説明

決済システム、非接触ICメディア及び決済装置

【課題】決済処理の不整合を解決し、且つ、プライバシーを考慮して、決済装置に非接触ICメディアの残高金額を通知する必要のない決済システム、非接触ICメディア及び決済装置を提供する。
【解決手段】非接触ICメディアは、単位金額の有無のいずれかを示す値を格納する第1の記憶領域を入金上限額分の個数連続して配置すると共に、第1の記憶領域の有効範囲の先頭アドレスを記憶する第2の記憶領域を有するメモリを備え、第1の記憶領域を巡回して使用し、先頭アドレスから単位金額有りを示す値が記憶された第1の記憶領域の連続する個数で残高金額を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、決済システム、非接触ICメディア及び決済装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キャッシュレス化の進展や電子マネーの普及に伴い、読み書き可能なIC(Integrated Circuit)チップを有するプリペイド式(料金先払い)の非接触ICメディアを利用して、商品やサービスの提供に伴う決済処理を行うシステムが普及している(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
図6は、このようなプリペイド式の非接触ICメディア100を利用した決済処理のフローを示したシーケンス図である。ここで、決済処理を行う決済装置200は、決済処理を制御する決済制御部210と、非接触ICメディア100と通信を行う非接触リーダライタ220と、を含んで構成される。なお、決済装置200には、あらかじめ決済金額が入力されている。
【0004】
決済制御部210は、決済処理を開始すると、カード検知要求コマンドを非接触リーダライタ220に出力する(ステップS901)。非接触リーダライタ220は、入力されたカード検知要求コマンドを非接触ICメディア100へ送信してカードの検知を開始する(ステップS902)。
【0005】
非接触ICメディア100が非接触リーダライタ220にかざされると、非接触ICメディア100から非接触リーダライタ220にカード検知コマンドレスポンスが送信される(ステップS903)。カード検知コマンドレスポンスを受信すると、非接触リーダライタ220は、そのカード検知コマンドレスポンスを決済制御部210に出力する(ステップS904)。カード検知コマンドレスポンスが入力されると、決済制御部210は、次に残高情報の取得処理を行う。つまり、決済制御部210は、カード残高情報取得要求コマンドを非接触リーダライタ220へ出力する(ステップS905)。カード残高情報取得要求コマンドが入力されると、非接触リーダライタ220は、非接触ICメディア100へそのカード残高情報取得要求コマンドを送信する(ステップS906)。
【0006】
カード情報取得要求コマンドを受信すると、非接触ICメディア100は、残高情報を非接触リーダライタ220に送信する(ステップS907)。残高情報には、決済可能な金額である残高金額等が含まれる。非接触リーダライタ220は、その残高情報を決済制御部210に出力する(ステップS908)。
【0007】
決済制御部210は、残高情報が入力されると、減算可否判断を行う(ステップS909)。具体的には、決済制御部210は、受信した残高金額が決済金額より大きいか否かを判定する。決済制御部210は、残高金額と等しいか、または残高金額の方が大きい場合には残高金額から決済金額を減算して、決済後の残高金額を算出する(ステップS910)。小さい場合には、決済処理を終了する。次に、決済制御部210は、算出した残高金額を含む減算結果書き込み要求コマンドを非接触リーダライタ220に出力する(ステップS911)。
【0008】
非接触リーダライタ220は、入力された減算結果書き込み要求コマンドを非接触ICメディア100に送信する(ステップS912)。非接触ICメディア100は、受信した残高金額をICチップに書き込み、書き込みが完了すると、書き込み完了コマンドレスポンスを非接触リーダライタ220に送信する(ステップS913)。非接触リーダライタ220は、その書き込み完了コマンドレスポンスを決済制御部210に出力する(ステップS914)。
【0009】
書き込み完了コマンドレスポンスが入力されると、決済制御部210は、非接触ICメディア100のICチップに書き込まれた結果を確認するために、カード残高情報取得要求コマンドを非接触リーダライタ220に出力する(ステップS915)。カード残高情報取得要求コマンドが入力されると、非接触リーダライタ220は、そのカード残高情報取得要求コマンドを非接触ICメディア100に送信する(ステップS916)。非接触ICメディア100は、カード残高情報取得要求コマンドを受信すると、残高情報を送信する(ステップS917)。非接触ICメディア100から残高情報を受信すると、非接触リーダライタ220は、その残高情報を決済制御部210に出力する(ステップS918)。残高情報が入力されると、決済制御部210は、残高確認を行う(ステップS919)。具体的には、決済制御部210は、入力された残高金額と上記ステップS910で算出した残高金額が等しいか否かの判定を行う。等しい場合には、正常に処理が完了したと判定し、決済処理を完了する(ステップS920)。
【特許文献1】特開平10−232965号公報
【特許文献2】特開平10−283534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された技術では、決済処理中に非接触ICメディア100が非接触リーダライタ220から取り外されるなどして、非接触ICメディア100と非接触リーダライタ220との通信が切断された場合、決済金額の不整合が起こる、という問題がある。例えば、決済装置200は決済処理を完了と判断しても、非接触ICメディア100では残高金額が減算されていないという不整合が起こりえる。或いは、決済装置200では、決済処理が未完了な状態でも、非接触ICメディア100では残高金額が減算されているという不整合が起こりえる。また、特許文献1及び2に記載された技術では、決済装置200が非接触ICメディア100の残高金額を読み取らなければ決済処理を行えないため、非接触ICメディア100の保持者が好むと好まざるに関わらず、決済装置200に一旦その残高金額を読み取られてしまう。このため、非接触ICメディア100の保持者の所有金額情報をCRM(Customer Relationship Management)のデータ等に使用される可能性があり、プライバシー上の懸念がある、という問題がある。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、決済処理の不整合を解決し、且つ、プライバシーを考慮して、決済装置に非接触ICメディアの残高金額を通知する必要のない決済システム、非接触ICメディア及び決済装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、非接触リーダライタを有する決済装置と非接触ICメディアによってプリペイド式の決済処理が行われる決済システムであって、前記非接触ICメディアは、単位金額の有無のいずれかを示す値を記憶する第1の記憶領域を入金上限額分の個数連続して配置すると共に、第1の記憶領域の有効範囲の先頭アドレスを記憶する第2の記憶領域を有するメモリを備え、第1の記憶領域を巡回して使用し、先頭アドレスから単位金額有りを示す値が記憶された第1の記憶領域の連続する個数で残高金額を表し、前記決済装置は、前記非接触ICメディアのメモリのデータに基づいて決済可能か否かを判定する決済可否判定手段と、前記決済可否判定手段によって決済可能とされた場合に、残高金額から決済金額を減算するべく前記非接触ICメディアを制御する決済手段と、を備えることを特徴とする決済システムである。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記の決済システムにおいて、前記決済可否判定手段は、前記非接触ICメディアのメモリの第2の記憶領域によって示されるアドレスを起点とし、そこから決済金額に対応する第1の記憶領域の個数分アドレス演算した位置にある第1の記憶領域の値を参照して決済可否を判断し、前記決済手段は、有効範囲の先頭から後方に決済金額分第1の記憶領域の値を単位金額無しにし、有効範囲の先頭のアドレスを更新するべく前記非接触ICメディアを制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様は、上記の決済システムにおいて、前記決済装置は、有効範囲の先頭から前方に第1の記憶領域の値を単位金額有りにし、有効範囲の先頭アドレスを更新するべく前記非接触ICメディアを制御する入金手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様は、上記の決済システムにおいて、前記第1の記憶領域は、1ビットのメモリであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様は、上記の決済システムにおいて、前記非接触ICメディアは、残高金額がない場合でも、前記第2の記憶領域に有効範囲の先頭アドレスを記憶することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一態様は、単位金額の有無のいずれかを示す値を記憶する第1の記憶領域を入金上限額分の個数連続して配置すると共に、第1の記憶領域の有効範囲の先頭アドレスを記憶する第2の記憶領域を有するメモリを備え、第1の記憶領域を巡回して使用し、先頭アドレスから単位金額有りを示す値が記憶された第1の記憶領域の連続する個数で残高金額を表すことを特徴とする非接触ICメディアである。
【0017】
また、本発明の一態様は、上記の非接触ICメディアにおいて、前記第1の記憶領域は、1ビットのメモリであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一態様は、上記の非接触ICメディアにおいて、残高金額がない場合でも、前記第2の記憶領域に有効範囲の先頭アドレスを記憶することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の一態様は、単位金額の有無のいずれかを示す値を記憶する第1の記憶領域を入金上限額分の個数連続して配置すると共に、第1の記憶領域の有効範囲の先頭アドレスを記憶する第2の記憶領域を有するメモリを備え、第1の記憶領域を巡回して使用し、先頭アドレスから単位金額有りを示す値が記憶された第1の記憶領域の連続する個数で残高金額を表す非接触ICメディアとの間でプリペイド式の決済処理を行う決済装置であって、前記非接触ICメディアのメモリの第2の記憶領域によって示されるアドレスを起点とし、そこから決済金額に対応する第1の記憶領域の個数分アドレス演算した位置にある第1の記憶領域の値を参照して決済可否を判断する決済可否判定手段と、前記決済可否判定手段によって決済可能とされた場合に、有効範囲の先頭から後方に決済金額分第1の記憶領域の値を単位金額無しにし、有効範囲の先頭のアドレスを更新するべく前記非接触ICメディアを制御する決済手段と、を備えることを特徴とする決済装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、非接触ICメディアは、先頭アドレスから単位金額有りを示す値が記憶された第1の記憶領域の連続個数で残高金額を表す。決済装置は、この非接触ICメディアのメモリの値に基づいて非接触ICメディアの残高金額で今回の決済金額を決済可能か否か判断し、決済可能な場合には、非接触ICメディア上のメモリを操作して残高金額の変更ができるので、非接触ICメディア上の残高金額の情報を決済装置は受取る必要がない。このため、一旦非接触ICメディアから決済装置に残高金額が渡され、減算された後の残高金額が決済装置から非接触ICメディアに戻される間の通信障害等によって発生する可能性のある金額の不整合が、決済装置へ残高金額を渡さないことによって解決できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態による非接触ICメディア1の構成を示すブロック図である。非接触ICメディア1は、ICチップ10と、非接触リーダライタと通信を行うアンテナ14と、を含んで構成される。ICチップ10は、誘導電圧処理部・RF(Radio friquency)駆動部11と、ICチップ10を統括して制御する制御部12と、メモリ部13と、を含んで構成される。なお、非接触ICメディア1は、非接触による無線通信が可能な非接触ICカードである。本実施形態では、非接触ICメディア1をICカードであることとするが、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、その他の通信専用端末等の非接触ICチップを有する非接触ICメディアであれば良く、ICカードである必要はない。
【0022】
誘導電圧処理部・RF駆動部11は、アンテナ14を介して受信されたデータを復元し、制御部12に出力する。また、誘導電圧処理部・RF駆動部11は、制御部12から入力されたデータを変調してアンテナ14を介して非接触リーダライタへ送信する。
【0023】
メモリ部13は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等を有する。処理用のプログラム、API(Application Program Interface)、コマンド、固有データ等は、ROMまたはフラッシュメモリに記憶される。また、残高情報はフラッシュメモリに記憶される。また、RAMは処理用のデータを一時的に記憶する。
【0024】
図2は、本実施形態におけるメモリ部13に記憶される残高情報の金額管理を示す概略図である。
ここで、単位金額有りを示す値は、1としても良いし、0としても良い。なお、本実施形態では、単位金額有りを示す値を1として、単位金額無しを示す値を0とした代表例で説明することとする。
【0025】
残高情報は、0円位置(つまり、有効範囲の先頭)のアドレスを示す0円位置アドレスを記憶する記憶領域(つまり、第2の記憶領域)及び残高金額を示すための複数の記憶領域(以下、格納庫と呼ぶ)から構成される。従来技術においては、非接触ICメディア1は、残高金額を数字データとして保持しているが、本発明では、ONである(つまり、値が1である)格納庫(つまり、第1の記憶領域)の個数で残高金額を示す。格納庫は単位金額(ここでは、1円)に対して1個対応付けられ、プリペイドの最高チャージ金額分確保される。最大チャージ金額とは、非接触ICメディア1に入金できる上限金額のことである。また、格納庫は1bitであり、メモリ上に連続したアドレスに配置される。例えば、最大チャージ金額2万円のプリペイドの場合、格納庫を2万個、つまり20000bit持つことになる。また、先頭の格納庫のアドレスが「XXXX番地」だった場合には、末尾の格納庫のアドレスは「XXXX+2万番地」となる。ここで、例えば、格納庫を「0000H番地」から「FFFFH番地」までのアドレスに配置した場合には、65536円分のプリペイド金額を上限として持つことができる。なお、格納庫は巡回しており、末尾の格納庫の次の格納庫は先頭の格納庫になる。また、先頭の格納庫の直前の格納庫は末尾の格納庫になる。
【0026】
残高金額は、0円位置から連続してONになっている格納庫の個数で示される。ここで、制御部12が格納庫をONにする際、必ず連続した番地の格納庫をONにする。また、制御部12は、格納庫をOFFにする(つまり、値を0にする)際、必ず連続した番地の格納庫をOFFにする。なお、非接触ICメディア1の製造時には、残高金額はないので、格納庫の値は全てOFFであるが、0円位置アドレスには予め所定のアドレスが記憶されている。
【0027】
なお、本実施形態では、格納庫を1bitとしているが、ON/OFFの値を格納できればよく、必ずしも1bitである必要はない。
【0028】
また、本実施形態では、単位金額有りを示す値を1とし、単位金額無しを示す値を0としたが、残高情報を記憶するメモリの構造及び構成によって、単位金額の有無を示す値を決定しても良い。例えば、バッテリでバックアップされたメモリは、使用するメモリ素子によっては、電池が切れた際に、全てのビットが所定の値になるものもある。このため、バッテリでバックアップされたメモリに残高情報を記憶する場合、そのメモリでの所定の値を1とすると、プリペイドサービス事業者によっては、単位金額有りを示す値を0とし、単位金額無しを示す値を1とすることにより、異常発生時や予期せぬ不正によって最高チャージ金額分チャージされた状態になることを防ぐ手段とすることも考えられる。
【0029】
図3は、本実施形態における決済処理時の格納庫の状態を示した概略図である。
図3に示す例では、最大チャージ金額20円、残高金額15円である非接触ICメディア1から5円決済する際の格納庫の状態を示している。格納庫は、決済前状態(a)では、0円位置から後方15個の連続した格納庫がONになっている。次の決済可能確認(b)では、非接触リーダライタからのコマンドを基に制御部12が0円位置から5個後方の格納庫の値を取得する。非接触リーダライタを備える決済装置は、取得した格納庫の値がONである場合に決済可能と判断する。次に、支払い処理(c)では、非接触リーダライタから受信したコマンドを基に制御部12が0円位置から後方5個の連続した格納庫の値をOFFにし、0円位置アドレスを5番地後方のアドレスに更新する。これにより、決済後状態(d)では、残高金額が10円になっている。つまり、決済前状態(a)から0円位置が5個後方にずれた位置にあり、その0円位置から後方10個の連続した格納庫がONになっている。
【0030】
なお、本実施形態では、支払い処理(c)の際に、先に格納庫の値をOFFにしたが、先に0円位置アドレスを更新して、更新した0円位置アドレスまで格納庫の値をOFFにしてもよい。
【0031】
図4は、本実施形態における入金処理時の格納庫の状態を示した概略図である。
図4(e)は、最大チャージ金額20円、残高金額8円である非接触ICメディア1の格納庫の状態を示している。この非接触ICメディア1に7円入金すると、図4(f)に示したように、非接触リーダライタからのコマンドを基に制御部12が0円位置アドレスを7番地前方のアドレスに更新し、更新した0円位置から順番に後方へ7個の連続した格納庫をONする。これにより、残高金額が15円となる。次に、1円支払うと、図4(g)に示すように、非接触リーダライタからのコマンドを基に制御部12が0円位置の格納庫をOFFにし、0円位置アドレスを1番地後方に更新する。ここで、残高金額が14円になる。また、4円支払うと、図4(h)に示すように、非接触リーダライタからのコマンドを基に制御部12が0円位置から後方4個の連続した格納庫をOFFにし、0円位置アドレスを4番地後方に更新する。これにより、残高金額が10円になる。
【0032】
また、非接触リーダライタを備える決済装置は、入金をする際には、入金できるか否かを判定するために、(最大チャージ金額−入金金額+1)に対応する格納庫がOFFになっているか否かを判定する。OFFになっている場合には、入金できると判定し、ONになっている場合には、金額オーバーであると判定して入金はできない。決済装置は、入金できると判定した場合にのみ、非接触リーダライタを用いて入金のためのコマンドを非接触ICメディア1に送信して入金処理を行う(つまり、入金手段)。
【0033】
なお、本実施形態においては、0円位置をずらして入金を行ったが、0円位置をずらさずに、残高金額に対応する格納庫の次の格納庫から順番に入金金額分ONにして入金をしてもよい。
【0034】
図5は、本実施形態の決済処理の一連の流れを示すシーケンス図である。ここで、決済処理を行う決済装置2には、決済処理を制御する決済制御部21と、非接触ICメディア1と通信を行う非接触リーダライタ22と、を含んで構成される。なお、決済装置2には、あらかじめ決済金額が入力されている。
【0035】
決済制御部21は、決済処理を開始すると、カード検知要求コマンドを非接触リーダライタ22に出力する(ステップS1)。非接触リーダライタ22は、そのカード検知要求コマンドを非接触ICメディア1へ送信してカードの検知を開始する(ステップS2)。
【0036】
非接触ICメディア1が非接触リーダライタ22にかざされると、非接触ICメディア1から非接触リーダライタ22にカード検知コマンドレスポンスが送信される(ステップS3)。カード検知コマンドレスポンスを受信すると、非接触リーダライタ22は、そのカード検知コマンドレスポンスを決済制御部21へ出力する(ステップS4)。カード検知コマンドレスポンスが入力されると、決済制御部21は、決済可能確認処理を行う(つまり、決済可否判定手段)。つまり、決済制御部21は、決済可能確認コマンドを非接触リーダライタ22出力する(ステップS5)。決済可能確認コマンドが入力されると、非接触リーダライタ22は、非接触ICメディア1へ決済金額に対応する格納庫の値を取得するためのコマンドを送信する(ステップS6)。
【0037】
非接触ICメディア1は、格納庫のON/OFF情報を非接触リーダライタ22に送信する(ステップS7)。ここで、非接触ICメディア1は、0円位置から受信した決済金額分後方の格納庫の値を送信する。非接触リーダライタ22は、格納庫のON/OFF情報を基に可否情報を決済制御部21に出力する(ステップS8)。具体的には、非接触リーダライタ22は、指定した格納庫がONであれば、決済可能であることを示す情報を決済制御部21に出力する。また、非接触リーダライタ22は。指定した格納庫がOFFであれば、決済不可であることを示す情報を決済制御部21に出力する。
【0038】
決済制御部21は、入力された可否情報を確認し(ステップS9)、決済可能な場合には、決済処理を行う(つまり、決済手段)。具体的には、決済制御部21は、決済金額を含む決済要求コマンドを非接触リーダライタ22に出力する(ステップS10)。なお、決済不可の場合には、決済処理を終了する。決済要求コマンドが入力されると、非接触リーダライタ22は、0円位置から後方の連続した格納庫を決済金額分OFFにし、0円位置アドレスを更新するためのコマンドを非接触ICメディア1に送信する(ステップS11)。
【0039】
非接触ICメディア1は、受信したコマンドに基づいて格納庫処理をすると、処理完了コマンドレスポンスを非接触リーダライタ22に送信する(ステップS12)。非接触リーダライタ22は、その処理完了コマンドレスポンスを決済制御部21に出力する(ステップS13)。処理完了コマンドレスポンスが入力されると、決済制御部21は、決済処理を完了する(ステップS14)。
【0040】
このように、本実施形態によれば、決済装置2は、非接触ICメディア1のメモリ部13に配置されている格納庫の値がONかOFFによって決済可否確認を行う。これにより、非接触ICメディア1の残高金額を決済装置2に通知する必要がなくなる。また、格納庫の値をOFFにすることにより決済処理を行うので、非接触ICメディア1と決済装置2間で残高金額の受け渡しをする間の通信障害によって発生する決済金額の不整合を解決できる。
【0041】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本実施形態では、非接触リーダライタ22からのコマンドに基づいて制御部12がメモリ部13の値を読み書きしているが、非接触リーダライタ22が直接メモリ部13の値を読み書きしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態による非接触ICメディアの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態におけるメモリ部に記憶される残高情報の金額管理を示す概略図である。
【図3】本実施形態における決済処理時の格納庫の状態を示した概略図である。
【図4】本実施形態における本実施形態における入金処理時の格納庫の状態を示した概略図である。
【図5】本実施形態の決済処理の一連の流れを示すシーケンス図である。
【図6】従来技術の決済処理の一連の流れを示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0043】
1,100…非接触ICメディア 10…ICチップ 11誘導電圧制御部・RF駆動部 12…制御部 13…メモリ部 14…アンテナ部 2,200…決済装置 21,210…決済制御部 22,220…非接触リーダライタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触リーダライタを有する決済装置と非接触ICメディアによってプリペイド式の決済処理が行われる決済システムであって、
前記非接触ICメディアは、
単位金額の有無のいずれかを示す値を記憶する第1の記憶領域を入金上限額分の個数連続して配置すると共に、第1の記憶領域の有効範囲の先頭アドレスを記憶する第2の記憶領域を有するメモリを備え、
第1の記憶領域を巡回して使用し、
先頭アドレスから単位金額有りを示す値が記憶された第1の記憶領域の連続する個数で残高金額を表し、
前記決済装置は、
前記非接触ICメディアのメモリのデータに基づいて決済可能か否かを判定する決済可否判定手段と、
前記決済可否判定手段によって決済可能とされた場合に、残高金額から決済金額を減算するべく前記非接触ICメディアを制御する決済手段と、
を備える
ことを特徴とする決済システム。
【請求項2】
前記決済可否判定手段は、前記非接触ICメディアのメモリの第2の記憶領域によって示されるアドレスを起点とし、そこから決済金額に対応する第1の記憶領域の個数分アドレス演算した位置にある第1の記憶領域の値を参照して決済可否を判断し、
前記決済手段は、有効範囲の先頭から後方に決済金額分第1の記憶領域の値を単位金額無しにし、有効範囲の先頭のアドレスを更新するべく前記非接触ICメディアを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の決済システム。
【請求項3】
前記決済装置は、有効範囲の先頭から前方に第1の記憶領域の値を単位金額有りにし、有効範囲の先頭アドレスを更新するべく前記非接触ICメディアを制御する入金手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の決済システム。
【請求項4】
前記第1の記憶領域は、1ビットのメモリであることを特徴とする請求項1から3いずれか1の項に記載の決済システム。
【請求項5】
前記非接触ICメディアは、残高金額がない場合でも、前記第2の記憶領域に有効範囲の先頭アドレスを記憶することを特徴とする請求項1から4に記載の決済システム。
【請求項6】
単位金額の有無のいずれかを示す値を記憶する第1の記憶領域を入金上限額分の個数連続して配置すると共に、第1の記憶領域の有効範囲の先頭アドレスを記憶する第2の記憶領域を有するメモリを備え、
第1の記憶領域を巡回して使用し、
先頭アドレスから単位金額有りを示す値が記憶された第1の記憶領域の連続する個数で残高金額を表す
ことを特徴とする非接触ICメディア。
【請求項7】
前記第1の記憶領域は、1ビットのメモリであることを特徴とする請求項6に記載の非接触ICメディア。
【請求項8】
残高金額がない場合でも、前記第2の記憶領域に有効範囲の先頭アドレスを記憶することを特徴とする請求項6または7に記載の非接触ICメディア。
【請求項9】
単位金額の有無のいずれかを示す値を記憶する第1の記憶領域を入金上限額分の個数連続して配置すると共に、第1の記憶領域の有効範囲の先頭アドレスを記憶する第2の記憶領域を有するメモリを備え、第1の記憶領域を巡回して使用し、先頭アドレスから単位金額有りを示す値が記憶された第1の記憶領域の連続する個数で残高金額を表す非接触ICメディアとの間でプリペイド式の決済処理を行う決済装置であって、
前記非接触ICメディアのメモリの第2の記憶領域によって示されるアドレスを起点とし、そこから決済金額に対応する第1の記憶領域の個数分アドレス演算した位置にある第1の記憶領域の値を参照して決済可否を判断する決済可否判定手段と、
前記決済可否判定手段によって決済可能とされた場合に、有効範囲の先頭から後方に決済金額分第1の記憶領域の値を単位金額無しにし、有効範囲の先頭のアドレスを更新するべく前記非接触ICメディアを制御する決済手段と、
を備えることを特徴とする決済装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−193126(P2009−193126A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30462(P2008−30462)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(304048735)エスアイアイ・データサービス株式会社 (126)
【Fターム(参考)】