説明

油圧式作業車両

【課題】油圧式作業車両において、油圧による走行と作業装置の油圧駆動とを実施可能としながら、走行時の燃費の悪化を防ぐ。
【解決手段】油圧式作業車両は、車輪駆動装置12に設けられ、車輪駆動装置12を駆動可能な状態と駆動不能な状態とに切り換え可能な車輪駆動装置切換部20と、作業装置駆動回路18に設けられ、油圧駆動部52を駆動可能な状態と駆動不能な状態とに切り換え可能な油圧駆動部切換部22と、油圧式作業車両の走行時には、車輪駆動装置切換部20に車輪駆動装置12を駆動可能な状態にさせるとともに油圧駆動部切換部22に油圧駆動部52を駆動不能な状態にさせる一方、作業装置の駆動時には、車輪駆動装置切換部20に車輪駆動装置12を駆動不能な状態にさせるとともに油圧駆動部切換部22に油圧駆動部52を駆動可能な状態にさせるコントローラ28とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるHST(Hydro Static Transmission)を用いた油圧式作業車両が知られている。このHSTは、エンジンによって油圧ポンプを駆動してその油圧ポンプから供給する油圧で油圧モータを駆動させることにより必要な動力を得る駆動システムである。このようなHSTを用いた油圧式作業車両としては、ホイールクレーンやホイールショベル等が挙げられる。そして、このような作業車両の中には、クレーン装置やショベル装置等の油圧式の作業装置を駆動させるための作業用油圧ポンプと、当該作業車両の走行時に車輪を回転させる走行用油圧モータを駆動させるための走行用油圧ポンプとをそれぞれ備えているものがある。この作業車両では、作業用油圧ポンプと走行用油圧ポンプは、パワーディバイダを介してエンジンに接続されている。これにより、エンジンの駆動力がパワーディバイダによって分割されて両油圧ポンプにそれぞれ伝達され、それによって両油圧ポンプがそれぞれ駆動するようになっている。
【0003】
しかしながら、このような作業車両では、作業装置を駆動させないで走行のみを行う時であっても、走行用油圧ポンプと作業用油圧ポンプの両方にエンジンの駆動力が伝達されてそれら両油圧ポンプが共に駆動する。換言すれば、作業車両の走行のみを行って作業装置を駆動させない場合であっても、作業用油圧ポンプは空転し、エンジンはその必要のない作業用油圧ポンプの駆動のために余分に駆動せざるを得ない。その結果、作業車両の走行時の燃費が悪化するという問題が生じる。
【0004】
そこで、下記の特許文献1には、この問題を解消可能な技術が提案されている。この特許文献1に提案された技術では、走行用油圧ポンプと走行用油圧モータとを繋ぐ作動油の給排管に切換制御弁を設けるとともに、この切換制御弁と作業装置の油圧駆動部とを配管で接続している。そして、作業車両の走行時には、走行用油圧ポンプから吐出される作動油を走行用油圧モータに供給する一方、作業装置の駆動時には、走行用油圧ポンプから吐出される作動油を作業装置の油圧駆動部に供給するように切換制御弁によって作動油の供給先を切り換えるようにしている。すなわち、この特許文献1の技術では、1つの走行用油圧ポンプによって、走行時の走行用油圧モータへの作動油の供給と作業装置の駆動時の油圧駆動部への作動油の供給とを両方とも行うため、上記のような作業用油圧ポンプは設けられていない。このため、作業車両の走行時の作業用油圧ポンプの空転に起因する燃費の悪化を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−322040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、作業車両の走行時に走行用油圧ポンプと走行用油圧モータとの間で給排管を通って作動油が流れる際、その作動油は切換制御弁を通過する。作動油が切換制御弁を通過する際には、圧損が生じるため、この圧損に起因して作業車両の走行時の燃費が悪化する虞がある。
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、油圧式作業車両において、油圧による走行と作業装置の油圧駆動とを実施可能としながら、走行時の燃費の悪化を防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、エンジンと、第1車輪と、所定の作業を実施可能な第1作業装置と、前記エンジンによって駆動されて作動油を吐出する第1油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプから供給される作動油の油圧によって駆動して前記第1車輪を回転させる第1車輪駆動装置と、前記第1油圧ポンプと前記第1車輪駆動装置とを繋ぎ、当該第1油圧ポンプと当該第1車輪駆動装置との間で作動油を循環させるための閉回路とを備えた油圧式作業車両であって、前記第1作業装置を駆動させるための油圧駆動部を有し、前記閉回路から作動油が流入可能なようにその閉回路から分岐する作業装置駆動回路と、前記第1車輪駆動装置に設けられ、前記第1車輪駆動装置を駆動可能な状態と駆動不能な状態とに切り換え可能な車輪駆動装置切換部と、前記作業装置駆動回路に設けられ、前記油圧駆動部を駆動可能な状態と駆動不能な状態とに切り換え可能な油圧駆動部切換部と、前記油圧式作業車両の走行時には、前記車輪駆動装置切換部に前記第1車輪駆動装置を駆動可能な状態にさせるとともに前記油圧駆動部切換部に前記油圧駆動部を駆動不能な状態にさせる一方、前記第1作業装置の駆動時には、前記車輪駆動装置切換部に前記第1車輪駆動装置を駆動不能な状態にさせるとともに前記油圧駆動部切換部に前記油圧駆動部を駆動可能な状態にさせる制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
この請求項1に記載の発明では、第1油圧ポンプから閉回路を通じて供給される作動油の油圧によって駆動して第1車輪を回転させる第1車輪駆動装置と、第1作業装置を駆動させるための油圧駆動部を有し、閉回路から作動油が流入可能なようにその閉回路から分岐する作業装置駆動回路とが油圧式作業車両に設けられている。そして、この発明では、油圧式作業車両の走行時に、制御手段が車輪駆動装置切換部に第1車輪駆動装置を駆動可能な状態にさせるとともに油圧駆動部切換部に油圧駆動部を駆動不能な状態にさせる。従って、作業車両の走行時には、第1油圧ポンプから供給する作動油の油圧で第1車輪駆動装置を駆動させて第1車輪を回転させることにより、作業車両の走行を行うことができる。また、この発明では、第1作業装置の駆動時に、制御手段が車輪駆動装置切換部に第1車輪駆動装置を駆動不能な状態にさせるとともに油圧駆動部切換部に油圧駆動部を駆動可能な状態にさせる。このため、第1作業装置の駆動時には、第1油圧ポンプから供給する作動油の油圧で油圧駆動部を駆動させることにより、第1作業装置を駆動させることができる。従って、この発明では、油圧による作業車両の走行と第1作業装置の油圧駆動とを実施することができる。
【0010】
また、この請求項1の発明では、第1油圧ポンプから閉回路を通じて第1車輪駆動装置へ作動油を供給することができる一方、第1油圧ポンプから閉回路を経て作業装置駆動回路へ作動油を流入させてその作動油を油圧駆動部に供給することができる。すなわち、1つの油圧ポンプで第1車輪駆動装置と作業装置駆動回路の油圧駆動部の両方に作動油を供給することができる。このため、走行用油圧モータへ作動油を供給する油圧ポンプと作業装置に作動油を供給する油圧ポンプとを別々に設けてそれら両油圧ポンプをエンジンによって同時に駆動させる従来の構成と異なり、作業車両の走行時に作業装置に対する作動油供給用の油圧ポンプが空転することに起因する燃費の悪化を防ぐことができる。
【0011】
ところで、第1油圧ポンプから閉回路に吐出される作動油を供給するか否かを切り換えることにより第1車輪駆動装置と油圧駆動部とをそれぞれ駆動可能な状態と駆動不能な状態とに切り換えるための切換制御弁が閉回路に設けられている場合には、作業車両の走行時に作動油が閉回路に設けられた切換制御弁を通過して第1車輪駆動装置に供給される。この場合、作動油が切換制御弁を通過することに起因する圧損が生じる。これに対して、この請求項1の発明では、油圧駆動部切換部が作業装置駆動回路に設けられているため、油圧駆動部切換部が作動油の流通を切り換える切換制御弁であったとしても、作業車両の走行時に作動油が閉回路を通じて第1車輪駆動装置へ供給される際に作動油がその作業装置駆動回路に設けられた切換制御弁を通って流れることはない。このため、作業車両の走行時に作動油が閉回路に設けられた切換制御弁を通過することに起因する圧損の発生を防ぐことができ、その結果、その圧損に起因する燃費の悪化を防ぐことができる。従って、この請求項1の発明では、油圧による作業車両の走行と第1作業装置の油圧駆動とを実施しながら、走行時の燃費の悪化を防ぐことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の油圧式作業車両において、前記作業装置駆動回路は、前記閉回路から分岐し、前記油圧駆動部へ作動油を供給可能な作業用供給路を含み、前記油圧駆動部切換部は、前記作業用供給路に設けられ、前記閉回路から前記作業用供給路を通じて前記油圧駆動部へ作動油が流れるのを阻止する第1位置と、前記閉回路から前記作業用供給路を通じて前記油圧駆動部へ作動油が流れるのを許容する第2位置とに切り換え可能な切換弁であり、前記制御手段は、前記油圧式作業車両の走行時には前記切換弁を前記第1位置とする一方、前記第1作業装置の駆動時には前記切換弁を前記第2位置とすることを特徴とするものである。
【0013】
この請求項2に記載の発明によれば、作業車両の走行時には、制御手段が切換弁を第1位置とするため、油圧駆動部に作動油が供給されない。その結果、油圧駆動部が駆動不能になる。一方、第1作業装置の駆動時には、制御手段が切換弁を第2位置とするため、油圧駆動部に作動油が供給される。その結果、油圧駆動部が駆動可能になる。従って、この発明によれば、作業車両の走行時に油圧駆動部を駆動不能な状態にする一方、第1作業装置の駆動時に油圧駆動部を駆動可能な状態にするための具体的な機構を構成することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の油圧式作業車両において、操作者が前記第1作業装置の動作を指示するために操作する操作装置と、前記作業用供給路に設けられ、作動油の流量を調整可能な流量調整弁とを備え、前記制御手段は、操作者による前記操作装置の操作量に応じて前記流量調整弁による作動油の流通許容量を制御することにより前記油圧駆動部に供給する作動油の流量を制御することを特徴とするものである。
【0015】
この請求項3に記載の発明によれば、操作者による操作装置の操作量に応じて油圧駆動部へ供給する作動油の流量を制御することができる。これにより、操作者による操作装置の操作量に応じて第1作業装置の駆動速度等を制御することができる。なお、油圧駆動部へ供給する作動油の流量を制御するためには、第1油圧ポンプを可変容量型としてその第1油圧ポンプの容量を操作装置の操作量に応じて制御することも考えられる。しかし、油圧ポンプは微細な容量制御が不得意であるため、操作装置の操作量が微小である場合には、油圧駆動部へ供給する作動油の流量を操作装置の微小な操作に応じて正確に調整できない虞がある。また、油圧ポンプの容量制御は、操作装置を急激に操作した時の応答性が良くないという問題点もある。これに対して、流量調整弁は油圧ポンプに比べて微細な流量の制御に適しているとともに応答性に優れている。このため、この請求項3の発明のように制御手段が操作装置の操作量に応じて流量調整弁に油圧駆動部に供給する作動油の流量を制御させる場合には、操作装置の操作量が微小であっても油圧駆動部へ供給する作動油の流量を操作装置の微小な操作に応じて正確に調整することができるとともに、操作装置の操作に対する油圧駆動部への作動油の供給流量の調整の応答性を向上することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の油圧式作業車両において、操作者が前記第1作業装置の動作を指示するために操作する操作装置を備え、前記切換弁は、当該切換弁を通って流れる作動油の流量を調整可能に構成され、前記制御手段は、操作者による前記操作装置の操作量に応じて前記切換弁による作動油の流通許容量を制御することにより前記油圧駆動部に供給する作動油の流量を制御することを特徴とするものである。
【0017】
この請求項4に記載の発明によれば、操作者による操作装置の操作量に応じて油圧駆動部へ供給する作動油の流量を制御することができる。これにより、操作者による操作装置の操作量に応じて第1作業装置の駆動速度等を制御することができる。なお、この請求項4の発明のように切換弁に作動油の流量調整機能を持たせた場合には、上記請求項3の発明の流量調整弁を用いる場合と同様、操作装置の操作量が微小であっても油圧駆動部へ供給する作動油の流量を操作装置の微小な操作に応じて正確に調整することができるとともに、操作装置の操作に対する油圧駆動部への作動油の供給流量の調整の応答性を向上することができる。また、この請求項4の発明では、切換弁が油圧駆動部への作動油の流量を調整する流量調整弁としても機能するので、切換弁と流量調整弁とを別個に設ける場合に比べて部品点数の増加を防ぐことができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の油圧式作業車両において、油圧によって駆動し、所定の作業を実施可能な第2作業装置と、前記エンジンによって駆動されて作動油を吐出する作業用油圧ポンプと、前記作業用油圧ポンプから吐出された作動油を前記第2作業装置に供給可能な作動油回路とを備え、前記作動油回路は、前記作業用油圧ポンプから吐出された作動油のうち前記第2作業装置へ供給する分の余剰となる作動油を流すための余剰油路を含み、前記余剰油路は、前記作業用供給路のうち作動油の流通方向において前記切換弁の下流側の位置に接続されていることを特徴とするものである。
【0019】
この請求項5に記載の発明によれば、作業用油圧ポンプから作動油を第2作業装置に供給して第2作業装置を駆動させることができる。このため、作業車両において、前記第1作業装置による作業に加えて、その作業とは別の第2作業装置による作業を実施することができる。さらに、この発明では、作業用油圧ポンプから吐出された作動油のうち第2作業装置へ供給する分の余剰油を流すための余剰油路が、前記作業用供給路のうち作動油の流通方向において切換弁の下流側の位置に接続されている。このため、作業車両の走行時に切換弁が第1位置にされて閉回路から作業用供給路を通じて油圧駆動部へ作動油が流れるのが阻止されている場合でも、前記余剰油を余剰油路を通じて作業用供給路に流し、さらにその作業用供給路から油圧駆動部に供給して油圧駆動部を駆動させることができる。従って、この発明では、作業車両の走行と第1作業装置及び第2作業装置の駆動とを同時に行うことができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の油圧式作業車両において、前記油圧駆動部は、前記第1作業装置を駆動させるための作業用油圧モータであり、前記油圧駆動部切換部は、前記作業用油圧モータに付設され、前記作業用油圧モータにブレーキを掛けることが可能な作業用ブレーキ装置であり、前記制御手段は、前記油圧式作業車両の走行時には、前記作業用ブレーキ装置に前記作業用油圧モータに対してブレーキを掛けさせる一方、前記第1作業装置の駆動時には前記作業用ブレーキ装置に前記作業用油圧モータに対するブレーキを解除させることを特徴とするものである。
【0021】
この請求項6に記載の発明によれば、作業車両の走行時には、制御手段が作業用ブレーキ装置に作業用油圧モータに対してブレーキを掛けさせるため、作業用油圧モータが駆動不能になる。一方、第1作業装置の駆動時には、制御手段が作業用ブレーキ装置に作業用油圧モータに対するブレーキを解除させるため、作業用油圧モータが駆動可能になる。従って、この発明によれば、作業車両の走行時に油圧駆動部を駆動不能な状態にする一方、第1作業装置の駆動時に油圧駆動部を駆動可能な状態にするための具体的な機構を構成することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の油圧式作業車両において、前記油圧駆動部は、前記第1作業装置を駆動させるための可変容量型の作業用油圧モータであり、前記油圧駆動部切換部は、前記作業用油圧モータに設けられ、前記作業用油圧モータの容量を調整可能な作業用モータ容量調整部であり、前記制御手段は、前記油圧式作業車両の走行時には前記作業用モータ容量調整部に前記作業用油圧モータの容量を0にさせる一方、前記第1作業装置の駆動時には前記作業用モータ容量調整部に前記作業用油圧モータの容量を0よりも大きい特定の容量にさせることを特徴とするものである。
【0023】
この請求項7に記載の発明によれば、作業車両の走行時には、制御手段が作業用モータ容量調整部に作業用油圧モータの容量を0にさせるため、作業用油圧モータが駆動不能になる。一方、第1作業装置の駆動時には、制御手段が作業用モータ容量調整部に作業用油圧モータの容量を0よりも大きい特定の容量にさせるため、作業用油圧モータが駆動可能になる。従って、この発明によれば、作業車両の走行時に油圧駆動部を駆動不能な状態にする一方、第1作業装置の駆動時に油圧駆動部を駆動可能な状態にするための具体的な機構を構成することができる。また、この発明によれば、作業用油圧モータに作動油を供給するか否かを切り換えるための切換弁や、作業用油圧モータにブレーキを掛けるためのブレーキ装置を設けて作業用油圧モータを駆動可能な状態と駆動不能な状態とに切り換える構成に比べて、構成を簡略化することができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の油圧式作業車両において、前記第1車輪駆動装置は、前記閉回路に接続され、その閉回路を通じて作動油が供給されることによって前記第1車輪を回転させるための駆動力を発する第1走行用油圧モータを含み、前記車輪駆動装置切換部は、前記第1走行用油圧モータにブレーキを掛けることが可能な走行用ブレーキ装置であり、前記制御手段は、前記第1作業装置の駆動時には前記走行用ブレーキ装置に前記第1走行用油圧モータに対してブレーキを掛けさせる一方、前記油圧式作業車両の走行時には前記走行用ブレーキ装置に前記第1走行用油圧モータに対するブレーキを解除させることを特徴とするものである。
【0025】
この請求項8に記載の発明によれば、第1作業装置の駆動時には、制御手段が走行用ブレーキ装置に第1走行用油圧モータに対してブレーキを掛けさせるため、第1走行用油圧モータが駆動不能になる。一方、作業車両の走行時には、制御手段が走行用ブレーキ装置に第1走行用油圧モータに対するブレーキを解除させるため、第1走行用油圧モータが駆動可能になる。従って、この発明によれば、作業車両の走行時に第1車輪駆動装置を駆動可能な状態にする一方、第1作業装置の駆動時に第1車輪駆動装置を駆動不能な状態にするための具体的な機構を構成することができる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の油圧式作業車両において、前記第1車輪駆動装置は、前記閉回路に接続され、その閉回路を通じて作動油が供給されることによって前記第1車輪を回転させるための駆動力を発する可変容量型の第1走行用油圧モータを含み、前記車輪駆動装置切換部は、前記第1走行用油圧モータに設けられ、前記第1走行用油圧モータの容量を調整可能な走行用モータ容量調整部であり、前記制御手段は、前記第1作業装置の駆動時には前記走行用モータ容量調整部に前記第1走行用油圧モータの容量を0にさせる一方、前記油圧式作業車両の走行時には前記走行用モータ容量調整部に前記第1走行用油圧モータの容量を0よりも大きい特定の容量にさせることを特徴とするものである。
【0027】
この請求項9に記載の発明によれば、第1作業装置の駆動時には、制御手段が走行用モータ容量調整部に第1走行用油圧モータの容量を0にさせるため、第1走行用油圧モータが駆動不能になる。一方、作業車両の走行時には、制御手段が走行用モータ容量調整部に第1走行用油圧モータの容量を0よりも大きい特定の容量にさせるため、第1走行用油圧モータが駆動可能になる。従って、この発明によれば、作業車両の走行時に第1車輪駆動装置を駆動可能な状態にする一方、第1作業装置の駆動時に第1車輪駆動装置を駆動不能な状態にするための具体的な機構を構成することができる。
【0028】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の油圧式作業車両において、操作者が前記第1作業装置の動作を指示するために操作する操作装置を備え、前記第1油圧ポンプは、可変容量型であり、前記制御手段は、前記油圧式作業車両の走行時には、前記第1油圧ポンプの駆動に要する動力が前記エンジンの出力を超えないように前記第1油圧ポンプの容量を制御する第1容量制御を行う一方、前記第1作業装置の駆動時には、前記第1容量制御と、操作者による前記操作装置の操作量の増減に応じて前記第1油圧ポンプの容量を増減させる第2容量制御とのうち、前記第1油圧ポンプの吐出圧が低くなる方を選択して行うことを特徴とするものである。
【0029】
作業車両の走行時に第1油圧ポンプの駆動に要する動力がエンジンの出力を超えた場合には、エンジン停止が生じるが、この請求項10に記載の発明によれば、作業車両の走行時に第1油圧ポンプの駆動に要する動力がエンジンの出力を超えないように第1油圧ポンプの容量を制御するため、そのようなエンジン停止が生じるのを防ぐことができる。また、この請求項10の発明では、第1作業装置の駆動時に、第1油圧ポンプの駆動に要する動力がエンジンの出力を超えないようにする第1油圧ポンプの第1容量制御と、操作者による操作装置の操作量の増減に応じて第1油圧ポンプの容量を増減させる第2容量制御とのうち第1油圧ポンプの吐出圧が低くなる方が選択される。このため、第1作業装置の駆動時に前記第1容量制御よりも前記第2容量制御の方が第1油圧ポンプの吐出圧が低くなる場合には、操作者による操作装置の操作量の増減に合わせて第1油圧ポンプの容量を増減させ、それによって、第1油圧ポンプの容量が前記操作量に対して過剰に多い容量となるのを防ぐことができる。これにより、第1油圧ポンプの容量が前記操作量に対して過剰となることに起因して第1油圧ポンプの駆動に要する動力が無駄に大きくなるのを防ぐことができるので、燃費の改善を図ることができる。また、第1作業装置の駆動時に前記第2容量制御よりも前記第1容量制御の方が第1油圧ポンプの吐出圧が低くなる場合には、第1油圧ポンプの駆動に要する動力がエンジンの出力を超えないように第1油圧ポンプの容量が制御されるので、上記作業車両の走行時と同様、エンジン停止が生じるのを防ぐことができる。
【0030】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の油圧式作業車両において、第2車輪と、前記エンジンによって駆動されて作動油を吐出する第2油圧ポンプと、前記第2油圧ポンプから供給される作動油の油圧によって駆動して前記第2車輪を回転させる第2車輪駆動装置とを備えることを特徴とするものである。
【0031】
この請求項11に記載の発明によれば、作業車両の走行時に、第1車輪駆動装置により第1車輪を回転させるとともに、第2車輪駆動装置により第2車輪を回転させることが可能である。すなわち、第1車輪と第2車輪の両方の回転によって作業車両の走行を行うことができる。このため、作業車両の走行時に力強い走行力を得ることができる。さらに、この発明では、第1作業装置の駆動時に、第1車輪駆動装置が駆動不能になっても、第2油圧ポンプから第2車輪駆動装置に作動油を供給して第2車輪駆動装置を駆動させることが可能である。すなわち、この発明では、第1作業装置を駆動させながら、第2車輪を回転させて作業車両の走行を行うことができる。
【0032】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の油圧式作業車両において、前記閉回路に作動油を所定の設定圧力で導入可能なチャージ回路を備え、前記作業装置駆動回路は、前記油圧駆動部からの戻り油を前記チャージ回路に導入可能な作業用戻り油路と、その作業用戻り油路に設けられ、当該作業用戻り油路を流通する戻り油に前記所定の設定圧力よりも大きい背圧を発生させる背圧発生装置とを含むことを特徴とするものである。
【0033】
この請求項12に記載の発明によれば、閉回路中でのキャビテーションの発生を防ぐことができる。すなわち、第1油圧ポンプと第1車輪駆動装置との間で閉回路を通じて作動油が循環している際には、微小な作動油の漏れが生じる場合がある。この場合には、閉回路中でキャビテーションが発生する虞がある。これに対して、この発明では、閉回路に作動油を所定の設定圧力で導入可能なチャージ回路が設けられているので、チャージ回路から閉回路に作動油を供給して作動油が漏れた分を補うことができる。このため、前記作動油の漏れに起因する閉回路中でのキャビテーションの発生を防ぐことができる。また、作業装置駆動回路の油圧駆動部から閉回路への戻り油量が足りない場合には、閉回路を循環する作動油の量が不足して閉回路中でキャビテーションが発生する虞がある。これに対して、この発明では、油圧駆動部からの戻り油をチャージ回路に導入可能な作業用戻り油路が設けられているとともに、その作業用戻り油路を流通する作動油にチャージ回路で作動油に付与する設定圧力よりも大きい背圧を発生させる背圧発生装置が設けられているため、油圧駆動部からの戻り油を作業用戻り油路からチャージ回路を通じて閉回路に確実に戻すことができる。このため、油圧駆動部から閉回路への戻り油量が足りないことに起因する閉回路中でのキャビテーションの発生を防ぐことができる。
【0034】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の油圧式作業車両において、前記チャージ回路は、前記エンジンによって駆動されて作動油を吐出するチャージポンプと、そのチャージポンプの吐出口と前記閉回路とを繋ぐチャージ油路と、そのチャージ油路に設けられ、当該チャージ油路を流通する作動油を濾過するためのフィルタとを含み、前記作業用戻り油路は、前記チャージ油路のうち前記チャージポンプと前記フィルタとの間の部分に接続されていることを特徴とするものである。
【0035】
この請求項13に記載の発明によれば、チャージポンプから吐出する作動油をチャージ回路のフィルタで濾過してから閉回路に導入することができる。このため、チャージ回路から閉回路へきれいな作動油を供給することができる。また、この発明では、作業用戻り油路がチャージ油路のうちチャージポンプとフィルタとの間の部分に接続されているため、油圧駆動部からの戻り油をチャージ回路のフィルタで濾過してから閉回路に戻すことができる。このため、油圧駆動部からの戻り油をきれいな状態で閉回路へ戻すことができる。従って、この発明では、異物が混入した作動油が閉回路から各機器に送られるのを防ぐことができ、その結果、各機器に破損が生じたり動作不良が生じたりするのを防ぐことができる。また、この発明では、チャージ回路のフィルタを利用して油圧駆動部からの戻り油を濾過することができるため、油圧駆動部からの戻り油を濾過するためのフィルタをチャージ回路のフィルタとは別に設ける場合に比べて構成を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、油圧式作業車両において、油圧による走行と作業装置の油圧駆動とを実施可能としながら、走行時の燃費の悪化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態による油圧式作業車両の駆動系統を示す図である。
【図2】第1実施形態による油圧式作業車両におけるポンプの吐出圧力とポンプ容量との関係を表す相関図である。
【図3】第1実施形態による油圧式作業車両における操作レバーの操作量とポンプ容量との関係を表す相関図である。
【図4】本発明の第1実施形態による油圧式作業車両の効果を説明するための比較例による油圧式作業車両の駆動系統を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態による油圧式作業車両の駆動系統を示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態による油圧式作業車両の駆動系統を示す図である。
【図7】本発明の第4実施形態による油圧式作業車両の駆動系統を示す図である。
【図8】本発明の第5実施形態による油圧式作業車両の駆動系統を示す図である。
【図9】本発明の第6実施形態による油圧式作業車両の駆動系統を示す図である。
【図10】本発明の第7実施形態による油圧式作業車両の駆動系統を示す図である。
【図11】本発明の第7実施形態の比較例による油圧式作業車両の駆動系統を示す図である。
【図12】本発明の第8実施形態による油圧式作業車両の駆動系統を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0039】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態による油圧式作業車両の構成について説明する。
【0040】
この第1実施形態による油圧式作業車両は、HST走行システムを用いている。すなわち、この油圧式作業車両は、エンジン2によって油圧ポンプ10を駆動させるとともに、その油圧ポンプ10から供給する油圧で走行用油圧モータ32を駆動させ、その走行モータ32の駆動力により車輪6を回転させて走行を行う。さらに、この油圧式作業車両では、油圧ポンプ10から供給する油圧で油圧駆動部52としての作業用油圧モータ52aを駆動させて作業装置を作動させるようになっている。
【0041】
具体的には、この第1実施形態による油圧式作業車両は、エンジン2と、アクセル装置4と、車輪6と、パワーディバイダ8と、油圧ポンプ10と、車輪駆動装置12と、閉回路14と、チャージ回路16と、図略の作業装置と、作業装置駆動回路18と、車輪駆動装置切換部20と、油圧駆動部切換部22と、操作装置24と、走行モード切換装置26と、コントローラ28とを備えている。
【0042】
エンジン2には、パワーディバイダ8を介して油圧ポンプ10とチャージ回路16の後述するチャージポンプ36とが接続されている。これにより、エンジン2の駆動力がパワーディバイダ8によって分割されて油圧ポンプ10とチャージポンプ36にそれぞれ伝達されるようになっている。
【0043】
アクセル装置4は、エンジン2に接続されており、操作者によって操作される。このアクセル装置4は、操作者による操作量の増減に応じてエンジン2の回転数を増減させる。
【0044】
油圧ポンプ10は、可変容量型で、かつ、両方向吐出型である。この油圧ポンプ10は、本発明の第1油圧ポンプの概念に含まれる。そして、この油圧ポンプ10は、一側の給排口10aと他側の給排口10bを有している。この油圧ポンプ10は、エンジン2からパワーディバイダ8を介して駆動力が伝達されることにより、その一側の給排口10a又は他側の給排口10bから作動油を吐出する。
【0045】
車輪駆動装置12は、油圧ポンプ10から供給される作動油の油圧によって駆動して車輪6を回転させる。なお、この車輪駆動装置12は、本発明の第1車輪駆動装置の概念に含まれ、車輪6は、本発明の第1車輪の概念に含まれる。この車輪駆動装置12は、走行用油圧モータ32と、車軸装置34とを有する。
【0046】
走行用油圧モータ32は、可変容量型の油圧モータであり、本発明の第1走行用油圧モータの概念に含まれる。以下、この走行用油圧モータ32を単に走行モータ32という。走行モータ32は、作動油が供給されることによって駆動し、車輪6を回転させるための駆動力を発する。走行モータ32は、一側の給排口32aと他側の給排口32bとを有する。
【0047】
車軸装置34は、走行モータ32の駆動力を車輪6に伝達するものである。この車軸装置34には、走行モータ32の出力軸32cが接続されており、この出力軸32cを通じて走行モータ32の駆動力が車軸装置34に入力される。車軸装置34は、作業車両の車幅方向に延びる図略の車軸を有しており、この車軸の両端にそれぞれ車輪6が取り付けられている。車軸装置34では、走行モータ32の駆動力が入力されることにより、車軸が回転し、それに伴って車輪6が回転する。
【0048】
閉回路14は、油圧ポンプ10と車輪駆動装置12の走行モータ32とを繋いでいる。この閉回路14は、油圧ポンプ10と走行モータ32との間で作動油を循環させるためのものである。すなわち、この閉回路14を通って油圧ポンプ10と走行モータ32との間で作動油が循環するようになっている。具体的には、閉回路14は、一対の給排路14a,14bからなる。一方の給排路14aは、油圧ポンプ10の一側の給排口10aと走行モータ32の一側の給排口32aとを互いに接続している。他方の給排路14bは、油圧ポンプ10の他側の給排口10bと走行モータ32の他側の給排口32bとを互いに接続している。これにより、油圧ポンプ10の一側の給排口10aから作動油が吐出された場合には、その作動油は一方の給排路14aを通って走行モータ32の一側の給排口32aに流れ込み、その後、走行モータ32の他側の給排口32bから他方の給排路14bを通って油圧ポンプ10の他側の給排口10bに戻る。また、油圧ポンプ10の他側の給排口10bから作動油が吐出された場合には、その作動油は他方の給排路14bを通って走行モータ32の他側の給排口32bに流れ込み、その後、走行モータ32の一側の給排口32aから一方の給排路14aを通って油圧ポンプ10の一側の給排口10aに戻る。
【0049】
また、一方の給排路14aには、その給排路14a内の油圧を検出するための圧力センサ15aが接続されており、他方の給排路14bには、その給排路14b内の油圧を検出するための圧力センサ15bが接続されている。これら両圧力センサ15a,15bからは、検出圧力を示す信号がコントローラ28にそれぞれ送信されるようになっている。
【0050】
チャージ回路16は、閉回路14に所定の設定圧力で作動油を導入可能に構成されている。このチャージ回路16は、チャージポンプ36と、チャージ油路38と、第1チェック弁40と、第2チェック弁42と、逃がし路44と、第1リリーフ弁46と、第2リリーフ弁48と、第3リリーフ弁50とを有する。
【0051】
チャージポンプ36は、吐出口36aを有しており、この吐出口36aにチャージ油路38が接続されている。このチャージポンプ36は、エンジン2からパワーディバイダ8を介して駆動力が伝達されることにより、その吐出口36aからチャージ油路38へ作動油を吐出する。
【0052】
チャージ油路38は、チャージポンプ36の吐出口36aと閉回路14とを繋いでいる。具体的には、このチャージ油路38は、接続路38aと、吐出路38bとを有する。
【0053】
接続路38aは、前記一対の給排路14a,14b同士を繋いでいる。この接続路38aに、第1チェック弁40と第2チェック弁42とが設けられている。
【0054】
吐出路38bは、その一端がチャージポンプ36の吐出口36aに接続されており、他端が接続路38aのうち第1チェック弁40と第2チェック弁42との間の部分に接続されている。
【0055】
逃がし路44は、その一端が接続路38aのうち第1チェック弁40と第2チェック弁42との間の部分に接続されており、他端が作動油タンクTに接続されている。この逃がし路44に、第1リリーフ弁46が設けられている。また、逃がし路44のうち第1リリーフ弁46よりも接続路38a側の部分と一方の給排路14aとに跨るように第2リリーフ弁48が設けられている。また、逃がし路44のうち第1リリーフ弁46よりも接続路38a側の部分と他方の給排路14bとに跨るように第3リリーフ弁50が設けられている。
【0056】
このようなチャージ回路16の構成により、チャージポンプ36から吐出された作動油は、吐出路38bを通じて接続路38aに導入されるとともに、第1リリーフ弁46の設定圧力以下の圧力で両給排路14a,14bのうち低圧側の給排路へ対応する第1チェック弁40又は第2チェック弁42を通って供給される。また、一方の給排路14a内の油圧が第2リリーフ弁48の設定圧力よりも大きくなった場合には、一方の給排路14aから第2リリーフ弁48を通って逃がし路44へ作動油が逃がされる。また、他方の給排路14b内の油圧が第3リリーフ弁50の設定圧力よりも大きくなった場合には、他方の給排路14bから第3リリーフ弁50を通って逃がし路44へ作動油が逃がされる。そして、チャージ油路38及び逃がし路44のうち第1リリーフ弁46の上流側の部分における油圧が第1リリーフ弁46の設定圧力よりも大きくなった場合には、第1リリーフ弁46を通って作動油タンクTへ作動油が逃がされる。
【0057】
前記図略の作業装置は、所定の作業を実施可能な装置であり、本発明の第1作業装置の概念に含まれる。例えば、作業車両がホイールクレーンである場合には、この作業装置はクレーン装置であり、作業車両がホイールショベルである場合には、この作業装置はショベル装置である。
【0058】
作業装置駆動回路18は、前記作業装置を駆動させるためのものである。この作業装置駆動回路18は、閉回路14から作動油が流入可能なように閉回路14から分岐している。
【0059】
具体的には、この作業装置駆動回路18は、油圧駆動部52と、分岐路54とを有する。
【0060】
油圧駆動部52は、前記作業装置を駆動させるためのものであり、可変容量型の作業用油圧モータ52a(以下、単に作業モータ52aという)からなる。この作業モータ52aは、駆動力を前記作業装置に付与できるようにその作業装置に取り付けられている。前記作業装置は、作業モータ52aから駆動力を与えられることにより駆動して所定の作業を実施する。また、この作業モータ52aは、一側の給排口52bと他側の給排口52cとを有する。
【0061】
分岐路54は、閉回路14から分岐しており、油圧駆動部52の作業モータ52aへ作動油を供給可能に構成されている。この分岐路54は、一側分岐路54aと他側分岐路54bとからなり、これら両分岐路54a,54bは、本発明の作業用供給路の概念に含まれる。一側分岐路54aは、その一端が前記一方の給排路14aに接続されており、他端が作業モータ52aの一側の給排口52bに接続されている。他側分岐路54bは、その一端が前記他方の給排路14bに接続されており、他端が作業モータ52aの他側の給排口52cに接続されている。この構成により、油圧ポンプ10から一方の給排路14aに作動油が吐出される場合には、その作動油を一側分岐路54aを通じて作業モータ52aに供給することが可能となっている。また、油圧ポンプ10から他方の給排路14bに作動油が吐出される場合には、その作動油を他側分岐路54bを通じて作業モータ52aに供給することが可能となっている。
【0062】
車輪駆動装置切換部20は、車輪駆動装置12に設けられており、車輪駆動装置12を駆動可能な状態と駆動不能な状態とに切り換え可能に構成されている。
【0063】
具体的には、この車輪駆動装置切換部20は、車輪駆動装置12の走行モータ32を駆動可能な状態と駆動不能な状態とに切り換え可能に構成されている。この車輪駆動装置切換部20は、車軸装置34に設けられた走行用ブレーキ装置20aからなる。この走行用ブレーキ装置20aは、車輪6にパーキングブレーキを掛けて車輪6の回転を防ぐことが可能となっている。走行用ブレーキ装置20aが車輪6にパーキングブレーキを掛けると、車軸及び出力軸32cを介して走行モータ32にもブレーキが掛かり、走行モータ32が駆動不能となる。すなわち、走行用ブレーキ装置20aは、走行モータ32にブレーキを掛けることが可能になっている。一方、走行用ブレーキ装置20aがパーキングブレーキを解除すると、走行モータ32に対するブレーキが解除され、走行モータ32が駆動可能となる。
【0064】
油圧駆動部切換部22は、作業装置駆動回路18に設けられており、油圧駆動部52を駆動可能な状態と駆動不能な状態とに切り換え可能に構成されている。
【0065】
具体的には、油圧駆動部切換部22は、作業モータ52aを駆動可能な状態と駆動不能な状態とに切り換え可能に構成されている。この油圧駆動部切換部22は、分岐路54に設けられた切換弁22a,22bからなる。
【0066】
一側切換弁22aは、電磁弁であり、一側分岐路54aに設けられている。この一側切換弁22aは、閉回路14の一方の給排路14aから一側分岐路54aを通じて作業モータ52aへ作動油が流れるのを阻止する第1位置P1と、一方の給排路14aから一側分岐路54aを通じて作業モータ52aへ作動油が流れるのを許容する第2位置P2とに切り換え可能に構成されている。油圧ポンプ10から一方の給排路14aに作動油が吐出される際、一側切換弁22aが第1位置P1とされて一方の給排路14aから一側分岐路54aを通じて作業モータ52aへ作動油が流れるのが阻止される場合には、作業モータ52aが駆動不能となる。一方、一側切換弁22aが第2位置P2とされて一方の給排路14aから一側分岐路54aを通じて作業モータ52aへ作動油が流れるのが許容される場合には、作業モータ52aが駆動可能となる。
【0067】
他側切換弁22bは、他側分岐路54bに設けられており、一側切換弁22aと同様に構成されている。すなわち、この他側切換弁22bは、他方の給排路14bから他側分岐路54bを通じて作業モータ52aへ作動油が流れるのを阻止する第1位置P1と、他方の給排路14bから他側分岐路54bを通じて作業モータ52aへ作動油が流れるのを許容する第2位置P2とに切り換え可能に構成されている。この他側切換弁22bは、前記一側切換弁22aと同様に動作し、第1位置P1となった場合には他側分岐路54bを通じて作業モータ52aへ作動油が流れるのが阻止されて作業モータ52aが駆動不能になる一方、第2位置P2となった場合には他側分岐路54bを通じて作業モータ52aへ作動油が流れるのが許容されて作業モータ52aが駆動可能となる。
【0068】
操作装置24は、操作者が前記作業装置の動作を指示するために操作するものである。具体的には、この操作装置24は、操作レバー24aと、操作装置本体24bとを有する。操作レバー24aは、操作装置本体24bに設けられており、操作装置本体24bに対して所定の可動範囲で動かせるようになっている。操作装置本体24bは、操作レバー24aが中立位置から動かされた量、すなわち操作者による操作レバー24aの中立位置からの操作量を表す信号をコントローラ28に送信する機能を有する。
【0069】
走行モード切換装置26は、作業車両の走行モードを切り換えるために操作者が操作するものである。具体的には、この走行モード切換装置26は、操作者が操作することにより作業車両の走行モードとしてパーキング状態もしくは走行状態のいずれかを選択できるようになっている。この走行モード切換装置26は、操作レバー26aと、切換装置本体26bとを有する。操作レバー26aは、切換装置本体26bに設けられている。この操作レバー26aは、パーキング状態を指示する位置と走行状態を指示する位置との間で動かせるようになっている。切換装置本体26bは、操作者が操作レバー26aを操作して選択した走行モード(パーキング状態又は走行状態)に応じた信号(走行モード選択信号)をコントローラ28に送信する機能を有する。
【0070】
コントローラ28は、作業車両の各構成部の動作を制御するものであり、本発明の制御手段の概念に含まれる。具体的には、コントローラ28は、走行モード切換装置26から送信される走行モード選択信号に応じて一側切換弁22aと他側切換弁22bに制御信号を送信することにより、それら切換弁22a,22bを第1位置P1と第2位置P2との間で切換制御する。詳細には、コントローラ28は、入力される走行モード選択信号が走行状態を選択するものである場合には、切換弁22a,22bを第1位置P1とする。一方、コントローラ28は、入力される走行モード選択信号がパーキング状態を選択するものである場合には、切換弁22a,22bを第2位置P2とする。
【0071】
また、コントローラ28は、走行モード切換装置26から送信される走行モード選択信号に応じて、走行用ブレーキ装置20aに車輪6へのパーキングブレーキの付与と解除とを切り換えさせる。具体的には、コントローラ28は、入力される走行モード選択信号がパーキング状態を選択するものである場合には、走行用ブレーキ装置20aに車輪6に対してパーキングブレーキを掛けさせる。一方、コントローラ28は、入力される走行モード選択信号が走行状態を選択するものである場合には、走行用ブレーキ装置20aに車輪6に対するパーキングブレーキを解除させる。
【0072】
また、コントローラ28は、操作装置24から送信される信号に応じて油圧ポンプ10の容量を制御する。具体的には、コントローラ28は、操作装置本体24bから操作者による操作レバー24aの操作量を表す信号が入力され、その信号に応じて油圧ポンプ10の容量を制御する。この際、コントローラ28は、入力される信号が操作レバー24aの中立位置からの操作量の増加を示すものである場合には、油圧ポンプ10の容量を増加させる。一方、コントローラ28は、入力される信号が操作レバー24aの中立位置からの操作量の減少を示すものである場合には、油圧ポンプ10の容量を減少させる。
【0073】
また、コントローラ28は、作業モータ52aの容量制御と、走行モータ32の容量制御を行う。
【0074】
次に、この第1実施形態による作業車両の動作について説明する。
【0075】
この第1実施形態による作業車両では、エンジン2の駆動が開始されると、そのエンジン2の駆動力がパワーディバイダ8を介して油圧ポンプ10に伝達される。これにより、油圧ポンプ10が駆動してその油圧ポンプ10から閉回路14に作動油が吐出される。
【0076】
油圧ポンプ10から閉回路14に作動油が吐出される状態で、操作者が走行モード切換装置26により走行状態を選択した場合には、コントローラ28は、走行用ブレーキ装置20aに車輪6に対するパーキングブレーキを解除させるとともに、切換弁22a,22bを第1位置P1とする。切換弁22a,22bが第1位置P1とされることにより、油圧ポンプ10から閉回路14に吐出される作動油は、一側分岐路54a又は他側分岐路54bを通じて作業モータ52aへ流れない。このため、作業モータ52aが駆動不能になり、それに伴って作業装置が駆動不能になる。この際、油圧ポンプ10から閉回路14に吐出された作動油は、ほぼ全量、走行モータ32に供給される。これにより、走行モータ32が駆動され、その走行モータ32の駆動力が車軸装置34を介して車輪6に伝達される。その結果、車輪6が回転して作業車両の走行が行われる。
【0077】
そして、エンジン2の回転数は、操作者によるアクセル装置4の操作量に応じて制御され、それに伴って、作業車両の走行速度が制御される。すなわち、操作者によるアクセルの踏み込み量が増加した場合には、エンジン2の回転数が増加し、それに伴って油圧ポンプ10の駆動量が増加して当該油圧ポンプ10からの作動油の吐出量が増加する。油圧ポンプ10からの作動油の吐出量が増加すると、走行モータ32の回転数が増加するため、車輪6の回転速度が増加する。その結果、作業車両の走行速度が増加する。一方、操作者によるアクセルの踏み込み量が減少した場合には、アクセルの踏み込み量が増加した場合とは逆に、エンジン2の回転数が減少し、それに伴って油圧ポンプ10の駆動量、油圧ポンプ10からの作動油の吐出量、走行モータ32の回転数が減少する。その結果、車輪6の回転速度が減少し、作業車両の走行速度が減少する。
【0078】
ところで、油圧ポンプ10の吐出圧力が増大すると、油圧ポンプ10の駆動に要する動力(以下、油圧ポンプ10の必要動力という)が増大する。なお、油圧ポンプ10の必要動力は、効率を無視すれば、油圧ポンプ10の吐出圧力と油圧ポンプ10の容量との積によって求められる。そして、油圧ポンプ10の必要動力がエンジン2の出力を超えて増大した場合には、エンジン2が停止する。そこで、コントローラ28は、作業車両の走行時にエンジン2の停止を避けるため、油圧ポンプ10の必要動力がエンジン2の出力を超えないように油圧ポンプ10の容量を制御する(第1容量制御)。
【0079】
具体的には、図2に示すように、油圧ポンプ10の吐出圧力が増加しても、油圧ポンプ10の必要動力がエンジン2の出力を超えない所定の吐出圧力Pまでは、油圧ポンプ10の容量は最大容量qmaxに固定される。すなわち、この最大容量qmaxは、油圧ポンプ10の吐出圧力が前記所定の吐出圧力P以下であれば、油圧ポンプ10の必要動力がエンジン2の出力を超えないような値に設定されている。そして、コントローラ28は、油圧ポンプ10の吐出圧力が前記所定の吐出圧力Pを超えてさらに増加する場合には、図2に示す実線の減少曲線に従って油圧ポンプ10の容量を徐々に減少させる。前記減少曲線は、油圧ポンプ10の吐出圧力と容量との積によって求まる油圧ポンプ10の必要動力がエンジン2の出力よりも小さくなるような形態に設定されている。
【0080】
さらに、コントローラ28では、エンジン2の回転数に応じて、前記所定の吐出圧力P及び前記減少曲線が変化する。すなわち、エンジン2の回転数が高い場合には、前記所定の吐出圧力はPであるとともに、前記減少曲線は図2中の実線で示す状態にある。これに対して、エンジン2の回転数が低下すると、それに応じて前記所定の吐出圧力はPへ低下するとともに、前記減少曲線も図2中の破線で示すように全体的に低い値へ移行する。これにより、エンジン2の出力が低下した場合でも、油圧ポンプ10の必要動力はエンジン2の出力よりも小さい値に維持される。
【0081】
一方、油圧ポンプ10から閉回路14に作動油が吐出されている状態で、作業装置の駆動時、すなわち操作者が走行モード切換装置26によりパーキング状態を選択した時には、コントローラ28は、走行用ブレーキ装置20aにパーキングブレーキを掛けさせるとともに、切換弁22a,22bを第2位置P2とする。走行用ブレーキ装置20aがパーキングブレーキを掛けることにより、走行モータ32が駆動不能となり、作業車両は、パーキング状態となる。そして、この際、走行モータ32が駆動不能となることに起因して、走行モータ32に作動油が流入できなくなる。一方、第2位置P2となった切換弁22a,22bを通じて作動油の流通が許容されるので、油圧ポンプ10から閉回路14に吐出された作動油は、ほぼ全量、分岐路54を通じて作業モータ52aへ供給される。
【0082】
具体的には、油圧ポンプ10から一方の給排路14aに作動油が吐出されている場合には、一側分岐路54aを通じて作業モータ52aに作動油が供給され、その後、作業モータ52aからの戻り油が他側分岐路54bと他方の給排路14bを通じて油圧ポンプ10に戻る。一方、油圧ポンプ10から他方の給排路14aに作動油が吐出されている場合には、逆の経路で作業モータ52aに作動油が供給されるとともに作業モータ52aからの戻り油が油圧ポンプ10に戻る。このように作業モータ52aに作動油が供給されることにより、作業モータ52aが駆動され、それに伴って作業装置が駆動される。
【0083】
この際、コントローラ28は、図3中のA部に示すように、操作者による操作装置24の操作レバー24aの操作量の増減に応じて油圧ポンプ10の容量を増減させる(第2容量制御)。具体的には、この第2容量制御では、図3中のA部で示すように、操作レバー24aの操作量の増加に対して油圧ポンプ10の容量が正比例で増加する。そして、油圧ポンプ10の容量が最大容量qmaxに達すると、それ以上操作レバー24aの操作量が増加しても油圧ポンプ10の容量は最大容量qmaxに維持される。なお、操作レバー24aの操作量に対して作業モータ52aの駆動のために実際に要する油圧ポンプ10の容量は、図3中の二点鎖線で示される。従って、作業装置の駆動時に油圧ポンプ10の容量制御をせず、油圧ポンプ10の容量を最大容量qmaxに固定したままであれば、油圧ポンプ10の容量が必要容量に対して無駄に大きくなっている。これに対して、この第2容量制御のように操作レバー24aの操作量に応じた油圧ポンプ10の容量制御を行えば、図3中の斜線のハッチングを掛けた部分のポンプ容量(油圧ポンプ10の吐出量)を削減できる。
【0084】
さらに、コントローラ28は、作業装置の駆動時には、油圧ポンプ10の上記第1容量制御と第2容量制御とのうち油圧ポンプ10の吐出圧が低くなる方を選択して行う。これにより、作業装置の駆動時も油圧ポンプ10の必要動力がエンジン2の出力を超えないようになり、その結果、前記作業車両の走行時と同様にエンジン2の停止が避けられる。
【0085】
以上説明したように、この第1実施形態による作業車両では、走行時に、コントローラ28が走行用ブレーキ装置20aに走行モータ32を駆動可能な状態にさせるとともに切換弁22a,22bに作業モータ52aを駆動不能な状態にさせる。従って、作業車両の走行時には、油圧ポンプ10から供給する作動油の油圧で車輪駆動装置12を駆動させて車輪6を回転させることにより、作業車両の走行を行うことができる。また、この第1実施形態では、作業装置の駆動時に、コントローラ28が走行用ブレーキ装置20aに走行モータ32を駆動不能な状態にさせるとともに切換弁22a,22bに作業モータ52aを駆動可能な状態にさせる。このため、作業装置の駆動時には、油圧ポンプ10から供給する作動油の油圧で作業モータ52aを駆動させることにより、作業装置を駆動させることができる。従って、この第1実施形態では、油圧による作業車両の走行と作業装置の油圧駆動とを実施することができる。
【0086】
また、この第1実施形態では、油圧ポンプ10から閉回路14を通じて走行モータ32へ作動油を供給することができる一方、油圧ポンプ10から閉回路14及び分岐路54を経て作業モータ52aに作動油を供給することができる。すなわち、1つの油圧ポンプ10で走行モータ32と作業モータ52aの両方に作動油を供給することができる。このため、図4の比較例に示すように、走行モータ32へ作動油を供給する油圧ポンプ10と作業装置の作業モータ52aに作動油を供給する油圧ポンプ11とを別々に設けてそれら両油圧ポンプ10,11をエンジン2によって同時に駆動させる構成と異なり、作業車両の走行時に作業モータ52aに対する作動油供給用の油圧ポンプ11が空転することに起因する燃費の悪化を防ぐことができる。
【0087】
また、この第1実施形態では、切換弁22a,22bが作業装置駆動回路18の分岐路54に設けられているため、作業車両の走行時に作動油が閉回路14を通じて走行モータ32へ供給される際に作動油がその分岐路54に設けられた切換弁22a,22bを通って流れることはない。このため、作業車両の走行時に作動油が閉回路に設けられた切換制御弁を通過することに起因する圧損の発生を防ぐことができ、その結果、その圧損に起因する燃費の悪化を防ぐことができる。従って、この第1実施形態では、油圧による作業車両の走行と作業装置の油圧駆動とを実施しながら、走行時の燃費の悪化を防ぐことができる。
【0088】
また、第1実施形態では、コントローラ28が、作業車両の走行時に油圧ポンプ10の必要動力がエンジン2の出力を超えないように油圧ポンプ10の容量を制御する第1容量制御を行うため、作業車両の走行時に油圧ポンプ10の必要動力がエンジン2の出力を超えることに起因するエンジン2の停止が生じるのを防ぐことができる。
【0089】
また、第1実施形態では、コントローラ28が、作業装置の駆動時に、前記第1容量制御と、操作者による操作レバー24aの操作量の増減に応じて油圧ポンプ10の容量を増減させる第2容量制御とのうち、油圧ポンプ10の吐出圧が低くなる方を選択して行う。このため、作業装置の駆動時に前記第1容量制御よりも前記第2容量制御の方が油圧ポンプ10の吐出圧が低くなる場合には、操作者による操作レバー24aの操作量の増減に合わせて油圧ポンプ10の容量を増減させ、それによって、油圧ポンプ10の容量が前記操作量に対して過剰に多い容量となるのを防ぐことができる。これにより、油圧ポンプ10の駆動に要する動力が無駄に大きくなるのを防ぐことができるので、燃費の改善を図ることができる。また、作業装置の駆動時に前記第2容量制御よりも前記第1容量制御の方が油圧ポンプ10の吐出圧が低くなる場合には、油圧ポンプ10の駆動に要する動力がエンジン2の出力を超えないように油圧ポンプ10の容量が制御されるので、作業車両の走行時と同様、エンジン2の停止が生じるのを防ぐことができる。
【0090】
(第2実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態による油圧式作業車両の構成について説明する。
【0091】
この第2実施形態による油圧式作業車両では、上記第1実施形態と異なり、油圧駆動部切換部22が、作業モータ52aにブレーキを掛けることが可能な作業用ブレーキ装置22dからなり、分岐路54に上記第1実施形態のような切換弁22a,22bは設けられていない。
【0092】
具体的には、作業用ブレーキ装置22dは、作業モータ52aに付設されている。作業モータ52aは、作業用ブレーキ装置22dによってブレーキが掛けられることにより、駆動不能になる。一方、作業モータ52aは、作業用ブレーキ装置22dによるブレーキが解除されることにより、駆動可能になる。
【0093】
コントローラ28は、走行モード切換装置26から入力される走行モード選択信号に応じて、作業用ブレーキ装置22dに作業モータ52aに対してブレーキを掛けさせるか又はブレーキを解除させるかの切換制御を行う。
【0094】
詳細には、この第2実施形態では、操作者が走行モード切換装置26により走行状態を選択して走行モード切換装置26からコントローラ28に走行状態を指示する信号が入力されると、コントローラ28は、入力された信号に応じて作業用ブレーキ装置22dに作業モータ52aに対してブレーキを掛けさせる。これにより、作業車両の走行時には、作業モータ52aが駆動不能な状態となる。そして、この状態では、作業モータ52aに作動油がほぼ流入できなくなる。一方、コントローラ28は、走行モード切換装置26から入力された前記走行状態を指示する信号に応じて走行用ブレーキ装置20aにパーキングブレーキを解除させる。これにより、走行モータ32が駆動可能になる。このため、油圧ポンプ10から閉回路14に吐出された作動油は、ほぼ全量が走行モータ32に供給され、その作動油の油圧によって走行モータ32が駆動する。
【0095】
次に、操作者が走行モード切換装置26によりパーキング状態を選択して走行モード切換装置26からコントローラ28にパーキング状態を指示する信号が入力された場合には、コントローラ28は、入力された信号に応じて作業用ブレーキ装置22dに作業モータ52aに対するブレーキを解除させる。これにより、作業車両を停止させて作業装置を駆動させる時には、作業モータ52aが駆動可能な状態となる。そして、この状態では、作業モータ52aに作動油が流入可能となる。一方、コントローラ28は、走行モード切換装置26から入力された前記パーキング状態を指示する信号に応じて走行用ブレーキ装置20aにパーキングブレーキを掛けさせる。これにより、走行モータ32が駆動不能になる。このため、油圧ポンプ10から閉回路14に吐出された作動油は、ほぼ全量が作業モータ52aに供給され、その作動油の油圧によって作業モータ52aが駆動する。
【0096】
この第2実施形態による作業車両の上記以外の構成及び動作は、上記第1実施形態と同様である。
【0097】
上記第1実施形態のように分岐路54に設けた切換弁22a,22bによって作動油を作業モータ52aに供給するか否かを切り換えることにより作業モータ52aを駆動可能状態と駆動不能状態とに切り換える場合には、作業装置の駆動時に作動油が分岐路54に設けられた切換弁22a,22bを通って流れる。このため、作動油の圧損が生じる。これに対して、第2実施形態では、作業車両の走行時に作業用ブレーキ装置22dに作業モータ52aに対してブレーキを掛けさせることにより作業モータ52aを駆動不能にする一方、作業装置の駆動時に作業用ブレーキ装置22dに作業モータ52aに対するブレーキを解除させることにより作業モータ52aを駆動可能にする。このため、作業装置の駆動時に、上記第1実施形態のような分岐路54に設けられた切換弁22a,22bを作動油が通過することに起因する圧損は生じない。従って、この第2実施形態では、上記第1実施形態に比べて燃費の向上を図ることができる。
【0098】
この第2実施形態のこれ以外の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0099】
(第3実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第3実施形態による油圧式作業車両の構成について説明する。
【0100】
この第3実施形態による油圧式作業車両では、コントローラ28が、分岐路54を通じて作業モータ52aへ供給される作動油の流通方向及び流量を流量調整弁56に調整させるようになっている。
【0101】
具体的には、この第3実施形態では、作業装置駆動回路18が分岐路54に設けられた流量調整弁56を備えている。また、作業装置駆動回路18は、一側接続路54c及び他側接続路54dを備えている。一側接続路54cの一端は、作業モータ52aの一側給排口52bに接続されており、他側接続路54dの一端は、作業モータ52aの他側給排口52cに接続されている。流量調整弁56は、一側接続路54cの他端及び他側接続路54dの他端と、一側分岐路54aのうち一方の給排路14aと反対側の端部及び他側分岐路54bのうち他方の給排路14bと反対側の端部とに接続されている。
【0102】
そして、流量調整弁56は、一側分岐路54a及び他側分岐路54bと一側接続路54c及び他側接続路54dとの間の作動油の流通を遮断する中立位置Pと、一方の給排路14aから一側分岐路54aに流れる作動油を一側接続路54cへ流すとともに他側接続路54dから他側分岐路54bへ作動油を流すことが可能な第1流通位置Pf1と、一方の給排路14aから一側分岐路54aに流れる作動油を他側接続路54dへ流すとともに一側接続路54cから他側分岐路54bへ作動油を流すことが可能な第2流通位置Pf2との間で切換可能となっている。また、流量調整弁56は、油圧(パイロット圧)によって切換制御される。この流量調整弁56は、パイロット圧が導入される2つのポート56a,56bを有する。
【0103】
操作装置24の操作装置本体24bは、操作レバー24aの操作方向に応じて流量調整弁56の一側ポート56a又は他側ポート56bへパイロット圧を供給する。なお、操作装置本体24bから一側ポート56aへのパイロット圧の供給経路及び操作装置本体24bから他側ポート56bへのパイロット圧の供給経路には、その供給経路内の圧力を検出する圧力センサ57がそれぞれ接続されている。これら両圧力センサ57は、その検出圧力を示す信号をコントローラ28へ送信する。
【0104】
そして、操作装置本体24bは、操作レバー24aが中立位置にある時には、一側ポート56aと他側ポート56bのいずれにもパイロット圧を供給しない。この場合、流量調整弁56は、中立位置Pとなり、パーキング状態において油圧ポンプ10から一方の給排路14aに吐出された作動油が一側分岐路54aへ流入しても、その作動油は作業モータ52aに供給されない。この作動油は、一側分岐路54aから流量調整弁56を通って作動油タンクTへ流れる。
【0105】
次に、操作レバー24aが中立位置から一方側に操作されると、操作装置本体24bは、一側ポート56aにパイロット圧を供給する。これにより、流量調整弁56は、中立位置Pから第1流通位置Pf1側へ移行する。この場合、パーキング状態において油圧ポンプ10から一方の給排路14aに吐出されて一側分岐路54aに流入した作動油は、一側接続路54cを通じて作業モータ52aに供給される。そして、作業モータ52aからの戻り油は、他側接続路54dから他側分岐路54bを通じて他方の給排路14bに戻る。この際、作業モータ52aは正回転する。
【0106】
そして、操作レバー24aの中立位置から一方側への操作量に応じて操作装置本体24bから一側ポート56aに供給されるパイロット圧は増減される。すなわち、操作レバー24aの一方側への操作量が増加すると、操作装置本体24bから一側ポート56aに供給するパイロット圧が増加する。一側ポート56aに供給されるパイロット圧が増加すると、流量調整弁56の中立位置Pから第1流通位置Pf1側への移行量が増加する。この第1流通位置Pf1側への移行量が増加するにつれて、一側分岐路54aから一側接続路54cへの作動油の流通許容量及び他側接続路54dから他側分岐路54bへの戻り油の流通許容量が増加する。これにより、作業モータ52aの正転方向への回転速度が増加する。なお、操作レバー24aの一方側への操作量が減少すると、上記とは逆に作業モータ52aの正転方向への回転速度が減少する。
【0107】
一方、操作レバー24aが中立位置から他方側に操作されると、操作装置本体24bは、他側ポート56bにパイロット圧を供給する。これにより、流量調整弁56は、中立位置Pから第2流通位置Pf2側へ移行する。この場合、パーキング状態において油圧ポンプ10から一方の給排路14aに吐出されて一側分岐路54aに流入した作動油は、他側接続路54dを通じて作業モータ52aに供給される。そして、作業モータ52aからの戻り油は、一側接続路54cを通じて他側分岐路54bに戻る。この際、作業モータ52aは逆回転する。
【0108】
そして、操作レバー24aの中立位置から他方側への操作量に応じて操作装置本体24bから他側ポート56bに供給されるパイロット圧が増減される。この場合、上記した操作レバー24aが一方側へ操作される場合と同様に、作業モータ52aへの作動油の供給量が増減し、その結果、作業モータ52aの逆転方向への回転速度が増減する。
【0109】
この第3実施形態による作業車両の上記以外の構成及び動作は、上記第1実施形態と同様である。
【0110】
以上説明したように、この第3実施形態では、操作者による操作レバー24aの操作量に応じて作業モータ52aの回転速度を制御することができ、その結果、操作者による操作レバー24aの操作量に応じて作業装置の駆動速度等を制御することができる。なお、流量調整弁56は油圧ポンプ10に比べて微細な流量の制御に適しているとともに応答性に優れている。このため、この第3実施形態では、操作者による操作レバー24aの操作量が微小であっても作業モータ52aへ供給する作動油の流量を操作レバー24aの微小な操作に応じて正確に調整することができるとともに、操作レバー24aの操作に対する作業モータ52aへの作動油の供給流量の調整の応答性を向上することができる。
【0111】
(第4実施形態)
次に、図7を参照して、本発明の第4実施形態による油圧式作業車両の構成について説明する。
【0112】
この第4実施形態の油圧式作業車両は、第1車輪6aと第2車輪6bの両方を回転させて走行することができる一方、図略の作業装置により作業を実施しつつ第2車輪6bの回転によって走行することができるようになっている。
【0113】
具体的には、この第4実施形態の作業車両は、駆動可能な第1車輪6a及び第2車輪6bを備えている。また、作業車両は、第1車輪6aを回転させる走行システムと、第2車輪6bを回転させる走行システムと、作業装置を駆動させるシステムとを備えている。この第1車輪6aを回転させる走行システム及び作業装置を駆動させるシステムは、上記第1実施形態の車輪6を回転させる走行システム及び作業装置を駆動させるシステムと同様である。
【0114】
すなわち、この第4実施形態の作業車両は、エンジン2と、アクセル装置4と、パワーディバイダ8と、第1油圧ポンプ60と、第1車輪駆動装置62と、第1閉回路64と、第1チャージ回路66と、図略の作業装置と、作業装置駆動回路18と、第1車輪駆動装置切換部70と、油圧駆動部切換部22と、操作装置24と、走行モード切換装置26と、コントローラ28とを備えている。なお、第1油圧ポンプ60、第1車輪駆動装置62、第1閉回路64及び第1チャージ回路66は、上記第1実施形態の油圧ポンプ10、車輪駆動装置12、閉回路14及びチャージ回路16と同様に構成されている。
【0115】
そして、この第4実施形態の作業車両は、第2油圧ポンプ72と、第2車輪駆動装置74と、第2閉回路76と、第2チャージ回路78と、第2車輪駆動装置切換部80とをさらに備えており、これらによって第2車輪6bを回転させる走行システムが構成されている。
【0116】
第2油圧ポンプ72、第2車輪駆動装置74、第2閉回路76、第2チャージ回路78、第2車輪駆動装置切換部80は、上記第1実施形態の油圧ポンプ10、車輪駆動装置12、閉回路14、チャージ回路16、車輪駆動装置切換部20と同様に構成されている。
【0117】
そして、この第4実施形態では、操作者が走行モード切換装置26により走行状態を選択した場合には、コントローラ28は、第1車輪駆動装置切換部70としての第1走行用ブレーキ装置70aにパーキングブレーキを解除させるのに加えて第2車輪駆動装置切換部80としての第2走行用ブレーキ装置80aにパーキングブレーキを解除させる。これにより、第1車輪駆動装置62の第1走行モータ62a及び第2車輪駆動装置74の第2走行モータ74aが駆動可能になる。そして、第1油圧ポンプ60から供給される作動油の油圧により第1走行モータ62aが駆動して第1車輪6aが回転するとともに、第2油圧ポンプ72から供給される作動油の油圧により第2走行モータ74aが駆動して第2車輪6bが回転する。このようにして作業車両の走行が行われる。
【0118】
一方、操作者が走行モード切換装置26によりパーキング状態を選択した場合には、コントローラ28は、第1走行用ブレーキ装置70aにパーキングブレーキを掛けさせるとともに、切換弁22a,22bを第2位置P2に切り換える。これにより、第1走行モータ62aは駆動不能になるとともに、第1油圧ポンプ60から吐出される作動油は作業モータ52aに供給される。その結果、作業モータ52aが駆動して作業装置による所定の作業が行われる。一方、この際、コントローラ28は、第2走行用ブレーキ装置80aにはパーキングブレーキを掛けさせない。このため、第2走行モータ74aは、第2油圧ポンプ72から供給される作動油の油圧で駆動する。この時、第1走行モータ62aは駆動不能で第1車輪6aは回転しないが、第2走行モータ74aは駆動して第2車輪6bが回転するため、作業車両の走行が行われる。すなわち、この第4実施形態の作業車両では、作業装置を駆動させて所定の作業を行いながら、走行することができる。
【0119】
この第4実施形態の作業車両の上記以外の構成及び動作は、上記第1実施形態と同様である。
【0120】
以上説明したように、この第4実施形態では、作業車両の走行時に、第1車輪駆動装置62により第1車輪6aを回転させるとともに、第2車輪駆動装置74により第2車輪6bを回転させることが可能である。このため、作業車両の走行時に力強い走行力を得ることができる。さらに、この第4実施形態では、作業装置を駆動させながら、第2車輪6bを回転させて作業車両の走行を行うことができる。
【0121】
(第5実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第5実施形態による油圧式作業車両の構成について説明する。
【0122】
この第5実施形態の油圧式作業車両では、閉回路14の一方の給排路14aのみから作業モータ52aへ作動油を供給可能となっており、その作業モータ52aへ供給する作動油の流量を流量調整弁56で調整できるようになっている。そして、この第5実施形態では、作業モータ52aからの戻り油に所定の背圧を掛けて閉回路14の他方の給排路14bへ戻すようになっている。
【0123】
具体的には、この第5実施形態の作業車両の構成は、基本的には上記第3実施形態の作業車両の構成と同様である。すなわち、この第5実施形態では、パーキング状態において一側分岐路54aから作業モータ52aへの作動油の流通方向及び流量を、操作者による操作レバー24aの操作に応じて流量調整弁56によって制御する部分は、上記第3実施形態の対応する部分と同様に構成されている。
【0124】
ただし、この第5実施形では、一側分岐路54aのみが本発明の作業用供給路の概念に含まれる。すなわち、この第5実施形態では、作業モータ52aに供給される作動油は、油圧ポンプ10から一方の給排路14aに吐出されるとともに、その一方の給排路14aから一側分岐路54aを通って流れる作動油のみである。また、他側分岐路54bの代わりに作業用戻り油路54eが流量調整弁56と他方の給排路14bとの間を繋いでいる。さらに、作業用戻り油路54eには、上記第3実施形態の他側切換弁22bが設けられていない。また、作業用戻り油路54eには、背圧発生装置82が接続されている。他側分岐路54bのうち背圧発生装置82の接続箇所よりも他方の給排路14b側の部分には、他方の給排路14b側から流量調整弁56側への作動油の逆流を防止するためのチェック弁83が設けられている。
【0125】
前記背圧発生装置82は、逃がし路82aと、背圧チェック弁82bとを有する。
【0126】
逃がし路82aは、作業用戻り油路54eから分岐して作動油タンクTに繋がっている。背圧チェック弁82bは、この逃がし路82aに設けられている。そして、作業用戻り油路54eを流れる作業モータ52aからの戻り油の圧力が背圧チェック弁82bの設定圧力よりも大きくなった場合には、作業用戻り油路54eから逃がし路82aを通じて作動油タンクTへ戻り油の一部が逃がされる。これにより、作業用戻り油路54eを流れる戻り油には、背圧チェック弁82bの設定圧力に相当する背圧が掛けられる。そして、背圧が掛けられた戻り油は、チェック弁83を通って他方の給排路14bに戻される。なお、背圧チェック弁82bの設定圧力は、他方の給排路14b内の油圧よりも大きくなるように設定されているため、戻り油にも他方の給排路14b内の油圧よりも大きい背圧が掛けられて他方の給排路14bへ戻される。
【0127】
また、この第5実施形態では、チャージ回路16が、チャージ油路38を流通する作動油を濾過するためのフィルタ51を備えている。このフィルタ51は、チャージ油路38のうち吐出路38bに設けられている。これにより、チャージポンプ36から吐出路38bに吐出された作動油は、フィルタ51で濾過された後、閉回路14に導入される。
【0128】
この第5実施形態の作業車両の上記以外の構成及び動作は、上記第3実施形態と同様である。
【0129】
この第5実施形態では、上記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、この第5実施形態では、背圧発生装置82により他方の給排路14b内の油圧よりも大きい背圧を作業モータ52aからの戻り油に付与してその戻り油を他方の給排路14bに戻すことができる。このため、作業モータ52aからの戻り油を確実に閉回路14に戻すことができる。その結果、作業モータ52aからの戻り油が不足することに起因して閉回路14内でキャビテーションが発生するのを防ぐことができる。
【0130】
また、この第5実施形態では、チャージポンプから吐出する作動油をフィルタで濾過してから閉回路に導入することができるため、チャージ回路から閉回路へきれいな作動油を供給することができる。その結果、異物の混入した作動油が閉回路14から各機器で送られるのを抑制することができるため、各機器に破損が生じたり動作不良が生じたりするのを防ぐことができる。
【0131】
(第6実施形態)
次に、図9を参照して、本発明の第6実施形態による油圧式作業車両の構成について説明する。
【0132】
この第6実施形態の作業車両では、コントローラ28が減圧弁85,86により流量調整弁56を制御して作業モータ52aへ作動油を供給するか否かを切り換えるようになっている。すなわち、この第6実施形態では、流量調整弁56が本発明の油圧駆動部切換部の概念に含まれる。
【0133】
具体的には、この第6実施形態の作業車両の構成は、上記第5実施形態の作業車両から一側切換弁22aを省略するとともに、第1減圧弁85と、第2減圧弁86と、作業用ブレーキ装置22dとを加えた構成となっている。
【0134】
第1減圧弁85は、操作装置本体24bから流量調整弁56の一側ポート56aへのパイロット圧の供給経路に設けられている。第2減圧弁86は、操作装置本体24bから流量調整弁56の他側ポート56bへのパイロット圧の供給経路に設けられている。
【0135】
そして、コントローラ28は、操作者が走行モード切換装置26によって選択した走行モードに応じて第1減圧弁85と第2減圧弁86を制御する。具体的には、操作者が走行モード切換装置26により走行状態を選択して走行モード切換装置26からコントローラ28に走行状態を指示する信号が入力された場合には、コントローラ28は、その入力された信号に応じて両減圧弁85,86に操作装置本体24bから流量調整弁56に供給されるパイロット圧を減圧させる。この際、コントローラ28は、操作装置本体24bから一側ポート56aに供給されるパイロット圧と操作装置本体24bから他側ポート56bに供給されるパイロット圧とが等しい圧力になるように、第1減圧弁85による減圧の程度と第2減圧弁86による減圧の程度とを制御する。これにより、流量調整弁56は、操作装置24の操作状況にかかわらず、強制的に中立位置Pとされる。その結果、流量調整弁56により作動油の流通が阻止されて作業モータ52aに作動油が供給されなくなるので、作業モータ52aが駆動不能になる。
【0136】
一方、操作者が走行モード切換装置26によりパーキング状態を選択して走行モード切換装置26からコントローラ28にパーキング状態を指示する信号が入力された場合には、コントローラ28は、その入力された信号に応じて両減圧弁85,86によるパイロット圧の減圧を停止させる。これにより、操作者による操作レバー24aの操作に応じたパイロット圧が操作装置本体24bから流量調整弁56の各ポート56a,56bに供給される。これにより、上記第5実施形態におけるパーキング状態と同様にして、流量調整弁56が操作レバー24aの操作方向と操作量に応じて中立位置Pと第1流通位置Pf1と第2流通位置Pf2との間で切換制御される。その結果、作業モータ52aに操作レバー24aの操作に応じて作動油が供給可能になるため、作業装置の駆動時には作業モータ52aが駆動可能になる。
【0137】
この第6実施形態の作業車両の上記以外の構成及び動作は、上記第5実施形態と同様である。
【0138】
この第6実施形態では、上記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0139】
さらに、この第6実施形態では、流量調整弁56によって作動油の流量調整と作動油を作業モータ52aに供給するか否かの切り換えの両方を行えるので、流量調整弁と切換弁とを別個に設ける場合に比べて部品点数の増加を防ぐことができる。
【0140】
(第7実施形態)
次に、図10を参照して、本発明の第7実施形態による油圧式作業車両の構成について説明する。
【0141】
この第7実施形態の作業車両は、第1作業装置(図示略)に加えて第2作業装置(図示略)を備えており、この第2作業装置へ供給する作動油の余剰油を第1作業装置の油圧駆動部52に供給できるようになっている。
【0142】
具体的には、この第7実施形態の作業車両は、上記第5実施形態の作業車両と同様の構成を備えている。なお、上記第5実施形態における作業装置、流量調整弁56、操作装置24は、この第7実施形態における第1作業装置、第1流量調整弁56、第1操作装置24に相当する。
【0143】
そして、この第7実施形態の作業車両は、第2作業装置と、作業用油圧ポンプ88と、作動油回路89と、第2操作装置90とをさらに備えている。
【0144】
第2作業装置は、油圧によって駆動し、第1作業装置とは異なる所定の作業を実施可能に構成されている。そして、第2作業装置は、油圧が供給されることにより駆動する油圧駆動部91を有している。油圧駆動部91は、油圧シリンダ91aからなり、この油圧シリンダ91aの駆動に伴って第2作業装置が駆動するようになっている。
【0145】
作業用油圧ポンプ88は、エンジン2によって駆動されて作動油を吐出する。具体的には、この作業用油圧ポンプ88は、パワーディバイダ8に接続されている。これにより、エンジン2の駆動力がパワーディバイダ8によって分割されて作業用油圧ポンプ88に伝達される。それによって作業用油圧ポンプ88が駆動するようになっている。また、作業用油圧ポンプ88は、可変容量型であり、コントローラ28によってその容量が制御される。
【0146】
作動油回路89は、作業用油圧ポンプ88から吐出された作動油を第2作業装置の油圧駆動部91に供給可能に構成されている。具体的には、この作動油回路89は、第2流量調整弁92と、供給路93と、一側給排路94と、他側給排路95と、タンク排出路96と、余剰油路97と、逃がし路98と、アンロード弁99と、チェック弁100とを含む。
【0147】
第2流量調整弁92の構成は、上記第3実施形態の流量調整弁56と同様である。
【0148】
供給路93は、その一端が作業用油圧ポンプ88の吐出口に接続されており、他端が第2流量調整弁92に接続されている。
【0149】
一側給排路94は、その一端が第2流量調整弁92に接続されており、他端が油圧シリンダ91aの一側の給排口91bに接続されている。
【0150】
他側給排路95は、その一端が第2流量調整弁92に接続されており、他端が油圧シリンダ91aの他側の給排口91cに接続されている。
【0151】
タンク排出路96は、その一端が第2流量調整弁92に接続されており、他端が作動油タンクTに接続されている。
【0152】
余剰油路97は、その一端が第2流量調整弁92に接続されており、他端が一側分岐路54aのうち一側切換弁22aの下流側の位置に接続されている。
【0153】
逃がし路98は、その一端が余剰油路97に接続されており、他端が作動油タンクTに接続されている。
【0154】
アンロード弁99は、逃がし路98に設けられている。このアンロード弁99は、作動油タンクT側への作動油の流通を許容する排出許容位置Pと、その作動油の流通を阻止する排出阻止位置Pとに切換可能となっている。このアンロード弁99は、電磁弁であり、コントローラ28によって切換制御される。
【0155】
チェック弁100は、余剰油路97のうち逃がし路98が接続された箇所よりも一側分岐路54a側の部分に設けられている。このチェック弁100は、一側分岐路54aから余剰油路97を通って第2流量調整弁92側へ作動油が逆流するのを防止している。
【0156】
第2操作装置90の構成は、上記第3実施形態の操作装置24と同様である。なお、第2操作装置90の操作装置本体90bから第2流量調整弁92の一側ポート92aへのパイロット圧の供給経路と、第2操作装置90の操作装置本体90bから第2流量調整弁92の他側ポート92bへのパイロット圧の供給経路とには、圧力センサ101がそれぞれ接続されている。この両圧力センサ101は、その検出圧力を示す信号をコントローラ28に送信するようになっている。
【0157】
そして、この第7実施形態の作業車両では、エンジン2の駆動に伴って作業用油圧ポンプ88が駆動し、作業用油圧ポンプ88から供給路93に作動油が吐出される。そして、操作者による第2操作装置90の操作レバー90aの操作に応じて、第2流量調整弁92が中立位置Pと第1流通位置Pf1と第2流通位置Pf2との間で切換制御される。この際の動作は、上記第5実施形態の流量調整弁56の動作と同様である。
【0158】
第2流量調整弁92が中立位置Pにある状態では、供給路93から一側給排路94又は他側給排路95への作動油の流通が阻止され、供給路93から余剰油路97に作動油が流れる。
【0159】
そして、第2流量調整弁92が中立位置Pから第1流通位置Pf1側に移行すると、作動油は供給路93から一側給排路94に流れて油圧シリンダ91aの一側給排口91bに供給される。これにより、油圧シリンダ91aが駆動し、それに伴って他側給排口91cから作動油が排出される。この排出された作動油は、他側給排路95及びタンク排出路96を通って作動油タンクTへ流れる。ここで、作業用油圧ポンプ88から吐出された作動油のうち第2流量調整弁92で規制される流量を超える分の作動油(余剰油)は、余剰油路97へ流れる。
【0160】
一方、第2流量調整弁92が中立位置Pから第2流通位置Pf2側に移行すると、作動油は供給路93から他側給排路95に流れて油圧シリンダ91aの他側給排口91cに供給される。これにより、油圧シリンダ91aが駆動し、それに伴って一側給排口91bから作動油が排出される。この排出された作動油は、タンク排出路96を通って作動油タンクTへ流れる。この場合も、上記と同様、作業用油圧ポンプ88から吐出された作動油のうち第2流量調整弁92で規制される流量を超える分の作動油(余剰油)は、余剰油路97へ流れる。
【0161】
そして、操作者が走行モード切換装置26により走行状態を選択している場合には、コントローラ28は、アンロード弁99を排出阻止位置Pとする。これにより、余剰油路97に流れた作動油は、逃がし路98を通じて作動油タンクTに逃がされることなく、一側分岐路54aに導入される。その結果、操作者が走行モード切換装置26により走行状態を選択して閉回路14から一側分岐路54aを通じて作業モータ52a側に作動油が供給されない場合でも、余剰油路97を通じて供給する作動油の油圧で作業モータ52aを駆動可能となる。
【0162】
一方、操作者が走行モード切換装置26によりパーキング状態を選択している場合には、コントローラ28は、アンロード弁99を排出許容位置Pとする。これにより、余剰油路97に流れた作動油は、逃がし路98を通じて作動油タンクTに流れる。
【0163】
以上説明したように、この第7実施形態では、作業用油圧ポンプ88から作動油を第2作業装置の油圧シリンダ91aに供給して第2作業装置を駆動させることができる。このため、作業車両において、第1作業装置による作業に加えて、その作業とは別の第2作業装置による作業を実施することができる。
【0164】
さらに、この第7実施形態では、作業車両の走行時に一側切換弁22aが第1位置P1にされて閉回路14から一側分岐路54aを通じて作業モータ52aへ作動油が流れるのが阻止されている場合でも、前記余剰油を作業モータ52aに供給して作業モータ52aを駆動させることができる。従って、この第7実施形態では、作業車両の走行と第1作業装置及び第2作業装置の駆動とを同時に行うことができる。
【0165】
なお、図11に示す比較例のように、第1作業装置の作業モータ52aへの作動油供給用の油圧ポンプ88aと、第2作業装置の油圧シリンダ91aへの作動油供給用の油圧ポンプ88bとを個別に設けることも考えられる。しかし、この場合には、作業車両の構成が複雑になるという問題が生じる。また、作業車両の走行時に作業モータ52aへの作動油供給用の油圧ポンプ88aが空転することになるため、燃費の悪化が生じる。この第7実施形態では、1つの作業用油圧ポンプで作業車両の走行時に第2作業装置の油圧シリンダ91aと第1作業装置の作業モータ52aの両方に作動油を供給することができる。このため、作業車両の構成を簡略化することができる。また、上記のような作業モータへの作動油供給用の油圧ポンプ88aの空転を防ぐことができ、その結果、燃費の悪化を防ぐことができる。
【0166】
(第8実施形態)
次に、図12を参照して、本発明の第8実施形態による油圧式作業車両の構成について説明する。
【0167】
この第8実施形態の作業車両は、作業モータ52aからの戻り油をチャージ回路16のうちチャージポンプ36とフィルタ51との間に導入するようになっている。
【0168】
具体的には、この第8実施形態では、上記第7実施形態の構成において作業用戻り油路54eのうち第1流量調整弁56と反対側の端部が、チャージ油路38の吐出路38bのうちチャージポンプ36とフィルタ51との間の部分に接続されている。
【0169】
そして、背圧発生装置82によって作業用戻り油路54eを流れる戻り油に掛けられる背圧は、チャージ回路16による設定圧力よりも大きい背圧となっている。すなわち、背圧チェック弁82bの設定圧力がチャージ回路16において作動油に掛けられる圧力よりも大きくなっている。
【0170】
このような構成により、この第8実施形態では、作業モータ52aからの戻り油をチャージ回路16のフィルタ51で濾過してから閉回路14に戻すことができる。このため、作業モータ52aからの戻り油をきれいな状態で閉回路14へ戻すことができる。従って、この第8実施形態では、異物が混入した作動油が閉回路14から各機器に送られるのを防ぐことができ、その結果、各機器に破損が生じたり動作不良が生じたりするのを防ぐことができる。
【0171】
また、この第8実施形態では、チャージ回路16のフィルタ51を利用して作業モータ52aからの戻り油を濾過することができるため、作業モータ52aからの戻り油を濾過するためのフィルタをチャージ回路16のフィルタ51とは別に設ける場合に比べて構成を簡略化することができる。
【0172】
また、この第8実施形態では、背圧発生装置82によりチャージ回路16による設定圧力よりも大きい背圧を作業モータ52aからの戻り油に付与してその戻り油をチャージ回路16に導入することができる。このため、作業モータ52aからの戻り油を確実にチャージ回路16に導入することができ、さらにそのチャージ回路16から閉回路14へ確実に戻すことができる。その結果、作業モータ52aからの戻り油が不足することに起因して閉回路14内でキャビテーションが発生するのを防ぐことができる。
【0173】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0174】
例えば、油圧駆動部切換部22は、作業モータ52aに設けられた図略の作業用モータ容量調整部であってもよい。この作業用モータ容量調整部は、作業モータ52aの容量を調整可能に構成されている。
【0175】
そして、この場合には、操作者が走行モード切換装置26により走行状態を選択して走行モード切換装置26からコントローラ28に走行状態を指示する信号が入力された場合には、コントローラ28は、作業用モータ容量調整部に作業モータ52aの容量を0にさせる。これにより、作業モータ52aが駆動不能になる。また、一側分岐路54a又は他側分岐路54bから作業モータ52aに作動油がほぼ流れ込まなくなるので、油圧ポンプ10から閉回路14に吐出された作動油はほぼ全量走行モータ32に供給される。その結果、走行モータ32が駆動される。
【0176】
一方、操作者が走行モード切換装置26によりパーキング状態を選択して走行モード切換装置26からコントローラ28にパーキング状態を指示する信号が入力された場合には、コントローラ28は、作業モータ容量調整部に作業モータ52aの容量を0よりも大きい所定の容量とさせる。これにより、作業モータ52aが駆動可能になる。また、作業モータ52aに作動油が流れ込んで作業モータ52aが駆動される。
【0177】
このような構成では、作業モータ52aに作動油を供給するか否かを切り換えるための切換弁や、作業モータ52aにブレーキを掛けるためのブレーキ装置を設けて、作業モータ52aを駆動可能な状態と駆動不能な状態とに切り換える構成に比べて、作業車両の構成を簡略化することができる。
【0178】
また、車輪駆動装置切換部20は、走行モータ32に設けられた図略の走行用モータ容量調整部であってもよい。この走行用モータ容量調整部は、走行モータ32の容量を調整可能に構成されている。
【0179】
そして、この場合には、操作者が走行モード切換装置26によりパーキング状態を選択して走行モード切換装置26からコントローラ28にパーキング状態を指示する信号が入力された場合には、コントローラ28は、走行用モータ容量調整部に走行モータ32の容量を0にさせる。これにより、走行モータ32が駆動不能になる。また、閉回路14から走行モータ32に作動油がほぼ流れ込まなくなるので、油圧ポンプ10から閉回路14に吐出された作動油はほぼ全量作業モータ52aに供給される。その結果、作業モータ52aが駆動される。
【0180】
一方、操作者が走行モード切換装置26により走行状態を選択して走行モード切換装置26からコントローラ28に走行状態を指示する信号が入力された場合には、コントローラ28は、走行用モータ容量調整部に走行モータ32の容量を0よりも大きい所定の容量にさせる。これにより、走行モータ32が駆動可能となり、閉回路から走行モータ32に作動油が流れ込んで走行モータ32が駆動される。
【符号の説明】
【0181】
2 エンジン
6 車輪(第1車輪)
6a 第1車輪
6b 第2車輪
10 油圧ポンプ(第1油圧ポンプ)
12 車輪駆動装置(第1車輪駆動装置)
14 閉回路
16 チャージ回路
18 作業装置駆動回路
20 車輪駆動装置切換部
20a 走行用ブレーキ装置
22 油圧駆動部切換部
22a、22b 切換弁
22d 作業用ブレーキ装置
24 操作装置
28 コントローラ(制御手段)
32 走行用油圧モータ(第1走行用油圧モータ)
36 チャージポンプ
38 チャージ油路
51 フィルタ
52 油圧駆動部
52a 作業用油圧モータ
54a 一側分岐路(作業用供給路)
54b 他側分岐路(作業用供給路)
54e 作業用戻り油路
56 流量調整弁
60 第1油圧ポンプ
62 第1車輪駆動装置
62a 第1走行モータ(第1走行用油圧モータ)
74 第2車輪駆動装置
74a 第2油圧ポンプ
80a 第1走行用ブレーキ装置(走行用ブレーキ装置)
82 背圧発生装置
88 作業用油圧ポンプ
89 作動油回路
97 余剰油路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、第1車輪と、所定の作業を実施可能な第1作業装置と、前記エンジンによって駆動されて作動油を吐出する第1油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプから供給される作動油の油圧によって駆動して前記第1車輪を回転させる第1車輪駆動装置と、前記第1油圧ポンプと前記第1車輪駆動装置とを繋ぎ、当該第1油圧ポンプと当該第1車輪駆動装置との間で作動油を循環させるための閉回路とを備えた油圧式作業車両であって、
前記第1作業装置を駆動させるための油圧駆動部を有し、前記閉回路から作動油が流入可能なようにその閉回路から分岐する作業装置駆動回路と、
前記第1車輪駆動装置に設けられ、前記第1車輪駆動装置を駆動可能な状態と駆動不能な状態とに切り換え可能な車輪駆動装置切換部と、
前記作業装置駆動回路に設けられ、前記油圧駆動部を駆動可能な状態と駆動不能な状態とに切り換え可能な油圧駆動部切換部と、
前記油圧式作業車両の走行時には、前記車輪駆動装置切換部に前記第1車輪駆動装置を駆動可能な状態にさせるとともに前記油圧駆動部切換部に前記油圧駆動部を駆動不能な状態にさせる一方、前記第1作業装置の駆動時には、前記車輪駆動装置切換部に前記第1車輪駆動装置を駆動不能な状態にさせるとともに前記油圧駆動部切換部に前記油圧駆動部を駆動可能な状態にさせる制御手段とを備えた、油圧式作業車両。
【請求項2】
前記作業装置駆動回路は、前記閉回路から分岐し、前記油圧駆動部へ作動油を供給可能な作業用供給路を含み、
前記油圧駆動部切換部は、前記作業用供給路に設けられ、前記閉回路から前記作業用供給路を通じて前記油圧駆動部へ作動油が流れるのを阻止する第1位置と、前記閉回路から前記作業用供給路を通じて前記油圧駆動部へ作動油が流れるのを許容する第2位置とに切り換え可能な切換弁であり、
前記制御手段は、前記油圧式作業車両の走行時には前記切換弁を前記第1位置とする一方、前記第1作業装置の駆動時には前記切換弁を前記第2位置とする、請求項1に記載の油圧式作業車両。
【請求項3】
操作者が前記第1作業装置の動作を指示するために操作する操作装置と、
前記作業用供給路に設けられ、作動油の流量を調整可能な流量調整弁とを備え、
前記制御手段は、操作者による前記操作装置の操作量に応じて前記流量調整弁による作動油の流通許容量を制御することにより前記油圧駆動部に供給する作動油の流量を制御する、請求項2に記載の油圧式作業車両。
【請求項4】
操作者が前記第1作業装置の動作を指示するために操作する操作装置を備え、
前記切換弁は、当該切換弁を通って流れる作動油の流量を調整可能に構成され、
前記制御手段は、操作者による前記操作装置の操作量に応じて前記切換弁による作動油の流通許容量を制御することにより前記油圧駆動部に供給する作動油の流量を制御する、請求項2に記載の油圧式作業車両。
【請求項5】
油圧によって駆動し、所定の作業を実施可能な第2作業装置と、
前記エンジンによって駆動されて作動油を吐出する作業用油圧ポンプと、
前記作業用油圧ポンプから吐出された作動油を前記第2作業装置に供給可能な作動油回路とを備え、
前記作動油回路は、前記作業用油圧ポンプから吐出された作動油のうち前記第2作業装置へ供給する分の余剰となる作動油を流すための余剰油路を含み、
前記余剰油路は、前記作業用供給路のうち作動油の流通方向において前記切換弁の下流側の位置に接続されている、請求項2に記載の油圧式作業車両。
【請求項6】
前記油圧駆動部は、前記第1作業装置を駆動させるための作業用油圧モータであり、
前記油圧駆動部切換部は、前記作業用油圧モータに付設され、前記作業用油圧モータにブレーキを掛けることが可能な作業用ブレーキ装置であり、
前記制御手段は、前記油圧式作業車両の走行時には、前記作業用ブレーキ装置に前記作業用油圧モータに対してブレーキを掛けさせる一方、前記第1作業装置の駆動時には前記作業用ブレーキ装置に前記作業用油圧モータに対するブレーキを解除させる、請求項1に記載の油圧式作業車両。
【請求項7】
前記油圧駆動部は、前記第1作業装置を駆動させるための可変容量型の作業用油圧モータであり、
前記油圧駆動部切換部は、前記作業用油圧モータに設けられ、前記作業用油圧モータの容量を調整可能な作業用モータ容量調整部であり、
前記制御手段は、前記油圧式作業車両の走行時には前記作業用モータ容量調整部に前記作業用油圧モータの容量を0にさせる一方、前記第1作業装置の駆動時には前記作業用モータ容量調整部に前記作業用油圧モータの容量を0よりも大きい特定の容量にさせる、請求項1に記載の油圧式作業車両。
【請求項8】
前記第1車輪駆動装置は、前記閉回路に接続され、その閉回路を通じて作動油が供給されることによって前記第1車輪を回転させるための駆動力を発する第1走行用油圧モータを含み、
前記車輪駆動装置切換部は、前記第1走行用油圧モータにブレーキを掛けることが可能な走行用ブレーキ装置であり、
前記制御手段は、前記第1作業装置の駆動時には前記走行用ブレーキ装置に前記第1走行用油圧モータに対してブレーキを掛けさせる一方、前記油圧式作業車両の走行時には前記走行用ブレーキ装置に前記第1走行用油圧モータに対するブレーキを解除させる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の油圧式作業車両。
【請求項9】
前記第1車輪駆動装置は、前記閉回路に接続され、その閉回路を通じて作動油が供給されることによって前記第1車輪を回転させるための駆動力を発する可変容量型の第1走行用油圧モータを含み、
前記車輪駆動装置切換部は、前記第1走行用油圧モータに設けられ、前記第1走行用油圧モータの容量を調整可能な走行用モータ容量調整部であり、
前記制御手段は、前記第1作業装置の駆動時には前記走行用モータ容量調整部に前記第1走行用油圧モータの容量を0にさせる一方、前記油圧式作業車両の走行時には前記走行用モータ容量調整部に前記第1走行用油圧モータの容量を0よりも大きい特定の容量にさせる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の油圧式作業車両。
【請求項10】
操作者が前記第1作業装置の動作を指示するために操作する操作装置を備え、
前記第1油圧ポンプは、可変容量型であり、
前記制御手段は、前記油圧式作業車両の走行時には、前記第1油圧ポンプの駆動に要する動力が前記エンジンの出力を超えないように前記第1油圧ポンプの容量を制御する第1容量制御を行う一方、前記第1作業装置の駆動時には、前記第1容量制御と、操作者による前記操作装置の操作量の増減に応じて前記第1油圧ポンプの容量を増減させる第2容量制御とのうち、前記第1油圧ポンプの吐出圧が低くなる方を選択して行う、請求項1〜9のいずれか1項に記載の油圧式作業車両。
【請求項11】
第2車輪と、
前記エンジンによって駆動されて作動油を吐出する第2油圧ポンプと、
前記第2油圧ポンプから供給される作動油の油圧によって駆動して前記第2車輪を回転させる第2車輪駆動装置とを備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載の油圧式作業車両。
【請求項12】
前記閉回路に作動油を所定の設定圧力で導入可能なチャージ回路を備え、
前記作業装置駆動回路は、前記油圧駆動部からの戻り油を前記チャージ回路に導入可能な作業用戻り油路と、その作業用戻り油路に設けられ、当該作業用戻り油路を流通する戻り油に前記所定の設定圧力よりも大きい背圧を発生させる背圧発生装置とを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の油圧式作業車両。
【請求項13】
前記チャージ回路は、前記エンジンによって駆動されて作動油を吐出するチャージポンプと、そのチャージポンプの吐出口と前記閉回路とを繋ぐチャージ油路と、そのチャージ油路に設けられ、当該チャージ油路を流通する作動油を濾過するためのフィルタとを含み、
前記作業用戻り油路は、前記チャージ油路のうち前記チャージポンプと前記フィルタとの間の部分に接続されている、請求項12に記載の油圧式作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−286036(P2010−286036A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139472(P2009−139472)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】