説明

油圧駆動装置

【課題】本発明は、油圧ポンプで油圧モータを駆動する際の動力損失を抑制することができるとともに、ブレーキ時の騒音を抑制することが可能な油圧駆動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】油圧駆動装置1Aは、原動機2と、原動機2により駆動される主油圧ポンプ4、および主油圧ポンプ4の吐出作動油で駆動される主油圧モータ5を備え、主油圧ポンプ4と主油圧モータ5のうち、少なくともいずれか一方が可変容量型である油圧閉回路と、主油圧ポンプ4に連動して駆動するように設けられた補機ポンプ6と、操作部72を有し、当該操作部72の操作量の増加に伴って、補機ポンプ6の駆動抵抗を増加させる制御手段7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に用いられるHST(Hydro Static Transmission)付きの油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両に用いられるHST付きの油圧走行駆動装置は、一般に、可変容量型ポンプと、可変容量型モータを主回路で接続した閉回路から構成されている。そして、アクセルペダルを戻したときに可変容量型ポンプの容量を減少させてモータ出口側の主回路にブレーキ圧力を発生させ、このブレーキ圧力を可変容量型ポンプによりトルク変換して原動機に吸収させることにより、減速作用が得られるようになっている。
【0003】
従来、上述のようなHST付きの油圧駆動装置として、特許文献1に記載のものが知られている。
この油圧駆動装置は、一対の主管路を介して閉回路接続される可変容量型の油圧ポンプと油圧モータとの間に配置された閉回路用制御弁を備えている。この閉回路用制御弁は、互いに並列に設けられる逆止弁と、切換弁とを備えて構成される。上記逆止弁は、上記一対の主管路のそれぞれに設けられ、上記油圧ポンプ側から上記油圧モータ側への圧油の流れを許容し、上記油圧モータ側から上記油圧ポンプ側への圧油の流れを阻止するものである。また、上記切換弁は、上記油圧ポンプがポンプ作用、上記油圧モータがモータ作用をおこない上記一対の主管路のうちの上記油圧モータの出口側管路を含む主管路側を導通させる切換位置である駆動位置と、上記一対の主管路の圧がほぼ同圧のときに保持される位置である中立位置とを有している。更に、上記切換弁は、上記中立位置に、上記一対の主管路のうちの上記油圧モータの出口側管路を含む主管路側を導通させる通路と、この通路に形成される絞りとを有している。
【0004】
この構成によると、切換弁が中立位置に保持されたとき、この中立位置に形成される絞りにより油圧モータの出口側管路にブレーキ圧が発生するものの、その絞りが形成される通路を介してこの出口側管路を含む主管路側が導通し、油圧モータの出口側管路の圧油が油圧ポンプに戻される。このため、油圧モータの出口側管路に、高圧のブレーキ圧が急激に発生しないように保たれる。
【0005】
また、従来、HST付きの油圧駆動装置として、特許文献2に記載のものが知られている。
この油圧駆動装置においては、原動機によって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、この油圧ポンプによって駆動される走行駆動源としての可変容量型の油圧モータとが主管路により接続されて閉回路が構成されている。
そして、加速操作時には上記油圧ポンプの容量を増加させてモータ入口側の主管路に加速圧力を発生させ、減速操作時には上記油圧ポンプの容量を減少させてモータ出口側の主管路にブレーキ圧力を発生させるように構成されている。
更に、当該油圧駆動装置は、上記油圧モータの容量を制御するレギュレータと、このレギュレータの作動を制御する制御手段とを具備し、上記制御手段は、補助制動作用を働かせることを目的とするオペレータの補助制動操作が行われたときに、上記レギュレータをモータ容量が増加する方向に作動させるように構成されている。
【0006】
この構成によると、減速時にオペレータが補助制動操作を行うと、制御手段の作用によってモータ容量が増加し、油圧モータからの流出流量が増加するため、モータ出口側にブレーキ圧力が発生する。これにより、減速操作に基づく油圧ポンプの容量減少によって働く本来のブレーキ作用と、上記モータ容量の増加によって働くブレーキ作用(補助制動作用)とによって通常時よりも大きなブレーキ圧力が働き、これがポンプでトルク変換されて原動機に伝えられることにより、大きな減速度で減速作用が働く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−89708号公報
【特許文献2】特開2004−332753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された油圧駆動装置は、閉回路中に逆止弁や切換弁を設けることで、油圧ポンプで油圧モータを駆動する際に、閉回路において圧損に伴う動力損失が生じるため、燃費が悪化してしまう。また、アクセルをオフにし、それまでの加速で得たエネルギや慣性力で走行する(流し走行)時のように、ブレーキ力を与えずにモータを駆動させたい場合においても、閉回路において圧損に伴う動力損失が生じてしまうため、走行フィーリングや燃費が悪化してしまう。
【0009】
また、特許文献2に記載された油圧駆動装置は、補助制動操作が行われることでモータ容量が増加し、ブレーキ力が増加するが、このブレーキ力がポンプを駆動するトルクとなり、ポンプに直結した原動機の回転数も増加するため騒音上問題となる。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、油圧ポンプで油圧モータを駆動する際の動力損失を抑制することができるとともに、ブレーキ時の原動機からの騒音を抑制することが可能な油圧駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る油圧駆動装置における第1の特徴は、原動機と、前記原動機により駆動される主油圧ポンプ、および前記主油圧ポンプの吐出作動油で駆動される主油圧モータを備え、前記主油圧ポンプと前記主油圧モータのうち、少なくともいずれか一方が可変容量型である油圧閉回路と、前記主油圧ポンプに連動して駆動するように設けられた補機ポンプと、操作部を有し、当該操作部の操作量の増加に伴って、前記補機ポンプの駆動抵抗を増加させる制御手段と、を備えることである。
ここで、ポンプ又はモータの「駆動抵抗」とは、当該ポンプ又はモータを所定の回転数(回転速度)で駆動する際に必要なトルクに相当する。
【0012】
この構成によると、操作部が操作されると、補機ポンプの駆動抵抗が増加するため、連動する主油圧ポンプの駆動抵抗を増加させることができる。これにより、油圧閉回路内にある主油圧モータの駆動抵抗を増加させることができる。結果として、当該主油圧モータに接続された駆動部により大きなブレーキ力を作用させることができる。
この場合、油圧閉回路内に、別途、逆止弁や切換弁を設ける必要はないため、主油圧ポンプで主油圧モータを駆動する際の動力損失を抑制することができる。
また、ブレーキ時において、補機ポンプ及び主油圧ポンプの回転抵抗が増加することで、原動機の回転数が過度に増加することを抑制できる。これにより、ブレーキ時の原動機からの騒音を抑制することが可能である。
【0013】
また、本発明に係る油圧駆動装置における第2の特徴は、前記補機ポンプは、可変容量型ポンプであり、前記制御手段は、前記操作部の操作量の増加に伴って、前記補機ポンプの容量を増加させるように当該補機ポンプを制御する制御部を備えていることである。
ここで、可変容量型ポンプにおける「ポンプの容量」とは、ポンプの駆動軸を1回転させたときの吐出される作動油の流量を意味する。
【0014】
この構成によると、補機ポンプの駆動抵抗を増加させる構成を、簡易な構成で実現できる。
【0015】
また、本発明に係る油圧駆動装置における第3の特徴は、前記補機ポンプは、固定容量型ポンプであり、前記制御手段は、前記補機ポンプの吐出側の油路に設けられた可変絞りと、前記操作部の操作量の増加に伴って、前記可変絞りの開口面積を減少させるように当該可変絞りを制御する制御部とを備えていることである。
【0016】
この構成によると、補機ポンプとして固定容量型のポンプを用いることができるので、油圧駆動装置の製造コストを抑えることができる。また、可変絞りを用いた簡易な構成であり、補機ポンプの駆動抵抗を増加させることができる。
【0017】
また、本発明に係る油圧駆動装置における第4の特徴は、前記補機ポンプは、可変容量型ポンプであり、前記制御手段は、前記補機ポンプの吐出側の油路に設けられた可変絞りと、前記操作部の操作量の増加に伴って、前記補機ポンプの容量を増加させるように当該補機ポンプを制御するとともに、前記可変絞りの開口面積を減少させるように前記可変絞りを制御する制御部と、を備えていることである。
【0018】
この構成によると、より大きな駆動抵抗を補機ポンプに発生させ、より大きなブレーキ力を得ることができる。
【0019】
また、本発明に係る油圧駆動装置における第5の特徴は、前記制御手段は、前記操作部の操作時における前記原動機の回転数が、予め設定された前記原動機の許容回転数よりも大きくなると、前記操作部の操作時における前記原動機の回転数と前記許容回転数との差に応じて、前記補機ポンプの駆動抵抗を変化させることである。
【0020】
この構成によると、原動機の回転数が過度に増加した場合は、自動的に、補機ポンプの駆動抵抗が増加する。これにより、原動機の回転数が、予め設定した許容回転数を過度に越えて上昇することを防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、主油圧モータに接続された駆動部の作動にブレーキをかけることができる構成を、主油圧ポンプで主油圧モータを駆動する際の動力損失を抑制しつつ実現することができる。更に、ブレーキ時の原動機からの騒音が過度に大きくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置を示す図。
【図2】本発明の第2実施形態に係る油圧駆動装置を示す図。
【図3】可変絞りの開口面積、圧力損失、及び補助ブレーキ操作量の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(第1実施形態)
<全体構成>
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置1Aは、エンジン2と、当該エンジン2の出力軸に連結され当該エンジン2の駆動力を分配するパワーデバイダ3と、当該パワーデバイダ3に連結された可変容量型油圧ポンプ4(主油圧ポンプ)と、当該可変容量型油圧ポンプ4と一対の主管路45a,45bを介して連結された可変容量型油圧モータ5(主油圧モータ)と、パワーデバイダ3に連結された可変容量型の補機ポンプ6と、当該補機ポンプ6の容量を制御するための制御装置7と、を備えている。
【0025】
尚、パワーデバイダ3における、エンジン2に連結する第1連結軸、可変容量型油圧ポンプ4に連結する第2連結軸、及び補機ポンプ6に連結する第3連結軸が、互いに連動するように構成されている。つまり、エンジン2に連結する第1連結軸が回転すれば、他の第2連結軸、第3連結軸も回転するし、可変容量型油圧ポンプ4に連結する第2連結軸が回転すれば、他の第1連結軸、第3連結軸も回転するし、補機ポンプ6に連結する第3連結軸が回転すれば、他の第1連結軸、第2連結軸も回転する。
【0026】
<走行系の構成>
油圧駆動装置1Aにおいては、可変容量型油圧ポンプ4、主管路45a、可変容量型油圧モータ5、及び主管路45bで油圧閉回路を構成する。これにより、エンジン2の駆動力をパワーデバイダ3、可変容量型油圧ポンプ4、及び主回路45a,45bを介して、可変容量型油圧モータ5に伝達し、当該可変容量型油圧モータ5を駆動させることができる。
【0027】
可変容量型油圧モータ5の出力は、動力伝達機構11を介して、アクスルシャフトの端部に設けられた車輪12(駆動部)に伝達される。即ち、可変容量型油圧モータ5は、作業車両の走行用モータとして機能する。尚、動力伝達機構11は、例えば、可変容量型油圧モータ5の出力軸に連結された減速機、当該減速機に連結された差動ギア装置などを備えている。また、車輪12が外力により回転された場合は、当該回転の駆動力が、動力伝達機構11を介して、可変容量型油圧モータ5に伝達される。そして、当該可変容量型油圧モータ5が駆動されると、これに伴って可変容量型油圧ポンプ4が駆動されて、さらにエンジン2が駆動されることになる。
【0028】
<補機系の構成>
補機ポンプ6は、4ポート3位置の切換弁8を介して、補機モータ9に接続されている。具体的には、補機ポンプ6の吐出側のポートが、管路6aを介して切換弁8の第1ポートP1に接続される。尚、補機ポンプ6の吸入側のポートは、管路6bを介してタンク10に接続されている。
また、切換弁8の第2ポートP2は、管路10aを介してタンク10に接続され、第3ポートP3及び第4ポートP4がそれぞれ、管路9a,9bを介して補機モータ9に接続されている。
【0029】
補機モータ9は、例えば、ホイールクレーンにおけるフックの巻上げ及び巻き下げ用のドラムの回転を行うためのモータとして使用される。尚、ホイールローダ等の作業車両において、当該補機モータ9を、他のアタッチメントを駆動するためのモータとして用いることもできる。
また、補機ポンプ6を、補機モータ9を駆動する油圧ポンプとして用いる場合に限らず、他の油圧作業用アタッチメントを駆動するためのポンプとして用いることも可能である。例えば、補機ポンプ6を、ブーム起伏用の油圧シリンダを駆動するために用いてもよい。
【0030】
切換弁8は以下のように構成される。
(1)第1切換状態
切換弁8が、第1切換位置8aを、管路6a,10a,9a,9bに接続した状態(以下、第1切換状態という)のとき、第1ポートP1と第3ポートP3とが連通するとともに、第2ポートP2と第4ポートP4とが連通する。
(2)第2切換状態(中立状態、図1で示す状態)
切換弁8が、第2切換位置8bを、管路6a,10a,9a,9bに接続した状態(以下、第2切換状態という)のとき、第1ポートP1と第2ポートP2とが連通するとともに、第3ポートP2及び第4ポートP4は、他のポートに連通しないように遮断される。
(3)第3切換状態
切換弁8が、第3切換位置8cを、管路6a,10a,9a,9bに接続した状態(以下、第3切換状態という)のとき、第1ポートP1と第4ポートP4とが連通するとともに、第2ポートP2と第3ポートP3とが連通する。
【0031】
切換弁8は、通常は、切換弁8の両側からのバネの付勢力により中立状態(第2切換状態)で保持されている。そして、補機モータ9を駆動させる場合には、切換弁8の入力部に指令信号を作用させることで、当該切換弁8が第1切換状態又は第3切換状態に切り換えられる。これにより、補機ポンプ6から吐出される作動油により、補機モータ9を正逆回転して駆動することができる。
尚、可変容量型油圧ポンプ4から吐出される作動油により可変容量型油圧モータ5が駆動されている状態(即ち、作業車両が走行している走行状態)においては、切換弁8は、中立状態で保持される。
【0032】
<制御装置7の構成>
制御装置7は、コントローラ71と、操作レバー72とを備えている。
コントローラ71は、CPU、メモリなどを備えて構成されており、操作レバー72の操作量データが入力され、当該操作量データに基づいて、補機ポンプ6の容量(1回転あたりの吐出容量)を制御する。
具体的には、コントローラ71は、操作レバー72の操作量が大きいほど、補機ポンプ6の容量が大きくなるように、当該補機ポンプ6を制御する。
尚、本実施形態においては、操作レバー72は、揺動自在に設けられたレバーであり、操作レバー72の所定位置(非操作位置)からの揺動角度が当該操作レバー72の操作量に相当する。
【0033】
<油圧駆動装置1Aの作動>
エンジン2の駆動によらず走行する時(例えば、平坦な道を惰性により走行する流し走行時、坂を下る時など)は、動力伝達機構11を介して車輪12から伝達される外力により、可変容量型油圧モータ5が駆動されることになる。このとき可変容量型油圧モータ5から吐出される作動油により、可変容量型油圧ポンプ4が駆動されることになる。この時、パワーデバイダ3を介してエンジン2や補機ポンプ6が連れ回るため、エンジン2及び補機ポンプ6の駆動トルクが抵抗トルクとして可変容量型油圧モータ5に作用する。この抵抗トルクが、走行のブレーキ力となる。
【0034】
補機ポンプ6は、作業車両において走行用モータ(可変容量型油圧モータ5)とは異なる油圧作業装置用のモータ(補機モータ9)を駆動するためのポンプであるため、通常の走行時には、作動させる必要が無い。そのため、補機ポンプ6は、通常の走行時には、エネルギ損失低減のため、容量をゼロ、もしくは最小になるように制御される。
そして、操作レバー72が操作されることにより、当該操作レバー72の操作量に応じて、補機ポンプ6の容量が増加するように制御される。
ここで、補機ポンプ6における損失動力Wは、当該補機ポンプ6の吐出流量をQ、配管6a,10aや切換弁8での圧力損失をΔPとすると、W=Q×ΔPで表される。したがって、補機ポンプ6の容量が増加して、補機ポンプ6からの吐出流量が増加すると、損失動力が増加することになる。この損失動力が、可変容量型油圧ポンプ4に損失トルクとして作用する。つまり、補機ポンプ6の容量が増加すると、可変容量型油圧ポンプ4の駆動抵抗が増加することになる。そのため、結果として、操作レバー72の操作により、可変容量型油圧モータ5に作用するブレーキ力(モータの回転を制動する力)が増加することになる。
【0035】
また、操作レバー72の操作により補機ポンプ6での損失動力を増加させることで、可変容量型油圧ポンプ4からパワーデバイダ3を介してエンジン2に作用するトルクが低減されることになる。これにより、エンジン2の連れ回りの回転数の増加を抑制することができる。
【0036】
<第1実施形態の効果>
以上、説明したように、第1実施形態に係る油圧駆動装置1Aは、エンジン2(原動機)と、当該エンジン2によりパワーデバイダ3を介して駆動される可変容量型油圧ポンプ4(主油圧ポンプ)と、可変容量型油圧ポンプ4の吐出作動油で駆動される可変容量型油圧モータ5を備えている。可変容量型油圧ポンプ4と可変容量型油圧モータ5とはいずれも可変容量型であり、当該可変容量型油圧ポンプ4と当該可変容量型油圧モータ5とを一対の主管路45a,45bで連結して油圧閉回路が構成されている。
また、エンジン2には、パワーデバイダ3を介して、補機ポンプ6が連結されている。当該補機ポンプ6は、当該パワーデバイダ3を介して可変容量型油圧ポンプ4に連動して駆動するように設けられている。
更に、油圧駆動装置1Aは、操作レバー72(操作部)と、当該操作レバー72の操作量の増加に伴って、補機ポンプ6の駆動抵抗を増加させるコントローラ71とを有する制御装置7(制御手段)を備えている。
【0037】
この構成によると、操作レバー72を操作することで、可変容量型油圧ポンプ4の駆動抵抗を増加させることができる。これにより、可変容量型油圧モータ5の駆動抵抗を増加させることができる。結果として、当該可変容量型油圧モータ5に動力伝達機構11を介して連結された車輪12の回転を制動することができる。したがって、作業車両がエンジン2の駆動によらず走行する時(流し走行時など)に、操作レバー72を操作することで、より大きなブレーキ力を発生させることができる。
そして、この構成によれば、主回路45a,45bに逆止弁や切換弁を設ける必要はないため、可変容量型油圧ポンプ4で可変容量型油圧モータ5を駆動する際の動力損失を抑制することができる。
また、ブレーキ時において、パワーデバイダ3を介して可変容量型油圧ポンプ4に連結されたエンジン2の回転数が増加することを抑制できるため、騒音を抑制することが可能である。
また、操作レバー72の操作量に基づいて、ブレーキ力を変化させることができるので、操作性が向上する。
【0038】
また、補機ポンプ6は、可変容量型ポンプであり、コントローラ71は、操作レバー72の操作量の増加に伴って、補機ポンプ6の容量を増加させるように補機ポンプ6を制御する。
【0039】
この構成によると、補機ポンプ6の駆動抵抗を増加させる構成を、簡易な構成で実現できる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る油圧駆動装置1Bについて説明する。
油圧駆動装置1Bは、以下の点で、第1実施形態に係る油圧駆動装置1Aと異なっている。
(1)油圧駆動装置1Aにおける補機ポンプ6を固定容量型の油圧ポンプ(補機ポンプ16)とした点
(2)管路6aに可変絞り61を設けた点
(3)コントローラ71に代えて、可変絞り61を制御するコントローラ73を設けた点
その他の構成は、第1実施形態に係る油圧駆動装置1Aと同様であるため、説明は省略する。
【0041】
コントローラ73は、操作レバー72の操作量に応じて、可変絞り61の開口面積を制御するように構成されている。
具体的には、コントローラ73は、図3(a)に示すように、操作レバー72の操作量が増加すると、可変絞り61の開口面積が小さくなるように、当該可変絞り61を制御する。
図3(b)に示すように、可変絞り61の開口面積が小さくなると、管路6aを流れる作動油の圧損が増加するため、補機ポンプ16の駆動抵抗が増加する。結果として、操作レバー72の操作により、ブレーキ力を増加させることができる。
【0042】
ここで、可変絞り61の開口面積Aと当該可変絞り61を通過する作動油の圧損ΔPとの関係は、可変絞り61を通過する作動油の流量をQとしたときに、以下の式(1)で表される。
ΔP={Q/(C1×A)} ・・・式(1)
尚、C1は、作動油の流量係数及び密度から求まる定数である。
【0043】
本実施形態においては、操作レバー72の操作量Lと可変絞り61の開口面積Aとの関係が以下の式(2)を満たすように、コントローラ73が可変絞り61を制御する(結果として、操作レバー72の操作量Lと可変絞り61の開口面積Aとの関係は、図3(a)に示すようになる)。
=C2/L ・・・式(2)
尚、C2は、所定の係数である。
【0044】
これにより、操作レバー72の操作量Lと圧損ΔPとの関係は、以下の式(3)に示すようになる。
ΔP={Q/(C1×C2)}×L ・・・式(3)
即ち、操作量Lと圧損ΔPとの関係は、図3(c)に示すように、線形となり、操作レバー72の操作量Lに比例したブレーキ力を得ることができる。
【0045】
尚、操作レバー72の操作量がゼロの場合(操作レバー72が所定の非操作位置にあるとき)は、可変絞り61の開口面積は最大であり、管路6aを流れる作動油の圧損は最小となる。したがって、エンジン2からの駆動力により可変容量型油圧モータ5が駆動された通常の走行時や、補機ポンプ16を用いた補機モータ9の駆動時には、操作レバー72の操作量をゼロとすることで、動力損失を最小に抑えることができる。
【0046】
また、可変容量型油圧ポンプ4、可変容量型油圧モータ5、及び主回路45a,45bを有する閉回路に、バルブや絞りを追加する構成ではないため、走行燃費の悪化を招くことはない。
【0047】
(第2実施形態の効果)
以上説明したように、第2実施形態に係る油圧駆動装置1Bにおいては、補機ポンプ16は、固定容量型ポンプである。また、制御装置7’(制御手段)は、補機ポンプ16の吐出側の管路6aに設けられた可変絞り61と、操作レバー72の操作量の増加に伴って、可変絞り61の開口面積を減少させるように当該可変絞り61を制御するコントローラ73(制御部)とを備えている、
【0048】
この構成によると、補機ポンプ16として固定容量型のポンプを用いることができるので、油圧駆動装置1Bの製造コストを抑えることができる。また、可変絞り61を用いた簡易な構成であり、補機ポンプ6の駆動抵抗を増加させることができる。
【0049】
特に、本実施形態においては、操作レバー72の操作量の増加に対して、比例的にブレーキ力が増加するので、ブレーキ力の調整が容易である。
【0050】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態に係る油圧駆動装置1Bは、以下のように変形して実施してもよい。
例えば、補機ポンプ16を、可変容量型ポンプに変更してもよい。そして、コントローラ73により、操作レバー72の操作量の増加に伴って、当該補機ポンプ16の容量を増加させるように当該補機ポンプ16を制御させるように構成してもよい。即ち、コントローラ73により、補機ポンプ16の容量と可変絞り61の開口面積との双方が同時に調整されるように構成してもよい。
【0051】
この構成によると、より大きな駆動抵抗(損失トルク)を補機ポンプ16に発生させ、より大きなブレーキ力を得ることができる。
【0052】
(第1実施形態及び第2実施形態の変形例)
第1実施形態に係る油圧駆動装置1A及び第2実施形態に係る油圧駆動装置1Bは、以下に示すように、コントローラ71及びコントローラ73による制御方法を変更して実施することもできる。
【0053】
即ち、第1実施形態に係る油圧駆動装置1Aのコントローラ71により、予め設定した許容回転数Naよりも、エンジン2の回転数Neが大きくなったときは、当該エンジンの回転数Neと許容回転数Naとの差に応じて、補機ポンプ6の容量を増加させるように制御させてもよい。
また、第2実施形態に係る油圧駆動装置1Bのコントローラ73により、予め設定した許容回転数Naよりも、エンジン2の回転数Neが大きくなったときは、当該エンジンの回転数Neと許容回転数Naとの差に応じて、可変絞り61の開口面積を小さくするように制御させてもよい。
【0054】
ここで、許容回転数Naは、エンジン2の最高回転数より小さい値となるよう騒音やブレーキ力を考慮して任意に設定される。
尚、エンジン2の「最高回転数」とは、エンジン2が過回転する事で、破損する事を防止する為に設定される回転数を意味する。
【0055】
具体的には、例えば、以下のように、エンジンの回転数Neと許容回転数Naとの差に応じて、補機ポンプ6の容量または可変絞り61の開口面積を制御することができる。
即ち、エンジンの回転数Neと許容回転数Naとの差をΔNとしたときに、以下の式(4)に基づいて、補機ポンプ6の容量の増加量または可変絞り61の開口面積の減少量が決定される。
式(4)において、補機ポンプ6の容量の増加量または可変絞り61の開口面積の減少量をΔPとする。尚、Kpは、所定の係数であり、式(4)においてΔPが補機ポンプ6の容量の増加量を示す場合と、可変絞り61の開口面積の減少量を示す場合とで異なる。
ΔP=Kp×ΔN ・・・式(4)
【0056】
また、以下の式(数1)に示すように、Kp,Ki,Kdを所定の係数(それぞれ、比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲイン)として、PID制御を行ってもよい。尚、以下の式(数1)において、ある時刻tにおけるΔP、ΔNをそれぞれ、ΔP(t)、ΔN(t)とする。
【0057】
【数1】

【0058】
このように、コントローラ71又はコントローラ73は、操作レバー72の操作時におけるエンジン2の回転数Neが、予め設定されたエンジン2の許容回転数Naよりも大きくなると、操作レバー72の操作時におけるエンジン2の回転数Neと許容回転数Naとの差に応じて、補機ポンプ6の容量を増加し、又は、可変絞り61の開口面積を減少することで、補機ポンプ6,16の駆動抵抗を増加する。
【0059】
これにより、エンジン2の回転数Neが、許容回転数Naよりも大きくなったときに、自動的に、ブレーキ力を増加させ、エンジン2の回転数を低下させることができる。結果として、エンジン2の回転数Neが、許容回転数Naを過度に越えて上昇することを防止できる。
【0060】
尚、エンジン2の回転数Neが許容回転数Naを上回っており、且つ、操作レバー72の操作がなされている場合は、許容回転数Naとエンジン2の回転数Neとの差に基づいて決定される補機ポンプ6の容量と、操作レバー72の操作量により決定される補機ポンプ6の容量とを比較する。そして、いずれか大きい容量を選択して、当該容量となるように、補機ポンプ6を制御する。
同様に、油圧駆動装置1Bの変形例においては、エンジン2の回転数Neが許容回転数Naを上回っており、且つ、操作レバー72の操作がなされている場合は、許容回転数Naとエンジン2の回転数Neとの差に基づいて決定される可変絞り61の開口面積と、操作レバー72の操作量により決定される可変絞り61の開口面積とを比較する。そして、いずれか小さい開口面積を選択して、当該開口面積となるように、可変絞り61を制御する。
【0061】
これにより、操作レバー72の操作が行われている場合でも、エンジン2の回転数Neが、許容回転数Naを過度に越えて上昇することを確実に防止できる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【0063】
(1)本実施形態においては、可変容量型油圧ポンプ4の駆動源としてエンジン2を用いた油圧駆動装置を示したが、これに限らず、エンジン2の代わりに電動機を用いてもよい。
【0064】
(2)可変容量型油圧モータ5は、車輪12を駆動するために用いられているが、この場合に限らず、当該可変容量型油圧モータ5を、例えば、作業車両に設けられた上部旋回体を旋回させるための油圧モータとして用いることもできる。
【0065】
(3)操作レバー72の操作量と可変絞り61の開口面積Aとの関係は、図3(a)で示した関係に限らず、適宜、変更して実施することができる。つまり、操作レバー72の操作量に比例して可変絞り61の圧損ΔP(即ち、ブレーキ力)を増加させる場合に限らず、操作レバー72の操作量の増加に伴って、指数関数的に可変絞り61の圧損ΔPが増加するように、操作レバー72の操作量と可変絞り61の開口面積Aとの関係を設定してもよい。
【0066】
(4)本実施形態のようにエンジン2で駆動される補機ポンプを一つ設けた構成に限らない。即ち、エンジン2によりパワーデバイダ3を介して複数の補機ポンプが駆動される構成とし、操作レバーの操作量が増加すると、当該複数の補機ポンプの駆動抵抗(損失トルク)が大きくなるようにしてもよい。これにより、発生するブレーキ力をより大きくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、作業車両において、走行や旋回等を行うための駆動力を発生する油圧駆動装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1A、1B 油圧駆動装置
2 エンジン
3 パワーデバイダ
4 可変容量型油圧ポンプ(主油圧ポンプ)
5 可変容量型油圧モータ(主油圧モータ)
6 補機ポンプ
7、7’ 制御装置
71、73 コントローラ
72 操作レバー(操作部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、
前記原動機により駆動される主油圧ポンプ、および前記主油圧ポンプの吐出作動油で駆動される主油圧モータを備え、前記主油圧ポンプと前記主油圧モータのうち、少なくともいずれか一方が可変容量型である油圧閉回路と、
前記主油圧ポンプに連動して駆動するように設けられた補機ポンプと、
操作部を有し、当該操作部の操作量の増加に伴って、前記補機ポンプの駆動抵抗を増加させる制御手段と、
を備える油圧駆動装置。
【請求項2】
前記補機ポンプは、可変容量型ポンプであり、
前記制御手段は、前記操作部の操作量の増加に伴って、前記補機ポンプの容量を増加させるように当該補機ポンプを制御する制御部を備えている
請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項3】
前記補機ポンプは、固定容量型ポンプであり、
前記制御手段は、前記補機ポンプの吐出側の油路に設けられた可変絞りと、前記操作部の操作量の増加に伴って、前記可変絞りの開口面積を減少させるように当該可変絞りを制御する制御部とを備えている
請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項4】
前記補機ポンプは、可変容量型ポンプであり、
前記制御手段は、前記補機ポンプの吐出側の油路に設けられた可変絞りと、前記操作部の操作量の増加に伴って、前記補機ポンプの容量を増加させるように当該補機ポンプを制御するとともに、前記可変絞りの開口面積を減少させるように前記可変絞りを制御する制御部とを備えている
請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記操作部の操作時における前記原動機の回転数が、予め設定された前記原動機の許容回転数よりも大きくなると、前記操作部の操作時における前記原動機の回転数と前記許容回転数との差に応じて、前記補機ポンプの駆動抵抗を変化させる
請求項1〜4に記載の油圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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