説明

油井管用熱延鋼板および油井管用熱延鋼板の製造方法

【課題】UT試験における不良率が十分に低い油井管を製造することができる油井管用熱延鋼板およびその製造方法の提供。
【解決手段】少なくとも、
C:0.15質量%以上0.30質量%未満、
Si:0.10〜0.40質量%、
Mn:1.0〜2.0質量%、
Al:0.01〜0.10質量%、
Ca:0.0015〜0.0050質量%、
S:0.005質量%以下、
N:0.0050質量%以下、かつ、
TiをNに対する質量比(Ti/N)が3.2以上を満たすように含有し、
残部が、Feおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、
板厚が10mm以下である油井管用熱延鋼板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油、天然ガス等の掘削に用いられる油井管の素材として好適に用いることができる油井管用熱延鋼板および油井管用熱延鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、原油価格の高騰や、近い将来に予想される石油資源の枯渇という観点から、従来、省みられなかったような深度が深い油田や、炭酸ガス、塩素イオン等を含む厳しい腐食環境の油田やガス田、さらには寒冷地や海底といった掘削環境が厳しい油田等の開発が盛んになっている。
したがって、このような環境下で使用される油井管(特にチュービングパイプ)には、高強度で、かつ優れた耐腐食性、更には優れた靱性を兼ね備えた材質が要求されている。
【0003】
このような要求に応える油井管の素材として、炭素や窒素等の各原子の含有量を特定範囲に調製した鋼素材や熱延鋼板が知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−265657号公報
【特許文献2】特開2007−138289号公報
【特許文献3】特開2007−138290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが、従来公知の油井管用の鋼素材や熱延鋼板について検討したところ、炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、カルシウム(Ca)、硫黄(S)および窒素(N)の含有量によっては、油井管の作製時(特に突き合わせ溶接時)に溶接近傍部に微細な割れが生じたり、非金属介在物に起因した微細な割れが生じたり、溶接(熱処理)を受けた後の組織に起因した微細な割れが生じたりすることにより、超音波探傷試験(Ultrasonic Testing,以下「UT試験」ともいう。)での不良率が高くなる場合があることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、UT試験における不良率が十分に低い油井管を製造することができる油井管用熱延鋼板およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、C、Si、Mn、Al、Ca、SおよびNの質量%ならびにTiのNに対する質量比(Ti/N)を特定の範囲に調製した熱延鋼板を用いることにより、UT試験における不良率が十分に低い油井管を製造することを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記(1)〜(4)を提供する。
【0008】
(1)少なくとも、
C:0.15質量%以上0.30質量%未満、
Si:0.10〜0.40質量%、
Mn:1.0〜2.0質量%、
Al:0.01〜0.10質量%、
Ca:0.0015〜0.0050質量%、
S:0.005質量%以下、
N:0.0050質量%以下、かつ、
TiをNに対する質量比(Ti/N)が3.2以上を満たすように含有し、
残部が、Feおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、
板厚が10mm以下である油井管用熱延鋼板。
【0009】
(2)Tiの含有量が、0.015〜0.021質量%である上記(1)に記載の油井管用熱延鋼板。
【0010】
(3)更に、Nbを0.005〜0.025質量%含有する上記(1)または(2)に記載の油井管用熱延鋼板。
【0011】
(4)少なくとも、
C:0.15質量%以上0.30質量%未満、
Si:0.10〜0.40質量%、
Mn:1.0〜2.0質量%、
Al:0.01〜0.10質量%、
Ca:0.0015〜0.0050質量%、
S:0.005質量%以下、
N:0.0050質量%以下、かつ、
TiをNに対する質量比(Ti/N)が3.2以上を満たすように含有し、
残部が、Feおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有する鋼素材を1000〜1300℃の温度に加熱する加熱工程と、
上記加熱工程の後に、仕上げ温度800〜950℃で上記鋼素材に熱間圧延を施し、板厚10mm以下とする熱間圧延工程と、
上記熱間圧延工程の後に、上記鋼素材を500℃以上600℃未満の温度で巻取る巻取工程とを有する油井管用熱延鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
以下に示すように、本発明によれば、UT試験における不良率が十分に低い油井管を製造することができる油井管用熱延鋼板およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔油井管用熱延鋼板〕
本発明の油井管用熱延鋼板(以下、単に「本発明の熱延鋼板」と略す。)は、少なくとも、Cを0.15質量%以上0.30質量%未満、Siを0.10〜0.40質量%、Mnを1.0〜2.0質量%、Alを0.01〜0.10質量%、Caを0.0015〜0.0050質量%、Sを0.005質量%以下、Nを0.0050質量%以下、かつ、TiをNに対する質量比(Ti/N)が3.2以上を満たすように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、板厚が10mm以下である油井管用の熱延鋼板である。
以下に、本発明の熱延鋼板について、各化学成分の限定理由および組織の限定理由について詳述する。
【0014】
<C:0.15質量%以上0.30質量%未満>
Cは、鋼の高強度化に必須の元素であり、本発明の熱延鋼板における含有量は0.15質量%以上0.30質量%未満である。
ここで、Cの含有量が0.15質量%以上であると、本発明の熱延鋼板を用いて作製される油井管(以下、単に「パイプ」ともいう。)の強度が十分に担保できる。
また、Cの含有量が0.30質量%未満であると、UT試験における不良率を低くすることができる。これは、金属組織を構成するフェライト(以下、「素材フェライト」という。)の強度が高くなり過ぎないため、パイプの溶接近傍部だけでなく、素材フェライトと素材フェライトとの界面における割れの発生も抑制することができたためと考えられる。
更に、Cの含有量が0.30質量%未満であると、溶接後のマルテンサイト組織の形成も抑制することができる。
本発明においては、Cの含有量は0.19〜0.29質量%であるのが好ましく、0.23〜0.27質量%であるのがより好ましい。
【0015】
<Si:0.10〜0.40質量%>
Siは、鋼の脱酸剤として添加される元素であり、本発明の熱延鋼板における含有量は0.10〜0.40質量%である。
ここで、Siの含有量が0.10質量%以上であると、鋼の脱酸剤として十分に機能し、また固溶強化により鋼の強度を確保することができる。
また、Siの含有量が0.40質量%以下であると、パイプの溶接近傍部におけるSi酸化物の残存量が少なくなるため、溶接部の靱性が維持され、UT試験における不良率を低く保つことができる。
本発明においては、Siの含有量は0.20〜0.30質量%であるのが好ましく、0.23〜0.25質量%であるのがより好ましい。
【0016】
<Mn:1.0〜2.0質量%>
Mnは、鋼の強度と靭性を向上する元素であり、本発明の熱延鋼板における含有量は1.0〜2.0質量%である。
ここで、Mnの含有量が1.0質量%以上であると、鋼の強度および靱性を確保することができる。
また、Mnの含有量が2.0質量%以下であると、パイプの溶接性が良好となり、UT試験における不良率を低くすることができる。
本発明においては、Mnの含有量は、耐腐食性の観点から1.30〜1.60質量%であるのが好ましく、1.35〜1.50質量%であるのがより好ましい。
【0017】
<Al:0.01〜0.10質量%>
Alは、鋼の脱酸剤として添加される元素であり、本発明の熱延鋼板における含有量は0.01〜0.10質量%である。
ここで、Alの含有量が0.01質量%以上であると、鋼の脱酸剤として十分に機能することができる。
また、Alの含有量が0.10質量%以下であると、アルミナ系介在物の発生が抑制され、UT試験における不良率を低くすることができる。
本発明においては、Alの含有量は、鋼の靱性の観点から、0.01〜0.05質量%であるのが好ましく、0.03〜0.04質量%であるのがより好ましい。
【0018】
<Ti:質量比(Ti/N)≧3.2>
Tiは、結晶粒を微細化し、鋼の高強度化および高靭性化に有効な元素であり、本発明の熱延鋼板における含有量は、後述するNに対するTiの質量比(Ti/N)が3.2以上を満たす量である。
ここで、Tiの含有量が上記質量比(Ti/N)3.2以上を満たすと、UT試験における不良率を低くすることができる。これは、NがTiで固定されることにより、素材フェライトに固溶するフリーなNを低減することができたためと考えられる。
本発明においては、上記質量比(Ti/N)は、UT試験における不良率をより低くすることができ、またパイプの機械的特性にも優れる理由から、3.2〜7.0であるのが好ましく、4.0〜6.0であるのがより好ましい。
また、Tiの含有量は、パイプの溶接近傍部のペネトレータの発生を抑制し、パイプの溶接近傍部の割れの発生をより抑制することができる理由から、0.015〜0.021質量%であるのが好ましく、0.016〜0.020質量%であるのがより好ましい。
【0019】
<Ca:0.0015〜0.0050質量%>
Caは、鋼中の硫化物の形態を制御することにより、硫化物を無害化する作用を有する元素であり、本発明の熱延鋼板における含有量は0.0015〜0.0050質量%である。
ここで、Caの含有量が0.0015質量%以上であると、非金属介在物であるMnSの形成を抑制できるため、MnSの形成によって引き起こされるパイプの靱性の低下や、MnSと素材フェライトとの界面で発生する割れを抑制することができ、UT試験における不良率を低くすることができる。
また、Caの含有量が0.0050質量%以下であると、CaO系の酸化物やCaSが少なくなるため鋼の清浄性が良好となり、これらと素材フェライトとの界面で発生する割れを抑制することができるため、UT試験における不良率を低く保つことができる。
本発明においては、Caの含有量は0.0020〜0.0040質量%であるのが好ましく、0.0025〜0.0035質量%であるのがより好ましい。
【0020】
<S:0.005質量%以下>
Sは、鋼中に不純物として存在する元素であり、本発明の熱延鋼板における含有量は0.005質量%以下である。
ここで、Sの含有量が0.005質量%以下であると、非金属介在物であるMnSの形成を抑制できるため、MnSの形成によって引き起こされるパイプの靱性の低下や、MnSと素材フェライトとの界面で発生する割れを抑制することができ、UT試験における不良率を低くすることができる。
本発明においては、Sの含有量は0.003質量%以下であるのが好ましく、実質的に含有していないのがより好ましい。
【0021】
<N:0.0050質量%以下>
Nは、鋼中に微量ながら不可避的に含有される元素であり、本発明の熱延鋼板における含有量は0.0050質量%以下である。
ここで、Nの含有量が0.0050質量%以下であると、UT試験における不良率を低くすることができる。これは、金属組織を構成する素材フェライトの強度が高くなり過ぎず、また溶接時の熱影響によるマルテンサイト相への変態が抑制され、更に上述したTiによるNの固定物(TiN)の量自体が少なくなるため鋼の清浄性も良好となり、TiNと素材フェライトとの界面で発生する割れを抑制することができたためと考えられる。
本発明においては、Nの含有量は0.0040質量%以下であるのが好ましく、実質的に含有していないのがより好ましい。
【0022】
<Nb:任意成分>
本発明の熱延鋼板は、結晶粒を微細化し、鋼の高強度化および高靭性化に有効な元素であるNbを含有するのが好ましい。
本発明においては、所望によりNbを含有する場合の含有量は、鋼の高強度化および高靭性化ならびにコストの観点から0.005〜0.025質量%であるのが好ましく、0.010〜0.020質量%であるのがより好ましい。
【0023】
<P:不可避的不純物成分>
本発明の熱延鋼板は、鋼中に不可避的不純物としてPを含有しうる。
本発明においては、Pの含有量は、鋼の靱性および耐腐食性を確保する観点から0.025質量%以下に調製するのが好ましく、0.020質量%以下に調製するのがより好ましい。
【0024】
<O:不可避的不純物成分>
本発明の熱延鋼板は、鋼中に不可避的不純物としてOを含有しうる。
本発明においては、Oの含有量は、鋼の靱性および耐腐食性を確保する観点から0.0050質量%以下に調製するのが好ましく、実質的に含有していないのがより好ましい。
【0025】
<その他の任意成分>
上述した必須の含有成分(C、Si、Mn、Al、Ti、Ca、SおよびN)ならびに任意の含有成分(Nb)が基本組成であるが、本発明においては、主に鋼の強度向上の観点から、V、Cr、Cu、NiおよびMoからなる群から選択される1種以上の元素を必要に応じて含有していてもよい。
【0026】
〔油井管用熱延鋼板の製造方法〕
本発明の油井管用熱延鋼板の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す。)は、少なくとも、Cを0.15質量%以上0.30質量%未満、Siを0.10〜0.40質量%、Mnを1.0〜2.0質量%、Alを0.01〜0.10質量%、Tiを0.015〜0.021質量%、Caを0.0015〜0.0050質量%、Sを0.005質量%以下、Nを0.0050質量%以下、かつ、TiをNに対する質量比(Ti/N)が3.2以上を満たすように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有する鋼素材を1000〜1300℃の温度に加熱する加熱工程と、上記加熱工程の後に仕上げ温度800〜950℃で上記鋼素材に熱間圧延を施し、板厚10mm以下とする熱間圧延工程と、上記熱間圧延工程の後に、上記鋼素材を500℃以上600℃未満の温度で巻取る巻取工程とを有する製造方法である。
以下に、本発明の製造方法の出発原料(鋼素材)および各工程について詳述する。
【0027】
<鋼素材>
本発明の製造方法で使用する鋼素材は、上述した本発明の熱延鋼板で説明した各成分を含有する鋼スラブである。
上記鋼素材の調製方法は、特に限定されないが、上述した各成分を含有する組成の溶鋼を、転炉等の常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の常用の鋳造方法で鋼素材とすることが好ましい。
【0028】
<加熱工程>
上記加熱工程は、上記鋼素材を加熱する工程であり、本発明の製造方法における加熱温度(SRT)は1000〜1300℃である。
ここで、加熱温度が1000℃以上であると、鋼中の炭窒化物(特にTiC)が再固溶するため、鋼に必要な強度を付与し易くなる。
また、加熱温度が1300以下であると、結晶粒の粗大化が抑制されるため鋼の靱性低下を抑制することができ、また、圧延中の酸化物量を抑えることができるため、歩留まりが良好となる。
本発明においては、加熱温度(SRT)は1200〜1300℃であるのが好ましい。
【0029】
<熱間圧延工程>
上記熱間圧延工程は、上記加熱工程によって加熱された鋼素材に仕上げ温度800〜950℃で熱間圧延を施し、板厚10mm以下とする工程である。
本発明においては、最終的な板厚が10mm以下となれば、上記熱間圧延工程の条件は特に限定されず、従来公知の粗圧延および仕上圧延を施すことができる。
また、本発明においては、板厚は、3〜7mmであるのが好ましい。
【0030】
また、上記熱間圧延工程においては、最終的な仕上圧延を800〜950℃で施す。
ここで、上記仕上げ温度とは、仕上げ圧延機直後の鋼素材の表面温度を意味する。
仕上げ温度が950℃以下であると、結晶粒の粗大化が抑制され、鋼板に要求される靭性を確保することができ、また、正常な組織が得られるため必要な強度特性を得ることができる。
一方、仕上げ温度が800℃以上であると、鋼板の組織が均一となり、正常な組織を得ることができるため、パイプ製造時に素材フェライトの界面における変形を抑制し、素材フェライト界面で発生する割れを抑制することができる。
【0031】
<巻取工程>
上記巻取工程は、上記熱間圧延工程によって圧延された鋼素材を巻取る工程であり、本発明の製造方法における巻取り温度(CT)は500℃以上600℃未満である。
ここで、上記巻取り温度とは、巻取り機で巻取る直前の鋼素材の表面温度を意味する。
上記巻取り温度が500℃以上であると、金属組織を構成する素材フェライトの強度が高くなり過ぎないため巻取り機での巻取りがスムーズとなり、また鋼板の形状が均一となり、板厚方向の温度差が生じにくくなるため、材質のバラツキを抑制することができる。
また、巻取り温度が600℃未満であると、上記熱間圧延工程により生成される鋼板表面のスケールの厚さが厚くなり過ぎず、下地との密着性を維持することができるため、熱延後のスケール剥れを抑制することができ、パイプの作製時(特に突き合わせ溶接時)の不良原因を軽減することができる。また、鋼板の組織の粗大化を抑制し、靱性も良好となる。
本発明においては、上記巻取り温度は、熱延時のスケール剥れをより抑制することができる理由から、560〜580℃であるのが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を用いて、本発明の熱延鋼板について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1〜2、比較例1〜17)
下記第1表に示す組成の溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造により鋼素材を調製した。
調製した鋼素材に対して、下記第1表に示す加熱温度の加熱工程、下記第1表に示す板厚の熱間圧延工程、および、下記第1表に示す巻取り温度の巻取工程を行い、熱延鋼帯とした。
次いで、熱延鋼帯から、円筒形状に造管して端部同士を溶接して溶接パイプを作製した。
このようにして作製したパイプについて、以下に示す方法でUT試験における不良率(以下、「UT不良率」と略す。)およびパイプ強度を評価した。これらの結果を下記第1表に示す。
【0034】
<UT不良率>
UT不良率(UT不良パイプ本数比率)は、作製したパイプを超音波探傷検査に供し、検査に供したパイプ本数のうち、UT不良(UT探傷)と判断されたパイプ本数の割合から算出した。
ここで、UT不良率が1.0%以下であると、UT不良率が十分に低い(○)と評価することができ、UT不良率が1.0%超であると、UT不良率が高い(×)と評価することができる。
【0035】
<パイプ強度>
パイプ強度は、作製したパイプから切り出した試験片を引張試験に供して測定し、油井管としての必要な強度の有無を評価した。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
第1表に示す結果から、C、Si、Mn、Al、Ca、SおよびNの質量%ならびにTiのNに対する質量比(Ti/N)が所定の範囲内になる熱延鋼板を用いることにより、UT不良率が十分に低いパイプを製造できることが分かった(実施例1および2)。
これは、C、Si、Mn、Al、Ca、SおよびNのいずれか1つ以上の質量%が所定の範囲から外れる熱延鋼板を用いた場合にはUT不良率が高くなり(比較例1〜9、11、12、14〜17)、また、C、Si、Mn、Al、Ca、SおよびNの質量%がいずれも所定の範囲内にあってTiのNに対する質量比(Ti/N)のみが所定の範囲外である熱延鋼板を用いた場合にもUT不良率が高くなることを考慮すると(比較例10および13)、極めて意外な効果であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
C:0.15質量%以上0.30質量%未満、
Si:0.10〜0.40質量%、
Mn:1.0〜2.0質量%、
Al:0.01〜0.10質量%、
Ca:0.0015〜0.0050質量%、
S:0.005質量%以下、
N:0.0050質量%以下、かつ、
TiをNに対する質量比(Ti/N)が3.2以上を満たすように含有し、
残部が、Feおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、
板厚が10mm以下である油井管用熱延鋼板。
【請求項2】
Tiの含有量が、0.015〜0.021質量%である請求項1に記載の油井管用熱延鋼板。
【請求項3】
更に、Nbを0.005〜0.025質量%含有する請求項1または2に記載の油井管用熱延鋼板。
【請求項4】
少なくとも、
C:0.15質量%以上0.30質量%未満、
Si:0.10〜0.40質量%、
Mn:1.0〜2.0質量%、
Al:0.01〜0.10質量%、
Ca:0.0015〜0.0050質量%、
S:0.005質量%以下、
N:0.0050質量%以下、かつ、
TiをNに対する質量比(Ti/N)が3.2以上を満たすように含有し、
残部が、Feおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有する鋼素材を1000〜1300℃の温度に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後に、仕上げ温度800〜950℃で前記鋼素材に熱間圧延を施し、板厚10mm以下とする熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程の後に、前記鋼素材を500℃以上600℃未満の温度で巻取る巻取工程とを有する油井管用熱延鋼板の製造方法。

【公開番号】特開2012−177182(P2012−177182A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41482(P2011−41482)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】