説明

油圧作動油レベルセンサを備えた車両用油圧ブレーキアセンブリ

【課題】油圧作動油レベルセンサを備えた車両用油圧ブレーキアセンブリを提供すること。
【解決手段】本発明は、電気サーボモータ(15)と、マスタシリンダ(16)と、マスタシリンダに取り付けられた油圧作動油タンク(17)と、作動油タンクの中に配置された、タンク内の油圧作動油レベルをモニタする油圧作動油レベルセンサ(25)とを備えた車両用油圧ブレーキアセンブリ(14)に関する。本発明は、ケーブル(26)によってタンクから電気サーボモータのコンピュータに接続される作動油レベルセンサを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧作動油タンクを備えた車両の油圧ブレーキアセンブリに関し、前記タンクは油圧作動油レベルセンサを備えている。本発明の目的は、油圧ブレーキアセンブリの適合を単純化することである。本発明のもう1つの目的は、この油圧アセンブリの製造コストを低減することである。
【0002】
本発明は、自動車両の分野に適用することができるが、他の分野に適用することも可能である。
【背景技術】
【0003】
図1は、先行技術の油圧ブレーキアセンブリ1を概略的に示したものである。この油圧ブレーキアセンブリ1は、制動を支援する電気サーボモータ2(ブレーキブースタ)、油圧マスタシリンダ3、油圧作動油タンク4および少なくとも1つの油圧ブレーキ回路(図示せず)によって形成されている。サーボモータ2は、電動機5、コンピュータ6およびバッテリ7を備えている。コンピュータ6は電子制御デバイスを形成しており、バッテリ7に接続されている。ブレーキペダル(図示せず)は制御ロッド8に接続されており、該制御ロッド8はサーボモータ2に機械的に接続されている。また、コンピュータ6は、第1のケーブル9によって中央制御部材(図示せず)に接続されている。中央制御部材は、すべての電子車両データを収集する。中央制御部材はダッシュボードを含むことができ、このダッシュボードにCAN(コントローラエリアネットワーク)型のバスによって第1のケーブル9が接続されている。
【0004】
タンク4はマスタシリンダ3の上に取り付けられており、マスタシリンダ3の少なくとも1つのチャンバ(図示せず)に流体を供給する。油圧ブレーキ回路は、マスタシリンダ3のチャンバを車両の車輪に取り付けられているブレーキ装置(図示せず)に接続する。
【0005】
電気サーボモータ2はねじ/ナットアセンブリ10を備えており、このねじ/ナットアセンブリ10によって電動機5のロータ形成ナットの回転運動がねじの回転運動に変換され、それにより支持ピストン11がマスタシリンダ3に向かって変位する。サーボモータ2は、ブレーキペダルによって変位する制御ロッド8によって駆動される。力センサ(図示せず)が、ブレーキペダルを介して運転者によって制御ロッド8に印加される力を測定する。制御ロッド8に印加される力に関する情報はコンピュータ6に送信される。このコンピュータ6は、次に、この情報に基づいて電動機5に対する制御コマンドを生成し、それにより制御ロッド8に加えられる力に応じて支持ピストン11を変位させる。
【0006】
作動油タンク4には、マスタシリンダ3のチャンバに永続的に供給することができる量の油圧作動油が含まれている。
【0007】
油圧作動油レベルセンサ12はこのタンク4の中に配置されている。このセンサ12は、一例では、リード(REED)ガラス封入型またはホール効果型のセンサ(もしくは近接磁気センサ)である。リードガラス封入センサの場合、それは、2つの電磁ブレードによって、および1つの電磁石によって形成される。これらの2つのブレードは、電磁石がこれらのブレードの上方に配置されている限り、つまり作動油レベルがこれらのブレードより上に位置している限り、互いに接触している。これらのブレードは、電磁石が近接していると互いに離れる傾向があるため、電磁石がこれらのブレードに接近すると分離することになる。これらのブレードが分離すると電気接触が断たれ、この情報が、ダッシュボードによって伝えられる光および/または可聴信号を介して運転者に伝達される。
【0008】
センサ12は、第2のケーブル13によって中央制御部材に電気接続されている。また、中央制御部材は、第2のケーブル13がリンクされる中央コンピュータを含むことも可能である。
【0009】
したがって第1のケーブル9および第2のケーブル13は、油圧ブレーキアセンブリ1を中央制御部材に接続するために必要である。問題は、第2のケーブル13がかさばり、中央制御部材に到達するために場合によっては最大50cmの長さに及ぶことがあることである。車両の少なくとも1つの部材の状態をチェックするために、あるいは少なくとも1つの部材を修理するために車両のボンネットを開けなければならないとき、この第2のケーブル13が誤って挟まれるおそれがある。すると、この第2のケーブル13は、切断されるか、あるいは少なくとも作業者の妨げになることになる。この第2のケーブル13の、考えられる妨げを回避するために、制御された方法でこの第2のケーブル13を車両のボンネットによって密閉される空間の中に配置することができる。そのために、クリップされた状態でこの第2のケーブル13をカウルの壁に押し付けることができ、あるいは車両のある部材の他の壁に接着またはクリップ止めすることができる。しかしながら、カウルの特定の領域(外部の気候変化にさらされる領域)の表面、または所与の部材の表面は、この第2のケーブル13の品質を損なう可能性のある温度変化にさらされることがある。とりわけ加熱または冷却は、適切な動作を妨害し、および/またはこの第2のケーブル13の早期損耗を引き起こすことがある。したがって適切な場所、つまりこの第2のケーブル13の品質を損なう危険が最も小さい場所を慎重に選択することが重要である。
【0010】
したがってこのような第2のケーブルの適合は、困難かつ厄介であり、コストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって本発明の目的は、この問題を解決することである。
【0012】
より詳細には、本発明によれば、レベルセンサはもはや中央制御部材には直接接続されず、サーボモータのコンピュータに接続される。このようにして、もはや第2のケーブルを提供する必要はない。本発明によれば、センサをサーボモータのコンピュータに直接接続する第3のケーブルのみが提供される。サーボモータのコンピュータは油圧タンクに近接して配置されるため、この第3のケーブルの長さは、第2のケーブルの長さと比較すると著しく短い。
【0013】
したがって油圧アセンブリは、単一のケーブルによって中央制御部材に接続することができる単一部品アセンブリを形成している。
【0014】
また、本発明によれば、車両の製造者は、レベルセンサに関連する技術およびサーボモータのコンピュータに関連する技術を自由に使用することができる。製造者は、センサによって送信される情報を受け取り、かつ、管理するために使用されるソフトウェアの設計を考案することができる。製造者は、適合させることを希望するセンサの種類を、そのような種類のセンサによって提供されるアプリケーションの種類、車両のコストおよび種類に応じて自由に選択することができる。製造者は、センサの選択に際して、もはや中央制御部材の中央コンピュータに依存しなくてもよい。
【0015】
本発明によれば、車両製造者は、タンク内におけるセンサの配置を選択することができ、とりわけ設置すべきセンサの種類を選択することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって本発明の主題は、
−電動機およびコンピュータを備えた電気サーボモータであって、コンピュータが第1のケーブルによって中央制御部材に接続され、運転者によってブレーキペダルが駆動されたとき電動機を駆動するために使用される電気サーボモータと、
−サーボモータの電動機によって駆動される支持ピストンによってサーボモータに接続されたマスタシリンダと、
−マスタシリンダに取り付けられた油圧作動油タンクであって、マスタシリンダに油圧作動油を供給するようにマスタシリンダのチャンバと連通している油圧作動油タンクと、
−作動油タンクの壁内に配置され、タンク内の油圧作動油レベルをモニタするための油圧作動油レベルセンサと
を備えた車両用油圧ブレーキアセンブリにおいて、
−作動油レベルセンサが接続手段によってタンクから電気サーボモータのコンピュータに接続されることを特徴とする車両用油圧ブレーキアセンブリである。
【0017】
本発明は、以下の説明を読み、かつ、添付の図を精査することにより、より良く理解されよう。添付の図は、単に本発明を示すために提供されたものにすぎず、本発明を何ら限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】先行技術の油圧ブレーキアセンブリ1の概略図である。
【図2】本発明による、流体レベルセンサを備えた油圧ブレーキアセンブリを示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図2は、本発明による、車両の他の油圧ブレーキアセンブリ14を示したものである。図1で説明した油圧アセンブリ1の場合と同様、この油圧アセンブリ14は、制動を支援する電気サーボモータ15(ブレーキブースタ)、マスタシリンダ16、油圧作動油タンク17および少なくとも1つの油圧ブレーキ回路(図示せず)を備えている。サーボモータ15は、電動機18およびコンピュータ19を備えている。コンピュータ19は電子制御デバイスを形成しており、バッテリ20に接続されている。また、コンピュータ19は、中央制御部材(図示せず)に接続されている。中央制御部材はダッシュボードを備えている。コンピュータ19は、CAN型のバスによってダッシュボードに接続することができる。コンピュータ19は、より詳細には、第1のケーブル24によって、バスを介して中央制御部材に接続されている。
【0020】
ブレーキペダル(図示せず)は制御ロッド21に接続されており、該制御ロッド21はサーボモータ15に機械的に接続されている。
【0021】
タンク17はマスタシリンダ16に取り付けられており、マスタシリンダ16の少なくとも1つのチャンバ(図示せず)に流体を供給する。油圧ブレーキアセンブリは、マスタシリンダ16のチャンバを車両の車輪に取り付けられているブレーキ装置(図示せず)に接続している。このブレーキ装置は、ディスクブレーキであっても、さらにはドラムブレーキであってもよい。
【0022】
電気サーボモータ15はねじ/ナットアセンブリ22を備えており、このねじ/ナットアセンブリ22によって電動機18のロータ形成ナットの回転運動がねじの回転運動に変換され、それにより支持ピストン23がマスタシリンダに向かって変位する。サーボモータ15は、ブレーキペダルによって変位する制御ロッド21によって駆動される。図1で説明した油圧アセンブリ1の場合と同様、力センサ(図示せず)が、ブレーキペダルを介して運転者によって制御ロッド21に印加される力を測定する。
【0023】
作動油タンク17には、マスタシリンダ16のチャンバに供給するための一定の量の流体が含まれている。タンク17は、マスタシリンダに流体を供給しており、したがって支持ピストン23によってこの流体に加えられる圧力により、車両にブレーキをかけるための、ディスクに対する、あるいはドラムプレートに対するブレーキパッドの十分な収斂が得られる。
【0024】
油圧作動油レベルセンサ25はこのタンク17の中に配置されている。既に言及したように、このセンサ25は、リードガラス封入型またはホール効果型のセンサであってもよく、あるいはこの種の用途のために適した他の任意の型のセンサであってもよい。
【0025】
レベルセンサ25は、漏れない方法でタンク17の壁を貫通して配置されており、したがってタンク17内の流体と連絡している。
【0026】
本発明によれば、レベルセンサ25は、第2のケーブル26または他の任意の剛性または非剛性の接続手段26によって、油圧アセンブリ14のコンピュータ19に接続されている。
【0027】
レベルセンサ25は、コンピュータ19の近傍、つまりタンク17の壁を貫通したその配置が最適化され、したがってレベルセンサ25をコンピュータ19に接続している第2のケーブル26の長さが可能な限り短くなる位置に配置される。一例では、この第2のケーブル26の長さは2cmと6cmの間、好ましくは3cmである。
【0028】
より詳細には、タンク17は、コンピュータ19に向かって対向している面27を有する。センサ25は、第2のケーブル26がこの面27から出るようにタンク17の壁内に収納されている。
【0029】
作動油のレベルがレベルセンサ25によって検出されるレベルに到達すると信号が生成され、第2のケーブル26を介してセンサ25からコンピュータ19へ送られる。
【0030】
コンピュータ19は、信号をセンサ25から中央制御部材に送信するための第1の種類の回路28を有する。中央制御部材は、次にその情報を処理する。
【0031】
また、コンピュータ19は、センサ25から信号を受け取り、かつ、処理するための第2の種類の回路29を有することも可能であり、これらの同じ第2の種類の回路が、次に、処理した信号を中央制御部材に送信する。
【0032】
センサ25によって送信された信号は、次に、ダッシュボード上の音および/または光指示器を介して運転者に知らせることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 油圧ブレーキアセンブリ
2、15 電気サーボモータ
3、16 油圧マスタシリンダ(マスタシリンダ)
4、17 油圧作動油タンク(流体タンク)
5、18 電動機
6、19 コンピュータ
7、20 バッテリ
8、21 制御ロッド
9、24 第1のケーブル
10、22 ねじ/ナットアセンブリ
11、23 支持ピストン
12、25 油圧作動油レベルセンサ
13、26 第2のケーブル(接続手段)
14 油圧ブレーキアセンブリ
27 面
28 第1の種類の回路
29 第2の種類の回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機(22)およびコンピュータ(19)を備えた電気サーボモータ(15)であって、前記コンピュータが第1のケーブル(24)によって中央制御部材に接続され、運転者によってブレーキペダルが駆動されたとき前記電動機を駆動するために使用される電気サーボモータ(15)と、
前記サーボモータの前記電動機によって駆動される支持ピストン(23)によって前記サーボモータに接続されたマスタシリンダ(16)と、
前記マスタシリンダに取り付けられた油圧作動油タンク(17)であって、前記マスタシリンダに油圧作動油を供給するように前記マスタシリンダのチャンバと連通している油圧作動油タンク(17)と、
前記作動油タンクの壁内に配置され、前記タンク内の油圧作動油レベルをモニタするための油圧作動油レベルセンサ(25)と
を備えた車両用油圧ブレーキアセンブリ(14)において、
前記作動油レベルセンサが接続手段(26)によって前記タンクから前記電気サーボモータの前記コンピュータに接続されることを特徴とする車両用油圧ブレーキアセンブリ(14)。
【請求項2】
前記サーボモータの前記コンピュータが、前記センサから前記中央制御部材に信号を送信するための回路を有することを特徴とする請求項1に記載の油圧ブレーキアセンブリ。
【請求項3】
前記サーボモータの前記コンピュータが、前記センサからの信号を処理し、かつ、処理した信号を前記中央制御部材に送信するための回路を有することを特徴とする請求項1または2に記載の油圧ブレーキアセンブリ。
【請求項4】
前記タンクが、前記コンピュータに向かって対向する面を有し、第2のケーブルがこの面から出ることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の油圧アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−219079(P2011−219079A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−285998(P2010−285998)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】