表面、好ましくは汎用検出子、より好ましくは電極表面に、ハイブリダイズすることができる。タグ付き分子(好ましくは表面にハイブリダイズしたもの)は線形重合を受けて、表面への十分なレベルのハイブリダイゼーションをもたらすことができ、ここでは、重合によって生成するどの線状ポリマーも表面にハイブリダイズする。N.BstNBIおよびN.AlwIで切断したDNAの付着末端は5'突出部を持つので、好ましい実施形態では、表面上に固定化されたオリゴヌクレオチドを、その3'末端でビオチン化する。N.BbvCIBなどの他の酵素は3'突出部を持つ付着末端を生成するが、ニック切断部位を生成させるために必要な配列は、N.BstNBIおよびN.Alwよりも制約が多くなる。有利なことに、付着末端を持つタグ付き分子の表面ハイブリダイゼーションは、ループ中にビオチンを持つヘアピンらせんを形成する検出プローブを使用してらせん末端をタグ付き分子にスタックさせることによって、強化される。
【0148】
〈C.3.ローリングサークル転写によるタグ付きRNA分子の生成;RNA分子のトリミング〉
本発明の汎用タグアッセイでの使用に適したタグ付きRNA産物は、当技術分野で知られる方法(たとえば、Kool(米国特許第6,096,880号および第6,368,802号)が開示している方法)を使ったRCプローブの転写によって、生成させることができる。RCプローブ(DNA)の転写によるRNA合成は、プローブ中のRNAポリメラーゼプロモーター配列を必要としないが、所望であれば、RCプローブ中にRNAポリメラーゼプロモーター配列を組み込むこともできる。RCプローブがRNAポリメラーゼプロモーターを持っていない場合は、RCプローブ上の任意の位置で、転写を開始させることができる。RCプローブがRNAポリメラーゼプロモーターを持っている場合は、転写の開始はプロモーターの位置によって決まる。好適なRNAポリメラーゼには、T7、R4、T3、大腸菌RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、RCAポリメラーゼIIおよびIII、またはそれらと相同性の高い突然変異体などがあるが、これらに限るわけではない。
【0149】
本発明の一態様は、標的ヌクレオチド配列のコピーまたは相補体とその標的ヌクレオチド配列用の識別子タグ配列の相補体とを含有するだけでなく、少なくとも1つの生物学的に活性なRNA配列(好ましくは触媒RNA配列)をコードする配列も含有するように構築されたRCプローブを提供する。ある実施形態では、RC転写によって生成するRNA産物が、好ましくは、リボザイムとその切断部位をコードする。本発明での使用に適したリボザイムには、ヘアピンリボザイム、ハンマーヘッドモチーフリボザイム、およびデルタ肝炎触媒RNAなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0150】
ハンマーヘッドモチーフ触媒RNAは、環状DNAテンプレートとして役立つRCプローブがコードするRNAの非触媒基質結合ドメインの配列を改変することにより、さまざまなRNA配列の切断に、容易に適合させることができる(Uhlenbeck,1987,Nature 328;596-600、Haseloffら,1988,Nature 344:585-591、Symons,1992,Ann Rev Biochem 61:641-671、Longら,1993,FASEB J,7:25-30)。基質結合ドメインの配列に対するそのような修飾はRCプローブの合成中に容易に行われ、そうすることにより、本発明の方法は任意の所望する診断上または生物学上有用なRNA配列を製造することができるようになる。モノマー触媒RNAは、シス的に(分子内で)作用できるだけでなく、他の標的RNAをトランスに切断することもできる(Reddyら,米国特許第5,246,921号、Cechら,米国特許第4,987,071号、第5,354,855号、第5,093,246号)。本発明によって製造される触媒RNAには、任意の所望する酵素活性、たとえば、エンドヌクレアーゼ活性、エキソヌクレアーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、またはホスホリラーゼ/デホスホリラーゼ活性など(ただしこれらに限らない)を持つRNA配列が含まれる。
【0151】
ここに開示する方法によれば、本発明は、RC転写のRNA産物(RCプローブの反復単位コピーを含有するもの)の切断によって形成される、所定の配列を持つ短いRNAオリゴヌクレオチド(オリゴリボヌクレオチド)タグ付き分子のコピーを複数提供する。ある実施形態では、転写物の切断によって、標的配列と識別子タグとを含有するタグ付きRNA分子が生成するように、RCプローブ上に1つの自己分解部位が存在する。もう一つの実施形態では、2つ以上の自己分解部位がRCプローブ中に存在し、識別子タグを含有するが標的配列は含有しないタグ付きRNA分子が転写物の切断によって生成するように、識別子タグ配列の隣に自己分解部位が位置する。好ましい実施形態では、モノマーユニットが自己切断リボザイムを含有する場合のように、切断は自己切断的である。
【0152】
転写中は、反復RNAが自己切断して、十分な時間が経過した後に、モノマー長のタグ付き分子が生成する(すなわち、反復RNAは切断されて、所望の配列を1コピーだけ含有するオリゴヌクレオチドを生成する)。本発明によれば、モノマーは標的ヌクレオチド配列のコピーまたは相補体とその標的用の識別子タグとを含む場合もあるし、モノマーは識別子タグを含むが標的ヌクレオチド配列は含まない場合もある。通例、モノマーは線状であるが、たとえば、モノマーが分子内ライゲーション能力を持つヘアピン型リボザイムを含有する場合などは、環状であってもよい。結果として生じるモノマータグ付き分子は、トランスのRNA標的を配列特異的に切断することができる触媒活性リボザイムを含みうる。一例として、RNAオリゴマーにハンマーヘッド配列を組み込むことにより、自己切断性マルチマーが生じるだろう(Forsterら,Cold Spring Harbor Symp Quant Biol,52,249(1987))。
【0153】
コンカテマーRNA(concatemeric RNA)産物の切断は、たとえば、部位特異的エンドヌクレアーゼ酵素活性を持つ第2分子との接触などにより、化学的または酵素的に達成することもできる。この第2分子は、たとえば、トランスに作用して異なる核酸上に位置する部位を切断するタンパク質またはリボザイムであることができる。たとえば、RNAマルチマーは、ハンマーヘッド配列をトランスに使用することにより、任意の配列で切断することもできるだろう(Haseloffら,1988,Nature,334:585)。もう一つのRNAマルチマー切断例は、5'-GAAAという配列中のGとAの間で起こる特異的切断だろう。これは、Kazakovら(1992,Proc Natl Acad Sci USA,89:7939-7943)が開示したAltmanの方法にしたがって、オリゴマー5'-UUUおよびMn2+を添加することにより、達成することができる。RNAは、配列特異性を持たせるためにDNAオリゴマーに取り付けられている触媒(たとえば、Chin(1992,J Am Chem Soc 114:9792)が開示しているものなど)を使って切断することもできる。あるいは、DNAオリゴマーの添加と共に酵素RNアーゼHを使用することや、塩基特異的RNアーゼを使用することもできる。
【0154】
もう一つの実施形態では、環状DNAテンプレート(RCプローブ)のRC転写によって生成する自己切断性モノマーリボザイムが、Koolら(米国特許第6,096,880号および第6,368,802号)が開示しているように、それらの基質配列特異性を向上させるのに役立つ「ストリンジェンシークランプ(stringency clamp)」を保有する。コンカテマー転写物中の切断部位は、分子内ハイブリダイゼーションによって形成される。自己切断は、典型的には、5'末端と3'末端とが鎖上に折り返されてヘアピン構成の二重鎖を形成しているモノマー型タグ付き分子をもたらす。切断がシスに起こるには、基質へのリボザイムモノマーの基質結合配列の結合が、基質結合配列の分子内相補体と、優勢に競合しなければならない。ストリンジェンシークランプは、媒質、血清などの中に存在するさまざまな作用因子による分解に対するタグ付き分子の感受性を、有利に低下させる。
【0155】
〈C.3.標的依存的なプローブおよびプライマー結合によるタグ付き分子の生成〉
本発明のもう一つの態様は、図2に図解するように、RC増幅を伴わない標的依存的なプロセスを使って作製されるタグ付き分子を提供する。この態様によれば、RNAポリメラーゼプロモーターをコードする配列がライゲーション産物の3'末端に隣接し、かつ識別子タグをコードする配列がライゲーション産物の5'に隣接している、標的ヌクレオチド配列に相補的な配列を有するDNAライゲーション産物の転写によって、タグ付きRNA分子が生成する。標的ヌクレオチド配列用の識別子タグを含有するタグ付きRNA分子は、その標的ヌクレオチド配列に相補的なプライマーがテンプレートの標的鎖にうまくハイブリダイズしてライゲートされた場合にのみ、生成することになる。タグ付き分子の標的依存的な生成には、たとえば、以下のステップが含まれるが、これらにステップに限定されるわけではない:a)必要なら、少なくとも1つの標的ヌクレオチド配列を有する一本鎖テンプレートを取得するステップ、b)テンプレートを、複数のオリゴヌクレオチドプライマーと接触させるステップ、この際、少なくとも1対のライゲーションプライマーは、テンプレート中の少なくとも1つの標的ヌクレオチド配列に、当該ライゲーションプライマー対の一方の5'末端が当該ライゲーションプライマー対の他方の3'末端に隣接してハイブリダイズするように設計され、標的ヌクレオチド配列の一部分にハイブリダイズした5'末端を持つプライマーはさらにその3'末端にRNAポリメラーゼプロモーターをコードする配列も持ち、標的ヌクレオチド配列の一部分にハイブリダイズした3'末端を持つプライマーはさらにその5'末端に前記標的ヌクレオチド配列用の識別子タグをコードする配列も持つ、c)プライマーおよびテンプレートを、テンプレートへのハイブリダイゼーションおよびプライマーのライゲーションによるライゲーション産物の形成を促進するような条件下で、インキュベートするステップ、d)ライゲーション産物をテンプレートから解離させるステップ、e)所望により、ハイブリダイゼーションおよびライゲーションステップを繰り返すステップ、f)ライゲーション産物を回収し、RNAポリメラーゼおよび補助オリゴヌクレオチドと共にインキュベートして、RNAポリメラーゼプロモーターを形成させるステップ。所望であれば、転写によって生成するタグ付きRNA分子を回収した後、汎用タグアッセイに使用することができる。任意で、転写によって生成したタグ付きRNA分子を回収し、精製した後、汎用タグアッセイに使用することができる。あるいは、転写反応混合物を、回収または精製ステップを挟まずに、汎用タグアッセイに使用してもよい。
【0156】
この実施形態で使用するライゲーションプライマーの相補体は、偽シグナルの防止に役立つように設計すべきである。タグ含有プライマーの相補体はタグ配列の相補体を含有しないように短縮すべきであり、タグの偽コピーを生成させるかもしれないプライマー伸長を防止するために3'-ブロックすべきである。
【0157】
この方法は、たとえば、SNP、スプライス変異体、対立遺伝子型、および突然変異体などの、試料中の変異体配列または多型配列を同定するために使用することができる。したがって、試料を、標的ヌクレオチド配列の変異体配列に相補的な配列を有するライゲーションプライマーを含む一組のライゲーションプライマーと共に、ハイブリダイゼーションおよびライゲーションに適した条件下でインキュベートすると、テンプレート中に存在する変異体配列に相補的なライゲーションプライマーだけがテンプレートにハイブリダイズして、RNAポリメラーゼプロモーターと識別子タグをさらに含む少なくとも1つのライゲーション産物が形成される。変異体配列用の識別子がライゲーション産物の5'末端に見いだされるような実施形態では、標的ヌクレオチド配列の一部分にハイブリダイズする3'末端を持つプライマーは、どの変異体配列が存在するかを弁別するように設計されるだろう。たとえば、変異体がSNPである場合、標的ヌクレオチド配列の一部分にハイブリダイズする3'末端を持つプライマーの3'末端にあるヌクレオチドは、アッセイ対象である変異体中にどのヌクレオチドが存在するかを弁別するヌクレオチドであるだろう。各標的または変異体は相異なる識別子タグを持ち、その識別子タグは、対応する標的がアッセイ対象である試料中に存在した場合にのみ、タグ付き分子中に存在し、相補的検出プローブに結合することになるので、複数の変異体配列を含む複数の標的を同時にアッセイすることができる。
【0158】
本発明のもう一つの態様は、ローリングサークル(RC)転写用のRCプローブを生成させるために使用することができる環化可能なライゲーション産物を提供する。RC転写により、識別子タグを含むライゲーション産物の複数反復コピーを含有するタグRNA分子が生成する。配列の複数反復コピーを含有するタグ付きRNA分子は、汎用タグアッセイでの使用に適している。あるいは、これらのタグ付き分子をトリミングして、識別子タグを含有する、より小さいタグ付きRNA分子を生成させることもできる。RC転写は、有利なことに、所望する任意の量でタグ付きRNA分子を生成させるための便利な方法になる。
【0159】
所望であれば、PCRを使って標的ヌクレオチド配列を囲む領域を増幅することができ、そのPCR産物は、上述したライゲーションおよび転写反応の適切な基質になりうる。
【0160】
〈D.変異体配列の検出〉
本発明の一態様によれば、ライゲーション反応を使って、標的ヌクレオチド配列中の変異体配列または多型配列を解析する。そのような変異体配列には、ある遺伝子座の対立遺伝子、スプライス変異体、または一塩基多型(SNP)が含まれる。有利なことに、ライゲーション反応は高度な特異性を持つので、変異体配列間の弁別によって、相異なる変異体配列のそれぞれに対応する相異なるタグ付き分子を生成させることが可能になり、それらのタグ付き分子は、汎用タグアッセイを使って容易に検出される。図1は、RC法を使って本発明のタグ付き分子を生成させることを含む、試料中のSNPの検出を図解している。
【0161】
本発明の一態様によれば、ライゲーション反応を使って、試料中に存在する標的ヌクレオチド配列の変異体配列または多型配列を同定する。変異体配列は、好ましくは、一塩基多型SNPである。あるいは、変異体配列は、標的ヌクレオチド配列の突然変異体または対立遺伝子型に相当する。好ましい実施形態では、増幅ステップが、標的ヌクレオチド配列の変異体配列に相補的な配列を有する複数の線状RCプローブを使って行われ、各線状RCプローブは単一の変異体配列に相補的であり、その変異体配列用の識別子タグの相補体を含有する。試料を、この複数の線状RCプローブと共に、RCプローブのハイブリダイゼーションおよびライゲーションに適した条件下でインキュベートして、試料中に存在する変異体配列に相補的なRCプローブだけが標的依存的に変異体配列にハイブリダイズし、それらがライゲートされて、汎用タグアッセイでの使用に適したタグ付き分子をRC増幅またはRC転写によって生成させるのに適した環化RCプローブを形成するようにする。
【0162】
上述のように、複数の線状RCプローブであって、各線状RCプローブが単一の変異体配列に相補的な配列とその変異体配列用の識別子タグとを含むものを使用することにより、同じ標的ヌクレオチド配列または相違する標的ヌクレオチド配列の複数の変異体配列を、単一の反応で検出することができる。対応するRCプローブによって認識された後、RC法によって増幅または転写される変異体配列はいずれも、その相異なる識別子タグにより、本発明の汎用タグアッセイを使って同定されるだろう。
【0163】
もう一つの選択肢として、増幅前ステップでのライゲーション反応を使って、試料中に存在する標的ヌクレオチド配列の変異体配列または多型配列を同定する。好ましい実施形態では、増幅前ステップで使用される一組のライゲーションプライマーが、標的ヌクレオチド配列の変異体配列に相補的な配列を有するライゲーションプライマーを含む。試料を、変異体配列に相補的な配列を有するライゲーションプライマーと共に、ハイブリダイゼーションおよびライゲーションに適した条件下でインキュベートすると、標的鎖テンプレート中に存在する変異体配列に相補的なライゲーションプライマーだけがテンプレートにハイブリダイズし、テンプレート中に存在する変異体標的ヌクレオチド配列に相補的な配列を有する少なくとも1つのライゲーション産物を形成することになる。もう一つの好ましい実施形態では、変異体配列に相補的なライゲーション産物が、さらに、RCプローブ中の標的ヌクレオチド配列のコピーの隣に位置する骨格配列に相補的な外来ヌクレオチド配列を、その3'末端および5'末端に含むような形で、上記一組のライゲーションプライマーが、外来配列を有するプライマーを含む。それらのライゲーション産物は、プローブの標的依存的な結合およびライゲーションのために、線状RCプローブと混合することができる。あるいは、ライゲーションプローブを環状RCプローブと混合することもできる。RCプローブに結合したライゲーション産物は、相補的変異体配列を有するRCプローブを増幅させるための重合プライマーとして役立ちうる。
【0164】
上述のように、複数のライゲーションプライマーであって、各変異体配列に相補的な配列を有するライゲーションプライマーがその変異体配列に相補的なライゲーション産物を生成することになるものを使用することにより、同じ標的ヌクレオチド配列または相違する標的ヌクレオチド配列の複数の変異体配列を、単一の反応で検出することができる。変異体配列に相補的な配列を有するライゲーション産物は、相補的変異体配列とその変異体配列用の相異なる識別子タグの相補体とを有するRCプローブを使って増幅されて、汎用タグアッセイでの使用に適したタグ付き分子を生成するだろう。
【0165】
〈E.生物の同定〉
本発明のもう一つの態様は、ある生物または個体を、その生物または個体の識別特徴として役立つように選択された1つ以上の標的ヌクレオチド配列を検出することによって、同定する方法に向けられる。各標的ヌクレオチド配列は、たとえば、以下のステップを含む(ただし以下のステップに限定されるわけではない)汎用タグアッセイを使って検出される:a)少なくとも1つの標的ヌクレオチド配列を有するテンプレートを取得するステップ、b)標的依存的操作を実行することにより、その標的ヌクレオチド配列用の識別子タグを少なくとも1つは含有する少なくとも1つのタグ付き分子を生成させるステップ、c)少なくとも1つのタグ付き分子を、検出手段に連結された検出プローブを持つ汎用検出子と共にインキュベートするステップ、およびd)相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションを測定するステップ。識別子タグとその相補的検出プローブとのハイブリダイゼーションは、検定対象である試料が、その生物または個体の識別特徴として役立つように選択された対応標的ヌクレオチド配列を含有していたことを示す。
【0166】
ある実施形態では、標的ヌクレオチド配列を含有するテンプレートの増幅によって生成したタグ付き分子を使って、以下のステップで(ただし以下のステップに限定されるわけではない)、標的ヌクレオチド配列が検出される:a)少なくとも1つの標的ヌクレオチド配列を有するテンプレートを取得するステップ、b)そのテンプレートを増幅することにより、標的ヌクレオチド配列とその標的ヌクレオチド配列用の識別子タグとを含有する増幅産物を生成させるステップ、c)タグ付き分子を、検出手段に連結された検出プローブを持つ汎用検出子と共にインキュベートするステップ、およびd)相補的検出プローブへの相異なる識別子タグのハイブリダイゼーションを検出するステップ。任意で、増幅産物は外来ヌクレオチド配列(たとえば、増幅産物をトリミングして、汎用タグアッセイでの使用に適した、より小さいタグ付き分子を生成させることができるように、増幅産物のトリミングに関与する配列)も含有する。この実施形態では、ある生物または個体を、その生物または個体の識別特徴として役立つように選択された対応標的ヌクレオチド配列をアッセイ対象試料が含有していたことを示すタグ付き分子を、その生物または個体から採取した試料から検出することによって、同定することができる。
【0167】
ある用途で使用される各識別子タグが、汎用検出子中に相補的検出プローブを持つことはいうまでもない。したがって、試料中に対応する標的が存在することを高い信頼性で示す、識別子タグとその相補的検出プローブとのハイブリダイゼーションによって、生物または個体を同定することができる。また、試料中に対応する標的が存在しないことを高い信頼性で示す、相異なる識別子タグとその相補的検出プローブとのハイブリダイゼーションの不在によって、生物または個体を同定することもできる。好ましくは、ここに記載するこの方法の信頼性を高めるために、内部対照を含める。もう一つの実施形態では、多数の個体または生物を、この方法によって同定する。有利なことに、ここに開示する汎用タグアッセイおよび方法は、検出子を個別設計または個別製造しなくても、任意の生物または個体に使用することができる。
【0168】
〈F.汎用タグを使った他の代替実施形態〉
汎用タグ配列を使ったアッセイのいくつかの実施形態では、識別子タグが検出子プローブにハイブリダイズした後に、テンプレートの増幅を行う。たとえば、本発明の一実施形態は、ある特定標的ヌクレオチド配列に対応する識別子として選択された識別子タグ配列を含むローリングサークル(RC)プローブを使って、試料中の標的ヌクレオチド配列を検出する方法に関する。一部の実施形態では、RCプローブは、シグナルタグに相補的な配列も含むことができる。RCプローブがシグナルタグに相補的な配列を含むか含まないかは、検出プローブへの識別子タグ配列の結合を検出するために選択した方法に依存する。
【0169】
RCプローブを使って検査する試料は、たとえば、ゲノムDNA、cDNA、hnRNA、mRNA、またはこれらの分子のいずれかの増幅産物もしくは核酸コピーなど、上述したテンプレートをどれでも含有することができる。テンプレート分子は、1つ以上の標的配列またはその相補体を含むことができる。一部の実施形態では、試料が、ある遺伝子の代替対立遺伝子などといった各標的配列の変異体を1つ以上含む。
【0170】
本発明の一部の実施形態では、RCプローブが線状である。そのような線状RCプローブは、テンプレート分子の少なくとも一部分にそれぞれ相補的な3'末端および5'末端を含む。そのような実施形態では、RCプローブの3'末端と5'末端とがテンプレート上の連続した相補配列に隣接してハイブリダイズして、RCプローブの各末端間に、閉じられていないニックを残すように、線状RCプローブをテンプレートと共にインキュベートする。次に、その3'末端および5'末端をライゲートすることにより、環状RCパッドロックプローブを形成させることができる。
【0171】
識別子タグを内包している環状RCパッドロックプローブは、1つ以上の検出プローブを含む汎用検出子とハイブリダイズさせることができる。検出プローブは均一な配列を持つか、さまざまな配列タイプを持つことができる。本発明のいくつかの実施形態では、検出プローブのアレイを使用する。そのようなアレイは、RCパッドロックプローブ中に存在する識別子タグの少なくとも一部分に相補的な検出プローブを少なくとも1つは含むだろう。一部の実施形態では、検出プローブが、ここに記載するように、検出手段に連結される。
【0172】
RCパッドロックプローブの識別子タグが検出プローブとハイブリダイズすると、検出プローブの3'末端から重合を開始させることができる。当業者は、重合を起こす際の条件に基づいて、RCプローブをテンプレートとする検出プローブの5'→3'伸長に好適なポリメラーゼを決定することができる。RCプローブをテンプレートとする検出プローブの伸長は、カテネートした鎖として生成するRCプローブのコピーを1つ以上もたらしうる(図3a〜c参照)。RCプローブがシグナルタグに相補的な配列も含む場合は、検出プローブの伸長産物は、生成するRCプローブのコピー数に依存して、そのシグナルタグ配列のコピーを1つ以上含むことになる。
【0173】
伸長反応の結果として、検出プローブは、RCプローブに相補的な配列を1コピーまたは複数コピー含む伸長された検出プローブ配列(伸長産物)が生成するように、その遊離3'末端から伸長される。本発明のいくつかの実施形態では、RCプローブは、伸長された検出プローブ配列(伸長産物)と会合したままであるが、他の実施形態では、RCプローブは、伸長された検出プローブ配列(伸長産物)から解離して、RCプローブに相補的な配列を1コピーまたは複数コピー含む遊離の一本鎖検出プローブ産物を残す。伸長された検出プローブ配列は、たとえば、ルテニウムを使ったアンペロメトリーなど、ここに記載するどの検出方法によっても検出することができる。また、RCプローブに相補的な核酸配列中にシグナルタグが存在する場合は、適当なシグナルプローブとのハイブリダイゼーションによって検出することができる。一部の実施形態では、シグナルプローブは、抗体コンジュゲートの結合を容易にする1つ以上の修飾を含むことができる。たとえば、シグナルプローブをフルオレセインで標識し、それを、セイヨウワサビペルオキシダーゼまたはPODなどの酵素にコンジュゲートした抗フルオレセイン抗体を使って検出することができる。
【0174】
本発明の他の実施形態は、テンプレート分子の増幅をもたらす反応が全て汎用検出子の存在下で行われる方法に関する。たとえば、いくつかの実施形態は、検出手段に連結された1つ以上の検出プローブを含む汎用検出子を使って、試料中の標的ヌクレオチド配列を検出する方法に関する。汎用検出子を、標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含むテンプレート分子と接触させる。ここに記載した任意の方法を使ってテンプレートを増幅することにより、少なくとも1つの識別子タグを含む少なくとも1つの分子を生成させる。一部の実施形態では、タグが特定標的ヌクレオチド配列用の識別子となるように、識別子タグを選択する。増幅ステップ中に生成する識別子タグは、その識別子タグに相補的な検出子プローブとハイブリダイズする。相補的検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションは、ここに記載する任意の方法(アンペロメトリーを含む)を使って検出することができる。識別子タグと検出子プローブとのハイブリダイゼーションの検出は、その識別子タグに対応する標的ヌクレオチド配列が、その試料中に存在することを示す。
【実施例】
【0175】
(実施例1)
〔線状RCパッドロックプローブ〕
RCパッドロックプローブとしての使用に適した線状DNA分子を、p53 SNP3と呼ばれるp53遺伝子中の一塩基多型にハイブリダイズするように設計した。このRCプローブ(配列番号8)は、p53 SNP3の野生型変異体の標的ヌクレオチド配列に相補的な配列を含有する。このプローブには以下の要素が含まれる:Z'タグ(またはZ'「ジップコード」)と呼ばれるタグ配列(配列番号3)、T7 RNAポリメラーゼプロモーター(配列番号4)、EcoRI制限エンドヌクレアーゼ部位(配列番号5)、およびT7転写を助けるための3'ヌクレオチドギャップ(配列番号6)。p53 SNP3標的ヌクレオチド配列に相補的な配列は、配列番号8の3'末端(配列番号2)および5'末端(配列番号1)に、5'末端の24ヌクレオチド配列および3'末端の13ヌクレオチド配列として配置されている。非標的相補配列を含有するRCプローブの「骨格」配列をヒトゲノムと比較しても、パッドロックプローブ骨格とヒトゲノム中の配列との間に、比較しうる対応は見つからない。
【0176】
Z'タグを使ったp53 SNP3用のRCプローブ
5'末端:GCACCTCAAAGCTGTTCCGTCCCA(配列番号1)
Tm=65.2℃、24量体
3'末端:CAGGCACAAACAC(配列番号2)
Tm=42.0℃、13量体
Z'タグ:AGCTACTGGCAATCT(配列番号3)
T7プロモーター:CCCTATAGTGAGTCGTATTA(配列番号4)
EcoRI部位:GAATTC(配列番号5)
3-ヌクレオチドギャップ(T7ポリメラーゼの転写を助ける):GAT(配列番号6)
RCプライマー:GATAGGAGTCACTTAAGATCG(配列番号7)
RCプローブ全体:(配列番号8)
5'P GCACCTCAAAGCTGTTCCGTCCCAGTTGACTATCCTCAGTGAATTC
TAGCTACTGGCAATCTGATCCCTATAGTGAGTCGTATTACAGGCACAAACAC 3'
RCプローブ(配列番号8)の特徴を以下に示す。
5'末端 EcoRI部位
5'P GCACCTCAAAGCTGTTCCGTCCCAGTTGACTATCCTCAGTGAATTC
GATAGGAGTCACTTAAG
RCプライマー
TAGCTACTGGCAATCTGATCCCTARAGTGAGTCGTATTACAGGCACAAACAC-3'
ATCG Z'タグ T7プロモーター 3'末端
【0177】
(実施例2)
〔カーボンインク電極に結合した産物のルテニウム検出〕
(汎用チップへの検出プローブの固定化)
チップへのストレプトアビジンまたはニュートラアビジン(NeutrAvidin)の固定化:NeutrAvidinを、25%イソプロピルアルコールを含有する10mM HEPES/10mM LiCl(pH7.4)緩衝液に溶解する。濃度が40〜4000nMのNeutrAvidin溶液を、汎用チップ上の作用電極の表面に沈着させ、室温で完全に乾かす。生体分子を安定化するための溶液であるStabilCoat溶液を汎用チップ上の作用電極に加え、10分間インキュベートする。そのStabilicoat溶液を汎用チップ表面から吸引し、チップを短時間乾燥する。
【0178】
(NeutrAvidin固定化汎用チップへの検出プローブの結合)
RCA産物のタグ配列に相補的なタグ配列を含有し、5'末端がビオチン化されている検出プローブを、NeutrAvidin固定化電極表面と共に、室温で30分間インキュベートする。ビオチン化DNA溶液を除去し、チップを10mM HEPES/10mM LiCl(pH7.4)緩衝液への浸漬によって洗浄する。固定化された検出プローブを持つチップは、貯蔵のために、Stabilcoatの薄層で被覆することができる。
【0179】
(汎用アレイ上に固定化された検出プローブへの標的核酸のハイブリダイゼーション)
核酸標的(その配列の一部−タグ配列−が検出プローブに相補的であるもの)を汎用チップに適用し、検出プローブに室温で30分間ハイブリダイズさせる。当業者は、結合を最適化するために、塩濃度、pH、インキュベーション時間、および温度などのハイブリダイゼーション条件を変化させることができる。
【0180】
(固定化されたDNA標的の電気化学的測定)
汎用チップ上に固定化されたDNAを、矩形波ボルタンメトリーを使って検出する。サイクリックボルタンメトリーや、微分パルスボルタンメトリーなどの他の方法も使用することができる。ルテニウムヘキサアミンRu(NH3)63+は、汎用チップ上の固定化DNAの検出にとって、好ましい陽イオンレドックスレポーターである。表面DNA標的に会合したRu(NH3)63+を検出するための矩形波ボルタンメトリーは、次のように行われる。3電極系、すなわち銀線基準電極、白金線補助電極、および検出プローブ(これは、タグ配列に相補的な配列であるか、DNA標的ヌクレオチドであることができる)が捕捉されているカーボンインク作用電極を含む汎用チップを使用する。このチップを、電気化学セル中の5μM Ru(NH3)63+、10mM Tris/10mM NaCl(pH7.4)を含有する水性緩衝液に浸漬する。0から−500mVまで走査した後、振幅25mV、ステップ電圧4mVおよび周波数15Hzの条件で、矩形波ボルタンメトリーを記録する。当業者には明らかであるだろうように、矩形波ボルタンメトリーのパラメータは変更することができる。
【0181】
(実施例3)
〔ライゲーション産物の転写〕
p53 SNP3と呼ばれるp53遺伝子中の一塩基多型を含有する標的領域で、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う。次に、そのPCR産物に2つのプライマーをハイブリダイズさせる。プライマーAは、5'末端に標的特異的領域、3'末端にT7プロモーター、そして3'ビオチンラベルを含有する。プライマーBは、3'末端に標的特異的配列を、また5'末端にタグ配列Z'を含有する。プライマーと試料を、対立遺伝子特異的ライゲーションが起こってT7プロモーター領域とタグ配列Z'とが連結され、ライゲーション産物が生成するような条件下でインキュベートする。その混合物を、ストレプトアビジンで被覆した粒子と共にインキュベートした後、その粒子を単離し、過剰のプライマーBが上清と共に洗い流されるように上清を捨てることによって、ライゲーション産物を捕捉する。次に、ライゲーション産物中のプロモーター配列にハイブリダイズするプロモーターオリゴヌクレオチドを加えて二本鎖部位を生成させ、RNAポリメラーゼを添加することによって、その二本鎖部位から転写を開始させる。ライゲーション産物の転写により、Z'タグ配列の相補体のコピーが複数生成する。次に、これら複数のZ'相補体コピーを汎用チップにばく露して、チップ上のZ'タグ(検出プローブ)にハイブリダイズさせる。相補的検出プローブへのタグ配列のハイブリダイゼーションは、上述のように、ホスホジエステルに静電的に結合したRu(III)錯体の電気化学的検出によって測定される。
【0182】
(実施例4)
〔ビーズに係留されたPCR産物〕
5'末端にビオチンラベルを含有するフォワードプライマーを使って、p53遺伝子の560塩基対(bp)領域を、PCRによって増幅する。得られた二本鎖560bp PCR産物は一塩基多型(SNP)1、2、および3を含有する。二本鎖産物を変性させ、ボトム鎖を洗い流して、数コピーの一本鎖560ヌクレオチド領域を得る。3つの関連パッドロックプローブ(タグ配列X'、Y'、およびZ'をそれぞれ含有する70.24、70.31、および70.33)を、PCR産物中の標的配列にハイブリダイズさせる。対立遺伝子特異的ライゲーションを行って、パッドロックプローブを標的領域にライゲートする。5'ビオチンラベルを含有するパッドロックプローブがライゲートされているPCR産物をストレプトアビジンビーズで捕捉し、過剰のパッドロックプローブを洗い流す。次に、線形RC増幅を3つのパッドロックで同時に行って、タグ配列X'(SNP1)、Y'(SNP2)、およびZ'(SNP3)に対する相補体を含有する多倍長RCA産物を生成させる。これらのRC増幅産物を汎用チップにばく露して、チップ上のタグ配列にハイブリダイズさせる。ホスホジエステルに静電的に結合したRu(III)錯体の電気化学的検出によって、増幅産物のハイブリダイゼーションを読み出す。
【0183】
(実施例5)
〔検出プローブのオンチップ伸長および抗体を使ったシグナル検出〕
この実施例では、検出プローブの遊離の3'末端から伸長させた一本鎖核酸を抗フルオレセイン抗体を使って検出することによる、検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションの検出を実証する。
【0184】
(検出プローブの沈着)
検出プローブとして使用するために汎用チップの表面に固定される5'-GTACGGATAACTACG-3'(配列番号9)という配列を持つオリゴヌクレオチドを、10mM HEPS、50mM LiClおよび0.4mg/ml NeutrAvidinを含むpH7.4の緩衝液に、最終濃度が6μMになるように溶解した。20分後に、その溶液を、12.5%のイソプロパノールを含有するように調節し、その溶液6μlを汎用検出子チップに沈着させた。チップを室温で乾燥し、Stable coatで20分間コーティングした後、減圧乾燥した。結合していない検出プローブを除去するために、チップを10mM HEPS、200mM LiClおよび0.05%Tween 20の溶液(pH7.5)に37℃で15分間浸漬した後、10mM HEPSおよび10mM NaCl(pH7.4)で2回すすいだ。
【0185】
(RC上に存在する識別タグに相補的な配列を有する検出プローブへの環状プローブのハイブリダイゼーション)
5'-GCCTGTCCAGGGATCTGCTCTTACCCTATAGTGAGTCGTATTACGTAGTTATCCGTACCAATACCTGTATTCCTT-3'(配列番号10)という配列を持つ約2.5pMの環状RCプローブ75.03を、
10mM HEPS、1M LiClおよび0.05%Tween 20の緩衝液に溶解した。そのプローブ溶液を、配列番号9の検出プローブを含んでいるチップに移した。次に、そのチップを60℃まで予熱し、60℃で5分間インキュベートした後、30分間室温に冷却した。冷却後に、10mM HEPS、233mM LiClおよび0.05%Tween 20の緩衝液(pH7.4)でチップを洗浄し、次に、200mM NaClを添加した10mM HEPS(pH7.4)ですすいだ。洗浄ステップとすすぎステップの両方を繰り返した。
【0186】
(RCプローブをテンプレートとして検出プローブの3'末端を伸長させるためのRCA反応)
チップに、dNTP類(最終濃度1.5μM)と、100mM KClを添加したφ29ポリメラーゼ緩衝液に溶解したφ29ポリメラーゼ(New England Biolabs)とを加えることによって、RCAを行った。そのRCA伸長反応液を37℃で1時間インキュベートした後、室温で30分間インキュベートした。10mM HEPS、233mM LiClおよび0.05%Tween 20を含むpH7.5の緩衝液でチップを2回洗浄した後、200mM NaClを含む10mM Trisですすいだ。次に、この溶液にチップを浸けた。
【0187】
(伸長されたRCA産物へのシグナルプローブのハイブリダイゼーション)
10mM Tris、1M NaCl、0.05%Tween 20および0.05%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むハイブリダイゼーション緩衝液中で、5'-CCTATAGTGAGTCGT-3'(配列番号11)という配列を持つ0.25μMのフルオレセイン含有シグナルプローブT7-F2と共に、チップをインキュベートした。ハイブリダイゼーションは37℃で10分間行った後、室温でさらに30分間行った。ハイブリダイゼーション後に、0.05%Tween 20を含むPBSで、チップを洗浄した。
【0188】
(抗フルオレセイン抗体を使ったシグナルプローブの検出)
チップを、PODにコンジュゲートした抗フルオレセイン抗体の1:200希釈液と共に、0.5%カゼインおよび0.05%Tween 20を含むPBS緩衝液中、室温で20分間インキュベートした。次に、0.05%Tween 20を含むPBSでチップを洗浄し、K-blue TMBを使ってシグナルを検出した。図4aおよび4bは、検出プローブに相補的なRCプローブを使用した場合(シグナル)にのみシグナル(電流)が生成したことを示している。RCプローブなしの対照(NTC)または検出プローブに非相補的なRCプローブ(NCC)を使って実験を行った場合は、電流は生成しなかった。
【0189】
(実施例6)
〔検出プローブのオンチップ伸長およびアンペロメトリーによるシグナル検出〕
この実施例では、検出プローブの遊離の3'末端から伸長させた一本鎖核酸をアンペロメトリーで検出することによる、検出プローブへの識別子タグのハイブリダイゼーションの検出を実証する。
【0190】
この実験には、RCプローブ75.03(配列番号10)を使用した。RCプローブ75.03は、ヒトゲノムDNAのある領域の一部分(ヒト第V因子配列に相当)にそれぞれ相補的な5'末端および3'末端を持ち、そのようなDNAまたはそのコピーと共にインキュベートすると、5'末端が3'末端に隣接してハイブリダイズし、それら2つの末端間に閉じられていないニックだけが残るようになっている。RCプローブ75.03の5'末端および3'末端に相補的な配列を含むヒトゲノムDNAを、PCRで増幅した。そのPCR産物の一部を、リガーゼ緩衝液、Tthリガーゼおよび約50nMの線状RCプローブ75.03と混合した。その混合物を、温度を交互に95℃で30秒間と60℃で1分間とにして、40サイクルにわたってインキュベートすることにより、プローブ末端のライゲーションを行った。
【0191】
ライゲーション混合物の試料を取り出し、LiClを最終濃度が1Mになるように加えた。次に、その反応混合物を、環化したRCプローブ上に存在する識別子タグに相補的な検出プローブが表面に固定されている汎用検出子チップに加えた。チップを60℃で5分間加熱した後、室温に20分間冷却することにより、プローブを検出子プローブにハイブリダイズさせた。次に、5μM Ru(NH3)63+、10mM Trisおよび10mM NaClを含有するpH7.4のルテニウム検出溶液で、チップを3回洗浄した。
【0192】
ハイブリダイゼーションに続いて、φ29ポリメラーゼ緩衝液、dNTP類、BSA、ピロホスファターゼ、およびφ29ポリメラーゼ(New England Biolabs)を含む緩衝液をチップに加えることによって、RCAを行った。そのRCA伸長反応液を37℃で1時間インキュベートした後、室温で30分間インキュベートした。このインキュベーション後に、5μM Ru(NH3)63+、10mM Trisおよび10mM NaClを含有するpH7.4のルテニウム検出溶液で、チップを3回洗浄した。DNAへのルテニウムの結合をアンペロメトリーで測定した。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】1A.線状のローリングサークル(RC)パッドロックプローブを、テンプレート上の標的ヌクレオチド配列「A」にハイブリダイズさせる。1B.RCプローブの3'末端と5'末端とをライゲートして、標的ヌクレオチド配列Aと識別子タグ配列Xの相補体とを含む環化したRCパッドロックプローブを形成させる。1C.RC増幅によるRCプローブの増幅が、標的ヌクレオチド配列、識別子タグ配列Xおよび増幅産物のトリミングに関与する配列の反復コピーを持つ一本鎖増幅産物を生成させる。
【0194】
【図2】1D.増幅産物をトリミングすることにより、所定の配列と長さを持ち、標的ヌクレオチド配列Aと識別子タグ配列Xとを含有するタグ付き一本鎖DNA分子を生成させる。1E.タグ付きDNA分子を汎用チップと共にインキュベートする。1F.汎用チップ上の相補的検出プローブX'への、識別子タグXを含有するタグ付き分子のハイブリダイゼーション。1G.ホスホジエステルに静電的に結合したRu(III)錯体の電気化学的検出によるハイブリダイゼーションの読出し。
【0195】
【図3】2A.PCR、LCRまたは線形RC増幅などの方法によって作製することができる一本鎖標的配列におけるプライマーの対立遺伝子特異的ライゲーション。一方のプライマー(プロモータープライマー)は、プロモーター配列に接続された標的特異的な領域を持ち、他方(タグプライマー)は、識別子タグ配列に接続された標識特異的な領域を持つ。対立遺伝子特異的ライゲーションが、タグプライマーとプロモータープライマーとを接合して、タグ配列とプロモーター配列とを有するライゲーション産物が生成する。2B.プロモーターオリゴヌクレオチドが、ライゲーション産物中のプロモーター配列にハイブリダイズして、転写を開始するための二本鎖部位を与える。2C.ライゲーション産物の転写により、数コピーの識別子タグ配列が生成する。
【0196】
【図4】2D.識別子タグをチップ上の相補的検出プローブにハイブリダイズさせるために、転写産物を汎用チップにばく露する。2E.タグ配列のハイブリダイゼーションは、ホスホジエステルに静電的に結合したRu(III)錯体の電気化学的検出によって測定されるだろう。
【0197】
【図5】3A.線状RCプローブの対立遺伝子特異的ライゲーションによる、識別子タグ配列を内包する環状RCパッドロックプローブの形成。3B.識別子タグを検出プローブに結合させることによって検出子上に捕捉された環状RCパッドロックプローブ。3C.RCプローブをテンプレートとして用いる、検出プローブの遊離3'末端からの増幅により、RCプローブに相補的な配列の鎖状複数コピーに相当する一本鎖核酸が形成される。次に、伸長された核酸配列をアンペロメトリーによって検出する。
【0198】
【図6】4A.検出プローブに相補的なRCプローブ(シグナル)、RCプローブなしの対照(NTC)、および検出プローブに非相補的なRCプローブ(NCC)を使うことによって生成するシグナルに関して、アンペロメトリーによって検出される経時的な電流のプロット。4B.検出プローブに相補的なRCプローブ(シグナル)、RCプローブなしの対照(NTC)、および検出プローブに非相補的なRCプローブ(NCC)を使うことによって生成する電流を比較したグラフ。
【配列表】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の標的ヌクレオチド配列を検出する方法であって、
a)前記標的ヌクレオチド配列用の識別子として選択された少なくとも1つの識別子タグを含む少なくとも1つのタグ付き分子を生成させること(前記識別子タグは、前記識別子タグに対応する前記標的ヌクレオチド配列が前記試料中に存在する場合にのみ生成する)、
b)前記少なくとも1つのタグ付き分子を、前記識別子タグに相補的な少なくとも1つの検出プローブを持つ汎用検出子と共にインキュベートすること、および
c)前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションを測定すること、
を含み、前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションは、前記試料中に、前記識別子タグに対応する前記標的ヌクレオチド配列が存在することを示す方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのタグ付き分子が、さらに、前記標的ヌクレオチド配列のコピーまたは相補体を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記汎用検出子が、前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションを前記のとおり測定するための検出手段に連結された検出プローブを含む、請求項1の方法。
【請求項4】
前記検出手段が、電気化学的手段、蛍光的手段、比色的手段、放射測定的手段または磁気的手段である、請求項3の方法。
【請求項5】
前記検出手段が電気化学的手段である、請求項3の方法。
【請求項6】
検出手段に連結された前記検出プローブが表面、薄膜または粒子に取り付けられる、請求項3の方法。
【請求項7】
前記検出プローブが、前記表面、薄膜または粒子に、共有結合、イオン結合、静電的相互作用、または吸着によって取り付けられる、請求項6の方法。
【請求項8】
前記検出プローブがビーズなどの粒子に取り付けられる、請求項6の方法。
【請求項9】
前記検出プローブが複数の粒子に取り付けられる、請求項6の方法。
【請求項10】
前記汎用検出子が検出手段に連結された検出プローブのアレイを含み、前記アレイは基板に取り付けられた電極を含む、請求項3の方法。
【請求項11】
前記電極が金または炭素である、請求項10の方法。
【請求項12】
電極が金である、請求項11の方法。
【請求項13】
さらに、前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションをルテニウムアンペロメトリーによって測定することを含む、請求項10の方法。
【請求項14】
前記電極がタンパク質で被覆され、そのタンパク質には、前記電極を被覆する前記タンパク質を結合する部分で誘導体化されたオリゴヌクレチドを結合させることができる、請求項10の方法。
【請求項15】
前記電極をアビジンで被覆して、前記電極にビオチン標識オリゴヌクレオチドを結合させることができるようにする、請求項14の方法。
【請求項16】
試料中の標的ヌクレオチド配列を検出する方法であって、
a)前記標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含むテンプレートを取得すること、
b)前記テンプレートを増幅することにより、前記標的ヌクレオチド配列用の識別子として選択された少なくとも1つの識別子タグを含む少なくとも1つのタグ付き分子を生成させること、
c)前記少なくとも1つののタグ付き分子を、検出手段に連結された検出プローブを含む汎用検出子と共にインキュベートすること(前記検出プローブは、前記識別子タグに相補的な検出プローブを少なくとも1つは含む)、
d)前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションを検出すること、
を含み、任意の前記相補的検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションは、アッセイ対象である試料中に、対応する標的ヌクレオチド配列が存在することを示す方法。
【請求項17】
試料中の複数の標的ヌクレオチド配列を検出するための請求項16の方法であって、前記複数の標的ヌクレオチド配列中の各標的ヌクレオチド配列が相異なる識別子タグを持ち、相補的検出プローブへの各前記相異なる識別子タグのハイブリダイゼーションが、対応する標的ヌクレオチド配列の存在を示すようになっている方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのタグ付き分子が前記識別子タグにも前記標的ヌクレオチド配列にも見いだされない外来ヌクレオチド配列を含む、請求項16の方法。
【請求項19】
前記外来配列がタグ付き分子のトリミングに関与する配列であり、前記方法がさらに、前記少なくとも1つのタグ付き分子をトリミングすることにより、少なくとも1つの、より小さいタグ付き分子を生成させることを含む、請求項18の方法。
【請求項20】
前記テンプレートの前記増幅が、
a)標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含む前記テンプレートに相補的な配列を含み、かつ前記標的ヌクレオチド配列用の識別子として選択された前記識別子タグに相補的な配列も含む、ローリングサークル(RC)プローブを用意するステップ、
b)前記RCプローブを前記テンプレートと共に、前記RCプローブが前記テンプレート上の相補的配列にハイブリダイズすることになるような条件下でインキュベートするステップ、
c)ポリメラーゼ酵素を、前記ポリメラーゼが前記RCプローブを複製して、前記識別子タグ、および前記標的ヌクレオチド配列またはその相補体の反復コピーを持つタグ付き分子を含む少なくとも1つの増幅産物を生成させるような条件下で、提供するステップ、
d)前記増幅産物を、検出手段に連結された検出プローブを含む汎用検出子と共に、インキュベートするステップ(前記検出プローブは、前記識別子タグに相補的な検出プローブを少なくとも1つは含む)、および
e)前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの、前記増幅産物中の任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションを検出するステップ、
を含むローリングサークル(RC)増幅を含み、任意の前記相補的検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションは、アッセイ対象である試料中に、対応する標的ヌクレオチド配列が存在することを示す、請求項16の方法。
【請求項21】
ステップa)で用意される前記RCプローブが環状RCプローブである、請求項20の方法。
【請求項22】
ステップa)で用意されるRCプローブが線状であり、ステップb)はさらに、前記RCプローブの3'末端と前記RCプローブの5'末端とが前記テンプレート上の連続した相補的配列に隣接してハイブリダイズし、前記3'末端と前記5'末端とがライゲートされて環状RCパッドロックプローブを形成するような条件下で、前記RCプローブを前記テンプレートと共にインキュベートすることを含む、請求項20の方法。
【請求項23】
前記テンプレートがDNAまたはRNAである、請求項20の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの増幅産物が、さらに、前記識別子タグにも、標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含む前記テンプレートにも見いだされない外来配列を含む、請求項20の方法。
【請求項25】
前記外来配列が、前記増幅産物へのプライマー結合、前記増幅産物におけるポリメラーゼプロモーターの形成、または前記増幅産物のトリミングに関与する、請求項24の方法。
【請求項26】
前記増幅産物のトリミングに関与する前記外来配列が、ヘアピン構造を形成する自己相補的配列を含む、請求項25の方法。
【請求項27】
ヘアピン構造を形成する前記自己相補的配列が、前記トリミングに関与する制限酵素の制限酵素認識部位を少なくとも1つは含む、請求項26の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つの外来ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの補助オリゴヌクレオチドを添加した時に、前記トリミングに関与する制限酵素の制限酵素認識部位を少なくとも1つは形成する配列を含む、請求項25の方法。
【請求項29】
前記テンプレートの前記増幅が、
a)前記標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含む前記テンプレートの一部分に相補的な配列の3'部分を有する第1ライゲーションプライマーと、標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含む前記テンプレートの連続した一部分に相補的な配列の5'部分を有する第2ライゲーションプライマーとを含み、かつ少なくとも1つのライゲーションプライマーはさらに前記標的ヌクレオチド配列用の識別子として選択された識別子タグを含む、少なくとも1対のライゲーションプライマーを用意すること、
b)前記第1ライゲーションプライマーの前記3'末端が前記第2ライゲーションプライマーの前記5'末端に隣接してハイブリダイズする形で、前記第1および第2ライゲーションプライマーが前記テンプレートにハイブリダイズすることになるような条件下で、前記少なくとも1対のライゲーションプライマーを前記テンプレートと共にインキュベートすること、
c)前記第1ライゲーションプライマーの前記3'末端を、前記第2ライゲーションプライマーの前記5'末端にライゲートすることにより、タグ付き分子を含むライゲーション産物を生成させること(前記タグ付き分子は、前記標的ヌクレオチド配列のコピーまたは相補体を含み、かつ前記標的ヌクレオチド配列に対応する識別子タグを少なくとも1つは含む)、
d)前記ライゲーション産物を、検出手段に連結された検出プローブを含む汎用検出子と接触させること(前記検出プローブは、前記識別子タグに相補的な検出プローブを少なくとも1つは含む)、および
e)前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの、前記ライゲーション産物中の任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションを検出すること、
を含む、ライゲーションによる増幅(ligation-mediated amplification)を含み、任意の前記の相補的検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションは、アッセイ対象である試料中に、対応する標的ヌクレオチド配列が存在することを示す、請求項16の方法。
【請求項30】
前記テンプレートが標的ヌクレオチド配列を含み、前記第1ライゲーションプライマーが前記標的ヌクレオチド配列の一部分に相補的な配列を含むと共に、前記第2ライゲーションプライマーが前記標的ヌクレオチド配列の連続した一部分に相補的な配列を含むようになっていて、その結果、前記第1ライゲーションプライマーと前記第2ライゲーションプライマーとはテンプレートの連続した部分にハイブリダイズし、ライゲートされて、識別子タグと前記標的ヌクレオチド配列に相補的な配列とを含むライゲーション産物を生成する、請求項29の方法。
【請求項31】
前記テンプレートが標的ヌクレオチド配列の相補体を含み、前記第1ライゲーションプライマーが前記標的配列の一部分を含むと共に、前記第2ライゲーションプライマーが前記標的ヌクレオチド配列の連続した一部分を含むようになっていて、その結果、前記第1ライゲーションプライマーと前記第2ライゲーションプライマーとはテンプレートの連続した部分にハイブリダイズし、ライゲートされて、識別子タグと前記標的ヌクレオチド配列とを含むライゲーション産物を生成する、請求項29の方法。
【請求項32】
前記第2ライゲーションプライマーの前記5'末端への前記第1ライゲーションプライマーの前記第3'末端の前記ライゲーションが、酵素的手段によって行われる、請求項29の方法。
【請求項33】
前記酵素的手段がリガーゼである、請求項32の方法。
【請求項34】
前記第2ライゲーションプライマーの前記5'末端への前記第1ライゲーションプライマーの前記3'末端の前記ライゲーションが、非酵素的手段によって行われる、請求項29の方法。
【請求項35】
前記インキュベーションおよびライゲーションステップが、前記標的ヌクレオチド配列を増幅するために、温度サイクリングを使って繰り返される、請求項29の方法。
【請求項36】
複数の標的ヌクレオチド配列を検出するための請求項29の方法であって、複数のライゲーションプライマー対を用意することを含み、前記複数の対のうち少なくとも1つの前記ライゲーションプライマー対は、前記複数の標的ヌクレオチド配列の各標的ヌクレオチド配列に相補的であり、さらに、各前記対のうち少なくとも一方のライゲーションプライマーは前記標的ヌクレオチド配列用の識別子として役立つように選択された識別子タグを含む、請求項29の方法。
【請求項37】
前記方法が、前記標的ヌクレオチド配列の少なくとも1つの変異体配列を検出することを含む、請求項29の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つの変異体配列が一塩基多型(SNP)、対立遺伝子変異体、またはスプライス変異体である、請求項37の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つの変異体配列がSNPである、請求項38の方法。
【請求項40】
試料中の標的ヌクレオチド配列を検出する方法であって、
a)前記標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含むテンプレートを取得すること、
b)前記テンプレートの一部分に相補的な配列の3'部分を有する第1ライゲーションプライマーと、前記テンプレートの連続した部分に相補的な配列の5'部分を有する第2ライゲーションプライマーとを含む、少なくとも1対のライゲーションプライマーであって、前記ライゲーションプライマー対の各ライゲーションプライマーが、さらに、前記テンプレートに相補的でない外来配列を含むものを用意すること、
c)前記第1ライゲーションプライマーの前記3'末端が前記第2ライゲーションプライマーの前記5'末端に隣接してハイブリダイズする形で、前記第1および第2ライゲーションプライマーが前記テンプレートにハイブリダイズすることになるような条件下で、前記少なくとも1対のライゲーションプライマーを前記テンプレートと共にインキュベートすること、
d)前記第1ライゲーションプライマーの前記3'末端を、前記第2ライゲーションプライマーの前記5'末端にライゲートすることにより、前記標的ヌクレオチド配列のコピーまたは相補体を含み、かつ前記テンプレートに相補的でない外来3'および5'配列も含むライゲーション産物を生成させること、
e)前記ライゲーション産物に相補的な配列を含み、かつ前記標的ヌクレオチド配列用の識別子として役立つように選択された識別子タグに相補的な配列も含むローリングサークル(RC)プローブ(前記ライゲーション産物に相補的な前記配列は、前記標的ヌクレオチド配列またはその相補体に相補的な配列を含み、その隣に前記ライゲーション産物の前記外来配列に相補的な配列を持つ)を用意すること、
f)前記RCプローブが前記ライゲーション産物にハイブリダイズすることになるような条件下で、前記RCプローブを前記ライゲーション産物と共にインキュベートすること、
g)ポリメラーゼ酵素を、前記ポリメラーゼが前記RCプローブを複製して、タグ付き分子を含む少なくとも1つの増幅産物(前記タグ付き分子は、前記識別子タグの反復コピーおよび前記標的ヌクレオチド配列またはその相補体の反復コピーを含む)を生成させるような条件下で、提供すること、
h)各前記増幅産物を、検出手段に連結された検出プローブを含む汎用検出子と共にインキュベートすること(前記検出プローブは、前記識別子タグに相補的な検出プローブを少なくとも1つは含む)、および
i)前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの、前記増幅産物中の任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションを検出すること、
を含み、任意の前記相補的検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションは、アッセイ対象である試料中に、対応する標的ヌクレオチド配列が存在することを示す方法。
【請求項41】
ステップe)で用意される前記RCプローブが環状RCプローブである、請求項40の方法。
【請求項42】
ステップe)で用意される前記RCプローブが線状であり、ステップf)はさらに、前記RCプローブの3'末端と前記RCプローブの5'末端とが前記テンプレート上の連続した相補的配列に隣接してハイブリダイズし、前記線状RCプローブの前記3'末端と前記5'末端とがライゲートされて環状RCパッドロックプローブを形成するような条件下で、前記RCプローブを、前記標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含む前記ライゲーション産物と共にインキュベートすることを含む、請求項40の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つの増幅産物が、さらに、前記ライゲーション産物には見いだされない外来配列を含む、請求項40の方法。
【請求項44】
前記外来配列が、前記増幅産物へのプライマー結合、前記増幅産物におけるポリメラーゼプロモーターの形成、または前記増幅産物のトリミングに関与する、請求項43の方法。
【請求項45】
前記増幅産物のトリミングに関与する前記外来配列が、ヘアピン構造を形成する自己相補的配列を含む、請求項44の方法。
【請求項46】
ヘアピン構造を形成する前記自己相補的配列が、前記トリミングステップに関与する制限酵素の制限酵素認識部位を少なくとも1つは含む、請求項45の方法。
【請求項47】
前記少なくとも1つの外来ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの補助オリゴヌクレオチドを添加した時に、前記トリミングステップに関与する制限酵素の制限酵素認識部位を少なくとも1つは形成する配列を含む、請求項44の方法。
【請求項48】
a)一組の、最小限にしかクロスハイブリダイズしないタグおよびプローブであって、少なくとも1つのタグが、アッセイ対象である試料中の標的用の識別子タグとして役立ち、各前記識別子タグが前記組内に少なくとも1つの相補的検出プローブを持つように選択されたもの、
b)少なくとも1つの前記識別子タグを含む少なくとも1つのタグ付き分子(前記識別子タグは、前記識別子タグに対応する前記標的が、アッセイ対象である前記試料中に存在する場合にのみ生成する)、および
c)任意の前記相補的検出プローブへの前記任意の識別子タグのハイブリダイゼーションを測定することができるように検出手段に連結された少なくとも1つの前記検出プローブを含む汎用検出子、
を含み、任意の前記相補的検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションの測定は、アッセイ対象である前記試料中に、前記識別子タグに対応する前記標的が存在することを示す、汎用タグアッセイ。
【請求項49】
前記少なくとも1つのタグ付き分子が、ある標的用の識別子タグを含み、かつ前記標的のコピーまたは相補体も含む、請求項48の汎用タグアッセイ。
【請求項50】
前記少なくとも1つのタグ付き分子が、ある標的用の識別子タグ分子を含み、かつ前記標的のコピーまたは相補体を含有しない、請求項48の汎用タグアッセイ。
【請求項51】
請求項48の汎用タグアッセイでの使用に適した一組の相補的タグおよびプローブであって、前記の組は、最小限にしかクロスハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドを含み、前記相補的タグおよびプローブによって形成される全ての二重鎖は、ほぼ同じ融解温度およびスタッキングエネルギーを持つ、一組の相補的タグおよびプローブ。
【請求項52】
試料中の標的ヌクレオチドを検出する方法であって、
a)前記標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含むテンプレートを取得すること、
b)前記テンプレートの少なくとも一部分に相補的な3'末端および5'末端を含み、かつ前記標的ヌクレオチド配列用の識別子として選択された識別子タグも含む、ローリングサークル(RC)プローブを取得すること、
c)前記3'末端と前記5'末端とが前記テンプレート上の連続した相補的配列に隣接してハイブリダイズし、前記3'末端と前記5'末端とがライゲートされて環状RCパッドロックプローブを形成するように、前記テンプレートを前記RCプローブと共にインキュベートすること、
d)前記環状RCパッドロックプローブを、検出成分に連結された検出プローブを含む汎用検出子と共にインキュベートすること(前記検出プローブは、前記識別子タグに相補的な検出プローブを少なくとも1つは含む)、
e)前記検出プローブの3'末端から重合を開始させることにより、前記RCプローブに相補的なヌクレオチド配列を含む伸長産物を生成させること、
f)前記RCプローブに相補的な前記ヌクレオチド配列の存在を検出すること、
を含み、前記RCプローブに相補的な前記ヌクレオチド配列の存在が、アッセイ対象である試料中に、対応する標的ヌクレオチド配列が存在することを示す方法。
【請求項53】
前記試料が、それぞれに1つ以上の標的ヌクレオチド配列を有する複数のテンプレートを含み、前記複数のテンプレート中の各標的ヌクレオチド用の各RCプローブが相異なる識別子タグを持っていて、相補的検出プローブへの各前記相異なる識別子タグのハイブリダイゼーションが、対応する標的ヌクレオチド配列の存在を示すようになっている、請求項52の方法。
【請求項54】
前記伸長産物が、前記識別子タグにも前記標的ヌクレオチド配列にも見いだされない外来ヌクレオチド配列を含む、請求項52の方法。
【請求項55】
前記外来配列が、前記伸長産物のトリミングに関与する配列であり、前記方法が、さらに、前記少なくとも1つの伸長産物をトリミングすることにより、少なくとも1つの、より小さい伸長産物を生成させることを含む、請求項54の方法。
【請求項56】
前記方法が、前記標的ヌクレオチド配列の少なくとも1つの変異体配列を検出することを含む、請求項52の方法。
【請求項57】
前記少なくとも1つの変異体配列が一塩基多型(SNP)、対立遺伝子変異体、またはスプライス変異体である、請求項56の方法。
【請求項58】
前記少なくとも1つの変異体配列がSNPである、請求項56の方法。
【請求項59】
前記テンプレートがDNAまたはRNAである、請求項52の方法。
【請求項60】
前記RCプローブに相補的な前記ヌクレオチド配列の存在がアンペロメトリーによって検出される、請求項52の方法。
【請求項61】
前記RCプローブが、さらに、シグナルタグに相補的な核酸配列も含む、請求項52の方法。
【請求項62】
前記シグナルタグがシグナルプローブに相補的である、請求項61の方法。
【請求項63】
前記シグナルプローブがフルオレセインを含む、請求項62の方法。
【請求項64】
前記RCプローブに相補的な前記ヌクレオチド配列の存在が抗体を使って検出される、請求項52の方法。
【請求項65】
前記抗体が抗フルオレセイン抗体である、請求項64の方法。
【請求項66】
試料中の標的ヌクレオチド配列を検出する方法であって、
a)検出成分に連結された検出プローブを含む汎用検出子を取得すること、
b)標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含むテンプレートを前記汎用検出子と接触させること、
c)前記テンプレートを増幅することにより、前記標的ヌクレオチド配列用の識別子として選択された少なくとも1つの識別子タグを含む少なくとも1つのタグ付き分子を生成させること、および
d)前記識別子タグに相補的な任意の前記検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションを検出すること、
を含み、任意の前記相補的検出プローブへの任意の前記識別子タグのハイブリダイゼーションは、アッセイ対象である試料中に、対応する標的ヌクレオチド配列が存在することを示す方法。
【請求項67】
前記試料が、それぞれに1つ以上の標的ヌクレオチド配列を有する複数のテンプレートを含み、前記複数のテンプレート中の各標的ヌクレオチド用の各タグ付き分子が相異なる識別子タグを持っていて、相補的検出プローブへの各前記相異なる識別子タグのハイブリダイゼーションが、対応する標的ヌクレオチド配列の存在を示すようになっている、請求項66の方法。
【請求項68】
前記少なくとも1つのタグ付き分子が、前記識別子タグにも前記標的ヌクレオチド配列にも見いだされない外来ヌクレオチド配列を含む、請求項66の方法。
【請求項69】
前記外来配列が、タグ付き分子のトリミングに関与する配列であり、前記方法が、さらに、前記少なくとも1つのタグ付き分子をトリミングすることにより、少なくとも1つの、より小さいタグ付き分子を生成させることを含む、請求項68の方法。
【請求項70】
前記テンプレートの前記増幅が、
a)標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含む前記テンプレートに相補的な配列を含み、かつ前記標的ヌクレオチド配列用の識別子として選択された前記識別子タグに相補的な配列も含む、ローリングサークル(RC)プローブを用意するステップ、
b)前記RCプローブを前記テンプレートと共に、前記RCプローブが前記テンプレート上の相補的配列にハイブリダイズすることになるような条件下でインキュベートするステップ、
c)ポリメラーゼ酵素を、前記ポリメラーゼが前記RCプローブを複製して、前記識別子タグおよび前記標的ヌクレオチド配列またはその相補体の反復コピーを持つタグ付き分子を含む少なくとも1つの増幅産物を生成させるような条件下で、提供するステップ、
を含むローリングサークル(RC)増幅を含む、請求項66の方法。
【請求項71】
ステップa)で用意される前記RCプローブが環状RCプローブである、請求項70の方法。
【請求項72】
ステップa)で用意されるRCプローブが線状であり、ステップb)はさらに、前記RCプローブの3'末端と前記RCプローブの5'末端とが前記テンプレート上の連続した相補的配列に隣接してハイブリダイズし、前記3'末端と前記5'末端とがライゲートされて環状RCパッドロックプローブを形成するような条件下で、前記RCプローブを前記テンプレートと共にインキュベートすることを含む、請求項70の方法。
【請求項73】
前記テンプレートがDNAまたはRNAである、請求項70の方法。
【請求項74】
前記少なくとも1つの増幅産物が、さらに、前記識別子タグにも、標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含む前記テンプレートにも見いだされない外来配列を含む、請求項70の方法。
【請求項75】
前記外来配列が、前記増幅産物へのプライマー結合、前記増幅産物におけるポリメラーゼプロモーターの形成、または前記増幅産物のトリミングに関与する、請求項74の方法。
【請求項76】
前記増幅産物のトリミングに関与する前記外来配列が、ヘアピン構造を形成する自己相補的配列を含む、請求項75の方法。
【請求項77】
ヘアピン構造を形成する前記自己相補的配列が、前記トリミングに関与する制限酵素の制限酵素認識部位を少なくとも1つは含む、請求項76の方法。
【請求項78】
前記少なくとも1つの外来ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの補助オリゴヌクレオチドを添加した時に、前記トリミングに関与する制限酵素の制限酵素認識部位を少なくとも1つは形成する配列を含む、請求項75の方法。
【請求項79】
前記方法が、前記標的ヌクレオチド配列の少なくとも1つの変異体配列を検出することを含む、請求項72の方法。
【請求項80】
前記少なくとも1つの変異体配列が一塩基多型(SNP)、対立遺伝子変異体、またはスプライス変異体である、請求項79の方法。
【請求項81】
前記少なくとも1つの変異体配列がSNPである、請求項79の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−507014(P2006−507014A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507099(P2005−507099)
【出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/035378
【国際公開番号】WO2004/044549
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(504377851)ジーンオーム サイエンシーズ、インク. (9)
【Fターム(参考)】