説明

油圧配管

【課題】油圧ホースに代えて、前記位置関係及び距離の変化を吸収できる構成要素により油圧配管を検討した。
【解決手段】屈曲リンクの油圧配管1で、移動側リンク軸11は、油圧シリンダ21の供給ポート又は排出ポートが接続され、移動側リンク節14の内蔵する架橋管路141,142の一端が接続される周管路111,112,114,115を設け、中間リンク軸12は、移動側リンク節14の内蔵する架橋管路141,142の他端が接続され、固定側リンク節15の内蔵する架橋管路151,152の一端が接続される周管路121,122,124,125を設け、そして固定側リンク軸13は、固定側リンク節15の内蔵する架橋管路151,152の他端が接続され、アーム又はアタッチメント本体の固定配管の供給端又は排出端が接続される周管路131,132,134,135を設け、前記周管路及び架橋管路を互いに連通させて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲リンク内に管路を形成した油圧配管に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械に用いられるアタッチメントは、ブームに対して屈曲するアームの先端に屈曲又は回動自在に装着され、動力源である油圧シリンダによりアタッチメント本体に対して屈曲したり、可動顎又は破砕爪を開閉したり、また動力源である油圧モータにより前記アタッチメント本体に対して回動する。油圧シリンダや油圧モータは、それぞれの供給ポート及び排出ポートと、アーム又はアタッチメント本体の固定配管(油圧ホース又は金属製配管)の供給端及び排出端とを油圧ホースで結んで、油が給排される。
【0003】
可撓性を有する油圧ホースは、アタッチメントの動きに応じて曲がったり、撓んだりして、油圧シリンダや油圧モータの供給ポート及び排出ポートとアーム又はアタッチメント本体の固定配管の供給端及び排出端との位置関係及び距離の変化を吸収する。この油圧ホースの曲がりや撓みは、油圧ホースの経時的劣化を早める問題がある。また、油圧ホースの曲がりや撓みを許容する空間を必要とするため、油圧ホースをアタッチメント内に収納すれば不要にアタッチメントの大型化を招き、油圧ホースを外部に露出させると破損する虞を増大させる問題がもたらされる。
【0004】
特許文献1は、特に油圧ホースの保護を目的として、リンク機構を介してアタッチメントとアームとを接続し、アームの長手方向に沿って延び先端側がアタッチメントシリンダに接続された油圧管路と、前記リンク機構を構成する第3の連結ピンに回転可能に設けられ油圧管路の途中部位を固定する油圧管路固定部材とを備えた配管構成を提案している(特許文献1・請求項1ほか)。これにより、アタッチメントが回動しても、油圧管路固定部材が第3の連結ピンに対して回転し、油圧管路固定部材に固定された油圧管路の途中部位とアタッチメントシリンダに接続された油圧管路の先端部位との間の距離を一定に保つことで、油圧ホースがアタッチメント等に擦れることを防ぐ(特許文献1・[0019])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-163495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が開示する配管構成は、油圧ホースの曲がりや撓みを油圧管路固定部材により規制することにより、前記曲がりや撓みに起因する油圧ホースとアタッチメント等との擦れ合いをなくし、前記油圧ホースが破損する虞を低減している。しかし、曲がりや撓みに起因する油圧ホースの経時的劣化は解消されていないし、油圧ホースの曲がりや撓みを許容する空間を必要とする問題も解決されておらず、何より油圧ホースを外部に露出させることによる破損の虞は解消されていない。とりわけ、アタッチメントが破砕機の場合、破砕対象が先鋭化して油圧ホースを傷つける虞が高いため、油圧ホースの露出は避けることが望ましい。
【0007】
油圧ホースは、既述したように、アタッチメントの動きに応じて、油圧シリンダや油圧モータの供給ポート及び排出ポートとアーム又はアタッチメント本体の固定配管の供給端及び排出端との位置関係及び距離の変化を容易に吸収できることから、多用されている。裏返せば、前記位置関係及び距離の変化を吸収できる構成要素であれば、油圧ホースに代えて油圧配管を構成することもでき、前記構成要素が油圧ホースに関わる問題を有さなければ、油圧ホースにより構成される油圧配管より好ましいと考えられる。そこで、油圧ホースに代えて、前記位置関係及び距離の変化を吸収できる構成要素により油圧配管を構成するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果開発したものが、動力源である油圧シリンダや油圧モータの供給ポート又は排出ポートとアーム又はアタッチメント本体の固定配管の供給端又は排出端とを接続する油圧配管であって、移動側リンク軸と中間リンク軸とを移動側リンク節で連結し、前記中間リンク軸と固定側リンク軸とを固定側リンク節で連結して屈曲リンクを構成し、移動側リンク軸は、動力源である油圧シリンダや油圧モータの供給ポート又は排出ポートが接続され、移動側リンク節の内蔵する架橋管路の一端が接続される周管路を設け、中間リンク軸は、移動側リンク節の内蔵する架橋管路の他端が接続され、固定側リンク節の内蔵する架橋管路の一端が接続される周管路を設け、そして固定側リンク軸は、固定側リンク節の内蔵する架橋管路の他端が接続され、アーム又はアタッチメント本体の固定配管の供給端又は排出端が接続される周管路を設け、前記周管路及び架橋管路を互いに連通させて形成される油圧配管である。
【0009】
「移動側」とは、アタッチメントの動きに応じた油圧シリンダや油圧モータの位置変化に合わせて移動する側を意味し、例えば油圧シリンダの供給ポート及び排出ポートや前記各ポートに延びる供給管路及び排出管路に接続される側である。また、「固定側」とは、アタッチメントが動いても位置変化しない固定配管の側を意味し、例えばアーム端にまで延びる固定配管の供給端及び排出端や前記供給端及び排出端に延びる供給管路及び排出管路に接続される側である。供給端及び排出端に延びる供給管路及び排出管路は、アーム端でなく、アタッチメント本体、具体的にはアタッチメント本体の旋回部に設けたロータリジョイントの接続ブロックから延びる場合もある。
【0010】
動力源である油圧シリンダや油圧モータの供給ポートは、アーム又はアタッチメント本体の固定配管の供給端と接続され、動力源である油圧シリンダや油圧モータの排出ポートは、アーム又はアタッチメント本体の固定配管の排出端と接続されるので、油圧配管は最低2本必要である。これから、本発明は、動力源である油圧シリンダや油圧モータの供給ポートとアーム又はアタッチメント本体の固定配管の供給端とを接続する油圧配管を形成する屈曲リンクと、動力源である油圧シリンダや油圧モータの排出ポートとアーム又はアタッチメント本体の固定配管の排出端とを接続する油圧配管を形成する屈曲リンクとを別々にしてもよいし、前記両油圧配管を内蔵した一体の屈曲リンクとしてもよい。両油圧配管を内蔵した一体の屈曲リンクの場合、周管路はリンク軸にそれぞれ2本ずつ設けられるが、架橋管路はリンク節に2本ずつ設けるほか、架橋管路毎に2本のリンク節を用いてもよい。
【0011】
本発明は、屈曲自在な屈曲リンクを構成するリンク軸及びリンク節に内蔵させた周管路及び架橋管路を連通させて油圧配管を構成する。このため、動力源である油圧シリンダや油圧モータの供給ポート又は排出ポートに接続される周管路を設けた移動側リンク軸と、アーム又はアタッチメント本体の固定配管の供給端又は排出端に接続される周管路を設けた固定側リンク軸との位置関係及び距離を、中間リンク軸を挟んだ移動側リンク節と固定側リンク節との屈曲により変化させ、アタッチメントの動きに伴う前記位置関係及び距離の変化を吸収できる。また、通常、リンク軸及びリンク節それぞれの内部に設けられる周管路、架橋管路及び連絡溝は、経時的劣化する虞がなく、アタッチメントや破砕対象が当たって破損する虞がない。
【0012】
周管路は、リンク軸を構成する軸部材の外周面に凹溝として形成できる。また、周管路は、リンク軸に対してリンク節が特定角度の範囲で回動するだけなので、前記軸部材の外周面全周にわたる円周管路でなく、リンク軸に連結されるリンク節が回動する特定角度の範囲だけ周方向に延びる部分管路としてもよい。架橋管路は、リンク節を構成する棒部材の延在方向に延びる貫通孔として形成でき、凹溝として形成される周管路に対して前記貫通孔の一端又は他端を連通させる。リンク節は、リンク節を構成する棒部材の両端に、それぞれリンク軸を貫通させる外嵌部を設けていることから、リンク軸の外周面に慴接する前記外嵌部の内周面に凹溝を形成し、リンク軸の外周面に設けた凹溝に代えて、又はリンク軸の外周面に設けた凹溝と共に、周管路を構成することもできる。
【0013】
ここで、例えば中間リンク軸には移動側リンク節と固定側リンク節とが連結されるため、それぞれの架橋管路を同じ周管路に連通させることが難しい。これから、移動側リンク軸は、動力源である油圧シリンダや油圧モータの供給ポート又は排出ポートが接続される移動側周管路と、移動側リンク節の内蔵する架橋管路の一端が接続される固定側周管路とを設けて、前記周管路を連絡管路で接続し、中間リンク軸は、移動側リンク節の内蔵する架橋管路の他端が接続される移動側周管路と、固定側リンク節の内蔵する架橋管路の一端が接続される固定側周管路とを設けて、前記周管路を連絡管路で接続し、そして固定側リンク軸は、固定側リンク節の内蔵する架橋管路の他端が接続される移動側周管路と、アーム又はアタッチメント本体の固定配管の供給端又は排出端が接続される固定側周管路とを設けて、前記周管路を連絡管路で接続するとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の油圧配管は、アタッチメントの動きに応じて、油圧シリンダや油圧モータの供給ポート及び排出ポートとアーム又はアタッチメント本体の固定配管の供給端及び排出端との位置関係及び距離の変化を吸収できる屈曲リンクにより構成されるので、現行の油圧ホースに代えて利用できる。このため、油圧ホースを用いることによる経時的劣化や破損といった問題が解消されるほか、油圧ホースの曲がりや撓みを許容する空間を必要としない効果を得ることができる。経時的劣化や破損といった問題の解消は、油圧配管の長寿命化という副次的効果を、また曲がりや撓みを許容する空間を必要としない効果は、アタッチメントの小型化という副次的効果をそれぞれもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に基づく油圧配管の一例をリンク軸の延在方向に切断した断面図である。
【図2】本例の油圧配管をリンク軸の図1中A−A断面図である。
【図3】本例の油圧配管を用いた破砕機の油圧シリンダがロッドを縮短させた状態を表す側面図である。
【図4】本例の油圧配管を用いた破砕機の油圧シリンダがロッドを伸長させた状態を表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の油圧配管1は、図3及び図4に見られるように、外観上、油圧シリンダ21と破砕機2(アタッチメント)の接続ブロック22とを結ぶ屈曲リンクであり、構成要素であるリンク軸11,12,13及びリンク節14,15がすべて金属製である。前記リンク軸11,12,13及びリンク節14,15は、図1及び図2に見られるように、それぞれの内部に設けられた周管路111,112,114,115,121,122,124,125,131,132,134,135及び架橋管路141,142,151,152を相互に連結し、屈曲リンクの屈曲具合に関係なく、常に連通した供給用管路及び排出用管路を構成する。
【0017】
本例の油圧配管1は、移動側リンク節14が1本であるが、固定側リンク節15が左右(説明における左右は図1に基づく。以下、同じ)1本ずつ計2本用いている。このため、移動側リンク節14は、内部に供給用架橋管路141及び排出用架橋管路142を設けているが、固定側リンク節15は左側に供給用架橋管路151のみ、右側に排出用架橋管路152のみを分けて設けている。図示は省略するが、移動側リンク節14を左右1本ずつ計2本とし、固定側リンク節15を1本のみとしてもよいし、移動側リンク節14及び固定側リンク節15をいずれも2本ずつとしてもよい。また、移動側リンク節14及び固定側リンク節15を複数にする場合、3本以上とし、管路を設けない補強用のリンク節を設けてもよい。
【0018】
移動側リンク軸11は、左側に供給用管路を、右側に排出用管路を構成する。図1中、上側が固定側、下側が移動側になる(以下、同じ)。供給用管路は、移動側リンク軸11を軸着する油圧シリンダ21の軸受け孔の内周面左側に設けた周溝と移動側リンク軸11の外周面左側に設けた周溝とから形成される移動側供給用周管路111と、移動側リンク軸11の外周面中央左寄り(左右中央から少し左に寄った付近を意味する。以下、同じ)に設けた周溝と移動側リンク軸11を軸着する移動側リンク節14の移動側外嵌部143の内周面中央左寄りに設けた周溝とから形成される固定側供給用周管路112とを、供給用連結管路113で結んで構成される。油圧シリンダ21の軸受け孔は、チューブに外嵌する環状部材から突出する軸受けブロックに貫通して形成される。
【0019】
移動側供給用周管路111は、油圧シリンダ21の供給ポートに延びる供給管路211が開口し、固定側供給用周管路112は、移動側リンク節14の供給用架橋管路141が開口している。既述した通り、移動側供給用周管路111と固定側供給用周管路112とは供給用連結管路113により結ばれているので、油圧シリンダ21の供給ポートに延びる供給管路211と移動側リンク節14の供給用架橋管路141とは、移動側供給用周管路111、供給用連結管路113及び固定側供給用周管路112を介して連通する。
【0020】
移動側供給用周管路111は、油圧シリンダ21の軸受け孔の内周面に埋め込まれ、移動側リンク軸11の外周面に摺接するシールリング213,213に挟まれ、左右方向に対してシールされている。シールリング213,213の一方又は双方を移動側リンク軸11の外周面に埋め込み、油圧シリンダ21の軸受け孔の内周面に摺接させてもよい。同様に、固定側供給用周管路112は、移動側リンク節14の移動側外嵌部143の内周面に埋め込まれ、移動側リンク軸11の外周面に摺接するシールリング145,145に挟まれ、左右方向に対してシールされている。シールリング145,145の一方又は双方を移動側リンク軸11の外周面に埋め込み、油圧シリンダ21の軸受け孔の内周面に摺接させてもよい。
【0021】
供給用連結管路113は、移動側リンク軸11の中心軸線に沿って左端面から掘り込まれた左側中心軸管路と、移動側リンク軸11の外周面左側に設けた周溝から前記軸線管路に向けて貫通させた半径方向管路と、移動側リンク軸11の外周面中央左寄りに設けた周溝から前記軸線管路に向けて貫通させた半径方向管路とからなるクランク状管路である。左側中心軸管路は、円柱状の封止栓117を嵌合して、左端開口を塞いでいる。本例は、封止栓117を隠すように、移動側リンク軸11の左端面に抜け止め用のフランジ板をボルト止めしているが、左側中心軸管路はあくまで封止栓117により塞がれている。
【0022】
移動側リンク軸11における排出用管路は、上述した供給用管路同様、油圧シリンダ21の軸受け孔の内周面右側に設けた周溝と移動側リンク軸11の外周面右側に設けた周溝とから形成される移動側排出用周管路114と、移動側リンク軸11の外周面中央右寄り(左右中央から少し右に寄った付近を意味する。以下、同じ)に設けた周溝と移動側リンク節14の移動側外嵌部143の内周面中央右寄りに設けた周溝とから形成される固定側排出用周管路115とを、排出用連結管路116で結んで構成される。
【0023】
油圧シリンダ21の排出ポートに延びる排出管路212と移動側リンク節14の排出用架橋管路142とは、上述した供給管路211と供給用架橋管路141との関係同様、移動側供給用周管路111、供給用連結管路113及び固定側供給用周管路112を介して連通する。移動側排出用周管路114及び固定側排出用周管路115は、上述した移動側供給用周管路111及び固定側供給用周管路112同様、シールリング213,213又はシールリング145,145に挟まれ、それぞれ左右方向に対してシールされている。排出用連結管路116も、上述した供給用連結管路113同様の構成である。
【0024】
中間リンク軸12は、左側に供給用管路を、右側に排出用管路を構成する。供給用管路は、中間リンク軸12を軸着する移動側リンク節14の固定側外嵌部144の内周面中央左寄りに設けた周溝と中間リンク軸12の外周面中央左寄りに設けた周溝とから形成される移動側供給用周管路121と、中間リンク軸12の外周面左側に設けた周溝と中間リンク軸12を軸着する左側の固定側リンク節15の移動側外嵌部153の内周面に設けた周溝とから形成される固定側供給用周管路122とを、供給用連結管路123で結んで構成される。
【0025】
移動側供給用周管路121は、移動側リンク節14の供給用架橋管路141が開口し、固定側供給用周管路122は、固定側リンク節15の供給用架橋管路151が開口している。既述した通り、移動側供給用周管路121と固定側供給用周管路122とは供給用連結管路123により結ばれているので、移動側リンク節14の供給用架橋管路141と固定側リンク節15の供給用架橋管路151とが、移動側供給用周管路121、供給用連結管路123及び固定側供給用周管路122を介して連通する。供給用連結管路123は、上述した供給用連結管路113同様の構成で、左側中心軸管路を封止栓127で塞いでいる。
【0026】
移動側供給用周管路121は、移動側リンク節14の固定側外嵌部144の内周面に埋め込まれ、中間リンク軸12の外周面に摺接するシールリング145,145に挟まれ、左右方向に対してシールされている。シールリング145,145の一方又は双方を中間リンク軸12の外周面に埋め込み、移動側リンク節14の固定側外嵌部144の内周面に摺接させてもよい。同様に、固定側供給用周管路122は、固定側リンク節15の移動側外嵌部153の内周面に埋め込まれ、中間リンク軸12の外周面に摺接するシールリング155,155に挟まれ、左右方向に対してシールされている。シールリング155,155の一方又は双方を中間リンク軸12の外周面に埋め込み、固定側リンク節15の移動側外嵌部153の内周面に摺接させてもよい。
【0027】
中間リンク軸12における排出用管路は、上述した供給用管路同様、中間リンク軸12を軸着する移動側リンク節14の固定側外嵌部144の内周面中央右寄りに設けた周溝と中間リンク軸12の外周面中央右寄りに設けた周溝とから形成される移動側排出用周管路124と、中間リンク軸12の外周面右側に設けた周溝と中間リンク軸12を軸着する右側の固定側リンク節15の移動側外嵌部153の内周面に設けた周溝とから形成される固定側排出用周管路125とを、排出用連結管路126で結んで構成される。
【0028】
移動側リンク節14の排出用架橋管路142と固定側リンク節15の排出用架橋管路142とは、上述した供給管路211と供給用架橋管路141との関係同様、移動側排出用周管路124、排出用連結管路126及び固定側排出用周管路125を介して連通する。移動側排出用周管路124及び固定側排出用周管路125は、上述した移動側供給用周管路111及び固定側供給用周管路112同様、シールリング145,145又はシールリング155,155に挟まれ、それぞれ左右方向に対してシールされている。排出用連結管路126は、上述した供給用連結管路113同様で、右側中心軸管路を封止栓127で塞いでいる。
【0029】
固定側リンク軸13は、左側に供給用管路を、右側に排出用管路を構成する。供給用管路は、固定側リンク軸13を軸着する左側の固定側リンク節15の固定側外嵌部154に設けた周溝と固定側リンク軸13の左側に設けた周溝とから形成される移動側供給用周管路131と、固定側リンク軸13の外周面中央左寄りに設けた周溝と固定側リンク軸13を軸着する接続ブロック22の軸受け孔の内周面中央左寄りに設けた周溝とから形成される固定側供給用周管路132とを、供給用連結管路133で結んで構成される。接続ブロック22の軸受け孔は、本例の場合、旋回ベアリングを挟んで取付ブラケットに支持される接続ブロック22に貫通して形成される。
【0030】
移動側供給用周管路131は、固定側リンク節15の供給用架橋管路151が開口し、固定側供給用周管路112は、固定配管の供給端に延びる供給管路221(正確には、本例の供給管路221は旋回ベアリングを跨ぐロータリジョイント(図示略)から延びる)が開口している。既述した通り、移動側供給用周管路131と固定側供給用周管路132とは供給用連結管路133により結ばれているので、固定側リンク節15の供給用架橋管路151と固定配管の供給端に延びる供給管路221とが、移動側供給用周管路131、供給用連結管路133及び固定側供給用周管路132を介して連通する。供給用連結管路133は、上述した供給用連結管路113同様の構成で、左側中心軸管路を封止栓137で塞いでいる。
【0031】
移動側供給用周管路131は、固定側リンク節15の固定側外嵌部154の内周面に埋め込まれ、固定側リンク軸13の外周面に摺接するシールリング155,155に挟まれ、左右方向に対してシールされている。シールリング155,155の一方又は双方を固定側リンク軸13の外周面に埋め込み、固定側リンク節15の固定側外嵌部154の内周面に摺接させてもよい。同様に、固定側供給用周管路132は、接続ブロック22の軸受け孔の内周面に埋め込まれたシールリング223,223に挟まれ、左右方向に対してシールされている。シールリング223,223の一方又は双方を固定側リンク軸13の外周面に埋め込み、接続ブロック22の軸受け孔の内周面に摺接させてもよい。
【0032】
固定側リンク軸13における排出用管路は、上述した供給用管路同様、固定側リンク軸13を軸着する右側の固定側リンク節15の固定側外嵌部154に設けた周溝と固定側リンク軸13の右側に設けた周溝とから形成される移動側排出用周管路134と、固定側リンク軸13の外周面中央右寄りに設けた周溝と固定側リンク軸13を軸着する接続ブロック22の軸受け孔の内周面中央右寄りに設けた周溝とから形成される固定側排出用周管路135とを、排出用連結管路136で結んで構成される。
【0033】
固定側リンク節15の排出用架橋管路142と固定配管の排出端に延びる排出管路222(正確には、本例の供給管路221は旋回ベアリングを跨ぐロータリジョイント(図示略)から延びる)とは、上述した供給用架橋管路151と供給管路221との関係同様、移動側排出用周管路134、排出用連結管路136及び固定側排出用周管路135を介して連通する。移動側排出用周管路134及び固定側排出用周管路135は、上述した移動側供給用周管路131及び固定側供給用周管路132同様、シールリング155,155又はシールリング223,22に挟まれ、それぞれシールされている。排出用連結管路136は、上述した供給用連結管路113同様で、右側中心軸管路を封止栓127により塞いでいる。
【0034】
本発明の油圧配管1は、図3及び図4に見られるように、破砕機2の可動顎を開閉するためにロッドを伸縮させて変位する油圧シリンダ21に応じて屈曲及び揺動する。このとき、例えば油圧シリンダ21の供給ポートに延びる供給管路211と移動側リンク節14の供給用架橋管路141とは、図2に見られるように、供給管路211が移動側供給用周管路111に、供給用架橋管路141が固定側供給用周管路112に連結され、移動側供給用周管路111と固定側供給用周管路112とが供給用連絡管路113により連結されているので、連通が途切れない。これは、供給用架橋管路141と固定側リンク節15の供給架橋管路151との関係、前記架橋管路151と油圧シリンダ21の供給ポートに延びる供給管路211との関係も同様であり、油圧配管1の屈曲状態に拘らず、供給用配管の連通が確保される。これは、排出用管路も同様である。
【0035】
また、本発明の油圧配管1は、屈曲及び揺動することにより、油圧シリンダ21の供給ポートに延びる供給管路211及び固定配管の供給端に延びる供給管路221の位置関係及び距離や、同じく油圧シリンダ21の排出ポートに延びる排出管路212及び固定配管の排出端に延びる排出管路222の位置関係及び距離の変化を吸収する。このとき、油圧配管1が屈曲又は揺動に要する空間は、移動側リンク節14及び固定側リンク節15を同一直線上に揃えた状態で揺動する範囲が最大であり、油圧ホースの曲がりや撓みを許容する空間を必要としない。ここで、本発明の油圧配管1は、一方向(図3及び図4では紙面と平行な方向)にしか屈曲しないが、通常油圧シリンダ21の変位は一方向に限られるため、問題はない。
【0036】
このほか、本発明の油圧配管1は、全体が屈曲又は揺動するものの、可撓性が求められる樹脂製の油圧ホースと異なり、構成要素であるリンク軸11,12,13及びリンク節14,15が個々に曲がる必要がないため、前記構成要素すべてを金属製として、経時的劣化や破損といった問題を解消し、長寿命化を図ることができる利点もある。とりわけ、本例のような破砕機2の場合、どうしても破砕物が油圧配管1を傷つけてしまう虞がある。油圧ホースは、可撓性を確保するため、保護部材を取付けにくく、また上述のように曲がるための空間が必要なことから、破砕物から保護しにくい。本発明の油圧配管1は、こうした保護を考慮しなくても、そもそも金属製とすることで破砕物による破損を防ぐことができるので、簡単に超寿命化できるわけである。
【符号の説明】
【0037】
1 油圧配管
11 移動側リンク軸
12 中間リンク軸
13 固定側リンク軸
14 移動側リンク節
15 固定側リンク節
2 破砕機
21 油圧シリンダ
22 接続ブロック



【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源である油圧シリンダや油圧モータの供給ポート又は排出ポートとアーム又はアタッチメント本体の固定配管の供給端又は排出端とを接続する油圧配管であって、
移動側リンク軸と中間リンク軸とを移動側リンク節で連結し、前記中間リンク軸と固定側リンク軸とを固定側リンク節で連結して屈曲リンクを構成し、
移動側リンク軸は、動力源である油圧シリンダや油圧モータの供給ポート又は排出ポートが接続され、移動側リンク節の内蔵する架橋管路の一端が接続される周管路を設け、
中間リンク軸は、移動側リンク節の内蔵する架橋管路の他端が接続され、固定側リンク節の内蔵する架橋管路の一端が接続される周管路を設け、そして
固定側リンク軸は、固定側リンク節の内蔵する架橋管路の他端が接続され、アーム又はアタッチメント本体の固定配管の供給端又は排出端が接続される周管路を設け、
前記周管路及び架橋管路を互いに連通させて形成される油圧配管。
【請求項2】
移動側リンク軸は、動力源である油圧シリンダや油圧モータの供給ポート又は排出ポートが接続される移動側周管路と、移動側リンク節の内蔵する架橋管路の一端が接続される固定側周管路とを設けて、前記周管路を連絡管路で接続し、
中間リンク軸は、移動側リンク節の内蔵する架橋管路の他端が接続される移動側周管路と、固定側リンク節の内蔵する架橋管路の一端が接続される固定側周管路とを設けて、前記周管路を連絡管路で接続し、そして
固定側リンク軸は、固定側リンク節の内蔵する架橋管路の他端が接続される移動側周管路と、アーム又はアタッチメント本体の固定配管の供給端又は排出端が接続される固定側周管路とを設けて、前記周管路を連絡管路で接続する請求項1記載の油圧配管。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−12779(P2012−12779A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147637(P2010−147637)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(391038224)株式会社タグチ工業 (12)
【Fターム(参考)】