説明

油タンク

【課題】油圧回路内に予め滞留していた空気がタンク本体に収容された油内に混ざり込むことを回避できる油タンクを提供する。
【解決手段】油タンク20が備える流入管35は、タンク本体26に入る前に分岐し、少なくとも1つの第一経路35aが止弁33を介して空気層に連絡すると共に、他の第二経路35bがタンク本体26に予め収容された油25内に連絡しており、油25によって押し出された空気を空気層へ逃がし、回収した油をタンク本体26に収容された油内へと戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧回路における油タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建設機械は、作業機の一部であるシリンダなどを駆動するため、コントロールバルブやポンプなどが設けられた油圧回路を有している。シリンダを駆動する際、その油圧回路を通してシリンダに油を供給しているが、特に初めて油圧回路に油を循環させた場合、油圧回路内に予め滞留していた空気が油によって押し出され、油タンク内に流入する。この場合、油タンクに予め収容された油内に大量の空気が混入されることになり、その空気を含んだ油がそのまま油圧回路やシリンダなどに再度供給されてしまう。その結果、油圧回路内でキャビテーションが起こりやすくなり、ポンプなどを破損させる恐れがあった。なお、例えば油タンク内に予め収容された油に接することなく、回収した油を戻す配管を、油タンク内の空気層へ連絡していたとしても、空気よりも比重が重い油は、配管から油タンク内の油へ向かって流下する際に空気を巻き込むことになり、結局油に空気が混入された状態で回収されてしまう。そのため、回収した油に混入した空気を取り除くため、一度油圧回路内に油を循環させた後に空気が消えるまで長時間放置したり、仮説のフラッシング専用ポンプやタンクを用いて仮の油を循環させたりする必要があり、時間的にもコスト的にも不便であった。
【0003】
そこで、特許文献1には、油タンク内に設けられたサイクロン型気泡除去装置によって、油圧回路を通って油タンクに戻ってきた油に混入された空気を取り除く液体タンクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−84923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された液体タンク内に設けられたサイクロン型気泡除去装置は、粘性の高い油を上手くサイクロン気流に乗せるためのサイクロン室、サイクロン室から油を流出させる流出口、除去した気泡をサイクロン室から排出する排出口、およびそれらを構成するその他の部材が必要となり、その分コストも掛かってくる。また、例えば油圧回路内を循環して戻ってきた油の流速が極端に遅い場合だと、上手くサイクロン気流を作れない恐れもある。
【0006】
本発明は、上記の問題を鑑みてされたものであり、油圧回路内に予め滞留していた空気がタンク本体に収容された油内に混ざり込むことを回避できる油タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の油タンクは、油を収容するタンク本体と、前記タンク本体から外部に流出した前記油を当該タンク本体に再度流入させる流入管と、を備えた油タンクであって、前記流入管は、前記タンク本体に入る前に分岐し、少なくとも1つの経路が止弁を介して空気層に連絡し、他の経路が当該タンク本体に予め収容された前記油内に連絡している。
【0008】
上記の構成によれば、タンク本体から外部に流出した油が流入管を通って再度タンク本体に流入される。その際、タンク本体に収容された油内に連絡している経路は、空気層に連絡している経路よりも圧力が高くなっている。そのため、空気層に連絡している経路上に設けられた止弁を開放状態にすることによって、流入管などの油圧回路内に予め滞留していた空気は、油に押し出されて空気層に連絡している経路側へと流れていく。これにより、油圧回路内に滞留していた空気を空気層へ逃がすことができる。また、流入管を流れる油が止弁に達した際に、止弁を閉塞状態にすることによって、油が今度はタンク本体に予め収容された油内に連絡している経路側へと流れていく。これにより、流入管を流れる油をタンク本体に収容された油へと戻すことができる。このように、流入管などの油圧回路内に予め滞留していた空気がタンク本体に収容された油内に混ざり込むことを回避できるため、油内に混入した空気を自然分離させる手間を省くことができる。また、油内に混入した空気を取り除く気泡除去装置などを特別に設ける必要もないため、その分コスト削減にもなる。
【0009】
また、第2の発明の油タンクは、第1の発明の油タンクにおいて、前記流入管は、前記タンク本体に入る前に2つに分岐し、一方の第一経路が止弁を介して空気層に連絡し、他方の第二経路が当該タンク本体に予め収容された前記油内に連絡している。
【0010】
上記の構成によれば、タンク本体から外部に流出した油が流入管を通って再度タンク本体に流入される。その際、第二経路は、タンク本体に収容された油内に連絡しているため、第一経路よりも圧力が高くなっている。そのため、第一経路上に設けられた止弁を開放状態にすることによって、流入管などの油圧回路内に予め滞留していた空気は、油に押し出されて第一経路側へと流れていく。これにより、油圧回路内に滞留していた空気を空気層へ逃がすことができる。また、流入管を流れる油が止弁に達した際に、止弁を閉塞状態にすることによって、油が今度は第二経路側へと流れていく。これにより、流入管を流れる油をタンク本体に収容された油へと戻すことができる。このように、流入管などの油圧回路内に予め滞留していた空気がタンク本体に収容された油内に混ざり込むことを回避できるため、油内に混入した空気を自然分離させる手間を省くことができる。また、油内に混入した空気を取り除く気泡除去装置などを特別に設ける必要もないため、その分コスト削減にもなる。
【0011】
また、第3の発明の油タンクは、第1の発明または第2の発明の油タンクにおいて、前記止弁を介する前記経路が連絡している前記空気層は、前記タンク本体内の空気層である。
【0012】
上記の構成によれば、油圧回路内に滞留していた空気をタンク本体内の空気層へ逃がすことができる。これにより、万一、空気と共に止弁を通過してしまった少量の油があったとしても、タンク本体に収容された油へ確実に戻すことができる。
【0013】
また、第4の発明の油タンクは、第1の発明ないし第3の発明のうち何れか1つの発明の油タンクにおいて、前記止弁は、当該止弁内を通過する流体が空気から油に変わる時に開放状態から閉塞状態に自動的に切り替わる。
【0014】
上記の構成によれば、作業者などが止弁を手動で切り替える必要がないため、より手間が省けて人件費などのコスト削減をすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の油タンクによると、流入管などの油圧回路内に予め滞留していた空気がタンク本体に収容された油内に混ざり込むことを回避できるため、油内に混入した空気を自然分離させる手間を省くことができる。また、油内に混入した空気を取り除く気泡除去装置などを特別に設ける必要もないため、その分コスト削減にもなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る油圧回路全体を示す説明図である。
【図2】(a)本発明の実施形態に係る止弁の構成を示す側面図である。(b)本発明の実施形態に係る止弁において、図2(a)のPポート側から視た図である。
【図3】(a)本発明の実施形態に係る止弁が、開放された状態を示す説明図である。(b)本発明の実施形態に係る止弁が、閉塞された状態を示す説明図である。
【図4】(a)本発明の別の実施形態に係る油タンクに油が再度流入する様子を示す説明図である。(b)本発明の別の実施形態に係る油タンクに設けられた収容部から油が越流する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
(油タンク)
図1に示すように、本実施形態に係る油タンク20は、油25を収容するタンク本体26と、タンク本体26から外部に流出した油25をタンク本体26に再度流入させる流入管35と、を備えた油タンク20であって、流入管35は、タンク本体26に入る前に分岐し、少なくとも1つの経路が止弁33を介して空気層に連絡し、他の経路が当該タンク本体26に予め収容された油25内に連絡している。
【0019】
また、本実施形態に係る油タンク20において、流入管35は、タンク本体26に入る前に2つに分岐し、一方の第一経路35aが止弁33を介して空気層に連絡し、他方の第二経路35bがタンク本体26に予め収容された油25内に連絡している。
【0020】
また、本実施形態に係る油タンク20において、止弁33を介する第一経路35aが連絡している空気層は、タンク本体26内の空気層である。
【0021】
また、本実施形態に係る油タンク20における止弁33は、止弁33内を通過する流体が空気から油25に変わる時に開放状態から閉塞状態に自動的に切り替わる。
【0022】
ここで、本実施形態における油25とは、例えば産業機械に用いられるシリンダなどの作業機を駆動する油圧作動油のことである。なお、本発明において、油25は油圧作動油に限定される必要はなく、他種類のものであってもよい。
【0023】
油タンク20の主体となるタンク本体26は、直方体状の筐体を有し、シリンダ50を駆動する油25を収容する。なお、タンク本体26の形状は直方体に限定される必要はなく、例えば円筒状であってもよい。
【0024】
タンク本体26は、流出管36および流入管35によってシリンダ50に接続されている。これにより、タンク本体26に収容された油25は、流出管36を通ってシリンダ50に供給され、流入管35を通ってタンク本体26に再度戻されて収容されるようになっている。
【0025】
(流出管)
流出管36は、タンク本体26とシリンダ50との間を繋ぐ配管である。流出管36は、油25をシリンダ50などに供給するために設けられている。流出管36の先端部には、流出口31が設けられている。流出口31は、タンク本体26の底辺部に位置しており、タンク本体26に予め収容された油25を外部に流出させる。さらに、流出管36におけるシリンダ50と流出口31との途中経路には、ポンプ34が設けられている。このような構成により、ポンプ34を駆動することによって、タンク本体26に収容された油25が流出口31から流出され、流出管36内を流過してシリンダ50に供給されるようになっている。また、流出口31には、図示しないフィルタが取り付けられており、油25内に浮遊するゴミや埃などが油圧回路1内に入り込むことを防いでいる。
【0026】
(流入管)
流入管35は、シリンダ50とタンク本体26との間を繋ぐ配管である。流入管35は、シリンダ50などで使用された油25をタンク本体26に再度戻すために設けられている。ここで、流入管35は、タンク本体26に入る手前で2つの経路に分岐されている。具体的には、流入管35は、第一経路35aと第二経路35bとに経路を分けてタンク本体26に連絡されている。
【0027】
第一経路35aは、タンク本体26内の空気層に連絡されている。ここで、本実施形態の場合、第一経路35aは、タンク本体26内において、収容されている油25の上側に位置する空気層となる部分に連絡されている。なお、タンク本体26内の空気層は、これに限定される必要はなく、例えばタンク本体26の外部の空気層へ連絡されていてもよい。さらに、第一経路35aには、タンク本体26に入る手前に止弁33が設けられている。
【0028】
第二経路35bは、タンク本体26に予め収容された油25内に連絡されている。第二経路35bの先端部には、流入口16が設けられている。流入口16は、タンク本体26に予め収容された油25の中に埋没しており、油圧回路1内を循環した油25がタンク本体26に再度流入されるようになっている。また、第二経路35bの先端近くには、孔14が設けられている。孔14は、第二経路35b内を流過する油25の量や流速の変化によって起こるサージ圧を緩和する役割を有している。
【0029】
(止弁)
止弁33は、図2(a)に示すように、筐体41と、流入室47と、流出室48と、ばね収容室46と、鋼球収容室49と、から構成されている。筐体41は、図2(b)に示すように、断面形状が六角形であり、止弁33全体を保護する筐体の役割を有する。流入室47は、長尺状の筐体41内の一方の端(Pポート側)に位置し、円筒状の形を有している。第一経路35a内を流過した流体は、この流入室47側(Pポート側)から流入するようになっている。流出室48は、筐体41内において流入室47と反対の端(Rポート側)に位置し、円筒状の形を有している。流入室47側(Pポート側)から流入して止弁33内を流過した流体は、この流出室48側(Rポート側)から流出するようになっている。円筒状のばね収容室46は、筐体41内の中央において、流出室48側に設けられ、その内部には、ばね43が収容されている。また、円筒状の鋼球収容室49は、筐体41内の中央において、流入室47側に設けられ、その内部には、鋼球45が収容されている。鋼球45は、ばね43の一端に接続されている。一方、ばね43の他端は、流出室48に接続されている。また、流入室47と鋼球収容室49との境目には、支持部42および止輪44が設けられている。ここで、鋼球収容室49の内径よりも鋼球45の直径はわずかに小さくなるように設計されている。そのため、鋼球45に圧力が掛かっていない場合は、ばね43の付勢力によって鋼球収容室49内で鋼球45が収まっており、この時、鋼球収容室49の内面と鋼球45との間には僅かに隙間が空くようになっている。また、ばね収容室46の内径は、鋼球45の直径よりさらに小さくなるように設計されている。そのため、Pポート側の圧力がばね43の付勢力よりも大きくなった場合は、その圧力によって鋼球45がRポート側に押し出され、やがて鋼球収容室49とばね収容室46との境目である境界部70に隙間無く接するようになっている。
【0030】
上記のような構成を有する止弁33によって、第一経路35aが自動的に開閉可能となっている。例えば、図1の円部S1に示すように、油圧回路1内を循環する油25は、油圧回路1内に予め滞留していた空気を押し出しながら流入管35を流過してタンク本体26に戻ってくる。この時、第二経路35bの先端部に設けられた流入口16はタンク本体26に予め収容された油25に埋没しているため、第二経路35b内の圧力は高くなっている。そのため、油25によって押し出された空気は、第一経路35aを介して止弁33側へと流れていく。そして、止弁33を通過した空気は、タンク本体26の空気層へと逃げていく。その後、図1の円部S2に示すように、止弁33内を通過する空気が油25に切り替わると、止弁33は、自動的に閉塞状態になって、今度は油25が第二経路35b内を流過し、流入口16からタンク本体26内へ流入されるようになっている。
【0031】
タンク本体26の天板上には、エアブリーザ32が設けられている。エアブリーザ32は、油タンク20から流出する油25と油タンク20内へ流入する油25との油量の差から起因するタンク内圧の増減を抑えるために、フィルタを通して給排気できるようになっている。
【0032】
上記のような構成を有する油タンク20は、ポンプ34、方向切替弁37、多機能弁60、およびシリンダ50などから構成された油圧回路1に供給する油25を貯油している。なお、本実施形態に係る油圧回路1は、特に水門を開閉するアクチュエータなどに利用される大規模なものであるが、これに限定される必要はなく、その他の用途に用いられていてもよい。
【0033】
(ポンプ)
ポンプ34は、2つの歯車が噛み合うことによって回転し、タンク本体26に収容された油25を吸入し、後の経路へ排出する。これにより、ポンプ34を駆動することによって、タンク本体26に収容された油25を流出口31から吸出し、シリンダ50へと供給できるようになっている。なお、ポンプ34は、歯車式ポンプに限らず、他種類のポンプを用いていてもよい。
【0034】
(シリンダ)
シリンダ50は、シリンダケース52と、シリンダケース52内を長手方向に進退するロッド51と、シリンダケース52内でロッド51の先端に設けられた図示しないピストンと、を備えている。ピストンは、シリンダケース52の内周を摺動自在になっており、このピストンの運動によってロッド51がA方向またはB方向に進退し、シリンダ50がアクチュエータとしての役割を担うことができる。
【0035】
(方向切替弁)
方向切替弁37は、油タンク20とシリンダ50との間の経路に設けられており、3つのスイッチを適宜切り替えることによって油25の流れ方向を変え、シリンダ50におけるロッド51の進退を変更させる役割を有する。具体的に、方向切替弁37は、スイッチ37aとスイッチ37bとスイッチ37cとに切り替えることができる。スイッチ37aに切り替えた場合、ロッド51はA方向に伸びるようになっている。一方、スイッチ37cに切り替えた場合、ロッド51はB方向に縮むようになっている。また、スイッチ37bに切り替えた場合、ロッド51の伸縮が止まるようになっている。
【0036】
(多機能弁)
本実施形態における多機能弁60は、水門油圧開閉装置用多機能弁である。多機能弁60は、シリンダ50の直下に接続されており、塞止弁62・63と、バイパス弁61と、を有している。塞止弁62は、流出管36と接続されており、タンク本体26とシリンダ50との通路を開閉する。一方、塞止弁63は、流入管35と接続されており、タンク本体26とシリンダ50との通路を開閉する。また、バイパス弁61は、流出管36と流入管35との通路を開閉する。このような構成を有する多機能弁60を利用して、塞止弁62・63およびバイパス弁61を開閉することによって、シリンダ50や流出管36、流入管35における不具合箇所の検知が出来るようになっている。また、多機能弁60を用いることによって、タンク本体26に収容された油25を途切れさせることなく油圧回路1内で循環させて、タンク本体26に再度戻すことができるようになっている。なお、本発明において、多機能弁60は、水門油圧開閉装置用多機能弁を必ずしも用いる必要はなく、他の多機能弁を用いていてもよい。
【0037】
(油圧回路内の空気抜き)
次に、本実施形態に係る油タンク20を用いて、油圧回路1内の空気抜きの様子を詳細に説明する。
【0038】
まず、作業者によって、図示しない供給口からタンク本体26に油25が貯油される。この時、流出口31と流入口16は、タンク本体26に貯油された油25内に埋没される。
【0039】
次に、ポンプ34の駆動によって、流出口31から油25が外部へ流出される。ここで、多機能弁60における塞止弁62・63は閉められており、バイパス弁61は開けられている。さらに、方向切替弁37は、スイッチ37bに切り替えられている。つまり、シリンダ50内には油25が供給されずに、流出管36および流入管35のみに油25が供給されるようになっている。流出口31から流出した油25は、シリンダ50や流出管36、および流入管35などの油圧回路1内に予め滞留していた空気を押し出しながら循環し、やがてタンク本体26へと戻ってくる。この時、図3(a)に示すように、流入管35の分岐点には、流過してきた油25によって押し出された空気が通過する。ここで、流入口16は、タンク本体26に貯油された油25内に埋没されているため、第二経路35b内の圧力は第一経路35a内の圧力よりも高くなっている。そのため、油25によって押し出された空気は、第一経路35a内を流過し、やがて止弁33に達する。
【0040】
Pポート側から止弁33内に流入した空気は、鋼球収容室49と鋼球45との間の隙間を利用して、鋼球45の外周を流過する。そして、ばね収容室46および流出室48を通過してRポート側から流出される。その後、止弁33を通過した空気は、再び第一経路35a内を流過し、タンク本体26内の空気層へと逃げていく。
【0041】
次に、図3(b)に示すように、油圧回路1内に滞留していた空気が空気層へ逃げた後、止弁33内に今度は油25が流入される。この時、空気よりも粘性がはるかに大きい油25によって、鋼球45の外周部における抵抗は極めて大きくなる。そのため、Pポート側の圧力は上昇する。鋼球45は、ばね43の付勢力よりも大きいその圧力によってRポート側に押し出され、やがて境界部70に密着する。これにより、鋼球45と境界部70との間には隙間がなくなるため、これ以上、油25は止弁33内を通過することができなくなる。そのため、今度は油25が第二経路35b内へと流れを変えて流過し、やがて、タンク本体26に予め貯油された油25内へと戻される。
【0042】
このように、油圧回路1内に予め滞留していた空気をタンク本体26内の空気層へ逃がすことができ、戻ってきた油25は、タンク本体26に予め貯油された油25内へと戻すことができる。次に、シリンダ50内に油25を供給する場合を説明する。先ず、多機能弁60における塞止弁62・63を開け、バイパス弁61を閉める。さらに、方向切替弁37をスイッチ37a若しくはスイッチ37bに交互に切り替え、シリンダ50のロッド51を進退させる。これにより、シリンダ50内に油25を供給することができる。なお、ポンプ34を停止させると、止弁33におけるPポート側の圧力が低下し、ばね43の付勢力によって、鋼球45は元の位置に戻される。
【0043】
なお、本実形態に係る油圧回路1は、塞止弁62・63およびバイパス弁61を1つにまとめた多機能弁60を有しているが、夫々が別個に備えられた油圧回路1であってもよい。多機能弁60を用いることによって、塞止弁62、塞止弁63およびバイパス弁61との間に存在する配管を最小限に抑えることができるため、油圧回路1内で抜かなければならない空気を最小限に抑えることができる。
【0044】
また、シリンダ50に多機能弁60を接続させていることにより、タンク本体26に収容された油25を途切れさせることなく油圧回路1内で循環させて、タンク本体26に再度戻すことができる。そして、油圧回路1内に滞留していた空気は、止弁33の開閉を利用することによってタンク本体26の空気層へと逃がしてやることができる。
【0045】
また、本実形態に係る止弁33は、自動的に開閉可能であるが、作業者によって適宜開閉する手動式であってもよい。
【0046】
また、本実形態に係る止弁33とは異なる構成を有する止弁によって、第一経路35aの開閉を制御していてもよい。
【0047】
また、本実形態に係る流入管35は、第一経路35aおよび第二経路35bの2つの経路に分岐しているが、例えば3つや4つの経路に分岐されていてもよい。少なくとも、1つの経路が空気層へ連絡され、他の経路がタンク本体26に収容された油25内に連絡されていればよい。
【0048】
以上、本実施形態に係る油タンク20によれば、タンク本体26から外部に流出した油25が流入管35を通って再度タンク本体26に流入される。その際、タンク本体26に収容された油25内に連絡している経路は、空気層に連絡している経路よりも圧力が高くなっている。そのため、空気層に連絡している経路上に設けられた止弁33を開放状態にすることによって、流入管35などの油圧回路1内に予め滞留していた空気は、油25に押し出されて空気層に連絡している経路側へと流れていく。これにより、油圧回路1内に滞留していた空気を空気層へ逃がすことができる。また、流入管35を流れる油25が止弁33に達した際に、止弁33を閉塞状態にすることによって、油25が今度はタンク本体26に予め収容された油25内に連絡している経路側へと流れていく。これにより、流入管35を流れる油25をタンク本体26に収容された油25へと戻すことができる。このように、流入管35などの油圧回路1内に予め滞留していた空気がタンク本体26に収容された油25内に混ざり込むことを回避できるため、油25内に混入した空気を自然分離させる手間を省くことができる。また、油25内に混入した空気を取り除く気泡除去装置などを特別に設ける必要もないため、その分コスト削減にもなる。
【0049】
また、本実施形態に係る油タンク20によれば、タンク本体26から外部に流出した油25が流入管35を通って再度タンク本体26に流入される。その際、第二経路35bは、タンク本体26に収容された油25内に連絡しているため、第一経路35aよりも圧力が高くなっている。そのため、第一経路35a上に設けられた止弁33を開放状態にすることによって、流入管35などの油圧回路1内に予め滞留していた空気は、油25に押し出されて空気層に連絡している第一経路35a側へと流れていく。これにより、油圧回路1内に滞留していた空気を空気層へ逃がすことができる。また、流入管35を流れる油25が止弁33に達した際に、止弁33を閉塞状態にすることによって、油25が今度は第二経路35b側へと流れていく。これにより、流入管35を流れる油25をタンク本体26に収容された油25へと戻すことができる。このように、流入管35などの油圧回路1内に予め滞留していた空気がタンク本体26に収容された油25内に混ざり込むことを回避できるため、油25内に混入した空気を自然分離させる手間を省くことができる。また、油25内に混入した空気を取り除く気泡除去装置などを特別に設ける必要もないため、その分コスト削減にもなる。
【0050】
また、本実施形態に係る油タンク20によれば、油圧回路1内に滞留していた空気をタンク本体26内の空気層へ逃がすことができる。これにより、万一、空気と共に止弁33を通過してしまった少量の油25があったとしても、タンク本体26に収容された油25へ確実に戻すことができる。
【0051】
また、本実施形態に係る油タンク20によれば、作業者などが止弁33を手動で切り替える必要がないため、より手間が省けて人件費などのコスト削減をすることができる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態を説明した。なお、本発明は上記の実施形態に限定される必要はない。
【0053】
(別の実施形態)
例えば、図4に示すように、別の実施形態に係る油タンク220は、油25を収容するタンク本体26と、タンク本体26の底辺部に設けられ、油25を外部に流出する流出口31と、流出口31から流出した油25がタンク本体26に再度流入する流入口16と、流出口31と流入口16とを繋ぐ流出管36および流入管35と、側面と底面とから構成され、タンク本体26に収容された油25の油面から突出して上面が開口された凹型形状の筐体を有し、タンク本体26に予め収容された油25から分離して流入口16から流入した油25を収容する収容部10と、収容部10の上端部に設けられ、収容部10の上端から越流した流入口16から流入した油25を油面に導くつば部12と、を備えていてもよい。
【0054】
さらに、別の実施形態に係る油タンク220において、つば部12の表面には、金網13が設けられていてもよい。
【0055】
具体的には、図4(a)示すように、油圧回路1内に滞留していた空気がタンク本体26内の空気層へ逃げた後、油圧回路1内を循環した油25が流入口16から収容部10へ流入される。この時、流入された油25に、万一空気が気泡40となって残留していた場合でも、回収した油25は一旦収容部10内に収容されるため、タンク本体26に予め収容されている油25全体に気泡40が混入することを防ぐことができる。また、図4(b)示すように、次々と流入口16から流入された油25は、やがて収容部10の上端から越流し、つば部12によって予め収容された油25の油面に戻される。ここで、油面に戻された油25に含まれる気泡40は、油25よりも比重が軽いため、常に油面近くのみに滞留するようになる。このように、タンク本体26に予め収容された油25の油面近くのみに気泡40を留まらせることができるため、タンク本体26の底辺部に設けられた流出口31からは常に気泡40を含まない油25を流出させることができる。さらに、収容部10から越流した油25をつば部12上で流過させることにより、油25の油膜厚さを薄くさせることができるため、油25に混入した気泡40が油25内から離脱する距離を短くすることができる。これにより、油25に混入した気泡40をつば部12上で離脱させ易くすることができるため、タンク本体26に予め収容された油25の油面近くに留まる気泡40を最小限に抑えることができる。このように、特別に気泡40を取り除く気泡除去装置などを設けずに、時間をかけることなく外部へ流出する油25に気泡40が混入するのを確実に防ぐことができる。
【0056】
また、別の実施形態に係る油タンク220によれば、油25に混入された気泡40を金網13に接触させることによって、細かく潰すことができる。これにより、より細かい気泡40を油面に滞留させることができる。
【0057】
以上、本発明の実施例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、油圧回路における油タンクについて利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 油圧回路
14 孔
16 流入口
20 油タンク
25 油
26 タンク本体
31 流出口
32 エアブリーザ
33 止弁
34 ポンプ
35 流入管
35a 第一経路
35b 第二経路
36 流出管
37 方向切替弁
37a スイッチ
37b スイッチ
37c スイッチ
50 シリンダ
51 ロッド
52 シリンダケース
60 多機能弁
61 バイパス弁
62 塞止弁
63 塞止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油を収容するタンク本体と、
前記タンク本体から外部に流出した前記油を当該タンク本体に再度流入させる流入管と、
を備えた油タンクであって、
前記流入管は、前記タンク本体に入る前に分岐し、少なくとも1つの経路が止弁を介して空気層に連絡し、他の経路が当該タンク本体に予め収容された前記油内に連絡していることを特徴とする油タンク。
【請求項2】
前記流入管は、前記タンク本体に入る前に2つに分岐し、一方の第一経路が止弁を介して空気層に連絡し、他方の第二経路が当該タンク本体に予め収容された前記油内に連絡していることを特徴とする請求項1に記載の油タンク。
【請求項3】
前記止弁を介する前記経路が連絡している前記空気層は、前記タンク本体内の空気層であることを特徴とする請求項1または2に記載の油タンク。
【請求項4】
前記止弁は、当該止弁内を通過する流体が空気から油に変わる時に開放状態から閉塞状態に自動的に切り替わることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の油タンク。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−169360(P2011−169360A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32124(P2010−32124)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(500408854)株式会社ユーテック (12)
【Fターム(参考)】