説明

油圧式変速機

【課題】油圧式変速機の制御を平易かつ低コストにする。
【解決手段】油圧式変速機は、第一油圧式モータ1と第二油圧式モータ4とを有し、総和ギヤを介して出力軸3と結合しており、出力軸の最小回転数及び最大回転数を算出するため、電気的な弁9、17を介して、一方では行程容積を調節可能であり、他方では油圧式ポンプの供給管7と吸引管8とに結合乃至分離可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の上位概念部分に詳しく規定された油圧式(液圧式)変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明による変速機は、少なくとも二つの油圧式モータからなり、当該少なくとも二つの油圧式モータは、総和ギヤ(Summierungsgetriebe)を介して同時に切り換えられ、出力軸を駆動する。
【発明の開示】
【0003】
DE3907633C2は、第一及び第二油圧式モータを有する、無断調整可能な流体静力学的な(ハイドロスタティックな)走行駆動部を開示している。その二つの油圧式モータは、総和ギヤ(Summierungsgetriebe)を介して同時に切り換えられ、出力軸を駆動する。当該出力軸は、自動車(Mobil−Fahrzeugs)の駆動輪に結合している。様々な速度範囲での走行を可能にするために、油圧式モータの行程容積(排気量)は変更可能に設計され、油圧式モータは磁力線(Kraftfluss)によって出力軸と完全に分断されうる。
【0004】
EP0483534B1は、二つの油圧式モータを有する流体静力学的駆動を開示しており、その二つの油圧式モータは総和ギヤ(Summierungsgetriebe)によって同時に切り換えられ、複数の切換可能なギヤ比によって出力軸を駆動する。様々な速度範囲での走行を可能にするために、それらのモータの行程容積は調節可能に設計されており、それら油圧式モータは様々なギヤ段とかみ合わされ得る。
【0005】
本発明は、少なくとも2つの油圧式モータからなり、当該油圧式モータは総和ギヤ(Summierungsgetriebe)によって同時に切り換えられると共に出力軸を駆動し、少なくとも一つの油圧式モータが行程容積を調節可能であり、油圧式変速機の制御が平易かつ低コストに実施される、といった油圧式変速機を創造することを課題とする。
【0006】
本課題は、特許請求の範囲の請求項1に記載された特徴を有する油圧式変速機によって解決される
本発明によれば、油圧式モータは、電気的に制御可能な弁によって圧力媒体源から油圧式に分離され、これにより、当該油圧式モータの圧力媒体供給部及び圧力媒体帰還部は、圧力媒体タンクと結合する。行程容積がゼロ近くで油圧式モータが作動されている時にのみ、当該弁は切り換えられるので、電気的に切換可能な弁を利用することが可能である。なぜなら、このような作動状態では、大きな圧力媒体流が当該弁によって導通もしくは遮断されなくてもよいからである。遮断装置は、わずかな切換力しか必要とせず、そのために、電気的に制御可能な弁を介して直接的に制御されうる。好適には、電気的に制御可能な弁は、少なくとも一つの切換ソレノイドを介して制御可能である。
【0007】
本発明の更なる実施の形態では、電気的に制御可能な弁は、電流供給された状態で、バネを介して、油圧式モータが圧力媒体源と結合される、というように切り換えられる。電気的に制御可能な弁に電流供給を無くす切換によって、油圧式モータは油圧ポンプから分断されうる。
【0008】
本発明の更なる実施の形態では、油圧式モータの行程容積調節装置が電気的に制御可能な弁からなり、シリンダーピストンユニットを制御して、油圧式モータの行程容積を調節することによって、油圧式モータの行程容積の油圧式の調節もまた簡単化される。弁の前後の高圧は、弁ピストンには反作用を与えないので、わずかな作動力で充分である。直接的にスロットルスライド(Ventilschieber)に作用する、電気的に制御可能な弁の利用によって、制御が簡単化され、調節の精度が高められる。例えばパイロット弁(Vorsteuerventile)のような、許容範囲のある(toleranzbehafteten)要素は、油圧式弁の利用では必要とならない。
【0009】
本発明のある実施の形態では、油圧式モータはラジアルピストンモータからなり、より好適には、調節シリンダーが行程容積の調節のためにクランク軸に配置される。そのことにより、調節シリンダーは小さく、調節流量も小さい。油圧式モータによって生成された高圧は、調節弁に反作用を与えず、そのために、制御力は小さい。これにより、当該弁のパイロット制御(Vorsteuerung)を放棄して、当該弁を電気的に制御可能に実装することが、可能である。本発明の更なる実施の形態では、電気的に制御可能な弁の弁ピストンは、モータの行程容積調節(Hubvolumen−Ver−stellung)のために直接的に比例ソレノイド(Proportionalmagnete)によって制御される。
【0010】
さらなる特徴は、図面及び詳細な説明から理解される。
【0011】
図1は、切換不可能な総和ギヤ(Summierungsgetriebe)を有する油圧式変速機である。
【0012】
図2は、切換可能な総和ギヤ(Summierungsgetriebe)を有する油圧式変速機である。
【0013】
図1:
第一油圧式モータ1は、その行程容積を調整可能に構成されており、第一ギヤ段2を介して出力軸3を駆動する。第二油圧式モータ4は、その行程容積を調整可能に構成されており、第二ギヤ段5を介して出力軸3を駆動する。調整可能な油圧式ポンプ6は、それぞれ回転方向に応じて、供給管7と吸引管8とを有している。電気的に制御可能な弁9は、電流供給状態において、切換ソレノイド10によって、供給管7を圧力媒体供給部11に結合し、吸引管8を圧力媒体帰還部12に結合する。切換ソレノイド10が電流供給されなければ、バネ13が、弁を他方の切換位置へと移動させる。当該切換位置では、圧力媒体供給部11と圧力媒体帰還部12とが、圧力媒体タンク(貯蔵部)14と結合される。この場合、好適には、最小圧力を維持するために、圧力媒体タンク14と圧力媒体供給部11及び圧力媒体帰還部12との間に、スロットル(絞り)15が配置される。好適には、電気的に制御可能な弁9は、油圧式モータ1がすべり容積(Schlupfvolume)を有する時にのみ、操作される。すべり容積は、ほぼゼロである。これにより、圧力媒体流が弁9を通ってはほとんど流れない、ということが保証される。これにより、弁9が操作される場合、圧力媒体流は大して解放されないか、あるいは、遮断されない。弁9の操作は、従って、電気的に可能である。
【0014】
第一油圧式モータ1と第二油圧式モータ4とは、行程容積−調整装置16及び17がそれらモータの行程容積を調整することによって、それらの行程容積を調整可能に構成されている。行程容積−調整装置16及び17は、原理的に同様に構成されている。従って、一方の行程容積−調整装置のみが説明される。電気的に調整可能な弁18は、好適には比例弁19を有しており、それによって、比例弁19における適用流に対応して、調整シリンダ20が調整され得る。ラジアル油圧式モータが利用される場合、調整シリンダ20をクランク軸に配置することが可能である。これにより、その直径が小さく維持され得て、油圧式モータの高圧からの戻り力が、電気的に制御可能な弁17に全く作用できない。従って、電気的に制御される弁17が電気的に制御可能に実装されることが可能である。弁21を介して、電気的に制御可能な弁17は、常に、調整シリンダ20を制御するために、油圧式ポンプ6の高圧を維持する。電気的に制御可能な弁17及び9の利用によって、パイロット弁からの許容範囲が否定的に作用することなく、油圧式の制御が簡単かつ低コストに構成され得て、油圧式の制御の正確性が高められる。
【0015】
油圧式変速機は、低い回転数と高い回転トルクとによって駆動され、電気的に制御可能な弁9は、電流供給状態にあって、これにより、供給管7は圧力媒体供給部11に結合され、吸引管8は圧力媒体帰還部12に結合される。第一油圧式モータ1と第二油圧式モータ4との転換(Ausschwenken)によって、高いトルクと小さい回転数とが達成される。第一油圧式モータ1の最大許容回転数の到達の際、圧力適用により(Druckbeaufschlagung)、第一油圧式モータ1は、すべり容積のほとんどゼロに調整される。続いて、電気的に制御される弁9は、電流無しに切換される。これにより、弁のバネ13が切り換えられ、第一油圧式モータ1は、大変に小さい圧力のみが適用される。この小さい圧力の際、第一油圧式モータ1は、高い回転数でも制御され得る。油圧式変速機ないしその出力軸3は、従って、第一油圧式モータ1の許容回転数の上方で圧力適用により制御され得る。
【0016】
図2:
図1の構成部材と同じ参照符号を有する構成部材は、同じ機能を奏する。従って、図1の説明が参照される。第一油圧式モータ1は、第一のギヤ段2及び第三のギヤ段22によって、出力軸3と結合可能に実装されている。機械的な切換装置23、例えば同期装置は、シリンダ24を介して制御される。これにより、第一油圧式モータ1は、第一のギヤ段2あるいは第三のギヤ段22を介して出力軸3と結合可能である。シリンダ24は、電気的に制御可能な弁25を介して制御される。発進段階において最大トルクを達成するために、行程容積−調整装置16及び17は、第一モータ及び第二モータがそれらの最大行程容積である、というように調整される。切換装置23は、当該切換装置23が第一油圧式モータ1を第一ギヤ段2を介して出力軸3に結合する、というように切り換えられる。出力軸3の最大回転数に到達するために、第二モータ4が電気的な制御弁26を介して油圧式ポンプ6乃至その供給管7及び吸引管8から分離され、第一油圧式モータ1が電気的な制御弁9を介してポンプの供給管7及び吸引管8と結合し、電気的な弁18によって小さい行程容積に調整される。従って、第二油圧式モータ4は、圧力適用の際、その許容回転数の上方で作動され、それにより、出力軸3がその最大回転数に到達する。第一油圧式モータ1が第一のギヤ段2あるいは第三のギヤ段22を介して出力軸3に結合されることにより、そして、第一油圧式モータ1が電気的な制御弁9を介して第二油圧式モータ4が電気的な制御弁26を介して結合乃至遮断されることによって、最大回転数と発進回転数との間の出力軸3の回転数が達成される。電気的な弁9及び26の制御は、油圧式モータ1または4がほぼゼロの行程容積の際に、実施される。これにより、電気的な弁9あるいは26の切換時、ゼロ乃至ほんの小さな圧力媒体流のみが存在する、ということが保証される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】切換不可能な総和ギヤ(Summierungsgetriebe)を有する油圧式変速機である。
【図2】切換可能な総和ギヤ(Summierungsgetriebe)を有する油圧式変速機である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
行程容積を調節可能な第一油圧式モータ(1)と、行程容積を調節可能な第二油圧式モータ(4)とが、出力軸(3)と作用接続可能であり、
第一油圧式モータ(1)は、圧力媒体供給部(11)と、圧力媒体帰還部(12)と、を有しており、油圧式ポンプ(6)の供給管(7)及び吸引管(8)に結合可能であり、
電気的に制御される弁(9)が、第一切換位置で、供給管(7)を圧力媒体供給部(11)と結合し、吸引管(8)を圧力媒体帰還部(12)と結合し、第二切換位置で、圧力媒体供給部(11)及び圧力媒体帰還部(12)を圧力媒体タンク(14)と結合する
ことを特徴とする油圧式変速機。
【請求項2】
第一油圧式モータ(1)がほとんど無い行程容積に調節される時に、第一切換位置から第二切換位置に、及び、第二切換位置から第一切換位置に、切換が行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の油圧式変速機。
【請求項3】
第一油圧式モータ(1)と第二油圧式モータ(4)とは、常に出力軸(3)と結合している
ことを特徴とする請求項1に記載の油圧式変速機。
【請求項4】
電気的に制御可能な弁(9)は、少なくとも一つの切換ソレノイド(Schaltmagnet)(10)を介して制御可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の油圧式変速機。
【請求項5】
電気的に制御可能な弁(9)は、電流のない状況では、戻りバネを介して、第二切換位置に切り換えられる
ことを特徴とする請求項1に記載の油圧式変速機。
【請求項6】
行程容積を調節可能な第一油圧式モータ(1)と、行程容積を調節可能な第二油圧式モータ(4)とが、出力軸(3)と作用接続可能であり、
第一油圧式モータ(1)は、圧力媒体供給部(11)と、圧力媒体帰還部(12)と、を有しており、油圧式ポンプ(6)の供給管(7)及び吸引管(8)に結合可能であり、
油圧式モータの行程容積調節装置(16、17)は、電気的に制御可能な弁(18)から構成されており、
当該弁(18)は、シリンダーピストンユニット(20)を制御し、
当該シリンダーピストンユニット(20)は、油圧式モータ(1、4)の行程容積を調節する
ことを特徴とする油圧式変速機。
【請求項7】
油圧式モータは、ラジアルピストンモータであり、当該ラジアルピストンモータの調節装置(17)が、クランク軸に配置されている
ことを特徴とする請求項6に記載の油圧式変速機。
【請求項8】
電気的に制御可能な弁(17)は、比例弁(Proportionalventil)であり、比例ソレノイド(Proporationalmagnete)(19)を有している
ことを特徴とする請求項6に記載の油圧式変速機。
【請求項9】
各油圧式モータ(1、4)は、電気的に制御可能な行程容積調節弁(17)を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の油圧式変速機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−144930(P2011−144930A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36249(P2011−36249)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【分割の表示】特願2007−531614(P2007−531614)の分割
【原出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(500045121)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (312)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
【Fターム(参考)】