説明

汚泥処理装置

【課題】現在下水汚泥を受け入れている最終処分場は、その半数が処理能力の限界から数年以内には受け入れが出来なくなると見込まれており、汚泥の減量化が必要となってきていて、排水処理施設に簡便に設置でき、効率よく安価で汚泥量を減少させる汚泥処理装置が求められている。
【解決手段】排水処理施設の余剰汚泥を汚泥改質槽に取り出し、沈殿槽で得られる上澄み水を口径1〜3mmのホーン型ノズルからキャビテーション発生水として余剰汚泥に打ち当てキャビテーションの物理的、化学的効力により余剰汚泥を改質・基質化し、さらにこれを生物処理槽の活性微生物で再処理して余剰汚泥を減量・減容化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理施設内で発生する有機性余剰汚泥をキャビテーション現象を利用して処理するものであり、特に処理施設内に設置して用いる汚泥減量・減容化のための汚泥処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国の産業廃棄物の排出量は約3億9,300万トン(平成14年度)で、その内汚泥が約1億8,244万トン(46.4%)であり、また下水道事業において発生する汚泥は産業廃棄物の総発生量の約19%(平成13年度)を占め、下水道の普及に伴いその発生量は年々増加している。
【0003】
一方、下水汚泥を受け入れている最終処分場は、その半数が数年以内には受け入れが出来なくなると見込まれており、今後さらなる汚泥の減量化が必要となってきている(循環型社会白書(平成15年版)環境省編集)。そのための有効な対策、すなわち現状システムに対応して設置でき、簡便でかつ安価な有機性の下水汚泥減量化システムの早急な開発が強く望まれている。
【0004】
下水汚泥は、活性汚泥の余剰汚泥で大半が占められている。ここで云う余剰汚泥とは活性汚泥法等の生物学的処理において一定の微生物濃度(MLSS)に調整する場合過剰に増加した活性汚泥を指す。
【0005】
下水の余剰汚泥を減量・消滅化する技術で現在研究開発されている方法にはオゾン処理、ミル破砕処理、好気性好熱細菌処理、電解感電処理、酸化剤処理、超音波処理、高圧噴流(キャビテーション)処理方式等がある。上記のオゾン処理方式等は薬品や比較的大きなエネルギーや付帯設備を必要とする。一方、超音波処理方式、高圧噴流処理方式は物理処理を基本としている。
【0006】
特許文献1に示したウォータージェットにより発生するキャビテーションを利用した方式は、汚泥沈降分離槽で沈降分離した上澄み水を、プランジャポンプで高圧水として生物処理槽(汚泥含有水槽)の壁面に設置した高圧水噴射用のノズルから噴出させて汚泥を改質するものである。また、別の方式は上澄み水を高圧ポンプで加圧してノズルから余剰汚泥中に吹き込むリアクタ方式である。
【0007】
【特許文献1】特開2004−49938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし以上の例の場合、高圧水噴出用のノズルの設置位置、ノズル径、高圧ポンプの噴出圧力、余剰汚泥濃度等が重要になる。
高圧噴流処理方式のキャビテーション現象の利用には、その発生原理から噴出ノズルの噴射口径を大きくした場合には、より大きなエネルギーを必要とする。また、噴射口径を小さくすれば、汚泥中の夾雑物による噴射口の詰りやエロージョン等のトラブルが発生するという、それぞれ課題をもっている。
一方、本発明の汚泥処理装置はキャビテーションを発生させることを最終目的としたものではなく、キャビテーションの持つ衝撃圧生成作用による汚泥の分散、微細化作用、キャビテーション気泡の崩壊時に発生する断熱圧縮作用によって、水中に局所的な高温高圧場が作り出され、その際の熱分解ないしOHラジカル等による強い酸化作用によって汚泥が改質されることを狙いとしている。
また、汚泥を改質するには、対象となる汚泥の濃度が重要で、対象汚泥の濃度が低い場合キャビテーション現象の影響は減少して汚泥の改質が進まない。それ故、汚泥濃度とキャビテーション現象量を適度に増加させることが重要となる。
キャビテーション現象の発生は、ノズルから水中へ噴出する噴出水の流速が影響し、流速が約90m/s付近の時多量に発生する(OHラジカル分析法(蛍光分析法))ことが、我々の実験から判明している。
ノズルの流量、径、圧力の関係式は
Q=1.6×d×d×√P (Q:流量〔L/min〕、1.6:係数(ノズルによりこの係数は幅がある)、d:ノズル径〔mm〕、P:圧力〔MPa〕)である。
ノズル径1.5mm、圧力7MPaの場合、Q=1.6*1.5*1.5*√7=9.5L/minとなり、おおよそ10L/minとなる。
ノズル径2.5mm、圧力8MPaの場合、Q=1.6*2.5*2.5*√8=28.3L/minとなり、おおよそ28L/minとなる。
流量と流速の関係式は
Q=r*r*π*v すなわち v=Q/r*r*π
(Q:流量〔m3/s〕、r:ノズル半径〔m〕、π:円周率、v:流速〔m/s〕)がある。
ノズル径1.5mmの場合は、v=0.000166/0.00075*0.00075*π=94.36m/sとなる。
ノズル径2.5mmの場合は、v=0.000471/0.00125*0.00125*π=96.08m/sとなる。
OHラジカル分析法の測定ではキャビテーション現象はホーン型ノズル口径2.5mm、高圧ポンプ圧力約8MPaの時、ノズル先端からの距離約1〜1.5m、直径約0.5mの範囲に現れるということが判っている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、夾雑物の多い汚泥を含め、あらゆる種類の有機性汚泥の処理課題を解決するものであり、キャビテーション現象を最大限に利用して汚泥を改質し、基質化するための装置を提供する。
すなわち、本発明は排水処理施設で発生した有機性の余剰汚泥中にキャビテーション現象を発生させ、余剰汚泥を改質・基質化する装置であり、改質・基質化された余剰汚泥を生物処理槽で再度分解処理することにより汚泥を減量・減容化するものである。
ここで好ましくは
(1)キャビテーション発生量をより多く発生させるため、ホーン型ノズルを設置する。
(2)より小さなエネルギーでキャビテーション現象を発生させるため、処理対象の汚泥量に応じてホーン型ノズルの口径を選定する。
(3)ホーン型ノズル口径を小さくした場合のトラブルを防止するため、噴出する処理水として排水処理施設で発生した沈殿分離後の滅菌消毒前の上澄水を利用する。
(4)キャビテーション現象の発生範囲は、口径が1〜3mm程度のホーン型ノズルの場合にはノズル先端から距離約1〜1.5m、直径約0.5mの範囲と特定する。
(5)キャビテーション現象を高効率に利用するため、処理対象汚泥の沈降現象を利用して汚泥濃度を高め、間欠運転を行う等運転方法を工夫する。
(6)キャビテーション現象を高効率に利用するため、ホーン型ノズルを可能な範囲で高濃度汚泥が存在する処理槽底部に設置する。
本発明の主装置は、ホーン型ノズルを設置した汚泥処理槽、高圧ポンプ、上澄み水供給装置、それらの装置間の配管、高圧ポンプ等を制御する動力制御盤等で構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のキャビテーション処理による汚泥減量化装置は、排水処理施設の汚泥処理ラインに設置し、この排水処理施設内の処理水を利用して、これを口径が微細なホーン型ノズルから高速、高圧で処理水を噴出させることによりキャビテーション現象を発生させて、余剰汚泥を処理し、この現象で改質・基質化した余剰汚泥を排水処理施設内の生物処理槽へ再度導入し、余剰汚泥を分解処理することでトラブルを発生させることなく、余剰汚泥を減量・減容化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の排水処理施設内で発生した滅菌消毒前の処理水を、高圧ポンプで加圧してホーン型ノズルより余剰汚泥に向け噴射してキャビテーション現象を発生させ、これによって余剰汚泥を改質して基質化する装置を、排水処理施設内に設置した例で説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、排水処理施設内に本発明の装置を設置した一例を示す。図1−Aはそのフロー図であり、図1−Bはその要部である汚泥改質槽6の説明図である。
図1−A中、1は生物処理槽であり、ここに下水W1が流入し、槽内の活性微生物で処理される。微生物を含有した活性汚泥水W2は、後続の沈殿槽2へ流出する。沈殿槽2で沈降分離された上澄水W3の大半は、殺菌、滅菌されて放流水W9となり、系外へ放流される。上澄水W3の一部は、上澄水貯留槽3を経由してキャビテーション発生水W7の用水として高圧ポンプ4へ送られる。
また、沈殿槽2で沈殿分離された余剰汚泥W4の一部は、本発明の特徴である汚泥改質槽6へ供給される。さらに活性汚泥法では余剰汚泥W4の一部は返送汚泥W5として生物処理槽1へ返送される。汚泥改質槽6にはキャビテーションの発生に欠かせない、前記の高圧ポンプ4と上澄水貯留槽3が近接して設けられ、高圧ポンプ4の出口側は、汚泥改質槽6内下部に設けられたホーン型ノズル5に接続されている。上澄水貯留槽3の入口側は、上澄水W3の一部を高圧水W6の用水として取り込むため、沈殿槽2に配管で繋がれている。余剰汚泥W4は汚泥改質槽6内でキャビテーション発生水W7を打ち当てられて改質・基質化処理される。改質・基質化処理されたキャビテーション処理汚泥W8は、配管を経由して生物処理槽1へ戻され、微生物含有活性汚泥W2によってさらに分解処理される。
汚泥改質槽6の具体的構成を図1−Bで説明する。
汚泥改質槽6の大きさ、容量は処理する汚泥の量により決定した。ここでは下水W1が毎日約150立方メートル流入する時、余剰汚泥W4が毎日約1.5立方メートル(毎分約1L)発生するとして、汚泥改質槽6は幅1m、長さ2m、高さ1.5m、容量約3立方メートルとした。
汚泥改質槽6の内下部に1セット設けられている口径1.5mmのホーン型ノズル5から流速約90m/sでキャビテーション発生水W7を毎分約10L噴出させる。微生物濃度MLSSが約10000mg/Lの余剰汚泥W4は、MLSS約20mg/Lの高圧水W6を原水としたキャビテーション発生水W7で処理されるとき、希釈されてMLSS約1000mg/L程度に低下する。
キャビテーション処理効率は処理対象汚泥濃度が高い程、高くなる。汚泥改質槽6内にはキャビテーション処理汚泥W8の汚泥沈降促進用の傾斜板7と、汚泥改質槽6の水面からキャビテーション処理汚泥W8を均等に取り出す越流堰8が設置されている。越流堰8の末端は生物処理槽1への配管に接続されている。
ホーン型ノズル5からのキャビテーション発生水W7の噴流の動きにつれ、汚泥改質槽6内の余剰汚泥W4は槽6内を上下に循環する。槽底部の余剰汚泥W4は、傾斜板7と越流堰8の働きによりMLSS約3000mg/L程度以上に濃縮される。軽くなったキャビテーション処理汚泥W8は、汚泥改質槽6の上部に移動していき、越流堰7を越えたものから生物処理槽1へ戻され、ここで再度生物分解処理される。この一連の操作を繰り返すことで、生物処理槽1内で発生した余剰汚泥W4は分解・浄化されて処理が進行する。
また、この装置は高圧ポンプ4を間欠運転して、ポンプ停止時にキャビテーション処理汚泥W8を槽底部に静置させることにより、汚泥改質槽6底部の処理対象汚泥の濃度を上げ、キャビテーション処理効率を上げることもできる。
【実施例2】
【0013】
図2は、下水処理施設の生物処理槽に本発明のキャビテーション汚泥処理装置を設置した別な一例を示す。図2−Aはそのフロー図を、図2−Bはそのホーン型ノズルの配置図をそれぞれ示す。
図中の番号は、図1のそれと同じ槽、下水、および役割等をそれぞれ示す。
高圧ポンプ4は、沈殿槽2から貯留槽3を経由して上澄水W3を取り込み、高圧水W6としてホーン型ノズル5から微生物含有活性汚泥W2に向け噴射して、キャビテーション発生水W7を生じさせる。
そのため、生物処理槽1には微生物含有活性汚泥W2、キャビテーション発生水W7、キャビテーション処理汚泥W8が混在している。
この例の特徴は、ホーン型ノズル5を生物処理槽1内下部に設置し、場合によっては2本以上複数設置して、槽下部に存在する汚泥に向けて上澄水W3を高圧化して噴射し、発生するキャビテーション現象で汚泥の微生物を分解、死滅させて改質・基質化させることであり、実施例1で示した汚泥改質槽6を必要としないことである。
ここでの留意点は、生物処理槽1の全ての汚泥を分解、死滅させるのではなく、槽内下部の活性汚泥を部分的に改質・基質化させ、改質・基質化した汚泥を槽内に残生存する活性微生物に託して再度分解処理することである。
これにより生物処理槽1では活性汚泥自体で、流入する下水W1を分解処理すること、微生物含有活性汚泥W2を高圧噴射した際に起こるキャビテーション現象で活性汚泥(微生物・余剰汚泥)を分解・死滅(改質・基質化)させること、改質・基質化した活性汚泥の生物処理を行うこと、が同時進行する。
このため、装置としては大掛かりな付帯設備を必要とせず、高圧ポンプ4とホーン型ノズル5およびこの両者と槽1、槽2をつなぐ配管で構成できる。さらにホーン型ノズル5の口径を吐出水量を勘案して、例えば1〜3mmの小径とすることで、キャビテーション現象が発生しやすくなって、汚泥の分解処理が短時間で効率よく行うことができる。
また、処理水槽の規模に応じてホーン型ノズル5を図2−Bのように2本以上設置することも可能である。
生物処理槽1の具体例を図2−Bで説明する。
ホーン型ノズル5の口径、数量は処理する汚泥の量により決定する。ここでは下水W1が毎日約150立方メートル流入し、余剰汚泥W4が毎日約1.5立方メートル発生する排水処理施設の生物処理槽1は、幅5m、長さ5m、深さ4m、容量約100立方メートルとした。生物処理槽1の内底部に2セット設けられている口径2.5mmのホーン型ノズル5から流速約90m/s、毎分約50Lでキャビテーション発生水W7を噴出させる。これにより生物処理槽1中の微生物含有活性汚泥W2の約50%を処理することが出来る。
【実施例3】
【0014】
図3は、下水処理施設の生物処理槽に本発明のキャビテーション汚泥改質装置を設置した別な一例を示す。図3−Aはそのフロー図を、図3−Bはその要部である汚泥改質装置の説明図である。
図中の番号は、図1のそれと同じ槽、下水、および役割等をそれぞれ示す。
図3−A中、1は生物処理槽であり、ここに下水W1が流入し、活性微生物で処理される。微生物含有活性汚泥水W2は後続の沈殿槽2へ流出する。沈殿槽2で沈降分離された上澄水W3の大半は、殺菌、滅菌されて放流水W9となり、系外へ放流される。また、上澄水W3の一部はキャビテーション発生用水として上澄水貯留槽3へ送られる。
また、沈殿槽2で沈殿分離された余剰汚泥W4の一部は本発明の特徴である汚泥改質槽6へ供給され、また活性汚泥法の場合、別な一部は返送汚泥W5として生物処理槽1へ返送される。汚泥改質槽6にはキャビテーションの発生に欠かせない高圧ポンプ4と上澄水貯留槽3が近接して設けられ、ポンプ4の出口側は、汚泥改質槽6内下部に設けられたホーン型ノズル5に接続されている。
上澄水貯留槽3の入口側は、上澄水W3の一部を高圧水W6の原水として取り込むため、沈殿槽2に配管で繋がれている。余剰汚泥W4は、汚泥改質槽6内でキャビテーション発生水W7を打ち当てられて改質・基質化処理される。
汚泥改質槽6に供給された余剰汚泥W4は改質・基質化処理の後、汚泥改質槽6の底部の移流口から汚泥沈殿分離槽9底部へ流入して沈殿分離され、沈殿汚泥は底部に沈殿し、上澄み水は越流堰8(図示せず)を経て上澄水貯留槽3へ移流する。
上澄水貯留槽3へ流入した上澄水W3は高圧水W6の原水として高圧ポンプ4に取り込まれ、汚泥改質槽6のキャビテーション発生水W7として再度利用される。
汚泥改質装置の具体的構成を図3−Bで説明する。
各槽(汚泥改質槽6、汚泥沈殿分離槽9、上澄水貯留槽3)の大きさ、容量は処理する汚泥の量により変動するが、ここでは下水W1が毎日約150立方メートル流入する時、余剰汚泥W4が毎日約1.5立方メートル発生するとして、汚泥改質槽6は幅1m、上部の長さ0.5m、高さ1.5m、容量約1.6立方メートル、汚泥沈殿分離槽9は幅1m、上部の長さ2.2m、高さ1.5m、容量約2.6立方メートル、上澄水貯留槽3は幅1m、上部の長さ0.3m、高さ1.5m、容量約0.3立方メートルとした。汚泥改質槽6内には傾斜板7数枚と内下部にホーン型ノズルが1セット設置されている。汚泥沈殿分離槽9内には傾斜板7の数枚と上部に約2mの越流堰8が設けられている。
運転方法はバッチ式として毎日沈殿槽2から汚泥改質槽6に余剰汚泥W4を1.5m3、上澄水貯留槽3に上澄水W3を3立方メートル供給する。
汚泥改質槽6内に設けられている口径1.5mmのホーン型ノズル5から約90m/sの流速で毎分約10Lのキャビテーション発生水W7を噴出させる。MLSS約10000mg/Lの余剰汚泥W4は、MLSS約20mg/Lの高圧水W6を打ち当てられて処理されるとき希釈されてMLSS約3000mg/L程度に低下する。
汚泥改質槽6内には傾斜板7が設置されている。ホーン型ノズル5からのキャビテーション発生水W7の水流で、汚泥改質槽6内の余剰汚泥W4は上下に循環する。
また汚泥沈殿分離槽9内にはキャビテーション処理汚泥W8の汚泥沈降促進用の傾斜板7と、槽9の水面からキャビテーション処理汚泥W8を均等に取り出す越流堰8が設置されている。越流堰8の末端は上澄水貯留槽3へ接続されている。
汚泥沈殿分離槽9底部の余剰汚泥W4は傾斜板7と越流堰8によりMLSS約5000mg/L程度以上に濃縮される。軽くなったキャビテーション処理汚泥W8は汚泥沈殿分離槽9の上部に移動して越流堰7を越えたものから上澄水貯留槽3へ戻され、ここで再度キャビテーション発生水W7の原水として利用される。
汚泥改質槽6内の余剰汚泥W4はキャビテーション発生水W7を繰り返し打ち当てられ、キャビテーション処理汚泥W8となる。この一連の操作を繰り返すことで、余剰汚泥W4は改質・基質化処理が進行する。
改質・基質化処理が進行したキャビテーション処理汚泥W8の一部は、生物処理槽1へ流入させて微生物含有活性汚泥W2で分解処理されて余剰汚泥の処理が進行する。
また、この装置は高圧ポンプ4を間欠運転して、キャビテーション処理汚泥W8を静置させることにより、汚泥改質槽6の内底部の処理対象汚泥の濃度を上げ、キャビテーション処理効率を上げることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
以上のように本発明は、排水処理施設に設置して排水処理施設から発生する余剰汚泥を減量・減容化する装置であり、排水処理施設本体の構造を特に改造することなく設置できること、物理的作用による汚泥改質技術であって、特定の薬品等を使用しないこと、キャビテーション発生効率を有効に利用できること等か
ら、処理施設の大小に拘わらず汚泥の減量・減容化の用途に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1−A】本発明の実施例1での下水処理施設の処理フロー図
【図1−B】同要部の汚泥処理槽の説明図
【図2−A】本発明の実施例2での下水処理施設の処理フロー図
【図2−B】同要部の説明図
【図3−A】本発明の実施例3での下水処理施設の処理フロー図
【図3−B】同要部の説明図
【符号の説明】
【0017】
1・・生物処理槽 2・・沈殿槽
3・・上澄水貯留槽 4・・高圧ポンプ
5・・ホーン型ノズル 6・・汚泥改質槽
7・・傾斜板 8・・越流堰
9・・汚泥沈殿分離槽
W1・・下水 W2・・微生物含有活性汚泥
W3・・上澄水 W4・・余剰汚泥
W5・・返送汚泥 W6・・高圧水
W7・・キャビテーション発生水(キャビテーションを伴う高速水中水噴流)
W8・・キャビテーション処理汚泥 W9・・放流水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水道の終末処理場、浄化槽およびその他排水処理施設で発生する有機性余剰汚泥を減量・減容化する装置であって、
前記排水処理施設の生物処理槽で発生した余剰汚泥を汚泥処理槽内に収容し、この余剰汚泥にむけて、前記排水処理施設で発生した沈殿分離後の滅菌消毒前の上澄み水を高圧ポンプで加圧しキャビテーション発生用ホーン型ノズルより噴射してキャビテーション現象を発生させ、汚泥を改質して基質化をすることを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項2】
基質化した余剰汚泥を生物処理槽に供給し、その生物処理槽中の活性微生物で前記基質化した余剰汚泥を分解処理することにより汚泥を減量・減容化する請求項1記載の汚泥処理装置。
【請求項3】
下水道の終末処理場、浄化槽およびその他排水処理施設で発生する有機性余剰汚泥を減量・減容化する装置であって、
それらの排水処理施設の生物処理槽の汚泥に向けて、槽下層部に設けたホーン型ノズルより処理施設で発生した滅菌消毒前の上澄水を高圧ポンプで加圧して噴射し、キャビテーション現象を発生させて、汚泥を改質・基質化し、これを生物処理槽中の残存活性微生物で分解することにより余剰汚泥を減量・減容化することを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項4】
余剰汚泥中に口径1〜3mmのホーン型ノズルより上澄水を流速80〜100m/秒で噴射し、キャビテーション現象を発生させて、汚泥を改質・基質化し、これをさらに生物処理槽中の残存活性微生物で分解することにより余剰汚泥を減量・減容化する請求項1または3記載の汚泥処理装置。
【請求項5】
下水道の終末処理場、浄化槽およびその他排水処理施設で発生する有機性余剰汚泥を減量・減容化する装置であって、
それらの排水処理施設の生物処理槽の汚泥を、幅1m、長さ2m、高さ1.5m、容量約3立方メートルの汚泥改質槽へ供給し、その低部に設けた口径1.5mmのホーン型ノズル1本から流速約90m/sで滅菌消毒前の上澄水を傾斜板と越流堰を設置した汚泥改質槽内の汚泥に向けて毎分約10L噴出させて汚泥を改質・基質化し、これを生物処理槽中の活性微生物で分解することにより余剰汚泥を減量・減容化することを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項6】
下水道の終末処理場、浄化槽およびその他排水処理施設で発生する有機性余剰汚泥を減量・減容化する装置であって、
それらの排水処理施設の生物処理槽は、幅5m、長さ5m、深さ4m、容量約100立方メートルとし、その内底部に設けられた口径2.5mmの2本のホーン型ノズルから流速約90m/sで滅菌消毒前の上澄水を、毎分約50L噴出させて生物処理槽内の活性微生物に噴射して改質・基質化し、これを生物処理槽中の残存活性微生物で分解することにより余剰汚泥を減量・減容化することを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項7】
下水道の終末処理場、浄化槽およびその他排水処理施設で発生する有機性余剰汚泥を減量・減容化する装置であって、
それらの排水処理施設の余剰汚泥を、傾斜板を設置した幅1m、上部の長さ0.5m、高さ1.5m、容量約1.6立方メートルの汚泥改質槽に収容し、槽の内底部に設けられた口径1.5mmのホーン型ノズルから流速約90m/s、毎分約10Lで滅菌消毒前の上澄水を汚泥改質槽内の余剰汚泥に向けて噴出して汚泥を改質・基質化し、その改質・基質化した汚泥を傾斜板と上部に2mの越流堰を設けた幅1m、上部の長さ2.2m、高さ1.5m、容量約2.6立方メートルの汚泥沈殿分離槽内に導入して沈殿分離させ、沈殿分離した余剰汚泥は汚泥沈殿分離槽底部の開口から汚泥改質槽内に移流して再度改質・基質化する一方、沈殿分離した上澄水は越流堰を経て幅1m、上部の長さ0.3m、高さ1.5m、容量約0.3立方メートルの上澄水貯留槽に貯留し、この上澄水をホーン型ノズルから汚泥改質槽内の余剰汚泥に向けて繰り返し打ち当てる、一連の操作を繰り返して改質・基質化処理が進行した汚泥を生物処理槽へ流入させて槽内の微生物含有活性汚泥で分解することにより余剰汚泥を減量・減容化することを特徴とする汚泥処理装置。

【図1−A】
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【図1−B】
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【図2−A】
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【図2−B】
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【図3−A】
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【図3−B】
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【公開番号】特開2008−43841(P2008−43841A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219234(P2006−219234)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(306026016)鈴木工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】