説明

沈砂槽

【課題】原水流入の勢いによらず、原水内の不純物を除去することが可能な沈砂槽を提供すること。
【解決手段】仕切壁24により槽内空間22が槽上部空間22A及び槽下部空間22Bに仕切られた原水槽20と、槽下部空間22Bへ原水を流入させる流体流入配管26と、仕切壁24に設けられ槽上部空間22Aと槽下部空間22Bを連通する連通路28と、連通路28に設けられ原水内の不純物の通り抜けを規制するメッシュパネル30と、槽上部空間22Aから原水を流出させる流体流出路32と、を沈砂槽10が備えることで、この沈砂槽10は、原水流入の勢いによらず、原水内の不純物を除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈砂槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、井戸水などの原水から砂や不純物(枯れ葉など)を除去する沈砂槽が知られている。この種の沈砂槽は、原水槽と上澄み槽とで構成され、原水槽には原水が流入し、上澄み槽には原水槽に貯留された原水の上澄み部分が流入するようになっている。
【0003】
特許文献1では、上流側水路と下流側水路との間に貯留槽を設け、この貯留槽で上流側水路から流入する被処理水中に含まれる砂や浮遊物などの異物を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−307052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、上流側水路及び下流側水路が貯留槽の上層へ接続されており、上流側水路から流入した被処理水中に含まれる砂や浮遊物などが貯留槽の下層に沈降し、上澄み部分が下流側水路へ流れ込むようになっている。
【0006】
しかし、上流側水路からの被処理水の流入の勢いによっては、砂や浮遊物などが貯留槽の下層に沈降する前に、被処理水が下流側水路へ流れ込んでしまう虞がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべく成されたもので、原水流入の勢いによらず、原水内の不純物を除去することが可能な沈砂槽を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の沈砂槽は、仕切部材により槽内空間が槽上部空間及び槽下部空間に仕切られた貯留槽本体と、前記槽下部空間へ原水を流入させる流体流入路と、前記仕切部材に設けられ、前記槽上部空間と前記槽下部空間を連通する連通路と、前記連通路に設けられ、前記原水内の不純物の通り抜けを規制する規制手段と、前記槽上部空間から前記原水を流出させる流体流出路と、を備えている。
【0009】
請求項1の沈砂槽では、流体流入路を通じて原水が槽下部空間へ流入する。例えば、流入した原水内に原水よりも比重の重い不純物(例えば砂など)が含まれている場合、この不純物は自重により槽下部空間内で沈降する。一方、流入した原水内に原水よりも比重の軽い不純物(例えば枯葉など)が含まれている場合、この不純物は規制手段により槽上部空間への通り抜けが規制される。これにより、槽上部空間への不純物の侵入が抑制され、流体流出路からは不純物が除去された原水が流出される。
【0010】
ここで、原水が勢いよく槽下部空間に流入した場合、原水よりも比重の軽い不純物は水流により槽下部空間内で舞うが、一部が仕切部材などにぶつかり沈降し、残りが規制手段により槽上部空間への通り抜けが規制される。一方、原水よりも比重の重い不純物は水流により槽下部空間内で舞っても自重により槽下部空間内で沈降する。これにより、原水流入の勢いによらず、原水内の不純物を除去することができる。
【0011】
請求項2の沈砂槽は、請求項1の沈砂槽において、前記流体流入路の流入口は、前記槽下部空間の一方側に位置し、前記連通路の連通口は、前記槽下部空間の他方側に位置している。
【0012】
請求項2の沈砂槽では、槽下部空間の一方側に流体流入路の流入口が位置し、槽下部空間の他方側に連通路の連通口が位置していることから、原水が勢いよく槽下部空間に流入しても、原水の勢いは連通路に到達する前に低下し、原水よりも比重が重い不純物は連通路に到達する前に自重により槽下部空間内で沈降する。これにより、原水内の不純物を効果的に除去することができる。
【0013】
請求項3の沈砂槽は、請求項1又は請求項2の沈砂槽において、前記仕切部材は、前記槽下部空間へ突出する突出部を備える。
【0014】
請求項3の沈砂槽では、仕切部材が槽下部空間へ突出する突出部を備えていることから、槽下部空間に勢いよく流入した原水の流れが突出部により乱される。これにより、原水の勢いは連通路に到達する前に低下し、原水よりも比重が重い不純物は連通路に到達する前に自重により槽下部空間内で沈降する。これにより、原水内の不純物を効果的に除去することができる。
【0015】
請求項4の沈砂槽は、請求項1〜請求項3のいずれか1項の沈砂槽において、前記流体流入路の流入口は、下方を向いている。
【0016】
請求項4の沈砂槽では、流体流入路の流入口が下方を向いていることから、槽下部空間に勢いよく流入した原水は、槽下部空間を構成する貯留槽本体の底面へぶつかり、勢いが低下する。これにより、原水よりも比重が重い不純物が連通路に到達する前に自重により槽下部空間内で沈降し、原水内の不純物が効果的に除去される。
【0017】
請求項5の沈砂槽は、請求項1〜請求項4のいずれか1項の沈砂槽において、前記貯留槽本体に隣接して上澄み槽が設けられ、前記上澄み槽は、前記流体流出路により前記槽上部空間と連通している。
【0018】
請求項5の沈砂槽では、貯留槽本体に隣接する上澄み槽へ槽上部空間内の不純物が除去された原水が流体流出路を通じて流出される。これにより、上澄み槽には、不純物が除去された原水が貯溜される。
【0019】
請求項6の沈砂槽は、請求項1〜請求項5のいずれか1項の沈砂槽において、前記規制手段は、メッシュ状、又は、複数の貫通孔が形成された板部材により構成されている。
【0020】
請求項6の沈砂槽では、規制手段をメッシュ状、又は、複数の貫通孔が形成された板部材により構成していることから、簡単な構成で、原水内の不純物を除去することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の沈砂槽は、原水流入の勢いによらず、原水内の不純物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態の沈砂槽の斜視図である。
【図2】第1実施形態の沈砂槽の一部破断斜視図である。
【図3】第1実施形態の沈砂槽の原水槽の一部破断斜視図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図4のB部拡大断面図である。
【図6】その他の実施形態の穴あきパネルを示す正面図である。
【図7】その他の実施形態の連通路及び板部材を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下、本発明の沈砂槽の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1に示すように、沈砂槽10は、複数の矩形状のパネルを連結して構成されている。図2に示すように、沈砂槽10は、原水槽20と、この原水槽20に隣接する上澄み槽40と、を備えている。この原水槽20と上澄み槽40との間には仕切壁12が配置されている。なお、原水槽20は、貯留槽本体の一例である。
【0025】
図2及び図3に示すように、原水槽20は、槽内空間22が仕切壁24により槽上部空間22A及び槽下部空間22Bに仕切られている。仕切壁24は、原水槽20の内壁面に取り付けられた複数の仕切壁パネル25により構成されている。
【0026】
図3及び図4に示すように、原水槽20には、一端が図示しない井戸水(原水)を汲み上げる装置に接続され、他端(流入口26A)が槽下部空間22B内に位置する流体流入配管26が取り付けられている。この流体流入配管26は、原水槽20の槽上部空間22A側の槽壁を貫通し、槽下部空間22Bへ向かって延びて仕切壁24を貫通している。また、流体流入配管26の流入口26Aは下方を向いている。なお、汲み上げ装置により汲み上げられた原水は、流体流入配管26を通じて槽下部空間22B内へ流入する。
【0027】
図5に示すように、仕切壁24には、槽上部空間22A及び槽下部空間22Bを連通する連通路28が設けられている。なお、本実施形態の連通路28は、原水槽20の内壁面と仕切壁パネル25の端面とで構成された隙間である。
【0028】
図4及び図5に示すように、流体流入配管26の流入口26Aは槽下部空間22Bの一方側に位置し、連通路28の連通口28Aは槽下部空間22Bの他方側に位置している。すなわち、流入口26Aと連通口28Aは離間している。
【0029】
図4及び図5に示すように、連通路28には、原水内の不純物(例えば枯葉など)の通り抜けを規制する規制手段の一例としてのメッシュパネル30が設けられている。このメッシュパネル30は、枠体の内側に金属製(例えば、ステンレス製)のメッシュを配置して構成されている。
【0030】
図2及び図3に示すように、仕切壁12の槽上部空間22A側には、槽上部空間22Aと上澄み槽40とを連通する流体流出路32が設けられている。この流体流出路32は、槽上部空間22Aの原水を上澄み槽40へ流出(越流)させるものであり、本実施形態では、仕切壁12に形成された貫通穴である。なお、流体流出路32は、槽上部空間22Aと上澄み槽40とを連通することができればどのようなものでもよく、例えば、仕切壁12と沈砂槽10の天井板との間に設けた隙間でもよい。
【0031】
図3及び図4に示すように、原水槽20の底板34は、複数の底板パネル35により構成されている。この底板パネル35は、端部から中央部へ向かって徐々に槽下部空間22Bへ突出する突出部35Aを備えている。なお、図4では突出部35Aは、上方へ突出している。
【0032】
また、仕切壁パネル25は、底板パネル35に対向して配置され、端部から中央部へ向かって徐々に槽下部空間22Bへ突出する突出部25Aを備えている。なお、図4では突出部35Aは、下方へ突出している。
なお、本実施形態では、底板パネル35と仕切壁パネル25とを同一形状としている。このため、底板パネル35の突出部35Aに対して仕切壁パネル25の突出部25Aが対向している。
【0033】
図4に示すように、メッシュパネル30に対向する底板パネル35には、原水槽20から原水を排出するための排出管36が接続されている。この排出管36は、原水槽20から原水を排出するときに、図示しないバルブを開放して原水を外部へと排出することができるようになっている。
【0034】
次に第1実施形態の沈砂槽10の作用効果について説明する。
沈砂槽10では、流体流入配管26を通じて原水が槽下部空間22Bへ流入する。ここで、流入した原水内に原水よりも比重の重い不純物(例えば砂など)が含まれている場合、この不純物は自重により槽下部空間22B内で沈降する。一方、流入した原水内に原水よりも比重の軽い不純物(例えば枯葉など)が含まれている場合、この不純物はメッシュパネル30により槽上部空間22Aへの通り抜けが規制される。これにより、槽上部空間22Aへの不純物の侵入が抑制され、流体流出路32からは不純物が除去された原水の上澄み部分が上澄み槽40へ流出される。
【0035】
また、原水が勢いよく槽下部空間22Bに流入した場合、原水よりも比重の軽い不純物は水流により槽下部空間22B内で舞うが、一部が槽下部空間22Bを構成する壁面(仕切壁24、底板34、原水槽20の内壁面)にぶつかり沈降し、残りがメッシュパネル30により槽上部空間22Aへの通り抜けが規制される。一方、原水よりも比重の重い不純物は水流により槽下部空間22B内で舞っても自重により槽下部空間22B内で沈降する。これにより、原水流入の勢いによらず、原水内の不純物を除去することができる。結果、流体流出路32からは不純物が除去された原水の上澄み部分が上澄み槽40へ流出される。
【0036】
また、槽下部空間22Bの一方側に流体流入配管26の流入口26Aが位置し、槽下部空間22Bの他方側に連通路28の連通口28Aが位置していることから、原水が勢いよく槽下部空間22Bに流入しても、連通路28到達前に原水の勢いを低下させることができる。
【0037】
さらに、仕切壁パネル25が槽下部空間22Bへ突出する突出部25Aを備えていることから、槽下部空間22Bに勢いよく流入した原水の流れが突出部25Aにより乱される。これにより、連通路28到達前に原水の勢いを低下させることができる。
特に、本実施形態では、底板パネル35が槽下部空間22Bへ突出する突出部35Aを備え、且つ、仕切壁パネル25の突出部25Aと底板パネル35の突出部35Aとが互いに対向していることから、槽下部空間22Bに勢いよく流入した原水の流れをより効果的に乱して、原水の勢いを低下させることができる。なお、不純物は隣接する底板パネル35間の突出部35Aよりも高さが低い部分に沈殿する。
【0038】
そして、流体流入配管26の流入口26Aが下方を向いていることから、槽下部空間22Bに勢いよく流入した原水は、底板34へぶつかり、勢いが低下する。
【0039】
以上のことから、槽下部空間22Bに勢いよく流入した原水の勢いが低下することにより、原水よりも比重が重い不純物及び原水よりも比重が軽い不純物の一部は連通路28に到達する前に自重により槽下部空間22B内で沈降する。結果、原水内の不純物を効果的に除去することができる。
【0040】
また、連通路28にメッシュパネル30を設けるという簡単な構成で、原水よりも比重が軽い不純物の槽上部空間22Aへの通り抜けを規制することができる。
【0041】
[その他の実施形態]
第1実施形態では、規制手段の一例として、連通路28にメッシュパネル30を設ける構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、原水内の不純物の通り抜けを規制することができればいずれのものを連通路28に設けてもよく、例えば、図6に示す複数の貫通孔38Aが形成された穴あきパネル38を連通路28に設ける構成としてもよい。
【0042】
上述の実施形態では、仕切壁パネル25の端面と原水槽20の内壁面とで連通路28を構成しているが、本発明はこの構成に限定されず、図7に示すように、仕切壁24を仕切壁パネル25と1枚の仕切壁パネル50で構成して、この仕切壁パネル50に開口部を形成して連通路52とする構成としてもよい。なお、この連通路52には、規制手段の一例としてのメッシュ状の板部材54が設けられている。
【0043】
また、上述の実施形態では、仕切壁パネル25に端部から中央部へ向かって徐々に槽下部空間22Bへ突出する突出部25Aを設けているが、本発明はこの構成に限定されず、原水の流入時の勢いを、流れを乱して低下させることができれば、仕切壁パネル25に設ける突出部はどのような形状でも構わない。
【0044】
さらに、上述の実施形態では、不純物が除去された原水を上澄み槽40へ流体流出路32を通して流出させる構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、上澄み槽を設けずに、流体流出路32を直接沈砂槽10の下流側の配管に接続する構成としてもよい。
【0045】
なお、上述の実施形態の沈砂槽10は、原水内の不純物を除去する用途に用いているが、原水以外の流体(例えば、排水など)から不純物(流体よりも比重が重い不純物及び比重が軽い不純物)を除去することももちろん可能である。
【0046】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
10 沈砂槽
20 原水槽(貯留槽)
22 槽内空間
22A 槽上部空間
22B 槽下部空間
24 仕切壁(仕切部材)
25A 突出部
26 流体流入配管(流体流入路)
26A 流入口
28 連通路
28A 連通口
30 メッシュパネル(板部材(規制手段))
32 流体流出路
38 穴あきパネル(板部材(規制手段))
40 上澄み槽
52 連通路
54 板部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切部材により槽内空間が槽上部空間及び槽下部空間に仕切られた貯留槽本体と、
前記槽下部空間へ原水を流入させる流体流入路と、
前記仕切部材に設けられ、前記槽上部空間と前記槽下部空間を連通する連通路と、
前記連通路に設けられ、前記原水内の不純物の通り抜けを規制する規制手段と、
前記槽上部空間から前記原水を流出させる流体流出路と、
備える沈砂槽。
【請求項2】
前記流体流入路の流入口は、前記槽下部空間の一方側に位置し、
前記連通路の連通口は、前記槽下部空間の他方側に位置している請求項1に記載の沈砂槽。
【請求項3】
前記仕切部材は、前記槽下部空間へ突出する突出部を備える請求項1又は請求項2に記載に沈砂槽。
【請求項4】
前記流体流入路の流入口は、下方を向いている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の沈砂槽。
【請求項5】
前記貯留槽本体に隣接して上澄み槽が設けられ、
前記上澄み槽は、前記流体流出路により前記槽上部空間と連通している請求項1〜4のいずれか1項に記載の沈砂槽。
【請求項6】
前記規制手段は、メッシュ状、又は、複数の貫通孔が形成された板部材により構成されている請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の沈砂槽。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−183253(P2011−183253A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48382(P2010−48382)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】