説明

汚染成分の処理方法

【課題】大量の汚染成分吸着剤を用いることなく、有効に汚染成分を吸着除去できる汚染成分の処理方法を提供する。
【解決手段】汚染媒体中に含まれ、吸着剤による汚染成分の吸着を阻害する陰イオンを、マグネシウム系処理剤で処理して難溶性塩として安定化させる第1処理工程と、前記陰イオン量を低減させた前記汚染媒体中に含まれる汚染成分を、希土類系吸着剤又は鉄系吸着剤を用いて除去する第2処理工程とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属等の汚染成分を吸着除去するための処理方法、特に、高価な吸着剤を大量に用いることなく、汚染成分を有効に吸着除去できる処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セレンやヒ素等の汚染成分を含有した媒体(土壌、水など)の処理方法としては、汚染した土壌を掘削・除去したり、水硬性のセメント等を用いることで、前記汚染土壌を固定化したり、薬剤等を用いて、前記汚染成分を水に溶けにくく拡散しにくい形態に変化させるなどの技術が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1では、鉄等の金属からなる一対の電極にセレンを含有する水溶液を接触させ、通電することで、前記電極を溶解させて前記電極をなす物質の水酸化物と共にセレンを凝集除去する回収方法が開示されている。また、特許文献2では、第二鉄塩からなる凝集剤を用いて、重金属含有水の処理を行う方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献3では、セレン含有廃水中に、1価の陰イオンを化学吸着できる化合物若しくは1価の陰イオンを化学吸着できる化合物を生成する化合物、2価のバリウムイオンと不溶性の化合物を形成する陰イオンを生成する溶解性の化合物若しくはその混合物並びに溶解して2価のバリウムイオンを生成するバリウム化合物若しくはその混合物を添加して攪拌することによって、廃水中のセレンを不溶性化合物として沈殿除去する処理方法が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献4では、還元性物質を担持したイオン交換樹脂を用いて、セレンを吸着除去する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献5では、シダ植物を用いることによって、汚染媒体からヒ素等の金属汚染成分を回収除去する技術が開示されている。
【0007】
さらにまた、特許文献6では、所定のハイドロタルサイト微粒子によって、共存する陰イオン等の妨害を受けることなく硝酸イオン又はヒ素イオン等を吸着除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−147907号公報
【特許文献2】特開平10−296275号公報
【特許文献3】特開平11−221576号公報
【特許文献4】特開平10−137753号公報
【特許文献5】特表2002−540943号公報
【特許文献6】特開2009−178682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜5の技術については、以下の問題があった。
特許文献1及び2の技術は、汚染媒体中に汚染成分のみが含有される場合には高い吸着性能を発揮できるものの、汚染成分以外の共存成分(共存イオン)の影響を受けやすく、共存イオンの存在によって凝集材の凝集性能が低下する結果、理論値よりも大量の凝集剤が必要となり、汚染成分の効果的な除去が行えないという問題があった。
また、特許文献3の技術についても、共存成分として陰イオンが存在する場合には、陰イオンが所定の化合物と反応して不溶性化合物を形成する結果、汚染成分の除去性能が大幅に低下するという問題があった。
【0010】
特許文献4の技術は、汚染成分の共存成分として硫酸イオンや硝酸イオンが存在する場合、それらが吸着阻害成分として働く結果、汚染成分の吸着性能が大きく低下するという問題があった。さらに、イオン交換樹脂は高価であるため、汚染成分の処理に要するコストが増大する恐れがあった。
【0011】
特許文献5の技術は、汚染成分の除去に要する時間が長くなるという問題や、他の技術に比べて汚染成分の除去性能が低いという問題があった。
【0012】
特許文献6の技術は、共存する陰イオン(硝酸イオン、リン酸イオン)及び汚染成分を同時に吸着できるものの、汚染成分としてヒ素を含有する場合には、吸着した後の廃棄処理等の管理が複雑であり、陰イオン等の共存成分とはその後の処理方法が異なることから、ヒ素などの汚染成分と、共存成分とを分けて処理することが、作業の効率化やコスト低減の観点から好ましい。
【0013】
本発明の目的は、大量の汚染成分吸着剤を用いることなく、有効に汚染成分を吸着除去できる汚染成分の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、汚染成分の処理方法について鋭意研究を重ねた。その結果、汚染媒体中に含まれ、吸着剤による汚染成分の吸着を阻害する陰イオンを、マグネシウム系処理剤で処理して難溶性塩として安定化させる第1処理工程と、前記陰イオン量を低減させた前記汚染媒体中に含まれる汚染成分を、希土類系吸着剤又は鉄系吸着剤を用いて除去する第2処理工程とを備えることで、第1処理工程のマグネシウム系処理剤によって、陰イオンを有効に除去し、汚染成分吸着の阻害要因を取り除くことができるとともに、第2処理工程によって、セレンやヒ素などの汚染成分を有効に吸着除去できることを見出した。
【0015】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(1)汚染媒体中に含まれ、吸着剤による汚染成分の吸着を阻害する陰イオンを、マグネシウム系処理剤で処理して難溶性塩として安定化させる第1処理工程と、前記陰イオン量を低減させた前記汚染媒体中に含まれる汚染成分を、希土類系吸着剤又は鉄系吸着剤を用いて除去する第2処理工程とを備えることを特徴とする汚染成分の処理方法。
【0016】
(2)前記陰イオンは、硫酸イオン又はリン酸イオンである上記(1)に記載の汚染成分の処理方法。
【0017】
(3)前記マグネシウム系処理剤は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は水酸化マグネシウムを375〜750℃で加熱してなるマグネシウム化合物である上記(1)又は(2)に記載の汚染成分の処理方法。
【0018】
(4)前記希土類系吸着剤は、酸化セリウム、水酸化セリウム、酸化ランタン、水酸化ランタン及びこれらの水和物から選択される1種以上である上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の汚染成分の処理方法。
【0019】
(5)前記鉄系吸着剤は、酸化鉄、水酸化鉄又はシュベルトマナイトである上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の汚染成分の処理方法。
【0020】
(6)前記第1処理工程は、前記汚染媒体のpHを3〜12の範囲に調整して行われる上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の汚染成分の処理方法。
【0021】
(7)前記pHの調整は、水酸化ナトリウム、消石灰、石灰石、炭酸カルシウム及び水酸化マグネシウムから選択される1種以上を用いて行う上記(6)に記載の汚染成分の処理方法。
【0022】
(8)前記第1処理工程は、前記難溶性塩を分離除去することをさらに含む上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の汚染成分の処理方法。
【0023】
(9)前記難溶性塩の分離除去は、PAC又は塩化鉄からなる凝集剤を用いて行う上記(8)に記載の汚染成分の処理方法。
【0024】
(10)前記第2処理工程は、前記汚染媒体のpHを3〜11の範囲に調整して行われる上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の汚染成分の処理方法。
【0025】
(11)前記汚染成分は、ヒ素、フッ素、ホウ素、セレン、鉛、クロム、カドミウム、マンガン、アンチモン、亜鉛、ニッケル、コバルト及びリチウムから選択された1種以上の成分である上記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の汚染成分の処理方法。
【0026】
本発明によれば、大量の汚染成分吸着剤を用いることなく、有効に汚染成分を吸着除去できる汚染成分の処理方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による汚染成分の処理方法を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明による汚染成分の処理方法について、図面を用いて説明する。
本発明による汚染成分の処理方法は、図1に示すように、汚染媒体中に含まれ、吸着剤による汚染成分の吸着を阻害する陰イオンを、マグネシウム系処理剤で処理して難溶性塩として安定化させる第1処理工程(図1(a))と、第1処理工程後に、前記陰イオン量を低減させた前記汚染媒体中に含まれる汚染成分を、希土類系吸着剤又は鉄系吸着剤を用いて除去する第2処理工程(図1(b))とを備えることを特徴とする。
【0029】
上記構成を採用すれば、第1処理工程(図1(a))に用いられるマグネシウム系処理剤が、前記汚染媒体中に含有される陰イオンと難溶性塩を形成することによって、吸着剤による汚染成分吸着の阻害要因となる前記陰イオンを汚染媒体中から取り除くことができるとともに、第2処理工程(図1(b))に用いられる希土類系吸着剤又は鉄系吸着剤が、前記陰イオンによって阻害されることなくセレンやヒ素などの汚染成分を吸着除去できる結果、大量に汚染成分吸着剤を用いることなく、有効な汚染成分を吸着除去が可能となる。
【0030】
ここで、吸着剤による汚染成分吸着の阻害要因となる陰イオンとは、例えば、硫酸イオン又はリン酸イオン等が挙げられる。これらの陰イオンは、前記汚染成分より早く、吸着剤と反応して塩を形成することで、汚染成分吸着剤による汚染成分の吸着を阻害するものである。
【0031】
前記第1処理工程(図1(a))に用いられるマグネシウム系処理剤とは、マグネシウムを含有する処理剤のことである。例えば、酸化マグネシウム等のマグネシウム系処理剤は、前記汚染性文中の陰イオンと反応して、難溶性の(再び陰イオンの形態になり難い)塩(化合物)を形成する結果、後述する第2処理工程(図1(b))におけるヒ素やセレン等の汚染成分の吸着処理を、前記陰イオンによって阻害されることなく行うことが可能となる。さらに、前記マグネシウム系処理剤は、希土類系吸着剤や鉄系吸着剤に比べて、安価(およそ1/20〜1/5程度)であり、希土類系吸着剤や鉄系吸着剤を単独で用いて処理を行う場合に比べて、処理の低コスト化を図ることができる。加えて、前記マグネシウム系処理剤は、ヒ素やセレンなどの汚染成分に対する吸着性能が低いため、一旦吸着された汚染成分が環境の変化等によって再溶出するという恐れもない。
【0032】
また、前記マグネシウム系処理剤は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は水酸化マグネシウムを375〜750℃で加熱してなるマグネシウム化合物であることが好ましい。これらの材料は、低コストで製造でき、前記陰イオンとの反応性も高いためであり、その他の材料からなるマグネシウム系処理剤を用いた場合、十分にコストの低減を図れない恐れや、陰イオンの除去性能を確保できない恐れがある。
【0033】
さらに、より高い汚染成分吸着性能を発揮できる点から、前記水酸化マグネシウムを375〜750℃で加熱してなるマグネシウム化合物を用いることが好ましい。ここで、前記水酸化マグネシウムを用いるのは、水酸化マグネシウム以外の材料から前記マグネシウム化合物を得ようとする場合には、所望のマグネシウム化合物を得ることができない恐れがあるためである。また、加熱温度を限定したのは、水酸化マグネシウムの加熱温度が350℃未満の場合には、加熱による結晶構造の変化が十分に進行せず、マグネシウム化合物の汚染成分吸着性能が低下する恐れがあり、一方、加熱温度が750℃を超える場合には、水酸化マグネシウムからの結晶構造の変化が進行しすぎる結果、酸化マグネシウムとほぼ同様の物質となり、汚染成分吸着性能が低下する恐れがあるからである。また、前記マグネシウム化合物の汚染性分除去性能をさらに高めようとする場合には、加熱温度を400〜600℃の範囲にすることがより好ましく、500℃近傍とすることが最も好適である。
なお、従来から、酸化マグネシウムは、汚染土壌の不溶化材として用いられ、セメント系固化材の代替として用いられ、強度性能を有するため、固化材として用いられることが多く、一方、水酸化マグネシウムは、十分な強度性能を有していないため、これまでは用いられていなかった。さらに、本発明のように、水酸化マグネシウムを原料として、375〜750℃の温度範囲で加熱することによって、水酸化マグネシウムでも酸化マグネシウムでもなく、結晶構造の適正化が図られた高い汚染成分除去性能を有するマグネシウム化合物を得るという技術は、これまでにはない。
【0034】
また、前記第1処理工程(図1(a))は、前記汚染媒体のpHを3〜12の範囲に調整して行われることが好ましく、さらにはpHを7〜12の範囲に調整して行われることがより好適である。pHが7未満では、前記マグネシウム化合物の処理効率が下がるため、多くの薬剤が必要となる。さらに、pHが3未満の場合は、pHが低すぎるため、前記マグネシウム化合物と水素イオンとが反応し、汚染成分の吸着に適した化学構造を長時間維持できない恐れがある。一方、pHが12を超えると、pHが高すぎるため、その後の吸着剤で処理する工程においてpHの調整が必要となり、作業効率の低下を招く恐れがある。
【0035】
さらに、前記pHの調整は、水酸化ナトリウム、消石灰、石灰石、炭酸カルシウム及び水酸化マグネシウムから選択される1種以上を用いて行うことが好ましい。これらの材料を用いれば、容易かつ確実にpHを3〜12の範囲に調整することができるためである。
【0036】
さらにまた、前記第1処理工程(図1(a))は、前記前記難溶性塩を分離除去することをさらに含む処理を行うことが好ましい。前記難溶性塩を残存させた状態で第2処理工程に進んだ場合、再び前記陰イオンが溶出し、第2処理工程における汚染成分の吸着を阻害する恐れがあるからである。
【0037】
また、前記第2処理工程(図1(b))に用いられる前記希土類系吸着剤とは、希土類元素の酸化物、水酸化物又は水和物のことである。具体的な種類については、汚染成分に対して高い吸着性能を有するものであれば、汚染媒体の性状(pH、酸化還元電位等)や、汚染成分の種類、汚染成分除去後の媒体の処理方法(そのまま放置する、放流する、中和処理する等)に応じて、適宜選択することができ、特に限定はしない。ただし、前記汚染成分に対する高い吸着性能を確実に発揮できる点から、前記希土類系吸着剤は、酸化セリウム、水酸化セリウム、酸化ランタン、水酸化ランタン及びこれらの水和物から選択される1種以上であることが好ましい。
【0038】
また、前記第2処理工程(図1(b))に用いられる鉄系吸着剤とは、鉄成分を含有する吸着剤のことであり、例えば、各種オキシ水酸化物のα−FeOOH、β−FeOOH、γ−FeOOH、水酸化鉄(Fe(OH)3)、酸化鉄(Fe3O4、Fe2O3、α−Fe2O3、β−Fe2O3、γ−Fe2O3)、シュベルトマナイト等が挙げられる。高い汚染成分吸着性能を有することに加えて、鉄を材料として用いるため、セリウムやランタン等の希土類金属化合物からなる吸着剤に比べて、製造コストを低減することが可能である。前記鉄系吸着剤の具体的な種類としては、汚染媒体の性状(pH、酸化還元電位等)や、汚染成分の種類、汚染成分除去後の媒体の処理方法(そのまま放置する、放流する、中和処理する等)に応じて、適宜選択することができ、特に限定はしないが、安定して優れた汚染成分吸着性能を発揮できる点から、酸化鉄、水酸化鉄又はシュベルトマナイトであることが好ましい。
【0039】
また、前記第1処理工程(図1(a))に用いられるマグネシウム系処理剤、並びに、前記第2処理工程(図1(b))に用いられる希土類系吸着剤又は鉄系吸着剤は、必要に応じて、シリカやアルミニウムを含んだ無機材料をさらに含有することができる。シリカやアルミニウムを含んだ無機材料が、前記マグネシウム系処理剤や希土類系吸着剤等の含有量を調整するための緩衝材としての役目を果たすためであり、さらに、汚染成分を含有する媒体に対し、汚染成分除去材を混合する際に、均質に混合するほど、効率的に汚染成分の除去効果が得られ、汚染媒体中の汚染成分の含有量(溶出量)により、混合に必要な前記マグネシウム系処理剤や希土類系吸着剤等の量が決まることから、前記無機材料を適切に調整することで、最適な混合条件が設計できるからである。
【0040】
また、前記第2処理工程(図1(b))は、前記汚染媒体のpHを3〜11の範囲に調整して行われることが好ましい。pHが3未満の場合、pHが低すぎるため、前記汚染成分と吸着剤との反応が進まず、吸着剤の種類によっては十分な吸着性能を発揮できない恐れがあり、一方、pHが11を超えると、pHが高すぎるため、pHが低すぎる場合と同様に、前記汚染成分と吸着剤との反応が進まず、十分な吸着性能が発揮できない恐れがあるからである。
【0041】
なお、本発明による汚染成分の処理方法では、汚染成分を含有する媒体(土壌、水など)に対して、第1処理工程(図1(a))ではマグネシウム系処理剤、第2処理工程(図1(b))では希土類系吸着剤又は鉄系吸着剤を接触させることで汚染成分の除去を行うことができるが、各処理剤及び吸着剤と、前記汚染媒体との接触方法については、特に限定はせず、汚染媒体の種類によって適宜選択することができる。例えば、前記汚染媒体が土壌の場合には、前記処理剤及び吸着剤を汚染土壌中に混入させることができるし、汚染媒体が水の場合には、前記処理剤及び吸着剤を汚染水中に混入する方法や、前記処理剤又は吸着剤からなる層を設け、汚染成分を含有する媒体を通過させる方法などが挙げられる。
【0042】
また、本発明による処理の対象となる汚染成分としては、前記汚染土壌中に含まれる人体に悪影響を与える成分のことであり、例えば、ヒ素、フッ素、ホウ素、鉛、カドミウム、水銀、アンチモン、クロム、モリブデン、セレン、リン、タリウム、インジウム及びビスマスの群から選択される1種以上の成分をいう。本発明による汚染成分の処理方法を用いれば、これらの汚染成分に対して、有効に除去を行え、汚染土壌中などでの拡散を抑制することができる。
【0043】
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0044】
本発明の実施例について説明する。
(実施例1〜8)
実施例1〜8では、試験廃水として、表1に示す各汚染成分を含有する廃水100ml(pH:8.2)を準備し、200mlのポリエチレン製密容器内に入れた後、第1処理工程(図1(a))として、必要に応じてpHを調整した状態で、所定量のマグネシウム系処理剤を投入し、1時間攪拌させて難溶性塩の形成させ、必要に応じてろ過(5μmフィルタ使用)による難溶性塩の分離処理を行った。そして、第2処理工程(図1(a))として、必要に応じてpHを調整した状態で、希土類系吸着剤又は鉄系吸着剤を添加し、6時間振とうさせることで、前記試験廃水の処理を行った。その後、処理した前記試験廃水を、ろ過(5μmフィルタ使用)することで、処理後の廃水を分離させた。
なお、第1処理工程の条件(マグネシウム系処理剤(表2中ではMg処理剤と記す)の種類及び投入量、pH調整の有無及びpH調整剤の種類、並びに、難溶性塩の除去の有無)及び第2処理工程の条件(吸着剤の種類及び投入量、pH調整の有無及びpH調整剤の種類)については表2に示す。
【0045】
(比較例1〜3)
比較例1〜3については、マグネシウム系処理剤による第1処理工程を行わなかったこと以外は、実施例1〜8と同様の条件によって、前記試験廃水の処理を行い、その後、処理した前記試験廃水を、ろ過(5μmフィルタ使用)することで、処理後の廃水を分離させた。
なお、汚染成分処理の条件(吸着剤の種類及び投入量、pH調整の有無及びpH調整剤の種類)については表2に示す。
【0046】
(比較例4)
比較例4については、希土類系吸着剤又は鉄系吸着剤による第2処理工程を行わなかったこと以外は、実施例1〜8と同様の条件によって、前記試験廃水の処理を行い、その後、処理した前記試験廃水を、ろ過(5μmフィルタ使用)することで、処理後の廃水を分離させた。
なお、汚染成分処理の条件(マグネシウム系処理剤(表2中ではMg処理剤と記す)の種類及び投入量、pH調整の有無及びpH調整剤の種類、並びに、難溶性塩の除去の有無)については表2に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
(評価方法)
各実施例及び比較例によって得られた廃水について、以下の評価を行った。
各実施例及び比較例によって得られた廃水を、環境省告示46号試験に準じて、0.45μmのフィルタを用いて再度ろ過し、ろ液中に含有される汚染成分の濃度を、ICP(島津製作所社製、ICP-1000IV)を用いた定量分析により測定(ただし、フッ素についてはイオンメーターを用いて測定)することで、各実施例及び比較例により除去した汚染成分量を算出し、その結果から以下の式に従って、汚染成分の除去率(%)を算出した。
除去率(%)=(初期汚染成分量−ろ液中の汚染成分量)×100/初期汚染成分量
各汚染成分についての汚染成分の除去率(%)、及び、判定結果を表3に示す。なお、除去率の判定については、環境規制物質であるヒ素、セレン及び鉛の除去率(%)がいずれも75%以上となるものを○、それ以外のものを×とした。
【0050】
【表3】

【0051】
表3によれば、本願発明に係る実施例1〜8は、比較例1〜4に比べて、各汚染成分の除去性能が高いことがわかった。
さらに、比較例2及び3については、実施例1及び2の100倍に相当する量の水酸化セリウムを用いて処理を行っているのにも関わらず、本願発明1及び2の汚染成分除去効果がより高いことから、大量の汚染成分吸着剤を用いることなく有効に汚染成分の処理が行われていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、大量の汚染成分吸着剤を用いることなく、有効に汚染成分を吸着除去できる汚染成分の処理方法を提供することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染媒体中に含まれ、吸着剤による汚染成分の吸着を阻害する陰イオンを、マグネシウム系処理剤で処理して難溶性塩として安定化させる第1処理工程と、前記陰イオン量を低減させた前記汚染媒体中に含まれる汚染成分を、希土類系吸着剤又は鉄系吸着剤を用いて除去する第2処理工程とを備えることを特徴とする汚染成分の処理方法。
【請求項2】
前記陰イオンは、硫酸イオン又はリン酸イオンである請求項1に記載の汚染成分の処理方法。
【請求項3】
前記マグネシウム系処理剤は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は水酸化マグネシウムを375〜750℃で加熱してなるマグネシウム化合物である請求項1又は2に記載の汚染成分の処理方法。
【請求項4】
前記希土類系吸着剤は、酸化セリウム、水酸化セリウム、酸化ランタン、水酸化ランタン及びこれらの水和物から選択される1種以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の汚染成分の処理方法。
【請求項5】
前記鉄系吸着剤は、酸化鉄、水酸化鉄又はシュベルトマナイトである請求項1〜3のいずれか1項に記載の汚染成分の処理方法。
【請求項6】
前記第1処理工程は、前記汚染媒体のpHを3〜12の範囲に調整して行われる請求項1〜5のいずれか1項に記載の汚染成分の処理方法。
【請求項7】
前記pHの調整は、水酸化ナトリウム、消石灰、石灰石、炭酸カルシウム及び水酸化マグネシウムから選択される1種以上を用いて行う請求項6に記載の汚染成分の処理方法。
【請求項8】
前記第1処理工程は、前記難溶性塩を分離除去することをさらに含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の汚染成分の処理方法。
【請求項9】
前記難溶性塩の分離除去は、PAC又は塩化鉄からなる凝集剤を用いて行う請求項8に記載の汚染成分の処理方法。
【請求項10】
前記第2処理工程は、前記汚染媒体のpHを3〜11の範囲に調整して行われる請求項1〜9のいずれか1項に記載の汚染成分の処理方法。
【請求項11】
前記汚染成分は、ヒ素、フッ素、ホウ素、セレン、鉛、クロム、カドミウム、マンガン、アンチモン、亜鉛、ニッケル、コバルト及びリチウムから選択された1種以上の成分である請求項1〜10のいずれか1項に記載の汚染成分の処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−156470(P2011−156470A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19045(P2010−19045)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】