説明

汚物洗い水栓

【課題】吐水部の回転操作と連動して吐水・止水する機能を有する水栓において、水栓本体から吐水部が外れた場合に漏水が生じない汚物洗い水栓を提供する。
【解決手段】汚物洗い水栓10は、吐水口11aから便器ボール面20dに向かって吐水する使用位置と、便器本体20a後部に起立する待機位置との間で回動可能な吐水部11と、吐水部11が使用位置にあるときのみに吐水部11と連動して吐水部11に給水可能とする開閉弁と、吐水部11に連結された水栓本体12と、を有し、吐水部11が使用位置にあって吐水部11と水栓本体12の連結が解除されたときに開閉弁が閉弁状態となる自動閉弁機構を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿瓶やストーマ装具などに収容若しくは付着した汚物を洗浄するために水栓便器に併設される汚物洗い水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の汚物洗い水栓として、開閉弁と一体化された吐水部を有し、この吐水部の回転操作に伴って前記開閉弁が吐水部からの吐止水を制御する機能を備えた「汚物洗い設備」が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−336158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の「汚物洗い設備」は、吐水部の回転と開閉弁の開閉動作とが連動しているため、吐水部が吐水状態にあるときに、何らかの原因で水栓本体から吐水部が外れた場合、開閉弁は開状態のままであるため、漏水が発生するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、吐水部の回転操作と連動して吐水・止水する機能を有する水栓において、水栓本体から吐水部が外れた場合に漏水が生じない汚物洗い水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の汚物洗い水栓は、吐水口から便器ボール面に向かって吐水する使用位置と、便器後部に起立する非使用位置との間で回動可能な吐水部と、前記吐水部が前記使用位置にあるときのみに前記吐水部と連動して前記吐水部に給水可能とする開閉弁と、前記吐水部に連結された水栓本体と、を有する汚物洗い水栓であって、
前記吐水部が前記使用位置にあって前記吐水部と前記水栓本体の連結が解除されたときに前記開閉弁が閉弁状態となることを特徴とする。
【0007】
このような構成とすれば、経年劣化あるいは使用者による吐水部への意図していない荷重の付加などにより、吐水部と水栓本体との連結部において、吐水部と水栓本体との連結が外れることがあっても、開閉弁が強制的に閉弁状態となるので、漏水が生じない。
【0008】
ここで、前記開閉弁は、弁座部と、前記弁座部に供給される水圧によって前記弁座部に付勢される弁体部と、を有する開閉弁本体と、前記吐水部の使用位置・非使用位置間の回動に伴って進退移動するコマ部と、を有し、
前記コマ部の進退移動に伴って前記コマ部が前記弁体部を前記弁座から離隔する方向に付勢し、
前記吐水部と前記水栓本体との連結が解除されたとき、前記コマ部が前記弁体部を前記弁座から離隔する方向に付勢する付勢力も解除される構成とすることが望ましい。
【0009】
このような構成とすれば、仮に、吐水部と水栓本体との連結が外れた際に、開閉弁は強制的に閉弁状態となるので、漏水することがない。また、吐水部の位置によって回転方向以外の位置が異なることがないので、吐水部の操作時に違和感が無く、使い勝手も良好である。
【0010】
また、前記開閉弁は、前記弁座部に供給される水圧に加えて、前記弁体部を前記弁座部に押圧する付勢部を備えることが望ましい。
【0011】
このような構成とすれば、弁座部に供給される水圧に加えて、付勢部が弁体部を常に弁座部に付勢した状態となるので、水圧の低い現場において、仮に、吐水部と水栓本体との連結が外れることがあっても、水圧及び付勢部の付勢力によって弁体部が弁座部に当接することで確実な閉弁状態が保たれるので、水圧の低い現場でも漏水することがない。
【0012】
さらに、前記吐水部に、前記開閉弁から独立して、前記吐水口からの吐水及び流量を制御する第二開閉弁を設けることが望ましい。
【0013】
このような構成とすれば、第二開閉弁が止水不良を起こした場合でも開閉弁で止水されるので、漏水(吐水)を止めることができる。また、第二開閉弁は吐水部に設けられているので、使用者は、吐水部の使用位置において流量調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、吐水部の回転操作と連動して吐水・止水する機能を有し、且つ、水栓本体から吐水部が外れた場合に漏水が生じない汚物洗い水栓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態である汚物洗い水栓において吐水部が待機位置にある状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態である汚物洗い水栓において吐水部が使用位置にある状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態である汚物洗い水栓において吐水部が使用位置にある状態を示す右側面図である。
【図4】図1に示す汚物洗い水栓の正面図である。
【図5】図4のA−A線における断面図である。
【図6】図2に示す汚物洗い水栓の正面図である。
【図7】図6のB−B線における断面図である。
【図8】図6に示す汚物洗い水栓が異常時にあるときのB−B線における断面図である。
【図9】本発明のその他の実施形態である汚物洗い水栓を示す一部切欠右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。図1〜図3に示すように、本実施形態の汚物洗い水栓10は、洋式便器20の背面側にある壁面Wに固定された背もたれ16に対して固定されている。洋式便器20は、便器本体20a、便座20b及び機能部20cなどによって構成されている。機能部20cには、便座20bを所定温度に保つ温度制御装置(図示せず)や使用者の局部を洗浄する衛生洗浄装置(図示せず)などが内蔵されている。
【0017】
汚物洗い水栓10は、洋式便器20のボール面20dに向かって傾斜姿勢で吐水する使用位置(図2参照)と、洋式便器20の後部に起立する待機位置(図1参照)との間で中心軸10cを中心に回動可能な吐水部11と、吐水部11の先端に設けられた吐水口11aと、吐水口11aからの吐水・止水を切り換え可能な第二開閉弁36と、吐水部11に水を供給する水栓本体12と、を有している。給水源(図示せず)から壁面W配管された給水管13と本体部12とは可撓性ホース14で連結されている。
【0018】
図3に示すように、背もたれ部16は水平支持部材17を介して壁面Wに対し前後位置調整可能に取り付けられ、水栓本体12は垂直連設部材19を介して背もたれ部16の背面に上下位置調整可能に取り付けられている。また、待機位置にあるときの吐水部11を収容するため、背もたれ部16の中央付近に逆U字状の切欠部16aが設けられている。
【0019】
汚物洗い水栓10は、中心軸10cを中心とする吐水部11の回動操作に連動して吐水・止水する機能を有する。従って、図1に示す待機位置にある吐水部11を便器本体20aのボール面20dに向かって倒伏するように回動させ、図2に示す使用位置にすると、第二開閉弁36の開閉操作により吐水部11の吐水口11aからの吐水・止水が可能であり、吐水部11を元の待機位置まで回動させると吐水部11の第二開閉弁36の開閉状態に関係なく止水状態となる。即ち、後述する水栓本体12に内蔵されている第一開閉弁30が吐水部11の前記回動操作と連動して開閉することにより、吐水部11の吐水口11aからの吐水・止水が行われる。
【0020】
ここで、図4〜図7に基づいて、水栓本体12の構造、機能などについて説明する。図4,図5に示すように、略円筒形状をした水栓本体12のケーシング12a内に、吐水部11の基端部11bに連設されたスピンドル部11cが中心軸10cを中心に回動可能に挿入されている。水栓本体12のケーシング12a内には、吐水部11が使用位置にあるときのみに吐水部11と連動して吐水部11に給水可能とする第一開閉弁30が設けられている。また、第一開閉弁30には、供給される水圧に加え、弁体部32を弁座部31に押圧する付勢部35が設けられている。
【0021】
第一開閉弁30は、供給される水圧によって弁座部31に付勢される弁体部32と、を有する開閉弁本体33と、吐水部11が待機位置と使用位置との間で回動するのに伴って進退移動するコマ部34と、を有している。具体的には、コマ部34の外周には雄ねじが設けられており、周囲部材に設けられた雌ねじと螺合機構が形成されている。吐水部11が待機位置と使用位置との間で回動操作されると、吐水部11の基端部11bに連接されたスピンドル部11cの回転に伴い、コマ部34が回転する。コマ部34が回転すると、前記螺合機構により開閉弁本体31に対しコマ部34が中心軸10cに沿って進退移動する。
【0022】
図1,図4に示すように、吐水部11が待機状態にあるとき、第一開閉弁30の弁体部32は、その上流側の流路37内の水圧で付勢されることによって弁座部31に押圧されているため、図5に示すように、第一開閉弁30は閉止状態にあり、吐水部11は吐水不能の状態に保たれている。
【0023】
図2,図6に示すように、吐水部11を使用位置まで回動させると、スピンドル部11cがコマ部34を流路37側へ押圧するので、コマ部34の流路37側への移動に伴い、コマ部34が弁体部32を弁座部31から離隔する方向に付勢する。これにより、図7に示すように、弁体部32が弁座部31から離れ、両者間に隙間Sが生じるので、流路37内の水が隙間Sを通過してコマ部34の内筒部34a及びスピンドル部11cの内筒部11dに流入し、吐水部11は吐水可能な状態となる。
【0024】
この状態で、吐水部11の吐水口11a近傍の操作レバー36aを操作して第二開閉弁36を開閉させることにより、吐水口11aからの吐水・止水の切り換え及び吐水口11aからの吐水流量の調節を行うことができる。従って、使用者は、吐水口11aから洋式便器20のボール面20dに向かって吐出される水を利用して、尿瓶やストーマ装具などに収容されたり、付着したりしている汚物の洗浄を行うことができる。
【0025】
図2,図3に示すように吐水部11が使用位置にあるときの吐水口11aからの吐水・止水の切り換えは、第二開閉弁36の操作レバー36aを手動操作することによって行うことができる。従って、尿瓶などの洗浄が終わり、操作レバー36aを操作して第二開閉弁36を閉止すれば、吐水口11aからの吐水が停止されるので、吐水部11を壁面W側へ回動させて図1に示す待機位置に戻すことができる。なお、吐水口11aからの吐水中に吐水部11を壁面W側へ回動させると、その動きに伴って水栓本体12内の第一開閉弁30が閉止されるので、吐水口11aからの吐水が停止される。
【0026】
一方、経年劣化あるいは使用者による吐水部11への意図していない荷重の付加などにより、吐水部11と水栓本体12との連結部において、吐水部11と水栓本体12との連結が外れた場合、図8に示すように、吐水部11のスピンドル部11cがコマ部34から離れるが、供給される水圧に加え、弁体部32を弁座部31に押圧する付勢部35が設けられているため、第一開閉弁30が強制的に閉弁状態となり、漏水が生じることがない。
【0027】
また、付勢部35を設けたことにより、供給される水圧に加えて、付勢部35が弁体部32を常に弁座部31に付勢した状態となるので、供給水圧の低い現場において、仮に、吐水部11と水栓本体12との連結が外れることがあっても、水圧及び付勢部35の付勢力によって弁体部32が弁座部31に当接することで確実な閉弁状態が保たれ、低水圧に起因する漏水が発生しない。なお、本実施形態では、付勢部35として弦巻バネを使用しているがこれに限定するものではない。
【0028】
本実施形態の汚物洗い水栓10は、吐水部11の回動位置によって回動方向以外の位置や形状が変化しないので、吐水部11の操作時に違和感が無く、使い勝手も良好である。また、吐水部11に、水栓本体12内の第一開閉弁30から独立して、吐水口11aからの吐水及び流量を制御する第二開閉弁36を設けているため、第二開閉弁36が止水不良を起こした場合でも第一開閉弁30によって止水され、漏水(吐水)を止めることができる。また、第二開閉弁36は吐水部11に設けられているので、使用者は、吐水部11の使用位置において流量調整を行うことができる。
【0029】
次に、図9に基づいて、その他の実施形態である汚物洗い水栓40について説明する。図9に示す汚物洗い水栓40においては、吐水部41を構成する吐水口41aに臨む部分に、吐水口41aからの吐水方向に突出したリブ状のガード部42が設けられている。このような構成とすれば、洗浄しようとする尿瓶やストーマ装具(図示せず)内を洗浄水で洗うために、その開口部を吐水口41aに近づけたとき、開口部の周縁がガード部42に当接することにより、尿瓶やストーマ装具の開口部が吐水口41aに接触するのを防ぐことができる。従って、洗浄作業中に、尿瓶内やストーマ装具の汚物が吐水口41aへ付着したり、尿瓶内やストーマ装具の汚水が吐水口41aから吐水部41内へ逆流したりするのを防止することができ、衛生的である。その他の部分の構造、機能などは前述した汚物洗い水栓10と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の汚物洗い水栓は、尿瓶やストーマ装具などに収容若しくは付着した汚物を洗浄するため、一般住宅、病院、介護施設あるいはオフィスや公共施設などのトイレにおいて広く利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10,40 汚物洗い水栓
11,41 吐水部
11a,41a 吐水口
11b 基端部
11c スピンドル部
12 水栓本体
12a ケーシング
13 給水管
14 可撓性ホース
16 背もたれ
16a 切欠部
17 水平支持部材
19 垂直連設部材
20 洋式便器
20a 便器本体
20b 便座
20c 機能部
20d 便器ボール面
30 第一開閉弁
31 弁座部
32 弁体部
33 開閉弁本体
34 コマ部
35 付勢部
36 第二開閉弁
36a 操作レバー
37 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水口から便器ボール面に向かって吐水する使用位置と、便器後部に起立する非使用位置との間で回動可能な吐水部と、前記吐水部が前記使用位置にあるときのみに前記吐水部と連動して前記吐水部に給水可能とする開閉弁と、前記吐水部に連結された水栓本体と、を有する汚物洗い水栓であって、
前記吐水部が前記使用位置にあって前記吐水部と前記水栓本体の連結が解除されたときに前記開閉弁が閉弁状態となることを特徴とする汚物洗い水栓。
【請求項2】
前記開閉弁は、弁座部と、前記弁座部に供給される水圧によって前記弁座部に付勢される弁体部と、を有する開閉弁本体と、前記吐水部の使用位置・非使用位置間の回動に伴って進退移動するコマ部と、を有し、
前記コマ部の進退移動に伴って前記コマ部が前記弁体部を前記弁座から離隔する方向に付勢し、
前記吐水部と前記水栓本体との連結が解除されたとき、前記コマ部が前記弁体部を前記弁座から離隔する方向に付勢する付勢力も解除されることを特徴とする請求項1記載の汚物洗い水栓。
【請求項3】
前記開閉弁は、前記弁座部に供給される水圧に加えて、前記弁体部を前記弁座部に押圧する付勢部を備えたことを特徴とする請求項2記載の汚物洗い水栓。
【請求項4】
前記吐水部に、前記開閉弁から独立して、前記吐水口からの吐水及び流量を制御する第二開閉弁を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の汚物洗い水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−74620(P2011−74620A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225284(P2009−225284)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】