説明

油圧ダンパ

【課題】その大型化を確実に防止することができる油圧ダンパを提供する。
【解決手段】軸線方向の両端部を閉止された筒状のシリンダ52と、シリンダ52内に収納されシリンダ52の軸線方向両端部からシリンダ52の外側に突出する一対のピストンロッド62,64を有するピストン60と、シリンダ52内のピストン60の両側に形成され内部に作動油が充填された2つの油室66,68と、シリンダ52の一端部に延長して設けられ、2つの油室66,68に連通するアキュムレータ油室86とアキュムレータピストン88を有するアキュムレータ80を内部に一体的に設けた延長部材78とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建築物等の構造物に取り付けられ、地震等の外力による構造物の各位置相互間の変位を吸収するために用いられるような油圧ダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧ダンパには、例えば図6に示すような、地震等の外力による構造物の各位置相互間の変位を吸収して制震動作するために用いられる制震用の油圧ダンパ2があった。
【0003】
この従来の油圧ダンパ2は、両端を閉止された円筒状のシリンダ4と、このシリンダ4の内部に収納されて、シリンダ4内に形成されていた空間を2つに区分して、その両側に作動油が充填された2つの油室8,10を形成するピストン6とを備えるようになっていた。
【0004】
このピストン6は、その両端面6a,6bの中央部から軸線方向(図6中左右方向)の外側に伸びる2つのピストンロッド12,14を有しており、これらのピストンロッド12,14は、シリンダ4の両端面4a,4bから軸線方向の外側にそれぞれの先端部が突出していた。そして、ピストンロッド14の先端部は、シリンダ4の端面4bから軸線方向の外側に延長する延長部材16の内部空間に収容されるようになっていた。
【0005】
そして、従来の油圧ダンパ2は、そのピストン6の中実内部に、油室8,10間を連通する油路6c,6dが形成され、それぞれの油路の途中には、上記油室8,10間の作動油の流動状態を制御するリリーフ弁18,20が設けられていた。
【0006】
また、ピストンロッド14の中実内部には空間が形成され、この空間内には、油室8と10内の作動油の膨張、収縮を吸収して油圧ダンパ2を安定して動作させる機能を有する、アキュムレータ22が収納されていた。
【0007】
このため、アキュムレータ22は、地震等によりピストン6がシリンダ4内で軸線方向に移動する、油圧ダンパ2の作動時には、ピストンロッド14と一緒に移動するようになっていた。
【0008】
アキュムレータ22は、ピストンロッド14内に形成されていた1つの空間を、2つの空間に区分するアキュムレータピストン26と、2つの空間の一方に形成され、上記2つの油室8,10に連通するアキュムレータ油室24と、2つの空間の他方に収納されて、アキュムレータピストン26をアキュムレータ油室24に向けて押圧するバネ28と、アキュムレータピストン26の中央部にその軸線を共有するようにその基端部が一体的に形成されて、その先端部がピストンロッド14先端部の軸孔14aを通って外側に突出している棒状部材30とにより構成されていた。
【0009】
そして、シリンダ4内の油室8と10内の作動油の量は、アキュムレータ22のアキュムレータ油室24内の作動油を介して、棒状部材30の先端部がピストンロッド14の軸孔14aを通って、ピストンロッド14の先端面14bから外側に突出した、その突出長さ寸法の変化によって監視することができるようになっていた(特許文献1の図3参照)。
【0010】
上記ピストンロッド14先端部の軸孔14aを通って、その先端面14bから外側に突出した棒状部材30の先端部の突出長さ寸法の変化を視認できるようにするため、延長部材16にはその内部の棒状部材30の先端部を覗くための貫通孔16aが形成されていた。
【0011】
このような従来の油圧ダンパ2によれば、リリーフ弁18,20やアキュムレータ22等をその内部に設けたことにより、そのシリンダ4の外側にそれらの部品を設ける必要が無いので、それらの部品と油圧ダンパ2周囲の他部材との干渉を防止することができるようにはなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−269005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の油圧ダンパ2においては、ピストンロッド14の内部にアキュムレータ22が設けられたため、ピストンロッド14の径方向の太さ寸法が大きくなってしまうので、従来の油圧ダンパ2の軸線方向に垂直な方向の外形寸法も大きくなり、その大型化を招くという問題があった。
【0014】
また、上記従来の油圧ダンパ2の大型化を防止するために、ピストンロッド14の太さ寸法を小さくすると、アキュムレータ22のアキュムレータ油室24の容積を同等に維持するためには、ピストンロッド14の長さ方向の寸法を大きくする必要があるので、シリンダ4や延長部材16の長さ寸法もそれに応じて大きくする必要がある。このため、油圧ダンパが別の意味でやはり大型化を招くという問題があった。
【0015】
また従来の油圧ダンパとしては、図7に示すような、他の従来の制震用の油圧ダンパ40が案出されていた。
【0016】
前記従来の油圧ダンパ2においては、図6に示すように、ピストンロッド14先端部の中実内部にアキュムレータ22が設けられていたのに対して、他の従来の油圧ダンパ40は、図7に示すように、ピストンロッド14の先端部にアキュムレータ42がその軸線方向に直列に連結されていた。
【0017】
そして、このアキュムレータ42は、図7に示すように、円筒状のアキュムレータ本体44と、その内部に形成されていた1つの空間を2つの空間に区分するアキュムレータピストン26と、2つの空間の一方に形成され、上記2つの油室8,10に連通するアキュムレータ油室24と、2つの空間の他方に収納されて、アキュムレータピストン26をアキュムレータ油室24に向けて押圧するバネ28と、アキュムレータピストン26の中央部にその軸線を共有するようにその基端部が一体的に形成されて、その先端部がアキュムレータ本体44先端部の軸孔から外側に突出している棒状部材30とにより構成されていた。
【0018】
このアキュムレータ42、及びピストンロッド14の軸線方向の、シリンダ4の端面4bより外側(図中左側)に突出した先端部は、シリンダ4の軸線方向にその長さが延長する延長部材16の内部空間に収容されるようになっていた。この延長部材16は、その軸線方向の図7中左端部が略塞がっていると共に、その右端部がシリンダ4の図7中左端部に連結されるようになっていた。
【0019】
このような従来の油圧ダンパ40においては、ピストンロッド14のシリンダ4の端面4bより外側(図中左側)に突出した先端部に、アキュムレータ42が軸線方向に直列に連結されているため、従来の油圧ダンパ2に比べると、そのピストンロッド14の径方向の太さ寸法を小さくすることができるようにはなっていた。
【0020】
しかしながら、上記従来の油圧ダンパ40においては、図7に示すように、ピストンロッド14とは別体の円筒状のアキュムレータ本体44を設ける必要があり、このアキュムレータ本体44は、地震等によりピストン50がシリンダ42内で軸線方向に移動する油圧ダンパ40の作動時には、ピストンロッド14と一緒に移動するようになっているので、アキュムレータ本体44とその周囲を被覆する延長部材16との間にそれらが互いに接触しないために、それらの間に十分な空隙部を設ける必要があった。
【0021】
このようなアキュムレータ本体44と上記空隙部を設ける必要がある従来の油圧ダンパ40は、延長部材16の径方向の外形寸法が大きくなって、油圧ダンパ40の軸線方向に垂直な方向の外形寸法も大きくなってしまうので、やはりその大型化を避けることは難しいという問題があった。
【0022】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、その大型化を確実に防止することができる油圧ダンパを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するために、本発明による油圧ダンパは、
軸線方向の両端部を閉止された筒状のシリンダと、
前記シリンダ内に収納されシリンダの軸線方向両端部からシリンダの外側に突出する一対のピストンロッドを有するピストンと、
前記シリンダ内のピストンの両側に形成され内部に作動油が充填された2つの油室と、
前記シリンダの一端部に延長して設けられ、前記2つの油室に連通するアキュムレータ油室とアキュムレータピストンを有するアキュムレータを内部に一体的に設けた延長部材とを備えたことを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明による油圧ダンパは、前記延長部材の内部には、前記一方のピストンロッドの先端部を前記アキュムレータ油室内の密閉状態を維持しながら摺動可能に嵌合するロッド受部が設けられたことを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明による油圧ダンパは、前記延長部材の前記シリンダ側の端部に、前記シリンダの前記延長部材側の端部を閉止するカバー部材を兼ねる蓋部が一体的に形成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
このような本発明の油圧ダンパによれば、
軸線方向の両端部を閉止された筒状のシリンダと、
前記シリンダ内に収納されシリンダの軸線方向両端部からシリンダの外側に突出する一対のピストンロッドを有するピストンと、
前記シリンダ内のピストンの両側に形成され内部に作動油が充填された2つの油室と、
前記シリンダの一端部に延長して設けられ、前記2つの油室に連通するアキュムレータ油室とアキュムレータピストンを有するアキュムレータを内部に一体的に設けた延長部材とを備えたことにより、
油圧ダンパの大型化を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る油圧ダンパ50をその軸線に沿って示す断面図である。
【図2】図1に示す延長部材78及びその近傍を拡大して示す部分拡大断面図である。
【図3】図1に示す延長部材78のみをその軸線に沿って示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る油圧ダンパ100をその軸線に沿って示す断面図である。
【図5】図1に示す延長部材102のみをその軸線に沿って示す断面図である。
【図6】従来の油圧ダンパ2をその軸線に沿って示す断面図である。
【図7】他の従来の油圧ダンパ40をその軸線に沿って示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る油圧ダンパを実施するための形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
【0029】
図1から図3は、本発明の第1の実施の形態に係る制震用の油圧ダンパ50について説明するために参照する図である。
【0030】
本発明の第1の実施の形態に係る油圧ダンパ50は、図1に示すように、円筒状のシリンダ本体54と、このシリンダ本体54の軸線方向の両端部を塞ぐ一対のカバー部材56,58とにより構成されたシリンダ52を備えており、そのシリンダ52の内部にはピストン60が収納されている。
【0031】
ピストン60は、図1中左右方向に伸びる軸線を有する長さの短い円柱状に形成され、その外周部がシリンダ52のシリンダ本体54の内周面と摺動して、その軸線方向に動くことができるようにシリンダ52内に設けられている。
【0032】
そして、シリンダ52はその内部に、ピストン60によりその両側に仕切られた第1油室66と第2油室68とを有しており、これらの第1油室66と第2油室68の内部には作動油が充填されている。
【0033】
また、ピストン60には、その端面中央部から軸線方向に伸び、シリンダ52のカバー部材56より外側(図1中右側)に突出した丸棒状の第1ピストンロッド部62と、ピストン60の第1ピストンロッド部62とは反対側の端面中央部から軸線方向に伸び、シリンダ52のカバー部材58より外側(図中左側)に突出した丸棒状の第2ピストンロッド部64とが一体的に形成されている。
【0034】
図1に示すように、第1ピストンロッド部62は、シリンダ52のカバー部材56に形成された嵌合孔56aに、第1油室66内の密閉状態を維持しながら摺動可能に嵌合されており、その軸線方向のカバー部材56より外側にその先端部が突出している。
【0035】
また、第2ピストンロッド部64は、シリンダ52のカバー部材58に形成された嵌合孔58aに、第2油室68内の密閉状態を維持しながら摺動可能に嵌合されており、その軸線方向のカバー部材58より外側にその先端部が突出している。
【0036】
そして、図2に示すように、第2ピストンロッド部64の軸線方向のカバー部材58より外側(図中左側)に突出した先端部は、後述するロッド受部材82に形成された嵌合孔82bに、後述するアキュムレータ油室86内の密閉状態を維持しながら摺動可能に嵌合するようになっている。
【0037】
そして、シリンダ52のカバー部材58には、円筒状の延長部材78の図中右端部が一体的に連結されている。この延長部材78は、シリンダ52の軸線と同方向にシリンダ52の長さを図中左方に延長するように設けられると共に、その図中左端部が閉止されている。また延長部材78はその内部に、第2ピストンロッド部64の先端部を収納するようになっている。
【0038】
図1に示すように、ピストン60の中実内部には、第1油室66と第2油室68との間を連通する流路60a,60bそれぞれが形成され、これらの流路60a,60bはピストン60の軸線と平行方向に形成されている。そして、これらの流路60a,60bの途中にはそれぞれ、リリーフ弁70,72(調圧弁)が互いに逆向きに動作するように配置されている。
【0039】
これらのリリーフ弁70,72は、ピストン60がシリンダ52内で軸線方向に移動しない油圧ダンパ50の非作動時は、内部に作動油が流れないよう流路の断面を塞ぐ機能を有しているが、地震等によりピストン60がシリンダ52内で軸線方向に移動する油圧ダンパ50の作動時には、第1油室66と第2油室68のいずれか一方の油室内の作動油の圧力が一定値を超えると、流路の一方を開いて作動油が一方の油室から他方の油室に作動油が流れることを可能とする機能を有している。
【0040】
また、ピストン60の中実内部には、シリンダ52内の第1油室66及び第2油室68と、加圧式アキュムレータ80のアキュムレータ油室86とを連通する流路74,76が、互いにT字状に連結して形成されている。そして、ピストン60の流路74,76、及び後述する加圧式アキュムレータ80のアキュムレータ油室86の内部には、作動油が充填されている。
【0041】
流路76の図1中上端部の左右両側に、T字状に連結する2本の流路74,74それぞれの途中には、不図示のオリフィス等の絞り(油圧低減手段)がそれぞれ備えられている。この油圧低減手段は、地震等によりピストン60がシリンダ52内で移動する油圧ダンパ50の作動時に、第1油室66及び第2油室68側から流路76、アキュムレータ油室86への作動油の流量を制限して、アキュムレータ油室86の作動油の圧力を、第1油室66及び第2油室68の作動油の圧力より低減する機能を有している。
【0042】
そして、加圧式アキュムレータ80は、延長部材78がその外形を構成する筐体として用いられ、延長部材78とその内部の複数の部品と一体化してアキュムレータを構成するようになっている。
【0043】
すなわち上記延長部材78は、図3に示すように、図中左右方向に伸びる軸線を有する円筒状に形成されており、その軸線方向の中央部にその軸線から一定半径の内周面78cを有する内部空間78sが形成されている。
【0044】
そして、延長部材78には、その軸線方向の右端面から図中左方に少し凹んだ凹部78kが形成されており、その凹部78kの軸線と平行な円筒状の内周部にはメネジ部78bが形成されている。
【0045】
図2に示すように、このメネジ部78bがカバー部材58の左側突出部の円筒状の外周部に形成されたオネジ部にネジ締結されることにより、延長部材78はシリンダ52のカバー部材58に一体的に連結されるようになっている。
【0046】
また、図3に示すように、延長部材78の内部空間78sの、内周面78c右端部の段差面78eよりさらに右方には、内周面78dが形成されている。この内周面78dの内径は、内周面78cの内径よりも小さく形成されている。
【0047】
そして、延長部材78の内周面78dの右側の端面78fよりさらに右方には、肉厚を軸線方向に貫通する嵌合孔78gが形成されている。この嵌合孔78gの内径は、内周面78dの内径よりも小さく形成されており、この嵌合孔78gには、図2に示すように、
第2ピストンロッド部64の先端部の少し手前の部分が挿通されるようになっている。
【0048】
延長部材78には、図3に示すように、その内周面78dの左端部の段差面78eから右方に軸線方向に沿って、内周面78dの図中横方向長さの途中迄メネジ部78hが形成されており、さらにその内周面78cの左端部にはメネジ部78iが形成されている。
【0049】
図2に示すように、延長部材78の内周面78c内の右端部にはロッド受部材82が設けられ、このロッド受部材82は、延長部材78の内周面78cの内径と略同一の外径を有する円筒状に形成されており、その軸線方向(図中左右方向)の右端部にはオネジ部82aが、端面82cの中央部より右方に突出した円筒状部分の外周部に形成されている。
【0050】
そして、ロッド受部材82の外周部及び内周部には無端状の溝部82d,82eが形成されており、それらの溝部82d,82e内にはOリング93,94(シール部材)を取付けることができるようになっている。
【0051】
延長部材78とロッド受部材82とは、ロッド受部材82のオネジ部82aが延長部材78のメネジ部78hにネジ込まれて、ロッド受部材82の端面82cが延長部材78の段差面78eに接触後、ネジを強く締め付けることにより互いに固定されるようになっている。
【0052】
このとき、延長部材78の内周面78cとロッド受部材82の溝部82dとの間にOリング93をその断面を圧縮させた状態で配置することにより、ロッド受部材82は延長部材78の内周面78cに隙間なく接触することができる。
【0053】
また、第2ピストンロッド部64の軸線方向左方に突出した先端部は、その外周面がロッド受部材82の嵌合孔82bに嵌合されるようになっている。
【0054】
このとき、ロッド受部材82の嵌合孔82bの内周面の溝部82eと、第2ピストンロッド部64の先端部との間にOリング94を、その断面を圧縮させた状態で配置することにより、アキュムレータ油室86内の密閉状態を維持しながら、第2ピストンロッド部64はロッド受部材82の嵌合孔82bの内周面に隙間がない状態で摺動することができるようになっている。
【0055】
加圧式アキュムレータ80の蓋部材84は、図2に示すように、その外周にオネジ部84aを有する円盤状に形成されており、この蓋部材84には、棒状部材92が緩く挿通する軸孔84bが形成されている。
【0056】
延長部材78と蓋部材84とは、蓋部材84のオネジ部84aが延長部材78のメネジ部78iにネジ込まれて、互いに接合されるようになっている。
【0057】
図2に示すように、延長部材78の内部にロッド受部材82及び蓋部材84が設けられることにより、それらの間の内部空間に加圧式アキュムレータ80が構成されるようになっている。
【0058】
加圧式アキュムレータ80は、延長部材78と、その内部に取付けられるロッド受部材82と蓋部材84との間に形成された1つの空間を、2つの空間に区分するアキュムレータピストン88を備えている。
【0059】
そして、加圧式アキュムレータ80はさらに、アキュムレータピストン88により区分された2つの空間の図2中右方に形成されるアキュムレータ油室86と、2つの空間の図2中左方に収納されて、アキュムレータピストン88をアキュムレータ油室86に向けて押圧するバネ90(弾性部材)と、アキュムレータピストン88の軸線部にその基端部が一体的に形成され、その先端部が軸孔84bを通って蓋部材84の外側(図中左側)に突出している丸棒状の棒状部材92を備えている。
【0060】
加圧式アキュムレータ80のアキュムレータピストン88は、図2に示すように、その軸線方向が延長部材78の軸線方向(図中左右方向)と共有する円盤状に形成されており、その外周面が延長部材78の内周面78cに接触してその軸線方向(図中左右方向)に摺動するようになっている。
【0061】
このアキュムレータピストン88の外周部には無端状の溝部88aが形成されており、その溝部88aにはOリング95(シール部材)を取付けることができるようになっている。このため、延長部材78の内周面78cとアキュムレータピストン88の溝部88aとの間にOリング95をその断面を圧縮させた状態で配置することにより、アキュムレータピストン88は延長部材78の内周面78cに隙間がない状態で摺動することができるようになっている。
【0062】
図2に示す加圧式アキュムレータ80の、アキュムレータピストン88に対してロッド受部材82側に形成されたアキュムレータ油室86の内部には、作動油が充填されている。
【0063】
このアキュムレータ油室86は、図1に示すピストン60に設けられた流路74,76を通って、シリンダ52内の第1油室66及び第2油室68と連通するようになっている。そして、ピストン60がシリンダ52内で軸線方向に移動しない油圧ダンパ50の非作動時においては、アキュムレータ油室86内部の作動油の圧力は、第1油室66及び第2油室68内の作動油の圧力と同一になっている。
【0064】
加圧式アキュムレータ80の、アキュムレータピストン88に対してアキュムレータ油室86と反対側の空間には、図2に示すように、アキュムレータピストン88の軸線方向(図中左右方向)に伸縮するバネ90が、その両端部を蓋部材84とアキュムレータピストン88のそれぞれに接触して圧縮された状態で配置されている。
【0065】
このバネ90は、アキュムレータ油室86内の作動油に押されているアキュムレータピストン88をアキュムレータ油室86の反対側から押圧して、アキュムレータ油室86内の作動油の圧力に対抗するバネ力を有している。
【0066】
また、図2に示すように、アキュムレータピストン88の、バネ90の右端部が当接した面の軸芯部には、丸棒状の棒状部材92の基端部が一体的に固定されており、その先端部が蓋部材84に形成された軸孔84bを緩く貫通して蓋部材84より外側に突出している。
【0067】
この加圧式アキュムレータ80は、シリンダ52内の第1油室66及び第2油室68の作動油の膨張、収縮を吸収する機能を有している。
【0068】
例えば、図1に示すピストン60がシリンダ52内で軸線方向に移動して、第1油室66と第2油室68の何れか一方の油室内の作動油の圧力が低下した場合に、その圧力が低下した油室にアキュムレータ油室86から作動油を供給することにより、作動油が不足して第1油室66や第2油室68内が負圧になることを防止して、油圧ダンパ50の性能を安定させることができるようになっている。
【0069】
また、加圧式アキュムレータ80は、作動油の予備タンクとしての機能をも有しており、油漏れなどにより第1油室66や第2油室68の作動油が不足した際に、アキュムレータ油室86から各油室66,68に作動油を供給することができるようになっている。
【0070】
そして、アキュムレータ油室86内の作動油の圧力に応じて、そのバネ90は伸縮するようになっており、アキュムレータ油室86内の作動油が、シリンダ52内の第1油室66や第2油室68に供給される等により減少して低圧となった場合には、それに対応してバネ90が長くなり、バネ90が長くなった分だけアキュムレータピストン88と棒状部材92が軸線方向内側(図中右側)に移動することにより、棒状部材92の先端部の、蓋部材84から外側への突出長さが減少するようになっている。
【0071】
上記蓋部材84の軸孔84bを通って蓋部材84から外側に突出した、棒状部材92の先端部の長さ寸法の変化を視認できるようにするため、延長部材78にはその内部の棒状部材92を覗くための貫通孔78aが形成されている。
【0072】
このため、貫通孔78aから覗いて蓋部材84の軸孔84bから突出した棒状部材92の先端部の長さ寸法の変化を視認することにより、シリンダ52の第1油室66や第2油室68内の作動油の量の変化を判別することができるため、油圧ダンパ50が本来の機能を発揮するのに十分な油量を有しているかを外部から容易に認識することができるようになっている。
【0073】
このような本実施の形態における油圧ダンパ50は、延長部材78の内側に加圧式アキュムレータ80が一体化して構成されているため、前記従来の油圧ダンパ2(図6参照)に比べて、そのピストンロッド14の軸線方向に垂直な径方向の太さ寸法を小さくすることができるので、その大型化を確実に防止することができる。
【0074】
また、本実施の形態における油圧ダンパ50は、必要以上にその軸線方向に垂直な方向の外形寸法を小さくしなくともよいため、軸線方向の長さ寸法も必要以上に大きくしなくともよいので、この意味でもその大型化を確実に防止することができる。
【0075】
また本実施の形態における油圧ダンパ50は、延長部材78の内側に加圧式アキュムレータ80が一体化して構成されているため、前記従来の油圧ダンパ40(図7参照)における円筒状のアキュムレータ本体44と、その周囲を被覆する延長部材16との間に、それらが接触しないように空隙部を設けなくてもよいので、軸線方向に垂直な径方向の太さ寸法を小さくすることができるため、やはりその大型化を確実に防止することができる。
【0076】
したがって、このような本発明の第1の実施の形態に係る油圧ダンパ50によれば、油圧ダンパ50の大型化を確実に防止することができる。
【0077】
図4及び図5は、本発明の第2の実施の形態に係る制震用の油圧ダンパ100について説明するために参照する図である。
【0078】
前記第1の実施の形態に係る油圧ダンパ50においては、図1に示すように、それぞれ別個の部材である、カバー部材58と延長部材78を備えていたのに対して、本実施の形態に係る油圧ダンパ100においては、図4に示すように、前記第1の実施の形態に係る油圧ダンパ50におけるカバー部材58と延長部材78が一体となって形成された延長部材102を備えるようになっている点において異なっている。
【0079】
本実施の形態に係る油圧ダンパ100における延長部材102は、図3に示すような、前記第1の実施の形態における延長部材78のメネジ部78bの代わりに、図5に示すようなオネジ部102bが形成されている点と、前記第1の実施の形態における延長部材78の嵌合孔78gの代わりに、シール部材を取付けることができる無端状の溝部が2つ形成された嵌合孔102gが形成されている点以外は、前記第1の実施の形態における延長部材78と同様の構成を備えるようになっている。
【0080】
すなわち、前記第1の実施の形態における延長部材78の貫通孔78a、内周面78c,78d、段差面78e、端面78f及びメネジ部78h,78iと同様に、延長部材102の貫通孔102a、内周面102c,102d、段差面102e、端面102f及びメネジ部102h,102iが形成されるようになっている。
【0081】
このような本発明の第2の実施の形態に係る油圧ダンパ100によっても、前記第1の実施の形態に係る油圧ダンパ50と同様に、油圧ダンパ100の大型化を確実に防止することができる。
【0082】
また、本実施の形態に係る油圧ダンパ100においては、前記第1の実施の形態に係る油圧ダンパ50におけるカバー部材58と延長部材78の代わりに、単一の延長部材102を備えるようになっているので、その部品点数を減らすことができてその高価格化を防止することができる。
【0083】
なお、前記第1及び第2の実施の形態に係る油圧ダンパ50等においては、制震用の油圧ダンパについて説明したが、本発明は免震用の油圧ダンパとか、その他の種類の油圧ダンパにおいても適用することができる。
【0084】
また、前記第1の実施の形態に係る油圧ダンパ50においては、図1に示すように、加圧式アキュムレータ80のアキュムレータピストン88に一体的に棒状部材92が設けられ、その先端部の蓋部材84からの突出長さの変化によりシリンダ52内の作動油の量の増減を確認することができるようになっていたが、他の手段によりシリンダ52内の作動油の量の増減を確認することができて、棒状部材92を設ける必要がない場合には、アキュムレータピストン88には棒状部材92を設けなくてもよい。
【0085】
このように油圧ダンパのアキュムレータピストンに棒状部材92を設けない場合には、延長部材78の貫通孔78aや蓋部材84の軸孔84bも形成しなくてもよいので、油圧ダンパの加工工数が減ってその高価格化を防止することができる。
【符号の説明】
【0086】
2 油圧ダンパ
4 シリンダ
4a,4b 端面
6 ピストン
6a,6b 端面
6c,6d 油路
8,10 油室
12,14 ピストンロッド
14a 軸孔
14b 先端面
16 延長部材
16a 貫通孔
18,20 リリーフ弁
22 アキュムレータ
24 アキュムレータ油室
26 アキュムレータピストン
28 バネ
30 棒状部材
40 油圧ダンパ
42 アキュムレータ
44 アキュムレータ本体
50 油圧ダンパ
52 シリンダ
54 シリンダ本体
56,58 カバー部材
56a,58a 嵌合孔
60 ピストン
60a,60b 流路
62 第1ピストンロッド部
64 第2ピストンロッド部
66 第1油室
68 第2油室
70,72 リリーフ弁
74,76 流路
78 延長部材
78a 貫通孔
78b メネジ部
78c,78d 内周面
78e 段差面
78f 端面
78g 嵌合孔
78h,78i メネジ部
78k 凹部
78s 内部空間
80 加圧式アキュムレータ
82 ロッド受部材
82a オネジ部
82b 嵌合孔
82c 端面
82d,82e 溝部
84 蓋部材
84a オネジ部
84b 軸孔
86 アキュムレータ油室
88 アキュムレータピストン
88a 溝部
90 バネ
92 棒状部材
93,94,95 Oリング
100 油圧ダンパ
102 延長部材
102a 貫通孔
102b メネジ部
102c,102d 内周面
102e 段差面
102f 端面
102g 嵌合孔
102h,102i メネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向の両端部を閉止された筒状のシリンダと、
前記シリンダ内に収納されシリンダの軸線方向両端部からシリンダの外側に突出する一対のピストンロッドを有するピストンと、
前記シリンダ内のピストンの両側に形成され内部に作動油が充填された2つの油室と、
前記シリンダの一端部に延長して設けられ、前記2つの油室に連通するアキュムレータ油室とアキュムレータピストンを有するアキュムレータを内部に一体的に設けた延長部材と
を備えたことを特徴とする油圧ダンパ。
【請求項2】
前記延長部材の内部には、前記一方のピストンロッドの先端部を前記アキュムレータ油室内の密閉状態を維持しながら摺動可能に嵌合するロッド受部が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の油圧ダンパ。
【請求項3】
前記延長部材の前記シリンダ側の端部に、前記シリンダの前記延長部材側の端部を閉止するカバー部材を兼ねる蓋部が一体的に形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の油圧ダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−53715(P2013−53715A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193767(P2011−193767)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000233239)日立機材株式会社 (225)
【Fターム(参考)】